新妻オグリキャップ

  • 1くまも21/09/05(日) 17:45:09

    「とれーなー、おかえりー!!」

    玄関を開けた瞬間、飛び出てきた我が子に抱き着かれ押し倒される。
    母親譲りの綺麗な芦毛。さらさらとした髪に、太もものあたりでゆらゆらと揺れる尻尾がとてもくすぐったい。
    どうにか引き剥がそうとするが、短い手足でがっちりと胴を抱え込まれているためそれも叶わなかった。こういう時、ヒトとウマ娘の膂力の差を実感させられる。

    「ただいま。それからトレーナーじゃなくてお父さんと呼びなさい」
    「でもお母さんは、お父さんのこととれーなーって」
    「お父さんはお母さんのトレーナーだけど、ワンのトレーナーじゃないだろう?ワンにとってはお父さんなんだから、そう呼びなさい」

    全く聞いていない様子で鼻を押し付けてくる我が子。どう退かしたものかと考えていると、不意にその重さが消えて失くなった。
    いつの間に出てきたのか、傍らでこちらを覗き込む妻。あれだけ力強く引っ付いていた娘を、いとも容易く引き剥がし片手で抱き上げている。
    さらに空いた手で私を立たせると、背広についた土埃を軽く払ってくれた。

    「ワンちゃんも力が強くなってきたな。このままでは私が追い越されるのも時間の問題だろう。そうは思わないだろうか、トレーナー」
    「かもしれないな…楽しみにしておこう。それから、俺のことはお父さんと呼んでくれ。ワンが真似する」
    「ふふ、分かった。…お帰りなさい」
    「ああ、ただいま。オグリ」

    微笑みながら私を招き入れるオグリキャップ。
    バタバタとこちらに手を伸ばしながらもがくオグリワンをもう一度抱き着かせ、親子三人でリビングまで向かう。一家団欒、夕餉の時間。

    「ところで、さっきの呼び名についてなんだが。その…私のことも、オグリではなくお母さんと呼んで欲しい」
    「ワンが真似するからか」
    「最近私のことをオグリオグリって呼び出して困ってるんだ。この子はすぐ私達の真似をしたがるから」

    それに…とオグリはこちらを振り返る。
    とっくに見慣れた彼女の顔。しかしいつもより少しだけ、赤みが差しているように見えた。

    「私達は夫婦だからな。夫婦とはそう呼び合うものだろう?…“お父さん”」

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 17:46:37

    ほぅ…良いものだな

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 17:51:34

    🐴<こういうのでいいんですよこういうので

  • 4くまも21/09/05(日) 18:10:21

    リビングにはバ鹿デカいテーブルが据えられている。
    その上に所狭しと並べられた料理。パッと見でも100人前はあるのではないだろうか。少なくとも、三人家族で用意するようなものではない。ある意味異常な光景とも言える。
    もっとも、我が家においてはこれが常識だ。

    「こら、ワン。しっかりと椅子に座ってお行儀よくしなさい」

    はしゃぐ娘をどうにか座らせる。
    そのままジャケットを脱ぎ、洗面所で手を洗うと俺も席に着いた。三人で手を合わせて食事にとりかかる。

    「………」

    黙々と夕食を口に運ぶオグリ。山のように積もった料理がみるみるうちに消えていく。
    100人前のうち98人前はオグリのぶんだ。これだけの量を用意するために、我が家の台所はちょっとしたレストラン並みの規模がある。それにつられて家も大きい。当然食材の量のバ鹿にならない。ちなみにそれらは全てオグリの稼ぎによって賄われている。

    「美味しいかい、ワンちゃん」
    「あい。今日もたくさん食べるね、おぐり」
    「お母さんだろう?全くこの子は…」

    幸いなことに、オグリワンは母親の健啖は受け継がなかった。
    仮に受け継いでいたら、流石に家計も苦しかったかもしれない。いくら夫婦揃って高給取りといえども限界があるからな。

    「お母さんの料理の腕もずいぶん上がったな」
    「ちゃんと練習したんだ。クリークにも教えてもらったりして」

    昔も出来なかったわけではないが、今はえらい上達している。中央トレセンのカフェテリアのそれと遜色ない。こちらに戻って以降、あの味が恋しくなったオグリが死に物狂いで身に付けた技術なわけだし、その成果がしっかりと出ているのだろう。

    「タマにも手伝ってもらったな。…タマといえば、明日彼女のレースを見に行く約束をしているのだがどうだろう?お父さんとワンちゃんも一緒に来ないか?」
    「いく!!」
    「構わないよ。元々そのつもりだったからな」
    「良かった。なら久々に家族三人でお出かけといこう」

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 18:15:14

    ふう…トレオグは供給が少ないので助かる

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 18:32:49

    善きかな

  • 7くまも21/09/05(日) 19:43:48

    食事が終わると、ワンをお風呂に入れなければならない。
    俺の膝の上に座りながら、こくりこくりと船をこぐ彼女の体を揺さぶる。

    「起きなさいワン。食べた後すぐに寝ると牛になるぞ」
    「うしさんでいいもん。クロスちゃんだって生まれ変わったらうしさんになりたいって言ってたもん」
    「そうなったらお母さんに美味しく食べられちゃうかもな」
    「やだーーー!!」

    どうやら覚醒したようなので、そのまま脇に腕を入れて持ち上げながら風呂場まで連行する。
    手早く服を脱がせると、そのまま俺も裸になって浴室へ。栓を捻り、シャワーのお湯を頭から浴びせてやる。十分濡れたのを確認すると、そのまま体を洗ってやった。

    「うぅ~~。苦い」
    「バ鹿、なにやってるんだ」

    頭から垂れたシャンプーが口に入ってしまった…わけではなく、どうやら自分から口を開けて舐めとったらしい。
    手でワンの口を塞ぎながら、髪と尻尾の手入れに移ろうとした時…ガラリと、背後の扉が開いた。

    「なにしに来たんだ、オグリ」
    「なにって…お風呂へ入りに来たんだが」

    分かりきったことをあっけらかんと答えるオグリ。それが答えになっていると思うのか。
    締まった彼女の体が湯気越しに露になる。引退し、子を成してなお徹底したトレーニングによって絞られた肉体。腕や脚に少しの弛みもなく、腹にはうっすらと腹筋まで浮かんでいる。
    完璧だ。今からレースに出てもかなりいい勝負が出来るだろう。長年培ったトレーナーとしての観察眼がそう断言する。

    「タオルはどうした?」
    「?必要ないだろう、そんなもの」
    「いや、せめて体は隠して欲しいというか」
    「別に隠す必要はないだろう。私達は夫婦なんだからな」

    それはそうだが、しかし余りにも目に毒だ。ここでウマっ気を出すわけにはいかないから早急になんとかしてもらいたい。

  • 8くまも21/09/05(日) 19:44:07

    「隠して欲しいか…。私の体はそんなにだらしないか?」
    「え、いや……」
    「これでもしっかりとトレーニングはしているつもりなんだが」

    そうじゃない、と言おうとしたものの、オグリの余りの落ち込みっぷりに言葉を飲み込んでしまう。
    そうこうしているうちに、彼女はワン洗いを代わると俺を浴槽に入れてしまった。
    手慣れた様子で、ワンの髪と尻尾を手入れしていく。やはりアイドルホースだけあって、その手並みはとてもスムーズだ。俺ではああはいかない。特に、自分にはない尻尾については。

    「ほら、出来たぞワンちゃん。冷えてしまう前に早くお湯に浸かりなさい」

    全身の泡を流してもらい、ワンはそのまま俺の足元にすっぽりと収まる。オグリも丁寧に体を洗うと、向き合うようにして湯船に浸かった。
    それなりに広い我が家の風呂だが、こうして三人で浸かると気持ち狭いな。まぁたまにはこういうのもいいかもしれない。

    「こうしていると、昔のことを思い出すな」
    「…温泉旅行のことか?」
    「ああ」

    確か、商店街の福引きで温泉チケットを引き当てて、URA優勝後に二人で遊びに行ったんだったか。
    せいぜい数年前のことだが、もうずっと昔のことのように思える。それだけ最近が充実していたということだろう。

    「…なんの話?」
    「昔、お母さんはお父さんと一緒に温泉に行ったことがあるんだ。ここよりもっと広いお風呂に入ったんだぞ」
    「いいなぁ…。ワンも行きたい」
    「良いんじゃないか。折角だし、今度三人で家族旅行にでも行こうか」

    もう少しで聖蹄祭も開かれる。旅行がてらに中央へ顔を出すのもいいかもしれない。
    …将来この子も、あそこのお世話になるかもしれないからな。

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 19:47:58

    希少なトレオグだ…しっかり補給しなきゃ…

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 20:30:34

    風呂から上がり、もう寝る時間。
    夢の世界に半分脚を突っ込んだワンをベッドに寝かせると、自分の寝室に戻る。
    中央にいた頃と違って、ここカサマツのトレーナー業は時間に余裕がある。枕に頭を預けたところで、不意に部屋の扉が開けられた。

    「……オグリ?」

    彼女はずんずんと部屋を横切ると、ポスンと俺の腰の上に跨がった。胴体が全く動かせない。

    「トレーナー、さっきのお風呂場でのこと、憶えてるか…?」
    「風呂場でのこと…?」
    「私の体を、だらしないと言ったことだ」

    誤解だ、と口に出す前にオグリに襟元を掴まれる。そのままガバッと服を剥かれてしまった。

    「私も鏡で確認してみたが…やはり、あの頃と比べて弛んでいるとは思えない。そこで…」
    「そこで…?」
    「トレーナーにももう一度、確かめてもらおうと思ってな」

    今度は自分の服を脱ぎ捨てる。

    「オ、オグリ…明日は早いから、だからもう…」
    「だからなんだ?」

    彼女威圧感に耐えきれず口を閉じる。
    よく見れば完全に耳が後ろへ絞られているし。

    「終わったらちゃんと感想も聞くからな。寝たふりなんてしても無駄だぞ」
    「ひぇぇ…」

    掛かり出したオグリを前にして、諦めて四肢を投げ出す。いつも通り、日付が変わるまで寝かせてはくれないのだろう。思えば初めてもこうだったな…なんて、そう思いながらゆっくりと目を瞑った。

  • 11二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 20:31:34

    終わり。ウマ娘子育て概念もっと増えろ。
    あとこれ書いといてなんだけど自分はオグ北が大好きだ。

  • 12二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 20:32:56

    >>11

    性癖はゲームの装備品みたいにスロットがある訳じゃないから両立してもいいんだ。

  • 13二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 22:00:15

    エンゲル係数ヤバそう

  • 14二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 22:18:43

    >>11

    北オグも書いてくれたら嬉しいんだが?

  • 15二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 22:26:06

    温もりが五臓六腑に染み渡るようだ

  • 16二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 22:33:33

    トレオグも北オグも北ノルも北ベルもオグリ脳破壊も好きな矛盾を抱えて生きてる俺みたいなのもいるぞ

    両方推してええんやで

  • 17二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 22:37:03

    素晴らしい

  • 18二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 22:39:55

    トレオグでも見れるし頑張れば北オグでも見れるんだ
    最高なんだ

  • 19二次元好きの匿名さん21/09/06(月) 01:08:37

    良いもん見た

  • 20二次元好きの匿名さん21/09/06(月) 10:41:08

    トレオグ嬉しいよぉ………

  • 21二次元好きの匿名さん21/09/06(月) 11:08:51

オススメ

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