トレウマSS 注意『バイバイ、あたしの子供時間』

[1 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/07(日) 23:53:44]

「いつかバイバイするまで」
なんて言ってたあたしが、案外その時が来た時に覚悟ができてなかったことに驚いた、言いたい気持ちが喉の奥でつっかえて、ただ上辺だけのバイバイが口からこぼれ落ちた。

​───────
「ひさー！」
底抜けの明るさであたしのトレセン時代からの友人ダイタクヘリオスが手招きをする。
「ん、久しぶり」 ｢久しぶりだね、元気だった？｣
ゴールドシチー、メジロパーマーがそれに続いた。
「久しぶりって、つい先月もあったっしょー｣
トレセン時代から仲の良かったメンツ、あたしの大切な友達。だけど最近は肩身が少し狭くて。

「でも、ピと１ヶ月会えないってなったら、うち耐えられなくてテンション爆下げ間違いなしなんだけど。」
ヘリオスが1つ切り込んだ。
「私も、１ヶ月耐えれないかも……」
それに呼応するようにパーマーも零した。シチーは口にこそしなかったけど、なにかを想像して不機嫌そうな、不安そうな顔した。

「私のが夏合宿の日とかね、通話毎日しちゃうし、合宿場に会いに行ったりするもん」
「「わかる！！」」
そう、3人とも自分の元担当トレーナーが恋人で、憎たらしいくらいラブラブだった、それがあたしの肩身が狭い理由の一つだった。

[2 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/07(日) 23:55:03]

そんなこと3人に悟られないよう、1つ質問をした。
「皆はさ？どうやってトレーナーと付き合ったん？」
「うち？うちはねー卒業式の日に、めいいっぱいのラビュぶつけたんよ！！」
ヘリオスが思い出に花咲かせるように話すと
「私はね、卒業前に免許取ってさ、パーマー号にあの人乗せてそこで……」
パーマーが優しく包むように話して
「アタシは、ただこれからも一緒にいろって、それだけ」
シチーが素っ気なく、だけど大切な物を取り出すように話して、またあたしが小さく見えた。

「「「ジョーダンは？」」」
「あたし？あたしはねぇ…」
(((ワクワク)))
「もうずっと会ってないや」
「「「え？」」」
「いやぁ、卒業式の日にバイバイって言っちゃってそっからぁ、ね？」
「「「 はあああああ！！！！」」」
3人が声がスピーカーみたいに混ざって響いてた。
「ちょっと、ここお店だよ！？」
3人は周りのお客さんに軽く謝罪をした後、落ち着いた雰囲気でまた話し始める。
「ジョーダンはさ？それで良かったの？」
シチーが言った。彼女はいつも核心を突いてくる。
「良かったらさ？こんな顔すると思う？」
あたしはあからさまな作り笑顔を向けて見せた。虚しさだけが広がって行く。

すると、ヘリオスが考えるポーズをして一言 。 「ならさ！すること決まってるくね！？」
「私もヘリオスと同じこと考えてると思う」
「「「会いに行こう！トレセン学園に！！」」」
「は？」
「はああああああ！！！？」
「「「ここお店！！」」」

[3 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/07(日) 23:56:13]

トレセン学園、卒業してから暫くは来てなかった、あたしの母校。
学生時代はつけたこともない、許可証を首にぶら下げて、トラックに目を向けた。地面を蹴る音がただひたすら響く懐かしい感覚。
その喧騒の中で複数のウマ娘に囲まれて、あたしの元担当トレーナーがそこに居た。
「ジョーダン！！」
あたしが声かける前に真っ先に気づいた彼が小走りでこちらへ向かってくる。
「どうした？トレセンに用事でもあったのか？」
「うーん、正解で不正解的な？」
「会いに来たの、あんたにさ」
トレセンに来るにあたって、3人とした約束、それは嘘をつかないことだった。
だから正直に、許可をとる時にもそう伝えた。
「そうか、嬉しいよジョーダン！」
トレーナーは嬉しそうな顔してくれた、それに嘘なんてないのはすぐわかる。だけど、生徒に久しぶり会った先生みたいな、子供扱いが見て取れて悔しかった。
「あのさ、今日トレーナー練習終わったらあたしに付き合ってくれる？」
精一杯、あの時とは違う背伸びしてない大人をトレーナーに向けた。
「わかった。遅くなるけど良いか？」
「ん、大丈夫、あんがと」

練習場が閉じ、時刻は既に夕飯時の頃。
「ごめんな、ジョーダンこんな時間まで。」
「いいよいいよ、私がお願いした事だし。」
トレーナーと二人きりになれた。生徒たちは寮に戻ってもう居ない。子供のあたしが寮に帰ってた時間。
「そうだ、今日は送っていくよ」
彼はそう言うと、車の鍵をクルクルと回して見せた。
「まじ！？それは好都合的な？」
「どういうこと？」
トレーナーは首を傾げる。
「来て欲しい、あたしの家に」

[5 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/07(日) 23:58:31]

トレーナーはあたしの家に来てから、どーも落ち着かない様子で、ずっとソワソワしている。1LDKのアパート、トレーナー室より狭い部屋で、ずっと近い距離で2人並んでいた。
「どうしたし？ 用事であるん？あたしトレーナーのチームのことちゃんと調べて、近くレースがないこととか、明日休みってこととか確認済みだからんね？」
トレーナーの業務の忙しさはよく知っている。だからこそできるだけ余裕のもてる日を選んだ。
「違うんだ。なんというかその…女性の部屋に入るのが初めてで」
トレーナーが言ったその言葉、何気ないその言葉
頼れるトレーナーが見せた情けない所、新しく知ったトレーナーのこと、初めてがあたしということ、そんな感情が渦巻いて、口角が上がるのをじっと我慢する。


「お酒飲めるっしょ？こーいう、教え子と交わす酒ってさ憧れるんしょ？」
あたしは缶チューハイを彼の手元に持って行った。
「ジョーダンはお酒飲んで良いのか？」
「バカにすんなし、もう20歳過ぎてるってーの」
トレーナーのコップにお酒を注ぎ入れて。お返しと言わんばかりにトレーナーも私のコップにお酒を注いだ。
「「乾杯」」

酔いが回ったトレーナーとあたしは、赤裸々に今の自分たちのことを語り合った。ネイルサロン開業のため、経営からウマ娘達のための爪の手入れについての医学法などを学んでること。今の担当ウマ娘達が、複数名クラシック候補に名乗りを上げていること。トレーナーとウマ娘の関係では話さなかったことも、ただひたすら時間も忘れて。

[6 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:00:02]

トレーナーは家の掛け時計を見て
「もうこんな時間だ、今日は楽しかったよジョーダン」
なんて、まるでお開きする見たいな一言を口に出した。
「いやあ、まだ行けるっしょ！てかトレーナー車だしさ、酒飲んでるからダメでしょ？」
あたしはなんとかしてトレーナーを引き留めようとする
「いや、ここからならタクシーも呼べるし」
あたしの言葉は、難なく遮られてしまった。
だけどこんなに一緒にいて、あんなに話しても、まだ伝えれてない思いがあった。

トレーナーは玄関で革靴を履いて、出る所。
「本当に会えて嬉しかったよ、バイバイ、ジョーダン」
トレーナーは笑顔で手を振る。
ここでバイバイしたら、多分また戻るだけ、どこにも進めない。
トレーナーが玄関から足を出す寸前、私は彼の裾を弱々しく、だけどしっかりと掴んだ。言えなかった気持ち、今吐き出せる。
「一緒にいたい、バイバイしたくないよトレーナー」

[8 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:00:54]

うわづって、言葉なってたかも怪しい私の思い
「ジョーダン？酔ってる見たいだしやっぱ「酒のせいじゃないから！！」
今度は確かにはっきりと声に出せた。1つ伝えれると、言いたい言葉がスルスルと口の中から飛んで言った。
「あたしさ、卒業式の日のバイバイ、死ぬほど後悔してたんよね、いつか来ると思ってたけど、本当は伝えたいのそんな言葉じゃなかった。」
「あんたはさ？トレーナーだし3人のこと知ってるっしょ？あたしすげー羨ましくてさ、だからあの日のバイバイが違う言葉なら、違ったのかなって」
袖を掴んだまま私は続ける
「あの日から、大好きなネイルしても、友達とだべってても、美味しいもん食べてもなんもいっぱいにならないんだ、トレーナー」
「でもジョーダン……「でもじゃないよ」
トレーナーの出そうとする言葉をまた遮る
「あの日から、あたし止まったままだよ」

「あんたのウマスタから段々あたしが埋もれて行くのがつらかった。」
吐き出す
「LANEの通知があんたからかもと思ってしまう瞬間が苦しかった。」
声にして、思い1つ2つ
「あたしがあんたの思い出の1つにしかなれないのが怖かった。」
ぶつける、今目の前にいる。
「バカでもわかるよ、この隙間はあなた以外埋めれないよ」
大好きな人に

[10 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:01:47]

「トレーナーはさ、まだ私の事子供扱いする？ だったらさ、やめてよトレーナー、大人にして欲しいよ私の事」
多分、あの日の伝えたい言葉よりずっとずっと踏み込んでいるあたしの気持ち。ここで伝わらなければ、受け入れられなければ、きっとこのバイバイに"またね"なんて意味は無くなってしまう。だから掴んでる手が彼にわかるくらい震えて止まらない。
「ジョーダン…」
彼はあたしの名前を言うと、掴まれていた腕を優しくどけた。そうか……そうなんだね。
「ごめんね、トレーナーバイバ…
─ギュッ！！─
今度はあたしの言葉が遮られて、苦しいくらいに強く、だけど大事に彼に抱きしめられる。
「本当に、俺が良いのか？ジョーダン？」
彼は霞んだ声で、不安そうな声で囁いた。
「そう言ってんじゃん、何度も言わせんなし、恥ずかしい。」
あたしの声もわかるくらいに震えていた。
「そうか、そうなんだね」
彼の抱擁がまた一段と強くなるのがわかった。空きっぱなしだったドアが軋んだ音を立てて閉じて行く。

時刻はもう深夜を回った。寮だったらもう消灯時刻をすぎている。子供のあたしは寝ていた時間。夜の静けさの中ドアの閉じる音だけが響いてた。

[14 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:03:48]

長くなってしまいました。
初めてのSSでして。至らぬ点ばかりだと思いますが、1つ作れて良かったです。上手なSSを書ける人には頭が上がりません

[17 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:05:46]

>>14

良かった……

>>8の想いをぶつけるところとか堪らなくすき

[18 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:06:03]

面白かったです。

[19 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:06:09]

へぇ初SSですか。流石ですね。
ジョーダンとトレーナーの話って割と探してても多く見つかるものでもないので書いてくれるのは感謝ですね。二人の醸す距離感が良かったです、月並みの言葉ですが頑張ってください。

[20 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:06:32]

あとSS荒らしが最近暴れてるから削除で対応した方がいいよ

[21 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:06:41]

>>14

乙です

やっぱジョーダン×トレは、すぐくっつくんじゃなく少し時間を置いてからってのがしっくりきますねぇ

[22 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:06:57]

地味にジョーダンはエミュが難しいので素直にすごい
個人的にとても好き

[23 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:07:13]

深夜にええモン見たわ、ありがとうやで
初めてとは思えんくらいやったからこれからも応援するやで

[24 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:07:22]

別に何言われても、大丈夫なのですが、そもそも初めてで至らぬ点があるのはわかってますし。ですが管理しないと管理放棄でスレ削除の対象となる可能性があるので、申し訳無いですが消させて頂きます。

[26 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:08:17]

>>14

ええもん見れてとても良かったです、ありがとう

[29 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:09:15]

>>27

そうなんですか？　どう対応するべきですかね？

[30 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:09:17]

エエヤン…
昼間にジョーダンのスレ見てたからスーッと沁みたよ

[31 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:09:23]

ギャルの口調って難しいからねぇ……
流石のエミュよ

[32 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:09:55]

>>29

いや、消すってのはスレ自体の事だった

レスは消してもええよ

[34 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:10:24]

>>24

とにかく荒らしを消して管理すればOKよ

他の人も言ってるけどスレを自主的に消すのだけは絶対やめた方が良い

[35 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:10:55]

27だがスレ削除とレス削除を勘違いしただけだ

[38 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:11:35]

>>36

>>33

すみませんコテハンのつけ忘れです

[40 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:12:56]

こういうのでいいんじゃない
こういうのがいいんだよ…いいもの読ませてもらったぜ

[41 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:12:59]

多分口調からして一昨日からの奴が暴れてるなコレ
スレ主さんは何も悪くないでな

[43 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:13:36]

>>39

スマホのメモからSSコピペしてて、そっからパソコンに変えたのでその際に、忘れてました申し訳ない

[44 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:13:44]

見目は悪くなるが変に荒らしてきてるのは反応せず消すの推奨よ

良かったからまた何か書いてくれ

[50 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:17:13]

スレ主>>28も荒らしだから消しておいた方がいいと思うぞ

SSはめっちゃ良かったからまたどこかで書いてくれ

[51 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:18:25]

>>50

今気づきましたありがとうございます

[52 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:18:30]

一応言っておくと荒らし君がどんどんレスしてくれるおかげで報告しやすくて助かるんだなぁ
しばらくしたら規制されるんでそのつもりでね

それはそれとしてこれで初SSってマジか？めちゃよかったぞ
また書いてくれよな、なんならエピローグでも

[54 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:19:13]

読ませていいただきました
何にしてもハッピーエンドはいいものである
子供時間とはそういうことか

[55 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:20:15]

タイトルの時点でセンスを感じる
いいぞ＾～これ

[56 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:20:55]

すみません、SSスレ自体初めてでどの対応が正しいの分からないので、その気が無くても荒らしにつっかかってたりしてるレスも消しますね、すみません

[57 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:21:04]

吐き出す

声にして、思い1つ2つ

ぶつける、今目の前にいる。

大好きな人に


ここ狂おしいほどすき

[60 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:22:42]

子供じゃない、自分が大人になって過ごしていく中で思い人への気持ちがどんどん強くなっていって堪らなくなった様子がありありと見てとれるいいSSだぁ…(恍惚)

[61 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:23:42]

これが初SSってすごいな

ようやっとる

ところでスレ主さんは↓のスレご存じ？

【SS・イラスト】ウマ娘二次創作スレ応援隊part.35【宣伝・相談可】｜あにまん掲示板

別の人が推薦してくれているけど次投稿する時は是非自薦もしてみて欲しい無理強いはしないが

[62 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 00:24:16]

>>61

その宣伝って要る？

[65 ◆eO5siuj6Vfx6 24/04/08(月) 00:28:48]

>>61

よく、SSを見させていただいてます。全くの未熟者ですが。いつか自信を持って出せるくらいになりたいです

>>62

特にあからさまな荒らしでなければ自分は気にしませんので、お気遣いしていただきありがとうございます。

[66 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 01:23:31]

ジョーダンもトレーナーもはなまる。

[67 二次元好きの匿名さん 24/04/08(月) 11:02:06]

いいSSだった
この後うまくいきますようん