(SS注意)トレーナーの着替えを見てしてしまったトランセンドの話

  • 1二次元好きの匿名さん24/03/25(月) 23:01:53

     その瞬間、トレーナー室の時間は凍りついた。

     今、この部屋には、二人の人物がいる。
     鹿毛のショートヘア、引き込まれるような紅い瞳、レンズのない赤縁の眼鏡。
     学園での情報通と知られるウマ娘、トランセンドはドアを開けたまま、固まっていた。
     耳をぴょこぴょこと動かしながら、きょとんとした目で部屋の中を見ている。

    「……」
    「……」

     そして、その視線の先には、一人の男性がいる。
     彼はこの部屋の主、そしてトランセンドのトレーナーであった。
     中肉中背、可もなく不可もなくといった感じの目鼻立ち、まさしく普通の成人男性といったところ。
     強いて特別な点を挙げるととすれば────上半身裸である、という点であった。

    「…………」
    「…………」

     トランセンドは一先ず、後ろ手でバタンとドアを閉めた。
     そして、トレーナーの姿をじっと、興味深そうな目つきで見つめ続けている。
     その視線が刺さって来たのか、やがて彼は困ったように苦笑いをした。

    「えっと、トランさんのえっちー、とか言った方が良いのかな?」
    「むしろウチが『きゃーなんではだかなのよー』とか返すべきなんだが?」
    「まあ、ちょっと汗かいたから着替えていただけなんだけどね」
    「でもさ、うら若き乙女が通う学園で、施錠もせずにお着替えはちょっといただけないかな~?」
    「言うてノックもなしに気軽に入ってくるのはトランくらいだし、君ならこれくらい気にしないでしょ」
    「……それはそうなんだけどねー」

  • 2二次元好きの匿名さん24/03/25(月) 23:02:13

     一瞬の間を置いて、トランセンドはにやりとした笑みを浮かべる。
     トレーナーもそれに合わせて笑顔になり、部屋には気の抜けた和やかな、彼女達的には『いつもの空気』が流れて行った。
     
    「とはいえ人に見せるもんでもないし、すぐ着替えるから一旦出てってもらっても良いかな?」
    「まあまあ、待ちなよトレちゃん、まだ慌てるような時間じゃないよん」
    「トランセンドー……」
    「……ふむり、妙に引き締まった腹筋、でもジムなどに通った記録は無し、と」

     トランセンドは頭の中のデータベースを参照しながら、予測を構築していく。
     やがて、彼女はパチンと指を鳴らして、得意げな表情で言い放った。

    「ズバリ……最近出たばっかりの腹筋鍛えるヤツ使ってるっしょ!」
    「正解、ちょっと最近お腹が出ててきてさ、気になってる矢先にアレを見つけたもんだから」
    「あれすごい効くよね~、でも、ウチにはそこまでの効果がなかったんだけどな」
    「君達の場合は元からかなり鍛えてるからね、効果はそこまででないでしょ」
    「あー、なるほどねー」
     
     納得したように手を叩きながら、トランセンドは相槌を打つ。
     そこには、年頃の女学生と上半身裸の男性が和やかな会話を交える、奇妙な光景があった。
     しばらく二人は雑談を続けていると、突如、トレーナーがぶるりと震える。

    「……寒くなってきた」
    「……そりゃ、ずっと上を着てないんだから、ねえ、ウチちょっと外回ってるから早く着替えときー」
    「別にいても構わないけど?」
    「いーからいーから」

     トランセンドはくるりと背を向けて、手をひらひらと振る。
     そして、さも何事もなかったかのように、ゆっくりとした足取りでトレーナー室を出て行くのだった。

  • 3二次元好きの匿名さん24/03/25(月) 23:02:26

     パタン、とドアが閉まる音。
     トレーナー室から廊下に出たトランセンドは、そのままドアへ背中からもたれる。
     そして、顔を俯かせて、ゆっくりとその場に崩れ落ちてしまった。

    「はああぁ~~……トレちゃんはさぁ~~……あのさぁ~……!」

     トランセンドは両手をで顔を覆い、大きなため息をつく。
     そして、先ほどまで一緒にいたトレーナーに対して、一人恨み言を呟いていた。
     指の隙間などからわずかに見える彼女は頬は────真っ赤に染まっている。

    「あんな不意打ちで見せられたら、ウチだってドキドキしちゃうに決まってるじゃん……!」

     気の合う間柄でも、距離の近い関係でも、信頼している相手でも。
     トレーナーは成人男性であり、そしてトランセンドは、うら若き乙女であった。
     悶々としている彼女の脳裏には、先ほどの光景が、焼き付いて離れない。

     普段の優しそうな雰囲気からは想像の出来ない、逞しい身体つき。
     うっすらと見える、きれいに割れた腹筋。
     お臍のところにあったホクロ、意外と濃い胸の毛、ズボンから微かに見えていた下着。

     その全てが、彼女のデータベースに記録され、きっちりとロックされてしまっている。
     思い出す度に、血の廻りが激しくなって、顔の温度が高くなってしまう。
     トランセンドは、その熱を冷やすため、両手で頬を押さえた。
     あるいは、顔がにやけそうになるのを防ぐため、だったのかもしれない。

    「……早く戻さないと、トレちゃんに合わせる顔がないよ」

  • 4二次元好きの匿名さん24/03/25(月) 23:03:10

    お わ り
    本当はとあるスレに投げる用でしたが内容が合ってなかったので

  • 5二次元好きの匿名さん24/03/25(月) 23:09:48

    素晴らしい...

  • 6二次元好きの匿名さん24/03/25(月) 23:13:47

    オイオイオイ○ぬわトレちゃん

  • 7二次元好きの匿名さん24/03/26(火) 00:06:09

    このレスは削除されています

  • 8124/03/26(火) 00:07:16

    >>5

    そう言っていただけると幸いです

    >>6

    たいしたものですね

  • 9二次元好きの匿名さん24/03/26(火) 02:00:00

    トランセンドーでだめだった

  • 10二次元好きの匿名さん24/03/26(火) 06:49:15

    理性削られながら虚勢張るの尊いべ…

  • 11124/03/26(火) 16:20:24

    >>9

    それでもトランならなんとかしてくれる……

    >>10

    いいよね……

  • 12二次元好きの匿名さん24/03/26(火) 21:34:06

    👍

  • 13二次元好きの匿名さん24/03/26(火) 23:35:51

    スーッとくる

  • 14二次元好きの匿名さん24/03/26(火) 23:48:27

    さいこう

  • 15124/03/27(水) 00:19:19

    >>12

    👍

    >>13

    トランちゃんは脳にくるよね……

    >>14

    トランちゃんは最高だよね……

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