- 1二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:12:00
「『う~ん、元気が出ないなあ……そんな時はぁー、ご飯を食べよー♪』」
「……えっ」
昼下がりのトレーナー室。
いまいち仕事が捗らず、休憩がてら椅子でうたた寝をしていたところ、それは現れた。
短めの青髪、前髪には大きい流星、カチューシャのような白い編み込み。
担当ウマ娘であるシーザリオ────を模した、パペットがデスクの影から姿を見せている。
そのパペットは楽しげに身振り手ぶるで踊りながら、口をパクパク動かしていた。
「『ぱっぱっぱ♪ さしすせそーゆこった♪』」
「……えっと、シーザリオ、何をしてるの?」
「……あう」
俺が素直な疑問を口にすると、パペットはびくりと震えて止まってしまう。
少し声を変えて喋っていたようだが、さすがに誰が喋っているかはわかる。
やがて、デスクの影から、パペットを手に付けたシーザリオが申し訳なさそうに立ち上がった。
その頬は少し赤くなっていて、少し伏し目がちだった。
「今回のお仕事で使ったパペットの真似で、ハンドパペットを作ってみまして……」
「なっ、なるほど? 良い凄い出来だね、見た目も可愛らしいし」
「『そう言ってくれると、私も嬉しいなー♪』……えへへ、なんちゃって」
シーザリオは俺の言葉を聞いて、微笑みながらパペットを動かす。
先日、彼女は他のウマ娘と共に、料理番組に出演した。
子どもでも気楽に見られるような内容でも、それでいて料理自体もなかなか手が込んでいたと思う。
このパペットは、その時に制作されたものの模倣、というわけだろう。
彼女はパペットを外して、丁寧にデスクの上に置いておくと、足下からバスケットを取り出した。
「それで……ちょっと料理を作って来たんです、一緒に食べませんか?」 - 2二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:12:11
お茶を淹れて、部屋に備え付けられたソファーに腰かける。
そして、シーザリオも俺の隣に座り、テーブルの上に先ほどのバスケットを置いた。
彼女の料理の腕は素晴らしく、以前も何度か頂いて、舌を唸らせたものである。
そのせいか、バスケットを目の前にしたワクワクしてしまっている自分がいた。
「……そんなに目を輝かせてもらえると、嬉しくなっちゃいますね」
シーザリオは、俺の顔を覗き込んで、悪戯っぽく笑う。
……どうやら相当がっついているように見えていたらしい、反省しよう。
やがて、ぱかっとバスケットの蓋が開くと、中からふわりとパンの匂いが飛び出して来た。
「食パンを頂いたので、色々と作ってみました、トレーナーの好きなフレンチトーストもありますよ」
中には、パンを使った色々な料理が所狭しと並んでいた。
新鮮な食材を使い、彩り豊かなサンドイッチ。
食パンで作られた、大きなハンバーグを挟んでボリューミーなハンバーガー。
そして、俺の好物の一つである、フレンチトースト。
煌びやかに輝くようなそれを見て、思わず、ぐうっとお腹が鳴いてしまう。
シーザリオはきょとんとした表情になるが、やがてくすくすと笑みをこぼした。
「ふふっ、私もお腹が空いちゃいましたから、早速食べましょうか?」
「……ああ、そうだね」
熱くなる頬を無視しながら、俺は言葉を返す。
そして、両手をぽんと合わせて、シーザリオと共に、声を揃えるのであった。
「いただきます」 - 3二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:12:24
「────ご馳走様でした、とても美味しかった、ありがとう」
「お粗末様でした……それにしても、本当にお腹が空いていたんですね」
「あっ、あははっ、ごめんね、なんかいっぱい食べちゃって」
「いえ、私は先に食べていたので……ちょっと作り過ぎたかな、って思ってたんですけど」
空になったバスケットを見て、目を丸くするシーザリオ。
中にあった料理はどれも絶品で、夢中になってぺろりと食べてしまったのだ。
……シーザリオの手が進んでないなと思っていたけど、なるほど、事前に食事は済ませていたのか。
まあ確かに、ウマ娘と一緒に食べるという前提だと、この量は控えめではあった。
やがて彼女は、ジロっと俺に対して、疑いの視線を向けた¥る。
「まさか、とは思いますけど、トレーナー、最後に食事を摂ったのは何時ですか?」
「それ、は」
「……昨日の夜ですね? まったく、ちゃんと食事は摂ってくださいって言ったじゃないですか」
「……はい、すいません」
「そ、れ、に、ちゃんと睡眠時間も取ってないですよね? 目の下に隈が出来ちゃってますよ?」
ずいっと顔を近づけて、シーザリオは少しだけ頬を膨らませる。
彼女は、俺の生活習慣なんかを良く気にかけてくれていた。
立場的に逆じゃないかとは思うが、彼女は規則正しい生活を送っているので、俺から言うことはない。
……それはそれでどうなんだ、という話なのだが。
ちゃんと気を遣っているつもりなのだが、忙しくなってくると、どうしても疎かになってしまう。
「……私のためにお仕事を頑張ってくれているのは嬉しいですけど、もっとご自分を大切にして欲しいです」
シーザリオはそう言うと、しゅんと、悲しそうに眉と耳を垂らした。
……彼女のそういう顔を見てしまうと、胸が痛んで、罪悪感に苛まれる。
笑顔が見たくて頑張っているのに、それで悲しませてしまっては本末転倒だ。
俺は深々と頭を下げて、彼女に謝罪を告げる。 - 4二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:12:37
「ごめん、シーザリオ、今後は気を付けるから」
言葉は、返ってこない。
思えば、この謝罪を伝えるのも、何度目だろうか。
それで結局改善出来ていないのならば、謝罪の意味などはない。
とっくに、シーザリオは愛想を尽かせてしまったのでは考えた────その時だった。
ぽんぽん、柔らかい何かに、頭を撫でるように叩かれた。
「『そーんなトレーナーには、ちょっとしたお仕置きが必要だねー♪』」
「……へっ?」
見れば、そこには先ほどのパペットが、ぴょこぴょこと動いている。
パペットはすーっと動き出して、シーザリオの口元を隠すような位置で、止まった。
彼女は少し恥ずかしそうな表情で、小さく言葉を紡ぐ。
「『いつものア・レ・を♪』……してあげても、良いでしょうか?」 - 5二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:12:49
いつものアレ。
それは契約したばかりの頃、俺がオーバーワークになっていた時、彼女がしてくれたことだった。
以降、その行為は俺がやらかしてしまった時の、罰則的な位置付けで行われるようになっている。
……彼女の負担の方が大きい行為なので、俺への罰になっているかは疑問だけれど。
「────トレーナー、ご準備が整いましたので、こちらへどうぞ」
そわそわと待っていると、シーザリオが少しばかり固い声色で、呼び出す。
ソファーの隅に、背筋をぴんと立てて、座っていた。
表情も、目つきもきりっとしていて、凛とした、という表現な似合う姿である。
彼女はそっと、スカートに包まれた自らの太腿を一撫でして、俺を誘い入れる。
テーブルの上には、燻竹製の耳かき棒に、ウェットティッシュなど。
シーザリオが口にした『アレ』とは、耳掃除のこと。
ある日、寝不足の俺を寝かしつけるため、彼女が提案した行為。
それがどうにも気に入ったのか、気づけば、やらかした時のお約束となっていた。
俺は彼女の座るソファーへと腰掛けて、恐る恐る、ゆっくりと身体を傾ける。
ぽふんと顔の側面が、ふっくらとした柔らかさと、ぽかぽかとした温もりに包まれた。
ほんのりとした甘い匂いと、微かな香水の匂い、そしてパンの匂いが鼻先をくすぐる。
「それでは、始めて行きます」
シーザリオは、しゅっとウェットティッシュを引き抜く。
少し緊張をしているのか、今の彼女には完全にスイッチが入っていた。 - 6二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:13:01
「まず、耳を揉みながら拭いていきます、不愉快であればすぐに声をかけてください」
直後、ひんやりとした感触が、耳に触れる。
そして、耳の溝や裏側など、耳たぶなどをじっくりと拭い始めた。
時々ぎゅっぎゅっとツボを押しながら、丁寧に、ゆっくりと。
耳が冷やされ、拭われると同時に、絶妙な力加減により痛みと快感が走る。
「……マッサージに対する反応が顕著ですね、やはり、疲労が溜まっているようで」
シーザリオは、耳を揉みながら、少しだけ不満げに言う。
申し訳ないなと思いつつも、耳のマッサージが心地良すぎて、言葉を返す余裕がない。
なんというか、回を重ねるごとに、彼女の指先の動きは巧みになっている気がした。
細くてきれいな指先が俺の耳をほぐして、熱がこもり始めた頃、手がそっと離れる。
「次いで中の掃除をしていきます、危ないので極力動かないように」
そう言って、シーザリオは耳かき棒を手に取る。
そして、そおっとした様子でゆっくりと、俺の耳にそれが入り込んでいった。
次の瞬間、ノイズのような音が鳴り響き、耳の中の惨状を知らせて来る。
「なかなかの蓄積具合ですね、手前から少しずつ、きれいにしていきましょう」
耳かき棒の匙が、耳壁をつぅっと、撫でるような力加減で滑る。
ただそれだけで、溜まっていた垢が剥がされて、心地良いくすぐったさが神経を刺激した。
ぞくぞくとした気持ち良さが背筋に走り、身じろいでしまいそうなのを、何とか耐える。
シーザリオの耳掃除は、とても丁寧で、慎重で、精密で、繊細だ。
彼女の真摯さと気遣いを感じるようで、安心して、自らの耳を任せることが出来た。 - 7二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:13:15
「……気持ち、良いでしょうか?」
微かな不安を残した、シーザリオの言葉。
俺は、耳かき棒が離れた隙に、こくりと頷いてみせる。
すると彼女は、安堵したように、そして嬉しそうに笑みをこぼした。
「ふふ……それは良かったです、奥の方もやりますので、身体から力を抜いて」
シーザリオは、そっと俺の頭を、優しく撫でつける。
その手のひらは柔らかで、それでいて温かくて、なんとも気持ち良い。
触れるごとに、身体から緊張が抜けていく、彼女の膝枕に素直に身を任せてしまう。
……年下の子に対してアレだけれど、彼女にはどこか母親のような雰囲気を感じることがある。
「耐えられなければスカートを掴むこと、それでは────」
本気なのか冗談なのかわからない一言の後、耳かき棒が深く、耳の中に侵入する。
ぱりぱりぱり、と匙が耳垢を搔きわけるような音が鼓膜に響き渡った。
最初は少し驚いたものの、かりかり、と優しい響きが、その動揺を浚っていく。
しばらくの間、部屋は静寂に包まれる。
聞こえるのは、耳かきの音色と、シーザリオの小さな息遣い。
お互いに言葉を発さない、沈黙の時間ではあるが、そこに居心地の悪さはなかった。
ただただ、優しく、幸せな時間がゆっくりと過ぎていく。
少しばかり意識が浮つき始めた頃、肩をぽんぽんと、軽く叩かれた。 - 8二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:13:27
「はい、きれいになりましたよ、後は残ったのを払っていきますね」
少しだけ緊張が解けて来たのか、シーザリオの口調が微かに柔らかくなってきた。
彼女は手の中の耳かき棒をくるりと回し、逆さまに持ち変える。
匙の方向には、ふわふわとした、白い毛の丸っこい塊。
それを見ると、少しドキリとする。
彼女にも伝えていなかったが、俺は梵天が苦手だったからだ。
「…………それじゃあ、行きますよ?」
その言葉を合図に、もこもことした感触に、耳の中が包まれる。
柔らかく細かい毛並みが、耳掃除を経て少し敏感になった耳壁を、撫で廻していく。
ぞわぞわとした言葉に出来ない快楽が脳を刺激して、思わず声が出そうになる。
慌てて手で口を押さえるが、その感覚は、なんとも耐え難いものであった。
だから俺は梵天が苦手なのだ────あまりにも、この時の感触が快すぎるから。
くるくる、耳の中が梵天に蹂躙されていく。
やがて、耳から梵天がそっと離れて、安堵と少しの名残惜しさに、ほっと息をついた。
その刹那。
「ふぅー……ふぅー……」
涼風のような、爽やかな、シーザリオの短い吐息が耳の中を吹き抜ける。
不意打ちで注ぎ込まれたその刺激に、思わず全身がびくりと、反応してしまう。
嫌じゃないんだけど、何度やっても、どうにも慣れない。
彼女はくすりと笑いながら、息を吹きかけた耳を、さするように指先でくすぐる。
「ふふっ、今のでこちら側は終わりです……じゃあ、ごろーんとしてください、ごろーんですよ?」 - 9二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:13:40
ちらりと、シーザリオの方を見やる。
先ほどの引き締まった表情とは違う、柔らかな笑顔。
片耳の掃除を経て、彼女の緊張は完全に解けたようで、オフの状態に戻ったようだ。
俺は言われるがままに、ソファーの上でがごろりと寝返りを打った。
ふにっと、柔らかく、温かい、そして少ししっとりとした感触、反対側の頬が包まれる。
すると、制服に包まれた彼女のお腹が、視界に飛び込んできた。
細身でありながら、どこか柔らかそうで、彼女の芳香がより強く感じられる。
……ちょっと体勢を変えてもらおうか、そう考えたのだが。
「はい、良く出来ましたー♪ ……ふむ、やっぱりこちら側も、大変なことになってますね?」
言葉を発する前に、くいっとシーザリオに耳を摘ままれ、引っ張られてしまった。
彼女は顔を近づけて、じっくりと中を観察する。
そして、先ほどと同じようにウェットティッシュを手に取ると、耳全体を拭い始めた。
言い出すタイミングを完全に失い、俺は目を閉じて、このまま受けることに決める。
「ふきふき……ぐにぐに……ちょっと、冷たかったりはしませんか?」
シーザリオの口から奏でられるオノマトペ。
それは、彼女がリラックスした状態で耳掃除に臨んでいる、何よりの証拠だった。
俺は、ちょっとヒヤッとするけど大丈夫だよ、と伝える。
「やっぱりそうなんですね、今後は気を付けます……後で、温めてあげますからね?」
本当に気にならないのだが、まあ、彼女らしいといえばらしいかもしれない。
しかし、温めるとはなんなのだろう。
前持って準備してくれたものの中に、そういった機能を持っているものはなさそうだったが。 - 10二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:13:55
「ぎゅっぎゅっ、ぎゅー……♪ 気持ち良さそうですね、この辺りは目のツボなんですよ」
シーザリオの指先が、耳の心地よい部分を、程良い力加減で押していく。
正直、このマッサージだけでも十分、至福の時間といえた。
耳の溝、耳たぶ、耳輪とじっくりと指圧を受けて、耳やふにゃふにゃになったような錯覚。
続いて中の掃除かな、そう思って少し身構えると────突然、耳に蓋をされた。
ほわーんと、無音が響き、柔らかくて温かい何かに、耳を軽く潰される。
それを同時に、後頭部を、耳を塞いでいる何かと同じ感触で、優しく撫でつけられた。
「なでなで……私の手、温かいですか? クラフトは、良くそう言ってくれるんですが」
耳に蓋をしていたのは、シーザリオの小さな手のひらであった。
ウマ娘の体温は、ヒトのそれよりも少し高いという。
例にもれず、彼女の手のひらもぽかぽかとしていて、冷えた耳がじんわりと温まっていく。
頭を撫でられる感触と、目の前のお腹が相まって、頭全体が彼女に包まれているような心地であった。
……なんか、これ、いいな。
しばらくの間、そうして時間を過ごして、そっと手のひらが外される。
少し汗ばんだ耳、外の冷えた空気が気持ち良かった。
「うん、十分温まったみたい……次からは、どっちも、やってあげますからねー?」
シーザリオは顔を近づけて、耳元で揶揄うように囁いた。
どうやら、俺が先ほどのを気に入ったことは、お見通しのようである。
湧き出る羞恥心に熱くなった俺の耳を、彼女はそっと、触れた。 - 11二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:14:08
「ふふっ、本当にぽかぽか……それじゃあ、トレーナー、耳の中をかりかりしていきますよー♪」
どこか楽しそうな、シーザリオの弾むような声。
それに続いて、耳の中に細く、しなやかな、耳かき棒の感触が入り込んできた。
かりかり、と耳の入り口からゆっくり匙がなぞっていく。
反対側と同様、こちらの状態もかなりのもののようで、砂嵐のような音が鳴り響く。
「かりかり……さりさり……こっちもたくさんで、やり応えがありそうです」
シーザリオが奏でる擬音とともに、耳かき棒の匙が耳壁を掻いていく。
反対側とは違い、動きは少しだけ大きく、掻く力もちょっとだけ強い。
しかし、それを彼女のが奏でるオノマトペが優しく中和して、程良い刺激となっていた。
どちらも気持ちが良いのだが、彼女が楽しそうにしてくれるので、俺はこちらの方が好きだった。
「奥の方も、がりがり……ざりざり、しーざりおー…………えっと、なんでもありません」
耳かき棒は奥の方まで入り込み、溜まっていた耳垢をしっかりと取り出していく。
あまり固いのはないのか、耳掃除は順調に進み、シーザリオの口からジョークが飛び出るほど。
……もう一度言ってくれないかなあ。
「ほっ、ほら、もう少しで終わりますから、かりー、かりー……ざりざりー……しっ、しーざりおー……♪」
耳掃除を仕上げながら、シーザリオは俺の無言のリクエストに応えてくれる。
サービス精神旺盛な子だなあ、と思いながら、俺は彼女の声を脳に焼き付けるのであった。 - 12二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:14:22
「こほん、そっ、それじゃあ、梵天を入れていきますから」
恥ずかしさを誤魔化すように、咳払いをするシーザリオ。
そんな大人びている彼女の、歳相応な姿が珍しくて、微笑ましく感じてしまう。
俺の緩んだ口元を見つけたのか、彼女は少し不満そうに唸り声を漏らした。
「むう……トレーナーがそのつもりなら、私も考えがありますよー?」
その言葉とともに、すぽっと、耳の中に梵天が入り込む。
ふわふわ、もこもこの感触が、じっくりと、耳の中を撫で回していった。
心地良い寒気が、背筋にぞぞっと走り抜けて、少しだけ身体を動かしてしまう。
「ふわふわー……くるくるー……ふわふわー……♪」
妙に近くから聞こえる、シーザリオの声。
どうやら、かなり顔を近づけながら、梵天を用いている模様。
匙の方と違い、そこまで繊細な動きは必要ないとはいえ、どういう意図なのだろうか。
そうこう考えていると、梵天があっさりと耳から引き抜かれた。
あれ、もう終わりかな────と、少し残念な気持ちになった、その時であった。
「はぁー………ふうぅぅー…………♪」
シーザリオは息を吸い込んで、熱く、長い吐息を、耳の中に吹き込む。
まるで耳の中を自らの呼気で満たそうかとしているの如く、ゆっくり、じっくりと。
思わぬタイミングでの、思わぬ感覚に、身体が軽く跳ね上がり、変な声が出てしまう。
そして、再び、梵天が耳の中に侵入した。
息を吹きかけられたせいか、慣れがリセットされて、敏感になった耳の中を、再び柔らかな感触が襲う。 - 13二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:14:36
「……気持ち良いですか? トレーナー、梵天、大好きですもんね? お顔がトロトロですよー?」
悪戯っぽく耳元で囁くシーザリオ。
どうやら、俺が梵天に弱かったのも、彼女にはお見通しだったようだ。
顔をなんとか引き締めようとするが、無慈悲な快感が、それを許してくれない。
「ふわふわー、くるくるー、わさわさー……♪」
逃すまいと言わんばかりに、追撃をかけてくるシーザリオのオノマトペ。
脳に直接響き渡るかのような二つの甘い刺激に、俺はただただ、翻弄され続けてしまう。
やがて、梵天が離れていく、ほっと安堵のため息を吐いて────。
「ふうぅぅー……」
再び、長い吐息が吹き抜けて、俺は再び大きな反応をしてしまう。
……ここまでされれると、さすがにシーザリオの意図にも気づく。
「…………さしすせ、そーゆこった♪」
シーザリオは、俺の後頭部にそっと手を添えると、ぐいっと自らのお腹に押し付けた。
湯たんぽのような温もりと、濃すぎるほどの甘ったるい香りと、優しい柔らかさが顔面に広がる。
頭の中が彼女の感触でいっぱいになり、思考が停止してしまう。
そして、トドメを刺すように、彼女は俺の耳元で、そっと囁いた。
「今日は貴方が大好きな梵天と……私を、たっぷり堪能させてあげますからね?」 - 14二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:15:01
お わ り
耳掻いちゃったね - 15二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:15:50
- 16二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:18:31
- 17二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:19:42
- 18二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:21:28
- 19二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:21:51
耳かきSSたすかる
- 20二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:25:50
- 21二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:27:30
- 22二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:28:28
- 23二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 16:29:25
- 24二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 19:57:58
最近耳かきSS多くて助かる
かりかりざりざりしーざりおすき - 25124/05/02(木) 21:49:42