- 1◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 00:57:09
"週末の天候は全国的に恵まれ、行楽日和となるでしょう"
週末は晴れ、か。
今週はレースも無ければトレーニングも休養。つまり完全にフリー。
久しぶりに日向ぼっこにでも出かけようかな。一人でもいいし、誰か誘ってみようかな?
「ただいま、クラフト」
「おかえり、シーザリオ」
シーザリオ、誘ってみようかな?
最近お互い忙しかったし……お弁当持ってピクニックとか、良いかな?
そんなことを考えていると、どうやら彼女も同じだったみたい。
「ねえクラフト。週末はいいお天気みたいだし、ピクニックなんてどうかな?」
「お弁当作って一緒にどう?」
ピクニックか……良いね。シーザリオの塩むすび好きなんだ。
そうだ、おかずはわたしが作ってシーザリオにはおむすびを作ってもらおう。
「良いね! ねえ、シーザリオ。おかずはわたしが作るからおむすび、作ってくれないかな?」
「シーザリオの塩むすび、好きなんだ!」
「ふふっありがとう。沢山作るね。ねえクラフト、私もリクエストしても良いかな?」
「うん、何でも言ってね! わたしも沢山用意するね!」
「それじゃあ唐揚げと卵焼きが良いな。クラフトの唐揚げと卵焼き、大好きなの!」
「ふふっ良いよ。じゃあ準備しなきゃ!」
「うん、楽しみだね!」
楽しみだな、ピクニック。食材は……買いに行かなきゃ。
シーザリオ、結構食べるんだよね。見ていて気持ちいいからわたしは好きだけど。 - 2◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 00:57:25
―当日。
「良いお天気……」
「うん、晴天だね。」
予報通りの快晴。でもちょっと暑いかな。
5月だというのに、日向にいるとじっとりと汗をかいてしまうほどの天気。
お茶は水筒2本持ってきたし、一応塩飴も有る。うん、準備は万全。
「クラフト、今日行くところってどころなの?」
「ちょっと前に猫さんに教えて貰ったところなんだ。小川が有って日陰もあるし、良い風が吹くんだよ」
「ふふっ、なんだか童話の世界みたい。猫さんの隠れ家ってところかな?」
「うん、まさにそんな場所だよ! 楽しみにしててね!」
さてと、道は確かこっちのはず。
……茂みから何かが出てくる。もしかして!
「にゃー、んにゃー」
やっぱり、件の猫さん。丁度、隠れ家の主もそこに行くみたい。
「シーザリオ、この子だよ。この子が隠れ家の主なんだ!」
「そうなんだ! よろしくね、猫さん!」
猫さんはそのままプイッと方向を変え、例の場所に向かっていく。
案内してくれるみたい。主だもんね、猫さん。
二人で猫さんの後をゆっくり歩く。
坂道、トンネル、草っぱら、いっぽん橋にでこぼこ砂利道、くもの巣くぐって下り道。
まるでアニメの世界みたい。 - 3◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 00:57:37
着いた先は少し開けた原っぱ。小川、そして大きな欅。
心地よい風がわたしたちを歓迎するかのように吹き込む。ああ、やっぱり良い場所だなあ。
シーザリオ、気に入ってくれるかな?
「わあ、良い場所……クラフト、猫さん、連れてきてくれてありがとう!」
気に入ってくれたみたいだね。よかった。
「どういたしまして。猫さん、今日もありがとう」
「んにゃ!」
猫さんは短く返事をしてそのまま欅の方に駆けて行った。涼しいもんね、そこ。
時計を見ると11時前。あっという間に感じたけれど結構歩いたみたい。
お昼には少し早いけど、お弁当にしようか。
「シーザリオ、猫さんの近くでお昼にしない? 良い風が吹くんだよ、あの場所」
「そうだね! お腹空いたしそうしよう!」
猫さん、お隣にお邪魔するね?
ピクニックシートを広げて、お弁当に水筒。うん、これで良し。
二人分のお茶を汲んで……お弁当を開けて。よし、食べよう。 - 4◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 00:57:53
「「いただきます」」
まずはシーザリオ特製のおむすびから……うん、おいしい。
自然と笑顔と言葉が出てくる。
「おいしいね、シーザリオ」
「ありがとう! クラフトの唐揚げと卵焼きもおいしいよ」
「ふふ、ありがとう。夜から仕込んでおいた甲斐が有ったよ」
シーザリオのおむすび、好きなんだよね。
ふつうの塩むすびなのになんだかすごく安心する味で、好きなんだ。わたしが握ってもこうはいかないんだよね。
いい機会だし聞いてみようかな?
「ねえシーザリオ。このおむすびってさ、どうやって握ってるの?」
「特に変わったことはしてないよ……そうだね、コツといえば塩水を使うこと、かな?」
「塩水?」
「そうなの、塩水。海水ぐらいの濃度で作って、それを手に馴染ませて握るんだ。こうするとムラなく塩味が付くの」
「そうなんだ、教えてくれてありがとう!」
「どういたしまして」
単純な分、ごまかしが効かない。こういうところにもシーザリオの性格が出てる気がする。
何事も手を抜かずに仕上げる……わたしも見習は無いと。
「クラフト、今日はお休み、だよ?」
「え、ああごめん、そうだね、ゆるっと行こう!」
いけない、いけない。今は休む時。彼女もOFFモードなんだから難しい顔はダメだね。
今はゆるっと『この時』を楽しもう。 - 5◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 00:58:06
もうすぐ5月。新緑と共に夏の足音が遠くからゆっくり、ゆっくりと近づいてくる季節。
強い日差しと爽やかな風。こうしていると時間も忘れてしまいそう。
例年より気温は高くても、風のおかげで心地よい。
少し、眠ろうかな?
そう思っていると彼女にも伝わってしまったみたい。
「クラフト、私の膝を使って?」
「え、でも……ありがとう、重かったら言ってね?」
「大丈夫だよ、クラフトは重く無いから」
「それじゃあ、膝借りるね?」
シーザリオの膝枕、気持ちいい。
川のせせらぎも、木陰も、そよ風も。全てが心地よい。
こうして風に吹かれていると時間も忘れてしまいそう。
ゆっくりと意識が遠退いていく。
気持ちいいね、シーザリオ。 - 6◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 00:58:22
「おはよう、クラフト。よく眠れた?」
どのぐらい眠っていたんだろう? 気が付けば日が傾き始めている。
視界に飛び込んできたのは彼女の優しい笑顔。
少し汗をかいてしまったのか、西日に照らされてきらきらと輝いている。
まるで水面のように輝いている。
「ごめんね、シーザリオ。寝すぎちゃったかな?」
「ううん、大丈夫だよ。クラフトの寝顔、私は好きだから」
そう言って微笑む彼女は、見惚れてしまう美しさ。思わず魅入ってしまうほどに。
「汗かいちゃったね、シーザリオ」
「今日は真夏日だもの。でも大丈夫だよ。良い風も吹いていたもの」
「膝枕、ありがとう。寝ちゃってごめんね」
「気にしない、気にしない! 良い時間だし、そろそろ帰ろうか」
「猫さんも出口で待っててくれているしね」
時刻はそろそろ17時。明るいうちに戻ろないと。猫さんも待たせているし。
名残惜しいけど、今日はこれでおしまい。
また一緒にお出かけしようね、シーザリオ。 - 7◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 00:58:37
以上
元ネタはあの怪文書です
何度か読んでミクアレンジを聴いているうちにあの悍ましい外殻に内包された純粋無垢な愛を感じ取ったので書きました
どんな形であれ愛を語れるって、素敵だね - 8二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 01:08:52
良きSSでした。
それはそれとしてアレは悍ましい愛の産物だと思います……。
もしかすると外殻だけが悍ましいのかもしれませんが、あの行為を出力できてしまうのはちょっと……。 - 9二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 01:12:25
- 10二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 01:14:57
アイエエエ狂人!
- 11二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 01:19:48
あの元ネタをこんなほのぼのSSに変換できるとはただ者じゃないな
- 12二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 09:30:19
ザリクラ尊い…(ちらちら見え隠れする何かから目をそらしながら)
- 13二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 09:55:23
塩水でおにぎりを握るのは初めて知った
勉強になるなぁ… - 14二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 10:13:26
- 15二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 11:10:17
- 16◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 17:43:40
レスありがとうございます
確かに悍ましい愛の産物かもしれませんがあの詩には紛れもない愛が詰まっていると思います
触れ合える喜び、同じ時を共有できる喜び、時間も忘れてしまうほどの喜び、リスクを犯してでも彼女の一部を取り込みたい欲望
あらゆる感情を内包した名文だと私は思います(あくまで個人の感想です)
やはり名曲
私など人の後追いしかできない凡夫ですよ
上でも書きましたが元ネタ有りきでしか書けない凡夫ですよ私は
あの詩の作者に比べればまだまだです
あの情念は強烈ですからね
塩の結晶のままですとどうしてもムラが出来ますからね
旧海軍などでは軍手を海水に浸して握ったそうです
おいしいね、シーザリオ
二人の友情、尊すぎるだろ!
お読みいただきありがとうございました
- 17◆13kDjNSOQ224/05/04(土) 23:31:27
上げついでに塩水で握る塩むすびの作り方を貼っておこう(↓の作り方では塩分濃度10%の塩水を使用)
美味しいおにぎりの作り方野﨑洋光 – chefpartnersもっと美味しい健康へchefpartners.jp