【文章注意】ミッドナイト・カレアヤ

  • 1◆Vsb1IJhbMs24/04/19(金) 03:11:07

     珍しく、眠れない日だった。
     夜遅くにやるのは目にも肌にも悪いなと分かってはいるけど、こんな時はウマスタを眺めることにする。

    『元気?』

     そんな私の状態を見透かしたかのように、懐かしい名前からLANEが来る。
     最後に会ったのは何年前かなというくらいには時間が経ってたと思うけど、今その話をしても仕方ない。
     それにしても、この人から話を始めるのも珍しいなと思いながら、返信の文面を考える。

    『元気ですよ』
    『どうかしましたか?』

     まずはこの人から──アヤべさんからLANEが来ること自体が嬉しくて、逸る気持ちを抑えて返信する。
     でも、もっと珍しいのはここからだった。

    『変なこと言ってもいい?』
    『ドライブに付き合って欲しい』

  • 2◆Vsb1IJhbMs24/04/19(金) 03:11:33

    「アヤべさんから誘ってくれるなんて珍しいですね、しかもドライブなんて」
    「眠れなかっただけよ、すぐに返事くれて良かったわ」

     三十分ほど経って、アヤべさんは私の家の近くに来た。
     数年ぶりに会うアヤべさんは……大人の魅力が増してる感じかな? それでもすぐにアヤべさんだと思い出せるくらいには、大変貌はしてなかったみたい。
     アヤべさんをもう少しまじまじと眺めていたかったけど、アヤべさんがさっさと乗って欲しそうにしてたので仕方なく助手席に乗り込む。

    「それで、どこまで行くんですか?」
    「決めてないわ、とりあえずカレンさんが良ければ朝まで動き回るけど」

     アヤベさんがそこまで言ってくれるなんて。久々に会えたというのもあるし、明日──日付上は今日って言った方がいい?──は何も無いから、素直に誘いに乗る事にする。

  • 3◆Vsb1IJhbMs24/04/19(金) 03:11:58

     この時間帯になると、広い道路でも普通の車とすれ違うことは少ない。走っているのはほとんど大型トラックで、こういうのは時間帯を問わないんだとぼんやり考えたりもする。
     山道に入ればすれ違う車なんてほとんどなく、そもそも街灯も無いヘッドライトだけが頼りの走行になるからアヤべさんもそれなりに神経を使ってるようにも見える。
     それでもスムーズに、何事もなく、距離の割に思ったより時間をかけることなく、『アヤべさんが何となく決めた目的地』に私もたどり着いた。

    「やっぱり、この時間帯だと暗いですね」
    「でも、星はよく見えるわ」

     山の頂上。低めの山ではあるけど、これくらいで丁度いいのかも。展望台だってあるし。
     決めてない、とは言っていたけど、深夜にドライブするからにはここに来ると決めていたように迷いのない道のりだった。星が見えるから、というのが一番の理由だろう。
     自動販売機があったので、そこで飲み物を買って一息。特にこの場で何かをするでもなく、五分にも満たない天体観測だったけど、私にとってはこれで十分だった。

  • 4◆Vsb1IJhbMs24/04/19(金) 03:12:25

    「もう眠くなってきたから、そろそろ帰るわよ」
    「えっ?」

     そんなアヤべさんのマイペースで、この深夜のドライブは早々に帰路につくこととなった。
     朝まで動くつもりだったはずだが、その辺りはアヤべさんにぶーぶー言っても仕方ない。そういう時だってきっとある。
     それに、ほんの少しの間でも久々にこうして行動を共にできただけでも有難い。

    「それで、貴方は今日はどうするつもりなの?」
    「どうしようかな〜、カレン、こんなに連れ回されちゃったから、アヤべさんのお家にお邪魔してもいいですか?」
    「…………今日は自分の家で寝なさい」
    「え〜、ちょっとくらいいいじゃないですか、同室だったんですし」
    「じゃあ、私がお邪魔するわ。ちょっと私の家に寄るわね」
    「えっ」

     ──なんか想像の斜め上をいく状況になっちゃった。アヤべさんがここまでグイグイ来るなんて。
     でも、私の答えは「是非!」しかなかった。やった、まだアヤべさんと一緒にいられる。という喜びだけがあった。

  • 5◆Vsb1IJhbMs24/04/19(金) 03:15:55

    以上、ここまでです。

    以前実家帰省した時の、半分実話半分捏造です。
    友人から数年ぶりに唐突に連絡来て、その内容が無意味に軽く出かけるだけとかだとテンション上がるよね、という話でした。
    こんな時間に読んでくれた方がいましたら、御清覧ありがとうございました。

  • 6二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 03:33:42

    良いSSだったのだ!
    この、久しぶりに会ったあの人は確かに大人として成長していたけれど、それでも変わらないモノもあると感じられる距離感が数年後のカレアヤにピッタリなのだ保守したいのだ!

  • 7◆Vsb1IJhbMs24/04/19(金) 03:45:26
  • 8二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 04:06:43

    >>7

    こっちも読んだのだ。

    物思いにふけり、栄光を手にしたモノも薄くなった数年後。やってきた結果は輝かしいものと評価されなくとも

    確かに自分の誇りなのだとくい、と猪口でお酒を呷るのが想像できて良かったのだ

    (最初はお酒をロックで飲んでてからり、と氷が鳴いてると思ったのは内緒なのだ)

  • 9二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 07:13:22

    とっても良い雰囲気 いつまで経っても残る友情って素敵

  • 10二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 07:15:11

    ちょっと疎遠にはなるけど関係自体は確かに残ってるっていい関係じゃないの〜
    よきよき

  • 11◆Vsb1IJhbMs24/04/19(金) 07:47:56

    >>8

    ありがとうございます。自分より凄いやつなんて後からいくらでも出てくるからなあという感じでした。


    >>9

    >>10

    ずっと仲がいいってよりも、普段は年単位で話さないけど連絡ひとつで飛んでいくっていうくらいの友人関係でもいいと思います。個人的元ネタの友人には感謝です。

  • 12二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 08:26:36

    良い文章だった…カレアヤをありがとう

  • 13二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 09:05:18

    続きはどこだ!!!!これでは生殺し、あまりに殺生である

  • 14二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 15:52:04

オススメ

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