【SS注意】昼下がりの攻防戦

  • 1二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 19:47:34

    ある日の昼休み。デアリングタクトは食堂にいた。クラスの友人たちはあいにく都合がつかず、今日は一人。

    「Hi、タクト。ご機嫌いかが?」

    席を探してあたりを見回していると、不意に声をかけられた。デアリングハート。同じティアラ路線の先輩と言う他にも何かと縁があり、かなり親しくしている。

    「ハートさん。こんにちは」
    「そうそう。この前、あなたに似合いそうなワンピースを見つけたの。きっと気に入ると思うわ。どう?今日の放課後ショッピングでも」

    アメリカ育ちのハートのファッションセンスは、学園内でも有名だ。彼女が言うのなら、そのワンピースはさぞ素敵なものなのだろう。年頃の女の子らしく自分の外見を気にし始めたタクトにとって、その提案はとても魅力的だった。

  • 2二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 19:47:59

    「はい!ぜひ……」
    「あ、いたいた。タクトー!」

    ハートに了承の意を伝えようとしたとき、聞きなれた声がした。嬉しそうな笑顔で駆けよって来る、一人のウマ娘。

    「シーザリオさん」
    「この前美味しいって言ってくれたケーキ、レシピ書いてきたんだ。今日の放課後、一緒に作らない?」

    シーザリオの提案も、タクトにとってはこれまた魅力的だった。ストイックな面ばかりが注目されがちな彼女だが、実はお菓子作りの腕はかなりのもの。所属するチームアスケラのメンバーの他、タクトをはじめとした彼女を慕う後輩たちの間では有名なのだ。お菓子作りは、会得しておいて損はない技術。腕も人柄もよく知る先輩から教えてもらえるのは、この上なく嬉しいことだ。

  • 3二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 19:48:23

    Sorry、シーザリオ。タクトは今日、私とショッピングに行く約束なの。それにあなた、この前もタクトと遊んでたでしょう?」
    「あれは遊びではなく練習だ。勘違いしないでもらいたい」

    シーザリオの口調と声色が突然変わり、二人の間に静かな火花が散った。ぴりついた空気が流れる。その原因が自分の取り合いと言う事実が、タクトの居心地の悪さを加速させた。自分がどちらかを選べば、この場は収まるだろう。しかしデアリングハートもシーザリオも、タクトにとっては大好きな、尊敬する先輩。安易にどちらかを選んで、機嫌を損ねるようなことはしたくない。

  • 4二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 19:49:01

    「とにかく、今日は私に譲ってくれない?」
    「既にキッチン使用の申請も済ませて、材料も買いそろえた。今更予定を変更するのは難しい」
    「あなた一人で作ればいいじゃない」
    「ハートこそ。買い物なんていつでも行けるだろう」
    「Duh……引く気はないってことね」
    「無論だ」
    「タクト。Please choose。あなたの放課後よ。選ぶ権利はあなたにあるわ」
    「お前の選択に異議を唱えることはしない。さあ、どうする」

    二人の視線が迫る。ハートとショッピングに行くか、シーザリオとケーキを作るか……もういっそ、別の予定があることにして逃げてしまうか……タクトの頭は混乱するばかりだった。

    「ちょっと待った―!」

    突然、大きな声がした。驚いてその主に視線をやる三人。そこには、制服からお腹を出したスペシャルウィークが立っていた。

  • 5二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 19:49:21

    「な、なんでそうなったか分かんないですけど、タクトちゃん困ってるじゃないですか!二人とも!後輩を困らせちゃ駄目ですよ!」

    渡りに船とはこのこと。二人にとっても先輩であるスペシャルウィークに、どうにかこの場を治めてもらおう。タクトは一連の出来事を、スペシャルウィークに説明しようと試みた。しかし、二人はそれを許さない。

    「先輩には関係のないことです。介入しないでいただけますか」
    「ええ。これは私たち三人の問題ですので」
    「でも……こ、後輩が困ってるのに放っておけません!」

    タクトはスペシャルウィークに、目線で精一杯訴えた。気付いているのか、スペシャルウィークもどうにか助けようとしてくれている。しかし詳しい状況が伝わらない以上、彼女にできることは限られている。もうどうしようもない。タクトが半ば諦めかけたときだった。

  • 6二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 19:49:42

    「そ、そうだ!ウマ娘なら、喧嘩は走って解決しましょう!今から並走です!」
    「望むところだ。ハート」
    「OK。手は抜かないわよ」

    スペシャルウィークの提案に、二人の目の色が変わる。もはや趣旨が変わってしまいそうだが、この際この状況を解決できるならなんでもいい。今日の放課後は、勝った方と過ごすことにしよう。

    「さ、着替えるぞ」
    「え?」
    「何してるのよタクト!Hurry up!」

    なぜか当然のように、タクトも参加することになっていた。その後、三人は昼休みの間中、昼食を取っていないことも忘れて走り続けた。スペシャルウィークも加わり、かなり豪華な練習風景。その様子に、いつの間にか他の生徒たちが見物に集まっていた。午後の授業で三人そろって腹の虫が大声で鳴いたのは、また別のお話。

  • 7二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 19:50:22

    お わ り
    タクトちゃんおばあちゃんズにいっぱい可愛がられててほしい。

  • 8二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 20:03:21

    面白かった
    メインで掘り下げあって思ったけどハートもシーザリオも面倒見の良さそう感とタクトの見た目の後輩力高そう感あるよね…

  • 9二次元好きの匿名さん24/03/29(金) 21:28:55

    タクトが「新年あけましておめでとうございます!」って着物着てきたらニコニコでとんでもない額のお年玉あげてそうだなこの2人…

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