【🎲⚓腐CP死ネタSS閲覧注意】ここだけノンケなのに「○○しないと出られない部屋」に入れられたカキツバタとスグリが

[1 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:33:36]

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カキスグになるまでの物語（予定地）

◤　自室で就寝したはずのカキツバタは
　 気づけば見知らぬ部屋にいた
　 その部屋は窓もなく扉もなく
　 目に入るのは棚、ベッド、モニタ
　 そして足元に転がるスグリだけ
　 ――おっと、面倒なことになったねぃ　◢

💻第一層　ここは　性癖を暴露　しないと出られない部屋
💻カキツバタ　には　5つの秘密　がある
💻スグリ　には　1つの罪　がある

▼カキスグパラメータ
カキツバタのノンケ度：100％（オイラ女が好きだぜぃ）
スグリからの好感度　：0%（カキツバタ、ちょっと苦手だ……）
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[2 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:34:02]

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▼このスレの概要
・ノンケのカキツバタとスグリを最終的にカキスグにしてトゥルーエンドを迎えさせるスレです（具体的にはカキツバタのノンケ度0％、スグリからの好感度100％を目指します）
・大まかなシナリオは決まっているため、ダイスや安価は寄り道程度の影響です（よっぽどのことがあればバッドエンドに行きますが……）
・めちゃくちゃSS読まされます

[！]左右相手固定
[！]どちらかが死ぬ可能性があります
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[3 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:34:21]

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気づけば真っ白い部屋にいた。曖昧ながらも記憶を辿ってみると、自室で就寝したところまでは覚えているが、この場所はまったく見覚えがない。
周囲を観察して、特筆すべき点は3つ。ひとつは異常に寒いこと。寒いのは得意だから問題ないとはいえ、まるで雪山にいるようだ。ここはポーラエリアのどこかだろうか。
ふたつめはあまりにも殺風景なこと。窓や扉はなく、かろうじて棚とベッドとモニタだけが配置されている。自分がどこから入ってきたのかすら分からない。
そしてみっつめは。
「……おーい元チャンピオン、起きろー」
何故だかスグリが足元で寝こけていた。しゃがんで肩を揺するとうっすら目を開く。
「……カキツバタ？　……えっ、なんでカキツバタ……。……ここどこ？」
「そりゃオイラも訊きたいねぃ。その様子じゃオマエも分かんねえか」
スグリは起き上がって周囲を見回すと、やがて警戒するようにオイラを見つめた。
「……こ……これ、カキツバタのいたずら……？」
「ならよかったんだけどねぃ。けどざーんねん、オイラ犯人じゃないんだわ。こっちもなにがなんだか分かんなくってよ……。まあとりあえず、」
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[4 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:34:44]

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横たわるスグリに背を向け、壁際のベッドへ歩を進める。
「もうひと眠りとしゃれこむかあ」
「……え！？　今、ここで！？」
背後からばたばたと立ち上がって駆けてくる物音がする。すぐにタンクトップをぐいと引っ張られた。
「カキツバタ！　ほ……本気で言ってる？　この状況で寝るの？」
「だって考えるのだりーよぉ、これたぶん夢だし」
「だ……ダメだ！　カキツバタに寝られたら俺の寝るとこさなくなる……！」
問題はそこかい？　とツッコミは入れないまでも立ち止まった。このまま歩いていったらタンクトップが無残なことになってしまう。
「分かった分かった。オイラももうちょっとあったかいとこで寝たいもんな。だから手ぇ放してくれぃ」
「……分かった」
そろそろと手が離れていってから、オイラはスグリを振り返った。見上げてくる目は不安そうに揺れている。仕方ねえ、可愛い後輩のためにちっとばかし頑張るか。
「よーし。じゃあこっから出るために、まずは現状把握といこうや」
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[5 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:35:01]

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まずは置かれた状況を把握しなくては始まらない。それからふたりで部屋を調べたところ、いくつか分かったことがあった。
まずは、部屋の話ではないがふたりの服装だ。記憶にあるのが就寝時までなだけあって、両者ともいつも寝ているときの格好そのままだった。オイラはいつもの服から上着とマントを外したタンクトップ姿。スグリも上着を脱いだだけのタンクトップ姿だが、髪がすべて下りているのが新鮮だ。チャンピオンになる以前の彼に似ているが、黄色のヘアバンドがなく、あの頃より髪が伸びているから少々印象が違う。また、互いに持ち物はなく、ポケモンもいない丸腰だった。
次に部屋の様子。数少ない家具であるベッド、モニタ、棚については、まずベッドはなんの変哲もなく言及するところは見当たらない。問題は次に調べたモニタだ。
そこには不可思議な文章が浮かんでいた。
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[6 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:35:51]

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💻第一層　ここは　性癖を暴露しないと　出られない部屋

▼カキツバタ　には　5つの秘密　がある
　カキツバタは？？？
　カキツバタは？？？
　カキツバタは？？？
　カキツバタは？？？
　カキツバタの？？？

▼スグリ　には　1つの罪　がある
　スグリは？？？

▼カキスグパラメータ
カキツバタのノンケ度：100％
スグリからの好感度　：0%
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[7 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:36:15]

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――なんだこりゃ？
それが率直な感想だった。最初から最後まで意味が分からない。
この部屋は性癖を暴露しないと出られない部屋らしい。あーはいはいあるよなそういう部屋……いやいやねーって。
その下にある秘密とやらも思い当たる節はない。もちろん一般的な人間としてひとに言えないことのひとつやふたつはあるが、こんなツバっさん5大ミステリーとばかりに挙げ連ねるようなものは思い浮かばない。
スグリの罪については、本人に目線を送ってみたところ「もしかしてチャンピオンだったときのことで俺を恨んでる人がやったのかな……？」と肩を落としていたので、「たぶん違うと思うぜぃ」とフォローしておいた。いくらなんでも手が混みすぎているしオイラを巻き添えにする理由がないからだ。
最後の数値に関しては……一番訳が分からない。確かにオイラはノンケだけどそれを数値化されたところでどうすればいいのか。あとスグリからの好感度ってまさかオイラ宛なんだろうか。
「0%とは潔すぎるねぃ……」
「え？　な、なんか言った？」
「いんやなーんにも。……とりあえず目下、こっから出るためにできることと言えば……」
性癖の暴露。
なんとも胡乱な方法だが、ちょっとばかしの恥ずかしさと引き換えに出られるならば、試す価値はあるだろう。三留に怖いもんなんてなしよ。
さて、オイラの性癖は……。
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[8 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:37:25]

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【安価&ダイス】

▼カキツバタの性的嗜好は？

>>9

>>10

>>11

>>12

>>13

※例:金髪巨乳　など

※上記から1d5を行う

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[9 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 20:38:04]

ショタコン

[10 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 20:40:23]

ロリコン

[11 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 20:40:42]

寝取り趣味

[12 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 20:40:55]

ポケモナー（フェアリー専）

[13 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 20:41:01]

ヤンキー系

[14 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:44:26]

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【安価&ダイス】

▼カキツバタの性的嗜好は？

1:ショタコン

2:ロリコン

3:寝取り趣味

4:ポケモナー（フェアリー専）

5:ヤンキー系

dice1d5=4 (4)

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[15 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 20:46:16]

>>14

タロに呼び捨てにされてノートも貸してもらえない理由発覚

[16 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 20:46:59]

とんでもない奴だ

[17 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:48:02]

カキツバタはポケモナー（フェアリー専）だそうです
ちょっとSS改変してきます
※冒頭でも書きましたがダイス安価は寄り道程度の影響力なのでシナリオはほぼ一本道です

[18 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 20:59:17]

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難儀なことに、オイラはフェアリータイプのポケモンでしか興奮できないたちだ。まあ、ドラゴン使いがフェアリーに弱いのはさもありなん。
出されたお題は「暴露」だから、スグリにカミングアウトすればいいんだろう。この性癖を明かして引かなかった人間はいないが、どうせスグリの好感度は0なんだから構いやしない。
そう思って後輩を振り返ると、彼は既にモニタから離れて棚の探索をしていた。
「おーいスグリ？　なんかあったかい？」
近寄りながら問いかけると、「なんか……これ」と首をかしげながら“それ”を差し出される。
雑誌だ。表紙にラルトス、キルリア、サーナイトのイラストが載ったもの。
――フェアリーポケモン特化のエロ本だ。しかもオイラ秘蔵のやつ！
「おっ……どうしたどうした、これどっから？」
「この棚から……。なんかよく分かんねけど、誰かのもんなのかな？　だったらあんま家探ししない方がいいのかも……」
「いやいや、勝手に閉じ込められてんだしそれは構わねえと思うぜ？　……あとその本はオイラの」
「え！？　なんでここにカキツバタにの本が……っていうかなにこれ、めんこいけど……」
「そりゃフェアリーポケモンのエロ本よ。いいだろ？　ついでに暴露しとくとフェアリーポケモンがオイラの性癖なんだわ。よかったら元チャンピオンにも貸してやるぜ〜」
「え！？　エロ……ポケモンで！？　い……いい！　いらない！」
「そう言わずにさあ。オススメのページはな、」
「あっ……カキツバタ、後ろ！　ドアがある！」
エロ本をペラペラまくっていたオイラは、スグリがそう言って後方を指差すのにつられて振り返る。するとさっきまで一面が白だったはずの壁に、木製の扉が現れていた。
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[19 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:01:25]

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なるほど、性癖を暴露すると出られるというのは本当らしい。しかももし渋ったとしても、部屋を探索した結果エロ本が見つかって自動的に暴露まで持っていかれると。横暴なんだか親切なんだか。
棚の中を覗き込んでみるが、もうなにも入っていない。あったのはオイラのエロ本だけ――ということは、そもそもオイラだけが暴露することを想定してたんだろうか。狙い打ちか？
「カキツバタ、なにしてる？　早く出るべ」
考え込んでいると、スグリはさっさと扉へ歩いていってしまう。オイラはそのタンクトップの襟に指を引っ掛けて引き留めた。
「おおっと、待ちな元チャンピオン」
「……なに？」
「オイラだけ性癖暴露してはい終わりってのは、ちょっち筋が通らねえよな？」
ニヤニヤしながら見下ろせば、半目が胡散臭そうに見上げてくる。
「通るべ。扉開いたし」
「システム的なことじゃなくてよー。お互いの信頼関係のためにも、ここはフェアにいこうや」
といいつつ、別に自分だけ恥ずかしい思いをしたのが許せないわけじゃない。単なる好奇心と悪戯心だ。
スグリは少々不服そうな顔をしたものの、「……確かに」と持ち前の真面目さを発揮して承諾する。さて、コイツからはどんな恥ずかしい性癖が飛び出してくるのやら。わくわくしながら待っていると、彼は顔を赤くし目を逸らしながら呟いた。
「……スパイ」
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[20 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:03:49]

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……スパイ？
思ってもない返答にオイラは目を丸くする。スパイってーと、全身ラバースーツのクールな女スパイが敵の手に落ちてしまい……みたいなやつ？　オイラ自身そういう趣味がないのでよく知らねえけど。
「意外とマニアックだな……？」
「あと……秘密組織とか、変形ロボとか、でっかい虫とか、魔剣とか、特別な一族とか……」
恥ずかしそうに続けられた言葉を聞いて、オイラはようやく察した。コイツ問われてることを理解してねえ！
そもそも「性癖」という言葉は性的嗜好を表す言葉ではない。が、誤用にしろ正用にしろこの質問への答えとしては不適当だ。彼が答えているのはつまり、
「ただの好きなもんかーい！」
「えっ、なに……悪い？」
かっこいいべ……とスグリは照れながら憮然とする。いや、分かる。ツバっさんも男の子なのでそのへんのロマンは分かる。けど今はそういう話をしていない。
が、それを説明し出すと面倒な気がしたので、スグリの頭をぽんと叩くに留めておいた。
「うぅー、なに？　バカにされた気する……！」
「おっ、せーかい。よーしとっとと外に出ようぜぃ」
スグリに先んじて扉に手をかけ、開く。するとその向こうには――、
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[21 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:07:33]

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――まったく同じ部屋が広がっていた。
「ありゃ。そーくる」
ベッド、棚、モニタの他は、今開けている扉しか存在しない。二つの部屋がくっついている状態であり、無事脱出できたとは言えそうになかった。
後ろから覗き込んできたスグリも「あれ」と声をあげる。
「カキツバタ、これ同じ部屋だべ。これじゃ帰れね……」
「あー、まあ嫌な予感はしてたんだよなあ。ほら覚えてっか、あっちのモニタに『第一層』って書かれてたの」
「……次は第二層ってこと？」
「じゃないかねぃ。まあこっちのモニタ見りゃ分かるか」
部屋に踏み入り、モニタへ歩を進めた。先ほどの部屋よりさらに気温が下がっているようで、体がぶるりと震える。
スグリとともにモニタを覗き込むと、そこには先ほどの画面と似ているようでいて決定的に違う文章が映し出されていた。
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[22 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:13:25]

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【ダイス】

▼パラメータ変動

カキツバタのノンケ度:変動なし

スグリからの好感度: - dice1d10=6 (6)

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[23 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:15:11]

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💻第二層　ここは　動画を見ないと　出られない部屋

▼カキツバタ　には　5つの秘密　がある
　カキツバタはポケモン（フェアリー）が性癖
　カキツバタは？？？
　カキツバタは？？？
　カキツバタは？？？
　カキツバタの？？？

▼スグリ　には　1つの罪　がある
　スグリは？？？

▼カキスグパラメータ
カキツバタのノンケ度：100％
スグリからの好感度　：-6%
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[24 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:16:28]

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やっぱり第二層だ、というのはともかくとして……秘密って性癖のことかい。
モニタの文章を見て、オイラはがっくりきてしまった。自分にどんな秘密があるんだろうと期待してたわけではないが、もうちょっとなんかあるだろ、という気分になる。まあ大それた秘密が明かされても困るけど。
そこから視線を下ろしていき――次の変化に目を止める。
「……好感度マイナスになってるでやんすけど」
スグリからの好感度が6減っている。性癖暴露したからか？　やっぱりこれオイラ宛じゃねえか。
「あ、ホントだ……。これって俺がカキツバタをどう思うかってこと？」
「たぶんな」
「えっと……別に嫌いになったわけじゃねから。びっくりしただけで……」
「ドン引きした顔でフォロー入れるのやめてもらっていいかねぃ」
逆にいたたまれないっての。
だいたいスグリも男ならフェアリーのエロさを理解してほしいもんだ。いや男である前にお子ちゃまだから致し方なしか。
「聞こえてんだけど？」
「おっと声に出てたか、ツバっさん正直もんだから……。さーて、次のお題はっと」
話題を逸らしがてら画面の上部に視線を戻す。『動画を見ないと出られない部屋』ときたもんだ。
動画とはなんぞや、という疑問は棚を探索することで解消することが出来た。というか探索するまでもなく、一目見れば分かるくらい映像記録媒体のパッケージがずらずら並んでいたのだ。
その内容の多様なこと。映画、バラエティ、アニメ、ポケモン愛玩動画、ニュース、スポーツ、教育、果てはAVまで、様々な種類の動画がある。再生機も置いてあり、どうやらモニタと繋げて使うようだ。
この中から好きなものを選んで視聴するだけで出られるなら、ずいぶんと簡単なお題だ。オイラはあまりよく見ず適当にひとつ手に取った。
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[25 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:17:16]

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【安価】

▼選んだのはどんな動画？

>>26

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[26 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 21:17:42]

ニュース

[27 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:21:12]

見てくれてる人いると嬉しいね
動画の内容ニュースで書いてくるよ

[28 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 21:26:57]

これ面白いな
わりと穏やかに喋ってるだけなのにどうやって死に繋がっていくのか気になって夜しか眠れない

[29 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:38:06]

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「よーし見るぞーい。せっかくなら菓子と飲み物でも用意してくれりゃあいいのにな」
映像記録媒体と再生機持ってモニタへ向かう。セッティングを終えたところで、スグリが棚から駆け寄ってきた。
「なあカキツバタ、俺、気になるやつあった」
「お、変えるか？　いいぜー」
「あ……もう準備さできてるなら、いい。俺の、内容よく分かんねえし……」
カキツバタが選んだのはどんなの？　と問われて、初めてパッケージを見てみる。
絵作りはいたってシンプルで、日付と女性、それから『朝のニュース』の文字。ニュース番組が収録されているらしい。妙な動画でなかったのはいいが――ふと違和感を覚えた。
よくよく見ると、書かれている日付が、自分が”今日”だと想定している日付より二日先になっている。つまり明後日のニュースだ。
「……未来のニュース？」
「えっ、なに？　わやじゃ、本当だ……」
奇妙な話だが、それをいったらこの状況がそもそも奇妙だから、そういうものとして受け入れるしかない。なんにせよ見なければ始まらないので、「再生すんぞー」と機器のボタンを押した。
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[30 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 21:40:26]

>>28

ありがとう！

ここからどう死に繋がるか分かるのはもーちょっと先の展開になるのでまったり読んで頂ければ

[31 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 21:47:17]

すごい良いスレ

[32 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 21:56:29]

wktk

[33 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 22:23:00]

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ぱっと映った画面にはニュースキャスターが一人。にこにこしながら「さて、お次のニュースは！」と明るい口調で言う。どうやらニュース一本分ではなく、放送分の切り抜きらしい。
「あの、人気メイクアップアーティストでありベイクタウンジムリーダーのリップさんと、人気動画配信　者でありハッコウシティジムリーダーのナンジャモさんがまさかのコラボ！　実は以前にもお二人はコラボしたことがあったそうなのですが――」
画面にはパルデアのジムリーダーであるリップ、ナンジャモが、なにやらエクササイズをしている様子が映し出されている。リップは自信に満ちた笑みを浮かべ、ナンジャモは目がぐるぐると泳いで今にも倒れそうだ。
オイラはあまり芸能人には造詣が深くないが、さすがにこの二人は知っている。優秀なトレーナーでもあるし、そもそもこの学園に特別講師として招かれたのは記憶に新しい。
……などと思いながら見ていると、まさにその特別講師として招かれた際にした会話から今回のコラボが決まった、と学園の遠景付きで語られていた。
「――カキツバタ！　学校さ映った！」
「うおっ、食いつくねぃ」
スグリが画面を指差し、嬉しそうに見つめる。ニュースなんてお子ちゃまにはつまらないかと思ったが、この喜びようなら上々だ。
リップとナンジャモのニュースが終わると、ふと、キャスターが表情をなくす。
「……続いてのニュースです。イッシュ地方、ブルーベリー学園の、」
――またこの学園？
驚いて、キャスターの言葉の続きを待つ。しかし切り抜きであるためか、そこで動画はブツリと途切れてしまった。あとは黒い画面が続くだけ。
隣りのスグリが首をかしげてオイラを見上げる。
「今、またブルーベリーの話さしてた？」
「うーん、してたっぽいなあ」
「……なんか表情暗くなかった？」
「……さあ？　まさかついに、オイラがあらゆる生徒のノートをくしゃくしゃにした件がバレちまったか……！？」
「なにやってんだべ！　それ、ねーちゃんすっげ怒ってたからな！」
宥めんの大変だった、とスグリが愚痴る。その件はお手数かけましたっと。
どうやら例の不穏なニュースからは気が反れたらしい。これ以上確認できない事柄を気にしていてもしょうがないので、オイラも思考の片隅に置くに留めておいた。
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[34 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/16(土) 22:26:07]

そろそろピカチュウとのねむりの約束を守らないといけないので今日はここまでです
お付き合いいただきありがとうございました
また明日再開します

[35 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 22:28:09]

気になるところで終わる！おやすみ！

[36 二次元好きの匿名さん 24/03/16(土) 23:00:38]

面白い
続き楽しみにしてます

[37 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 05:04:12]

安易な死ネタは死を軽んじてるだけだからキャラヘイトっぽくて好きになれないけどこんな感じで凝った創作に挟まれる死ネタはきっと好物なんだ…支援保守

[38 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:02:04]

>>18

スグリのセリフ訂正

誤：「ポケモンで！？」

正：「ポケモンっこで！？」

痛恨のミス！

[39 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:04:30]

昨日は読んでくれたり感想くれたりありがとうございます
というわけでぼちぼち再開します

[40 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:08:37]

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ふと見れば、壁に扉が出現している。きちんとお題はクリアできたらしい。そんじゃ外へ出るか、と足を踏み出そうとして、止めた。
「そーいや、お前が言ってた気になるやつってなぁどんなだ？」
スグリがずっと映像記録媒体のパッケージを抱えているので、視線をやりながら尋ねてみる。彼は「あ、これ、棚の引き出しにいっこだけあって……」とおずおず差し出した。
それは一見して他とは違った。というのも、表面が真っ白なのだ。図柄どころかタイトルもなく、印刷前の空箱に見える。
中を開けてみると、やはり印刷のないディスクにサインペンで「本心」という文字が手書きされていた。例えばホームビデオのような、個人的な記録のように思えた。
「ふうん。ま、二本目三本目見たらいけねえってこたあないだろうし、見ていいんじゃねえの。そんならオイラも面白そうなの見繕ってくるかなー」
スグリに再生機の使い方だけ伝授して、もう一度棚へ向かう。さっきは部屋から出るための手段として適当に選んだが、よく見ると面白そうなのもあるもんだ。オイラ動画って好きなんだ、自分が何もしなくても始まって終わるから。
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[41 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:10:02]

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その後、選び取った動画を携えて、モニタを見つめるスグリのもとへ向かう。うーん掘り出し物を見つけてしまった。
「おーい元チャンピオン、いいのがあったぜぃ」
「え、な……なに？」
「女スパイ堕つ！　〜催眠強制絶◯電◯責め〜」
「な、なに言ってんだべ！？　気でも狂ったか！？」
「だからオマエの好きなスパイものだって」
「はあ？　だってそれA……あ！　さっきの質問ってそういう意味！？」
「やっと気づいたか。大人の階段登ったねぃ……」
「最悪だ！　バカバカバカ！　スパイはかっこいいもんなの！　……こっち持って来んな！」
わあわあ騒ぐスグリが面白くてたまらない。この逸材が以前は姉貴の後ろに隠れてたなんてもったいなさすぎるだろ。
「……んで、元チャンピオンはなに見てんだい」
十分に意義を果たしてくれた女スパイはさておいて、オイラはスグリが見ていた動画へ目をやった。本心と題されたそれがいったいどんな動画なのか、気にならないでもなかったのだ。

――そして、息を呑んだ。
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[42 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:14:08]

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『……でもよ！　ポケモン戦わせんのだけは誰よりも楽しそうだったんだ』
それはブルーベリー学園のエントランス。受付の前で話すのはふたりの人間。言葉を聞いているのはオイラもよく知る留学生で、話しているのはもっとよく知っている――オイラ本人だった。
『誰かがあいつの目、覚ましてやらないとよくねえ』
この内容は覚えがある。スグリがチャンピオンとして強権を振るっていた頃、それを止めるため助力を願ったキョーダイに、チャンピオン戦の前にした会話だ。
『……キョーダイまかせで悪いな』
その言葉を最後に動画は終わる。真っ黒になった画面を見つめていると、スグリが気まずそうに言った。
「……ご、ごめん。悪いとは思ったんだけど、見ちまった。俺と戦う前にカキツバタが言ってたこと……」
「あー……。……いやいやこれ誰が撮ってたんだ？　気づかなかったぞ……？」
「こんな話……してたんだな。カキツバタはあのときいろんなこと……」
「なんかイイ感じのBGMまでつけて編集してあんだけどよ……？」
ツッコミどころがいくつかあるせいでスグリの話に乗り切れない。強めに「聞・い・て」と言われて髪の毛を萎れさせる。
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[43 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:14:25]

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一方で、スグリも気後れしたように視線を彷徨わせた。
「……カキツバタって……俺のこと嫌いだと思ってた」
「え。なん……あー、からかうから？」
「それは……ん……違う。いつもは、うざいけど悪意みたいのは感じねっから、よく分かんねけどカキツバタ式のコミュニケーションなのかなって。俺のこと嫌いだけど、大人だからそれなりに接してくれてんのかなって……」
「じゃあなんで嫌ってるって？」
「……確信があったわけでもねんだ。俺、休学中にいろんなこと頭から離れなくて……そんとき、チャンピオン戦で負けたときにカキツバタに言われたことも、思い出してて。……あんときはそれどころでなくて全然聞いてなかったけど、リーグ部で仲良くやろうって言ってくれたの、優しいなって思った。……でも、その直前に、怖い声で、元チャンピオンって言ってたのも思いだして……なんか分かんなくなった」
そう言って、うぅ、と頭を振る。
「……俺、カキツバタが考えてること、よく分かんね……。だから、勘違いしないように、好かれてないんだって思うようにしてた……。そっちのが自然だから……。それでも普通に……ちょっとうざいけど、話してくれんならいいやって」
でも、とスグリは困ったような顔でオイラを見上げた。
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[44 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:14:54]

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「これ見たら、もしかして違うのかもって思った。…………けどやっぱ分かんね」
「うーん惜しい」
なんで一歩進んで更地に返ったんだこいつ。
とはいえ、それについては大いに自分の言動に原因があるのも分かっている。あのときは自分でさえうまく立ち回れたとは思っていない。
そもそも普段からして、ひとから「何考えてるか全然分かんない」との言葉を頂戴しがちなオイラである。この態度と話し方はいかにも裏があるように見えるらしく、普通に正直な言葉を述べても真っすぐ受け取ってもらえないことは多々あった。こう見えて嘘は得意じゃないんだけどな、頭使うの面倒だから。
だけど本心を“隠す”のは得意だ。……そのはずなのに、ずばり「本心」と題して赤裸々な想いを動画化されるんだからお手上げだ。もともと隠す気のない本心ではあるけれど。
「じゃあ教えてやるけど、オイラはスグリのこと嫌いじゃないぜ」
そんな誤解は心外なのではっきり言い切ってやると、スグリはびくりと肩を震わせた。そして不安げに見上げてくる様子は、髪が下りているのも相まって、懐かしき在りし日の彼の姿を思い起こさせた。
「……本当？」
「おう。今はむしろ気に入ってる」
「え……」
「だからわざわざ好きそうなAV持ってきてやったんだろ？」
女スパイをチラつかせると、スグリは一転してむっとした表情になる。あ、こういう振る舞いで信憑性を失っていくんだろうな。ツバっさん理解したわ。
本当だよ、と真面目な声色を意識して念押しすれば、スグリは肩の力を抜いて「よかった」と破顔した。
━━━━━━━━━━━━━

[45 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:15:14]

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【ダイス】

▼パラメータ変動

カキツバタのノンケ度:変動なし

スグリからの好感度: 20＋dice1d20=18 (18)

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[46 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:17:52]

おっなかなかいい数字が出た
カキツバタの本心はかなりスグリに響いたようです

このへんのカキツバタとスグリの解釈は人によってかなり変わってくるでしょうね
スレ主は散々悩んで今のところこんなかんじの結論
難しいふたりです

[47 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:27:03]

━━━━━━━━━━━━━
本音を伝えたところでふとモニタを見ると、画面が変わっていることに気付いた。動画が消えており、はじめに表示されていた文面に戻っている。
ただし、内容は少し変わっていた。

💻第二層　ここは　動画を見ないと　出られない部屋

▼カキツバタ　には　5つの秘密　がある
カキツバタはポケモン（フェアリー）が性癖
カキツバタはスグリが嫌いではない
カキツバタは？？？
カキツバタは？？？
カキツバタの？？？

▼スグリ　には　1つの罪　がある
　スグリは？？？

▼カキスグパラメータ
カキツバタのノンケ度：100％
スグリからの好感度　：32%
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[48 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:27:20]

━━━━━━━━━━━━━
ふたりで文面を読みあってから、視線を合わせる。
「変わったのは秘密がいっこ開いたのと、スグリからの好感度か」
「わやじゃ……。これ、誰かが俺たちのこと見て書いてんのかな？」
「だろうねぃ。どーやってんのか知らねえけど。エスパータイプなら出来るんかね？」
うーん、と考え込むと、スグリも同じように思案気にする。
「俺って本当に32％もカキツバタのこと好きになったの？」
「疑うべきはそこかい。いいじゃねえのオイラのこと好きになったって……。それいったらオイラも明かされる秘密がしょっぱくてがっかりなんだよなあ。これ秘密かい？」
「このあとものすごい秘密さ来る……のかも」
「そいつぁ楽しみだ。……じゃ、次に行くとしますかねぃ」
とにかく進まなければ始まらない。スグリを促し、次の階層への扉をくぐる。
――第三層だ。
━━━━━━━━━━━━━

[49 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:33:49]

━━━━━━━━━━━━━
第三層となる部屋も、見た目はこれまでと変わりない。ただし先ほどと同じく、気温がさらに下がったように思える。いつものジャージがあればいいが、いよいよ震えそうになってきた。
ベッド、モニタ、棚のうち、まずはモニタを確認する。第二層で見た文面から変化しているのは、脱出条件だけだ。

💻第三層　ここは　好きなところを三つずつ言い合わないと　出られない部屋

「好きなところ？　そいつはまた……」
オイラは腕を組んで首をかしげた。簡単といえば簡単なお題だが、どういう意図でそれを指定しているのか分からないという点で不気味さがある。それはこれまで出されたお題も同様だ。
謎のパラメータも加味して考えると、もしやこの状況を作り出した犯人は、オイラたちを仲良くさせたいのだろうか。それにしては回りくどく、妙にイビツな匂いも感じるが。
性癖暴露させて本心動画見させて好きなとこ言わせて、次はどんな要求をされるのか。正直なところ読めないが、ろくなもんじゃない気がする。
などと考えていると、スグリがオイラの服の裾を引っ張った。
「な、これ、俺がカキツバタの好きなとこさ三つ言って、カキツバタが俺の好きなとこ三つ言えばいいってこと？」
「おう、そうだろうねぃ」
「じゃあとっととやるべ」
あら男前！
まあ確かに、意図を考えたところでやらなければ進めないのだから詮無きことだ。仲良くなるに越したことはないし。
「んじゃ、オイラにとってスグリの好きなとこは……」
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[50 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 10:35:48]

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【安価】

▼カキツバタ→スグリの好きなところは？（みっつ）

>>51

>>52

>>53

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たぶん時間帯的にもあまり人いないでしょうからちょっとゆっくりしてきますね

[51 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 10:41:13]

かわいい

[52 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 10:44:17]

バトルしてるとき

[53 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 11:09:18]

眼

[54 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 11:36:56]

カキツバタ→スグリの好きなところ

・可愛い

・バトルしてるとき

・眼

ですね！　回答ありがとうございます書いてきます

しばらくかかるしせっかくなのでその時間にスグリ側も安価しておきましょう

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【安価】

▼スグリ→カキツバタの好きなところは？（みっつ）

>>55

>>56

>>57

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[55 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 11:42:34]

ねーちゃんみたいにすぐキレない

[56 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 11:42:56]

手

[57 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 11:43:27]

笑顔

[58 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 11:54:50]

いいね

[59 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 13:30:28]

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こういうのはじっくり考える必要はない。思いついた事をぽんと言えばいいだけ。結局それが心からの回答だったりするもんだ。知らねーけど。
「うーん、可愛いとこ？」
「え」
とりあえず一つあげてみると、途端にスグリから不満らしき声が上がる。おいおい褒めてやってるんだろー？
「可愛いだろお前さん。なんたってオイラがやることに一番イイ反応するからな！　素直でからかいがいのある可愛い後輩よ」
「……俺、最近分かったんだけど……俺が怒るからカキツバタは喜ぶんだべ？　だから決めた、もし次なんかされても、なーんも反応しね」
「おっ、塩！　塩対応来るか～！？」
「…………」
「はい塩～！　よ～し、んじゃツバっさんはスグリくんがどこまで無関心貫けるか実験しま～す！」
「…………」
「スグリの可愛いとこ全部あげてくゲ～～～ム！　いいえーい！　えーっとまずはちっさくて可愛い！　走り方どんくさくて可愛い！　ファッションイキってて可愛い！　ボール投げるとき体引っ張られてて可愛い！　部室に置いといたお菓子ひっそりめちゃくちゃ食ってて可愛い！　しかもお気に入りのやつはこっそりバッグに詰め込んでひとりじめしてて可愛い！」
「やめるべ！！　なっ……なんで知ってんだそれ！？　だ、誰も見てねえと思ったのに……！」
「見てるよ～ん。リーグ部に巣食う怪異を甘く見んなよ？」
「そんなの初めて聞いたけど……。……も、もういい、もうそれ……やだ！」
「はいはい、そういうとこも可愛い。じゃあこれでおしまいなー」
オイラがにこにこ顔で満足すると、スグリはげんなりした顔で「うざ……」と肩を落とす。スグリの「うざ」、頂きました。
一つめだっていうのにずいぶん楽しくて、気分がいい。次は二つめだ。
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[60 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 14:17:14]

━━━━━━━━━━━━━
「次はー、……うん、バトルしてるとき、だな」
「……バトル？」
スグリは不思議そうに目を丸くして首をかしげる。そんなに意外そうにするこたないだろ、とオイラは笑った。
「オイラはさ、楽しくバトルできるヤツが好きなんだ。勝ったら嬉しい、負けても楽しい。そんで自分だけじゃなく、相手すら勝とうが負けようが楽しませるようなヤツなら最高だ。オイラはそういうふうにポケモンバトルがしてーのよ」
「……んだな。俺も……そう思う」
「そんな中でオイラは、誰より楽しそうにバトルするヤツを見つけちまってさ。ポケモンによく声かけして、たとえ負けたってはしゃいで、バトルの全部を楽しんでるヤツ。……いっつも人の後ろに隠れてたからバトルの機会自体は少なかったんだけど、そいつがやってたらつい……目で追ってたな」
「へえー。誰？　教えて」
この話の流れで分かんねえのかよ。逆に器用だな。つい笑ってから、特性：あまのじゃくが顔を覗かせる。
「誰だろうなー？　このバトル特化のブルーベリー学園の、ましてやリーグ部の中で、誰よりもいっちばんオイラにとって魅力的に見えたやつ。……ちょっとばかし前は荒れちまってたんだけどな、最近は戻ってきて、またオイラの好きなとこ見せてくれるようになったんだ」
「そうなんだ……よかったな」
で、誰？　と首をかしげるスグリに、面白いを通り越して呆れてきた。おつむは賢いだろうにどうしてこう鈍いんだこのお子さまは。
ここまで言って白状するのはさしものオイラも少しばかり照れるので、「ヒント！　今はスグリの好きなとこを語る時間です」とほとんど答えのようなヒントを告げる。やっとスグリが「え？　あ、もしかして」と疑いだしたところで、「んじゃ次はみっつめ～」と話題を方向転換させた。
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[61 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 14:52:36]

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「最後はそうだな……眼だな」
「眼？　なんでまた……」
不思議そうに見開かれた目を、オイラは背をかがめて覗き込んだ。金色の虹彩に縦長の瞳孔が、どこか爬虫類じみて不思議な色気がある。
「自分じゃ気づかないかもしれねえけど、お前さんの目って結構感情出るんだよねぃ。いつもは眠そーに垂れてんだけど、バトルのときはキリっと上がんだ。そんで光が吸い込まれるみてえに深みが増して、凄味が出る」
「そ、そう……なんだ？」
「あれ見るとよ、ああコイツ本気だなって、楽しくなってきちまうんだよなー。食らいつくようなバッチバチのバトルが出来るって、滾るんだ」
言いながら目を細めて笑うと、「あ、」とスグリが声を上げる。
「それ、ちょっと分かる……かも」
「自覚あるかい？」
「いや、そうじゃね。……カキツバタの目も、そういう感じさ、する。……いっつもにこにこしてんのに、バトルのときだけ獰猛で……ドラゴンが獲物さ食おうとしてるみたいな」
スグリはじいっとオイラの目を見つめ、そして無意識なのか自身の腰に手をやった。それは何かを掴もうとして空振りする。
「あ。そうだ、今はポケモンっこいねんだった」
「かーっ、うずいてやがるねぃ。目が合ったらバトルはポケモントレーナーの本能だからなあ。早いとこ外に出たいもんよ」
つーわけで。とオイラは仕切り直す。
「オイラはお題達成！　元チャンピオンもオイラの好きなとこの十個や二十個、さくっと頼むぜぃ」
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[62 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 14:53:34]

スグリに限らずですけどみんなボールってどこに持ってるんですかね
サトシのイメージで腰につけてるような仕草をさせましたが……

[63 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 16:18:32]

>>62

「ポケット」モンスターだしクラベル校長みたいに分かりやすく腰に着けてるトレーナー以外は大体ポケットか上着の内側にボール格納専用の内ポケットが付いてそう

鞄を持っている人（例：アオキ）は普通に鞄から取り出すんじゃないかな

でも主さんくらい文章力のある人なら読者が勝手に脳内でいい感じに補正かけて納得してくれるだろうからイメージ先行でいいと思うよ。読んでて光景がありありと想像できるもの

[64 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 17:23:23]

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「カキツバタの好きなとこ……」
スグリは眉をひそめて床を睨む。おいおいそんな険しい顔するお題じゃないだろぃ。
しばらくして、スグリは「うーん」と呻きながら顔をあげた。
「……ねーちゃんみたいにすぐキレない、とこ」
意外なところがきた。というかゼイユと比較ってどうなんだ。
「ゼイユレベルの短気は学園中探してもそうはいないがねぃ……」
「それについてはそうだけどな。……なんていうか、ねーちゃんもカキツバタも、俺ん中では大人、なんだ。年上で、でっかくて……。でも同じ大人なのに、ねーちゃんってなんでもすぐ怒るけど、カキツバタはほとんど怒んね……。怒っても、俺がチャンピオンだったときみたいな、本当にダメなときくらい。……だから、誰に何言われても怒んねえで笑ってるの、なんか…………むかつく」
「あれ？　これオイラの好きなとこ言う回じゃなかったっけ……？」
「なにしてもダメージ無効ってかんじでむかつく……けど、」
スグリは少し言い淀んでから、続けた。
「大人の余裕ってかんじがして、ちょっといいと思ってる……」
「……ほーん」
言葉は少し濁しがちだが、滅多にないスグリからの好意に、オイラは少したじろいでしまった。そういうお題だから当然とはいえ、スグリからこんな言葉が聞けるとは。
オイラは自分で自分のことを大人だなんて思っちゃいない。モラトリアム続行中のガキもガキだ。
けれど小さなスグリからすればでっかい大人に見えるというのは、不思議な感覚であり、こそばゆくもあった。
なんとも言えず返す言葉に迷っていると、先にスグリが耐えきれなくなったようで、話題を打ち切った。
「こ、これいっこめな。次！」
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[65 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 18:31:12]

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「次は……手！」
「手？」
手ってこれかい？　と両手を目の前にかざしてやると、うん、とうなずく。
「カキツバタって、ポケモンウォッシュすんの好きだべ？」
「あー、まあな。タロほどじゃねえけど。特にブリジュラスなんかが磨いてやると喜ぶんだよなー」
可愛い手持ちのことを思い浮かべながら言うと、「んだな」とスグリは同意した。
「カキツバタって、ノートくしゃくしゃにするし部室さゴミだらけにするし書類ぐちゃぐちゃだしわざマシンは埃被ってたし、物の扱いが信じらんねくらい悪いよな。そういうとこ直した方がいいよ」
「なあ？　これオイラの好きなとこ言う回だったよな？」
「でも、たまにカキツバタがウォッシュしてるとこ見ると……手つきがすごく丁寧で、びっくりする。ポケモンっこを大事に大事にしてるのが、伝わってきて……」
そう言うスグリの目は、その記憶を辿るかのように宙へ投げられている。いったいいつの出来事を思い返しているのかは分からないが、きっといつでも同じように触れ合っていたと思う。ポケモンはみんな可愛い。
「それから、」とスグリは言い募る。「人に対しても。……リーグ部で落ち込んでる人さいると、頭ぽんぽんしたりすんべ？　あと、ポーラエリアの雪に慣れなくて歩けなくなっちまった人、手ぇ引いて誘導したりとか。……ああいうときの手つき、ほんとにカキツバタなのかってくらい、優しんだ」
そう告げる声色は、穏やかであり淡々としてもいる。彼にとっては単なる事実を告げているからだろう。それを聞かされる側としては、意外と見られていたことも、そんなふうに思われていたことも、面映ゆくなるばかりだったが。
「カキツバタの手、でっかくて筋張ってて、ドラゴン扱ってるから傷もあるけど……そういうとき優しくなんのが……えっと、好きだな」
最後だけ照れを滲ませながら言って、スグリは二つめの話題を結んだ。
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[66 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 19:11:50]

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いざ、次で最後だ。栄えあるラストにスグリはオイラの好きなところとしてどんな点をあげるのか。
彼はうーんと悩んだあと、訝し気に告げた。
「笑顔……？」
「なんで疑問形なんですかねぃ」
といいつつ、オイラとしても疑問だった。なにしろ人からは胡散臭くて本心が読めないと大好評の笑顔だ。こういうときにスグリが話題としてあげるのはなかなか意外である。
スグリは少し不安げに顔を曇らせ、おずおずと切り出す。
「あの……今から言うこと、気ぃ悪くしねえでほしんだけど……」
「おうよ！　もう今更だ、なんでも言ってみな」
彼は慎重に「ごめんな」と謝ってから話し出した。
「えっと……カキツバタって、真顔、ちょっと怖い……。服装も、俺ん地元の怖いにーちゃんねーちゃんに似てるし……。だからその、普通にしてると……怖い」
「あー……。オイラあんま目つきよくねえからなあ」
「俺、入学してリーグ部さ来て最初に見たの、机に突っ伏してぼーっとしてるカキツバタだった。ねーちゃん越しに見て……もしかして怖い人かもって思った」
でも、とふるふる首を振る。
「ねーちゃんが声かけて、こっちさ見たら……。にぱって笑顔になったんだ。そしたら、それまでの怖かった雰囲気、いっぺんになくなっちまって。……それでも俺はカキツバタとまともに会話は出来ねかったけど、でも、少しだけ、気ぃ楽になったんだ」
――あのときのことはよく覚えていた。大きな姉の後ろから、恐る恐る顔を覗かせた小さな弟。あんまりにも弱々しくて、吹いたら掻き消えてしまいそうだったから、安心させようと笑ったのだ。
そうしたら弟は目を丸くしたあと、逃げるように姉の後ろに引っ込んでしまった。だから（ありゃー失敗したなあ）なんて反省した……のに、
「……そっか。オイラの笑顔もやるもんだねぃ」
「だからまあ……ちょっとむかつくけど……好き」
スグリが最後にそう告げたとき、正面の壁に扉が浮かび上がった。
第三層のお題、クリアだ。
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[67 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 19:30:31]

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これで第三層から脱出可能になった。三という数字はなんとなくキリが良いけれど、果たしてこれは外へ繋がっているのだろうか。それとも第四層へ続いてしまうのだろうか。
行けば分かる、と足を踏み出そうとして、オイラはふと動きを止めた。
「そういや、棚とベッド見てねえな」
お題が単純だったおかげで、他の場所の探索を忘れていた。スグリも「あ」と目を丸くする。
「んだな。……それにカキツバタの秘密が開いてないし、パラメータも変わってない。たぶん……まだやらなきゃいけないことさあんだな」
スグリの言うとおり、モニタの文章にはなにも変化が見られなかった。扉は現れたとはいえ、まだこの部屋には探るべき謎があるらしい。
探索箇所が二か所ということもあり、手分けして調べることになった。スグリはベッドでオイラは棚。これまでの部屋から言って、こちらが本命だろう。
棚は一見したところ、外から見える部分にはなにもない。ひとつだけ扉があるので開けてみると――ビンゴだ。
紫色の布が入っている。手に取って広げてみて驚いた。これはオイラがいつも腰に巻いているマントだ。
「……つまり……どういうこった？」
今までは性癖に対してエロ本、視聴に対して動画と、出されたお題に関連するものばかりだった。けれど、好きなものに対して、マント？
「まー寒いから助かるけど……」
しかも経験上、オイラの秘密にも関係がありそうなもんだけど……などと裏返したりためつすがめつしていると、ベッドの探索を終えたらしいスグリがやってきた。
「カキツバタ、ベッドはなんもなかった。……それは？」
「んー？　何故かオイラのマントがあった」
ほらよ、とスグリの眼前に広げてやると、「あ！」と驚いた声が上がった。思わぬ反応に様子を伺うと、彼は目を丸くしてじっとマントを見つめている。
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[68 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 19:46:52]

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「おーい、元チャンピオン？　これがどうかしたかい？」
「それ……そう。言おうかと思ってた……」
「おーいオイラが話についていけてないぜ」
「……好きなとこ。俺、実は……、」
スグリの金色の目は、不思議とキラキラ輝いてみえた。
「実はそのマント、ちょっと好き……」
――そうだったのか。
今までそんな様子はなかっただけに意外だ。なにが琴線に触れたんだろうか。
それを質問するよりも前に、彼自ら語ってくれた。
「……マントって……なんか、かっこいいべ？　風吹いて、ばさーってして……。だからカキツバタも、マントさ羽織ったらかっこいいのにって、思ってた……」
「お？　かっこいいかい？」
「マントがな」
「切れ味いいねぃ」
スグリはマントをまじまじ見つめ、下部の模様に目を止める。紫地に黄色のそれ。
「これ……ドラゴンの模様？」
「そーそー。これ、ドラゴン使いの一族に伝わるもんだから」
「……なんでそんなのカキツバタが持ってんだ？」
「そりゃオイラその一族だし」
これはあまり周囲には言っておらず、知る人は少ない。けれど是が非でも隠したいというわけではないので、話の流れで告げてみる。
――すると反応は顕著だった。
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[69 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:02:17]

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「えっ……え！？　カキツバタって……えっ、ドラゴン使いの一族なの！？」
ぱっと目が見開かれ、身を乗り出すほど食いついてくる。頬が紅潮し、声変わり前の高い声が余計に上擦った。思い返せば第一層で特別な一族が好きとか言っていた気がするから、竜の一族は効果抜群だったらしい。
わやー……という顔をしたスグリは、オイラを見上げて呟く。
「わ……わやかっこいい……」
かっこいい、か。さっきの流れを思い出して、笑いながら先回りしてやる。
「かっこいいだろぃ？　……ドラゴン使いの一族が！」
「いやカキツバタが」
「へっへっへー、はい塩…………はい？」
なんか予想外の言葉が聞こえたような。思わず真顔になって見下ろすと、スグリも視線を落とし、右手を口元にやって、左手で太ももをぽんぽんと叩いた。
「……ドラゴン使いの一族がかっこいいのはそうなんだけど……ちゃんと、ドラゴン使いの一族……っぽくできてるのが、すごいなって……」
「……ちゃんと、それっぽいかい？　三留でやんすけど……」
「ん……ドラゴンって、育てんの大変だ。俺もカミツオロチやカイリューさいるから、ドラゴンのこといっぱい勉強したんだけど……。竜は高潔だし、誇り高くて、正義感強いのが多いから、たとえ一匹だって技量のないトレーナーには難しんだ。それをしっかり育て上げて、六匹揃えるなんて、誰にでもできることじゃね」
――だから、カキツバタはちゃんとドラゴン使いの一族しててかっこいい。
そう告げたスグリは顔を上げ、オイラの表情を見た瞬間ビクッと後ずさった。
「えっ……な、なに……怒った？　俺、なんか間違えた……？」
「……いんや。怒ってねーよ？　ただ、このツバっさんを真顔にするたあ、やるなあと……」
「え……だ、だから真顔怖い……。やっぱカキツバタ、なに考えてんのか分かんね……」
やべ。スグリの好感度が下がった音がした気がする。
――などと考えていると、どこからか本当に「ピッ」と電子音がした。出所はモニタだ。よく見れば文面が変化している。
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[70 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:02:52]

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【ダイス】

▼パラメータ変動

カキツバタのノンケ度:変動なし

スグリからの好感度: 20＋dice1d20=4 (4)

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[71 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:03:47]

わあ今度は出目低い
やばい

[72 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:05:10]

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💻第三層　ここは　好きなところを三つずつ言い合わないと　出られない部屋

▼カキツバタ　には　5つの秘密　がある
カキツバタはポケモン（フェアリー）が性癖
カキツバタはスグリが嫌いではない
カキツバタはドラゴン使いの一族
カキツバタは？？？
カキツバタの？？？

▼スグリ　には　1つの罪　がある
　スグリは？？？

▼カキスグパラメータ
カキツバタのノンケ度：100％
スグリからの好感度　：56%
━━━━━━━━━━━━━

[73 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:06:42]

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直前にスグリの好感度について考えていただけに、まっさきに視線がいったのは下部だった。そして驚く。
――下がるどころか上がってる！
前は32だったのが今は56だ。どうやらお題への回答とマントによる上がり幅が大きかったらしい。安堵しつつ、自分のパラメータの不動っぷりにも笑ってしまう。そりゃ男にグラつくようなことなんも起こってねーからな！
そして相変わらず明かされた秘密はしょっぱいものだ。こうなってくると、残りの秘密もどうせ大したことはないだろうな、と安心できる。”カキツバタはものを噛まずに飲み込む“とか、”実は四留間際“とか、そこらへんが関の山。
「……で、結局何がしたいのかねぃ」
オイラが独り言ちると、スグリも共鳴するように呟く。
「また好感度上がってる……」
「コレステロール値かのように言わないでくれよー。素直じゃないけどなんだかんだ尊敬しはじめてきたんだろい！？」
「してない！　バカ言ってねえで次行くぞ」
「あ、ちょい待ち元チャン」
づかづか扉へ歩いて行こうとするスグリを呼び止め、振り返った目の前にマントを広げる。
━━━━━━━━━━━━━

[74 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:08:32]

━━━━━━━━━━━━━
「これ羽織ってみるかい？」
「え！？　な、なんで」
「気が向いてなー」
なんでかといえば理由は二つある。一つはあんなに憧れてくれたならちょっとばかし貸してやりたいという単純な理由。もう一つは、寒そうだから防寒させたいという理由だ。
この部屋は寒さに慣れているオイラでさえ少しキツい温度になっている。そこにタンクトップとハーフパンツだけの細っこい子供がいるのだから、見ているだけでこっちが寒い。
しかしスグリはしっかり葛藤したあと、「……いらね」と首を横に振った。
「それ、ドラゴン使いの証みたいなもんだべ。俺には着れね」
「別に気にしなくていいぞー？」
「ダメ。大事なもんだから」
「あったかいのになあ」
「別に寒くない」
スグリが平然と言うものだから、オイラは感心してしまった。子供は風の子たあこのことだ。
「……そーかい。真面目だねえ、お前さん。そんじゃオイラがあったまっちゃおーっと」
マントをいつものように腰に巻き付ける。僅かに寒さがマシになった気がしながら、「行くぜぃ」とあらためて扉へ向かった。
果たしてその向こうは外へ通じているのか、それとも第四層か。どうにでもなーあれ、と扉を開く。
━━━━━━━━━━━━━

[75 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:09:14]

━━━━━━━━━━━━━
その先に広がっていたのは、これまでと全く同じ部屋だった。
ですよねー、と受け入れながらいざ第四層へ一歩踏み入る。

――刹那、ぞわりと悪寒が駆け上った。

単純な要因。この部屋はこれまでにも増して、芯から凍るような寒さに包まれているのだ。思わず体が強張って、熱を発するために勝手に震え出す。とても室内とは思えない、まるで吹雪の中か凍った湖の中にでもいるようだ。
「――ス……スグリは……？」
危機感を抱き、すぐに小さな後輩の様子を伺う。視線を向けた先の彼は――ただ平然と室内を見回していた。
その姿は、この異常な寒さを感じていないとしか思えない。ふと気づく。もしかすればこれまでも、彼はなにも感じていなかったのでは。この寒さを感じ取れないなんて明らかにおかしい。
いや――

――おかしいのはどっちだ？

━━━━━━━━━━━━━

[76 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 20:10:06]

不穏ぅ！

[77 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 20:12:09]

よい不穏……

[78 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:17:34]

━━━━━━━━━━━━━
「……カキツバタ？」
黙って立ち尽くしていると、不審に思ったのかスグリが振り返る。そしてすぐに眉を八の字にした。
「ど……どうした？　顔色悪い、けど……」
「……ん？　いやこの部屋ってションベンしたくなったらどうすりゃいいんだっていう恐ろしい事実に気づいちまってよ……」
「た……確かに。急に腹壊したら大変だ！　早く出るべ」
スグリはオイラの誤魔化しを素直に信じて、お題を確認するべくモニタへ向かう。その背中を見つめながらゆっくり息を吐いた。
まだこの異常性は共有しなくていい。もう少し様子を見る。
「……よーし次はなにをしろって？」
いつも通りに笑顔を作り、小さな背中の後ろから画面を覗き込む。そこにはこう書かれていた。

💻第四層　ここは　抱きしめ合わないと　出られない部屋

「ほーう？　なんか着実にステップアップしてきたってかんじだねぃ」
元チャンコンビ仲良し大作戦(仮)もついに身体的接触を要求するようになったらしい。ハグ程度なら構わないが、どこにゴールがあるのか分からないのが恐ろしいところだ。
スグリは眉をひそめてオイラを見る。
「こ……これ、やるの？」
「おっと？　ハグは嫌かい？」
「……俺、あんまし人に触るの、得意じゃね……」
意外だった。内向的なくせしてタロとの勉強会やアカマツとのスマホ動画鑑賞ではやたらに距離が近かったから、気にならないたちなのかと思っていた。けれど触れるか触れないかのところに超えられない一線があったらしい。
とはいっても、やらなければ部屋から出られないわけだが……。
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[79 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:18:41]

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【ダイス】

▼スグリはハグできる？

dice1d100=3 (3)

好感度（56）以下の値で成功

※失敗の場合はカキツバタの説得フェーズ（安価）

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[80 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 20:22:04]

COCならクリティカル出すレベルでめちゃめちゃ成功しました！！
カキツバタが宥めすかす安価パートもちょっと入れたかったですが思ったよりスグリが全力受け入れ態勢でした
せっかくなのであとで好感度上昇の最低保証に色を付けたいと思います

[81 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 21:00:30]

━━━━━━━━━━━━━
スグリも同じように考えたらしい。「でもやんなきゃ出られね……」と呟いてから、オイラに向き直った。
「す……少しなら平気……。んだば、やるべ」
「やるかい？　んじゃ、行くぜぃ」
こちらとしては抵抗ないので、躊躇なく両手をスグリの背後に回す。それが背中に触れ、（おうコイツちっちゃ！）などと思った瞬間、「わぎゃっ」と奇妙な鳴き声を上げてスグリが飛び退いた。そしてオイラを見上げる顔には驚愕が刻まれている。
「なんでそんな冷えてんだべ……」
そりゃ寒いし。と思ったが、今触れたスグリはずいぶん暖かかったことに気づく。単純な体温の違いというレベルではないので、やはり二人の間には温度差があるらしい。
そしてその異常性はバレてしまった。そんならもういいか、と早々に諦めてヘラヘラと笑った。
「いやあオイラもさっぱり。なんかやたらと寒くてよー。それよりスグリぃ、もっかい抱きしめさせてくれよ。オマエすげえあったかいんだわ」
「え……や……やだ！　なんか……手つきが嫌！」
「貸してくれよオマエのこども体温〜」
「こっちくんなあ！」
手をわきわきさせながら迫れば、スグリは後ずさってから脱兎の如く逃げ出す。といってもいかにも鈍臭そうな走りっぷりなので、追いつこうと思えば追いつけるが、面白いのでほどほどに追いかけてやった。
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[82 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 21:30:39]

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ややもするとスグリがバテて速度が落ちてきたので、追いかけながら声をかける。
「スグリー、オイラ思うんだけどさー」
「な……なに……？」
「見たら分かるけど扉が出てねーんだわー。ってことは、さっきのは抱きしめた判定になってねえんだろー？　じゃあやっぱりもっかいやらねえとー」
スグリは立ち止まって四方の壁を見、最後に悲しげな顔でオイラを見る。そんな目で見られてもオイラじゃ扉は出してやれないんだよねぃ。
「……分かった。でもその手やめて。普通にして」
「はいはいよっと」
せめてタイミングは選ばせてやろうと、腕を広げて待ち構える。スグリは警戒する未進化ポケモンのように近づくと、恐る恐る手を伸ばしてくる。ここでトラバサミのごとくガバリといったら非常にいい反応が見られそうだが、好感度とトレードオフなのでなんとか我慢した。
辛抱強く待ち、やっとのことでぎゅうっと抱きしめ合う。途端に暖かな体温が伝わってきてほっとするが、一方でスグリは「冷た……」と呟いているから悲喜交々だ。
走ったからか、スグリの早鐘のような鼓動が伝わってくる。なんとなく感じ入っていると、視界の端で壁に扉が浮かび上がるのが見えた。どうやらお題はクリアしたらしい。
「スグリー、扉出たぜぃ。お疲れさん」
背中に回した腕を離してやる。しかし――何故かスグリは離れようとしなかった。
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[83 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 21:31:48]

最高すぎる……
wktk…

[84 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 21:44:19]

わやカッコイイisジャスティスな男児脳スグリは可愛いが、寒さに強いはずのカキツバタ「だけ」が異常な寒さを感じている…謎が深まるね

[85 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 22:01:35]

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「……スグリ？」
顎を引いて見下ろしてみると、黒い頭をくっつけたまま押し黙っている。てっきりすぐさま離れると思ったのに、それどころかぎゅうっと頭を押し付けてくるから混乱した。
「おーい？　そんなにツバっさんの胸板は住み心地いいかい？」
「黙って」
やっと返ってきた言葉はひどく硬い。冗談への呆れや怒りとは別種の、もっと緊張と困惑に満ちたそれ。およそ人とハグしながら出す声色ではなく、先ほどまでとは明らかに様子が違っている。
「おーいスグ、」
「いいから黙ってて！」
おーこわ、と揶揄することすら許されない雰囲気。訳がわからないまま黙っていると、しばらく経って、彼はやっと顔をあげた。
その顔色は真っ青だ。
「カキツバタ……大丈夫？」
それはこっちのセリフだ。背中に回ったままの手は寒さのためかかたかたと震えている。
「スグリ……大丈夫って、なにが？」
「音、してない」
――なんの？
「カキツバタの心臓、動いてない……！」
――はい？
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[86 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 22:02:12]

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オイラが目を見開くと同時、モニタから「ピッ」と無機質な電子音がした。反射的に視線をやれば、四つめの秘密が開いている。


💻カキツバタは心肺が停止している


――オイラも知らねえよそんな秘密。

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[87 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/17(日) 22:07:12]

キリがいいので今日はここまでとなります
だいぶ佳境に入ってきましたがまだまだ先はありますね
明日からも夜に続きを書いていきますが、書き溜めたストックがだいたい尽きたのでゆっくりペースになると思います
ここまで見てくださり、またハートやレスで反応をくださってありがとうございます

そして見てくださっている方々にお願いがあるのですが
スレ主は日中（～18時）に書き込めない場合があります
スレ落ちを防ぐために保守にご協力いただけますと幸いです……
よろしくお願いします

[88 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 22:18:57]

乙です
めちゃくちゃここからの展開が読めないので続き楽しみにしてます

[89 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 22:19:06]

スレ主さん素敵なカキスグをありがとう
不穏な展開が続くけどそれ含めて楽しく読ませて頂いてます

[90 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 22:52:46]

怖すぎィ！頼むからハッピーで終わってくれ

[91 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 23:02:14]

乙です
続きが楽しみ

[92 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 23:08:55]

ニュースとか罪とかがここに繋がってくるんかなという感想 続き楽しみです

[93 二次元好きの匿名さん 24/03/17(日) 23:47:39]

うーんなんだろ？心肺停止かぁ
カキツバタが寒くなっていってるなら

スグリをかばって氷漬け？
もしくはもうカキツバタがもうﾀﾋっていてそれの原因がスグリにある。ノンケだから告白できなかったとか？

[94 二次元好きの匿名さん 24/03/18(月) 06:22:57]

死ネタってそこに繋がるの！？凄いなあ、楽しみにしてます

[95 二次元好きの匿名さん 24/03/18(月) 09:09:43]

意味深なニュース…カキツバタの心肺停止…スグリの罪…これからどうなるんだろう　続き楽しみ

[96 二次元好きの匿名さん 24/03/18(月) 11:23:02]

これは続きが気になる保守

[97 二次元好きの匿名さん 24/03/18(月) 17:47:53]

ワクワクドキドキ

[98 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/18(月) 21:02:48]

>>63

返信したつもりで出来てませんでした！

なるほどー普通に手荷物ってかんじなのかもしれませんね

ありがとうございます！

文章も褒めてもらって嬉しいです！

[99 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/18(月) 21:05:04]

再開します……けど注意事項
スレタイに「腐CP」と入っているので承知の上だとは思うんですけど
もし「ちらっと見たらそんなに腐っぽくないな～」で読み続けてる方がいたら注意
こっからだんだん腐向けになっていきますぬるいけどね

[100 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/18(月) 21:06:53]

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二人揃って画面を見つめ、しばらく無言の時間が流れた。
かろうじて、先に動けたのはオイラだ。
「……あー、つまり？　どういうことでやんす？」
へへ……と無意味な笑いが溢れる。どんな感情を出すか迷ったとき、とりあえず笑うのは昔からのクセだった。
スグリはオイラから離れてモニタを食い入るように覗き込んだあと、ゆっくりと振り返る。
「抱きしめて、分かったんだ。あんだけ走ったのに、カキツバタの鼓動、全然感じられねって……。そんなわけないからもっとくっついたけど、どうしても、心臓、動いてねえで……」
「……はは……ホントだ。脈がねえよぉ〜……」
自分で脈拍を確認したが、やはりうんともすんともいわない。よくよく意識してみれば息も止まっているらしい。意識しなければ呼吸の有無すら気づかないというのは、不思議な感覚だった。
およそ生命活動というものが全般止まっているのかもしれない。この異常な寒さは、たとえ体温がないにしたって冷たすぎるが、体温があればもう少しマシだったろうという気がする。
なんだか急に寒さに耐えられないような気分になって、思わず「寒い、」と弱音をこぼした。
すると――スグリが神妙な顔で見上げ、逡巡するそぶりを見せ、そして、
「……カキツバタ。その……いいよ」
恥ずかしそうに両手を広げた。
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[101 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/18(月) 21:09:30]

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「ん？　なにが？」
「あっ……あの、だから、あったまっていいよって言ってんの！」
「えっ、抱きしめていいってことかい？」
「そ……そう言ってる！」
「でもお前さんが寒いだろ」
「バカ！　なんでこういうときばっか気ぃ遣うかなあ！？　明らかに変なことになってんだから頼れよな！」
怒っているのか恥じているのか分からない赤い顔で怒鳴られ、オイラはやっとその気になった。普段ひとから優しくされることがあまりないから(自業自得だが)、妙に現実感が湧かない。この状況も相まって、やっぱり夢だろこれ、と最初の結論に立ち返りそうになってしまう。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
せっかくだからと休憩を兼ねて、オイラはベッドに腰掛ける。その膝の上にスグリを乗せて抱きしめると、小さな体は腕の中にすっぽりおさまった。
――暖かい。寒暖の差を感じるのが好きだが、これは格別だ。まるで真冬の夜に熱い温泉に浸かるような心地よさ。芯から温もって、思わず深く息を吐いてしまう。……実際には息は吐けていないけれど。
じっと感じ入っていると、スグリは寒いだろうに身じろぎひとつせずに大人しくしてくれる。調子に乗ってもっとぎゅうっとしても文句は言わなかった。それが役目だとでも思っていそうな真面目さだった。
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[102 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/18(月) 21:13:30]

今日はここまでになります
まったりペースですみません

次回の注意なんですが
そろそろカキツバタのノンケ度を下げないとまずいことになってしまうので
明日はカキツバタのノンケ度とキャラが崩壊します
お気を付けください

[103 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 03:08:44]

めっちゃ読みやすい！最高！保守！

[104 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 08:18:09]

展開が大きく動いてきて続きが気になる

[105 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 12:24:44]

いよいよここのカキツバタからCP的な矢印が出るのか…

[106 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/19(火) 21:01:36]

保守ありがとうございます！
再開します

[107 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/19(火) 21:05:28]

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しばらくすると、「な、」と呼びかけられたので、目を閉じたまま「んー？」と返した。
「……あったかい？」
「……おう。すげえあったかいぜぃ」
そっか、と呟いた声色が柔らかかったから、つい目を開けて見下ろす。
「俺……な、ねーちゃんにこども体温ってからかわれるの、嫌だった……けど、」
腕の中の子供はオイラを見上げ、頬を染めてはにかんだ。
「今だけ、こども体温でよかったって思った……。……にへへ」
……そーいうことされると、さすがのツバっさんも、調子狂っちまうんだよな。
自分がいつも通りの表情を出来ているか分からなくて、つい顔を逸らしてしまう。けれどスグリは気にした様子もなく、より体温を伝えるためかオイラの胸板にすり寄った。まるで甘えているみたいに。
……これは、なんかまずい気がする。音がした気がする。なんらかの数値が下がる音。
「オイラのノンケ度、無事か……！？」
「え？　なに？」
「いや〜……なんも……」
もういいや、とすべてを投げ打つつもりでもう一度抱きしめ直す。どうせフェアリーポケモナーがヒトショタコンになったところで一般的には大して変わんねーもーん。
━━━━━━━━━━━━━

[108 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/19(火) 21:07:24]

━━━━━━━━━━━━━
「……いやちっと待てよ？」
はたと気づいた。考えようによったらこいつ――ポケモンっぽくないか？
ちっこいし、「わやー」とか鳴くし、動作がいちいち小動物的でマスコットっぽい。そう思うと、未進化ポケモンの一種のような気がしてくる。そのうえ、タイプを推定するならフェアリーだ。タロの手持ちにいそうだし、タイプ一致でじゃれつくを撃ってきてるんだから間違いない。
――スグリはフェアリータイプのポケモンだったのか。
「……オイラの性癖ドストライクじゃねえか！」
「わやじゃ、さっきからなんだべ。大丈夫？」
腕の中でスグリがビクリとする。その反応すらなんだか可愛く見えてくるから不思議だった。
もちろんスグリがポケモンでないことくらい分かっている。けれど要は、オイラがフェアリータイプに対して劣情を抱くポイントが、スグリにも共通してあるということ。
イケる、と思ってしまったらもうダメだった。
「オイラのノンケ度……今まで長い付き合いだったなあ……」
「カキツバタ、もうダメかもしんね……」
スグリの哀れむような言葉を聞きながら、オイラはいっそう強く抱きしめ続けた。
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[109 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/19(火) 21:08:25]

━━━━━━━━━━━━━
そうしてしばらくすると、抱きしめた体がかたかたと震え出したことに気がついた。見下ろすと、スグリの表情が強張っている。
それでもオイラの体にひっついたままでいるから、慌てて肩を掴んで引き剥がした。
「おーし、もう十分だぜぃ。ありがとさん！」
「え、もういいの？」
「そりゃもうおかげさまでぽっかぽかよ」
このとーり！　と胸を張って笑ってやれば、スグリは膝に乗ったまま嬉しそうに表情を緩めた。
「わやー、よかった。また寒くなったら言ってなー」
ふにゃふにゃとした表情に、声。今まで向けられたことのないそれを向けられ、胸の中にこみ上げてくるものがある。まだ体は冷たくて耐え難いくらいなのに、本当に暖かく感じてくるから不思議だった。
━━━━━━━━━━━━━

[110 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/19(火) 21:10:39]

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【ダイス】

▼パラメータ変動

カキツバタのノンケ度(現在100％):

-30(最低保証)＋20(性癖補正)＋20(スグリクリティカル補正)＋dice1d30=13 (13)

スグリからの好感度(現在56％): 20(最低保証)＋dice1d20=9 (9)

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※スグリのクリティカルは好感度でなくノンケ度への補正にしました

[111 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 21:13:42]

このスレ好きです
続きが気になる

[112 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/19(火) 21:13:43]

なんか計算おかしかったなまあいいです
カキツバタのノンケ度：17％
スグリからの好感度：85％
になりました

[113 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 21:14:03]

17%はもう完全に…

[114 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 21:16:15]

一気にゴリッと持っていかれてて草

[115 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/19(火) 21:16:17]

━━━━━━━━━━━━━
その後モニタを確認すると、互いのパラメータに変化が見られた。特にオイラのノンケ度83％減という急激な下落幅を見てスグリは「わやじゃ」と目を丸くしていたが、オイラは「知ってた」と苦笑する。
また、棚を調べたところ例によって秘密のヒントとなるものがあった。小型の機械で、酸素飽和度と脈拍を測るためのものだ。オイラが測定してみると酸素も脈拍もゼロで、あらためて現実を突きつけられて一周回って面白くなってしまった。
「そんじゃ、次に行きますかねぃ」
探索を終えて扉に向き直る。この扉の向こうは外ではなく、きっと第五層だろう。そうして最後の、五つめの秘密が明かされる。その先が出口なのか、それともスグリの罪とやらが明かされる第六層なのかは知らないが。
これ以上なにがあるんだかね、と複雑な感情を抱きながら、扉を開いた。
━━━━━━━━━━━━━

[116 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/19(火) 21:18:42]

今日はここまでです！
次の層まで行けますね

カキツバタのノンケ度に関しては最初は最低保証30＋1d30でした
でも性癖安価でわりとスグリにこじつけられそうだったのでこじつけたのと、スグリが抱きしめ判定でクリティカル出した補正もつけたらノンケ度が崩壊しました
のちのことを考えれば良いことです！

[117 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 21:29:11]

スグリの好感度も中々高くなってきたし続きが楽しみだ

[118 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 22:39:18]

いい感じに(色んな意味で)壊れてるwww

[119 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 23:10:16]

ノンケ度に引いて好感度下がらない？大丈夫？

[120 二次元好きの匿名さん 24/03/19(火) 23:24:53]

ノンケって単語を知らなったらなんか下がってて大変そうだなくらいの感想になるはず…知らなければ…

[121 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 00:51:25]

ハグってすばらしいんだなあ（こなみかん）
次はいよいよ最終階層か、楽しみなような怖いような…
個人的にはスグリの表情が強張っていたのが気がかりかな。カキツバタは物理的に寒いからだと捉えているように見受けられるけど多分そうではないんだろうな
抱き合うことで今のカキツバタがいわば動く死体のような状態にあることを改めて実感して死別の可能性が頭をよぎったか、それともカキツバタの体越しに何か恐ろしいものでも見てしまったのか（これは可能性としては薄そう）、はたまた何か思い出したのか…
ひょっとしてスグリは抱き合ったまま冷たくなっていくカキツバタというシチュエーションに覚えがある？それが未だ秘匿されているスグリの罪に関係する？
最後の秘密が「カキツバタ“の”？？？」なのも気になるな…これはますます目が離せないね

[122 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 07:41:43]

支援保守

[123 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 13:37:32]

ドラゴンエール！

[124 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 20:50:29]

続き待機保守

[125 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/20(水) 21:29:07]

感想や保守をありがとうございます！　嬉しいです！
鯖落ちも直ったので再開していきます

[126 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/20(水) 21:30:43]

━━━━━━━━━━━━━
扉の向こうは当然のようにこれまでと同じ部屋だ。――第五層。経験上この中は今にも増して凍えるだろうと予想して、オイラは一瞬躊躇ってから足を踏み出した。

――しかし予想外に、いや予想を超えて、尋常でない洗礼を受けることとなった。

ごぼり、と足が水に沈み込む感触。立ち入るものを拒絶するような凍てつく痛み。刹那に脳が警鐘を鳴らすが、動き出してしまった体は容易には止められない。
落ちた、と思った。少しの浮遊感のあとに極寒の衝撃。全身を包む水の度を越した冷たさに筋肉が硬直し、もがくことすら出来なくなる。
そうなれば、あとはただ沈んでいくだけ。

陽の光が遠ざかって、

息が、できな
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[127 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/20(水) 21:32:37]

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「――カキツバタ！！」
鋭い声にはっと意識を取り戻す。おぼつかない視界の中で視線を左右させると、こちらを覗き込むスグリの顔があった。
焦りと心配に満ちたそれを、オイラは下から見上げている。これはどういう体勢だろう。その答えに辿り着く前に、スグリが「よかった、起きた」とため息をついた。
「うぅ……全然体あったまんね……どうしたら……」
言いながら抱きしめられ、やっと状況を把握した。オイラはスグリにもたれかかる形で床に倒れているらしい。上体はスグリの膝に乗り、頭は胸に抱きしめられていた。肩を支える腕が寒さのためか震えていることに気づいて、思わず飛び起きる。
「スグリ！　いいって、オマエが凍えちまう！」
「どひゃっ……、だってこんな冷たいのにほっとけるわけねえべ」
「起き抜けに寒さで震えてる後輩見せられたオイラの気分にもなれぃ」
「それ言ったら部屋さ入った瞬間ぶっ倒れられた俺の気持ちになれ！！」
正論！
ぐうの音も出ないほど言い負かされ、オイラはつい「すいやせんでしたスグリさま」と頭を下げた。そりゃ確かにたまったもんじゃねえな。
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[128 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/20(水) 21:34:31]

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その下げられた後頭部に向かって、おずおずと声が降ってくる。
「だ……だいじょう、ぶ……？　本当に……。なんかよく分かんね数値も下がってたし、やっぱし、辛い……？」
顔を上げると、心底不安げな表情と目が合う。出会ったころを彷彿とさせる雰囲気に、彼がどれほどこの状況で心細い思いをしているか伝わってきた。
反射的に頭を撫でてやろうとして、自分の冷たさを思い出し、手を引っ込める。代わりに笑ってやった。
「へーきへーき。さっきはなんか突然だったからモロに食らったけどよ、慣れてくりゃ案外なんともねーわ！　ツバっさん、寒いのは得意だしな」
それは真実であり嘘でもある。もうあの極寒の水に溺れるような錯覚はなくなったが、凍える寒さだけは依然として体を蝕んでいた。得意や不得意なんて超えた、強制的に身体機能を停止させるほどのそれ。
体が上手く動かない。筋肉が馬鹿になっている。もっとあがけばどうにかなるのかもしれないが、怠惰に慣れた心はこんなときすらエンジンをかけてくれなかった。
大丈夫、と言いながら座り込んだままのオイラを見下ろして、スグリは少しの間押し黙った。そしてキッと眉を上げると、両手で髪の毛をかきあげる。きっとそれは彼が髪を結うときの仕草なのだろう。ヘアバンドがないから上げた髪はそのまま落ちてくるが、心の在り方は変わったようだった。
「こんな部屋、さっさと出るべ。俺、モニターさ見てくる！」
さっと踵を返し、ぽてぽてとモニタへ走っていく。さっきまでは林間学校前のようだったのにこの変わりようだ。やると決めたらやるし、そのためなら行動を惜しまない頑張り屋。すげーヤツ、と感心してしまう。……オイラとは違う。
━━━━━━━━━━━━━

[129 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/20(水) 21:36:41]

━━━━━━━━━━━━━
小さな背中がモニタを覗き込む。そして間髪入れず、「えっ……」と声が上がった。
なんだ、何が書いてあった？　オイラが訝しんでいると、スグリは勢いよく振り返ってから、赤い顔で叫んだ。
「俺……できっから！」
「おいおーい。オイラにも教えてくれーい」
わざわざ出来ます宣言をするのは、つまりそれなりにハードルが高いということ。少なくともハグより上。自然といくつか候補を思い浮かべていると、スグリがぽてぽてと戻ってきて、何故だか内緒話をするように耳元に顔を寄せて囁いた。
いわく、モニタに書いてあったのは、

💻第五層　ここは　キスしないと　出られない部屋

「……ははあ、なるほどねぃ」
ハグの次はキス。順当と言えば順当だ。
━━━━━━━━━━━━━

[130 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/20(水) 21:43:15]

今日はここまでとなります！

明日はちょっとだけですが安価もしますのでよければご参加ください
カキツバタはスグリの口以外ならどこにキスするかな…

[131 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 21:48:23]

乙ですー！
口以外だと頬とか手とか…？髪の毛上がってないけどおでことかもあるかもしれない…

[132 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 21:53:55]

眼が好きって言ってたし瞼かな

[133 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 22:14:40]

足がいいな
なんとなく

[134 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 22:16:16]

下りてる前髪を除けてのデコキスはかなり映える 更新乙です

[135 二次元好きの匿名さん 24/03/20(水) 23:46:28]

ツバッさんどんどん冷たくなってるみたいだけど大丈夫だろうか...
スグリん、ちゃんと持ち帰ってくれよカキツバタを

[137 二次元好きの匿名さん 24/03/21(木) 00:25:32]

続きが気になるところで明日に持ち越しとな
ライトな感じであのもちもちほっぺにチューもいい

[138 二次元好きの匿名さん 24/03/21(木) 05:22:01]

保守

[139 二次元好きの匿名さん 24/03/21(木) 11:54:07]

ほツバタ

[140 二次元好きの匿名さん 24/03/21(木) 16:29:37]

保守

[141 二次元好きの匿名さん 24/03/21(木) 21:10:28]

感想や保守、ハートなどありがとうございます！
再開していきます！

[142 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/21(木) 21:19:10]

ここまでのあらすじ
第五層は「キスしないと出られない部屋」だったよ！

━━━━━━━━━━━━━
正直なところ、オイラは結構出来そうではある。スグリがフェアリーだから……というのは置いておくとしても、まっとうに可愛いなあと思うようになってしまったので。その場面を想像しても抵抗が少ない。いざというとき、なけなしのノンケ度17％がどう出るかは未知数だが。
一方でスグリはどうだろう。好感度は85％とずいぶん高いが、オイラが思うにこれはあくまで人としての好感度であって恋愛ではない。真っ赤な顔で「できっから！」などと言っていたが、無理をしているようにしか見えなかった。
モニタの内容を口にしただけで茹でオクタンのようになってしまったスグリは、その場に座り込んで前髪をいじいじと弄りだす。視線は落ち着きなくうろうろとして、いかにも物慣れない雰囲気だ。
━━━━━━━━━━━━━

[143 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/21(木) 21:20:07]

━━━━━━━━━━━━━
きっとスグリはオイラの体調を気遣って、やれと言われればキスもするだろう。けれどさすがに申し訳なくて、なんとか抜け道がないか思考を巡らせる。
そして、気づいた。
「これ、口にしろとは書いてねえな……？」
体のどこにしたってキスはキスだ。口以外でもいいならハードルはぐっと下がる。
こりゃいい思い付きだ。オイラは「スグリ」と心ここにあらずな後輩に呼びかけ、動かぬ体に鞭打って身を乗り出した。
「ちょいと大人しくしてろよ」
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[144 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/21(木) 21:23:42]

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【安価】

▼スグリのどこにキスをする？

>>145

※口以外、口よりハードル低いところでお願いします！

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[145 二次元好きの匿名さん 24/03/21(木) 21:24:42]

首のほくろ

[146 二次元好きの匿名さん 24/03/21(木) 21:28:46]

結局やらしい箇所じゃないですかー！

[147 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/21(木) 21:30:16]

>>145

了解！

……わりとインモラルでは？？

まあつい引き寄せられちゃったんでしょうね！

[148 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/21(木) 21:32:28]

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冷たい手で触れるのは躊躇ったが、肩を掴んで引き寄せる。そして首筋のほくろへキスを落とした。
「わ、ひゃ……っ！？」
途端にスグリの体がびくりと跳ね、かと思えば硬直する。オイラはしっかりキス判定になるよう、しばらくそのままじっとした。
やがて、体を離す。
「さーて扉はっと……」
見回してみれば、そこには先ほどまでと変わらず白い壁があるばかりだ。ありゃー、と肩を落とし、スグリを振り返る。
「わりーな、これでお題いけっかと思ったんだけど……」
――そして、驚いた。
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[149 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/21(木) 21:35:46]

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スグリは自分の胸に手を当て、赤い顔で呆然としていたのだ。てっきり引くか怒るかすると思っていただけに、この反応は予想外だった。
「ス、スグリさん？」
呼びかけると、金の目に理性が戻る。
「……え？　あ、なに？」
「いやぼーっとしてっからよ。悪いな、嫌だったろ？」
「ん……わ、分かんね……」
「分かんねえ？」
スグリは悩むそぶりをしたあと、前髪をいじりながらぽつぽつと語りだす。
「俺……もし他の人……それも男にやられたらって想像したら、嫌だったんだけど……。今は、分かんね……」
「……マジか？」
「さっきからずっとどきどきして、おさまらねんだ」
胸に当てた手は鼓動を感じるためのものだろう。その言葉を聞いて、オイラはやっと合点がいった。
「スグリ、オマエの感情の正体、オイラ分かったぜ」
「……なに、これ？」
「それはな、」
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[150 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/21(木) 21:38:15]

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はっきりと言い切る。
「吊り橋効果ってやつだ」
「――つりばしこうか？　どんな技？　特性？」
「ちーがうってのこのポケモン脳め。吊り橋効果ってのは、不安だったり怖かったりして心拍数が上がってるときに、そばにいるヤツへの恋愛感情だと錯覚するってぇ現象よ」
「へえーそんなのあんだ……。じゃあカキツバタが近づいてきたときどきどきしたのも、それのせいなんだな」
わやー知らなかった……。と目を丸くするスグリに、「びっくりさせちまったなー」と誤魔化しておく。
――いや実際、どういう『どきどき』なのかは分かんねえけどよ！？
落ち着いたらしいスグリの一方で、逆にオイラの方が感情をかき乱されていた。首筋にキスされて嫌がらずにどきどきするなんて、案外本当に脈ありなんだろうか。それとも極限状態における感情の錯覚なのか。スグリの感情の出どころが分からなくて、もしオイラに物理的に脈があればこっちがどきどきしているところだった。
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[151 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/21(木) 21:40:04]

今日はここまでです！
好感度85％効果が出ているようですね
かなりデレてます

明日は少し物語が動く予定です
また見てくださると嬉しいです

[152 二次元好きの匿名さん 24/03/21(木) 23:03:02]

カキスグになってきたなあニヤニヤしながら読みました

[153 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 05:54:21]

保守じゃ

[154 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 10:50:13]

続きが楽しみほしゅ

[155 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 15:11:11]

補習

[156 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 20:32:14]

支援

[157 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/22(金) 21:02:42]

みなさんありがとうございます！
再開していきます

ここまでのあらすじ
スグリの首にキスをしてみたらまんざらでもない反応だったよ

[158 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/22(金) 21:05:09]

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そんなオイラの混乱は露知らず、スグリは少し怒ったような表情を向ける。
「お題さクリアしようとしてたのは分かっけど、でも、こういうのは了解取ってからしねえとダメだべ」
「あ、あー、倫理的だなあお前さん」
「でもやっぱ口じゃねえとダメなんだな……。んだば、覚悟決めるべ」
「……それなんだけどよ、他の探索してからでも遅くはねえだろ。ちょいと棚でも見ようぜ」
言いながら、凍り付くような体をなんとか動かして立ちあがる。本音を言えばかなり辛く、この寒さから解放してほしくて仕方ないが、そのために自分の気持ちすら曖昧な子供にキスさせるのは抵抗があった。
だるい。めんどくさい。今すぐ外的要因でなんか上手いこといってほしい。そんな思いがちらつきながらも、足を引きずって棚へ向かう。
「カキツバタ！　動いて大丈夫？」
「まーそれなりにな。床に転がっててもつれえしよ。この部屋はちょっちシンプルすぎるねぃ、イスくらい用意してもらわねえと」
「そしたらそっから動かなくなるからダメだべ」
「なんで当たりの強さ健在なんでやんすか？」
やっとたどり着いた棚は、目に見える範囲にはなにもない。今までもそうだ、秘密に関わるものはすべて引き出しに入っていた。取っ手に手をかけ、「開けるぞ」とスグリと目くばせを交わす。
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[159 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/22(金) 21:07:34]

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――中には、新聞の切り抜きが入っていた。

『○日○時頃、イッシュ地方ブルーベリー学園内の池に男子生徒が転落、搬送先の病院で死亡が確認された。
池は人工的に作られた冬山の中にあり、非常に水温が低い状態だったという。男子生徒は近くにいた友人』

切り抜きは中途半端なところで破かれ、全文を読むことは叶わない。しかし限られた情報だけでも、これがなにを指しているのかは想像がついた。

ああ、これ、オイラのことか。

異常に冷たく、心肺停止状態の体。この部屋に入った直後の、水に落ちる感覚。そしてこの記事を総合すれば、記憶にはなくともなにがあったか察するというものだ。
おおよその顛末が把握できても、心は妙に凪いだままだった。自分が死んだともなれば、もっと嘆くなり取り乱すなりしてもいいはずなのに。どうしたって感情が動かず、ただ納得して受け入れてしまう。
へへ、と笑いが漏れた。オイラ死んでるんだってよ。
そうスグリに話を振ろうと視線を向けて――ぎょっとした。
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[160 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/22(金) 21:09:14]

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スグリは自分の方こそ死んだような顔色で、じっと切り抜きを凝視していた。動揺の表れなのか瞳がかすかに痙攣し、呼吸が不規則になっている。蒼褪めた唇が、ぽつりと言葉を吐き出した。
「……俺の、せいだ」
「え？」
「思いだした……そう、だ、あれは」
「おい、スグリ」
「俺のせいで、カキツバタが」
スグリはめちゃくちゃに頭を掻きむしって、悲鳴のように叫んだ。

「俺が、カキツバタを死なせたんだ……ッ！」
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[161 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/22(金) 21:12:24]

ちょっと短いですがここまでです
明日は日中からはじめようか、それともいつもどおり夜からはじめようか迷い中です
そろそろラストスパートですね！

[162 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 21:12:54]

凄い気になる所で終わった

[163 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 21:14:05]

お疲れ様です…！明日が楽しみです
これがスグリの罪か…？

[164 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 21:16:26]

本音を言えば早く続きが読みたいです！

[165 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 21:16:40]

あー……いや……いやそれは……それはまさか……まさか
気になりすぎてこっちが死にそう

[166 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 21:19:44]

クライマックス来たなコレ…続き全力待機

[167 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 21:23:32]

第五層冒頭から薄々そんな気はしてたけど、はっきりと描写されると心臓にくるね…しんどい…
どうかハッピーエンドになってくれ…

[168 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 21:46:13]

凄すぎます‼️続き楽しみです
個人的にはハッピーエンドも好きだけど
バッドエンドが気になるから見てみたい……

[169 二次元好きの匿名さん 24/03/22(金) 21:46:23]

えっ！？こんな状態からでも入れる保険ってあるんですか！？という心境

[170 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 08:14:53]

ほっしゅ

[171 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 11:31:56]

保守

[172 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 16:54:53]

保守や感想をありがとうございます！
昨日はいっぱいレスついてて嬉しいですね
17時頃から再開していきます！

[173 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:00:37]

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――その日、スグリはポーラエリアを歩いていた。こおりタイプを相手に試したい戦い方を思いついたからと、寒さを我慢して目当てのポケモンを探し回っていたのだ。
途中、ひとけのない雪原で、池の対岸にいるカキツバタの姿を視界にとらえる。距離は少々あり、むこうはスグリに気づいた様子はない。腕を頭の後ろにやって、いつものようにのんびりと歩いているところだった。
見つからないようにしよう、とスグリは反対側へ向きを変える。カキツバタとはリーグ部内ではそれなりに交流しているものの、正直なところを言えば、本心が読めない相手だった。嫌われているのか、なんとも思われていないのか。気を遣われているのか、そういうわけでもないのか。まだ対人経験の浅いスグリにとっては、容易にはいかない相手だった。
しばらく歩を進め、小高い丘を登りきったところで、気になって振り返る。やはりカキツバタには見つかっていないようで、彼はまるで別の方を向いて歩いていたから、ほっと息を吐いた。
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[174 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:02:14]

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ふと気づけば、カキツバタからさほど離れていない場所にひとりの生徒が増えている。
彼女はいかにもポーラエリアを歩き慣れていないようで、雪に足を取られて四苦八苦していた。しかも足元に気を取られているせいか、だんだんと池の方へ寄っていく。
危ない、と咄嗟に思った。池の周辺は、足場があるように見えてごく薄い氷であり、踏み抜く危険性がある。だから近づいてはならないと最初に説明があるのだが、今の彼女がそれを意識できているとは思えなかった。
カキツバタも同じように思ったらしい。ふらふらと無軌道に歩いていた彼は、女子生徒を視界に入れるとそちらへ歩き始めた。それなら大丈夫だな、とスグリは安堵する。怠惰でどうしようもない男ではあるけれど、そのくせこういうときは優しくて、頼りになると知っているから。

――それなのに。視線の先で起こった出来事は、一瞬だった。
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[175 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:04:10]

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もう少しでカキツバタが辿り着くというところで、女子生徒が足を滑らせた。傾いた体の先にあるのは、氷の浮いた深い池。
息を飲んだと同時、カキツバタが大地を蹴って駆け付ける。彼女の腕を掴み、陸側へ引き戻すように引っ張った。
彼女が雪の上に転がる一方で、彼自身は、反動で池に向かって投げ出される。踏みとどまろうとした足は不運なことに氷を踏み抜き、その姿はあっという間に極寒の水へ飲みこまれた。

「――ッカキツバタ！！」

無我夢中でカイリューに飛び乗り、空を切る。辿り着くまでの数秒の間に彼が水面から顔を出さないかと期待したが、水飛沫すらなく凪いだままだった。
心臓が嫌になるほど強く鼓動している。手足が緊張して震えが止まらない。焦りと動揺を押し殺すように拳を握り、雪の上に降り立った。
ポケモンの力を借りて、深く冷たい水の中からカキツバタを救い出す。ほっとしたのもつかの間、横たえた彼が意識を取り戻さないことに不安を覚えた。不穏な鼓動の高鳴りを感じながら、その呼吸を確認する。
息をしていない。心臓も動いていない。――心肺停止。
死、という単語が脳裏をよぎった。その恐ろしい予感を振り払うように叫ぶ。
「カキツバタ！　起きて！　お願い！」
彼は目を覚さない。いつも飄々とした読めない笑顔を浮かべている顔は、今は雪のように真っ白で、瞼が固く下ろされたまま。とても自力で好転するようには思えなかった。
――それなら、無理やりにでも好転させないといけない。
「心肺、蘇生……！」
救助要請はカキツバタに助けられた生徒に頼んだから、それが到着するまでの間、彼の命を繋ぐことだけが今出来ること。すなわち人工呼吸と胸骨圧迫。
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[176 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:05:14]

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……人工呼吸。

――ほんの一瞬、躊躇した。
唇を合わせることを想像して、動きが止まった。
自分自身に抵抗があった。加えて、嫌われているかもしれない自分がやっていいのか、と尻込みした。
動揺と焦燥と混乱が正常な判断を欠き、この場にそぐわない躊躇いを生んだ。
時間にして、きっかり十秒。
……それが彼の生死を分けた。
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[177 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:06:17]

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「俺が……ッ、早くしてれば……ッ！」
話し終わったスグリは、溢れるように涙を流しながら頭を掻きむしる。ふらりとよろめき、膝から崩れ落ちて座り込んだ。
「そんなことさ考えてる場合じゃなかったのに！　なんで、よりにもよってあんなときに、だから俺は、いっつも間違えて……！」
「やめろスグリ、怪我するって！」
このまま放っておけば皮膚を裂くと、腕を掴んでやめさせる。するとスグリは感情の行き場を失ったように「うぅうぅぅーっ」と泣きじゃくった。
「人工呼吸も、心臓マッサージも……した！　けど……だけど、いつまで経っても、カキツバタ、息、しなくて……！　心臓、動かなくて……！　大人たち来るまでずっと、俺、やってたのに、どんどん、体冷えてって……もう、氷みたいな、体温で……」
目、覚さなかった。とスグリは懺悔するように呟いた。救助来て、病院さ行って、でも二度と起きなかった。
「俺の、せいで、カキツバタ……ごめん、ごめんな……」
そう彼がうなだれたとき、モニタから「ピッ」と場違いな電子音がした。視線を向けると、項目がひとつ開いている。
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[178 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:06:34]

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💻スグリ　には　1つの罪　がある
　スグリは心肺蘇生を躊躇った

それを見た瞬間、胸のうちに久しく忘れていた感情が湧き上がった。
――怒りだ。
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[179 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:07:56]

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「罪？　これが……スグリの？」
たった十秒間の躊躇いが？
そのあとすぐ、スグリは心肺蘇生を始めたのに。救急が来るまでどれだけかかったのかは知らないが、海中の学園の雪山に到着するまでにはそれなりの時間を要することは想像がつく。学園の教師すらそう早くは辿り着かなかったろう。それまでの間、スグリはずっと蘇生を続けていたのだ。
人命救助なんて身に余る重圧を負いながら、一人きりで。
――いったいどこのどいつがそこに罪があるなんて言うんだよ。
「スグリ。……スグリ、大丈夫だ」
震える小さな肩を、ぽんと叩く。スグリはぐすりと鼻をすすってオイラを見た。
「オマエはなーんも悪くねえよ。むしろさみー水ん中から助け出してくれて、こっちは感謝してんだぜ？」
「で、も、俺……っ」
「やるだけのことをやってくれたんだ、オマエは。あとは天運に任せるしかねえんだが、オイラにゃちょっちそれが足りなかった。まあそれだけの話だ。なのにそんな泣かれたら立つ背がねえ。……死んでも死にきれねえってもんよ」
自分で言って、ああそうか、と納得する。この不思議な部屋に閉じ込められた理由が分かった気がした。
「この場所は、そういうことなのかもな。……こうやってオマエと話すために、なんかすげーヤツが用意してくれたのかも」
「俺と、話すため……？」
「だってお前さん、きっと現実世界でもそうやって自分を責めて泣くんだろ？　一生懸命やってくれたのにそれじゃあ、オイラも物申さねえと気が済まねえ」
今際の際で願ったのかもしれない。あいつはきっと気に病むから、最期に言葉を伝えさせてくれ、と。少しだけ互いを知って、少しだけ仲良くなって、そして思い残すことなく別れられるように。
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[180 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:08:54]

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「だからそんな泣くなって」
そう笑いかければ、スグリは苦しそうに顔を歪めてうつむいてしまった。長い前髪のおかげで表情が隠れ、涙交じりの声だけが聞こえてくる。
「なんで、カキツバタは……。……自分が死ぬのに、そんなこと考えんの。……もっと他に、心残りさあっただろ」
「まあこれが一番だったんじゃねーの。死に際のことだし。オイラもあんま自分の気持ちってよく分かってねえんだけどさ、今はしっくりくるわー」
「……なんでそんな、笑ってんの。辛いとか悲しいとか、ないの」
「あんまねーなあ」
まったくないわけではない。可愛いポケモンたちを遺して逝くのは悲しいし、やりたかったこともある。
けれど、だからってどうしようもない。もう諦めた。ここで人生は終わりなんだ。……それ以上考えるのもめんどくせえし。
　、 、 、 、 、 、 、 、 、
「オイラはもう、いいんだよ」
そう言った瞬間、スグリは嗚咽に震える肩をぴたりと止めた。
――泣きやんだ？
静かな頭頂部を見守っていると、ややあって顔を上げる。
前髪の間から覗いた金目は、それまでの弱々しさが嘘のように凄味を増して、下からオイラを睨みつけた。
「今、なんて言った？」
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[181 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:09:47]

一旦休憩です
また夜21時頃に再開予定です

※この物語はフィクションです
人命救助などの描写は正確ではありませんのでご注意ください

[182 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 17:12:45]

間違いなくこのスレでは話が終わらないので次スレに行くと思います！
なのでよかったら気軽にレスしてスレ消費しちゃってください
そういうの読めたら嬉しいですし！
よろしくお願いします～

[183 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 17:14:47]

乙です　21時まで待ちきれない…
次スレもあるんですね…！？ここからの展開もっと見たいので嬉しいです

[184 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 17:24:05]

おつおつ
カキツバタの秘密あと一つ残ってたよね？なんだろな気になる

[185 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 17:28:24]

支援ー！
続きが気になりすぎて夜しか眠れない！

[186 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 17:28:40]

乙です
頑張った結果報われなくて必要以上に自責しちゃうとこ本当にスグリ
続き楽しみ

[187 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 18:08:26]

カキツバタよぉ。すぐに諦めるの悪い癖じゃ。あんたいいかもしれんけどホントよくないよ。
スグリそのままソイツ持ち帰ってもろて説教して

[188 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 18:23:24]

死ネタに釣られたカキスグに抵抗ないよ程度の人間だったのですがカキスグに目覚めたかもしれない

[189 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 18:34:59]

怒濤の展開だ…スグリとカキツバタの人物像の描写の仕方好きだー

[190 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 18:41:26]

うわー切なくて素敵なスレを見つけてしまった！しかもリアタイできるなんて贅沢すぎる　良い土曜日
どんな結末になっても見届けます　続きを楽しみに待機！

[191 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 18:54:18]

>>188

ようこそこちら側へ

[192 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 20:18:37]

新スレ立てました！

https://bbs.animanch.com/board/3129411/?res=3

埋めにご協力お願いします

[193 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 20:19:46]

できればハッピーエンドであれ

[194 スレ主◆llyUGYmmMw 24/03/23(土) 20:20:55]

この世にひとりでもカキスグ者を増やしたならスレ主冥利に尽きますね……
カキスグ沼の底でいつでも待っています……

[195 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 20:21:09]

ｻｯｸｻﾞｸうめうめ

[196 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 20:23:19]

うめ〜

[197 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 20:26:15]

自分はCPは見る専(稀に創作)メン
カキスグは割とすき
やっぱ体格差がいいな
ギスギスものほほんもいけるのいい

[198 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 20:31:48]

そういや新聞が途中だったの気になるな？何があった？

[199 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 20:34:06]

最後の
「カキツバタの」って普通考えると物なのか？うーむ

[200 二次元好きの匿名さん 24/03/23(土) 20:34:53]

200レスならハッピーエンド