- 1124/05/05(日) 23:14:26
- 2124/05/05(日) 23:17:05
「うぁ…」
降り落ちる雨粒と顔中の痛みで目が覚める。何時間寝てただろうか。明るくなってきているが、雨のせいかまだ暗い。ゆっくり体を起こし、顔を触る。やはりどこもかしこも痛む。
「…?なんで…」
心当たりは無い。立ち上がって周りを見ようとして吐き気に襲われた。
「う、ごえ…」
赤い、吐血だ。転落した時に悪化したのかも知れない。死ぬかも。まあ、今更どうでもいいか。
彼女は来ていない。外を見れば通行人がまばらではあるが通り始めた。紛れ込んで何処かへ行こうか、ここでいつか来るのを待ち続けるか。 - 3124/05/05(日) 23:17:59
くぅ、とお腹が鳴る。そういえば空腹だ。捕まる前に何か食べた方が良いかも知れない。せっかくだから奮発して良い物でも食べてしまうか。最後の晩餐になるかも知れないのだし。
「よし…」
もう一度立ち上がる。何を食べようか、やはりハニトーとかどうだろうか。しばらく食べられてなかったし。震える足をぴしゃりと打つ。ここから行けばちょうど開店時間になるだろう。
「はは…なんか、昔みたい…」
SRT時代も、こんな風にランニングを兼ねていた記憶がある。今は流石に走れないが、懐かしさに浸りながら歩くのも悪くは無い。
「…天気は悪いけど」
あのボロ布もマスクも置いて来てしまった。この服にフードでもあれば良かったものを。 - 4124/05/05(日) 23:19:00
「…まだちょっとあるな」
少し早く着いてしまった。ここのスイーツは絶品という評価を美食研究会が下しているらしい。腹立たしい連中だが食やサービスに対しては極めて真摯だ。だからって爆破しないで欲しいが。出くわしたら…そんな想定はもう無意味か。会うとしたら塀の中。
「ふふっ…なんか面白…」
営業時間になるまであと何分か、スマホを取り出し確認する。銃は置いて来たもののスマホはある。逆を言えば銃だけが無い。絡まれなかったのは奇跡だろう。ピリピリと痛む脇腹をさする。
「…」
痛みはそこまで強くないが、無視は出来ない。人間、気力が充分な時は多少の痛みなら耐えられるものだが、今の私はすっからかんだ。
「あぁ…」
まさしく転落人生。自分がやってきた事への報いが来る。きっと矯正局行きだ。SRTの誇りも捨て、享楽的に暴力を振り翳して悦に浸っていた人間には畢竟、相応しい末路ではある。最後に好物を食べるなんて贅沢をして良いのだろうか?
そんな考えが頭を過ぎる。息を抜くと思考が濁流に呑み込まれる。脈絡も無く落ち込みたがる。 - 5124/05/05(日) 23:19:53
「ああ、ダメだ、やめとこうかな…」
「お客様?」
離れようとした時、後ろから声をかけられる。店員さんだ。
「店内へお入りください、風邪を引かれてしまいますよ」
「…」
お言葉に甘えて入店する。結局空腹には勝てないのだ、人間は。案内されるままに席へと座り、差し出されたメニュー表を吟味する。
「ご注文は?」
「じゃ、じゃあ、この…」
メニューを指差しながら店員の方を向いた…後ろに、誰かいる。
「相席よろしい?」
ユイカ? - 6124/05/05(日) 23:20:45
「ッ!」
「ちょっとちょっと、待って、落ち着いてって…あ、店員さん、私この子の連れだから」
「?…かしこまりました」
軽い調子で対面に座られる。なんだ、何が目的だ?
「探したよ〜、いやぁスイーツショップ張ってて良かった良かった」
「…」
ユイカが顔の左にした眼帯、あの時は無我夢中だったが、やった記憶がうっすらとある。
「その、目…」
「んー?失明したね、で、そっちは?」
「そっちは…って…」
何の話だ?理解が追いつかない。
「いや、ずいぶん傷だらけじゃん、顔」
「え…?」 - 7124/05/05(日) 23:21:37
「自覚ないって事は…自傷かな?ストレス溜まって無意識に毛ェ抜くみたいなとこかな」
顔に触れた指に血の混じった雨水が着く。何故?何処で?
「…いや、まあそれは良いか、店員さーん、これ一つくださーい…で、用件があるんだよね」
「…何?」
「とりあえず食べてからにしよう?お腹減ってるんでしょ?」
ぐぅ、と今度は強めに腹の虫が鳴く。何処か締まらない雰囲気のまま、話は続く。 - 8124/05/05(日) 23:22:27
「それでやってやった訳よ、こう、近くの街灯使ってね?バーンって、そしたら弾がピューって、そんでアイツの頭をスパーンと…うわっ死ぬ程つまんなそうな顔」
「…」
実際興味の無い話だ。ユイカの射撃の腕には少々嫉妬を覚えなくも無いが、用件が気になって相槌を打つ気も起きない。
「お待たせしました、極上さくふわハニートーストです」
そんなこんなでハニトーが二つ運ばれて来た。二つ?
「…同じやつじゃ食べさせ合いっこ出来ないじゃん!」
「何言ってんだか…」 - 9124/05/05(日) 23:23:20
「ふえ〜食った食った、ごちそうさまでしたと…さて、用件の話なんだけど」
ようやくか。仕事を辞めておいてスカウトに来る訳も無いだろうし、何の用なのかの予想がつかない。ユイカが続けて口を開く。
「一昨日だったか昨日だったか…まあとにかくイヨを探してたら、フクロウみたいな女の子と会ってさ」
フクロウみたいな女の子、心当たりがある。
「その子、イヨによーく似た誰かに優しくしてもらったんだってね、不良の抗争に巻き込まれて親子二人、危機一髪!って所で王子様みたいに颯爽と駆け付けた誰かに」
心当たりしか無い内容だ。まさか、いやそんなまさか。 - 10124/05/05(日) 23:24:09
「で、だ…これ、見てもらえる?」
ユイカが何かを映したスマホを見せてくる。あの女の子が椅子に縛り付けられ、しかも何かの爆弾が膝に置かれている。
「この爆弾ね、倉庫にあったんだけどさ、サーモバリック爆弾って知ってる?」
知っている。FOX小隊の勇姿に憧れ、正義を志した人間ならその名前を忘れる事は出来ない。
「それで、これが起爆装置!」
ユイカの反対の手に握られたあからさまな装置。コイツは、コイツは!
「待った、それ以上動いたらこれ押しちゃうよ」
思わずぶん殴ろうとした動きを止め、座り直す。
「…何が、目的?」
「目的かぁ…個人的な事なんだけどね…とりあえずモモトーク交換してよ」
言われるがままスマホを取り出し、ユイカに渡す。 - 11124/05/05(日) 23:25:41
「いや渡すって…あ、やり方分かんないのか…ごめん」
「何をさせるつもり?」
「今から三十分後にこの子がいる場所の情報をモモトークで送る。それまでここにいてくれるだけで良いよ、もちろん警察とかに相談したらその時点で」
ボン、と爆発のジェスチャー。腹立たしい。
「なる早で来てね?来てくれないと…どうなるかな?ひひ…」
腹立たしい、非常に腹立たしい。
「ユイカ…!」
「良いね、その顔、大好き」
そんな言葉を残してユイカが退店する。人質を取られるとは。装備を買い直す猶予は恐らく存在しない。銃も無く、無防備なまま向かわなければならない。だが、あの子の為だ。 - 12124/05/05(日) 23:26:55
「お姉さんをご存知なんですか!?」
「え、お嬢さんこそイヨの事知ってるんだ」
嬉しい誤算だった。写真があるとはいえすぐ分かるとは。少し話すと、残っていた警戒心も薄らいだのか、落ち着いて話してくれるようになった。
「お姉さんには優しくしてもらって…でもお礼が言えてないんです…この、ハンカチも返さないといけないのに…」
「ふぅん…」
イヨも酷い。名前も名乗らない正義の味方みたいに善意を振り撒いてそのままとは。
「ユイカさん?」
「!ああ、ごめん、ちょっとね」 - 13124/05/05(日) 23:28:00
「そういえば、ユイカさんはなんでお姉さんの事を探しているんですか?」
「私?私はねぇ…惚れたんだよね、イヨに」
「えっ!」
「良い反応するね君、まあ片想いだけどね〜、フラれたし…」
あの時直球でフってきたのは少し許せない気持ちもある。拷問しておいて何を今更と言われるととても痛いが。
「応援しますよ!私!」
「え、ありがとう?」
まあ、悪い気はしない…あ、そうだ。
「良い事思いついた」
「何です?」
「協力してくんない?イヨを誘き出す方法思いついたんだよね」 - 14124/05/05(日) 23:29:05
指定された位置へと急ぐ。雨足は強くなってきたが、支障は無い。
「この倉庫、か…?」
ここは誰も使っていない場所だったはず。貸す相手もおらず、最後には放置された。そんな場所。SRT時代に通りがかった覚えがある。先輩の誰かに聞いた事。無用の長物にはなりたくない、なんて言ってたっけ。今の私はどうだろう。
扉に手をかけた直後、素早く押し開け、中に侵入する。暗い。スイッチは何処だ?
手探りで探していると、突然電灯が点いて明るくなる。目が一瞬眩む。
「なかなか速いじゃん、イヨ」
ユイカの声の方へ向く。目が瞬時に慣れ、視覚が正しく情報を得る。何も無い、少し埃を被った周囲、中央にユイカ。隣には空っぽの椅子。そして爆弾。
「あの子は?」
「さあ?家でゆっくりしてるか友達と遊んでるとかじゃない?少なくともここにはいないよ」
騙されたか。なら良い。あの子が脅かされていないなら。無辜の市民が苦しむ姿なんて見たくはない。 - 15124/05/05(日) 23:30:07
「それで、わざわざそんな嘘までついて呼び出して…何がしたいの?」
「…さあ?私は何がしたいんだろうね?」
自分勝手な女だ。腹立たしい。
「あ、じゃあこうしようよ」
ユイカが手に持っていた銃を投げ捨てる。武装解除?降参?そんな訳は無い。何が目的だ?警戒を強め、姿勢をゆっくりと低くする。
「殴り合い!」
そう叫んだユイカがすぐさま飛び込んでくる…のに合わせて顔面にカウンターで右ストレートを叩き込む。
「んっ!」
右拳に強烈な痛み。カウンターに合わせてカウンターか、顔面でやるとは。普通肘とかだろうに。 - 16124/05/05(日) 23:30:53
「らぁッ!」
「!」
負傷している脇腹への蹴りをあえて掴み取り、首を反対の腕で掴んで押し倒す。体格差はほぼ無い。筋力のみが物を言う。もう一度顔面を殴りつけると、拳から血が噴き出す。また骨が。仕方ないので掌底の要領で地面と掌で頭を挟み込む。
「いったいなぁ!」
サマーソルトめいて顎を蹴り上げられ、思わず怯む。バランスを崩した所に追撃の跳び蹴り。あの体勢から良くもまあこんな動きを。
「がッは…!」
喀血。まだマシだがこのままではマズイ。内臓が保つかどうか…
「おぉあっ!!」
頭を掴まれ、壁に思い切り叩きつけられる。目の前で火花が散り、直後に勢いよく、まるで雑巾で拭くかのように擦り付けられる。顔の傷が開き、血が溢れるのを感じる。それが終わったかと思えば後ろ回し蹴りを顔に叩き込まれ、再度壁に、今度は体全体が叩きつけられる。 - 17124/05/05(日) 23:31:56
「聞いたよ!色々!正義の味方みたいな事やってんだっけ!?」
ハイになっているのか、口調が激しい。こちらは頭がぐわんぐわんとしているというのに更に追撃で蹴りを入れられる。血が止まらない。
「それと!最近!悪人ばっか痛めつけてる奴!あれイヨでしょ!」
なんとか足を受け止め、一呼吸おいて口を開く。血で喋りづらい。
「わ、たし…は…正義の味方じゃ、ない…」
「何処が!違うってんだ!このッ!」
足が離れ、今度は顔を打つ。強固な壁に叩きつけられて意識が明滅した。まずい。 - 18124/05/05(日) 23:33:44
「いや、そうか、なるほどね」
勝手に納得したか何かで追撃が止む。横に転がって立ち上がり、壁を蹴って離れる。目に入った血を袖でなんとか取り除く。
「暴力を振るう口実が欲しいって思ってたんだね?」
────。
「図星っ、かぁ!」
気付けば飛びかかって殴りつけていた。怪我の事が完全に頭からすっぽ抜けた。血がユイカの顔面を濡らす。だが殴ったはずなのに、怯みもしない。なんなら伸ばした腕を押し戻されて私の方がバランスを崩す。またか。
「これは緊急避難のような物、と思ったのかな?罪悪感和らげるには良い理論武装だよね」
バランスを崩した私の足が払われて地面と水平にすっ転ぶ。鳩尾を踏みつけられ、身動きが出来なくなる。 - 19124/05/05(日) 23:34:45
「それでここ最近は?それすら捨ててたよね?…いやこれは私のせいか」
「が、あああ!」
叫んでみても力が入らない。足を殴りつけようとすると顔面を踏みつけられた。
「趣味ってとこかな、罪悪感を覚えないように意識してた?その顔の傷はストレスかな?」
何もかも言い当てられる。気分が悪すぎる。
「私の心に土足で入ってくるな!!」
「珍しく叫ぶね、図星突かれて痛いんだ?あははは!」
「ユイカッ!!」 - 20124/05/05(日) 23:35:35
「そうだよ、その顔。やっぱりこっち側だよねイヨは」
ユイカの笑顔が視界いっぱいに拡がり、かつてない怒りが胸に込み上げる。初めて感じた、殺意。
「ふざけるな…!殺してやるッ!!」
「口が悪いねイヨ?不快だった?不快だよね?じゃあそれはなんでかな?」
「お前がッ!お前がァッ!!」
「違うよね?自分が考えてた事だもんね?」
「…ッ」
熱が急速に冷えていくのを感じる。私以上に私の事をユイカは理解している。それはきっと。 - 21124/05/05(日) 23:36:41
「うん、分かった、イヨってさ…」
だからその口を封じないと。どうにかしないと。でも動けない。
「善人になりたかったんでしょ?」
「───────」
「でも自分は暴力が大好きで、自分が思う善き人には全く相応しくないと思ってた訳だ」
「だから──」
「うわああああああ!!!」
無理矢理足を払い除け、転がったユイカに馬乗りになって殴りつける。 - 22124/05/05(日) 23:37:25
「私はっ…!私には!そんなものになる資格も!権利も!無いんだよ!!」
殴る度に血がユイカの顔を汚す。あの時見えなくなった鏡みたいだ。でも止まってくれない。今度の像は、決して。
「資格?権利?バカバカしいし忌々しいね」
「そりゃ、私達みたいなのは善人には遠いかも知れないけどさ…」
「弱きを助け、強きを挫く…そんな事を繰り返すイヨはそこらの連中よりよっぽど善だったよ?」
「違う…!違う!」
「痛い?痛いよね?理想と違う自分を善人扱いされたら痛いか!バカが!!」 - 23124/05/05(日) 23:38:16
「ちょっとやり過ぎただけで自分に失望して!勝手に他人と自分を比べて絶望して!自分を否定し続けて!私を置いて行って…壊れたまんま突き進んだ!違うか!?あァ!?」
「…それは」
「私の眼を見ろ、見ろ!!」
ユイカの眼に映る、醜い像。違う、私だ。
「他人にどう見えてるか、どう思われてるか!少しは気にしてみろ!」
ユイカの頭突きが顔に直撃して再び火花が散る。マウントを取り返された。
「なんでここに来た!」
「私、は…」
「答えろ!」
頬骨を殴られる。痛い。 - 24124/05/05(日) 23:39:17
「わ…私は、ただ助けたかっただけだった…罪の無いあの子が捕まってると思うと、許せなくて…」
「なんで!」
また殴られる。今度は反対の頬骨。
「私は…力を振るう理由が欲しかった…でも、それと同じくらい、人を助けたかった、ずっと、そうだった…」
視界が涙で滲んでまともに見えなくなる。曝け出された自分の中身。
「FOX小隊の人達…SRTに憧れた!正義に!善人に…!ヴァルキューレに編入させられた後も、憧れは変わらなかった…むしろ強くなった…理想が、近くにあったから…!」
理想のお巡りさん、中務キリノ。嫉妬しなかったと言えば嘘になる。だから、嫌だった。自分が醜く見えた。どうしようもないように思えた。 - 25124/05/05(日) 23:40:45
「じゃあ、どうしたい!?」
振るわれる拳を受け止める。
「私は、やり直したい、もう一度…!」
そのまま突き飛ばし、立ち上がろうとして、吐き気を抑えきれずに吐血する。もう限界が近い。
「だから…清算しよう、お互い…」
涙と血を拭いて構え直す。きっとこれが最後になる。だから。
「ここで!全部!」
「イヨ…!」
「ユイカァァ!!」
お互いの拳が同時に、お互いの顔に叩き込まれた。 - 26124/05/05(日) 23:42:21
「ばっ、あ…」
倒れ伏したのは、ユイカ。立っているのは、私。
「私、の、勝ち…」
「昔っから、ステゴロ、強かったもん、なぁ…」
体を支えきれず、膝を突く。全身が痛い。血も相当失った。一息ついていると、バン、と、扉が勢いよく開かれる音がした。
「イヨさん!」
あれは、キリノ。ようやく来たのか。
「どうして、ここが…」
「あの子に聞いたんです、ここに居るんじゃないかと…もう、逃げないでください」
タイミングが良い。ゆらゆらと揺れながら、なんとか彼女の前へ行く。 - 27124/05/05(日) 23:43:30
「わ、私を…逮捕、するんです、よね…」
両腕を差し出すイヨ。辛そうな顔をしながらその腕にかける手錠を取り出すヴァルキューレの子。
「動くな!」
気に食わない。ポケットに忍ばせた起爆装置を取り出した。
「今すぐ…ここから出て行け…」
「ユイカ…?」
イヨが信じられないというような顔をする。
「二人とも!すぐだ!三人とも死にたくないだろうが!」
「や、やめなさい!何をする気かは分かりませんが、今すぐに…」 - 28124/05/05(日) 23:44:01
「この爆弾は!サーモバリック爆弾…こんな閉所だ、本当に死ぬ!だから、出て行け…」
「どうして、ユイカ…」
「私も、そっちに行きたかったよ」
本当は、私だってそうだ。SRTに憧れた。正義に。廃校はまさしく絶望だった。
なら好きにしてやろう、そんな風に考えた、考えてしまった。連邦生徒会長のいない今、私達は無用の長物。必要とされたかった。
「私は、イヨのようにはなれない」
きっと、こんな日が来るのを何処かで待ち望んでいた。爆弾を拾い上げる。
「だから置いて行って。あの時みたいに…」
起爆装置のスイッチに指をかける。 - 29124/05/05(日) 23:45:01
「は?」
イヨが目の前に。爆弾を奪い取って、抱えて。その拍子にスイッチが押される。
「伏せろ!!」
イヨの叫び声の一瞬後、爆炎がイヨを呑み込んだ。
「ぐあ!」
爆風に吹き飛ばされ、背中から壁に叩きつけられる。ヴァルキューレの子も同じくか。イヨは?イヨはどうなった?
「あ…ぎ…」
上半身が焼け、首元まで真っ赤…皮膚が、剥がれて…口からは止め処無く血が溢れ、火傷に触れて沸騰している。
「イヨ…そんな!」 - 30124/05/05(日) 23:46:44
「置いて、行かない、から…一緒に、やり直そう、ね…」
焦点の定まらない目が私を見る。こんな物を持ってきたから、私のせいで。
「救急搬送を!とにかく誰でも良いから早く!」
「イヨ!ダメ!死ぬな!死ぬなぁぁ!」
ヘイローが消える。意識を失った?壊れた?ふざけるな!やめろ!
呼吸も脈も無い。ダメだ、ダメだダメだ。まず心臓マッサージだ。胸部を圧迫する。
「戻って来い…戻って来て…お願い…」
人工呼吸、再び心臓マッサージ。
「戻って来いよ!!」
「イヨさん!」 - 31124/05/05(日) 23:47:24
次が本当に最後です。質問は受け付けています。
- 32二次元好きの匿名さん24/05/06(月) 00:00:07
すごい大作のできる瞬間に立ち合えてる気がする
これ描写がすごいことになってるだけで、文脈は王道の青春殴り合いモノなのがね。なんともこう
泣けてきた
ちゃんと文豪っているんだなって - 33124/05/06(月) 09:28:09
起きたら7:30でビビりました。
更新は今日、最悪明日です - 34二次元好きの匿名さん24/05/06(月) 18:50:16
保守
- 35124/05/06(月) 21:43:23
あれから数週間経った。
私はサーモバリック爆弾を盗み出し、カイザーの悪行を再び白日の元に晒した“勇気ある告発者”となったらしい。
私を取り調べた公安局長は、禁止された兵器を所持していた以上、強制的な立ち入り捜査も可能だ、と息巻いていた。
そして、私自身の処遇として、ヴァルキューレへの編入(少し違うが)を提案された。まあ、受けない理由も特に無かった。
「ここが仕事場か」
少しボロい建物だが、ヴァルキューレは予算不足なので仕方ない…のだろう。
鍵を開け、階段を登り、また鍵を開け、中の様子を見る。机、椅子、棚、ロッカー、あとはほとんど何も無い。
「何に使われてた場所なんだろ」
実際の所は分からないが、とにかくまずは掃除だ。埃だらけではやってられない。 - 36124/05/06(月) 21:44:58
「こんなとこか」
掃除道具を片し、椅子に座り込む。軋む音が部屋に響いた。
「さて…」
貰った書類を机の上に置く。仕事内容の確認だ。位置、対象、そして敵性勢力。
「荒事はお任せあれ〜って確かに言ったけどさぁ…」
勇気ある告発者として扱う為に、ヴァルキューレの下請けのような事をしてもらう。そういう条件だ。表向きは在籍していない事になっており、ここは個人経営の…何でも屋的なものの事務所となる。かなりのグレーゾーンに浸かっているような。
「はぁ〜…ま、やり直すって言ったし…贅沢は言ってらんないし…」
好きな女に言われたのだからちゃんとしないと。失望されたくは無い。
「んー…でもお腹空いたな…」
そういえば朝から何も食べていない。腹が減ってはなんとやらだが、今から買いに行くのもしんどい。そんな事を考えていると、誰かの手でドアが開く。
「掃除終わった?」
レジ袋を提げたイヨだ。ようやく来たか。 - 37124/05/06(月) 21:45:35
「押し付けて逃げやがってぇ!」
「まだ通院しないといけないの分かってるでしょ?…ほらコレ」
イヨが服の裾を捲り上げる。一瞬何かを期待する自分がいたが、大きな火傷痕でそんな気持ちも萎える。
「起きてすぐのたうち回ったよコレの痛みで」
「…ごめん」
「別に良いよ、私もその左目やっちゃった訳だし…」
私達はお互いがお互いに相当な怪我を負わせている。負い目や引け目を感じてしまうが、あまり気にしないようにした方が良いのかも知れない。 - 38124/05/06(月) 21:46:37
あの時大火傷を負って心肺停止に陥ったイヨは、すぐに救急搬送され、なんとか一命を取り留めた。しかし火傷だけでなく内臓の損傷も酷く、面会謝絶の状態が続いていた。何日か経ち、面会の許可が降りた時、真っ先に向かったのがまさかのあの狂犬、公安局長だったそうだ。いきなり現れた狂犬にイヨはメチャクチャビビったとか。
次にあの、キリノとかいう子とフクロウみたいな女の子。そのすぐ後に私。あの子もちゃんとお礼を言えたようで良かった…すれ違いざまになんか変な、あったかい目で見られてた気がするけど。
「で…私達の初のお仕事は?」
「鎮圧だって、たまんないね」
イヨ曰く、私達の『仕事』を考案したのは公安局長らしい。何か思うところでもあったのだろうか。
「手錠何個持ってく?」
「え?余分に三十くらい…」
「絶対邪魔になる!」 - 39124/05/06(月) 21:47:47
「まあとりあえず腹拵えしてから行こう、私の分はコレとコレと…」
「唐揚げ棒ばっかじゃんイヨ、スイーツ全部取るぞコラ」
「分かった、ジャンケンで決めよう」
「動体視力おかしいヤツとジャンケンしたくないわ!」
とりあえずパスタを貰う。フォークではなく箸が入っていたが何の嫌がらせだろうか。
「…食べづら」
「だろうね」
そんな事を言うイヨは焼きうどんをフォークで食べている…あれおかしいな。
「交換しない?そのフォークとこのお箸」
「ヤダ」
「なんでだよ!!!」 - 40124/05/06(月) 21:48:50
「ここがそう?」
「“違法な物品の製造と販売が行われている場所”ならここの事っぽいね」
街の外れにあるデカい廃工場。本来もっと真っ当な製品を作っていた場所のはずだ。ユイカが銃を確かめるのを見て、私も拳銃を確かめる。雑に使っていたせいで結構傷だらけだが動作に問題は無い。
「どういう感じで行く?」
「私が前でユイカが後ろ」
「それが最善か」
作戦と呼べる作戦は無いが、私とユイカでは突入して暴れる以外の選択肢がある訳もなく。
「じゃあやろう」 - 41124/05/06(月) 21:49:51
「ここは立ち入り禁止だよ、今すぐ…」
見張りをしている子に発砲。すぐに周囲の客や売人が気付くが、気にする必要は無い。怯んだ見張りの腕を取り、手錠をかける。ひっくり返してもう片方の腕にもかけてやる。
「ちょっ、何コレ!?」
「ユイカ、支援」
「了解」
客は様々、数も多い。だが全員をここで捕まえる必要は無い。問題は売人側。明確に武装している連中をまず無力化する。
LMGを構えてこちらを狙っている子に肉薄。無理矢理掴んで周囲に弾をばら撒かせてやると、客が物凄い勢いで散っていく。非常に熱い。そのまま奪い取って解体し、足を払って手錠をかける。
「コイツ!」
近くにいたもう一人が殴りかかってくるのを無視し、背中を向ける。次の瞬間には倒れ込む音が後ろから聞こえた。ユイカにサムズアップしておく。 - 42124/05/06(月) 21:50:50
バラけた客の合間を縫って撃ってくる奴はユイカが跳弾で無力化しているが、思い切って近接格闘を挑んでくる奴は危ない。
こういう時こそヴァルキューレで学んだ事を活かすべきだ。
「フッ!」
ショットガンの銃口で殴ってこようとする子は手錠を銃身に引っ掛け、逆に顔に当ててやる。もちろん怯んだ所で奪い取って今度は膝で折っておき、今度は手錠を足と腕にかける。
「痛たたた!」
喚く子を引き倒して次は長机でぶん殴ってこようとしている子を…長机!?跳躍してスレスレで横に回転して回避しつつ、眉間を狙い撃って数発叩き込む。
「ぎにゃっ!?」
机があらぬ方向へ吹っ飛んでいくのを他所に足払い。ひっくり返る彼女の腕に手錠をかけて反対側の足にも引っ掛ける。
まだまだ数はいる。このまま続けていこう。 - 43数分後…24/05/06(月) 21:51:48
「制圧完了!」
ユイカの声。どうやら見える範囲の子以外も撃ち倒したらしい。客もはけた。倒れている子達に手錠をかけていく。
「やっぱ余ったでしょ」
それも終わった頃、周囲を警戒していたユイカが近づいてくる。
「はぁ、はぁ…足りなくなるよりはマシ」
「名簿とか見つけとく?」
「それは私達の仕事じゃない…」
しゃがみ込む。思ったより疲れた。病み上がりだから、というのもあるが。
「…やっぱりアレのせいで肺が…」
荒い息をなんとか落ち着け、立ち上がる。
「これくらい平気…帰ろう」
呼吸器が灼けた後遺症。だがこの程度なら問題無い。ユイカもカバーしてくれているし。
「…うん」 - 44124/05/06(月) 21:52:42
「なんか、すごい甘くなった?なんというか、戦い方」
帰り道、ユイカにそんな事を言われた。
「甘くなった…丸くなったって方が正しいと思うけど…まあ…ちゃんと意識して我慢しようかなって」
「偉いね〜、人をボコボコにするのがあんなに好きだった癖に」
「ユイカに言われたくないんだけど」
気分を少し害されてムッとしてしまう。
「まあ良い事だと思うよ、真面目な話…好きに振る舞うのも楽しいけど、やっぱりメリハリが必要だよね〜」
「そんな話だっけ?」
「そんな話でしょ」
そう言われるとそんな気もしてきた。 - 45124/05/06(月) 21:53:30
「…あ、ユイカに一つ言い忘れてた」
「ん、何?」
「あの時置いて行って、ごめん」
「…ああ、その事」
「あの時も言ったけど、やっぱり私達って似てるから、だから嫌いだった、見ないようにしようとした。鏡みたいで、どうしても嫌だった」
あの時の私は、一緒に堕ちるか、手を振り払うか、その二択しか無いと本気で思っていた。でも違う。本当にすべきだった事は、向き合って一緒に進む事。単に好き嫌いで語る事じゃなかったはずだった。 - 46124/05/06(月) 21:54:22
「ユイカの甘い言葉に揺らぐ自分も嫌で、甘い言葉を囁かれるのも嫌で…醜さに蓋をしたつもりで、置いて行った。そんな事、やるべきじゃなかったのに…」
「イヨ」
言葉による制止。思わず口を止める。
「これからやり直していくんでしょ、一緒に…私だってもうヤダ〜ってなって、アレで自害するつもりだったけど、今は前を向こうとしてるでしょ、お互い。だからこの話は終わり、良い?」
「…ありがとう」
「こちらこそ」 - 47124/05/06(月) 21:55:26
帰り際、ユイカと入った飲食店でそれは起きた。
「あ、キリノちゃんと…こ、公安局長…お疲れ様です…」
まさかの遭遇。ビビっているユイカは初めて見たかも知れない。新鮮だ。
「…あまり畏まられると困る、やめてくれ」
「えっと…その、お二人は…どうしてここに居るんです?」
「偶然お会いしまして…せっかくなので御相伴に与ろうかと」
彼女の言葉にカンナ局長が肩をすくめる。やれやれと言った表情だ。 - 48124/05/06(月) 21:57:03
「…お前達も注文したらどうだ?仕事帰りだろう?」
「ではお言葉に甘えまして…どれがオススメです?」
ユイカが怖気から立ち直っている。そしてさり気なく奢ってもらうつもりのようだ。図々しい。
「その、イヨさん?」
声をかけられ、体が跳ねる。
「身体の方は大丈夫ですか?」
「ま、まあ、少し前まで人工呼吸器着けてたにしては…かなり、元気には…」
「それは何よりです!」
へへへ、と愛想笑い。実際危うく死ぬ所だったし、心配されるのも当然か。
「何その照れたような顔、面白」
揶揄うユイカの鳩尾に肘をめり込ませる。しばらく黙っててもらおう。 - 49124/05/06(月) 21:58:06
「そういえば、カンナ局長、良かったんですか、こんな…私達…」
「良いんだ、私もあの時もう少し引き留めていれば良かったと後悔していた…確かにやった事はやった事だが、相手も相手だ。情状酌量の余地はある」
それに、とカンナ局長が続ける。
「これからもっと忙しくなっていくからな、温情のある措置だと思えるのは今だけかも知れんぞ」
「え」
「…うぐぐ、そりゃどういう…」
回復してきたユイカが口を挟んでくる。
「言葉の通りだ、今日やったような制圧だけじゃない。色々やってもらうし、表向きは何でも屋…生活費はそこから稼いでもらう」
「まさか…」
「そう、お前達に今日やってもらったのは減刑の為の奉仕活動、つまり…」
それ以上はやめて欲しい。口を開かないで欲しい。ああ。
「ほんの少ししか給料は出ない」
ユイカと揃って天を仰いだ。 - 50124/05/06(月) 21:58:49
「まあ、ここは奢ってやる…明日からはもっと励むように」
「あ、ありがとう、ございます…」
血涙でも流しそうになりながら礼をする。マジか。マジか…。
「…やはり不服か?辞めてもいいが…」
「いえ、私達…やり直したいんで。それに、面会の時も言いましたけど…これが今、私達のやりたい事、なんです…だから、その…頑張ります…」
「同じく…頑張ります…」
「…ああ、頑張ってくれ」
「とりあえず、食べますか?」
「ええ…」
運ばれてきたご飯が妙にしょっぱかった。 - 51124/05/06(月) 21:59:51
あれから何日か過ぎた。カンナ局長の言葉通り、かなり多忙になってしまった。張り込みやら浮気調査やら水道管の修理やら捜査の協力やら猫探しやら武力衝突やら鎮圧やら賭け試合の出場やらシャーレの先生との遭遇やら立てこもり事件への対処やら、色々と。
「ぐえぇ…昨日やった腰が治らん…」
「じゃあ今日は私一人で行くよ」
「あ、待った、寝癖ついてる、ほら鏡」
ユイカの差し出してきた鏡を見ると、髪がガッツリ跳ねている。こりゃ酷い。ひとまず濡らしてみる。
「…うーん」
戻らない。最近髪を切ったせいだろうか。まあ帽子でも被っていくか。
「じゃ、行ってくるね」
「はーい行ってらっしゃーい」
外に出ると清々しい程の快晴だった。青い空、白い雲。
「…今日も頑張ろ」 - 52二次元好きの匿名さん24/05/06(月) 22:02:54
いい空気吸ってる...のかねえ
- 53124/05/06(月) 22:03:59
くぅ疲。
という訳で終了です。最初は完全に一発ネタのつもりでしたがせっかくなのでと書きました。
しばらく生活が創作一色になって色々不調をきたしましたがそこはそれ。なんだかんだ楽しかったです。お付き合いくださりありがとうございました。 - 54124/05/06(月) 22:06:21
ちなみにまとめたやつをどっかに投げるかは未定です。
渋は積極的に動かしたくないのと笛は別のを投げていて投げづらいのとでどうしたものかと思っている所です。
というか今はもう何もしたくないです… - 55二次元好きの匿名さん24/05/06(月) 22:17:05
取り敢えず完走乙だぜ
語彙力なくて月並みなことしか言えないけど、すごいよかった!
二人とも前より幸せそうで良き - 56124/05/06(月) 22:22:13
ちなみになんですがしばらく質問は受け付けます。
かなり疲れましたが本当に楽しかったですし、ある程度見てもらえて嬉しかったです。
そして完走した以上はネタバレとか一切無しで質問に答えられます。質問のある方はこちらにどうぞ。 - 57二次元好きの匿名さん24/05/06(月) 22:23:45
完結おめでとうございます、お疲れ様でした。
おかげさまでしばらく楽しませていただきました。
いろいろ騒動になったけど、イヨちゃんとユイカちゃんがわだかまりを乗り越えて一緒に進めてよかった……なりたいものを目指す二人に幸多いことを願っちゃうよ - 58二次元好きの匿名さん24/05/06(月) 22:32:06
- 59二次元好きの匿名さん24/05/06(月) 22:52:55
- 60124/05/06(月) 22:53:10
すみません、よくわかりません。
というジョークはさておき、諸事情で(主に体調)半年以上更新停止中でろくに進んでいません。
もう少ししたら更新を再開出来るかも知れませんがやはり未定です。もし見つけたらこの文体で察してやってください。
- 61124/05/06(月) 23:06:00
イヨのファッションは黒タンクトップに上着を羽織って下はスウェットパンツを履いてる感じです。地味めな色合いを想像してください。
大火傷をした後も特に変わってません。髪は短くなってますが。
ユイカのビジュアルは黒髪に黄色のインナーカラーで若干メッシュも入ったウェーブのかかった短髪…を最近伸ばし始めました。目は真っ赤で瞳孔が縦に長く、爬虫類を思わせる見た目です。どちらかと言えば可愛い系の顔をしており、身長は164cm程です。
ガッツリ同棲、というか二人とも事務所で寝泊まりしています。近くに銭湯があるので臭くなる事はありません。多分。
- 62124/05/07(火) 07:11:45
今日も今日とて質問は受け付けています。
- 63124/05/07(火) 18:08:46
無さそうスね
お疲れ様でした - 64二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 18:10:27
乙
- 65二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 18:16:20
良いスレだった
かんしゃあ〜 - 66二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:27:50
このレスは削除されています
- 67part2の>>14024/05/07(火) 21:18:40
乙!
花輪イヨと加治ユイカ、宿敵として死合うのかと思いきや意外な、されど納得の結末に…
エピローグでの大立ち回りはまさに
最狂の前衛+最凶の後衛=無敵のコンビ
ですね…
Q5:中務キリノと対峙した屋上に銃とか覆面とかを置いていってしまった旨が言及されていましたけど、あの場所は当時の花輪イヨの拠点だったのでしょうか?
Q6:加治ユイカが持ち出したサーモバリック爆弾はグレネードサイズですか? 個人携帯対戦車弾サイズですか? - 68二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 21:38:54
良きものを見せてもらった
かんしゃあ〜 - 69124/05/07(火) 21:57:36
A5:いいえ。あの場所は休息に使っただけです。色々置いて傷の手当てとかしようとしてる所で遭遇して冷静さを失って紐なしバンジーを決行しました。精神の均衡が崩れていても受け身を取ってダメージを最小限に抑える辺りは訓練の賜物です。
A6:通常使われるC4などの設置するタイプの爆弾より少しデカいくらいです。ユイカは流石に不安だったのでちゃんと自害出来るように持ち上げて頭の近くで起爆するつもりでしたがそれが原因で奪い取られました。イヨの細身の体ではカバーし切れなかったものの死人が出るのは防ぎました。
- 70二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 06:39:41
置いていった銃はどうなった?ヴァルキューレに回収された?
- 71124/05/08(水) 08:01:14
- 72二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 11:16:29
- 73二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 11:18:38
- 74124/05/08(水) 15:03:50
- 75124/05/08(水) 20:17:11
流石にもう出切ったか…?
- 76part2の>>14024/05/08(水) 20:35:43
Q7:エピローグ時点での加治ユイカの「銃」、武器種(アサルトライフル、マシンピストル等)は何ですか?
Q8:花輪イヨが梟獣人の母娘を助けた時に貸したハンカチですが、なぜ中務キリノは一目で彼女の物だと気付いたのでしょうか?(個人的には、可愛らしさの欠片も無い実用性重視なタオルハンカチだろうかと予想しています) - 77124/05/08(水) 20:48:36
A7:アサルトライフルですね。ちょうど入れ替わる形になりました。
A8:イヨが使っていたのは綺麗なキンモクセイの意匠が入ったハンカチで、無意識に自分が気に入った物を使っています。自分のそういう好みがあんまり把握出来てないんですね。
キリノはチラッと見たのを覚えてました。
- 78part2の>>14024/05/08(水) 21:06:49
Q7-2:加治ユイカの跳弾狙撃は要所要所で披露されていましたが、指切り連射/指切りバースト/マニュアルバーストも余裕でできる感じですか?
Q8-2:メタい話で恐縮ですが、花輪イヨのハンカチについて金木犀云々の設定を採用した決め手は何でしょうか?
Q9:今作の一連の騒動はカルバノグの兎編にどう影響しているという設定ですか? そもそもどういう時系列でしたっけ?(回答済みだったらごめんなさい) - 79124/05/08(水) 21:17:11
A7-2:多分出来ると思います。それで跳弾狙撃をしてドヤ顔するだけだとも思います。
A8-2:花言葉ですね!(元も子もない回答)
A9:本編で言う所の二章の後ですね。
ちなみに基本私の書いてるキヴォトスにいるのはA.R.O.N.A.です。
- 80二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 21:36:38
- 81124/05/08(水) 21:41:33
そういうつもりではありませんが、本編とは違ったルートを基本書くって感じですね。
A.R.O.N.A.だからってバッドエンド確定って訳ではないと信じて書いてます。
メタ的に言うと本編にこんな連中(女引っ掛けて都合良く使うクズ女、暴力大好き女、暴力大好き女大好きクソ女)絡めたくないので…
- 82part2の>>14024/05/08(水) 21:55:10
…そうか、A.R.O.N.A.がいるからって色彩の嚮導者ルートとは限らないのか。
……ところで、「暴力大好き女」=花輪イヨ、「暴力大好き女大好きクソ女」=加治ユイカだとしたら、「女引っ掛けて都合良く使うクズ女」とはいったい…? - 83124/05/08(水) 22:02:12
- 84part2の>>14024/05/08(水) 22:30:59
- 85124/05/08(水) 22:54:23
それだけは勘弁してください…何卒それだけは…もうすぐ更新すると思うのでなんとか探してください…ごめんなさい…
- 86part2の>>14024/05/08(水) 23:15:21
- 87124/05/08(水) 23:48:02
- 88124/05/09(木) 08:00:15
先生ちょっと結構お時間もらいます
- 89二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 08:16:08
とても面白かったです!良いss感謝ぁ
- 90124/05/09(木) 18:32:05
- 91124/05/09(木) 22:05:58
質問自体は出切ってるっぽいのでリクエストに応えたらあとはもう落とすで良いのかな
- 92part2の>>14024/05/09(木) 22:59:03
- 93124/05/10(金) 07:43:05
- 94124/05/10(金) 18:19:57
夜でーす
- 95124/05/10(金) 22:44:16
TIGER、虎を意味する単語だけど…虎と呼べるのはアタシ達の所属してた小隊の中には花輪イヨしかいなかった。他は虎の威を借る鼠…え?違う?分かってるよ、でも狐はダメだよ…うん、とにかくアタシらはそういう存在だった。
なにせ、同期でずば抜けて身体能力が高い上に判断力も高い、あとモチベーションも高い。でも身長は低い。胸も小さい…ん?聞き間違いじゃないかな。
とはいえ、別にアタシらの能力が低い訳じゃあなく、ただシンプルな答えとして、花輪イヨは虎だったんだ。
そうだね、じゃあ、一番印象に残ってる合同訓練の時の話でも。 - 96124/05/10(金) 22:45:24
「これより模擬戦を行う」
アタシらTIGER小隊と、向こうはなんて言ったっけ…LIZARD小隊だったっけか。まあそんな名前の…そうだ、やたら射撃上手い子がいた小隊との模擬戦だった。あの子は確か加治ユイカ。今何やってんだろうね?
で、とにかく模擬戦の話。
「ルールは簡単だ、全員戦闘不能になったら負け、それで行こう」
向こうの隊長はかなり無茶な事を言い出した。普通そこまでやらんだろ、と思ったし、イヨもそんな顔をしていた。当然他の二人も同じくだった。
「フィールドは…とりあえずこの場所だ、あそこからあそこまで……」
どんどん用意が進んでいくのを見て逃げられない事を悟った。仕方ないので武器を軽く整備する。それぞれ役割分担があるので当然持っている物は違う。 - 97124/05/10(金) 22:47:04
TIGER1、イヨはアサルトライフル。TIGER2のアタシもアサルトライフル。3はスナイパーライフル、4は後方支援、サブマシンガンだ。
普段ならイヨを投げ込んで支援するだけで終わる事が多いが、今回は同じSRTの特殊部隊。個の強さのみを問う戦いでは無い。きっと一筋縄では行かない。
「TIGER1、作戦の提案がある」
「…」
「閃光弾使って…あの、聞いてる?」
「あ、ご、ごめん、聞いてる、大丈夫」
これだからこの隊長は。こんな態度だというのになんかやたらと強いのはなんなんだ?3、4の二人と顔を見合わせる。
「しっかりしてよ?」
「だ、大丈夫…」
念押ししておく。どれくらいの意味があるかは分からないが。 - 98124/05/10(金) 22:48:16
「時計の長針がちょうど12を指した所で始めよう、各員配置につけ」
合計八人、それぞれがキッチリ仕事をする為の最適な場所へつくと、自然とイヨが前に出て、アタシらは後ろに下がっていた。複数の遮蔽物が配置されたフィールド内で、4のドローンのプロペラ音が響き渡る。
『TIGER1、いつもみたいにお願い』
『ちょっと待って、そのドローンに載っけたやつ使うんでしょ』
『それでイヨを突っ込ませるんでしょ?いつもとそんなに変わらないじゃん』
『な、なんで私、毎回こんな爆弾みたいな扱いを…?』
『気にしないの、ほらやるよ!』
「…大丈夫かなコレ」 - 99124/05/10(金) 22:51:18
長針が真上を指した瞬間、イヨが飛び出す。それに合わせてアタシもカバーしに飛び出す。
直上を飛ぶドローンから何かが投下されていくのを確認し、そちらを見ないように二人して離れて遮蔽物に隠れる。
キン、という高い音と閃光が発生する。瞬時に遮蔽物から身を乗り出す。もちろんイヨの方が速い。近くまで来ていた一人がイヨと接敵したので横から撃って援護。視界が回復しきっていないままにイヨの蹴りが頭に直撃した。あれは痛い。
「一人やった!」
『ごめん!撃墜された!どっからやられたか分かんない!』
4の嘆く声が無線越しに聞こえる。黒煙を上げるドローンが落ちていくのが見えた。
『射線の通んないとこだと思ったのに!私も前線出る!』
「了解、TIGER1のカバーを…TIGER3?」
『…』
『えっなんで!?』
次の瞬間、弾丸があらぬ方向から飛んできた。明らかに背後から。背中に直撃した痛みに耐えて振り向く。しかし居たのはTIGER4だ。後ろからは発砲音も聞こえなかった。誤射では無い。 - 100124/05/10(金) 22:54:38
『スモーク』
イヨの言葉と同時にスモークグレネードが向こう側の地面でぐるぐると回りながら煙を吹き始める。
『た、多分…跳弾で狙われてる』
愕然とする。そんな芸当をこなせる奴がいるのか。
「どうする?向こうも三人だけど一方的に狙われてる、こっちが不利だよ」
「ドローンの閃光弾、アレを使おう、回収出来る?」
『…なら、私が一番近い、援護を』
「じゃあお願い、TIGER4、私と一緒に制圧射撃を」
「了解!」 - 101124/05/10(金) 22:55:43
宣言通り、スモークで視界が遮られているLIZARD小隊へ向け、二人で乱射。イヨが拾うのを確認し、安全圏へ戻るのを見て引っ込む。
「TIGER1、煙が晴れたらそれを使って。あと何発あったっけ?」
『…無事なのは一発。煙が晴れる前に手動で撃てるようにしときたい、こっちへTIGER4を寄越して』
「了解、行って」
「うぇ〜、分かりましたよ…」
渋々と言った口ぶりで迅速に移動する4を見送り、再び制圧射撃を行う。万が一にも撃たれては困る。
『到着!作業開始!速く終わるよう祈って!』
「あいにく手が塞がってる」 - 102124/05/10(金) 22:56:36
『よし…完りょぶっ!?』
煙が晴れると同時に銃声、4の悲鳴。まさか。
『TIGER4ダウン、ごめん、目の前でやられた』
「すごいな向こうの子…やれる?TIGER1」
『次の発砲を合図にする』
「了解…」
発砲音が鳴り響くまで少しの間待機する。マガジンを交換し、今か今かと待ちわびる。
「今!」
発砲音と共に飛び出すイヨに虚を突かれた一人を狙い撃つ。揺らいだ彼女に向けてイヨのアッパーが。アレはしばらく立てないだろう。
『閃光弾』
できるだけそちらを見ないようにして私も突撃…しようとしたところで跳弾が再び、今度は腕に。危ない、銃を狙われている。動き回らないと。
「ッ、被弾した、もう一人を狙う」
『了解』 - 103124/05/10(金) 22:57:31
イヨの打撃音。驚くような声がした。向こうの隊長、無力化は出来ていないようだ。ならもう一人、恐らくは…フィールドを駆け、跳弾の軌道を逆算する。そこに…
「!」
「見つけた!」
すかさず発砲、しかしすぐに退避されてしまう。何処かから小さな破裂音が鳴り響く。サプレッサーを着けたか、まずい、すぐに銃を庇うが、イヨからの無線が届く。
『はぁ、無力化した、そっちは…』
「…イヨ?」
ザザ、という耳障りなノイズ音。まさか、逆にイヨが狙われた?だとしたら非常によろしくない。サシでの勝負は絶対に不利だ。脳内でフィールドの地図を描く。逃げるとすれば、あそこ。だがそこに辿り着くまでにアタシでは…いや、耐えてみせよう。決意と共に走り出す。 - 104124/05/10(金) 22:59:19
何度も何度も当たった弾丸の痛みに耐え、なんとか辿り着くが、もう結構しんどい。予測が当たっていれば…
「なんで分かるの?」
いた。すかさず発砲、しようとした所で再び撃たれ、地に伏せる。
「良い訓練だった、ナイスファイト」
トドメと言わんばかりに銃口がこちらに向けられる。負けか。そう悟って目を伏せ、ゆっくりと──撃たれ、ない?
「…?」
「ようやく、見つけた」
イヨの声、まさか。顔を上げて目の前の二人を見た。 - 105124/05/10(金) 22:59:56
掴まれている。彼女の腕が、イヨに。ギリギリという嫌な音がこちらにも聞こえてくる。よく見れば耳に着けていたマイクが壊れていた。無線機が壊れただけか。
「ふんッ!」
イヨが掴んだ腕を──肘から先を──膝で真っ二つにへし折った。
「────!!!」
折られた当人が声にならない悲鳴を上げ、倒れ込む。
「これで、私達の…勝ち」
そう言って笑うイヨの顔に、思わずぞくりと背筋が粟立った。 - 106124/05/10(金) 23:00:47
と、まあそんな事があったね。その後?アタシらは向こうの隊長にメチャクチャどやされたよ。『訓練なのにウチの隊員に大怪我をさせるとは何事か』って。あの時のイヨは借りてきた猫みたいで面白かったね。
まあ、なんだかんだ楽しかったよ、あの時期は…SRTが廃校になるまでは、だけど。
え?イヨと会いたいか?そりゃまあ、久々に会いたい気持ちはあるけど…今何してんだろうね…ま、もし会えたら…良いスイーツ店教えてあげようかな、アタシは。 - 107124/05/10(金) 23:03:04
(好きなゲーム発表ドラゴンでFuRyuのゲーム全般って言おうとしたのを忘れてたという顔)
- 108124/05/11(土) 06:57:15
- 109part2の>>14024/05/11(土) 15:41:43
すげぇ…(語彙力消失)
腕折り事件、part1で「組み手」と言ってたから格闘訓練の時だと思っていたけど、模擬戦と来たかぁ…
……あれ? 花輪イヨも加治ユイカも、SRT生としての実戦経験は皆無でしたっけ?
(言及済みだったらごめんなさい) - 110二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 15:42:51
SRT時代のも面白かったぜ
長いことありがとう、すごい楽しめた - 111二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 00:14:04
- 112二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 10:04:47
- 113124/05/12(日) 10:33:38
イヨはSRT時代の事は何がどういう状況でどんな事が起きたかをろくに覚えてません。忘れっぽいというかあれってこうだったかなくらいの主観的な印象でしか覚えてなかったりします。ちなみにこのおまけで語っているTIGER2の記憶もそこまで正確ではありません。
この出来事を極めて正確に覚えているのはユイカのみですが初恋の記憶なのでまず語ろうとしません。記憶と齟齬がある事を指摘もしません。そういうとこだぞ。
実戦経験は一応ありますが細々とした感じです。イヨを爆弾みたいに落としたり投げ込んだりカタパルトで射出したりしてました。ユイカの方は他の隊員や隊長がそこら辺にセンサーなどを設置する事で位置を把握して戦果を挙げてました。
おぞましい締切がやってくる…許してくれ…許して…くれ…
- 114二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 22:19:30
- 115124/05/13(月) 08:10:04
- 116part2の>>14024/05/13(月) 14:02:04
- 117124/05/13(月) 15:12:24
- 118二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 15:52:55
今北産業
素晴らしいSSでした
笛の女引っ掛けて都合良く使うクズ女がしおり挟んでありそうだけどしおり多すぎてわからん……!
せめてどんな感じのタイトルなのか教えてくださいお願いします
セリフみたいな感じなのか、〜女とか、単純なこう…詩的なタイトルか(語彙力なくてすまない)なのかとかだけでいいので教えてくれよぉ…… - 119二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 23:31:06
ゅしほ
- 120二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 08:16:32
ほ
- 121124/05/14(火) 11:39:09
今日多分更新します、ダメそう(23時くらいまで音沙汰無し)だったら保守をお願いします
- 122124/05/14(火) 11:40:09
- 123二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 12:22:00
まってる♡
- 124二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 21:30:16
お待ちしております
- 125カリギュラODをやれ24/05/14(火) 21:32:55
私達の仕事は何でも屋としての物がほとんどだ。けど猫探しなんかはやった事も無いし当然ノウハウも持ち合わせていない。ユイカが突然猫の真似をしだした時は頭がおかしくなったのかと思って蹴っ飛ばしてしまった。
まあ、なんとか見つける事には成功したし、捕まえる事も出来た。猫以上のスピードで動けば簡単だ。しかしユイカには脳筋過ぎると評された。失敬な。
「今日は休日〜…」
今日は定休日。ヴァルキューレから指示が来たなら話は別だが。ユイカは事務所で寝ている。普段ならデートしようとか言ってくるが、昨日徹夜でゲームか何かをしていたようで朝には完全に伸びていた。一人の休日は久しぶりだ、少しばかりテンションが上がる。
「好き放題スイーツショップ巡るか…それとも銃でも漁るか…いっそ全部やっちゃうか…?」
一日完全フリーとなると色々と迷う。とりあえずまずはスイーツだ。甘いものが食べたい。そんな欲望に突き動かされるがままに最寄りの店に突っ込んだ。 - 126カリギュラ2をやれ24/05/14(火) 21:33:33
「いらっしゃいませ〜」
スイーツバイキング。それは悪魔の囁き。糖質の暴力!明日の体重計に乗る勇気のある者のみ挑むべし!
…とはいえ、私は太らない体質、というか脳と体がエネルギーを全部使い切っているようだ。燃費が悪いのか、それとも動き過ぎ、考え過ぎなのか。
「…」
自分の体を見下ろす。あの時期に比べればマシにはなったが、細い。不健康と言って差し支えない。胸に少しでも脂肪が行けばマシだろうか?そうでなくても出来れば健康的に太りたい。そんな事を考えながらひょいひょいと皿にスイーツを盛っていく…途中で誰かにぶつかりそうになる。
「おっと、すみません」
「お、お気になさらず…」
離れて見ると相当デカい。170後半はあろうか、とんでもない長身に大きな翼、危うくぶつかりかけた原因はあれか。それにしてもあの黒い制服、何処かで。 - 127124/05/14(火) 21:34:43
「ん」
思考の最中にスマホが震える。モモトークの通知、私達の担当者からだ。
『至急この地点に向かわれたし。』
救難信号だろうか、ここからそう距離も離れていない。五分もあれば行けそうだ。しかしいつも詳細を言ってくれない。たまに困る。
『了解、向かいます』
それだけ返信し、とりあえず店員に声をかける。
「「テイクアウトは出来ますか?」」
発言がさっきの人と被った。よく見るとスマホを片手に持っている。何か、私と同時に用事が出来たのだろうか。
まあそれはどうでもいいだろうし、さっさと行こう。行くべきだ。 - 128124/05/14(火) 21:35:29
「…あれ?」
さっきの全体的に黒い人が後ろから着いてきているような気がする。かなり遅いけど…それでも私と同じルートを辿っているような。
「もしかして同じ目的…?」
だとしたら、アレは誰で、何故私は呼び出されたのだろう、と考えた所で思い出す。あの黒い服は正義実現委員会の制服だ。と、なると、ヴァルキューレ単独では対処出来ない問題が発生しているのでは。
「待ってる暇は無いし先に行っておこう…」
銃の調子をスライドを引いたりして確かめつつ、急いで走った。 - 129124/05/14(火) 21:36:40
…私は、とある人を意識的に避けていた。いつかは訪れる事だとして、今では無いのでは、とも思う。だがもう仕方ない。
「救援に来てくれたのは貴方?」
何を隠そうシャーレの先生、その人。私があまり会いたくなかった人だ。噂だけは色々と聞こえてきたし、あまり良くないものもいくつか。だがキヴォトスには不可欠の人だとカンナ局長が言っていた気がする。
「ど、どうも…花輪、イヨ、です」
「私は──」
突然の爆発、先生を爆風から庇うように間に割り込んだ。
「シャ、シャーレの先生!ですよね!状況の説明をお願いします!」 - 130124/05/14(火) 21:37:28
先生曰く、偶然近くで揉め事が発生し、仲裁に入ろうとしたものの聞く耳を一切持たず、それどころか先生まで巻き込む勢いで被害が広がったらしい。しかも連絡一本で駆けつけてくれる生徒が近くにほとんどおらず、やむを得ず救援をヴァルキューレにも求めたのが更に偶然にも近くにいた人間である私に白羽の矢が立った、との事だ。
「多分まだ生徒が来てくれると思う、それまで持ち堪えられる?」
「ま、任せてください」
防衛戦は経験が少ない。先生は自分への流れ弾とかは気にしなくていいとは言うが、ヘイローの無い外の人間が流れ弾なんか喰らったら死ぬだろうに。
ただ、このシチュエーションには覚えがある。あの時は看板を使ったが…そうだ、これにしよう。路肩に停まっていたせいで無惨にも破壊された車のドアを引っぺがし、先生の前に突き刺して立てる。
「なっ!?」
「盾です、まあ、無いよりはマシかと」
さて、後は攻撃だ。 - 131124/05/14(火) 21:38:06
片方だけでも鎮圧、無力化すればもう片方は戦意を失ってくれるはず。一番近いのは…機械共だ。PMCか不良か…とにかくやっていこう。
横っ面に銃撃。怯んだ所に蹴り…やはり硬い。だが人間よりは柔らかい。ちょっと妙な話だが。
「ぐわああ!?」
吹っ飛んだそいつが周囲を巻き込む。手錠は持っていない。武器を破壊するか奪取していくか。吹っ飛ばす前に掴んで奪った銃のマガジンを抜いて即座に分解する。これで一丁。だがあと十数人。先は長い。
「イヨ!伏せて!」
先生の声、驚きよりも先に体が動き、その場で即座に匍匐の姿勢に移る。次の瞬間、ロケット弾が背中の上を通過した。
「危なかった…」
アレが直撃していれば数分は動けなくなっていただろう。その間に先生がやられてしまっていたかも。気を引き締めないと。 - 132124/05/14(火) 21:39:03
「さっき撃ってきた奴は…!」
向こうの奴らだ。あっちはヘルメット団か。こちらのロボット達に撃ってきたものが私に当たりかけたのだろう。無力化するにはこの銃では距離が遠い。弾数も心許ない。ユイカがいれば。
姿勢をクラウチングスタートに切り替え、足に力を込める。とにかく一刻も早くやらねば、砲火に晒され続けて倒れてしまいかねない。
「フッ!」
勢いよく走り出し、私の方を狙う奴に目掛けてドロップキック。立ち上がろうとしていた奴らにまた直撃、これで数人、いや銃を壊さないと。足元に転がったアサルトライフルを…
「そのまま!撃って!」
拾い上げて寝転がった姿勢のまま乱射する。トリガーが引けなくなるまでに何発かが誰かに直撃した。
糖分のおかげか、それとも先生の指示のおかげか、頭が冴えるような感覚がある。 - 133124/05/14(火) 21:40:10
立ち上がり、銃を投げつける。何人残っているだろうか、投げた銃が当たり、大きく怯んだ奴を────地響き。爆発によるものではない。まさか。
「下がって!ゴリアテが来た!」
ゴリアテ、戦車をも凌駕する戦闘能力を有する兵器。巨人の名を冠するに相応しい恐るべき存在だ。正面から戦った事は一切無い。しかも一人だけでは勝ち目は。主砲がこちらを狙っている。
「イヨ、逃げ──」
発射された砲弾の爆発が、視界を白く染め上げる。体が宙に浮き上がっていると気付いたのは少し後、いや、時間感覚がおかしい。アドレナリンか何かのおかげか。だが宙に浮いていては何も出来ない。せめて先生の方を確認しないと、無事だろうか。
なんだあの顔、ちょっと面白いな。いやそんな場合じゃなくて。無事だ、良かった。これから危なくなるかも知れないが。
「あぐっ!」
時間が止まった訳ではない。地面に受け身も取れずに叩きつけられ、全身の痛みが主張を激しくする。 - 134124/05/14(火) 21:40:48
痛い、流石に立ち上がれない。ゴリアテが目の前に来た。足を上げて…まさか、いやいやいやいや!
「じょ、冗談じゃ…」
ゴリアテの重量が…何tだか分からないが…思い切りのしかかってくる。腕に力を込め、潰されるのだけはなんとか回避する、が、このままでは保たない、ヤバい。本当にヤバい。
「じ、死゛ぬ…」
コンクリートの地面に体がめり込んでいく。奥歯が砕けようかという程に噛み締め、耐える。恐らく顔が真っ赤を通り越して真っ青か土気色になっているだろう。先生の声が聞こえた気がするが、意識をそちらに向けている余裕が無い。
「う゛う゛う゛う゛!!」
ダメだ、もう。潰れ、て - 135124/05/14(火) 21:41:57
タァン、と、大きな銃声が聞こえた。その瞬間、ゴリアテの力が弱まった。好機。
「うるぁあああああ!!!!」
動くようになった足を使って跳ね上げ、ゴリアテの体を引っくり返す。全身の激痛がより増したが、助かった。後ろを見る。
「お怪我はありませんか」
さっきの、正義実現委員会の人だ。やはり同じ目的だったのか。まだ立ち上がれないので差し伸べられようとした手をジェスチャーで止める。
「た、助かり、ました…」
「よく持ち堪えてくれました、後は私達に」
見れば、他にも何人か来ていた。後は任せた方が良いだろう。ゆっくり目を閉じ──誰かに体が持ち上げられる。
「えっ」
「死体…いえ、負傷者は私が」
「…お願いします」
何が何だか分からないまま、私はいつの間にか来ていた救急車に投げ込まれた。 - 136124/05/14(火) 21:43:25
あれよあれよと言う間に気付けば何処かの医務室だった。あの人…セナさんに適切な処置は受けたが、何度か死体と呼び間違えられた気がする。死んでないんだけどな。
「大丈夫だった?」
そして先生がお見舞いに来てくれた。大丈夫かどうかで言えばあまり大丈夫ではない。大人しく見えるのはただ、動きたくない程度に全身が痛いからだ。
「一応、生きてます」
「ごめん、私のせいで…」
辛そうな顔をされても困る。人助けは私のライフワークだ。その過程で何が起きようとも私の責任だ。例えヴァルキューレからの指示でもそれは変わらない。
そんな事を言ったら先生が、
「でも、あの場で責任を持たないといけないのは私。だから貴方の怪我は私のせい…埋め合わせをさせて欲しいんだけど、良い?」
なんて言うものだから。
「じゃ、じゃあ、スイーツ、一緒に食べに行きません?」
これでチャラにしよう。 - 137124/05/14(火) 21:44:43
「うぷ…」
先生が顔を青くする。大人の胃腸は弱いと聞いた事はあるが、まさかこれ程とは。生クリームがキツかったのかも。
「うちのイヨが世話になったお礼ですからもっと食べてくださいよ〜?」
ユイカは目が笑っていない。ここは私が持つと言ったのはこの為か。
紅茶を啜りながら先生の青い顔を見る。なんか脂汗まで出してるけど大丈夫だろうか。
「まだホールケーキは半分も残ってるんですから、ね?」
それを聞いて先生の顔が更に青くなる。可哀想に。それを横目にしつつとりあえず私はモンブランを頂こう。ちょっと楽しい時間になりそうだ。 - 138124/05/14(火) 21:46:47
エレン!後日談を書いたぞ!手抜きだが…これで良かったのか!?これで救われるのか!?
どうして進捗が進んでないんだ… - 139part2の>>14024/05/15(水) 00:26:02
- 140124/05/15(水) 08:24:40
- 141124/05/15(水) 18:58:14
- 142part2の>>14024/05/15(水) 21:46:10
- 143124/05/16(木) 09:01:39
- 144124/05/16(木) 20:49:50
ようやく解放される…
- 145二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 20:50:04
保守
- 146二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 23:35:03
- 147二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 08:24:55
保守
- 148124/05/17(金) 19:31:59
- 149二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 07:20:25
お疲れ様でした
- 150part2の>>14024/05/18(土) 17:20:09
- 151124/05/18(土) 22:19:08
ユイカは他人が傷つくのを見るのは好きですが自分の耐久性は低めです。感情移入しながらやっているので報われない終わり方をすると低い耐久性が災いして結構なダメージを受けます。
今のところ友人、というのはイヨは別にどういう関係になろうととりあえず隣にいてくれれば良いと思っていますが、ユイカは友人ではあまり満足出来ないからですね。しかし色々あったので関係の進展や変化に対して及び腰です。イヨの事は変わらず好きなままではありますが、悲しい事に勇気が足りません。少し踏み出せばもしかするともしかするかも知れません。いやまあ殴られる可能性もありますが。もしそうなった場合ユイカは再起不能に陥ります。
- 152二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 09:42:50
楽しかったです。ありがとうございました。
- 153part2の>>14024/05/19(日) 19:41:02
予想外な所からほっこりさせられたなぁ……
ひとまず質問は以上です、ありがとうございました。