- 1二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:52:19
「トレーナーさん……お風呂…………ありがとうございました」
「ああ、湯加減は大丈夫だった────」
日は沈み、宵闇のカーテンが空を包み始めた頃。
背後からかけられた声に振り向いた俺は、相手を見た瞬間、言葉を失ってしまう。
漆黒の美しい長髪、金色の双眸、風呂上りで少し火照った白い肌。
担当ウマ娘であるマンハッタンカフェの姿は、白い湯気を立てながら、俺の座るソファーへ腰かける。
「はい……とてもポカポカ、良い湯加減でした…………あの……どうかしましたか?」
「あっ、いや、その、着ているもの一つで印象が変わるなあって、あはは」
「……?」
カフェは、きょとんとした顔で首を傾げる。
今の彼女はトレセン学園の制服姿でも、ジャージ姿ではない。
可愛らしい印象を受ける私服姿でも、シックなデザインの勝負服姿でもない。
今の彼女の身を包んでいるのは、ゆったりとしている、ブラウンのネグリジェ。
柔らかな生地で作られたそれの丈は少し短く、ほっそりとした生足を惜しみなく出している。
その上には白いカーディガンを羽織り、全体的な印象はどこか大人っぽい。
そして、頭には白いカチューシャ。
普段は、視線を隠すように垂らしている前髪をまとめている。
それ故に、その美麗な顔立ちと白磁のようなおでこを晒していた。
……元々きれいな子だとは思っていたが、こうされると、美人さがより強調されるというか。
「少し休んだら……珈琲、は眠れなくなるので……ココアでも……淹れましょうか」
そう言って微笑みながら、こてんと、俺の肩の上にカフェはそっと頭を寄せる。
しっとりとした髪の感触と、風呂上りの温もり、シャンプーや石鹸の匂い。
生々しいほどに、彼女を感じてしまって、情けなくもドキリとしてしまう。
いかんいかん、今日のカフェは俺を心配して、来てくれたのだ。
寝巻姿を見せに来てくれたわけじゃあるまいし、見惚れてしまうなんてもっての外である。 - 2二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:52:31
「ココアだったら俺が淹れるよ、それで、やっぱり“良くないもの”はいるのかい?」
「…………はい?」
「ほら、なんか“良くない”とか、“憑かれている”とか言ってたし、それで来てくれたんだよね?」
それは、今日のトレーニング後の出来事。
トレーナー室で、日課の足の手入れをして、カフェの淹れた珈琲を楽しんでいる最中。
彼女は突然、眉を顰めて、顔を近づけて来た。
金色の瞳にじっと見据えられて、思わず、俺は固まってしまう。
やがて彼女は、心配そうな表情で小さく呟いた。
『……──これは、良くないですね』
『……えっ?』
『トレーナーさんは……“つかれている”ようです…………少し身体が重くありませんか?』
『…………言われてみれば、ちょっと肩とかが重いかもしれない』
『はあ……アナタは私のことは良く気づくのに…………自分のことになると……鈍感ですね?』
大きなため息をつくカフェ。
言われてみれば、最近少しばかり身体が重い。
気になるほどではないが時々頭痛もするし、目もなんだか熱い。
なるほど、“良くないもの”が悪影響を与えているとすれば不思議ではない。
『対処をします…………今夜、トレーナーさんの家に……行っても良いでしょうか?』
カフェがいてくれるなら、とても心強い。
男としてはなんとも情けのない話ではあるが、素直に頼ることにした。
そんな理由で、彼女は今日来てくれた────と思っていたのだけれど。 - 3二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:52:44
呆れたような顔で、カフェは俺のことをジトっと見上げて、ため息をついた。
……なんだか、今日はため息をつかせてばかりだな。
「私は……アナタが…………“疲れている”と言ったんです」
「えっ?」
思わぬ言葉に、俺は間抜けな声をあげてしまう。
カフェは無言のまま、俺の顔に向けて手を伸ばすと、細い指先ですっと目元を撫でた。
「目の下に深い隈が……昨日は何時に寝ましたか…………?」
昨日は、持ち帰りの仕事が溜まっていたから布団に入ったのは、今日だった。
俺が黙っていると、カフェは悲しそうな顔をして、今度は眉間に触れる。
くにくにと、指先で揉み込みながら、問いかけて来る。
「トレーニング中…………時々厳しい目つきをしてました……頭痛は大丈夫ですか?」
確かに、カフェのトレーニングを見ている時、鈍い痛みが頭に走っていた。
平静を装っていたつもりだったけれど、カフェに隠し通せるはずもなかったか。
そして彼女は、そっと暖かい両手で俺の頬を包んで、顔をずいっと近づける。
吐息がかかりそうな距離に、心配そうに眉を歪ませるカフェの顔があった。
「顔も少しやつれて……肌も荒れています…………ご飯は三食……ちゃんと食べてますか?」
朝は食べない日が殆どで、夜はカップ麺やコンビニ弁当で済ませる日も少なくなかった。
カフェのために、と思って来たつもりだが、それで不安にさせてしまったなら本末転倒だ。
悪いことをしてしまったな、そう思って、俺は彼女に謝罪の言葉を告げる。 - 4二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:52:56
「心配をかけちゃって、ごふぇ────ふぁ、ふぁふぇ?」
「……謝って欲しいわけでは、ありません」
ごめんと言おうとした瞬間、カフェはむにむにと、俺の頬を揉みだした。
ぎゅーっと押してみたり、軽く摘まんで左右に伸ばしてみたり。
俺としては困惑するばかりだが、彼女的には楽しいのか、少しだけ表情が緩む。
「ふふっ……ですから…………今日はアナタに……寛いでもらおうかと」
「……えっ?」
「今日……私は…………トレーナーさんを、癒しに来たんです」 - 5二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:53:10
「さあ……こちらへ頭をどうぞ、トレーナーさん」
「こちらに、って」
「膝枕、です……こうすると男性は癒されると…………聞いたので」
「誰からそんな、うわっ!?」
カフェはソファーの端っこに身体を寄せて、太腿をさすりながら手招きをする。
いや、さすがに膝枕は────と思うのだが、身体は勝手に彼女の方へと傾いてしまう。
なんてことはない、背中からぐいぐいと強めの力で押されているからであった。
“お友だち”もいるなら万に一つも逃れる手段はあるまい。
下手に暴れてカフェを巻き込むよりも、素直に従うべきだろう。
そう、俺は自分にそう言い聞かせて、後頭部をカフェの太腿に乗せ、天井を見上げた。
「……どうですか……まだお風呂上りで…………ぽかぽかですか?」
「……うん、暖かいよ」
カフェは慈しむような微笑みを浮かべつつ、上から覗き込んでくる。
薄い布越しに感じる、彼女の太腿はまだ風呂上りの火照りを残していた。
彼女の膝枕は、暖かくて、柔らかくて、安心する匂いがして、とても心地良い。
寝転がっているだけで、少しぼーっとしてしまうほどだった。
「少し……失礼しますね」
そう言うと、カフェはそっと、俺の視界を手のひらで塞いだ。
その手もまだ温もりを残していて、目元がじんわりと温められていく。
ただ手を当てているだけなのに、目の奥の疲れが、少しずつ融けていくようだった。
しばらくカフェは手を添え続けてくれて、熱が取れた頃に、そっと外す。
そして俺を見つめながら、少し困ったような表情を浮かべた。 - 6二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:53:23
「まだ……眉間に皺が寄っていますよ……?」
「そう、かな、少し緊張しているだけだと思うけど」
年下の女の子に膝枕をされる経験は、今までなかった。
カフェは眉間を揉みながら、何かを思いついたかのように耳をピンと立てる。
悪戯を思いついた子どものような笑みを浮かべてから、そっと両手を────俺の耳へと伸ばした。
「……こしょこしょ」
「……!?」
カフェは折れてしまいそうなほどの細い手で、優しく、俺の耳を弄ぶ。
耳の中をくすぐるように指先を掠めて、擦れる音と、彼女の低い声によるオノマトペがシンクロする。
心地良い響きが脳に響き渡り、ぞくぞくと甘い刺激が背筋を走る。
そんな俺の姿を見て、彼女は嬉しそうに耳をぴょこぴょこうと動かした。
「ふふっ……少しお顔が蕩けてきましたね…………私の指と声、お好きですか?」
カフェは顔を近づけて、愉しげに、囁く。
完全に図星を突かれた形になる俺は何の言葉も返せず、少し目を逸らすだけ。
そんな俺の姿を見て、彼女はくすくすと笑みを零した。
「大丈夫ですよ……癒されてもられば…………私も嬉しいですから……ぎゅっぎゅっ……どうですか?」
次いで、絶妙な力加減で、カフェは耳の溝、耳たぶなどに指圧を加えていく。
少しばかりの痛みと、それ以上の心地よさ。
あまり他人に触れさせない場所であるが故、未知の快感であった。 - 7二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:53:37
「気持ち良いですか? ああ……表情を見れば…………わかりますよ」
よほどだらしない顔をしているんだろうなあ、と少し恥ずかしくなる。
しかし、この気持ち良さと包まれるような安心感には抗えず、カフェに身を任せてしまう。
そして今は、頬をそっと撫でると、目元や眉の下などを優しく押していく。
指先ではなく、指の腹を使って、傷つけないよう丁寧に。
触れられて初めてずっしりと実感する目の奥の重み、それを暖かなカフェの手で解されていく。
「ぐりぐり……すりすり……」
しばらくの間、静寂の部屋の中、カフェの声だけが響いていた。
穏やかで、優しくて、ゆったりとした時間が過ぎていく。
やがて顔全体がじんわりと温かくなって、頭の中がふわふわとしてきた頃。
「…………こちらはこのくらいにしておきましょうか」
カフェの指が、離れていく。
名残惜しさを感じながらも、もう十分してもらったからと、思い直す。
さすがに何時までもこうしてはいられない。
俺は身体を起こそうとする────が、それは肩を押さえるカフェによって止められる。
「今度は……頭の後ろをやりますから…………ごろんとしてください」
いや、ごろんとと言われても、そう思った瞬間。
身体がふわりと浮き上がる。
空中に身体を横回転させられて、雑にソファーへと投げ出された。
────顔面を、カフェのお腹に突っ込ませるような形で。 - 8二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:53:49
ぽふっと、顔に触り心地の良い布の感触と、細く柔らかなお腹の肉感。
鼻腔からは甘ったるいカフェの香りが、暴力的なまでに流れ込んでくる。
慌ててごめんと、謝罪の言葉を口にすると、彼女の身体がびくんと震えた。
「ひゃっ……んっ……そこで喋られると…………くすぐったいです」
「……っ!」
即座に口を噤んで、なるべく浅い呼吸へと切り替える。
起き上がろうとはしているのだが、背中に何かが乗っているような感覚がして、どうにもならない。
そうこうもがいていると、後頭部を、そっと優しく撫でつけられた。
「このままで……大丈夫ですよ……それに……これは罰でもあるんです」
そう言うと、ぎゅっと、カフェは俺の頭を抱きしめた。
柔らかさと、温もりと、芳香と、そして絶対に逃がさないという、強い意志が伝わってくる。
やがて、頭の中がカフェでいっぱいになって、思考が麻痺していく最中。
彼女は突然、ふうっと耳元に息を吹きかける。
今度は俺の身体が、びくりと震えた。
「アナタが……無理をして…………私を心配させた罰……ですから」
くすりと、カフェの笑い声は、耳元に響く。
その囁きは愛らしくも、妖しく、どこか蠱惑的ですらあった。
「今夜はたっぷりと……──癒してあげますからね?」 - 9二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 14:54:06
お わ り
もっとパジャマ要素を活かしたかった - 10二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 15:00:42
いまはただあなたに感謝を――!
- 11二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 16:18:09
アッッッ良い!
- 12二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 17:07:18
ふーん最高じゃん
- 13二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 17:18:09
ほどよいエロシティズム
- 14二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 18:00:37
- 15二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 18:35:49
問題ないな、ヨシ
- 16124/04/25(木) 21:12:47