- 1ロブスター24/04/21(日) 18:07:16
…春、それは新たな出会いの季節であり、新たな人との関係が始まる季節でもある。別れを経験した人もいれば新たに出会う人もいる。そんな人間関係が移り変わる季節にて、エイシンフラッシュは少し…いや、かなり不機嫌であった。
「〇〇トレーナー!ご指導ありがとうございました!!」
「いや、気にしなくていいよ」
「〇〇トレーナー!今度は私の走法についてアドバイスが欲しいです!」
「ていうか私をスカウトしてほしいです!」
「ダービートレーナーがこんなイケメンなら狙わない手はないわよね!」
理由は一つ。エイシンフラッシュの担当しているトレーナーその人が、数多の新入生のウマ娘に群がられているからだ。彼の功績はトレーナーの中でもなるのが難しいと言われているダービートレーナーに初年度でなったという点。もちろんそれはエイシンフラッシュ走りあってこそのモノだがトレーナーの手腕も合わさり、新入生から希望殺到するほどの大人気ぶりを受けている最中だった。
「…でも」
トレーナーの手腕が評価されるのはフラッシュも悪い気はしない。彼と歩んできたトゥインクルシリーズの道程は誇りを重んじる彼女にとって大切で変えの効かない愛おしい日々だ。だがそれでも、それでもだ。
「…『私』のトレーナーさんですよ…」
若い娘が自身のトレーナーに囲まれているのを心底彼女は気に入らないのだ。彼女の名誉のために言っておくがフラッシュはそこまで独占欲が強いというわけでもないしトレーナーを縛り付けるようなこともしない。仮に彼に新たに担当するウマ娘が増えたとしてもチームリーダーとして誇りをもってスケジュールを完遂できるだろう。だが…だがそれでも限度がある。
「…もし仮にトレーナーさんが私だけのトレーナーさんではなくなるならそれでもいいんです…そこはトレーナーさんの自由ですから」
その独白は誰に充てられたものか。実際彼女はそこを弁えているのは間違いない、多少モヤモヤを覚えようが専属だけじゃなくなることを受け入れるだろう。
「…でも…いつまでも思わせぶりな態度は…煮え切らない態度は…これ以上は…」 - 2ロブスター24/04/21(日) 18:08:28
「…………」
彼女の話を聞いていた友人…スマートファルコンは絶句していた。フラッシュは嫉妬ではないと念を押していたが…(…嫉妬だね)
うん、これは紛れもない嫉妬だ。ファルコンの脳内ではもうそれしか出てこなかった。しかも割と本人は自覚していないタイプの嫉妬だからなおも厄介だ。このヒト基本的にトレーナーとの時間が何にも代えがたいって言ってるから二人きりでいたいんでしょうフラッシュさん? そこまで思ってもファルコンは言わなかった。すべては友の名誉のため。でもこれ以上は勘弁願いたい、この無自覚の惚気をいつまでも聞かされても無事なほどファルコンの脳は達観してない。そこでウマドルはこの状況を打破するために策を弄した。
その策とはシンプルなものだ。ファルコンは走り、群がれているトレーナーの元に行った。
「ねぇ〇〇トレーナーさん、フラッシュさんがさっきからずっと待っているよ?」
と、それだけだ。それを告げるだけだ。それを告げるだけで十分だった。トレーナーは押せ押せの勢いにたじろいていたのが一瞬で覇気が変わり
「ごめんね、これ以上フラッシュを待たせたくないんだ」
その一言だけで群がる新入生を制し、愛バの元へ…
「行こうか、フラッシュ。今日の予定を遂行しに」
「…もう用事は済んだのですか、トレーナーさん」
「Alles ist gut…フラッシュとの時間以上に大切な用事はないよ」
「…………本当に…本当に貴方という人は…」
そして二人はあっという間に二人の世界に行き、去っていった。一部始終を見ていた新入生の中にはアレには勝てんわや推せるーやら脳が破壊されて再生されたとかなんか色々言っているが…ファル子にとって言えることは一つ
「…もう少し自分の気持ちに素直になればいいのに」
あんなに両想いなんだから…
とフラッシュの無自覚の惚気に困らせられながらもナイスアシストで結果的にいちゃつくトレフラの話はありますか? - 3二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:10:38
たった今生えてきましたねー
- 4二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:11:07
ありますよ
- 5二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:12:19
そこに有るんだよなあ
よくやったボイルして食ってやる - 6二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:12:28
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- 7二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:16:27
たまに生きてる海鮮系見るよな
- 8二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:23:29
そこにありますね
- 9二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:23:49
いいじゃないかいいじゃないか
ただここは…トレーナーが影分身でもしているのかね?伊達男も隅に置けないねぇ
>若い娘が自身のトレーナーに囲まれているのを心底彼女は気に入らないのだ。
- 10二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:26:24
- 11二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 18:27:20
新鮮な海産物だ!釣り上げて水槽に移せ!
毎日SSを自宅で書かせてやるんだ! - 12二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 00:43:39
ほしゅ
- 13二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 08:02:03
彼女の名誉のために言っておくがフラッシュはそこまで独占欲が強いというわけでもないし
ええ〜?ほんとうにでござるか〜?(鹿撃銃の発砲音) - 14二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 16:41:30
ありがとう海産物一門
- 15二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:58:22
「あれは、トレーナーさん?」
その日の最終授業が、急遽自習となった日。
同級生のファルコンさんと、机を合わせて自習していると、目の端に映った光景。
開け放たれた窓からは、少し早い初夏の匂いと、すでに今日の授業が終わっている中等部の娘たちのきゃぴきゃぴした声。
遠く、校門付近の人だかり。
校舎3階の窓から見えるのは、豆粒ほどの人の集合体だが、この距離でもかけがえのないあの人の姿を、見間違えるはずがない。
不安に疼く、心。
「フラッシュさん?」
「……なんでもありません。もう少し進めましょうか」
自習とは言え、まだ授業中なのだから、それ以外のことに関心を向けるのは御法度。
わかっては、いるのだけれど。
校門の方から、ゆっくりと歩いてくる、トレーナーさんに目が離せない。
……いや、トレーナーさんだけが理由じゃない。
その周りに、囲むように歩いてくる今年の新入生たち。
可愛らしく、溌溂としたその自然体の可愛らしさに、胸がチクリと痛む。
そうこうしているうちに、声が聞こえるくらいまで近づいた。
ウマ耳が、自然とそちらへ向いてしまう。
尻尾もおとなしくなり、何事をも聞き逃すまいと耳を澄ます。 - 16二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:58:51
「今度の模擬レース、私も走るんです。見に来てくれませんか?」
「ボク、こないだ芝2,000mで新記録出したんですよ。どうですかこのタイム?」
「アタシのお母さんも、お祖母ちゃんもG1ウマ娘なんです。だから、絶対にアタシ、才能あると思うんです」
「あ、あのー。ワタシを担当してみませんか。努力だけなら絶対に負けない自信があります」
「気に入った。わらわのトレーナーになれ!」
猛烈なアピール。
この時期は、もうすぐ新入生最初の模擬レースもあるし、早くからトレーナーに付けば、その成長が段違いなのは、周知の事実。
それをわかっているからこそ、あのように自分の売り込みに余念がないのだ。
「あ、あれ、フラッシュさんのトレーナーさんじゃない?」
「……はい」
向かいに座っていたファルコンさんも、声の騒がしさで気が付く。
「良いの? 行かなくて?」
「授業中ですから」
それに、行けない理由がもう一つ。 - 17二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:59:13
トレーナーさんは、私のためにすべてをなげうってくれている。
毎週のデートも、毎日の手料理も、毎晩の電話も嬉しそうにしてくれて、きっと両想い。
両親もトレーナーさんを気に入っていて、ドイツに迎え入れる準備を着々と進めてくれている。
でも。
――本当に、トレーナーさんをドイツに連れて行ってしまっても良いのか。
その不安が、抜けない。
彼は、生粋の日本人。
トレーナーを続けたい意志もある。
もしかすると、自分と恋仲になってドイツに渡るよりも、自分と別れて日本で新しい娘とトレーナー生活を続ける方が、トレーナーさんにとって幸せではないのか。
ドイツは、日本に比べて、ウマ娘のレースが盛んではない。
ドイツ1国の1年間のファン数が、有馬記念1回のファン数に負けてしまうくらい。
「……フラッシュさん、顔色悪いよ?」
「大丈夫です」
今なら、私という3冠&秋古馬3冠ウマ娘を育て上げたことで、評価は鰻登り。
容姿も、性格も、走りも。
トレーナーさん好みのウマ娘を見つけられるだろう。 - 18二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:59:34
ならば、自分は身を引いた方が良いのではないか。
と……。
自分の愁いを含んだ秋波に気付いたトレーナーさんが、こちらに顔を向けて手を振った。
「フラッシュ!」
小さく、手を振り返す。
周りの新入生たちの、憧れと羨望の眼差しが、こちらに向く。
……こんなことで、優越感を覚えてしまっているなんて、なんて自分はあさましいのだろう。
その時。
彼が、手に持っていた包みをポーンとこちらに投げた。
寸分の狂いなく、届くそれ。
胸元に当たって、大きく跳ねた。
「あっ、えっ、ちょっ!?」
お手玉するように、なんとか落とさずに受け止める。
笑いながら、私を見ているトレーナーさん。
……人の気も、知らないで。
恨みがましい目を向けると、彼はちろっ、と舌を出して駆けて行ってしまった。
あれでなかなか、悪戯っ子なところがあるのは、誰よりも貴方と同じ時間を過ごしてきた自分だから、よく知っている。
そして、ちょっとお茶目なところも。 - 19二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:59:55
「ねえねえ、フラッシュさん! トレーナーさん、なにをくれたの!?」
「そう言えば、なんでしょう?」
ファルコンさんに促されるままに、手元のプレゼントに目を向ける。
綺麗にラッピングされた包み。
リボンをゆっくりと解いて、中身を取り出す。
「わぁ~」
「まぁ……」
出てきたのは、バラの入ったハーバリウム。
赤色、ピンク色、緋色、紅色、黒色。
色とりどりの花が、12本。
そう言えば、前に私が贈ったバレンタインのバラを、「枯れるのが勿体ない」と彼はハーバリウムにしていた。
何気なく、それを褒めたら、今度ハーバリウムを贈ってくれると約束してくれたのを思い出した。
……それにしても。
「ふふふ……」
「あれ、フラッシュさん、一瞬で御機嫌になったけど、どうしたの?」 - 20二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 22:00:29
我ながら、現金なもの。
ファルコンさんの声も気にならない。
バラの花言葉は、色によって違う。
赤色は、「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」「美貌」。
ピンク色は、「しとやか」「上品」「かわいい人」「美しい少女」「愛の誓い」。
緋色は、「灼熱の恋」。
紅色は、「死ぬほど恋焦がれています」。
黒色は、 「あなたは私のもの」「決して滅びることのない愛、永遠の愛」。
身体が自然と火照り、照れてしまう。
……あの人と、来たら。
それに、バラの本数。
12本は、「私の妻になってください」。
……こんな偶然が、あるはずがない。
これは、きっと、確信犯。
細身のガラス瓶を、そっと抱き締めると、彼の温もりがまだ残っているような気がする。
――私、貴方を好きでいて、良いんですね。 - 21二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 22:56:48
- 22二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 07:12:51
この伊達男め…ドイツで幸せにな!
- 23二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 17:19:10
その後、ドイツレース界がある外国人トレーナーの影響で隆盛に向かっていったという
みたいな未来になってほしい - 24二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 19:49:15
文豪は必ずいる
- 25二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 19:53:55
出たな海鮮系!
- 26二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 06:24:58
末永く爆発しろ
- 27二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 17:37:34
この人のシリーズまとめってどこかにある?