- 1二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:37:04
「今日はエイプリルフールか……だからといって軽々しく嘘はつくなよ? 口は災いの元と言うからな」
「分かってるよ、嘘は良くないからね」
自らへの戒めも含めて私は彼に言い聞かせる。
エイプリルフール…その日だけは嘘をついて良い…
イギリスでは正午までとは言うが、ここ日本では基本的に一日中だ。……全く誰がそんな日を思いついたのか。
確かに冗談は人を笑わせる事もあるだろう。だが、冗談……つまり嘘は本質的には人を欺くものだ。
どんなに軽い嘘だとしても相手がそれをどう取るかは分からない。それに軽い嘘が積み重なれば次第に取り返しが付かなくなる……それが気づく時にはもう手遅れなのである。
だからこそ周囲の模範たる私が嘘をつく事があってはならないのだ。少々強引かもしれないが彼……私のトレーナーにも嘘はつくなと伝えた。時に誤魔化そうとする時があるが……まあ良い、それはあくまでも上手く答えられない時だけだ。
それに理想や願いを押し付ける事は良くない。その上でトレーナーに頼んでいる事は承知の上だ。
彼にもその事は伝えている。笑顔で快諾してくれたが少々申し訳ないことをしたとは思っている……
「それじゃ今日一日頑張るか」
「ああ、そうだな」
嘘をついて良い日でも周囲に流されずに誠実にいる。
それでいい、それが模範たる者を目指す私の今日あるべき姿なのだから。 - 2二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:37:39
「今朝のニュース知ってる?あのタマモギドラの化石が公園で発掘されたって!」
「どぼめじろう先生って実はメジロの出身だって!」
「この学園にパンサラッサのお母さんがいるぞ!」
「ルドルフ会長が漫才大会で優勝って本当!?」
「アイルランドの王族の人が今度この学園に訪問するらしいぞ!」
やはりエイプリルフール、私が耳をすませば周囲から嘘のような話が沢山聞こえてくる。
……いや最後のは嘘だよな? 頼むそうであってくれ……
最後のは兎も角微笑ましい限りの冗談の数々。
だが気をつけなければならない。どんなに誠実であっても、一度羽目を外せば抑えていたものを取り払えば際限がなくなる。そして抑えをなくせば溢れるようにエスカレートしていくものなのだから……
「実は私、カレン先輩のトレーナーさんの妹なの!」
(むっ、この冗談はいかがなものか………ん?)
「ちょっとそこのあなた?ちょっとカレンと"お話"しよっか?」
「あ、いや、冗談ですよ!あはは……」
「そっかぁ……でもちょっとそれはさ、カワイクないかなぁ…だから少し……ね?」
「…………ハイ」
(ま、まぁカレンの耳に届いたのなら問題ない…のか?)
今回はあの生徒が"お話"をするだけで済んだのだが、もしこれが大事になれば……と思うと正直ゾッとする。度が過ぎるのは注意するべきかと思って歩いていると話し声が聞こえてきた。 - 3二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:38:09
(む、この声は……)
(あれはトレーナー? それと隣にいるのは確か桐生院トレーナーか……)
その声がする場所へ近づくとトレーナーが他の者と談笑していたのが見えたので耳をすましてみると……
「今日実はミークと一緒にティラノサウルスと並走してたんです!そしたら理事長代理がトリケラトプスに乗って追い込みをかけてきたんですよ!」
「えぇ……本当ですか?」
「はい!冗談です!エイプリルフールですから!」
「やっぱりね……」
桐生院葵…ハッピーミークのトレーナーにして名門桐生院家のトレーナー……
私とミークは互いに競い合い切磋琢磨する仲…ならばそれぞれのトレーナー同士が交流する事は自然な事。それに私のトレーナーがあの名門出身のトレーナーと対等に話をしている……その事は私としても自慢に思える。
だが、どうして、なんで———
こんなにも胸が痛いのだろうか
(何故だ!新人だったあいつが名門出身の者にも認められている……それは担当の私にとっても喜ばしいことなのだぞ!? それなのに何故……)
———悔しいと思ってしまうのか?
喜ばしいと悔しい、そんな私の矛盾した葛藤をよそに二人の会話は続いていた。 - 4二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:38:55
「トレーナーさんは何かあるんですか?」
「いやぁ…昔から嘘は下手でしてね…それにいざ嘘を言おうとしても躊躇ってしまうんですよ」
「そうですか…でも素晴らしいですね。常に正直だからこそ、エアグルーヴさんにも信頼されているんですから……私が貴方の担当ウマ娘だったら貴方の事を好きになっちゃいますね」
「そう言われるとなんだか恥ずかしいなぁ…」
(たわけ!そんな嬉しそうにするな!……大体"好き"になりそうだなんて言われたくら…い……で………?)
解決できない葛藤を抱えながら二人の会話を聞いていた私……だが、その二人の会話が答えへと繋がったのだ。
(私は今、あいつが他の女性から好きになりそうと言われた事に怒っていた……?)
(それは私はあいつが他の女性と仲良くしているのが嫌で堪らなかった……?)
(つまり私は……トレーナーの…事を……)
辿り着いてしまった葛藤への答え
まるでそれは私が無意識に避けていた一つの答え
私は恐る恐るその答えとなる言葉を呟く
(私は…トレー…ナーの事が…好き……?)
(私は、トレーナーの事が好き……)
(私は! トレーナーのことがすき…っ……!)
(あ…あぁ……わ…わたし…は……)
分かってしまった……気付いてしまった……
私はトレーナーの事が好きなのだと。
そして私は嘘をついていたのだと。
それも今日だけではなく今までずっと……
その嘘をついていた相手は友人でも親でも、ましてやトレーナーでもなく……私自身だったのだと
この秘める想いを抑え込んで、目を逸らして、自らの理想を目指す……
そのために理想を体現するためのあるべき姿で振る舞わなければならないと言い聞かせて……
———私自身を誤魔化し続けてきたのだと - 5二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:39:49
自分が嘘をついていた。それも自分につき続けてきたという事実。
(トレーナーが…すき………)
それを自覚したその瞬間、私の内側から炎が燃え上がった。しかしそれはレースで燃え上がるような…焼き尽くすような青い闘志の炎ではなく、じわりじわりと焦がし溶かしていくようなドス黒い炎だった。
(すき……そうだ…私の…私だけの………)
それと同時に私の心の中で何かが外れる音がして、外れたそこからドロドロとした何かが溢れ出るとそれはドス黒い炎に流れ込み、更にその炎の勢いを強めていく。
絡みつくようなドス黒い炎…その炎が私の内側を全て包み込んだ瞬間、私は動き始めていた。
「やはりここにいたか……探したぞたわけ」
嘘だ。私はずっと近くにいたのだから。
気付けば彼女の姿が見えない。
どうやら私が動く前に彼女も席を外していた。
———ならば好都合だ。
「グルーヴ、何かあったのか?」
「今日のトレーニングの後の事についてだ。今日の練習分だけではなくもう少し付け加えたい」
嘘だ。互いに話し合って決めているものに異論など挟むものか。
「何を追加で行いたい? 問題ないと思うけどこちら側としても判断はしたいからさ」
「そうだな……貴様の部屋で打ち合わせやビデオでのフォームの確認、それと他の者の動きの分析をしたい。なに、外泊届は出しておくから問題なかろう」
半分嘘だ。これは貴様の部屋へ入る口実にすぎない。
「そっか、それじゃ資料は用意しておくよ」
「ああ、よろしく頼むぞ」
私は今、嘘をついている。
それも一つではなく幾つも嘘を重ねている……
先程までの私が見たらさぞ軽蔑するだろう。
だが、もう構わない……
私は…知らぬうちに大きな嘘を今までつき続けてきたのだから……
今更嘘を一つ二つ重ねた所で…恐れるものか——— - 6二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:40:10
そして日が沈む頃———
今日の分の練習を終え、服を着替えてトレーナーの部屋に入り鍵を閉める。
若干散らかった部屋の中にある更に散らかった机の上で仕事をしているトレーナーがそこにいた。
(全く、ここまで散らかして……今度私が掃除しなければならんな……そうだ…私が…私だけが………トレーナー……)
そんな事を思っていると仕事をしていた彼が私の方へ振り向いていた。
「今日はお疲れ様。資料は揃えてあるから始める?」
「いや、練習後だから少し休ませてもらおう。それに急に時間を取らせたのだ、貴様にもやるべき仕事があるだろう? 外泊届は出してあるからそれを済ませた後でも問題はないだろう」
「分かった。なら少し待っててくれ、すぐに終わる」
「構わんと言っただろう。それに口よりも先に手を動かせたわけ」
嘘だ。本当は早く貴様と…早く貴様が私の側に座って欲しい…だが迷惑をかけたくはない……
(わたしは…トレーナーが…すき……)
そう考えた瞬間、あの時纏わりついてきたドス黒い炎が再び私の内側で燃え広がる。それは先程まで自問自答していた私のそれを焦がし溶かしていった。
(あぁ…そうだ、もう…構わない…構わないんだ……)
「さてと、ひと段落したし始めるか」
「ならここに座れ」
そう思ったタイミングで仕事が片付いたトレーナーを私の横に座らせビデオのスイッチを押す。
映し出される練習中の私の姿とレースで駆け抜ける私の姿。その姿をじっと凝視するトレーナー。
「遠慮はいらん。私の走りに何か改善できる所があれば言ってくれ」
嘘だ。そんな事は映像を見るお題目に過ぎない。
(そうだ…その目に焼き付けるように私の姿を見ろ……)
「若干ここのペース配分を意識した方がいいだろうな。まぁ誤差といえばそうなんだが……ただ……」
「何だ?言ってみろ」
「やっぱりいつ見ても綺麗な走りだよな…皆が憧れるのも頷けるよ」
「———ッ、たわけ……」 - 7二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:40:33
(すき…すき………すき……っ)
その言葉を聞いた瞬間、あのドス黒い炎が勢いを増して私を包み込むように溶かしていく。
もう、抑えきれない———
「それじゃあ次は今後競う事になる相手の動きを分析しようか」
トレーナーが映像を変えようと立ち上がる。
この時を待っていた……
そのために私は嘘を重ねてきたのだ……
この機を逃さない———
私は側に置いてある二つのリモコンを手に取った。
直後部屋の明かりが消える。
続けてテレビの電気も消える。
「!?」
突然の暗闇、その暗闇から伸びてきた何かに引き摺られたトレーナーは……
ソファの上で私に押し倒されていた。
「あの…グルーヴ?」
腕を押さえつけられて動けない故の問いかけ……それを私は無視して顔を凝視する。
(たわけ…かわいい…すき…すき………)
蛇に睨まれた蛙のように動けないその姿を見れば見るほど、私の中で燃え盛るドス黒い炎が心地よい……
「そうだ、貴様は正直だ…正直すぎるのだ…だからこそ皆に好かれる…こうして私の言葉も信じる…表裏も関係なく信じてしまう……」
私と彼の距離が縮まる。観念したのだろうか、先程まで抵抗していた動きがピタリと止まる。
(すき…トレーナー…すき…あと少しで………)
そうして私は…………
これ以上動けなかった——— - 8二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:41:00
「…………グルーヴ?」
(どうして……動けない!? ここまできて何故だ!?)
互いに金縛りにあったかのように動きが静止し、そのまま時間だけが過ぎる。
(何故抵抗しない?何故何も言わない?私が嘘を重ねたというのに何故だ!?)
「……………グルーヴ」
(そもそもトレーナーはどう思っているのだ?受け入れるような姿を見せて…本当は嫌なのでは…それこそ自身に嘘をついている?…まさか…私はこれを望んでいた?)
そのまっすぐな瞳に見つめられるほど、自分の思考が乱される。
(彼なら何があってもたとえ本心でなくても私を受け入れてくれると、その思い込みが私を動かしていた? なら今この私の"すき"はそのための理由付け? わたしの"すき"も…ぜんぶ…う……そ………?)
「グルーヴ」
気付けば動揺して緩んでいたのだろうか、トレーナーが手を伸ばしてくる。
突き放されるのだろうか、それともビンタでもされるのだろうか、そう思っていても私の身体は動けなかった。
(何を言われようが受け入れよう…私は嘘を重ねすぎた……こうして困らせてしまった……もう…こんな卑しい私など………)
だが諦念に包まれた私の心とは裏腹に、彼の手は振り解くこともなく、突き放すこともなく私の頬を優しくその手で撫でた。
「ゆっくり深呼吸」
その言葉に従うように深呼吸する。すると私に纏わりついていたドス黒い炎が消えていく。
「大丈夫。俺は"嘘"をつかないからさ」
「———ッ!」
その言葉を聞いた瞬間、ドス黒いものではない炎が私の中で燃え上がった。
「だから、君の望む事を……」
「トレーナー……っ」
気付けば彼の言葉を遮るように、私達の距離はゼロになっていた。
暫くして再び私達の間に距離が生まれる。
何分……いや数十分だった筈なのに一瞬に感じる。
だが距離が生まれた瞬間、確かに距離がゼロになっていた透明な"証"が私達の間に生まれていた。 - 9二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:41:31
その直後、私の身体は引き寄せられ目の前のトレーナーに抱きしめられる。
「頑張ったね」
優しく抱きしめられながら頭を撫でられると今まで強張っていた心と身体から力が抜け、そのまま私の心で抑えていたものが溢れ出す……
「私は…嘘をついていた…貴様への想いを押し殺して……誠実であるようにと自分自身に嘘をつき続けて……」
「両方とも嘘じゃないよ」
「え………?」
私の懺悔を遮るように囁かれた言葉。その言葉に不意を突かれた私は普段出す事はない甲高い声を出す。
「誠実である事…正負関係ない俺への感情…それは両立するんだ。グルーヴはただ片方が強すぎてしまっただけ…だから何も悪くはない」
「だが私は、追加の練習をしたいと貴様に嘘をついて……」
「グルーヴ、今日は何の日か覚えているかい?」
「あ……エイプリル…フール……」
「だろ? だから嘘をついても許される日だろ? だから良いんだ……それにね」
そう言って頭を優しく撫で続けながらトレーナーは呟き始める。
「嘘だって時にはついても良いんだ。確かに度が過ぎたものは許されないけど…全てが全て正直ではどうにもならない時だってある…何を言っているのかと思うけど、グルーヴがもう少し大人になればきっと分かるさ」
それは優しく、それでいて甘やかさずにしっかりと言い聞かせるような声であった。 - 10二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:42:02
「それにグルーヴのそれが嘘だと言うのなら、俺だって嘘をついていたんだぞ?」
「え……?」
突然のカミングアウト。いつも馬鹿正直な彼が? いつ、どこで、どんな嘘を? そんな私の疑問に答えるようにトレーナーは口を開く。
「俺もグルーヴへの想いを抑え込んで…自分自身に嘘をついていたんだ」
トレーナーも…同じ想いだったんだ…トレーナーも私の事を……
「それにあくまでも生徒と指導者の関係…信頼は親愛にはなり得ないと…そして君が俺の事を………」
「そんなこと……ない……っ!」
私はその言葉を遮るように強く抱きしめる。その先の言葉は分かっている、それが嘘であることも当然分かっている。だけどこれ以上、たとえ嘘であってもその先の言葉は聞きたくなかった。
「たとえ嘘でもそんなこと言うな!いいか!これ以上貴様がその先を言えば私は絶対に許さないからな!」
静寂な空間にに響き渡る私の声。気付けば私の首元に伝う感覚…そして私の頬にも同じものが伝い落ちていた。
「そうだよな…俺が言っておきながら君にしてはいけない嘘をつく所だったよ…ごめんな」
「私の方こそすまなかった…貴様に押し付けておきながら…私自身も嘘を………」
今度は私の言葉を遮るようにトレーナーは再び抱きしめる力を強くする。
「もういいんだ…エイプリルフールだけどお互い嘘をついていた、それでお互い謝った…それでいいんだ」
「それで……いいのか?」
「今日はエイプリルフール、嘘だって許されるさ。それに時には嘘をついても良いんだ、ずるくなってもいいんだ。だけど………」
「これからはお互い"嘘"は無し…良いよね?」
「約束する…もう"嘘"はつかない……」
やっと…本当の意味でお互い正直に、誠実になれた…-そんな気がした。
「どうする? ビデオでのライバルの分析は」
「いや、よそう……今日はこうしていたい。勿論分析をしなければならないのも分かっている…だが……」
そう言いながら私はトレーナーの耳元に顔を寄せる。少し驚く彼にだけ聞こえるように耳元で
「今日だけは…いやこれからもずっと…私を見て欲しい……」
「……! 素直でよろしい。それじゃ今日の練習は終わり、ゆっくり寛いでいよう」
"嘘"などつかず正直になればこんなにも簡単なことだったのかと改めて思い知らされる。
正直になる…だからこそ…… - 11二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:42:24
「くつろぐ前に…教えて欲しい……」
私は身体を起こしトレーナーの顔を正面から見つめる。押し倒したあの時とは違い、その瞳を…表情を焼き付けるように。
「貴様の…トレーナーのその想いを…"嘘"じゃない本当の気持ちを…私も…教えるから……」
同じように私を見つめ返していたトレーナー、深呼吸し一瞬目を瞑ると真剣な面持ちで改めて私を見つめ直す。
「君が好きだ…グルーヴ」
「わたしも…あなたのことが…すき…っ……!」
やっと"嘘"ではないお互いの気持ちを言葉で、直接伝え合えた……
だからこそ本当の意味で、私達はこの瞬間心と唇を重ねることができたのだと……伝わる熱と共にその嬉しさを分かち合ったのであった…… - 12二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:42:53
そしてエイプリルフールが終わって数日後……
放課後の学園にて———
「貴様! また部屋を散らかして! それに目の下のクマ! あれほど無理をするなと言ったではないか!」
「いやぁ〜張り切っちゃって…」
「たわけ! それで何かあったら元も子もないだろう!」
いつもと変わらない私達の日常…だが少しずつ、確実に私達は変わっていた。
「こうなれば一度や二度の掃除では改善しないか…なら週末は私が掃除なり料理なりで貴様の部屋に来てやる! 打ち合わせも出来るのだから文句はあるまい!」
「でも大丈夫か?毎週だなんて……」
「私は貴様と居たいんだ!」
「しょ…正直すぎる…聞こえるから少し抑えて……」
そんな時、後ろから声が聞こえてきた。振り返るとそこには同室のファイン。何やらニヤついているのが気になるが…
「夫婦水入らずのところごめんね。明日、お姉様が遊びに来るから是非とも会って欲しいなって」
「…………へ?」
ま…まさか、あの時の話が本当だった……?
つまり明日あのファインの姉が……?
まあいい、前までの私なら何かと理由を付けて誤魔化していただろう。
だが……今は違う。正直あのお方は苦手な所はあるが……今回は少しだけズルを…彼女がアイルランドの王室である事を利用させてもらおう…… - 13二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:43:15
「分かった、それに応じよう……だが一つだけ条件を付ける。私のトレーナーもその場に同席する、それが良ければ会いに行こう」
それを聞いて目を見開くファイン。当然だろう、いつも間近で彼女の姉に対する私の反応を見ていたのだから。
だが流石は聡明な王族の彼女だ、私の意図を瞬時に理解したのか子どもが悪戯をするような笑みを浮かべていた。
「分かった!お姉様にはそう伝えてみるね!」
「"楽しみにしてる"と、そう伝えておいてくれ」
「ふふっ、私も"楽しみ"だなぁ〜」
そう言いながらファインは歩き去り、それを見送る私に恐る恐るトレーナーが尋ねてくる。
「いいのか?あの人は確か君が……」
「さっきのは半分嘘だ。まぁ苦手ではあるが悪気はない事は十分分かってる」
悪気はない、むしろ尊敬されるのは嬉しい。だが度が過ぎるのだ………
「それに……もう"嘘"をつく必要もないんだぞ?」
「———!」
「分かったらさっさと行くぞ!明日の身だしなみを整える為にも街で色々探さなければならないしな!」
そう言いながら私はトレーナーの腕を引っ張り街へと繰り出す。
もう"嘘"をつかないと決めたのだ
貴様が私が持つこの想いを本気にさせたのだ
明日は"嘘"偽りない私達の本当の姿を皆に見せてやろう
覚悟してもらうぞ、私のトレーナー?
そう思い振り向くと丁度彼と目が合った。
何かを伝えたいと思っている目。
きっと今の私もそんな目をしているのだろう——— - 14二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:43:36
ありがとう、グルーヴ
私の方こそ、ありがとうトレーナー
俺の"嘘(おもい)"を気付かせてくれて
私の"嘘(おもい)"を受け止めてくれて
だからこそ君に伝えたい
だからこそあなたに伝えたい
"嘘"じゃない君へ送るこの言葉を
"嘘"じゃないあなたへのこの想いを - 15二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:43:48
そう
———"愛している" と - 16二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 20:44:28
以上になります
SS注意付け忘れました……
長文失礼しました - 17二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 22:49:27
これはたわけ
- 18二次元好きの匿名さん24/04/01(月) 23:24:51
お堅い人が本音を打ち明けるのってイイよね…
- 19二次元好きの匿名さん24/04/02(火) 06:45:47
それを機に親密な関係になるのいいよね……
- 20二次元好きの匿名さん24/04/02(火) 13:03:30
正直ってホント大事
声に出すってホント大事 - 21二次元好きの匿名さん24/04/03(水) 00:01:50
- 22二次元好きの匿名さん24/04/03(水) 07:55:27
(急に流れ弾が飛んでくる私………)