ウマ娘・エレジー

  • 1二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 05:59:24

    早朝、まだ早い時間
    場所はトレセン学園最寄駅、の外
    珍妙な格好の男、いや体格の良い少年が三人
    手には大きな旗と、両端に棒が付けられた横断幕
    段ボールで作られたウマミミと、毛糸で作られたウマ尻尾を身につけて揃って一人は腕時計を、左は時刻表を、一人はスマートフォンを見ていた

    「よし、行くぞ」

    その声と共に、三人は駆け出した

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 06:03:42

    駆け出して数秒後、電車の車輪の音が響く

    三人は、持っていた物を、大きく広げた

    大旗には「ありがとうウマ娘」の文字が
    続けて広げられたのは、横並びになり、ペースを全くズラさずに走る少年二人が持っていた横断幕

    そこには、その電車に乗るウマ娘四名の名が記されていた

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 06:09:05

    夢破れ、トレセン学園を後にするウマ娘は多い
    その電車に乗っていた四人のウマ娘も、それであった
    同じ願いを抱き、同じ想いで学園を去る
    そんな関係からか、皆同じ車両に乗っていた

    電車の中、あるウマ娘が窓の外を見る
    すぐに窓ガラスを割らんばかりに駆け寄った
    三人は怪訝そうに彼女に近寄る
    そして見たのだ

    大旗と、横断幕に乗せられた想いを

    三人の、ウマ娘の格好をした男を

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 06:13:06

    体格が良いとは言え少年。電車の加速ではすぐに離されてしまう
    そのはずなのに三人は、電車を見ながら並走していた

    窓越しに、七人の目が合う

    ウマ娘達は知っている、走ることの辛さを
    しかし、それでも彼らは笑顔を浮かべていた
    少年たちは、何かを叫んでいる。しかしそれは窓と、電車の音に阻まれて

    四人はなにも聞き取れずに、三人を通り過ぎて行ってしまった

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 06:16:20

    去りゆく電車を見送りながら、少年達は地面へと転がり崩れた
    しかし、その顔に浮かんでいるのは笑顔だ

    「見えたかな……四人とも…」
    「見たろ。目が合った」
    「はぁ?彼女が見たの、俺だし」

    息を切らせながら話す、彼らが抱くのは

    偽善だ

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 06:19:44

    夢破れて去ることはつらいことだ。それは三人も分かっている
    だが、しかし、彼らはそれでも掲げた想いを伝えたかった

    走る君たちを見ていたよ
    覚えているやつはいるよ
    夢をありがとう


    そしてその想いは、電車の四人に確かに届いていた

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 06:23:06

    彼らはトレセン学園を去るウマ娘全員に、これをしている
    残酷なことをしている

    三人は駅員にも、誰にも名乗らない
    男なのにウマ娘の格好をし
    電車相手にも引けを取らない走りをする
    そんな彼らは、地域の人々から、こう呼ばれている


    偽物達の・哀歌
    ハリボテ・エレジー

  • 8おしまい21/09/05(日) 06:25:13

    ハリボテエレジー概念が流行っているみたいですが
    俺の中では、ウマの格好をした男が三人で走る
    そんなハリボテエレジーでした

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 06:27:17

    >>8

    良いものをありがとう。

    朝から気分の良いssを読めた。

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 06:37:26

    一抹の哀愁はあれどその先の未来を応援したいと思える文だった
    今日は良い一日を過ごせそうだ

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