- 1二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 22:19:39
- 2そのいち22/01/24(月) 22:20:35
ファル子はね、走ることが大好き。
ファル子はね、歌うことが大好き。
ファル子はね、踊ることが大好き。
レースのウイニングライブでキラキラ輝くウマドルを見たとき思ったの。
ファル子もああなりたいって。
そのウマドルにはたくさんのファンがいて、
そのウマドルが日本中の色んなところでレースをしても応援してくれて、
そのウマドルへの歓声が消えることはなかった。
ファル子もあんな風に皆に夢を与えられたらなあ。
ファル子もあんな風に皆から注目を浴びたいなあ。
だから、ファル子はトレセン学園に入って中央でデビューして、トップウマドルになる。
皆に認められる、ウマドルになる。 - 3そのに22/01/24(月) 22:21:34
「スマートファルコン、堂々の1着! 砂のハヤブサがまたもやってくれました! 今年のクラシック級のダートレースは、一体どうなってしまうのか!?」
「ファル子の勝ち〜! みんなありがと〜!」
観客席から、レースを見に来てくれた皆の声援が聞こえる。
あったかくて、ファル子の疲れた心臓がメラメラして、レース頑張ってよかったと思わせてくれる。
ファル子、学校もトレーニングも、ダンスの練習も頑張ったもん。
「この後のウイニングライブ、楽しみにしててねー!」
わーっと、皆の声がもっともっと大きくなる。
待ってましたと応えてくれているみたい。
ファル子も、ウイニングライブがとても楽しみ。
楽屋に行ってきまーす。 - 4そのさん22/01/24(月) 22:22:18
ウイニングライブが終わったら、ウマスタに今日のできごとを投稿しなきゃ。
【今日はこんな差し入れもらったよ】
【ライブ後のお弁当はのり弁でした!】
【ライブ衣装がダンスの途中で破れちゃった!】
【…次のレースからシニア級! それでも必ず1着獲ります!】
ウマスタはね、たくさんのフォロワーがファル子の投稿を見てくれるの。
『差し入れのお菓子美味しそう! ファル子にぴったりだね!』『今度はアタシも差し入れ持っていきたいなー』
『お弁当を食べるファル子かわいい! 最高!』『さすが勝者の余裕って感じだな』『ほっぺたに海苔ついてて草 でもかわいいから許す』
『破れたまま踊ってたの!? 全く気づかなかった』『プロ根性尊敬するわ』
『次のレース、楽しみにしてるね!』『ファル子ならヨユーでしょ』『応援してるよ』『走ってる姿見てるだけで飯3杯はいけるw』『次回レースに向けて応援イラスト描いちゃった! ファル子さんに届くかな…!』
たくさんの応援コメント。
これを見るのが毎日楽しみで、皆の期待に応えなきゃって一層やる気にさせてくれるの。
イラスト、ちゃんと届いてるよ。
ウマスタのほかにはね、地方のレースに出たときに、握手会とかグッズお渡し会をやったりするんだ。
そこでは直接声かけしてくれるから、ウマスタでの応援とは少し違ったかたちで勇気を貰えるの。
よし、ファル子、シニア級も頑張るぞー。 - 5そのよん22/01/24(月) 22:23:12
「ねえねえ、スマートファルコンって最近話題にならなくない?」
「そう言われると、確かに。なんかシニアになってから成績微妙だったらしくて、それから消えたんじゃ」
「あんだけ皆ファル子ファル子騒いでたのにね。盛者必衰ってやつ?」
「何それ平家物語じゃん。それよりさあ、今年の皐月賞優勝ウマ娘なんだけど…」
ファル子ももう、シニア級2年目。
こんな会話を街中で聞くのは、もう慣れっこ。
シニア級1年目のはじめのうちは調子よかったんだけど、レースに優勝できなくなっちゃった。
どんなにトレーニングを頑張っても、本番で体が思うように動かないの。何でだろ。
ウイニングライブもいつも脇役。
注目されるのは、センターに立つファル子の後輩のウマ娘。
歓声の中から、ファル子の名前はほとんど聞こえない。
レースでもダンスでも、いつの間にか他の娘に追い越されちゃったみたい。
ファル子はもう、トップウマドルなんかじゃないんだ。 - 6そのご 続きあります22/01/24(月) 22:24:11
シニア級2年目は、優勝するどころか、掲示板に入れないレースもあった。
最近の文章はロボットが書いたみたいで味気ないと、エイシンフラッシュさんに言われてしまったけど、ウマスタの投稿はやめなかった。
エイシンフラッシュさんみたいにファル子のことを心配してくれるファンがいると、心のどこかで信じていたから。
だから、掲示板を逃したレースのときもウマスタを投稿した。
【〇〇賞は7着でした。次こそは、ウイニングライブのステージに立てるように頑張ります!】
ファル子ね、今でもこの投稿に付けられたリプが忘れられないんだ。 - 7そのろく22/01/24(月) 23:20:31
『お前を応援してるやつなんてもういないよ。もうウマスタやめたら? 必死になっちゃって惨めなだけw』
心ないリプはこれまでたくさんウマスタで見てきたし、悪意のない噂話だって何回耳にしたかわからない。
ファル子だってスルースキルはあるんだから。
でもファル子ね、このリプを初めてみたとき、頭が真っ白になったんだ。
何を言っているのかよく分からなくて、しばらく経って、冷静になってやっと気づいたの。
この人の言っていることは図星だ。
人気ウマドル・スマートファルコンは皆にとって過去の存在。
ファル子の栄光は過去のもの。
最早何をしたってアダになるだけ。
この人のリプは、ファル子に現実を突きつけてきたんだ。
ファル子を応援してくれるファンが減っているのは、ウマスタのフォロワー数で察するから。
ファル子の投稿に反応してくれる人が減っているのも、ファル子がいちばん知ってるから。
トレーナーさんがファル子を今までみたいに地方のレースに出してくれなくなったのも、地方に行ったってファル子のファンはもういないから。
そんなこと全部わかっていたはずなのに、皆に認められるために、ウマスタを続けて、必死で、もがいて、涙を呑んで、センターに立つワクワクを忘れられなくて、トレーニングを頑張って、1着の喜びをもう一度味わいたくて、皆の期待に応えたくて、走るのが大好きで、歌うのが大好きで、踊るのが大好きで、あのウマドルみたいにキラキラしたくて、なのに、なのに、なのにファル子は、ファル子はファル子はファル子はふぁるこはふぁるこはファル子ふぁるこふぁるこふぁるふ
…この人のリプに、リプがたくさんついている。最近そういうのは見なかったのに、何でか分からないけど、押しちゃった。 - 8そのなな22/01/24(月) 23:21:38
『アンチ乙。曇ってるファル子で●けるだろ』『次はウイニングライブでえっちな腋見せてくれよな!』『引退したら俺と交際キボンヌ』『今日もファル子の脚は素敵だなあ』『ファル子太ったから掲示板逃したんだろ。食べ過ぎは良くないゾ』
…
…
…
本当に、ファル子を心から応援してくれるファンはどこかに行ってしまったみたい。
あーあ。ファル子今まで何してたんだろ。今までの努力は何だったんだろ。
どうせ飽きたら新しいウマドルにいくんでしょ。どうせウマドルの体しか興味ないんでしょ。レースに勝てない年長のウマドルなんかどうでもいいんでしょ。
こんな惨めな思いをするために、ウマドルを目指したわけじゃないのに。
ウマドルなんて、バカバカしい。
トレーナーさん、エイシンフラッシュさん、ごめんね。もう何もかもどうでもよくなっちゃった。
近いうちにトレセンを去ります。
だってファル子、もうウマドルやめるから。
おしまい - 9二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 23:23:25
これで終わりだけど、
さすがにちょっとかわいそうなので
気が向いたら救済?ストーリーを投稿するかも - 10二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 23:45:35
あと2時間じゃ書けない
なのでほしゅ - 11二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 23:47:11
落ちるところまで落ちたら後は晴らすだけなので頑張って
- 12二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 06:55:40
保守
- 13extra そのいち22/01/25(火) 09:13:06
ファル子が来たのは美容院。
ウマドルは卒業だから、ふさふさしたツインテールはもう必要ない。
トレセンを出て行く前に心機一転バッサリしたいとトレーナーさんに相談したら、何も言わずにこの美容院を紹介してくれた。
「今日はどういった髪型にしますか?」
美容師さんは、ウマ娘だった。
落ち着いた雰囲気の人だけど、笑顔が魅力的で、身なりもこぎれいにしている。少し気になっちゃて、思わずちらちら見ちゃう。
「短くして…ください。今結んでるところ、全部いらないです」
「顔まわりくらいの長さ、でよろしいでしょうか?」
「えへへ…」
ファル子の苦笑いが鏡に映る。ファル子って、こんなどんよりした顔だったっけ。もう忘れちゃったけど。
ツインテールが解かれ、ファル子はふつうの長髪のウマ娘になった。
「お客様、今から髪の毛を切っていきますね」
「お願いします」
これで、ウマドルファル子のチャームポイントとはお別れ。これからは、普通のウマ娘として普通の暮らしをしていきます。
「あの、美容師さん」
なかなか髪の毛にハサミを入れてくれない。しきりにファル子の髪を手ぐしでわしゃわしゃし続けている。何してるのかな。早く切ってくれないかなあ…。
「本当に、いいんですか」
「え?」
「本当にいいんですか、切ってしまって」
折角の綺麗な髪がもったいないのに、と美容師さんは言う。今更お世辞なんて耳が痛いよ。
ふと美容師さんは手ぐしをやめ、ファル子の両肩に手を置いた。
その両手で肩を軽く握り、鏡のファル子に視線を向けていた。真剣なまなざしだった。
「本当は、髪の毛なんか切りたくないんでしょう。スマートファルコンさん」
ファル子は美容師さんに名前を伝えていない。
なのに、どうして。 - 14二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 18:44:28
保守
- 15二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 18:46:55
このレスは削除されています
- 16二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 18:53:18
このレスは削除されています
- 17作者22/01/25(火) 22:50:59
- 18extra そのに22/01/25(火) 22:57:05
「どうして、ファル子の名前…」
「あら、どうしてと聞きたいのは私のほうですよ。スマートファルコンさん、私のことお忘れですか?」
そんなこと言われたって、ファル子はこの人のことは知らないんだから。
「〜♪」
突然、美容師さんが歌い出した。
「すんだもんだのマッチレース〜♪
あなたとワタシは良きライバル〜♪
ターフの外でも中でも火花散らして〜♪
だけどいつも最後は大団円〜♪」
あ。
この歌は。
ファル子が憧れていたウマドルの歌。
ファル子はこの歌が大好きだった。
そのウマドルが歌って踊っている様子が、ありありと蘇ってくる感じ。
そうだ、この声は。
かつて聴いた声とは少し違うけど、面影は残っていて…
「あの、美容師さんってもしかして」
「やっと思い出してくれたかしら? 私のファン1号ちゃん」 - 19extra そのさん22/01/25(火) 23:46:26
「そんな、嘘でしょ…。ファル子、信じられない」
ファル子、どうしたらいいか分からない。恥ずかしくて、申し訳なくて、気が動転してる。
だって、あんなにずっと憧れてたのに、今まで気づかなかったんだもん。
「ふふ。服装も髪型も違うし、化粧もだいぶシンプルになったから、気がつかなかったかな」
敬語使うのをやめた美容師さん…いいや、ファル子憧れのウマドルは照れ臭そうに種明かしをした。でも、美容院に入ったときよりも、ずっと朗らかな表情になっている。
「ねえ、ファル子ちゃん。久しぶりの再会で緊張しているみたいだけど、私たちが初めて会ったときのこと、覚えてる?」
もちろん。
何年か前の、彼女のデビュー戦で。 - 20extra そのよん22/01/25(火) 23:48:01
「私がトレセン学園に入って初めてのレース、デビュー戦が終わった後にさ、ファル子ちゃんが私のところまで走ってきて」
ファル子はまだトレセンに入れる年齢じゃなかったけど、彼女の出るデビュー戦を観に行った。
「『次はぜったい勝ってね! ファル子、ウイニングライブで歌っておどっているところが見たいの! だから、1番になるまで、ファル子おうえんするね!』って、声掛けてくれたよね。私、そのレース3着で、このまま勝てなかったらどうしようって思ってた。ウマドルの養成所に通ってたのに人気も全然なくて、傷心してたところだったんだ」
偶然ウマドル雑誌の見習いウマドル特集を見て、ファル子は養成所にいる彼女の存在を知った。記事の写真だけで一目惚れだったの。
彼女がトレセン学園に進学することになったと雑誌で見て、ファル子も絶対にトレセンに入学したいって思ったんだっけ。
「だからとっても嬉しかったし、レース後に声掛けてくれたの、知り合い以外でファル子ちゃんが初めてだった」
え、だから、ファル子のことファン1号って…
「私、次の未勝利戦で本当に勝てて、ファル子ちゃんすごく喜んでくれた。そのときに、ファル子ちゃんと」
ーーー彼女と、握手をしたよ。とても温かくて柔らかかった。 - 21extra そのご22/01/26(水) 00:02:02
「それから、中央のレースも地方のレースもいっぱい出場して、結構いい感じで1着になって、ウイニングライブをして、握手会とかサイン会とかもめちゃくちゃした。ファル子ちゃん、ほぼ全部に顔出してくれたもんね。私の人気が上昇してからも、米粒みたいな観客の中から、ファル子ちゃんだけは見つけられたよ」
「だって、ファル子ちゃんは私にとって特別な存在だから。ウマドルとしての私を、デビュー前から引退直前まで見届けてくれた唯一無二のファンだから」
「ファル子ちゃんがいたから、私、ウマドル続けられたんだよ」 - 22作者22/01/26(水) 00:03:56
- 23二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 09:52:15
ほしゅ
- 24二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 19:28:38
ほ!
- 25二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 23:59:20
保守