【百合注意、SS】都留岐涼花は弁えたい【閲覧注意】

  • 1二次元好きの匿名さん24/03/20(水) 17:33:38

    ※このSSには百合要素が含まれています。
    ※一部オリジナル設定があります。

    上記の要素が苦手な方は、ブラウザバックをお願いします。

  • 21/1124/03/20(水) 17:34:17

    都留岐涼花の朝は早い

    「おはようございますッ、涼花さん!朝錬いってきまーすッ!」
    ソノンエルフィーの元気な声が、夜明け前の部屋に響く。
    鶏も飛び起きそうな声が、涼花の目覚まし時計代わりとなっている。

    「ふわぁ~、いってら……って、待って、エルフィー!?その頭で外へ出るの?」
    寝ぼけ眼の涼花は一気に目が覚める。
    昨日は2人で動画編集をして夜遅くまで起きていたせいか、エルフィーの髪は寝癖で爆発していた。

    「せめて、櫛でとかしてから行きなさい」
    「えー。誰も見やしませんよ!!」
    「だめ。あなたはウマチューバーなのよ。もし視聴者さんが見たら、驚くわよ」

    ウマチューバーは印象第一。
    寝癖まみれのエルフィーが町をうろついていたら、なんて思われるか分かったものではない。
    万が一、だらしのない女だと、ウマッターに上げられでもしたら、イメージに傷がつきかねない。

    「ちょっと洗面所にきなさい、エルフィー」
    「ちょっ!?涼花さーんっ。引っ張らないでくださーい!」

    エルフィーを洗面所へ連れてきた涼花は時間をかけて、彼女の髪をとかす。
    霧吹きで髪を濡らし、ドライヤをかけ、寝癖を直していく
    そして髪を傷つけないよう、涼花は時間をかけてブラシをかける。

    「フフフッ!くすぐったいです、涼花さん!」
    「もう終わるから、ジッとしてて、エルフィー」

    エルフィーのプラチナのような髪にうっとりしそうになるのを我慢しながら、涼花は寝癖を梳いていった。

  • 32/1124/03/20(水) 17:34:55

    エルフィーが外に出てからが本番だ

    エルフィーの朝練はだいたい2時間くらい。
    その間に、涼花は二人分の朝食を作るのだった。

    ごみをまとめ、テーブルをきれいに拭く。
    窓を開け換気をおこない、掃除機をかける。

    掃除が終わり、部屋が片付いたら、いよいよ朝食の準備だ。
    エルフィーはウマチューバーであり、アスリートであり、ある意味ではアイドルでもある。
    食事の栄養とカロリーには、気を使う必要があるのだ。
    エルフィーの栄養管理も、涼花の大事な仕事である。

    こうして、ピーマンのサラダとニンジンのポタージュを作ると、彼女は残った時間でヨガをすることにした。

    エルフィーと過ごす時間が増えた一方、涼花は一人の時間も丁寧に過ごすことにしている。
    プロデューサーの仕事は、いつどのように湧いてくるか分かったものではない。
    体調を整えることも仕事の内というのが、涼花が新人だった時に良く聞かされたことだ。

    日課のヨガをし終えた時を見計らったかのように、玄関から明るい声が響いた。
    「ただいま、涼花さんッ!くんくん、今日もおいしそうな匂いがしていますね!」
    その声に涼花は、微笑みながら答える。
    「お帰りなさい、エルフィー。スープを温めなおすから、食事の準備を手伝ってもらえないかしら?」

    テーブルに朝食を並べ、向かい合わせに座ると、エルフィーと涼花は食事を始めた。
    朝練でおなかがへっているエルフィーの食べる速度は速い。

    「もっとゆっくりと食べないと、のどに詰まらせるわよ。エルフィー」
    そう言うと、涼花は、エルフィーの頬についたジャムをそっとぬぐう。
    キョトンとして食べる手を止めたエルフィーに微笑みながら、涼花は自分のパンを一口かじった。

  • 43/1124/03/20(水) 17:35:44

    「エルフィー、今日もそのウェアで行くのかしら?」
    「はいッ!そうですが!?」
    「今日は午後から、雑誌の撮影があるのよ。もっとカッコいい服装の方が良いわ」

    食事を終えると、エルフィーは、大学へ向かう支度する。
    大学へ行くときも、エルフィーは基本的にオレンジ色の上着に黒のボトムのスポーツウェアである。

    この格好はエルフィーのトレードマークのようなものである。
    しかし、今日はファッション雑誌の撮影を、大学の講義の後にすることになっている。
    しかも、撮影では私服での撮影もあると聞いた。
    普段、ウマチューブとは縁のない読者層をつかむ大切な機会である。
    いつもの服だけでなく、おしゃれな服でアピールするようにしていきたい。

    涼花の選んだ服なら喜んで着るエルフィーだが、油断すると着心地の良いスポーツウェアで外へ出ようとする。
    もっと今どきの女の子らしい服や、エルフィーに良く似合いそうなカッコいい服も来てもらいたいが、涼花はエルフィーの好みを尊重することにしている。
    そのため、エルフィーが好みそうな、機能性とおしゃれを両立した服選びは涼花の腕の見せ所である。

    これでも、朝練後なのにシャワーすら浴びずに、大学へ行こうとしていた時に比べたら、見違えるほどの進歩である。
    輝く汗は世界を繋ぐといっても、汗臭い相手と仲良くしたいという人はそこまで多くはないだろう。

    「私は、撮影には行けないけど、頑張るのよ、エルフィー」
    「分かりました、涼花さんッ!いってきまーすッ!」
    「エルフィー、行ってらっしゃい」

    涼花の選んだ、ビッグシルエットのパーカーに引き締まったパンツに着替えたエルフィーは、玄関のドアを開けブンブン手を振った。
    そして扉が閉まりエルフィーが見えなくなるまで、涼花は見守るのだった。

  • 54/1124/03/20(水) 17:36:05

    食器洗いを終えた涼花は、自分の出勤の準備を手早く済ませる。
    火と戸締りをもう一度確認し、家をでる。

    電車に揺られ、出勤するときも涼花は仕事を欠かさない。
    トレンドのチェックに、情報収集、面白い広告のチェックと、少しでもエルフィーチャンネルを盛り上げるために余念がない。

    「……ん?」
    ウマッターのチェックしていた涼花はとある投稿に眉をひそめた。
    『エルフィーって、最近調子乗ってない!?この前のカレンチャンとのコラボでも偉そうにしてたし!』

    こうした投稿を、有名税という言葉で片づけるのは簡単だ。
    しかし、放っておくと炎上のきっかけになりかねない。

    そして何より、万が一にでもエルフィーがこの投稿を見てしまえば、傷つくだろう。
    エルフィーが耳を伏せて、悲しげな顔をするのを見るのは、いたたまれない。

    こうした不穏な内容は早いうちに対策をとるのが肝心である。
    この投稿をした人のプロフィールと他の投稿を確認する。
    幸い、悪質なユーザーでなさそうなことを確認し、少し胸をなでおろした。
    だが、今はよくても今後どうなるかはわからない。
    万が一そうなったときに少しでも早く対応できるように、メディア対策室の知り合いへ、投稿の内容を連絡しておく。

    「これで良しっと」
    涼花は連絡をし終えて、ほっと一息つく。

    やがて、降りる駅のアナウンスが聞こえた涼花は、ウマホをしまい立ち上がった。

  • 65/1124/03/20(水) 17:36:22

    涼花の仕事は多忙を極める。
    エルフィーチャンネルの編集に、イベントの準備、新たなウマチューバーの発掘まで彼女一人で行っている。

    「せんぱーい!頼まれていた資料、ここ置いておきますね」
    「ありがとう、助かるわ」

    特に、U.A.Fが盛況に終わったことで、彼女の社内評価はうなぎのぼりだ。
    そして、それに比例するように、仕事量も増している。
    この前、ようやく一人後輩が配属されたが、それでも涼花の仕事量は多い。

    だが、彼女はエルフィーチャンネルの仕事だけは手放すことをしない。
    昨日、エルフィーと一緒に編集した動画の、最後の調整を行っていく。
    動画編集中、彼女の集中力は最高潮に達する。

    冗長な部分は短く編集し、見やすいように字幕を付け、エフェクトをつけていく。
    動画が地味すぎず、しかしケバケバしくならないようにする。

    エルフィーの華麗でダイナミックな動きを、より魅力的に映すために涼花は持てる知識と技術をつぎ込んでいく。

    動画の中のエルフィーの笑顔を見ているだけで、1日過ごしたくなる誘惑を必死に耐えて、涼花は動画を完成させた。
    共有フォルダに動画をコピーして、上司に確認依頼のメールを送ると、彼女は目をつむって背を伸ばした。
    「あとは、社内チェック後に、エルフィーに見せるだけね」
    パソコンから目を上げて、涼花はつぶやいた。
    そして腕時計を見ると慌てて立ち上がった。

    この後、トレセン学園でU.A.Fの説明会に行かなくてはいけない。
    既に運営や事務作業は後輩に任せているが、説明会や交渉には涼花が出ていく必要がある。
    すぐに支度を終えた涼花は、後輩と一緒にオフィスから飛び出すように出かけた。

  • 76/1124/03/20(水) 17:37:26

    説明会が終わり、久しぶりにトレーナーと話していた時、電話が鳴った。
    涼花はトレーナーに断りを入れ、電話に出る。

    電話は、エルフィーの撮影をするはずのカメラマンからだった。
    『あのー、そっちにソノンエルフィーさん来てないですよね?まだエルフィーさんが来ていなくて』
    カメラマンは困ったように言った。
    「えっ!?エルフィーはいませんが」
    『えー!?そんなー!もう撮影の時間なのに。連絡しても返事ないし』
    「申し訳ございません。こちらからもエルフィーに連絡してみますので、もう少し待っていただけないでしょうか?」
    『分かりましたけど、早くしてくださいよ!』
    電話が切れると涼花は、急いでエルフィーに電話を掛けた。
    エルフィーはプロのウマチューバーである。
    スケジュールは基本的に守るし、もしスケジュールに間に合いそうにないならその旨の電話を入れるはずだ。

    何か、エルフィーの身に良くないことが起きたのではないか?
    呼び出し音が鳴る度早まる鼓動を感じながら、涼花が待っていると、電話がつながった。

    『あっ、涼花さんっ!どうしましたか?』
    「どうしましたか、じゃないでしょう、エルフィー。今、どこにいるの!?」
    『すいません。今向かっています!カメラマンの人にはさっき連絡しましたッ!』
    電話越しに聞こえる、走っている足音のような音を聞き、嘘ではなさそうな言葉に胸をなでおろしつつ、少しだけ強い口調で言った。
    「後でゆっくりと話は聞くから、早く撮影場所へ向かいなさい」

    そう言って電話を切ると、トレーナーの方を向いて頭を下げた。
    「すいません。もう少しゆっくりと話したかったのですが……」
    「いえいえ、すぐに向かってください」
    トレーナーに改めて頭を下げると、後を後輩に任せて涼花は撮影スタジオへ急いで向かった。

  • 87/1124/03/20(水) 17:37:46

    幸い、撮影は滞りなく終わった。
    スケジュールに影響がほぼなかったことと、コメツキバッタもかくやという謝りっぷりもあり、今回はこれ以上追及されることはなかった。

    撮影スタジオから会社のオフィスに戻った涼花は、エルフィーを空いていた会議室へ連れて行くと、なるべく優しく問いかけた。
    「どうして、遅れたの。エルフィー?」
    エルフィーは、背を丸め俯き、耳をペタっと垂らしていた。
    叱られた犬のようにシュンとしている彼女をこれ以上悲しませないように、涼花はもう一度聞いた。

    「別に叱っているわけじゃないの。ただ、貴方に何かあったのなら、それを私も知りたいの」
    もし、何かトラブルに巻き込まれたのであれば、それは早めに知っておいた方が良い。
    しばらく、口を閉ざしていたエルフィーだったが、言い辛そうに話し出した。

    「……実はですね、スタジオに向かっている最中に、公園の横を通り過ぎたんです」
    「……公園の横?」
    「はい。そうしたら、子供たちが木の周りに集まっていたんです」
    話をいまいちつかめない涼花を尻目に、エルフィーは話を続けた。
    「なんでも、猫ちゃんが木に登って降りれなくなったらしくて。助けてほしいって言われましたので、私が木に登って助けに行きました」
    「……そういうことだったの」
    ひとまず、大きなトラブルに巻き込まれたわけではないことが分かり、涼花はホッとした。

    「話は分かったわ、エルフィー。困っている人を助けるのはとても立派なことよ。だけど、これからは一度私に連絡するようにして」
    優し気に言った涼花を見て、エルフィーも元気になったように耳をピンと上げた。
    いつものエルフィーに戻ったのを見て、ニコリと微笑んだとき、2人のいた会議室にノックの音が響いた。
    どうぞ、と涼花が言うや否や、後輩が飛び込んできた。

    「先輩、ウマッター見ました!?エルフィーさん、すごく話題になっていますよ!」
    怪訝に思った涼花がウマッターを開くと、目を見開いた。

  • 98/1124/03/20(水) 17:38:01

    ウマホのカメラで撮ったのだろう、縦長の映像にはエルフィーが映っていた。
    彼女は慎重に、しかし素早く木に登っている。
    やがて一番高いところまでたどり着き、しがみつき震えている猫を優しく抱えると、そのままエルフィーはそのままゆっくりと木から下りていった。
    5分ほどの動画であったが、その動画はかなり再生されており、リプライも数多く付いていた。

    『すごい身体能力!やっぱりすごい』
    『これ、ウマチューバーのソノンエルフィーじゃね!?すげーな』
    『ウマチューバーってことで敬遠してたけど、見直した』
    そこには多くの称賛の声が広がっていた。

    「エルフィーさんがウマッターのトレンドの上位に挙がっていて、エルフィーチャンネルの動画の再生数も軒並み急増しています!」
    「すごいわ、エルフィー!貴方、評判になっているじゃない!?」
    慌てて、チャンネルのページにアクセスした涼花は、喜色満面で言った。
    「ええッ!?本当ですか!?」
    「もちろんよ。ほら、貴方も見て」

    今まで見たことない勢いで伸びている再生数を、信じられない顔で見ていたエルフィーだったが、あることに気付いたそうに言った。
    「わわわッ!?見てください涼花さん!登録者も10万人を超えてます!?これってもしかして」
    チャンネルの登録者数を見た涼花は、にっこりと笑った。
    「そうね。ウマチューブへ盾の申請をしましょう」
    「ええ!と言うことはわが社のウマチューバー初の盾ですか!?」
    部屋にいた後輩が興奮気味に言った。

    「ええ。そうしたらエルフィーをお祝いしないとね」
    「本当ですか、涼花さん!やったー!」
    さっきまでの悲しそうな姿が嘘のように全身で喜びを表現するエルフィーを、涼花は幸せそうに眺めていた。

  • 109/1124/03/20(水) 17:38:21

    会社の飲み会が終わると、涼花の部屋で2人だけの打ち上げをした。
    「フフフフ。涼花さん!涼花さーん!!」
    エルフィーがほんのり紅色になった顔で抱き着いてくる。
    お酒を飲み、みんなから褒められたエルフィーは、すっかり上機嫌だ。

    「もう。エルフィーったら」
    涼花はまんざらでもない顔で、エルフィーの肩に頭を寄せた。

    エルフィーを初めて見た時には、まさか、こうなることは想像だにしていなかった。
    今でも、時々夢ではないかと思う時がある。

    「涼花さん!今日も泊っていいですか?」
    「いいわよ。そうしたら、もう少し飲みましょうか?」
    そう言うと、涼花はエルフィーから身を離し、キッチンへ向かう。

    「そうしましたら、私も手伝います!」
    そんな涼花の後を追うように、エルフィーも立ち上がった。

    「いいのよ、今日は貴方のお祝いなんだから」
    「いいえッ!何より、涼花さんと一緒に入れるのがうれしいので大丈夫です!」
    その言葉に、涼花は顔に熱が持ったのを感じる。

    「私もエルフィーと一緒に入れて本当に幸せよ」
    涼花が横に来たエルフィーの耳につぶやきかけると、お酒で赤くなっていたエルフィーの頬が一層赤くなる。
    その様子を見て、涼花は首を傾げ、微笑んだ。

  • 1110/1124/03/20(水) 17:38:38

    涼花は食器を洗い終え、一人リビングにいた。
    先ほどまで、手伝ってくれた、エルフィーはすでに寝ている。
    一方の涼花は、グラスに水を注ぎ、静かに飲んでいる。

    ─都留岐涼花は社会人である。
    共に歩んでいきたいが、彼女の未来を縛るのは本意ではない。
    ソノンエルフィーのことを大切に思うが、一線は弁える。
    それが、社会人であり、プロデューサーである涼花の役割だ。

    トレセン学園では、いろいろなトレーナーと出会った。
    考え方も担当ウマ娘との向き合い方も様々だったが、彼らの間には深く強い信頼と愛情があることは一緒であった。
    涼花は、巷で言われるウマ娘とトレーナーとの不思議で強い絆の一端を見た気がした。
    プロデューサーでしかない自分が、そのような絆をエルフィーと築けるのか、一人になった時、涼花は思うことがある。

    自分とエルフィーは、何年も一緒に夢を追っている。
    こうして、エルフィーが泊ることもしばしばある。
    しかし、その関係は、どこまで行っても契約上のつながりしかないのだ。
    自分以外の誰か、例えばトレセン学園のトレーナーであればもっとエルフィーの素質と魅力を引き出せるのではないか、そういう思いが時々こみあげてくる。

    エルフィーは今年大学を卒業する。
    もう、名実ともに大人になるのだ。
    こんな、書類一枚の関係は、かえってエルフィーの未来をしばっているのではないだろうか。
    ならば、いっそのことエルフィーとの関係を……

    「……んんっ……涼花さーん」
    暢気な寝言が、涼花の思いに割って入ってきた。

  • 1211/1124/03/20(水) 17:38:52

    持っていたグラスをテーブルに置くと、涼花は寝室に向かう。
    エルフィーは、ベッドの中であどけない寝顔をしていた。

    その姿を見ていると、先ほどまでの鬱憤とした思いが氷解していった。

    結局のところ、涼花はエルフィーと一緒にいたい。
    エルフィーの笑顔を、その輝く姿を間近で見ていたのだ。
    彼女の夢を実現していくことが、涼花の望みになっていた。

    そうした思いを胸に秘め、涼花は良き大人として、エルフィーと「弁えて」今後も過ごしていくようにしている。

    そして、もし「弁える」ことを辞める時があるのなら、エルフィーとともに未来を─
    すでに横になったエルフィーを愛おし気に眺めながら、酔った涼花の頭にふと思いがよぎる。
    その思いを涼花は、奥底へといつも通り押し込めた。

    ─これで、明日も「弁えて」エルフィーに向き合うことができる。
    パジャマに着替えてベッドにもぐりこんだエルフィーの寝顔を優しく指でなぞりながら、涼花はそっと床に敷いた布団に入るのだった。

    (了)

  • 13二次元好きの匿名さん24/03/20(水) 17:54:15

    いい……

  • 14二次元好きの匿名さん24/03/20(水) 18:06:18

    続きを読みたいんですけどおいくらですか?

  • 15二次元好きの匿名さん24/03/20(水) 20:16:29

    これソノンも都留岐さんに対して遠慮してるトコあったら美しいね

  • 16二次元好きの匿名さん24/03/21(木) 00:11:39

    床に敷いた布団は硬いから、2人でベッド使うかせめて布団乾燥機を使うのをオススメするわ

  • 17124/03/21(木) 06:02:41

    おまけ「ソノンエルフィーは歩みたい」

    ソノンエルフィーは、人生最大の決断をしようとしている。
    ラストランの時とも、エルフィーチャンネルを開いた時とも、U.A.Fが成功した時とも違う、緊張感であった。

    彼女は駅前の花屋にいた。
    「あの。このバラをください!」
    気の良さそうな初老の女性店員が、何かを察したように微笑み言った。
    「この赤いバラでよいでしょうか?何本用意いたしますか?」
    「ええっと。1本でお願いします。」
    「ふふっ。承知しました。ところでお客様。緊張されておりませんか?」
    「ええっ!?なんでですかッ!?」
    「お召し物に何かついていますよ。これからの用事がとても大事なのですね!」
    そう言うと店員は、自分の首の裏当たりをトントンと叩いた。
    不思議に思ったエルフィーが手を回すと、シャツにタグが付いたままになっていた。

    エルフィーの顔がトマトのように赤くなるのを、店員は微笑みながら見ていた。
    「そうしましたら、バラをくるみます。もしよければハサミをお貸ししましょうか?」
    「わわわ!?ありがとうございます!」

    店員が手際よく花束にしているのを横目に、エルフィーは手を後ろに回して、器用にシャツのタグを切った。
    卒業祝いにと、両親から買ってもらったスーツだが、ほかに変なところがないかよく見まわす。
    他に問題がないことが分かると、エルフィーはスーツを着なおし、時計を見た。

    盾の申請が正式に受理されたお祝い兼エルフィーの卒業祝い、はまだ2時間先だ。
    レストランへ、電車で行くとしても1時間以上の余裕はある。

    エルフィーは、美容院へ行って整えた髪をそっと撫でた。
    そして、これから、自分がやろうとすることを頭の中でリハーサルしようとした。
    だが、脳裏に浮かぶのは、涼花の姿ばかりであった。

  • 18124/03/21(木) 06:03:04

    ─大人びた人だな、涼花と初めて会ったとき思ったものだ。
    仕事中は笑顔を絶やさず、仕事の細やかなところにも配慮を欠かさない。
    人気が出てきたとはいえ、一介の若輩のウマチューバーであったエルフィーにも敬意をもって接してくれた。
    涼花は、エルフィーがあまり会ったことのないような人であった。
    コラボや企業の案件も何度かやってきていたが、ここまで気が利いて、真摯に向き合ってくれたのは彼女が初めてだった。
    だから、専属のウマチューバーにならないか、と涼花に言われた時、一も二もなく承諾したのだ。

    それから、都留岐涼花とソノンエルフィーは二人三脚で歩んでいった。
    涼花が映像を編集するようになってから、動画のクオリティは上がった。
    食事や着る服に至るまで、涼花は丁寧に選んでくれる。
    困っていることがあったら、彼女は一緒に悩み、解決方法を考えてくれた。
    壮大な夢に、涼花は笑うことなく付き合い続けてくれた。
    そして、U.A.Fも二人で力を合わせて、成功させた。

    涼花の献身なくして、今のエルフィーがいるとは到底思えない。

    ビジネスパートナーなどからは、とうに超えている。
    パートナーと言う言葉でもまだ不足している。
    既に、涼花はエルフィーという存在の一部、と言ってもよいくらいだ。

    だからこそ、涼花の思いをもっと知りたいと思う時がある。
    彼女が夜、時々物憂げな表情をすることがあることは知っていた。
    もし、何か悩んでいるなら分け合ってほしいと思うことがある。

    だが、それは涼花の心に土足で踏み込むことになってしまうのではないか。
    触れてはいけない部分に触れて、傷つけてしまうのではないか。
    その思いが、エルフィーに二の足を踏ませていた。
    ぐるんぐるんと、様々な思いが最近のエルフィーの脳裏をめぐり続けていた。

  • 19124/03/21(木) 06:03:18

    しかし、今月でエルフィーは大学を卒業する。
    名実ともに社会人となるのだ。
    もう、不安がって足をすくませる少女ではない。

    ウマチューバーとしての活動も、U.A.Fの運営もいよいよ本格的になっていく。
    盾をもらったことで、それはより確実なものになった、少なくともエルフィーはそう思っている。

    だから、エルフィーはプライベートでも一歩進むことにした。
    たとえどんな結果になっても、それが涼花の意志なら受け入れたい。
    今の関係を続けられなくなっても、かまわないとさえ思っている。

    涼花がエルフィーの半身であるように、エルフィーも涼花の半身になりたいのだ。
    もし、できるのであれば、涼花とずっと一緒に─

    今包んでもらっている花を渡したとき、彼女はどのような顔をするのだろうか。
    喜んでもらえるだろうか。
    レースの前のように、胸がバクバクする。
    しかし、悪い感じはしなかった。

    「はい、包めました!頑張ってくださいね!」
    店員さんが渡してくれた袋をそっとバッグにしまったエルフィーは、確かな足取りで改札へと向かって行った。

    (了)

  • 20二次元好きの匿名さん24/03/21(木) 06:07:56

    待ってくれ、寝起きの頭に続きが気になるモノをワッと浴びせるのは

  • 21二次元好きの匿名さん24/03/21(木) 08:19:35

    こんな質量のおまけがあるかっ…!
    ありがとう…!

  • 22二次元好きの匿名さん24/03/21(木) 08:43:36

    ビジネスから始まった関係が少しずつ金銭の壁を越えてくる
    素晴らしい…♤

  • 23二次元好きの匿名さん24/03/21(木) 09:05:53

    こいつら結婚するんだ!!

  • 24二次元好きの匿名さん24/03/21(木) 19:53:27

    あっ好き♡
    大人と子ども以上大人未満とのカップリングってなんでこんなにドラマチックなんでしょ

  • 25二次元好きの匿名さん24/03/21(木) 20:00:23

    おまけが右ストレートパンチレベルなんですが。ありがとうございます。

  • 26二次元好きの匿名さん24/03/21(木) 20:03:03

    ほー いいじゃないか
    こういうのでいいんだよ
    否、こういうのがいいんだよっ…!

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