- 1二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:35:59
「Hi、トレーナー。今日も使わさせてもらっているわ」
トレーナー室に入ると、机に座っていた俺の担当ウマ娘デアリングハートが入って来た俺に向かって、軽く手を振りながら挨拶する。
机の方を見ると机の上にはペンケースにノート、参考書が置いてあり、勉強をしている途中みたいだ。
「あぁ、別に構わないよ。俺も今日中に書きあげたいレポートがあるから、今日は長くいてもいいよ」
「Thank you」
その会話の後、再びハートは机に広げている参考書と向き合いながら勉強に戻る。
俺もその姿を見てから、自分の机に座り、机の上にあるパソコンを開いて、レポートの作成に取り掛かる。
今、トレセン学園はテスト期間中。その間、ハートはたびたびこのトレーナー室で勉強する日々を送っていた。
ハートは明るく社交的で目立つことが好きな人柄で、まさにクラスの中心的な人物だ。現に彼女の友人達からはそのことから、クィーンと呼ぶ娘もいる。加えて、彼女は揺るぎない自信を持っており、そのプライドゆえかレースはもちろん、勉強でも上位の成績を収めようとしている。
その自信の反面、努力している所を見られたくないのか、人に隠す節がある。
なので、友人に勉強する姿を見せたくない為、このトレーナー室は人の目が届きにくいのでここでする勉強はハートにとって都合がいいのだろう。
ただ、その努力を間近に見ている俺はそんな歳下のクィーンに敬意を示している。トレーナーとして、彼女の夢を叶える手助けができればなと思いながら、まずは眼の前のことに集中するのであった。
キーボードを打つ音とシャーペンを走らせる音だけが室内を満たして、数時間。
頑張っているハートが近くにいるおかげか、こちらもレポート作成は順調に進んでいた。ただ、どれだけことが上手く運んでも人間の集中力には限度がある。なので、疲れた頭を一旦リフレッシュする為にも休憩を挟むことにした。
「ハート、ちょっと休憩するつもりだけど、君も休憩しない?何か飲みたいものがあれば準備するよ。」
「……そうね、一息入れましょうか。トレーナー、私にもコーヒーをお願いできるかしら」
「了解。ミルクと砂糖は必要だったよね」
「Of course」 - 2二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:36:47
ハートとの問答が終わった後、俺は席を立ちあがる。先に電気ケトルで湯を沸かしながら、戸棚から紙コップなど取り出してコーヒーの準備をする。彼女の前にミルクとスティックシュガーを置いて、ドリップバックコーヒーに沸いた湯を注いでゆく。
「ハート、どうぞ」
「Thanks、トレーナー」
ハートはひとまずノートなどを一旦机の端に片付けながら、渡された紙コップを受け取る。俺もこの休憩中、彼女と少し雑談でもしようかと思い彼女の対面になる形で座る。俺もハートも一口コーヒーを飲んで、ホッとしたところで話しかける。
「ハートはこのテストが終わった後、解放感からか何かやりたいこととかあったりするの?」
「あら、それはデートの誘いかしら」
こちらはちょっとした雑談のつもりで言ったのだが、ハートはこちらを見ながらニヤニヤとからかってくる。
「いやいや、そんなんじゃないって」
「ふふっ、わかってるわ。…えぇ、映画でも見ようかしら」
「いいんじゃないかな。どんな映画を見るの?」
「そうねぇ……。ねぇ、トレーナーは逆に今の私がどんな映画を見たいと思う?」
純粋な興味からかハートにどんな映画を見るのか聞いてみたけど、逆に聞き返される。彼女の年頃の女の子だと恋愛ものとか青春ものが鉄板だとは自分の経験でも分かる。でも、わざわざ今のと付けるあたり、何かありそうだとそれらは違うような気がする。
どう答えようかとこちらが悩んでいるのを見て、彼女は少し悪戯な笑みを見せながら助け舟を出す。 - 3二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:37:20
「ふふっ、そんなに考えなくてもいいわよ。間違っても怒ったりしないから、あなたが思い浮かぶのを言って頂戴」
「そうか……。それなら……」
ハートの答えに納得しつつ、少し考えた後、俺も自分の考えを言うことにした。
「……アクションものとか?」
「Huh, so what?、どうしてそう思ったのかしら」
「そうだな……。テストって、ハートでも良い点を取ろうとすると勉強するのが当たり前で、日頃の活動に制限がつくだろう。だから、それが終わるとその鬱憤晴らしにちょっとスリリングなものを見て、発散させたいのかなと思ったんだ」
「なるほどね、トレーナー、悪くないわ。あなたが言う通り、こう発散させたい気持ちはあるわ。でも、残念。アクション映画ではないわ」
自分の推理を披露したものの、彼女が見たい映画ではなかった。それでも、ハートは俺の考えが彼女の答えに近かった為か、少し満足げな笑みを浮かべる。
「なら、どんな映画を見るつもりなんだい」
「ふふっ、それはね……」
俺がそう聞くと彼女は勿体ぶるようにコーヒー一口飲んで一拍おいてから、自信満々に答える。
「サメ映画よ」 - 4二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:38:02
「……サメ映画?」
予想外の答えに俺は面食らう。サメ映画って、見たことはないけど確か、サメが人間に襲いかかってくるパニックホラーものだよな。彼女が見たいと言うなら、俺は別に反対はしないけど、でも、彼女のイメージとは合わないような気がして、一応理由を聞く。
「えっと……。どうしてまたそんな映画を?」
「そうね、サメ映画って言えば色々あるかもしれないけど……。頭空っぽにして、ツッコミながら楽しんで見るのに一番いいのよ」
「そうものなのか」
「えぇ、そうよ。私だって、何も考えたくなる時はあるの。そういう時に、ストーリーとかメッセージ性とか考えずに、ただバガバカしい映像を笑いながら楽しむことで、心を軽くさせるのも重要なのよ」
「なるほどな……」
彼女の言うことには一理ある。人生だって、どんなに頑張っても上手く行かない時がある。そういう時に、何も考えずにただ目の前のことを楽しんで心機一転するのも悪くないと思う。彼女にとって、サメ映画はどうやら彼女の溜まったストレスを解消する為の娯楽らしい。
そんなハートが熱く語るので、サメ映画に対して聞きたくなった。
「そんなに面白いのか、サメ映画は」
「うーん、ツッコミ込みで盛り上がる感じかしら。もちろん、面白いものもあるわ。あっ、もしかして、トレーナーも興味持ってくれたの?」
「君が珍しく熱弁を振るうのを見たからね。それでちょっと興味出できた」
そう答えた瞬間、ハートの目がまるで獲物を狩る捕食者の目のように輝く。 - 5二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:38:33
「Really?なら、初心者向けのサメ映画もあるから、トレーナーもテストが終わった後に一緒に見ましょう」
そう言った彼女の表情はクィーンと呼ばれる顔とは異なり、年頃の少女らしい無邪気な笑みだった。
「あぁ、一緒に見ようか。俺にキミの好きなものを教えてくれ」
そんなハートを見たら、彼女の申し出を断る理由がない。
「Thanks、トレーナー。それなら、あなたが好きな映画も一緒に見るってどうかしら?だって、私もあなたの好みを知りたいわ」
「あぁ、いいよ。俺の好みの映画も一緒に見ようか」
「えぇ、テストが終わった後、楽しみにしてるわ」
そんな会話をしながら、休憩は終わり、再び、俺達は机に向き直り作業に集中する。ハートの別の1面を知れたことを嬉しく思いながら、俺は彼女とサメ映画を見る約束を交わしたのであった。 - 6二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:40:02
- 7二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:43:26
良いね
ビューだねビューだよ - 8二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:52:32
良いよね、共に歩み共に戦い、寄り添って共に生きていく人と見るサメ映画………。
- 9二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 20:31:22
- 10二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 21:38:11
良いぞ……
- 11二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 23:20:54
とても良い…!
- 12二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 01:02:28
- 13二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 10:48:12
あらもちもちかわいい
- 14二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 18:42:53