- 1二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:09:35
- 2二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:10:03
だからレス番外せって!!!!!
- 3二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:10:12
たておつ
- 4二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:11:01
- 5二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:11:24
O3
- 6二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:12:26
それだとオゾンになっちゃうんだよなぁ
- 7二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:13:13
- 8二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:17:20
- 9二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:17:55
担当したいウマ娘って言ってもイロモノ枠は絶対避けたいんだよね
- 10二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 00:20:34
時間が時間なんで保守
- 11二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 01:05:42
実際イロモノ組含めてここのチームのメンバーに対して他の人がどんな印象持ってるか気になる
とっさに頭に浮かんだ印象は大体以下の通り
オウカ ⇒ 正統派美少女、料理ガチ勢、部長、苦労人
エスキー ⇒ 副部長、姉狂い
バラカ ⇒ チーズ好き、多分一番トレーナーとイチャイチャしてる、おそらく一番雑に扱われてる
ラウエン ⇒ タコさん、しっとり勢代表
クライム ⇒ 不思議系ギャル?、不憫枠
アノン ⇒ 頑張り屋さん?、辛い物のがキレるほど嫌い、不憫枠
フワりん ⇒ 癒し勢代表、太り気味を強制される
クイン ⇒ (中身が)血統ガチ勢、クール系、爆死したスケキヨ
ライジョウドウ ⇒ ドジっ娘、大惨事枠、動物に嫌われている、主な勝ち鞍:ダーウィン賞
ボバニキ ⇒ ボバニキ
担当してみたいって意味であれば何となくだけどライクライムかなあ - 12二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 06:49:43
- 13メジロエスキーの人22/01/24(月) 06:58:31
エスキー「姉狂いって……」ショボーン
エスキモー「そりゃあれだけ姉さま姉さま言ってたらねえ……」
自分とこ以外で担当するなら部長・フラりん・クイン辺りかなあ? もちろん他の子がどうこうじゃなくて、己のキャパシティの問題。面白い子たちはトレーナー業に慣れてきた頃に担当させてもらいたい。 - 14二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 07:19:13
「イチャイチャ……?」
「イチャイチャ……???」
「まあ雑に扱われているのはそうですよね。謝罪と改善とお詫びにチーズか果物を要求します」
「はいレーズン入りクリームチーズ」
「確かに間違ってはいませんけど!」 - 15二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 08:03:07
おはようございます、たておつです∠( ̄^ ̄)
担当トレーナーになるなら…自分も含めて一癖も二癖もありますからね…上手く力を引き出せなさそうなので、選ぶならあまり波乱万丈が無さそうなオウカさんでしょうか - 16メジロエスキーの人22/01/24(月) 08:32:25
- 17二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 08:39:19
クインの特徴の血統狂いと馬券逆神は中の人要素だし、クール枠つってもほぼ話に入ってこないからじゃねーかよ あーーーっ!
- 18二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 08:43:09
馬券逆神とまでは言ってねえけど…?
- 19二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 12:21:54
おうもっとクインちゃんらしさを知らしめるエピソードを捏造するんだよ
- 20メジロエスキーの人22/01/24(月) 12:37:42
- 21二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 12:50:16
上の方でざっくりとした印象書いたけどこういうイメージもある気がするとかあれば挙げてほしいぞ
あと足りないメンバーとかの印象とかについては誰か付け足して - 22二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 13:05:40
んまぁクインのSSとか戦績とか描写しないのは訳があって
自分で戦績とかそういうのを規定するとウマ娘としての己の限界を定めるようで好きじゃないっていうね
「ウマ娘になりたい部」だからウマ娘になったらあれしたいこれしたいは列挙しても、その結末だけは絶対に固定したくないのよ
まあ目標レース挙げるくらいならええか
桜花賞/オークス/菊花賞で"真の意味でのティアラ三冠"(秋華もエリ女も正確にはクラシック競争ではないため)
1953年のレダ以来となるティアラ路線出身者の天皇賞(春)勝利
アーモンドアイへの憧れから最高のジャパンカップで有終の美を飾ること
とりあえず思いついたのはこんなところ - 23二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 13:24:37
>その結末だけは絶対に固定したくないのよ
気持ちはよく分かるぞ
なので普段は頭スカスカで日常系のコミュばっかり書いてる
- 24二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 13:29:07
このレスは削除されています
- 25二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 14:16:31
海外遠征組って海外のトレセン設備使えるんかな?
というか海外ってどんな設備あるんだ - 26二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 14:21:36
- 27二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 14:30:34
牡馬ニキを里帰りさせるなおじさん「牡馬ニキをアメリカに戻すな(良心)」
- 28二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 14:37:09
あーボバニキ米血統か
いやでも本国でもそんな変わらない疑惑 - 29二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 15:06:16
俺やだよボバーの家にホームステイしたら全員あのノリなの
- 30二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 15:22:07
母ボバー「ハーイ!マイドーター元気してた?母さん今ね、ドローンとダクトテープでパパのすね毛を全脱毛するチャレンジしてるのよウェヒヒ!」
父ボバー「アーウチ!ハハハ、やったなマイワイフ。オーウ!!お帰りマイシュガー!見てなさい、今すぐお兄ちゃんがパパがしかけたハッカ油プールから出てくるからね。ヴァハハハ!」
兄ボバー「アーウ!!!!!!オーウ!!!!!!!ファック!!!!!!アーオ!!!!!フォーウ!!!!!ガッデム!!!フーウーウ!!!!!!」
- 31二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 15:30:34
>ハッカ油プール
兄ボバー可哀想……。
- 32二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 15:50:24
うるさすぎて眠れないんだけど()
- 33メジロエスキーの人22/01/24(月) 17:18:56
よっしゃ、チームでブリーダーズカップ遠征するときの滞在先はボバー家で決定ですね()
- 34二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 17:22:47
地獄か???
- 35メジロエスキーの人22/01/24(月) 19:28:22
ボバー家滞在記SS頑張って書こうとしたけど、ボバー家エミュができなかったので誰かにお任せします……
- 36二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 19:37:10
癖強すぎて誰もエミュできないと思うんですけど(凡推理)
- 37二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 19:40:52
ボバニキ自身がまず無理ではないかと愚考する次第?
- 38二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 19:41:44
そもそも牡馬ニキ兄弟おるの?から始まる
- 39二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 19:48:09
ぜんぜんわからない。俺たちは雰囲気でボバーエミュをしている(できない)
- 40メジロエスキーの人22/01/24(月) 20:13:36
牡馬ニキには家族構成を公開してほしい所存
- 41二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 20:46:15
「BC遠征ですか。アメリカのチーズは欧州の後追いの面はあるものの、昨今は様々なものが生み出されていると聞きますね」
「口を開けばチーズのことしか言えんのかお前」
「万が一ボバーさんの家に宿泊することになったらどうしようという恐怖から目をそらしているんですよ」
「失礼だぞお前」
追加でお前の相手もしないといけない子が一番恐怖してると思ったが
失礼だと言った手前口にしないトレーナーであった - 42二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:19:39
なーんでうちの家族構成の話題になってるんすかねぇ……。
ウマ娘になったらそっちの家族構成に引っ張られるんじゃないすか?そこんとこどうなんすか血統ニキ氏 - 43二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:27:48
自分も知らん()
カリフォルニアクロームとセットで因子継承元に選んだロッキングルドルフが2013年生まれの2018年引退だけど全く情報がない
好きに決めてもろて - 44二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:35:59
ボバーの担当トレーナーとして普段は思いっきり振り回されてるけど、
バレンタインやクリスマスみたいなイベントでふとした瞬間不意打ち気味に女の子らしさを出してくるカンパナーレボバーを見たいと思うんは女々か? - 45二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:38:29
当たり前のように同じスレの住民に雌を見出すのはただの狂気なんよ()
- 46メジロエスキーの人22/01/24(月) 21:40:10
- 47二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:41:09
ウマ娘ってだけで基本的に性別的にはメスでは???
- 48二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:44:11
怒らないでくださいね
スレの住民(実質ナマモノ)にメス堕ちを求めるイカれ方なんてここ以外だと801板くらいしか無いじゃないですか - 49二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:45:06
- 50二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:46:37
ボバーちゃんが女の子してる姿は私の趣味にあってるのでOKです
- 51メジロエスキーの人22/01/24(月) 21:47:54
それはそうなんだけど、普段中高生男子っぽくふざけてる子がいきなりキュートな部分見せてきたらギャップ萌えしません?って話ですよ
- 52二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 21:47:55
お前ら牡馬ニキが牡馬ネキだったらどうすんだ
- 53メジロエスキーの人22/01/24(月) 21:49:53
それはそれで面白いのでおっけーでは?
- 54二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:35:45
- 55二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:40:16
- 56二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:40:24
- 57二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:41:13
- 58二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:44:38
これあれだ、家族からのビデオメッセージの最後にタイキック差し込まれたココリコ田中だ
- 59二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:48:30
(冷え切ったバラカが布団にくるまる音)
(部屋に来たボバさんにハッカ油タオルをぶつける音) - 60二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:51:07
どうしてこんなことに……
- 61二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:55:45
牡馬ニキにウマ娘化どうなんって聞いただけで悲劇が起きています
いや、冬にやらかしてるので惨劇といってもいいでしょう - 62二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:59:45
家族とメス堕ちをネタにしたからだと思うんですけど(凡推理
- 63二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:59:46
とりあえず復讐を企てなければ
水筒に苦みを濃縮した汁を垂らしときました
クライムより - 64二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 23:06:02
- 65二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 23:46:23
>あとこれ見てるチームカオスメンバーへ
>備品の汗ふきタオルにハッカ油原液噴霧しといた
>回避したやつは顔面ボディシートの刑
もしかしたらボバーなりの照れ隠しではないだろうか
ボブは訝しんだ
- 66オウカ22/01/25(火) 00:30:41
ふふっ……トレーニング終わったしご褒美のプリンを……(フキフキ)……ア゜ァ゜ッッッッッッ
- 67二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 00:35:47
時間差で部長に被害は草
- 68どうしても伝えたいことがある22/01/25(火) 00:38:13
ボバニキのቻソቻソはナイナイ(ヾノ・∀・`)
- 69二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 00:57:11
- 70メジロエスキーの人22/01/25(火) 06:50:12
エスキモー「トレーナー! スースーしないタイプのボディペーパー持ってない???」ガラッバタン
トレーナー「えーっと、はい。で何があったんだ?」ヒョイッ
エスキモー「ありがと。それがボバーさんがタオルにハッカ油仕掛けてて……」パシッ
トレーナー「あの子は相変わらずだなあ」
エスキモー「あぁ〜ようやくスースーするのがマシになる……」フキフキ
トレーナー「ちょっ…! 何服脱いでるんだ!」
エスキモー「それは脱がないと体拭けn……あっ」
トレーナー「……」
エスキモー「トレーナーのえっち! バカ! 変態! こっち見ないで!!!」
トレーナー「見てない見てない!!! すぐ目逸らしたから!!!」
エスキモー(うぅ……もうお嫁に行けない……)
トレーナー(雑念除去雑念除去……観自在菩薩行深般若波羅密多……)
なんでだ……悪いことしてないのに…… - 71二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 11:48:35
もはや二次被害は管轄外なんですけど!!
- 72メジロエスキーの人22/01/25(火) 12:49:10
エスキー「もう怒りました。ボバーさんが使うバスタオルをハッカ油の原液に漬け込んでおきます。やられたらやり返す……倍返しですっ!」
エスキモー「とりあえずバラカさんにも声かけておこっか……」 - 73フラりんの人22/01/25(火) 15:53:59
やったー!SSがついに書き終わったー!(/ ・ω・)/バンザーイ
- 74メジロエスキーの人22/01/25(火) 16:58:48
- 75フラりんの人22/01/25(火) 17:56:37
く、クオリティはそんなに期待しないでください((((;゚Д゚))))
- 76二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 19:18:32
でもそれで「じゃあクオリティには期待しねえわ」って言われても嫌だよね?
期待してるね!!!!! - 77フラりんの人22/01/25(火) 19:25:41
( 」´0`)」Oh nooo!!!
期待していただけて感謝ですm(_ _)m 今見返しましたが長文ペタペタでスレを乗っ取ってしまいそうなので、Wikiの方に載せる?か別スレで建てるか迷ってます です - 78二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 19:55:24
個人的にはその二択ならwikiの方が
言っちゃなんだがこのスレマイナー概念だし、外に出すのもなーと - 79メジロエスキーの人22/01/25(火) 20:00:10
ここのスレに定期的に何レスか投下するとかは?
投下したあとまとめてwikiに貼るとかでもいいんじゃない? - 80二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 20:30:59
SSで数レス使うぐらいざらなんよ
- 81二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 22:19:27
...:.;::..;::: .:.;::….;: ̄)…:.;:□ ̄)( ̄□ ̄*)復活!
ありがとうございます、定期的に載せて、最後にWikiにまとめなげにしようと思いまする - 82フラワリングタイムの人22/01/25(火) 22:30:34
では早速投下させて頂きます<(_ _)>
開花の刻。夢見る蕾は、華々しい中央の園にひっそりと佇んでいた。ポツポツと周りがその花弁を広げる最中、蕾はじっと耐えて開花を待ち続けていた。その娘の名は、フラワリングタイム。桃色の髪が美しい、とても背丈の小さなウマ娘。本格化を迎え、世代の頂点を競うクラシック級へと歩みを進めていた。
「……勝てない…」
しかし、彼女の顔は暗かった。短距離戦で無事にデビューを果たし、マイル距離や短距離に挑み続けた。…確かに勝負にはなる。食らつけない訳じゃない。けれど、勝てるのはオープン戦まで。リステッド競走。G3。レベルが上がるにつれて、周りの速度は上がっていく。いつしか、掲示板に入ることさえ、出来なくなっていた。
「…やっぱり…私には才能が…」
気付けば、口から漏れる声。辛い。諦めてしまいたい。けれど、それは裏切りだ。私に期待を込めて中央に送り出してくれた、家族や友達に対する裏切り。諦めてはいけない。我武者羅にでも脚を動かし続けろ。自分を鼓舞し、必死にトレーニングを続けてきた。
「…弱音を吐いちゃ駄目。頑張れ私!」
夜のコースを駆け抜けていく。地面を蹴り抜く音。足りない。頬を切り裂いていく風。足りない。周りの子は。周りの子はもっと力強かった。もっと速かった。どうして私の脚は…力強く走れないんだろう…
「…リング!」
「…トレーナーさん…」
「どうしたんだ、これ以上はオーバーワークだぞ?」
「……ごめんなさい…」
分かっています。でも、今の私じゃ勝てないから。重賞レースに勝つには、今以上に努力しないといけないから。……顔に出ていたのでしょうか。彼はふぅ、と肩を竦めました。
「頑張りたい気持ちはよく分かる。でも休む時は休まないとな。脚を壊して走れなくなったら元も子も無いだろ?」
ポン、と優しく頭に添えられる手。私は背が低いので、よくトレーナーさんに頭をぽんぽんされます。多分、癖になってるんだと思います。
「…分かりました」
その日は、練習を止めて休む事にしました。
世代最強マイラーを決める、クラシックGI、NHKマイルカップ。選ばれし18人の精鋭達がターフに集う。彼女はそれを、画面越しに眺めていた。
「いよいよ始まるな。じっくり研究しよう!」
「…はい。ごめんなさい…私、出走のチャンスすら掴めなくて…」
- 83フラワリングタイムの人22/01/25(火) 22:34:08
「気にするなって。GIに出れる子はほんのひと握りだ。それにこれからもチャンスはある!頑張ろうな!」
「……はい…!」
この人はいつだって、足りない私を信じてくれている。走ることを諦めるという事は、彼も裏切ってしまうということ。だから諦めちゃ駄目。頑張れ、私。でも…その言葉が何故か、私の胸に深く突き刺さる。苦しい。辛い。…言い出せなかった。
春のGI戦線も終わりを告げ、太陽が厳しく照りつける夏がやってきた。この時期はトレセン学園で最も重要な時期とも言える、夏合宿の期間。生徒達は海沿いの町へと移動し、各々トレーニングを行う。
…ところが。
「リングがいない!?」
合宿日当日、彼女の同室の子にそう伝えられ、焦る担当トレーナー。急いでスマホから連絡を送るも、返事は帰ってこない。
「なにがあったんだ…!」
彼女は真面目なタイプだ。夏合宿をサボるような真似はしないはずだ。急いで学園と話をつけ、彼女の捜索に当たることにした。商店街、神社、レース場。彼女が行きそうな場所を当たってみたが、見つかる気配は無かった。
「……駄目か…」
手詰まりになり、諦めるしか無いかと思われたその時、トレーナーの携帯にピロンと一通の連絡が届いた。フラワリングタイムからだった。
『勝手な事をしてしまい、申し訳ありません』
『二人でお話がしたいので、あの場所に来て頂けませんか?』
あの場所。二人が初めて出会った、二人だけの内緒の場所だ。トレーナーはその文を読むなり、脇目も振らずに走り出した。彼女が心配だった。何があったのか。街並みを越え、土手を駆け上がり、川沿いを駆け抜けた。ゼェゼェと立ち上る荒い息も、脚に蓄積されていく疲労も、すべて根性で噛み殺して駆け抜けた。
やがて川沿いに、小さな原っぱが開けた。なんの変哲も無い小さな公園。ここが、二人にとって大切な出会いの地。誰にも邪魔されず、二人で話せる秘密の場所。一輪の花も咲いていない淋しい公園に、彼女は一人で佇んでいた。
「リング!」
「…トレーナーさん。…ごめんなさい」
先ず、彼女は謝った。勝手にいなくなった事。心配をかけさせた事。探させてしまった事。そのすべてに。
「謝る事は無いさ。…ちゃんと訳を聞かせてくれたらな」
彼女は賢い子だ。理由も無く逃げ出したりはしないだろう。トレーナーは彼女を信じていた。
「…はい。お話します」
- 84フラワリングタイムの人22/01/25(火) 22:35:28
真っ直ぐに彼の目を見て、自分の心情を吐露した。レースに勝てないこと。周りに着いていけないこと。そして、諦めたくないと自分を追い詰めた末に、耐えきれなくなって逃げ出してしまったこと。
「私…もう頑張れない…です……」
そして、そんな自分への自己嫌悪。どこまでも真面目で、愚直で、素直な子だった。成長出来ていない現実を素直に受け止め、心が折れてしまった。気付けば、彼女の目が涙で溢れていた。
「…よく話してくれた」
滴る雫に、何もしてやれない自分が憎らしかった。彼女の力になれない自分が悔しかった。しっかり指導してやれれば、こんな事にはならなかったのに。
「君が望むなら、俺はそれに従うよ。もう、覚悟は出来てるのか?」
「……出来ていないと言えば、嘘になります…」
「そうだな。簡単に結論なんか出せないさ。一時の気の迷いかもしれない」
でも。とトレーナーは続けた。
「一番大事なのは、君の心だ。辛いのに、嫌なのに、無理矢理走って心を壊してしまったら?…今だけじゃなく、一生を棒に振る事になる」
怯えるように震える彼女に、トレーナーは優しく諭すように伝えた。
「逃げるのは決して恥ずかしい事じゃない。走る事をすっぱり諦めて、他の道で幸せになるのも立派な人生だ。だからここで辞めたって俺は何も言わなし、続けるなら、君を応援し続ける。ただし、自分の身体と相談して…本当に自分の為になる方を選択してくれ」
「トレーナーさん…」
私は、目を閉じて自分の胸に手を当てました。聞こえていたけど、聞いていなかった、自分自身の声。私はどうしたいの?……ううん、本当は分かってる。諦めたくない気持ちは、きっと胸の奥に燻ってる。でも……私は私の為に……
「…決めました。トレーナーさん」
「そうか。教えてくれるか?」
「はい。……私は…」
- 85フラワリングタイムの人22/01/25(火) 22:37:55
夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が訪れた。12月。もう誰も来ない原っぱに、彼は一人で訪れていた。彼女がいなくなって、はや半年。毎日ここに訪れては、一つだけあるベンチに座って、彼女の記憶を思い出す。
『君、なんでこんなところに?』
『貴方も…どうしてここに?』
出会いは、ほんの偶然だった。体力作りのランニング中に寄り道をして、偶然ここを通りかかった事。桃色の髪の美しい少女が花を愛でていたのだ。
『ここは春になると、綺麗な花が咲き乱れるんです。表の通りからは見えないので、ちょっとした隠れスポットなんですよ』
『そうだったのか……時期的にそろそろだな。俺も一緒に見せて貰って良いかな?』
『もちろんです!』
それから数日後、見せてもらった花畑はとても綺麗だった。赤、白、青。綺麗なコントラストが公園いっぱいに広がっていた。
『ふふっ、綺麗ですよね』
『ああ。とっても綺麗だ』
満開の花弁。この小さな花園の風景に心奪われていたが、ふと、視界に入ったものがあった。それは何よりも美しく、彼の心を強く引き付けた。
『どうかしましたか?』
『いや、なにも……』
夢を見るかのように輝く美しい瞳。なんて綺麗な目をするのだろうか。いかん、このままでは俺はロリコンだ…自分を取り戻し、花の鑑賞を楽しんだ。
『かけっこが得意なのか?』
『はい。地元ではいつも一番で、中央に行くように勧められたんです!』
『へえー、それで本当に中央に来れるなんて大したものだな』
それから、彼女とは何度かこの花園で出会い、そのつど、話をするようになった。自分もトレーナーであることを明かし、彼女の夢を聞いていた。
『そう言えば、中央での目標はあるのか?勝ちたいレースとかは?』
『私は花のように大切に育てて頂きました。だから…育ててくれた皆様にお礼がしたいんです。大きなレースを、花束のように束ねたいです!』
『おお、野望家だな。GIを沢山取って、皆に渡せると良いな』
『はいっ!』
俺は彼女に何を持たせてやれただろうか。…言ってみろ。彼女は何を持って、地元に帰った?答えてみろ。中央のトレーナー。彼女は何も。何も持たずにここを去ったじゃないか。頭が痛い。やめてくれ。
- 86フラワリングタイムの人22/01/25(火) 22:40:50
『君が走る所、見せてくれないか?』
『私の?…私で良いんですか?』
『ああ。君だから見たいんだ。トレーナーとして、君のウマ娘としての実力を知りたい』
『なるほど…分かりました。頑張ります!』
選抜レース、1200mの短距離戦。14番のゼッケンを背負って、彼女はゲートから飛び出した。力強い短距離勢の脚にも負けず、彼女は4コーナーを曲がっていく!
『はあああああああっ!!』
『……!』
あの輝き。短距離レースでありながら、後方から差しに行くあの鋭い末脚。間違いない。彼女は素質のあるウマ娘だ。一気に加速し、直線一気。そのまま先頭を駆け抜け、見事に一着でゴールした!
『やったな!フラワリングタイム!』
『ありがとうございます!…私の走り、如何でしたか?』
『最高だった!』
こんな走りができるなら、本当に夢を掴めるかもしれない。彼女のこれからへの期待に、胸を弾ませた。そして、そんな彼女を担当したいという想いも胸に募って行った。
『えへへ…良かったです。…あの、トレーナーさん』
『ん?』
『もし、よろしければ、私の事を担当して頂けませんか?』
『俺でよければ。…是非とも担当させて欲しい』
『…はいっ!よろしくお願いします!』
ブツリ。と映像が途絶えた。幸せな日々は途絶え、全てが消え去った、冷たい冬が目の前に残っていた。一年半。君は本当によく頑張った。…だから、俺も諦めはつけるつもりだった。
「…忘れられないもんだな」
- 87フラワリングタイムの人22/01/25(火) 22:41:27
長くなりすぎたので本日はここまで お目汚し失礼致しました<(_ _)>
- 88二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 22:55:48
そういやフラワリングタイムって特に重めの挫折を味わってる子やねんな…
- 89二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 22:58:25
ちゃんと14番のゼッケン背負ってるの激エモ…
- 90二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 22:59:27
14ってそういうことか!!
- 91二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 23:16:02
- 92二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 00:05:25
ちょっと「メスの顔してるボバーが見てぇ~(意訳)」とか言って戻ってきたら、ハッカ油の原液と顔面冷却シートのダブルパンチに加えて、良SSの両方をぶつけられて混乱している
- 93二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 06:40:05
ここからフラリんが返り咲いてスイーツするようになると思うと楽しみすぎる
- 94メジロエスキーの人22/01/26(水) 08:36:40
いい導入と曇らせじゃないですか……
というかやっぱりハードル上げたの正解じゃないですか() - 95二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 12:00:22
こんにちは、フラワリングタイムの人です
皆様に色々感想を贈って頂けて嬉しいです<(_ _)>
夜にちょくちょく更新させて頂きます
- 96二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 16:40:34
- 97メジロエスキーの人22/01/26(水) 16:42:45
- 98フラワリングタイムの人22/01/26(水) 16:55:30
うっ奢られたケーキ美味しい…太る…
- 99アノンパレットの人22/01/26(水) 16:56:55
フワりん……併走付き合うね…。
- 100フラワリングタイムの人22/01/26(水) 17:02:14
- 101二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 17:10:32
- 102二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 17:13:05
ケーキに見せかけた和菓子あげるね…
- 103二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 17:13:11
- 104メジロエスキーの人22/01/26(水) 17:20:22
いきなり実験台にされるライジョウドウちゃんに悲しい過去……
- 105二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 18:41:56
- 106二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 18:51:59
- 107メジロエスキーの人22/01/26(水) 19:02:33
- 108二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 19:02:48
「ちなみに糖質の摂取量と2型糖尿病への罹患に大した因果関係はありませんよ」
「どうした急に」
「いえ、ウマ電波をキャッチしたので」
「お前の耳はパラボラか何かなの? ……それなら原因は?」
「はい。2型糖尿病に罹患する要因で大きいのはぶっちゃけ肥満です。
何ならカロリーの9割を炭水化物で満たしてても食事内容と運動習慣がまともなら太らないし罹患もしません」
「意外とまともなことも言うんだな」
「僕はいつでもまともですよ」 - 109パクパクしません!22/01/26(水) 19:09:47
- 110二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 19:13:16
食った後にタバタ式トレーニングさせよう(提案)
- 111二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 19:16:23
食後タバタは戻すよ
- 112二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 19:16:41
運動直前の食事は血糖値が急激に下がるから避けよう!
- 113メジロエスキーの人22/01/26(水) 19:41:26
- 114二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:25:16
タバタはエアロバイクでやるのが一番簡単に追い込める
可能ならバーピーでやるのが楽しいけど端的に言って死ぬ
おそらく短距離ウマ娘はあんまり意味ない(主に心肺機能の向上トレーニングなので
マイル~中距離だとまあまあ、長距離だと大いに役立つ……って感じでしょうか - 115二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:28:33
HIIT及びSITについて競走馬のトレーニングに転用できるかの資料あったはずだから待って
- 116二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:29:01
だそうですよフラりん
フラりん「私今日だけ短距離ウマ娘になります!」 - 117二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:36:10
最初の方のスレで坂路がインターバルトレーニングだって話があったな
「つまりこうですね。全力20秒坂路を駆け上がって10秒で駆け下りるのを8セット」
「本気でやりたいならトレーニング組んでもいいぞ。負担デカすぎるから体調管理とアフターケアはいつも以上に入念にすることになるけど」
「ぶっちゃけ死にそうですけどいっぺんやってみたいですね」
「お前の好奇心だけで生きる姿勢は好きだよ」
- 118>>11522/01/26(水) 20:41:13
- 119>>11522/01/26(水) 20:41:48
- 120二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:43:01
あっ手ブレと画質圧縮で読みにくくなってら…
まあ判読できればええやろ(適当 - 121二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:45:00
あと他の号でも似たようなこと取り上げてた気がするんよな…。
探すか - 122二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:45:00
これ見る限り順当にHIITは馬の心肺機能に効きそうだな
ウマ娘の場合はまあ基本人間だしさらに妥当だけど - 123二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:48:55
- 124二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20:57:39
「――と、いうわけで、インターバルトレーニングに大事なのは強度と間欠性だ」
「なるほど。超高強度間欠的坂路走こそ最強だと」
「おう最強だよ負担もな」
「震えが走ってきました。よーし」
* * *
「ゼ…ヒ…コヒュ……」
「うし。アイシングしつつ休憩。動けるようになったらスロージョギングでアクティブレストな」
「(耳だけで頷く)」 - 125二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 21:03:09
- 126二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 21:15:44
"折り合いを欠く"
こりゃバクシンに不向きなトレーニングですわぁ… - 127メジロエスキーの人22/01/26(水) 21:30:33
やっぱり君すごいわ……
あ、あとSSまとめてみたのでお時間ある方は是非。適宜修正する予定(たぶん)
あなたと歩みたい夢(メジロエスキーSS) - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【1/26更新】あらすじ URAファイナルズをメジロドーベルとともに制したトレーナー。理事長室に呼び出しを受けた帰りにタキオンの研究に付き合わされたところ、なんと体がウマ娘に……? 主要な登場人物 + メジロエスキー...w.atwiki.jp - 128二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 21:35:49
SSのまとめ素晴らしい…各スレに離散してたから読みやすくなってたすかる
- 129二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 21:36:06
おかしいね、ウマ娘になりたいからって最初は血統だけを調べるつもりだったのに気がついたら運動生理学から臨床スポーツ医学まで調べる羽目になるとは
- 130フラワリングタイムの人22/01/26(水) 21:38:25
SSまとめ、ありがとうございます!
話をぶっちぎるようで悪いのですが、私も投下して大丈夫でしょうか? - 131二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 21:39:13
まあウマ娘にふさわしいトレーニングとかの解像度を上げるためには大事だ
巨大タイヤ? ギャグでしょ(目をそらす - 132二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 21:40:30
かもんかもーん
- 133メジロエスキーの人22/01/26(水) 21:41:03
- 134フラワリングタイムの人22/01/26(水) 21:45:38
では失礼します( ̄^ ̄)ゞ
一年半付き添った担当を失い、次の担当も直ぐには見つからないだろうとの事で休養を貰っているが、どうしても彼女の事が忘れられない。
『何かあったら、ここに連絡をお願いします』
スマホに残された最後のメッセージを見る。彼女が何かあった時の為に残しておいた、最後の連絡。けれど、ここにメッセージを送る事は無かった。自分が声をかけて、また走る事を思い出してしまったら悪いと思ったのだ。
『様子を見に行っても良いか?』
そこまで打って、カチッと電源ボタンを押した。スリープモードの黒い画面を、穴が空くほど見つめる。送っても良いのだろうか。嫌ではないだろうか。不安に駆られ、一歩を踏み出せないでいた。
その時、フワリ。と、枯れた花弁が画面に乗っかった。邪魔なのでどかそうとした拍子に、画面が起動してしまった。そしてそのまま、手を滑らせるように送信ボタンを押してしまった。
「や、やばっ……!」
急いで取り消そうとしたが…既読が直ぐについた。ついてしまった。今更取り消しなど無意味だ。ドキドキと高鳴る心臓を抱え、彼女の反応を待つしかない。5分か、10分くらい経った頃だろうか。音を立てて返信が付いた。
『大丈夫ですよ。少し遠いですが、良ければお越しください』
そうして、送られて来たのは彼女の実家の花屋のホームページ。かなりの大手らしく、広大な敷地が映し出されていた。多分、ここに来て欲しいという事だろう。彼女に許可を貰った喜び半分、嫌ではないだろうかと不安半分で、彼は電車に飛び乗った。
小一時間程電車を乗り継ぎ、夕方頃には彼女の実家へたどり着いた。広大な敷地の大半は花の育成に使用されており、その中にある家とお店、両方を兼用として使われているであろう建物部分へと立ち寄った。
「失礼しまーす…」
「いらっしゃいませ…トレーナーさん!」
「リング!」
バッタリ出会ったのは、店番中のフラワリングタイム。お互いビックリして、それからシーンとなった。何から言うべきか、お互いに迷っているようだった。
- 135フラワリングタイムの人22/01/26(水) 21:48:19
「ひ、久しぶり。元気か?」
「…はい。トレーナーさんもその…お変わりなく…?」
「そうだな。変わらず元気だよ」
「そうですか!良かった……えっと、そうだ。立ち話もなんですから、上がってください。これからお店を閉めるので、その後に話しましょう」
「ああ……片付け、手伝おうか?」
「大丈夫です、すぐに終わりますから」
そう言って彼女は、店の片付けへと向かって行った。彼女はてきぱきと商品であろう花を片付けて、10分ほどで完璧な状態で店じまいを済ませた。
「お待たせしました、トレーナーさん」
「ああ、構わないよ。…お店のお手伝いをしてるのか?」
「はい。学園で上手くいかなかった時のプランとして、実家を継ぐ事を決めていたんです。今は見習い練習中…と言ったところです」
「そうか…偉いな」
落ち込んでいないか心配だったが、元気にやれているようで何よりだ。ホッと安堵の息が漏れ、今まで身体に詰まっていた緊張も軽くほぐれた。
「でも、突然どうしたんですか?今まで…音沙汰も無かったですし…」
耳も垂れてシュンと落ち込む。全く連絡されなかったのが、少しショックだったようだ。
「君に声をかけて良いか迷ってたんだ。…もし、俺が声をかけて辛い事を思い出してしまったら、君に悪いと思って」
「トレーナーさん…ありがとうございます。大丈夫ですよ。むしろ、ずっと放置されていて、ちょっと寂しかったです」
ぷくっと頬を膨らませる。背の小ささも相まって、動作の一つ一つに小動物的可愛さがある。
「それはごめん……」
「良いですよ。ちゃんと来てくださいましたから。久々にトレーナーさんと話せてホッとしました」
小さくはにかみ、鈴を転がすように笑った。前と変わらず、愛らしく、可愛かったが、どこか、彼女の目は濁っているように見えた。
「俺も元気な君が見れてよかった。…トレセンを辞めてしばらく経つけど、気持ちの整理は済んだか?」
「…正直に言うと、まだ…です。もう少し頑張れば良かったかなって、ときどき思うんです」
「そうか…でも、あの日出した答えは間違いだとは思わない。君は、自分をしっかり省みて判断を下したんだから」
「ありがとうございます。…」
何かを言おうとして、もごもごと口ごもった。トレーナーもそれには気付いたが、彼女の心情が分からない以上、下手に追求して刺激するのは避けるべきだと思った。
- 136フラワリングタイムの人22/01/26(水) 21:50:41
「…だから、その、なんだ。あんまり気にしなくて良いからな。来て欲しくなったら呼んでくれ。また見に来る」
「…はい。ありがとうございます」
それじゃあ、様子も見れたしこの辺で、と立ち上がろうとした時、フラワリングタイムが声を上げた。
「トレーナーさん。良かったら、ご飯、召し上がって行きませんか?」
「え?良いのか?…家族に迷惑だったりしないか?」
「大丈夫です。お母さんにも、元担当トレーナーさんだと説明しますから」
「それは助かるけど…」
だとしても迷惑じゃないか?と思っていたが、腹の虫は素直にぐるるるぅ〜…と情けない声をあげた。折角誘ってもらったので、夕食をご馳走になる事にした。
「そうですか、娘がお世話になりました」
彼女の母もウマ娘だった。どこかで見た事あるような姿だったが、イマイチ思い出せなかった。彼女によく似て、とても美人であった。
「こちらこそ、彼女にはお世話になりました。…この様な結果になってしまい、申し訳ありません」
「まあ、気にしないで下さい。貴方にはしっかり、あの子の気持ちを尊重して頂いたのですから」
皿洗いに従事するフラワリングタイムの後ろで、おおよそこんな問答を何度か繰り返してから、トレーナーはそろそろ帰る事を彼女に伝えた。
「では、俺はこれで。ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「お粗末様でした。トレーナーさん。よろしければ…また、あの子の様子を見に来てくださいませんか?」
「ええ、それはもちろん。彼女が望むなら…ですが」
「是非。…あの子、とても元気そうに見えたでしょうけど…昨日まで、あんな様子は見せなかったんです。きっと、貴方が来ると分かって嬉しかったのでしょう」
「……!」
自分が来ると分かって、元気になるものだろうか。まさか、関係も無くなった自分に会いたい訳ではあるまい。だとしたら…もしかしたら彼女は……
「…分かりました。また、必ず」
母親に頷いてから、トレーナーは最後に皿洗いを済ませたフラワリングタイムの方へ足を運んだ。
「リング、今日はありがとう。とても楽しかった」
「えへへ…どういたしまして。もう、行ってしまうんですか?」
「ああ、今日の所はな。でもまた、すぐに様子を見に来るよ」
「そうですか!私も楽しみに待ってますね」
「ありがとう。もし、君が良ければ…次来る時は、君の走りを見せて欲しい」
「私の走り…」
- 137フラワリングタイムの人22/01/26(水) 21:53:01
彼女は一瞬驚き、それからしばらく目を泳がせて躊躇ったが、ギュッと目を閉じてから真っ直ぐにトレーナーの方を見つめて答えた。
「…わかりました。お見せします」
「ありがとな。…楽しみにしてる」
ぽんぽん、といつもの癖で頭を撫でてから、トレーナーは帰路へと向かった。
それから数日。有馬記念も終了し、冬のGI戦線も終わりを告げた。冬休み期間に入ったトレセン学園に一旦別れを告げて、トレーナーはフラワリングタイムの元を訪れた。事前に連絡を入れておいたので、今回はすんなりと向かうことが出来た。
「よっ、久しぶり…って程でもないか?」
「ふふっ、お久しぶりです。トレーナーさん。今日は…」
「…ああ。約束通り、君の走りを見せて貰いに来た。準備は出来てるか?」
「はい。大丈夫です」
また日も高い昼頃、二人は近くの公園へと立ち寄った。ここはウマ娘用のランニングコースが用意された公園で、地元の学生であろうウマ娘達がジャージ姿で走り込んでいた。
「お、やってるな。流石はウマ娘だ」
「そうですね…トレーナーさん。本当に私の走りで良いんですか?」
彼は新しい担当を探さなくてはならないはずだ。自分にばかり構ってもらう訳にもいかないだろう。トレーナーは小さく頷いた。
「ああ。君の走りが見たい」
「…わかりました」
軽く準備運動を済ませると、ラチと安全用の仕切りを兼ねている柵の扉部分を開けて、彼女はコースへと降り立った。中央トレセンのジャージが目立つのか、周りのウマ娘は彼女を見てガヤガヤとしていた。
「いつも通りで大丈夫ですか?」
「そうだな。いつもみたいに短距離想定で走ろう」
一週2000m。短距離を想定し、その半分の1000mを走る。ゴール地点にトレーナーが立ち、フラワリングタイムがスタートする。彼女はスタートすると、綺麗にコーナリングを決め、あの頃と変わりない、鋭く差し込むような走りでゴール板を駆け抜けた。その走りは、近くにいた地方のウマ娘達が驚く程に軽やかだった。
「ゴール!…凄いな、あの頃からタイムが落ちてないじゃないか」
「えへへ…たまたまです。それで…走りを見て、なにか分かりましたか?」
「そうだな。色々悩んでたんだが…今の走りを見て確信したよ。君がまだ……走る事を諦めきれていないって」
- 138フラワリングタイムの人22/01/26(水) 21:55:43
「……!」
夏に学園を飛び出してからもう半年。何もしていないウマ娘が、自分のタイムを保持し続けられる訳が無い。コースを無駄なく走り抜け、従来通りのタイムを出せるとすれば、彼女がしている事はひとつだ。
「まだ、諦めきれて無いだろ?自主的にトレーニングを積んで…いつかまた、返り咲こうと努力してた。でなきゃ、このタイムは出せないはずだ」
「……凄いですね。トレーナーさん…私が自主練習していた事を見抜いてしまうなんて」
「これでも一応、中央のトレーナーなんでな。君達の事には敏感でいるつもりだ」
そして、そんな君をトレーナーとして放っておくわけにはいかなかった。もし、まだ君が走る気があるなら。まだ頑張れる気力があるなら、再び中央で走ってほしい。
「リング。君が良ければ…もう一度、一緒に走らないか?」
「ありがとうございます。誘って頂いてとても嬉しいです。…私も…もう一度走れたら良いなって。…そう思ってました。ですが…」
彼女の顔が陰った。それから、彼女は自分の胸に手を当てて伝えた。
「…でも、怖いんです。負けてしまったらどうしよう。また、周りに置いていかれてしまう。負ける私が…私は怖い…」
そうして、彼女は目に涙を滲ませた。
「…私は逃げてしまいました。もう負けたくなくて。辛い思いをしたくなくて。大事なクラシック期間も…すべて捨ててしまった。今から復帰しても…私はもう…皆には追い付けない…」
戦いから逃げ出した者に、現実は深く重くのしかかる。もう追いつけない絶望。耐えられない重圧感。これは本人にしか分からない苦しみだろう。
「……そうだな。辛いだろうし、怖いだろう。それでも俺は、君に伝えたい」
すう、と軽く息をつく。そして、真っ直ぐに彼女の顔を見つめた。
「…やらずに後悔するより、思いきって挑戦して欲しい。君はまだ、花開けるはずだ」
彼女の気持ちはよく分かる。負けて悔しかった。負けて苦しかった。全部俺の指導不足だと思った。だから。
彼女は、優しく微笑んだ。けど、その笑みは空元気で作り出したものだ。トレーナーには直ぐに分かった。
「…ありがとうございます。とっても嬉しいです。でも…やっぱり負けるのが怖いです。走れる自信がありません…」
「…そうだよな。それが嫌で学園を抜けたんだ。無理に治せとは言えないな」
「……ごめんなさい」
- 139フラワリングタイムの人22/01/26(水) 22:00:15
彼はそっと頭をぽんぽんと撫でた。
「良いんだ。君がその気になったらで良い。君のやる気が知れて良かった。今日はありがとう」
「……はいっ…」
私はなんて情けないんでしょう。こんなにも誠心誠意支えて下さっているトレーナーさんの想いを無下にしてしまって。負けるのが怖くなければ…また…学園に戻れるのに…私は……
「よし、確かめたい事も確認できた。走ってくれてありがとう。そろそろ帰るか?」
「…そうですね。走る気が無いのにコースにいても邪魔でしょうから」
トレーナーが先に扉を開け、コースから出る。フラワリングタイムもそれに続くように、コースを出ようとしたその時だった。
「あの、すみません!」
「「?」」
二人を引き止めたのは、桃色の髪を携えたウマ娘。先程までフラワリングタイムの走りを見ていた、地方のトレセン学園の生徒だった。
「さっきの走り、まっことカッコ良かったです!流石は中央のウマ娘さんですね!」
「…!…ありがとうございます…でも私は……」
それを続ける前に、トレーナーが笑った。
「はは、そうだろそうだろ。なんたってリングはオープンウマ娘なんだ。重賞レースだって走った事あるんだぜ」
「オープンウマ娘!しやり素晴らしいです!」
目を輝かせる地方のウマ娘さん。彼女には本当の事を伝えた方が良いのでしょうか。でも…
「それで、俺達に何か用?」
「あ、いけない…目的をすっかり忘れてました……あ、あの!私と競走して頂けませんか!」
「競走……」
ちらり、とフラワリングタイムは彼の方を困ったように見つめた。地方のウマ娘にとって、中央は憧れの世界であり、目標でもある。一緒に走ったとなれば、自分の力がどれ程なのか知るのにも良い機会になるだろう。
「せっかく頼まれたんだ。走ってあげようぜ。リング」
「そうですね。…私で良ければ、相手になりますよ」
「やった!ありがとうございます!」
- 140フラワリングタイムの人22/01/26(水) 22:01:27
区切りをつけて今日はここまで!長々と失礼致しました!<(_ _)>
全然進まなかった(:D)┼─┤バタッ
- 141二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 22:10:31
このハイクオリティで長文を書けるとは中の人の文章力もステイヤー並だな…
- 142二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 22:32:36
- 143パクパクしません!22/01/26(水) 23:09:13
あ^〜五臓六腑に染み渡る^〜!フラりんもSS纏めて♡
- 144二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 00:53:49
地方のウマ娘との交流いいゾ〜
- 145二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 06:55:09
そうだフラリんまだ咲けるんだ
というか遅咲きでもOP行ってるあたり出来る子ですねやっぱ - 146メジロエスキーの人22/01/27(木) 07:53:55
これは脚溜めてますね〜 ここからどう中央復帰してトレラブになるのか楽しみです
- 147二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:04:29
フラりん……めっちゃ良いじゃん……ここからどうう花開くのか早く見たい
- 148二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:22:03
挫折から復帰まで丁寧に描写されている+114514点
- 149二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:24:55
このレスは削除されています
- 150二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:26:32
このレスは削除されています
- 151二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:31:04
このレスは削除されています
- 152二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:32:18
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- 153二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:34:17
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- 154二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:39:49
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- 155二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 09:49:07
このレスは削除されています
- 156二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 10:13:36
ss大好きなのでしょう
- 157フラワリングタイムの人22/01/27(木) 11:55:21
こんにちは!
様々な感想、ありがとうございます!励みになります!こちらで書き終わりましたら、Wikiの方にまとめたいと思います! - 158二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 14:26:37
ふむ、軽く覗いて見たら良いSSが置かれていた
続きを待たせて貰おう - 159二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 18:30:10
- 160アノンパレットの人22/01/27(木) 18:32:58
にんじんハンバーグ!!
- 161二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 18:34:42
どれが当たってもそこそこ楽しめそうだけど、ティッシュは普通に使い道がない…
- 162二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 18:36:27
温泉りょこ―― (!掛かり
冗談は置いといてにんじん山盛りが良いかな
ハンバーグは自分で作れば良い - 163二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 18:57:44
ブレイブロードはよく食べるタイプなので2等のにんじん山盛りはその日の内に食べ尽くす
1等のにんじんハンバーグは好物がお子様寄りなのもあってアタリの中じゃ一番喜ぶと思う
特等を当てた時はめっちゃテンション上がるけど寮に帰るころには落ち着いて(高額商品券とかのほうがよかったなー)とか考え出す
多分「温泉旅行のペア券とかよく考えたらそこまで欲しく物じゃなかったしどうしようかなー」とか思ってる
それでしばらくは温泉旅行のことを忘れて過ごして、使用期限が近づいてからやっと使いだすよ
まあ温泉旅行行く頃にはトレーナーに男性観ぶっ壊されてるんだけど - 164二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 18:58:50
温泉旅行さえもらえればあとは何も望みません
- 165二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 19:03:53
冷静に言ってさ
温泉旅行なんて普通に誘えば良いんですよ - 166二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 19:28:52
つまりこのチームメンバーで選定した景品が当たる新春福引大会が始まる…?
- 167メジロプログレスの人22/01/27(木) 19:32:51
人参ハンバーグ美味しそうだから欲しいけど人参いっぱいの方が欲しいな…人参パーティしたい
- 168二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 19:42:29
クインは花粉症なのでティッシュは普通に嬉しいが、温泉旅行は多分誰かにあげる。時間を食う行動は好きじゃねえんだ…。
人参だって単品で貰ってもな…アマさんあげるか - 169二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 19:49:42
どうしてそんなヤバいことになりそうな企画するんてですか…?
- 170二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 19:50:39
私は温泉旅行…じゃなくて人参山盛りが良いですね
皆に料理とかのお裾分けがしたいです
スレも後半気味なので今日は早めに投下します 投下失礼します∠( ̄^ ̄) - 171フラワリングタイムの人22/01/27(木) 19:53:08
「やったー!ありがとうございます!ええと、どんな距離で走りましょう?」
「君の得意な距離で良いよ。こっちはオープンウマ娘だしな。それくらいはハンデとしてちょうど良いだろ」
「はい、私も大丈夫です。貴方の得意な距離で走りましょう」
「本当ですか?ありがとうございます!私はクラシックディスタンスが得意なんです。それくらいでお願い出来ますか?」
「OK、それじゃあ日本ダービーと同じ2400mにしようか。ぐるっと一周して……ここがゴールだ」
ラインカーで白線をぴーっと引いて、ゴールラインを作り出す。クラシックディスタンス。いわゆる中距離レースの事で、フラワリングタイムはあまり走った事が無い距離だ。
「分かりました!精一杯走らせていただきます!よろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いします(…地方のウマ娘さん。彼女も真剣なアスリート。本気で挑まないと失礼ですね)」
ざり、と公園の土を踏みしめる。距離は2400m。走った事が無いわけじゃない。短距離路線で勝てなかった時、何度かトレーナーさんと練習したから。二人はスタートラインに並び、準備を済ませる。
「準備は良いか?用意…!」
ピーッ!と開始の合図が鳴り響く。二人のウマ娘は土を蹴り上げ、力強く第一コーナーへと差し掛かっていく。前を走るのがフラワリングタイム。その少し後ろに、あのウマ娘がつける。
「(差し…!私と同じ作戦ですね…)」
「ほっ…ほっ……!」
華麗なコーナリングにも見事に食らいつき、2バ身ほどの差を保ちながら向正面へとさしかかる。ハンデがあるとはいえ、見事な足さばきだ。
「(良い調子…脚も保てています。これなら…)」
「ふっ!」
────ミシッ……!
「(っ!?)」
トレーナーも驚きの表情を見せる。彼女が取ったのは、まさかの中盤からのロングスパート。コーナー入口でフラワリングタイムの横に並ぶと、そのままじわじわと速度を上げて彼女を抜き去っていく!
「(凄い加速……っ!)」
こちらも負けじとスパートを開始するが、やはり慣れない中距離。思ったよりも速度が出ず、彼女との差が全然縮まらない。そのままコーナーを曲がりきると、最後の直線へ入った。
- 172フラワリングタイムの人22/01/27(木) 19:55:57
彼女が先。このままじゃ、負ける。
また、負けてしまう。
どうしようもない恐怖が、ずしりと彼女の背中にのしかかった。
嫌だ。負けたくない。負けたくない。あんな嫌な思いは。もう二度と…
脚が重い。もう、辞めてしまいたい。やっぱり、私は……
「頑張れ!」
トレーナーさん…応援してくれてる…
……ねえ。逃げるの?私。
逃げて、逃げて、逃げて。辛い思いをしなくて、それで満足?
違うでしょ。…本当は分かってる。怖いけど。嫌だけど。でも。
私は……
『私は走りたい!走って勝ちたい!』
瞳が燃える。闘志が揺らぐ。今、胸の中に燃え盛っているこの想い。忘れていた。僅かに揺らめく想いの篝火。とても小さい。けれど、この想いは絶対に消えない。私という命尽きるまで、決して燃え尽きる事は無い!
「っあああああああああああ!!!」
「っ!来たッ!」
風を切り裂く音。吹き抜ける突風。もう伸びないかと思われたフラワリングタイムは、末脚を繰り出して加速し始めた!ラスト200m。ロングスパートを仕掛けていた彼女の横に再び並び、ゴール板直前で一気に半バ身差をつけて圧勝した!
「はぁ…はぁ……勝った…!」
「ぜぇ…はぁ…ま、負けたーっ!悔しー!」
ヘロヘロになって倒れ込む彼女を、フラワリングタイムは優しく抱えて介抱した。傍から見ていると、二人ともとても楽しそうな顔をしていた。
「良い走りでした。思わず胸が熱くなっちゃいました!」
「えへへ…ありがとうございます。私もです!」
「二人ともお疲れ様だったな。白熱したレースだった」
周りには他にもウマ娘や一般人もいたが、二人の白熱したレースを見て拍手やら声援やらが贈られてきていた。二人も照れくさそうに顔を赤くしていた。
- 173フラワリングタイムの人22/01/27(木) 19:58:21
「ありがとうございます。フラワリングタイムさん、凄く強かったです!」
「貴方もとても強かったですよ。ええと、お名前を伺っても?」
「いけね…名乗り忘れてました。私、ハルノコンパクトって言います」
「素敵なお名前ですね。…ありがとうございます、ハルノさん。楽しいレースが出来ました」
「こちらこそ…ありがとうございました。トレーナーさんも、ありがとうございますです!」
「ああ、どういたしまして。…それじゃ、今度こそ戻るか」
「はい。…そうだ、ハルノさん。良かったら連絡先、教えて貰えませんか?」
「えっ!?良いですけど、私なんかの連絡先、使いますか?」
「はい。一緒に走った友達ですから。良ければ、これからも仲良くして欲しいなって思ったんです」
「…!こ、こちらこそ!お願いします!」
こうして、ハルノコンパクトの活躍によって、フラワリングタイムの心に再び闘志が宿った。二人は友達として連絡先を交換し、お互いの事について文章で語り合ったりしたのだった。
…その日の帰り道。
「面白い子だったな」
「…はい。最初は驚いちゃいましたけど、凄く素直で素敵な人でした」
トレーナーも先程の走りを見てから、なんだか顔色が明るく見えた。フラワリングタイムが、楽しそうに笑っていたからだった。
「…俺も彼女に学ばされたよ。君に何を教えるべきだったのか、やっと気付いた」
「……それって…?」
「走った後の君達を見て分かった。楽しそうに微笑む君。負けても楽しそうに笑ってた彼女。レースが楽しいものってことを、君に思い出させるべきだった」
「……!」
確かに、負けるのは怖かった。私もトレーナーさんも、負けて落ち込む事ばかりに目がいって、肝心な事を見落としてしまっていた。レースは楽しいものなんだ。真剣勝負。本気で挑む。その通りだ。間違っていない。でも、楽しむ事を忘れたら心は疲れてしまう。私たちは、二人揃って見落としてた。こんなに簡単な事なのに。
私達、似たもの同士なのかもしれませんね。
「…もう一度、聞いても良いか?」
トレーナーがその場に立ち止まる。夕陽が映る川沿いは赤く照らされ、とても綺麗で美しかった。
- 174フラワリングタイムの人22/01/27(木) 19:59:35
- 175フラワリングタイムの人22/01/27(木) 20:01:49
冬休みも終わり、ウマ娘達が学園へと戻る時期がやってきた。可愛らしい学園の制服を着て、フラワリングタイムは今一度学園の門を潜ったのだった。突如いなくなったことで同期や先輩からも大変心配されていたらしく、戻ってきてからしばらくは色々な子に声をかけられていた。
「お待たせしました。トレーナーさん」
「おう。今日も可愛がられてたな」
「はい…皆さん、本当に心配してくれてたみたいで…申し訳ないです…」
「まあ、半年くらい音沙汰無しだったし仕方ないな。学園には無事に戻れた訳だし、じき落ち着くさ。…さて、今日はちょっと君に提案がある」
「なんでしょう?」
「これから走る君のレースなんだが…短距離路線から別の路線に変えてみないか?」
「えっ……!?」
まさかの提案。路線を変えるというのは、そう簡単な事ではない。我々の肉体も、短距離向きの筋肉がつく者や、長距離向きの筋肉がつく者がいるように、ウマ娘にも得意距離というものが存在する。自らの筋肉と合致した適性距離を選ばなければ、当然その道のスペシャリストに蹂躙される。超一流のウマ娘でも無い限りは、路線を変えるのは悪手という事になる。
「えっと…構いませんが……どうして路線変更を?」
「この前、君と一緒に走ったあの子だ。彼女の事が気になって調べてみたんだが、彼女は大井所属でAクラスを走ってるらしい」
「Aクラス…!」
大井と言えば、地方の中でも最強クラスの南関東トレセンの代表。国内ダート最強候補を送り出す強豪校だ。そして、Aクラスはその大井の中でも最強のグレード。交流戦で中央の猛者と叩き合いを行う程だ。
「君の方が力は上とはいえ…君に不利なバ場、距離で対等に渡り合えるハズが無いと思ったんだ」
「なるほど…それで私に…」
「ああ、もしかしたら中距離以上にも適性があるんじゃないかと思った」
距離適性があれば、不利なバ場だとしても最後に差しきる事も出来るだろう。
「分かりました。やってみます!…具体的にはどの路線を目指しましょうか」
「まだ具体的には決められないな。中長距離を走ってみて、適性があれば長距離路線も視野に入れよう」
「はいっ!」
- 176フラワリングタイムの人22/01/27(木) 20:03:15
本日はここまでとさせて頂きます
長々と失礼致しました!<(_ _)>
- 177二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 20:03:55
負けても楽しむことができるのって才能だよなぁ…
- 178メジロエスキーの人22/01/27(木) 20:12:23
レース描写いいですね……!
そして学園に復帰。おかえりなさい!
エスキー「それは温泉一択ですよっ!」
エスキモー「温泉自体も好きだけど、私は温泉街巡るのも好きだな。城崎みたいな街が大好き」
エスキー「じゃあじゃあ……誰誘います?」
エスキモー「エスキーはドーベルさん一択でしょ? 私は……うーん……誰かいるかなぁ?」
エスキー「とぼけちゃって〜このこの〜 トレーナーさん、ですよね?」
エスキモー「ち、ち、違うしっ! ……私なんかが誘っても……」
エスキー「大丈夫ですよ、エスキモーちゃん! 絶対一緒に来てくれますって!」
エスキモー「ほんと……? じゃあ頑張って誘ってみるっ!」
中の人温泉大好きなので。長い休みが取れたら北海道とか東北の温泉巡ってみたいですね
- 179二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 20:24:32
https://db.sp.netkeiba.com/horse/2018101881/
ハルノコンパクトってもしかして高知2冠馬のハルノインパクトが由来かね…
それなら彼女が訛ってるのも高知弁で上手く噛み合うし
- 180二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 20:39:54
- 181二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 20:40:37
- 182二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 20:54:02
フラワリングタイム連絡無しで失踪したんか…!?って思ったけど流石に学園側には連絡いれてるか
地方ダートだともしかしたら交流重賞で奇人×2とぶつかる可能性もワンチャン……? - 183二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 20:55:57
新鮮なSSをありがとう
>180
江口先生って誰だ…
- 184二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:14:42
オラッ!次のチャンミはフェブラリーステークスだ!
とっとと準備しろダート組!! - 185二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:15:29
皆様、感想ありがとうございます!名前の由来は確かにハルノインパクトから取らせてもらいました!もちろん学園には連絡を入れましたよ!
- 186シンボリラウエンの人22/01/27(木) 21:29:13
バラカ先輩チャンミがんばえ〜!
- 187二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:30:50
同室の奇人×2は確定であと1枠か
- 188メジロエスキーの人22/01/27(木) 21:31:29
バラカの適正ってダート中長距離じゃなかったっけ……?
今回の舞台には牡馬ニキの方が向きそう - 189シンボリラウエンの人22/01/27(木) 21:34:42
Eまでは実質Aなんだ◇
- 190二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:35:02
バラカは魔改造すれば走れるかな? って程度の適正ですね>マイル
ゲーム的に考えると産廃一直線のクソ適正
- 191二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:36:19
フラりんマイルも走れたよね!ダート魔改造して参加すっぞ!
- 192二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:37:04
- 193シンボリラウエンの人22/01/27(木) 21:38:48
Gは無茶すぎんか?いいぞもっとやれ
- 194メジロエスキーの人22/01/27(木) 21:39:41
目標レースに川崎記念とか名古屋グランプリとかありそうだしね、バラカって。ゲームなら、まあ、うん……
- 195二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:39:48
- 196二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:40:10
たておつ梅
- 197二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:41:07
おっしゃ次じゃ…おい1レス目
- 198メジロエスキーの人22/01/27(木) 21:41:36
梅梅
- 199二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:41:44
うめ
- 200二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 21:41:48
うめ