- 1導入◆TfkekQnBVrkl24/04/27(土) 20:35:53
形ばかりのノックをしても返事がないことは知っている。
ドアノブを回す音さえ響く程に静まり返ったトレーナー室は、ここにはいない部屋の主を彷彿とさせる無防備さでたやすく自身を受け入れた。
とはいえ何の理由もなくトレーニング後の疲れた身体でわざわざ立ち寄ったりはしない。軽く息を吐いて視線を二、三度泳がせる。するとすぐに目的のものは見つかった。
ダンボール箱いっぱいに積まれた手紙の山――自身に贈られたファンレターだ。
トゥインクルシリーズでデビューを果たして以来注目される機会が増え、いわゆる「ファン」がつくようになったのは少し前のこと。そうしたファンからの応援の声は手紙という形になって届けられ、今眼前にその質量を持って存在感を露にしている。
基本的に学園所属のウマ娘へのファンレターは学園側で一手に受け付け、内容に問題がないと確認されてから手元に届くシステムだ。今回もトレーナーから確認済みの手紙があるという知らせを受けてトレーナー室へ足を運んだのだった。
「……」
ソファに腰掛け一通一通読み込んでいく。送り主の年代も性別も様々ではあるが込められた熱意は皆同じ。特に小さな子供からのものは一生懸命に書いたであろう文字が微笑ましくつい顔が緩んでしまう。
胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じながらまた新たな一通に視線を落とす――が、そこに綴られた文面は予想もしていなかったもので。
トレーナー宛ての恋文。
その事実に驚き固まり、取り落とした便箋がはらりと舞った。
……と、こんな導入で始まるいろんなウマ娘ちゃんのssが読みたいです!
・ラブレターを返す? 返さない?
・返すならどんな態度?
・送り主は一般人? モブ学園関係者? モブウマ娘?
・ラブレターは悪戯? ガチ?
・送り主とトレーナーの性別は?
好きに分岐させて自分だけのssを書こう!
導入もキャラに合わせてお好きなように改変してください - 2タマ編◆TfkekQnBVrkl24/04/27(土) 20:37:40
「……アカンアカン」
一瞬の驚きからすぐに気を取り直し舞い落ちた便箋の行方を追う。
床から拾い上げた際の滑らかな手触り、鼻腔をくすぐる華やかな芳香、品の良い淡い色合い、安物ではないと感じさせるそれらがいたずらや悪ふざけの類ではないと雄弁に物語っていた。
「なんや間違えたんかい……変なモン読ませよって」
ここにはいないトレーナーに悪態を吐いて平常心を取り戻そうとするがどうにも落ち着かない。こみ上げてくる訳の分からない苛立ちの原因を探る内にある思考に至った。
まだ手紙の文面は途中までしか読んでいない。そう、恋文というのは自分の早とちりで最後まで読めば何ということのない内容かもしれないのだ。
そう考えると他人の色恋沙汰を覗き見したという罪悪感が薄れ気が楽になる。
大体あんな指導に熱心すぎて自分のことはろくに構わない男に惚れる女などいるものか。脳内でいくつものトレーナーの短所を思い浮かべて再び手紙を読み始めた。そして数分後。
「……ガチやん」
読まなきゃよかったと今更な後悔が押し寄せてくる。
内容自体は実にシンプルでレース場で見掛けて興味を持ったことの経緯、自身の素性やプロフィール、そして自撮りの写真とLANEのID。
丁寧につづられた文章からは贈り主の真摯な思いが熱量そのままに感じられる。同封の写真にはきっと断られるとは微塵も考えていないであろう妙齢の美女が微笑んでいた。
「もう連絡したんかな……」
最初から手紙は開封されていたからトレーナーは既読の筈だ。
日頃から冗談めかして「出会いが無い」と口走っていた彼からしたらまさに渡りに船だろう。それにこれだけの美人の誘いとあらば断る男など存在しないのではないか。
あのトレーナーに恋人ができる
喜ばしいことのはずなのに、何故か、手紙をくしゃくしゃにして投げ捨てたい。そんな衝動が駆け巡った。
「あーもう! 何でウチがこないなことでモヤモヤせんとあかんのや!!」
ささくれのような小さな引っ掛かりはやがてそれが解消できない故の苛立ちに変わり、遂には原因を作ったトレーナーに怒りが向けられた。 - 3タマ編2◆TfkekQnBVrkl24/04/27(土) 20:38:41
今すぐ来いと呼び出しを掛ける。早く手紙を手放したいのに加えて直接文句を言ってやると、今か今かと待ち構えた。
「お待たせ。渡したいものって何?」
呼び出しを掛けて十数分後、気の抜けた声と共にトレーナーがひょっこり顔を出す。その能天気な顔に手紙を投げつけてやりたくなったがそれは流石に手紙の送り主にも申し訳なく、しずしずとトレーナーの前へ手紙を差し出した。
「あんな、この手紙なんやけど」
瞬間、トレーナーから笑みが消えた。
「……駄目だタマモ、受け取れない」
声を発した口元は固く引き結ばれ険しい顔つきのまま手紙を受け取ろうとしない。最後まで言わせないとばかりの強い拒絶は普段のツッコミ待ちのボケでもなんでもなく。
彼の意図した通りだろうか、続く言葉は声になる前に霧散してしまった。
「今はタマモにとって大事な時期だからそういうのは一旦置いておこう。引退する頃まで気が変わらなかったらその時に改めて聞くから、とにかく今は駄目だ」
「いきなり何なん? ええからコレはよ持ってって」
訳の分からないことを訴えるトレーナーに首を傾げて一歩前に出ると同じだけ後退り、目の前に手紙を突きだせば大袈裟に避ける。それを繰り返していつしかトレーナーは壁を背に追い詰められた姿勢となり、観念したように声を上げた。
「だから受取れないんだ。担当ウマ娘からのラブレターなんて!」
「ちゃうわボケェっ!!」
あれは人生最大級の突っ込みだった、後にトレーナーはそう語っていた。
――あれからなんだかんだと誤解も解け例の恋文も無事トレーナーの元へ戻った。今はソファに腰掛け真面目な顔で熟読しており、自分はというと何となく帰りそびれてしまい対面でその姿を眺めているが居心地は悪い。
ようやく視線を上げたのでこの空気を払拭すべくいつものように軽くからかってみる。
「おめっとさん。アンタ意外とモテるやん」 - 4タマ編3◆TfkekQnBVrkl24/04/27(土) 20:39:22
立ち上がりトレーナーの背後から覗き見ると見えないように丁寧に折りたたんで封筒に仕舞い込んだ。
「おっ、照れとるんか? いやーしっかし世の中には物好きなんもおるんやなぁ。それもこんなべっぴんさんの。もう返事はしたん? あんまじらしとったらフラれてまうからな!」
捲し立てるように口数は多くなりトレーナーの返答も待たずに話し続ける。
相手のリアクションあって成立するのがボケとツッコミ、なのにそれを無視した話し振りは自分でもらしくないと思っていたが止められない。もしかするとわざとトレーナーに答えさせないようにしていたのかもしれない。後にそう思い返していた。
「あ、せやけど指導の方もしっかりやってくれんと困るで? 色ボケてウチがほったらかしにされたらかなわ……」
「タマモ!」
流れるように喋り通していたのを強引に制止する声が割って入った。驚きで固まった隙にトレーナーが久方振りに口を開く。
「勘違いしてるけどこの手紙の送り主と会う気は一切ないから」
「へっ!?」
予想外の答えに驚き改めて真正面から見た顔に恋人ができそうだと浮かれた雰囲気など一切無い。むしろ険しく尖ったものさえ窺える。
「よく来るんだよこの手の手紙」
うんざりしたように零したのは自分達の知らないトレーナー業の一面だった。
ファンの中には応援だけでは満足できず、憧れの選手と個人的に親しくなりたいと考える者もいる。
しかし相手は活躍中のスター。切っ掛けがなければ一介のファンで終わってしまう……そう考えた時に目を付けるのが担当トレーナーの存在だ。
トレーナーと繋がりができればそこから目当てのウマ娘と接触する機会もあるだろう。そんな邪な目的を隠してあたかもトレーナー本人と知り合いたいと、そのよくある手法が恋文だった。
「せやけど本物やったらどないすんの」
少なくとも今回のものは嘘ではないように思えた。想いを込めた手紙が偽物扱いで返事もしてもらえないというのは酷い話である。しかしそれでも直接関わるのは問題が付きまとうらしい。
「担当のファンと付き合うと後々厄介なんだ」 - 5タマ編4◆TfkekQnBVrkl24/04/27(土) 20:39:47
立場を利用してファンに手を出す悪徳トレーナー、そんなスキャンダルとして取り上げられた際否定できる証拠がない。なんでも過去には円満に別れた筈の元ファン元恋人が関係を強要されたと週刊誌に暴露し大変な騒動になったトレーナーがいたとか。
個人の交際関係に学園が関与する訳ではないが所属トレーナーの素行問題となれば表に出てこざるを得ない。その時学園側に身の潔白を証明する為にも事前の報告をしておくのだ。
「トレーナー業も大変なんやな……こんな仕事しとったら一生恋人できへんとちゃう?」
多忙な上交際相手の見極めも必要となれば言い寄ってきた相手なら誰とでもとはいかない。意外な苦労を知る内に胸の中にあった苛立ちや焦燥もそれどころではなく、むしろ同情心が湧いてしまう。
だからこそトレーナーの発言が不意討ち過ぎだ。
「俺にはタマモがいるから構わないよ」
「ウ、ウチか!?」
「今はタマモを鍛えることしか考えられないんだ。恋人なんて作ってる場合じゃない」
「紛らわしいわ!」
危うく勘違いしかけたがそれはそれで嬉しい言葉には変わりなく。照れ隠しのツッコミはいつもより激しい。
何故それを嬉しく感じたのか。今はまだ、気付かない。
終 - 6スレ主◆TfkekQnBVrkl24/04/27(土) 20:41:39好きなウマ娘を想像してこのスレを開いてください|あにまん掲示板 午前中の学科を終えミーティングの為にトレーナー室を訪れた午後、そこにトレーナーの姿はない。 少し早く来過ぎたか。備え付けの椅子に腰掛けながら辺りを見回すと一冊の雑誌が目に留まった。どうやらウマ娘を取…bbs.animanch.com【トレウマss】好きなウマ娘を想像してこのスレを開いてください|あにまん掲示板 目標に向けて日々鍛錬を重ねるウマ娘とて年頃の乙女であり青春を謳歌するのは当然のこと。 たまの休日には趣味に勤しんだり友人との一時を楽しんだり、そして担当トレーナーと親交を深めたり。 単に備品の買い出…bbs.animanch.com【トレウマss】好きなウマ娘を想像してこのスレを開いてください2|あにまん掲示板bbs.animanch.com
過去に立てたスレです
書き手をゆるくお待ちしています
- 7二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 20:42:35
このレスは削除されています
- 8スレ主◆TfkekQnBVrkl24/04/27(土) 21:06:06
GW中に書き手が現れるのを祈ってage
- 9トレフラ24/04/27(土) 21:50:31
「これはトレーナーさんへのラブレター…でしょうか…?」
「私のファンレターに何故トレーナーさんへのラブレターが混ざっているのでしょうか?」
いえ……重要なのはそこではありません
問題は私以外にもトレーナーさんに対して恋慕の情を抱いている方がいる事です
トレーナーさんは眉目秀麗な上に機転が効き気遣いも上手ですから
そういった方がいるのは不自然ではありませんが…
(トレーナーさんが私以外の人と…)
(もしそうなってしまったら私は…)
トレーナーさんが他の方と結ばれる…トレーナーさんが幸せであるのなら喜ぶべき事なのですが…
(そんなの耐えられません…)
もう私はそう思えない程にトレーナーさんの事を好きになってしまったようです…
「フラッシュ?」
「………!」
「悲しそうな顔をしてたけど大丈夫?」
「あ、いえ…問題ありません」
「手に持ってるのは…ファンレター?」
「何か酷い事でも書かれてた?」
「いえ、そうではなく…」
「トレーナーさん宛てのラブレターが混ざってたようで…」
「ああ…またか」
「また…というと?」
「良くその手の手紙が来るんだ」
「気にしないで良いよ」
「そう…なんですね」
「それを聞いて安心しました」
「これを読んでトレーナーさんが私以外の人と恋仲になってしまうのではないかと不安で…」
「フラッシュ」
「俺は君以外と恋人になるつもりはないよ」
「……っ」
「ありがとうございます…トレーナーさん」 - 10二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:00:09
とりあえず10まで
前も見かけたけど遅筆すぎて参加できなかったから今回は書きたい……! - 11二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:06:33
わ~参加したい!
参加できるといいな - 12スレ主◆TfkekQnBVrkl24/04/27(土) 22:09:11
- 13スレ主◆TfkekQnBVrkl24/04/28(日) 00:42:44
ageついでの短文
「ところで何でウチがアンタにラ、ラブレター書いた思たんや」
「あれは俺は悪くないタマモが悪い」
「はぁ?」
「放課後人気のない場所に呼び出されて、なんかいつもよりしおらしい態度で高級品っぽい手紙を渡してきて、全然目を合わせようとしなくて……どう考えても愛の告白みたいなシチュエーションじゃないか」
「そんなん知るか! 大体ウチやったら手紙なんちゅーまどろっこしいやり方やなくて直接言うたるわ!!」
「へぇ」
「今のは例え話やからな? アンタに言うんとちゃうからな??」
難しく考えずに会話文だけのお気軽参加もどうぞ - 14スレ主◆TfkekQnBVrkl24/04/28(日) 10:07:14
朝保守
- 15トレヘリ124/04/28(日) 15:52:34
全人類好きぴだし、自分は最&高&高&超!だし、皆ファンでトーゼン!
…まだって子もいるケド、そこは追い追い!
常にそんな発想でいる彼女――ダイタクヘリオスにとって、自分宛に大量のファンレターが届くのは至極当然のことだった。
今は他に誰もいないトレーナー室にて、彼女はむふ~と鼻息を洩らしながら、ご満悦な様子でそれらに目を通す。
ひとつひとつ、しっかりと。
自分を大事に思ってくれてる人は、皆大事、皆好きぴ。
貰ったもんはちゃんと返す、返せたら嬉しい。
コールにはレス、煽りにはリアクション。
そんなモットーを持つ彼女は、今日もまた、自分に向けられた沢山の『ラビュ』を受けとめて、心から嬉しそうに笑うのだ。
そんな中、一つだけ『違うもの』を見つけ出す。
他のものと同じように封筒から取り出し、同じように目を通していたのだが、すぐにその文面に違和感を覚えたのだ。
――あり? コレあれじゃね? トレぴ宛じゃね??
慌てて封筒を確認すると、確かにその通りだった。やびやび!と彼女は慌てて手紙を畳むと、封筒に戻した。
そうしながら――なんだか 胸の内からある感情が湧き出すのを感じる。
それは――嬉しさ。喜び。
――やっぱトレぴ神トレだし! ガチパリピだし! ファンレター届くとかむしろトーゼンっしょ!
彼女はまるで自分のことのように、心底嬉しそうに笑っていた。
…その文面が、ファンレターというには少々重く、甘美で、強かで――所謂『恋文』であることには、どうやら気付いてはいないようだった。 - 16トレヘリ224/04/28(日) 15:52:48
「――ん? あ、ヘリオス、来てたんだ」
その時、部屋を訪れる人影。誰あろう、トレーナー本人だ。
「お! トレぴだ~♪ おつぴこ~☆ あ、そだ! ほらこれ! トレぴ宛のあった~!!」
ダイタクヘリオスはその気配に気づくや否や、手に持っていた『ファンレター』を彼の元へと持っていった。
「え? マ? 俺に? …なんかちょっと意外かも」
予想だにしなかったという様子で、目を見開いて驚いている。
「ぶっは! 意外とかむしろありえんてぃ~! 神ったトレぴにファンいねーとかナシよりのナシっしょ☆」
そんな様子を見ながら、ダイタクヘリオスは噴き出して笑う。
トレーナーは少し苦笑いを浮かべながら、その手紙を受け取り、読み始めた。
――少し、間が空く。
その文面を呼んでいた彼の表情は、徐々に、しかし確かに、真剣なものになっていく。
ダイタクヘリオスは、漠然と――そこに『違い』を感じ取っていた。
「…トレぴっぴ? どったん? なんかサゲ?」
小首を傾げながら問いかける。それに対して、トレーナーははっとした様子で向き直った。
「え…? あ、いやいや! 別にサゲとかじゃないよ、うん…」
笑みを浮かべている。だがその目の色は変わらない。
「え~、でもなんか違くね? ファンレターってさ、もっとこう…うは~♪ってならん??」
「あ~…うん、まぁ…なんというか――」
なんだか歯切れの悪い様子のトレーナー。だが結局は、少々言い辛そうに口を開き、手元のそれについて語った。
ファンレターというより、恋文であるのだと。
だがその話を聞いて――ダイタクヘリオスは更に首を傾げていた。
「んん? でもそれ何違うん? どっちも結局『ラビュ♡』ってコトじゃん??」
その言葉に、トレーナーはさらに苦笑いを浮かべた。
「う~ん…ヘリオスからすればそうなのかもだけど…基本的には、それとこれとはまた違うものかな」
「……うぬぬ~! よくわからん!!」
ダイタクヘリオスは普段よりは割増しで頭を使ってみたものの、結局あっさり匙を投げた。
そんな様子に、トレーナーは心なしか微笑ましげに笑うのだった。 - 17トレヘリ324/04/28(日) 15:53:05
「――う~ん…でもこういうの貰ったの初めてだからなぁ…お断りの手紙って、どんな風に書けばいいんだろうか…」
それは無意識に洩れた独り言で、ダイタクヘリオスに向けたわけではないようだった。
「え、マ!? 断るん!? ラビュ返さんの!? 貰ったラビュは返してこそっしょ!?」
だがそれに対して、彼女は鋭敏に反応した。
「え…! いやいや! そういうことでもなくてね! うん…!」
思わぬ反応に、トレーナーは慌てる。そしてなんとかそれを落ち着かせた後、咳払いしながら改まった様子で続けた。
「向けてくれた…えぇと、ラビュは嬉しいし、それについてはちゃんとお礼を書くよ。断るっていうのは、その……関係性というか。つまり『恋人になってほしい』って申し出の方だから…」
少し気恥ずかしそうに言うその言葉に、ダイタクヘリオスは目を丸くして驚いていた。
「マ!? そのヒト、トレぴの恋人になりて~!だったん!?」
…え、そこから!?的な思いを抱きはしたが、トレーナーはひとまずそれを抑えて頷いた。
「う~ん…そりは――たしかし、そりだとウチも困ってたかも…?」
ダイタクヘリオスは顎に手を当て、うむむ…と唸りながらそう洩らす。
「――だあって、トレぴにはウチがいるっしょ??」
…そしてその言葉はそう続いた。
「そうだね…やっぱりそう書いて断るつもりだよ。俺にとってはヘリオスをアゲるためにってのが大事で、他のことを考えられないからって」
トレーナーもまた、そう言いながら頷いていた。
「うはは、それな~♪ そのヒトにはごめピだケド、やっぱトレぴにはウチしか勝たんし! ウチにもトレぴしか勝たんっしょ!!」
ダイタクヘリオスは心底嬉しそうに笑っている。
「つーことで、ぴ! これからもずっしょで! 末永く?よろぴ~!」
横ピースでポーズをキメつつ、楽しげな声色でそんな言葉を投げかけるダイタクヘリオス。それを受けて、トレーナーも笑みを返す。
そうして、二人して一緒に笑うのだ。
――自分にとって、このひとと、こうやって一緒に笑っているのが、何より楽しくて、幸せなのだと。
この時、そう考えていたのは、はたしてどちらなのか――あるいは両方か。
それはきっと、この二人には、とうにわかっていることなのだろう。 - 18スレ主◆TfkekQnBVrkl24/04/28(日) 17:38:49
ヘリオスでのご参加ありがとうございます!
ヘリオスらしく、かつ難解になり過ぎないエミュ精度にまず驚き
ファンレターと恋文の違いに不思議そうにするヘリオスが可愛く
そこから爽やかに当然の如く自分がいると言えるヘリオスが強い!
読んでて元気になるヘリオスが凄く好きです
- 19二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:18:22
ほしゅage
- 20二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 11:09:25
出来ればもっと来てほしいのでほしゅらせてくだされ…
- 21二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 20:50:22
保守
書き手待機 - 22ライアン124/04/30(火) 02:38:47
『メジロライアン様のトレーナー様へ
このような形でしか想いを伝えることができない、臆病な私をお許し下さい。──』
薄桃色の便箋に綴られた角の丸い文字の列を見て、徐々に心臓の鼓動が大きくなっていく。
「こ、ここ、これって……!?」
「トレーナー様へ」「想いを伝える」「臆病な私」……思わず立ち上がって便箋から顔を上げ、やり場に困った視線を夕日の差し込む窓へと向ける。
(トレーナーさん宛の!らラ、ラブ、ラブレッ!)
混乱する脳内が、直感をもとにわずかに読み取った文面からその後に続く文面を、そしてこの文書がどういった意味をもつものなのかを導き出した。この手紙は世にいう恋文、或いはラブレターであるだろう、と。 - 23ライアン224/04/30(火) 02:42:43
自主的に行っていたトレーニングを終え、帰る前に顔を出そうとトレーナー室を訪れた十分ほど前、箱に入った無数の手紙を見たときは、こんなことになるとは予想だにしていなかった。
日夜鎬を削るアスリートである以上、トレセン学園所属のウマ娘へと宛てられた手紙は、本人への影響も鑑みて事前に学園側による入念なチェックが行われ、その後ウマ娘へと渡されるという。その反面、トレーナー宛ての手紙はそれほどでもないらしい、と以前風の噂で聞いた覚えがあった。
心臓が早鐘を打ち鳴らしている中で、未だ混乱の渦中にある脳内に声が響いた。
『これ以上はプライバシーの侵害だよ!人の恋路を覗き見るなんてしちゃダメ!』
『ここまで見たのなら今更やめても遅いんだし、どうせモヤモヤするなら全部見ちゃえばいいでしょ〜?』
常識を訴える理性と、好奇心で続きを促す感情の、言わば天使と悪魔がせめぎ合いながら脳内で互いに叫ぶ。口論がヒートアップするにつれて、顔そのものも熱くなり、耳もキーンと遠くなってくる。
結果的には、結論が出る前に、手紙を読む手は止めざるを得ないことになった。
「お疲れ様、ライアン。トレーニングが終わったところかな?」
耳鳴りがするほど悩んでいたせいか、足音にも戸を開ける音にも気づいていなかったらしい。背後から響く声に錆びた機械人形のごとくぎこちない動作で首だけで振り返ると、やや心配気な表情のトレーナーさんがそこにはいた。
「顔が赤いけど、どこか体調でも良くない?君に限ってクールダウンを忘れたってことはないだろうし」
「あ、ああ、あの!あのっ!そのっ……」
伝えたいことをうまく言葉にできず、その場しのぎの言葉にならない言葉を発していると、トレーナーさんが口をつぐんだ。そして、「君の言葉を待つよ」と言わんばかりに両手のひらを上げてこちらに向けてきた。
もらった猶予で考える。まず最初にどう行動すべきか。答えはすぐに出た。
「……ごめんなさいっ!!」
とりあえず、一にも二にもなく、深々と頭を下げよう、と。 - 24ライアン324/04/30(火) 02:43:23
「俺宛ての手紙、なるほど……まあ、こう言われても難しいとは思うけど、そんなに気にしないで。君がわざと手紙を見たりしないってわかってるし、怒ったりなんかしないよ」
「でも、少しとはいえ見てしまったことは事実ですし……」
平身低頭して許しを請おうとしたが止められてしまったので、手紙を見るトレーナーさんの横で所在なく立ちながら言うと、トレーナーさんはあたしから手紙に視線を落とし、どこか訝しげな表情を浮かべた。
「……それに、もしかしたら、謝るのはこっちの方かもしれないし」
「えっ、何でですか?」
どういう思考を経てその結論に至ったのかがわからず首を傾げると、便箋の文章に最後まで目を通し終わったらしいトレーナーさんが、なにかに失敗したかのように片手を顔面に当ててうなだれた。
「やっぱりそうだ……思った通り、謝らなきゃいけないのは俺の方だった……ライアン、本当にごめん!」
便箋を机に置き、トレーナーさんはつい先程のあたしと同じく深く頭を下げた。疑問に疑問が重なり、頭が混乱してくる。
「ど、どういうことなんですか?あたし、何がなんだかさっぱり……」
「とりあえず、二つほど説明しなきゃいけないことがあるから、ちょっと聞いてくれ」
あたしが頷くと、トレーナーさんは指を二本立て、神妙な声色で話し始めた。 - 25ライアン424/04/30(火) 02:44:30
一つは、トレーナーさん宛ての手紙について。
あたしはチェックが済んで送られてくるファンレターの中には、トレーナーさん「だけ」に宛てられた手紙も入っていると思っていた。が、実はそうではなかったのだ。そういった手紙は直接本人のもとに送られるようになっており、他の多くのトレーナーもそうしているらしい。
理由は今回のような事態や、他の様々なトラブル(詳しくは説明されなかったが、聞こうとは思わなかった)を防ぐためなのだと。
そして二つ目の、ラブレターについて。
端的に言えば、メジロ家の他のウマ娘の担当トレーナーによる半分悪戯のようなものだろう、ということだった。話によれば、少し前のメジロ家のウマ娘を担当するトレーナー同士が集まった際、お酒の席である一人が「ラブレターが送られてきて困る」とつい零し、それにあたしのトレーナーさんは「羨ましい」と反応してしまったらしい。
ただの冗談のつもりが、誰かがそれを本気にしたのか、最近自分以外のメジロ家のトレーナーらの間に妙な雰囲気が漂っており、それが今回実行にまで移されたのではないか、と。
案の定、(トレーナーさんを名指しにしているのに学園のチェックを免れている点もそうだが)送り主の名前が明らかにトレーナーさんの名前をもじったものだったし、担当トレーナーたちのLANEのグループに怒りのメッセージが送られると、即座に犯行を認めたような返事も返ってきていた。
深いため息を一つついたトレーナーさんは、再度あたしに頭を下げた後、これで帳尻を合わせたことにしましょう、というあたしの提案に賛成してくれた。
そうして、ラブレター騒動は無事に解決したのだった。 - 26ライアン524/04/30(火) 02:45:15
『何故か筋肉についての手紙は男の人からも女の人からも送られてくるんだけど、ラブレターを貰ったことは一度も無いんだ……なーんて、気にしてるからなのかもね。格好悪いよね』
ははは、とどこか自嘲気味に笑うトレーナーさんと分かれ、寮の部屋に戻る。同室の親友であり好敵手であるアイネスは、多忙故か不在だった。
「……よし」
今だけは彼女が居ないことに感謝し、家族に送るために用いているカラフルな便箋の数々の中から、一番可愛らしいと思えるデザインのものを選ぶ。
トレーナーさんへの想いと、それを手紙で伝える意味について考えながら、あたしは机の上の便箋に向かい合った。
終 - 27スレ主◆TfkekQnBVrkl24/04/30(火) 07:34:30
朝保守
感想はのちほど - 28スレ主◆TfkekQnBVrkl24/04/30(火) 19:13:08
保守
せっかく書いてくれてるのをゆっくり読みたいけどまだ読めない… - 29スレ主◆TfkekQnBVrkl24/05/01(水) 04:29:08
ライアンでのご参加ありがとうございます
読もうか読むまいかと悩むライアンが乙女らしい
色恋沙汰にテンパリすぎで要領が悪いところにボイス付きの映像が頭に浮かんでちょっと笑いました
最後の締め方は直接的ではない表現が爽やか
ここまで描写されたオタオタっぷりから一変、触発されたのか勇気を出したところが甘酸っぱい
- 30二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 12:25:23
保守!
- 31トランセンド24/05/01(水) 12:52:08
「う~ん? おやおや、これはぁ……?」
ウチの目の前には、『トランセンドさん宛』と記された、たくさんの手紙の入ったダンボール箱。
自分でいうのもアレかもしれないけれど、ウチの知名度はかなりのものになった。
トレちゃんと一緒にダート戦線を駆け巡って、みんなへ元気を届けるため世界にも挑んで。
そして今や、こんなにもたくさんのファンレターを貰える身になっていたのである。
……そういうのはガラじゃないなあ、って思ってたけど、やっぱり、なんか、嬉しいよね、てへり。
まあ、それはさておき、ウチはその中の一通が妙に気になっていた。
「お茶淹れて来たよ……それでトラン、どうかしたの?」
ことん、とテーブルの上にマグカップが置かれる音。
顔を上げれば、トレちゃんが不思議そうな顔をして、飲み物を持ってきてくれた。
うんうん、こういう時はエナドリよりも暖かいお茶とかの方が良いよね、トレちゃんわかってんじゃーん。
「さーんきゅっ……いやあ、今日来たファンレターの、コレなんだが」
とりあえず一口、紅茶を頂いてから、ウチは一通の便箋を取り出した。
その辺のお店では手に入らなそうな、可愛らしくて、上品に彩られた便箋。
封としてハートマークのシールを用いていて、明らかに他のファンレターと雰囲気が違っていた。
トレちゃんはウチの隣に腰かけながら、その便箋を見つめる。
「なんか雰囲気が違うね、学園を通してるから、変な内容ではないと思うけど」
「ふっふっふー、トレちゃんはまだまだ甘いね、ウチの勘だとこれはウチ宛てじゃないよん」
「……えっ、学園の担当者が間違えたってこと?」
「いや、『ここ』宛てであるのは間違いないと思うな」 - 32トランセンド24/05/01(水) 12:52:22
くるくると見回してみるものの、便箋にはあくまでウチの名前しか書かれていない。
……まっ、ちょっと悪い気もするけど、勘違いの可能性もあるし、中身は見させてもらわないとね。
そう考えて、ウチは出来るだけ丁寧に封を開けて、中の手紙を取り出す。
明らかに女の子っぽい、可愛らしいきれいな文字で書かれた、あまり長くない文章。
けれど、そこには溢れるような想いが、感じられた。
ウチはニヤニヤと笑みを浮かべながら、トレちゃんにその手紙を差し出す。
「ふむり、やっぱりね────はい、これトレちゃん宛て」
「……俺宛て? なんで?」
「ウチと一緒にテレビに映ったこともあったじゃん……そりゃあ、ファンになる人もいるでしょ?」
ウチがレースで活躍するに連れて、トレちゃんもインタビューを受けることが増えた。
さすがにウマ娘本人には負けるけど、トレちゃんの知名度もそこそこなものにはなってきている。
……とある掲示板にファンスレがあることは黙っておこうかな。
トレちゃんは半信半疑でその手紙を受け取ると、少し緊張した表情で、それを見つめる。
そして、感慨深そうな声色で、ぽつりと呟いた。
「なんか、見てくれる人がいるってのは、嬉しいもんだね」
「っしょ? ウチもさ、こんな風に、ファンのみんなや、トレちゃんに助けられてるんだよ?」
「……そっか」
トレちゃんは、嬉しそうに、そして優しく微笑んでくれた。
……いつもの笑顔とは、また違う表情に、ちょーっとだけドキドキしてしまう。
それを誤魔化すように、ウチは持っていた便箋をトレちゃんに手渡そうとした。 - 33トランセンド24/05/01(水) 12:52:36
「ほれほれ、こっちも大切に保管しときー…………って、あれ?」
かさりと、便箋の中でものが動く音。
どうやら、まだ中に何かが入っていたようだ、軽い感じだし、これも手紙かな。
トレちゃんは便箋を受け取り、それも取り出す。
中から出て来たのは、二つ折りの、小さな紙片。
恐らくはメモ帳か何かで、折り方も少し雑。
多分、ぎりぎりまで入れるか迷って、最後の最後に入れたんだろうなあ。
なんだか、そういうの、微笑ましくて良いよね。
「送ってくれた子、学園の生徒なんだ」
「……えっ?」
「この紙に名前とかクラスが書いてあった、良ければ会ってお話したいってさ」
「えっ、えっ?」
トレちゃんが発した言葉に、ぴくりと耳が反応してしまう。
胸の奥がざわざわと騒がしくなる、追い込まれたかのように焦ってしまう。
……あれ、なんで、ウチはこんなに動揺しているんだろう。
トレちゃんが、ファンレターを貰うくらいに認めて貰えた。
トレちゃんが、会ってお話がしたいと思われるくらいに、誰かに好かれている。
それは、ウチにとっても嬉しいことのはずなのに。
お茶を、一口啜る。
まだまだ温もりを残し、甘味と渋みを味わって、ほっと一息をついた。
……うん、落ち着いた、もう大丈夫。
さて、ファンの子の名前とかがわかっているなら、情報屋さんの出番でしょ。
ちゃーんと調べ上げて、トレちゃんとその子の逢瀬をフォローしてあげなくっちゃね♪
ウチはくいっとトレちゃんの袖を引いて、言葉を紡いだ。 - 34トランセンド24/05/01(水) 12:52:55
「トレちゃん、会うの、やめといた方が良いよ」
あっ、あれ?
なんで、ウチ、こんなことを言っているんだろ?
「……そうかな? 外の人ならともかく、学園の子なら大丈夫でしょ」
「……いや、多分イタズラとかだって、こういうの良くあるじゃん?」
思ってもないことが、流れるように口から漏れだしていく。
あんな気持ちのこもった手紙が、イタズラなわけないって、わかっているのに。
少しでもお話してあげれば、きっと手紙の子はすごい喜ぶって、わかっているのに。
トレちゃんも、嬉しいに違いないって、わかっているのに。
────会わせたくない、という気持ちが、溢れて、止まらない。
ウチの、身勝手な言葉を聞いて、トレちゃんの少しだけ困ったように笑う。
「そうかもしれないね、でも、俺は信じたいと思うんだ」
「……あっ」
トレちゃんの真っ直ぐで、きれいな瞳。
それは、レース前に、ウチに向けて来るものと、同じものだった。
……うん、そうだよね、トレちゃんがウマ娘のことを、信じないわけがないよね。
そのおかげで、ウチだって、ここまで来れたんだから。
そのことを、誰よりも良く知っているはずなのに。
ぎゅっと、袖を掴む手に、力が入ってしまう。
トレちゃんの純粋な目を、今は見ることが出来なくて、思わず俯いでしまう。 - 35トランセンド24/05/01(水) 12:53:17
「────だからさ、今度一緒に会いに行こうよ、トラン」
「…………は?」
聞こえて来た思わぬ発言に、ウチは顔を上げてしまう。
トレちゃんはどこか浮かれた表情で手紙を何度も読み直しながら、言葉を紡ぐ。
「『俺達』と会ってお話がしたいっていう子がいるのは、嬉しいもんだよね」
「えっ、いや、トッ、トレちゃん? それ、本気で言ってるの?」
「うん、そうだけど?」
それ以外の解釈あるの、と言わんばかりの、きょとんとした顔。
これにはウチも理解せざるを得なかった────トレちゃん、マジで言ってるわ、と。
心の中のもやもやを全て吐き出すように、ウチは大きなため息をついた。
「はああああぁぁぁ…………トレちゃんさあ」
「あれ、なんか不味いこと言った?」
「………………………………べっつにー?」
ちょっと考えたけれど、ウチは誤魔化すことにした。
そもそも手紙にちゃんと書かなかったのが悪い。
顔も知らない相手にそこまでする義理もない。
わざわざ気を効かせて────トレちゃんと二人きりで会わせる、理由もない。 - 36トランセンド24/05/01(水) 12:53:44
トレちゃんは、ウチのトレちゃんなのだから。
ぎゅうっと、抱き着くようにトレちゃんの腕に、自分の腕を絡ませて寄り添う。
しゅるりと、尻尾をトレちゃんの足に巻き付かせる。
こてんと、頭をトレちゃんの肩に乗せる。
トレちゃんの匂いや温もりを堪能するように、ウチのだと、自己主張するように。
するとトレちゃんは、首を傾げながら、こちらを見つめた。
「……トラン?」
「んー?」
「もしかしてちょっとお疲れ? 少しトレーニング量を調整しようか?」
「…………ぶーぶー」
あまりにわからず屋で、それでいてウチを気遣うトレちゃんらしい言葉。
そのことがとっても不満で、ちょっと嬉しく感じてしまう。
複雑な心境を誤魔化すように、ウチはあからさまに頬を膨らませてみせた。
「トレちゃんがあまりにトレちゃんなので、トランちゃんは動くのをやめてしまいました」
「えっ?」
「トレちゃんのせいです、あーあ」
「ええ……?」
困惑の表情を浮かべるトレちゃん。
けれど、振りほどこうとは決してせず、ただウチのことを受け入れてくれる。
そして、ウチも、すりすりと、トレちゃんに身体を寄せ続けてしまう。
……トレちゃんが悪いんだよ。
心の中に蠢く、なんとも複雑な感情。
怒っているのが、喜んでいるのか、ウチ自身、それすらも良く分からない。
ただ一言、吐き出したい言葉があって、ウチはトレちゃんの肩に顔を埋めて、言葉を紡いだ。
「…………ばーか」 - 37二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 22:36:18
イイね…
- 38二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 01:23:03
- 39スレ主◆TfkekQnBVrkl24/05/02(木) 05:43:12
- 40二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 09:13:48
こういうSSが書けるの羨ましい…
- 41二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 17:15:22
前のスレ参加してたな…懐かしい…
またスレ主に会えて良かった…
ssは…なんか閃きが降ってきたらってことで… - 42サトノクラウン24/05/02(木) 17:39:38
夜の帳が降りた頃。
サトノクラウンとトレーナーは、三女神の噴水近くのベンチに座っていた。今夜は雲もなく、月明かりが朧に辺りを包んで、星がよく見える。
「こんな時間に突然呼び出して、ごめんなさい」
彼女━━サトノクラウンは一族の事業をよく手伝っている。彼女自身の才と真面目な性格も合わさって、実際のところ、手伝いというレベルではないのだが。今回このような時間に彼━━トレーナーを呼び出したのも、仕事で多忙な彼女の空き時間がこの時間しかなかっただけだ。彼も、彼女と多くの時間を共に過ごして、それ/事情はよくわかっていた。
「いいや、全然。仕事が無事終わったようで何よりだ」
「谢谢。そう言ってくれて、助かるわ」
「…それで、本題なのだけど」
彼の表情は変わらない。当然だろう、と彼女は思った。彼はいつだって真剣なのだ。特に、クラウンの話を聞くときは。
「これを、貴方に渡したくて。どうも、私宛の手紙に紛れ込んでいたみたいだから」
「━━━━━━━。」
差し出されたのは、一通の手紙。
可愛らしい模様と記号で彩られた、贈り物。
精一杯書いたのだろう。何度も消された文字の跡の上に、女の子らしい丸文字が書かれていた。 - 43サトノクラウン24/05/02(木) 17:40:19
「…見当たらないと思っていたら、そっちに紛れ込んでたのか」
「ええ。 貴方らしくないミスだけど、最近ちゃんと休みは取ってる?」
どうだったかな、と彼は笑って受け流す。
「それ、読んだわ。女の子、それも文中の情報からみると小学生ね。俗に言う初恋泥棒ってやつかしら」
「━━それで、何て返事するかはもう決めた?」
まるで、返事をするのは当然、とばかりに彼女が言った。
「…驚いた。てっきり━━いや。君ならそう言うよな」
ファンからの手紙には基本返信しない。その代わり、返信できないことは明言しておき、その上でちゃんと読んでいることも同じく表明する。それが、トラブル回避のための一般的な行動だ。よもやそのことを聡明な彼女が知らないはずがない。
もし。それでも返事をする、と言うのであれば、それはこの手紙が特別であることの証左に他ならない。
「君も、これは特別だと思ったんだな」
「……ええ。あんなに情熱的&純粋/passionate & pureな手紙、初めて読んだわ。読んでるこっちが恥ずかしくなっちゃいそうなくらい。…ふふっ、誰かさんとおんなじね」
「━━そうかもしれないね」
受け取った手紙を、彼はもう一度、じっくりと眺める。その横顔を、彼女は眺める。思えば、色々なことがあった。一緒に笑って、泣いて、喜んで、悲しんで。そのどれもが━━煌めいて。夢のような時間/思い出だ。愛しくて仕方がない記憶/記録だ。 - 44サトノクラウン24/05/02(木) 17:41:27
「━━初恋、か」
言葉が漏れる。手紙の送り主には、悪いけど。
「嘿、もっと近く寄っていいかしら?」
「え? もちろ、」
彼が言い終わる前に、彼女は位置を近づける。クビ差ほどの距離をもっと縮めて。ゴールに一歩。そうして、彼の方に頭を置いた。
「…どうしたの? 今日はずいぶん積極的だけど」
「…ちょっとね、妬けちゃったのよ、その子に」
そっか、と彼が言う。そうなのよ、と彼女が返す。彼女/クラウンが呼び、彼/トレーナーが応える。彼/トレーナーが手を伸ばし、彼女/クラウンが手を握る。それが、いつも通りの二人の関係。誰もが羨む、理想のパートナー。
━━長い静寂が、月明かりに溶けていく。
「ねぇ、トレーナー。その手紙の返事、私も書いていいかしら。その子、いつかトレセンに来たいって言ってたじゃない? 未来のライバル/後輩に、先輩/私からのアドバイス/宣戦布告、しておきたくて」
「━━もちろん」 - 45サトノクラウン24/05/02(木) 17:41:41
この返事を、手紙の主はどう受け止めるのだろうか。悲しみに暮れるのか、それとも闘志を燃やすのか。どちらでも構わない。
悲しみの音が、いつか過ぎゆく風に変わることがあるでしょう。
闘志の炎が、いつか貴方の道を照らすことがあるでしょう。
彼女は祈る。
この手紙/記憶が、いつか善いものになりますよう━━。
流れ星が、キラリと一条。
月明かりにも負けない、一等星の輝きだった。 - 46二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 17:43:57
良き概念…女トレで書いてみたいな…
- 47二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 01:46:12
- 48二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 07:23:44
期待保守
- 49スレ主◆TfkekQnBVrkl24/05/03(金) 07:28:00
- 50トレ♀グラ24/05/03(金) 13:04:25
筑波嶺の──
ファンから届いた手紙の、いちばん右上。その五文字だけで、自然とその続きが頭に浮かんだ。
筑波嶺の峰より落つるみなの川
恋ぞつもりて淵となりぬる
ある午後の日のこと。濁流のような暴風雨のために屋外での練習は禁止になったことも相まって、グラスワンダーはトレーナーがやって来るまでの間、先日届いたファンレターに目を通すことにした。
アメリカから来たウマ娘でありながら日本人よりも日本文化に精通している、なんて言われている彼女へ宛てるファンレターにふさわしい、風流な手紙だ。
冒頭からいきなり綴られる三十一音。小倉百人一首ならば、グラスは当然知っているのだろう、という信頼さえ窺える。
粋な手紙に尻尾を揺らすものの、ふと考える。なぜこの人は数多ある歌のなかからこれを選んだのだろう?
筑波のいただきから流れ落ちてくる男女川(みなのがわ)が、最初は細々とした流れから次第に水かさを増して深い淵となるように、恋心も次第につのって今では淵のように深くなっている。
あの歌は恋の歌。その意味を知らぬ彼女ではない。
黒い万年筆一色、男性か女性が書いたかもわからない、流麗な筆跡。
誰が書いたかは不明でも、書いた意図はその後の散文を見てわかった。
わかって、しまった。 - 51トレ♀グラ24/05/03(金) 13:05:19
『あの有馬記念のウィナーズサークルで、真っ先に涙の粒をこぼした貴方に惹かれました』
と。
なるほど。あのとき見た涙が募って川となるくらい、何度も思い返していた……といったところだろう。
その川が淵を形作るほどとなると、相当の思い深さだ。
二度目の有馬記念。今度こそ全力を出し切って制した勝利の光景を、グラス自身も忘れるわけがない。
「……あら?」
ない、からこそ。その一文が疑問になる。
いま一度、あのときのことを思い返す。
年の瀬の喉を凍らす冷気、身体中の疲労と熱、スタンドの割れんばかりの歓声。
ターフに立っていたところから、ありありと、全てを浮かべて──
そして気づく。
あのとき、いの一番に。自分よりも先に、涙を流し喜んでいたのは。
「トレーナーさん、です」 - 52トレ♀グラ24/05/03(金) 13:07:00
「おーい……おーい、グラス?」
「と、トレーナーさん!?」
思い至ってしばらく。待ち人がこちらへ手を振り声をかける。
裏返った声はどう考えても自分のもので、トレーナーがやって来たことにさえ気づかないくらい呆然としていたようだった、と今になって理解する。
「あ、それってファンレター?」
「は……はい。外も雨ですし、ちょうど良い機会ですから。目を通していました」
ありがたいよね〜、と。こちらの気も知らないで、トレーナーは抱えていた本や書類の束を整頓している。
冬も明けて暖かくなってきた時期のせいで、トレーナー室に湿気が篭るのがわかる。
顔が、あつい。
とたんに、何かが身体にまとわりついてうっとうしくなる。
手紙を持つ指先、その周りの紙が、ほんの少しふやけている。
話しかけられて裏返ったのは仕方ないけれど。今の声は震えていなかっただろうか。
あなたへ向けている渦巻く想いは、漏れ出ていないだろうか。
もしも、この恋文をトレーナーが一足先に読んでいたのなら。
もしも、トレーナーが返事をしたら。もしも、あの告白を受け入れたら。
もしも、もしも、もしも……
少し離れたデスクでパソコンを広げるトレーナーの顔を見て、変な妄想に埋め尽くされる。
手が届かないくらい遠くに行ってしまうかもしれない。
自分の知らない“トレーナー”になってしまうかもしれない。
私を導き、見守ってくれる星は──
不安と焦りが募っていく。
窓に打ちつける雨音のなかからくしゃりとした音を拾って、手紙にシワを作っていたと気づいた。
ああこれは、取り返しがつかない。
心を掻き乱す元凶でも、トレーナーへの手紙だとしても、これは大切なファンレターだというのに。 - 53トレ♀グラ24/05/03(金) 13:08:33
「グラス、大丈夫?ひどい顔になってる」
もしかしたらグラス自身よりも青ざめた顔をして、トレーナーが駆け寄る。
言い訳をするつもりはないけれど、言葉を発するにも口が動かない。
「そっか、手紙が折れちゃったんだね。大丈夫、このくらい問題ないよ!」
トレーナーは、口をぱくぱくしたままのグラスの手に、自らのそれを添える。冷えているのか熱いのかわからない指先に、自分よりも少し大きい別の熱が加わる。
すると、今までの緊張が嘘のようにほどけていく。
ゆっくり、時間をかけてグラスの手から手紙を取り外したトレーナーはそのまま、書かれている内容に目を通す。
「へえ、綺麗な字……。ええっと?『つくばみねの』……いや、違う……?」
「ふふっ。トレーナーさんったら。『つくばね』と読むんですよ♪」
「な、なるほど」
そう呟く声は、納得しているのやら呆けているのやら。
自分はあんなに取り乱したというのに、読み進めていてもトレーナーはふーんと相槌を打つだけで、まるで他人事だ。
「ああこれ、自分への手紙だったんだ」
「そうみたいです」
「私のほうが先に泣いてるって、グラスに言われたもんね。じゃあきっとあの顔が、全国のお茶の間に……」
恥ずかしい〜との小声。大げさに手で顔をあおいで、トレーナーは眉を下げる。しかし口角までは下がっていない。むしろ上がっている。 - 54トレ♀グラ24/05/03(金) 13:10:06
「嬉しい……ですか?」
ハッとして、口を押さえる。気づけば疑念が飛び出していた。
「そう、だね……。顔も名前も知らないひとから好かれるのは悪い気分じゃないよ。むしろ嬉しいかも」
手紙を机に置き、一瞥するトレーナー。いったん目を閉じ、また開いて、その視線はグラスを捉える。
「でも、だからといって手紙の人やその他の誰かと付き合う、なんてことはないと思うよ。だって……」
「だって?」
「私は、頂点を目指す貴方を支えると誓った。確かに貴方は有馬記念で勝ったけど、頂点への道はまだ続いてる。なら、他の人に目を向けてる暇なんてないよ」
それにね。私の心に焼きついた、嵐のなかでも目を逸らせない星の輝きを、いつまでも見ていたいから。だから──」
トレーナーにつられて、グラスも窓の外の暴風を眺める。
きっと、私も同じ思いだ。
「やっぱり、他の人は目に入らないよ」
「……ふふっ。風流な言い回しですね。ありがとうございます、トレーナーさん♪」
もう一度こちらを見て告げるトレーナーから、目が離せなかった。
ひとつの芯の通った在り方は、自分のいつもの調子に戻してくれる。砂つぶのようにいくら瞬いていても、いっとう輝く星というのはこういうものなのだ、と改めて思い入る。
──私から同じことを言い出したら?
とは、尋ねられなかったけれど。
トレーナーは今このときは、グラスだけを見ている。この先も自身と共に歩んでくれる。
言葉を重ねて、そう信じさせてくれているのだから。
『言わぬが花』というもの。
今は、それだけで十分だった。 - 55トレ♀グラ24/05/03(金) 13:12:14
参加したいなーって言った >>38 です
グラスと♀トレで書かせていただきました
どっちかというと親愛寄りかもしれないですね
女性トレーナーは口調が柔らかで好きです。シニア有馬後のイベントで担当よりも先に涙を流してしまうのは可愛げがあるしそこに惹かれる誰かもいそうだと思いました
また、冒頭の和歌の現代語訳はこちらから引用してます 和歌要素そこまで活かしきれなかったかもな……
つくばねの峰よりおつるみなの川 恋ぞつもりて淵となりぬる【今回の歌】 陽成院(13番) 『後撰集』恋・777 筑波嶺(つくばね)の 峰より落つる 男女川(みなのがは) 恋(こひ)ぞつもりて 淵(ふち)となりぬる ゴールデンウィークも前半が終わりました。中には、この際だから11 […]ogurasansou.jp.net - 564724/05/03(金) 21:44:09
もうすぐ書き上がるので待ってて欲しい保守
- 57スイープトウショウ(1/5)24/05/03(金) 23:06:30
「ふふっ、だんだんみんなにも魔法が効いてきてるみたいね」
何通ものファンレターを読んでご満悦な表情を浮かべているのは、大きな帽子がトレードマークの魔法少女、スイープトウショウ。
彼女が秋華賞を勝ってから、ファンレターの量がグッと増え、ここ数日すっかりご機嫌になっていた。
「この調子で『レースの魔法』を完成させるんだから!」
そんな中、宛先が使い魔、もとい彼女のトレーナーの手紙を見つけた。
「へぇ〜。少しは見る目のあるヤツもいるじゃない」
ご機嫌だったためか、自分の使い魔も賞賛されているのを見て思わず鼻が高くなる。
いつもならこれを使い魔に渡すためによけておいただろう。しかし今日は、好奇心が顔を出してきた。
(使い魔への手紙って…何が書かれてるんだろう?)
開けるか、開けないか。逡巡すること数分。
「…何か魔法がかけられてるかもしれないもの、確認しなきゃいけないわね、うん、ご主人様として確認するギムがあるわ!」
果たして好奇心が勝り、手紙を開けることにした。送り主は女性で、小綺麗な便箋だった。 - 58スイープトウショウ(2/5)24/05/03(金) 23:07:51
そうして読み進めること数行。
(こ…これラブレターじゃない!!)
彼女の頬はリンゴの如く真っ赤になっていた。
そこにはどんなに苦い薬も甘くなるような言葉が記されており、書き手の、使い魔に対する恋慕の情が見てとれる。
(このひと使い魔のこと好きすぎでしょ!)
この手紙を読めば使い魔もきっと送り主のことが気になるに違いない。ひいては恋人同士になるのも時間の問題かもしれない。
(もし使い魔がこのひとにメロメロになったら…)
喜ばしいはずなのに。鼻が高いはずなのに。
(なによ、使い魔はアタシの使い魔なのに…)
どうしてだろう。熱くなっていた頬が俄かに冷えていき、わけもなく心が黒く染まっていく感覚に襲われる。
ついさっきまで尊いものに思えていたはずの手紙が、途端に恐ろしいものに感じられてしまった。
モヤモヤして、ムカムカして。
いっそビリビリに破り捨ててしまおうか、そう思った矢先。
「ごめん、遅くなった!」
そこにスイープのトレーナーが入ってくる。 - 59スイープトウショウ(3/5)24/05/03(金) 23:08:27
「ごめん、遅くなった!」
慌てて『ご主人様』のスイープがいるトレーナー室に駆け込む。
いつもなら罵倒の1つでも飛んでくるところだが、今日は珍しく文句は飛んでこなかった。
寧ろ珍しく、狼狽えている様子だった。
「どうしたんだ、スイープ」
「…使い魔、これ」
観念したように、おずおずと差し出されたのは一枚の手紙だった。
「アンタのファンからのラブレターよ」
「え、俺宛?」
真面目くさった顔で手紙を読み進める使い魔。
その様子を見るだけで心が締め付けられるようになる。
ぶり返す黒い感情に耐えかねたのか、沈黙を破ったのはスイープだった。
「よかったじゃない、使い魔」
拗ねるように口をついた言葉。
「こんなチャンス滅多にないもの、付き合っちゃいなさいよ」
言葉とは裏腹に、祝福の気持ちはまるでこもっていなかった。それどころか名状し難い暗い感情が幼い魔女を支配していく。
(…ああ、もう!ムカムカする!) - 60スイープトウショウ(4/5)24/05/03(金) 23:09:02
それから再び静寂が訪れる。しかしそれはすぐ使い魔によって破られた。
「スイープ」
「…なによ」
「言っておくけどこの手紙の送り主に会う予定はないよ」
「へ?」
想定外の答えに、豆鉄砲を喰らったハトのような顔になった。使い魔の顔に浮かれた気持ちはまるで見られなかった。 - 61スイープトウショウ(5/5)24/05/03(金) 23:09:33
「たまにいるんだよ、イタズラでこういう手紙出してくるのが。例え本当だとしてもトラブルの原因になるんだよね」
呆れたように説明するトレーナーに対し、スイープはらしくもなく呆けたままだった。
「そもそも今は『レースの魔法』を完成させることの方がよっぽど大事だからね、恋人なんて作ってる場合じゃない」
(…!)
使い魔のその一言で昏い気持ちはすっかり霧散した。
(やっぱりちゃんとアタシのことを見てくれてる…。)
幼い魔女の顔に、思わず笑みが溢れる。
「まあそういうわけだから、これからも君だけの『使い魔』でい続けるつもりだよ」
自分の早とちりで空回った羞恥か、使い魔が自分を選んでくれた嬉しさか、急速に頬に熱が宿る。
「あ…あったりまえでしょ!使い魔の分際でご主人様をほっぽり出すなんてぜえぇったい許さないんだから!」
照れ隠しにいつものワガママを捲し立てるスイープ。しかし彼女の尻尾は熱を振り払うように激しく揺れていた。
(まったく、使い魔のクセにご主人様をドキドキさせるなんて、100年早いんだから)
そのドキドキの理由に気づくのは、もう暫く先のお話し。
おわり - 624724/05/03(金) 23:11:01
遅れたけどなんとか書き上げました
- 63二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 23:13:46
おつ!!!
すばらしい……… - 64スレ主◆TfkekQnBVrkl24/05/04(土) 07:26:16
朝保守
仕事でゆっくり読めない&感想書けないので後程… - 65二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 16:42:57
素晴らしかった
- 66二次元好きの匿名さん24/05/05(日) 02:55:42
保守
- 67タキオン24/05/05(日) 04:04:03
「ふぅん?トレーナー君もなかなかスミに置けないじゃないか」
感情の及ぼす力を研究する者としてファンレターというのは最高の実験材料の一つ。なのでこうして時間がある時に読むようにしているのだが……まさかトレーナー君にラブレターを送る物好きがいるとは思わなかったよ。
お弁当の美味しさだとかそういう親しいからこそ知ることのできる彼の一面、これを知らない人からすれば彼はイカれた目をしたレース狂にしか映らないはずだ。
「まあ、どうでもいい事だ。……しかし、これは僥倖だ!ちょうど不快感がレースに与える影響について調…べ…?」
今、私はなんと言った?『不快』?この手紙がか?この、顔も知らない誰かの書いたトレーナー君への手紙がか?……いや、正確に言えば『誰かがトレーナー君を好きでいる』ということがか……?
私と彼は単なる研究者とモルモットの関係に過ぎない……とは流石の私ももう言えない。だが、別に恋仲というわけでもない。彼が誰に好かれようと、誰を好こうと関係ないはずだ。
なのに何故だ?何故こうも苛立つ?彼が誰かに好かれているという事実に。誰かとそういう仲になるかもという空想に。……私が彼とそういう関係にならないという予測に。
わからない。この気持ちはなんだ?私はトレーナー君をどうしたい?どうなりたい?彼にどう思っていて欲しい?
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない…!
なんだこれは?なんなんだ?不合理だ、非理性的だ、非論理的だ。あまりに感情的で、自分勝手。怒りも恐れも感じる。酷くドロドロとした意味不明なこの感情は……?
「まさか、ねぇ」
これが恋か?愛なのか?私は彼を男として見ていて、彼に女と思われたいと?私が、か?彼に対して、か?何もかもわからない。だが、一つだけ分かることがある。やりたいと、やらなければと思うことがある。
「いらない紙はどこだったかな———」
———書き置きを残した。……私の心を乱す原因とはいえ、実験資料を無下に扱うような事はできないからね。だから、ファンレターに添えるように一枚の紙を残した。混乱する心を鎮めるため、軽く走っている間にトレーナー君がこの手紙を読んでもいいように。
『君が誰のモルモットか、誰のゲージに入れられているのか忘れないように』と - 68二次元好きの匿名さん24/05/05(日) 12:02:35
保守!
- 69二次元好きの匿名さん24/05/05(日) 16:20:35
タキオンはクリスマスでの「なんかすごく照れくさいぞ!?」もあって「そういうこと」にかなり疎いってのはほんそれなってなるやつ
- 70二次元好きの匿名さん24/05/06(月) 00:19:59
モルモットが誰かに盗られるのを危惧するタキオンも良いね
当の本人はお世話でそれどころじゃなさそうだけど - 71スレ主◆TfkekQnBVrkl24/05/06(月) 11:36:18
多忙につき手が出せず、その間作品投稿と保守してくれた方に感謝
グラスでのご参加ありがとうございます
和歌を作品内に取り入れる作風は過去の参加者さんでしょうか
だんだんと悪い方向に妄想してしまう描写がぞくぞくとしてきます
そこにトレーナーの気の抜けた感じの緩急があっていい感じ
普段しっかり者のグラスがネガティブになっても優しく穏やかに支えるトレとの組み合わせに良さが溢れてる…
スイープでのご参加ありがとうございます
好奇心で手紙を開封してしまうところ、八つ当たりしてしまうところ、最後にはいつもの調子に戻るところ
子供っぽくて可愛らしいスイープがたくさんで満足
タキオンでのご参加ありがとうございます
最後の置手紙にタキオン&モルモットの良さが凝縮されていると言っても過言じゃない
これを読んで駆けつけてくるモルモットの姿が目に浮かぶ
そういう後の情景をご想像にお任せする文章っていいですね
- 72たわけとグルーヴ24/05/06(月) 19:02:33
「あのたわけにもファンレターか……」
ファンレター…それはレースを駆けるウマ娘以外にも担当トレーナーへ送られてくるケースも多い。その事はごくありふれた事ではあるのだが………
「これは……」
ただ今回のそれは違った。何故なら送られてきたのは私のトレーナーに対する恋文であったのだから。
送り主はどうやら一般人で名前からウマ娘と分かる。そして内容は悪戯などではなく彼へ向けた本気の文章である。
「…………っ」
正直目に入る前に破り捨てたかった。だがそんな事をすれば生徒会としてだけでなく、後進に模範たる姿を見せる女帝として失格だ。だからこそ届けられた文は渡さなければならない。
(……嫌だ…嫌だっ!)
だが怖い。普段の私の彼へ対する接し方を鞭とするならこの文章は飴だ。辛さより優しさを誰だって優先する。
私と彼との繋がりが、たった一通の手紙に負けるだなんて想像したくない……そう思っていると…
「これ、俺へのファンレターか…」
「あ……あぁ……」
帰ってきた彼に手紙を読まれてしまっていた。
「ど……どうなんだ?」
「まぁ、返事はしないとな……」
恐る恐る尋ね、帰ってきた最悪の言葉に私の心は張り裂け限界を超えようとした瞬間———
「お断りの返事をさ」
「え?」
お断りという言葉に一瞬硬直する私。
「確かにこの文章は自分への本気の想いを綴ってるよ。でもそれだけ…自分に対する本質を見ちゃいない。それに……」
「グルーヴ以外に"たわけ"だなんて呼ばれたくない」
「———ッ!?」
「それに俺は女帝の杖。他の誰の物でもないし今後もなるつもりはないよ」
「とれぇ……なぁ………」
気付けば私は泣いていた。そんな私の頭ををトレーナーは撫でてくれていた。
「だから今から断りの返事を書く……だからこそ君に見て欲しい。この言葉が嘘偽りない事をさ」
「うん…っ!」 - 73たわけとグルーヴ24/05/06(月) 19:03:04
そして後日———
「おい、貴様宛に手紙だ」
私は一通の手紙をトレーナーに手渡す。
「どれどれ……成程…」
「返事はどうするのだ?」
「すぐに返事は書くさ。待ってて…よし書けた」
手紙を見てこちらを向いて微笑んだトレーナーはその手紙に直接"返事"を書き込み私に手渡した。
これからもずっと一緒だぞトレーナー
こちらこそ、ずっとよろしくねグルーヴ
「……ありがとう、トレーナー」
その手紙の返事を見て、微笑みながらトレーナーにお礼を伝える私なのであった……… - 74スレ主◆TfkekQnBVrkl24/05/07(火) 02:12:09
エアグルでのご参加ありがとうございます
まさかラブレター本文でエアグルトレを「たわけ」呼びしていたのだろうかとちょっと笑いました
それか親密な相手からたわけ呼びされるのが当然と考えていたのか
後日自分でも【ファンレター】を書いて渡すエアグルがいいセンスです
- 75スレ主◆TfkekQnBVrkl24/05/07(火) 07:29:27
朝保守
- 76スレ主◆TfkekQnBVrkl24/05/07(火) 18:30:45
夜保守ついでの
「ウチとこにもこない来るんやったらオグリのとことかすごいことなっとんちゃう?」
「あっちはあっちでファンレターの他に飲食店からの招待券とか無料券が大量に来るらしいよ」
「ええやん。オグリも喜ぶんちゃうの」
「厚意じゃなくて宣伝目的だけどね。【オグリキャップ行きつけの店】ってアピールする為の」
「ほーん。いわゆるステマっちゅーやつやな……オグリに出来るんか?」
「だからトレーナー宛てに贈って、オグリを誘って店に来てもらうんだ」
「アイツに演技とか無理やしな、分かるわ。……せやけどそういうのええんか?」
「勿論良くないから全部断わってるって。担当を不正に関わらせたくないのは当然だし」
「お食事券だけにか」
「タマモ」
「……すまん、外したな」