- 1太宰お猿22/01/30(日) 14:57:31
キャプテン・マッスルは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の宮沢鬼龍を除かなければならぬと決意した。キャプテン・マッスルには政治がわからぬ。キャプテン・マッスルは、デス・ゲームの管理人である。筋肉を見せつけ、龍星の心臓を求め暮して来た。けれども邪悪に対しては、猿一倍に敏感であった。
きょう未明キャプテン・マッスルは家を出発し、野を越え山越え、10キロはなれた此の東京の市にやって来た。キャプテン・マッスルには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。
この妹は、街の或る律気なマネモブを近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。キャプテン・マッスルは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。
先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。死神医療チームである。今は此の東京の市で、医者をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。 - 2二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 14:59:29
なにっキャプテン・マッスルと死神医療チームに接点がないっ
- 3太宰お猿22/01/30(日) 15:00:17
歩いているうちにキャプテン・マッスルは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなキャプテン・マッスルも、だんだん不安になって来た。
路で逢った若い格闘家をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。若い格闘家は、首を振って答えなかった。
しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。キャプテン・マッスルは筋肉で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。 - 4二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:02:25
>キャプテン・マッスルは、デス・ゲームの管理人である。
お前も邪悪サイドの人間じゃねえかよ えーーーっ
- 5太宰お猿22/01/30(日) 15:04:28
「鬼龍様は、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんのマネモブを殺したのか。」
「はい、はじめは鬼龍様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」
「おどろいた。鬼龍は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば廊下を練り歩かされて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」 - 6二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:05:00
太宰お猿で今年一番笑ったんだよね
- 7太宰お猿22/01/30(日) 15:07:52
聞いて、キャプテン・マッスルは激怒した。「呆れた王だ。生かして置けぬ。」
キャプテン・マッスルは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。調べられて、キャプテン・マッスルの懐中からはトダーが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。キャプテン・マッスルは、鬼龍の前に引き出された。
「このトダーで何をするつもりであったか。言え!」暴君 宮沢・鬼龍は静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。その男の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「私はキャプテン・マッスルだあっ 市を悪魔の手から救うのだ。」
とキャプテン・マッスルは悪びれずに答えた。 - 8太宰お猿22/01/30(日) 15:11:17
「おまえがか?」鬼龍は、憫笑した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、俺の孤独がわからぬ。」
「言うな!」とキャプテン・マッスルは、いきり立って反駁した。「人のハートを疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。お前は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、俺に教えてくれたのは、おまえたちだ。蛆虫の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりだ。信じては、ならぬ。」鬼龍は落着いて呟き、溜息をついた。 - 9二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:14:39
トダーを放てっ すれば倒せると考えられる
- 10太宰お猿22/01/30(日) 15:14:45
「俺だって、平和を望んでいるのだぜ。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為かあっ。」こんどはキャプテン・マッスルが嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」
「それジョークか?面白いことを言うなぁこの蛆虫は。」鬼龍は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。俺には、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。
おまえだって、いまに、磔になってから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。
「ああ、お前は悧巧だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」 - 11太宰お猿22/01/30(日) 15:17:58
と言いかけて、キャプテン・マッスルは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は街で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴君は、嗄れた声で低く笑った。「とんでもない嘘を言うな。逃がした蛆虫が帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」キャプテン・マッスルは必死で言い張った。「私は約束を撤回しません。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市に死神医療チームという医者がいます。私の無二の友人達だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人達をぶちのめして下さい。たのむ、そうして下さい。」 - 12太宰お猿22/01/30(日) 15:21:23
それを聞いて鬼龍は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。生意気なジョークを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、俺は悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。
「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その死神医療チームを、殺 すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なにっ 何をおっしゃる。」
「ははは。命が大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」 - 13二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:24:04
一応どちらもマフマドベコフの配下という共通点はあるんだ
- 14太宰お猿22/01/30(日) 15:24:51
キャプテン・マッスルは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。
竹馬の友、死神医療チームは、深夜、王城に召された。
暴君 宮沢・鬼龍の面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。キャプテン・マッスルは、友に一切の事情を語った。
死神医療チームは無言で首肯き、キャプテン・マッスルをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。死神医療チームは、縄打たれた。キャプテン・マッスルは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。 - 15二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:25:16
逃がした蛆虫はハエになって帰ってくるのん
- 16二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:25:51
王家揃ってマネモブなこの国は終わりだと考えられる
- 17二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:28:02
幼い妹とか猿先生が書いたら絶対猿空間送りなんだよね 酷くない?
- 18太宰お猿22/01/30(日) 15:30:02
キャプテン・マッスルはその夜、一睡もせず10キロの路を急ぎに急いで、街へ到着したのは、翌る日の午前、陽は既に高く昇って、住民たちは野に出て仕事をはじめていた。キャプテン・マッスルの十六の妹も、きょうは兄の代りにデス・ゲームの管理人をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。
「なんでも無い。」キャプテン・マッスルは無理に笑おうと努めた。「東京に用事を残して来た。またすぐ東京に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
妹は頬をあからめた。
「うれしいか。綺麗な衣裳も、スペシャル・ライスも買って来た。さあ、これから行って、街の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。今までの日時は撤回したと」 - 19二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:31:38
- 20二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:31:56
ぶちのめしてくださいにさりげなくランクダウンさせてるのを許さない弱きもの
- 21二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:34:01
メロスが猿空間送りにされたんスけど…いいんスかこれ
- 22太宰お猿22/01/30(日) 15:36:04
- 23二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:39:23
- 24太宰お猿22/01/30(日) 15:40:16
夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎・新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。
祝宴に列席していた街人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺え、陽気に歌をうたい、手を拍うった。
キャプテン・マッスルも、満面に喜色を湛え、しばらくは、鬼龍とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。 - 25二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:43:42
- 26太宰お猿22/01/30(日) 15:44:38
キャプテン・マッスルは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分の筋肉は、自分のものでは無い。ままならぬ事である。キャプテン・マッスルは、弱き心に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図・愚図とどまっていたかった。キャプテン・マッスルほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。
今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、
「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに東京に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を利用する事と、それから、約束を撤回する事だ。おまえも、それは、知っているな。亭主との間に、作った約束を撤回してはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い猿なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」 - 27二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:44:52
兄妹揃ってデスゲームの管理人な時点で一族まとめて処刑すべきだと思うんスけど…いいんスかコレ
- 28二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:47:17
- 29太宰お猿22/01/30(日) 15:49:23
花嫁は、夢見心地で首肯いた。キャプテン・マッスルは、それから花婿の肩をたたいて、
「仕度の無いのはお互さまだ。私の家にも、宝といっては、妹と筋肉だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、キャプテン・マッスルの弟になったことを誇ってくれ。」
花婿は揉み手して、てれていた。キャプテン・マッスルは笑ってマネモブたちにも会釈して、宴席から立ち去り、小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。 - 30太宰お猿22/01/30(日) 15:53:03
眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。キャプテン・マッスルは跳ね起き、なにっ、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの男に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って廊下を練り歩いてやる。キャプテン・マッスルは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、キャプテン・マッスルは、ぶるんと筋肉を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。
私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだあっ。身代りの友を救う為に走るのだあっ。王の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだあっ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。自分の名誉を守れ。さらば、ふるさと。キャプテン・マッスルは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えい、むん!と大声挙げて弱き身を叱りながら走った。 - 31二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:55:24
- 32二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:55:38
お…おい あれを見ろ
死神医療チームが待機してやがる
日没が来たらすぐに首を刎ねるために - 33二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:57:04
- 34太宰お猿22/01/30(日) 15:57:11
街を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣街に着いた頃には、雨も止み、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。キャプテン・マッスルは筋肉の汗をタオルで拭き、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。
妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気さを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。
ぶらぶら歩いて3キロ程行き、そろそろ10キロの半ばに到達した頃、降って湧いた災難、キャプテン・マッスルの足は、はたと、とまった。 - 35二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:59:42
突然えい、えい、むん!とか出てきたんだけどいいんスかこれ
- 36二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:00:14
マネモブはカテゴリ無用だろ
- 37太宰お猿22/01/30(日) 16:00:30
見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流滔々と下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵に橋桁を跳ね飛ばしていた。
彼は「うああああ!」と叫び、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟は残らず浪に浚われて影なく、渡守りの姿も見えない。
流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。キャプテン・マッスルは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウ・スに手を挙げて哀願した。 - 38太宰お猿22/01/30(日) 16:02:49
「ああ、鎮めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」
濁流は、キャプテン・マッスルの筋肉をせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はキャプテン・マッスルも覚悟した。 - 39二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:03:50
う あ あ あ あ(万年筆書き文字)
- 40太宰お猿22/01/30(日) 16:05:34
泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と筋肉の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。キャプテン・マッスルは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹のコモドドラゴンのようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。
満身の力を筋肉にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の猿の子の姿には、ゼウ・スも哀れと思ったか、ついに憐愍を垂れてくれた。
押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。 - 41太宰お猿22/01/30(日) 16:08:41
ありがたい。キャプテン・マッスルは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の“ドラゴン・ラッシュ“……野蛮人達が躍り出た。
- 42太宰お猿22/01/30(日) 16:09:58
「待て。」
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに城へ行かなければならぬ。放せ。」
「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」
「私には心臓の他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」
「その、いのちが欲しいのだ。…5000万ドルのためにな」
「さては、鬼龍の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」 - 43二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:10:58
なにっ!キャプテン・マッスルが利用した野蛮人が敵にっ!
- 44二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:11:38
この野蛮人達の目的は…!?
- 45二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:13:35
鬼龍の稼いだ額の10%とは気前がいいっスね
- 46太宰お猿22/01/30(日) 16:15:25
- 47二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:17:23
ポージングとる余裕はあるんスね…
- 48太宰お猿22/01/30(日) 16:20:00
ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、野蛮人を三人も撃ち倒し韋駄天、ここまで突破して来たキャプテン・マッスルよ。真のマネモブ、キャプテン・マッスルよ。
今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは失望したよ。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。
おまえは、稀代の不信の人間、まさしく鬼龍の思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎なえて、もはや蛆虫ほどにも前進かなわぬ。
路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、猿にお似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。 - 49太宰お猿22/01/30(日) 16:24:50
私は、これほど努力したのだ。約束を撤回する心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の大胸筋を截ち割って、真紅のハートをお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこのバースト・ハートを見せてやりたい。
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺いた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。
ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。死神医療チームよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い筋肉に宿したことは無かった。 - 50二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:25:06
- 51二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:26:50
- 52太宰お猿22/01/30(日) 16:27:37
いまだって、君達は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、死神医療チーム。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。
友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。死神医療チーム、私は走ったのだ。君達を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ!
私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。野蛮人の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。 - 53二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:27:54
原作もそうだけど、野垂れ死にそうなのに随分頭が回ってるのに驚くんだよね。
- 54太宰お猿22/01/30(日) 16:30:32
鬼龍は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は鬼龍の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は鬼龍の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。鬼龍は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。マネモブ以下の、不名誉の人種だ。死神医療チームよ、私も死ぬぞ。君達と一緒に死なせてくれ。君達だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか?
- 55二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:32:06
マネモブ以下の不名誉な人間
ククク…酷い言われ様だな
まあ事実だから仕方ないけど - 56太宰お猿22/01/30(日) 16:34:08
ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。街には私の家が在る。デス・ゲームもある。妹夫婦は、まさか私を家から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、金だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが猿世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。
ふと耳に、潺々、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々と、何か小さく囁きながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにキャプテン・マッスルは身をかがめた。水を両手で掬って、一くち飲んだ。
ほう……と長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける…行こう。 - 57太宰お猿22/01/30(日) 16:36:55
筋肉の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行の希望である。わが身を殺 して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。
私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れっ キャプテン・マッスル。 - 58太宰お猿22/01/30(日) 16:40:06
私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。筋肉が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。キャプテン・マッスル、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真のマネモブだ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウ・スよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。
路行く人を押しのけ、跳ねとばし、キャプテン・マッスルは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴のマネモブたちを仰天させ、犬を蹴とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人と颯っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。 - 59二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:42:07
- 60二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:43:32
犬「はあ?何蹴ってんだキャップ それおかしいだろ」
- 61太宰お猿22/01/30(日) 16:43:42
「いまごろは、あの男達も、廊下を練り歩いているよ。」ああ、その男、その男達のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げっキャプテン・マッスル。おくれてはならぬ。愛と筋肉の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。
キャプテン・マッスルは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、東京タワーが見える。東京タワーは、夕陽を受けてきらきら光っている。
「ああ、キャプテン・マッスル様。」うめくような声が、風と共に聞えた。
「誰だあっ。」キャプテン・マッスルは走りながら尋ねた。 - 62二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:44:27
>犬を蹴とばし(原文ママ)
に一番戸惑っているのは俺なんだよね
- 63太宰お猿22/01/30(日) 16:47:47
- 64二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:49:15
関係逆転してるじゃねえかよえーっ
- 65二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:50:00
マフマドと医療チームが立場逆転してて草なんだ
- 66太宰お猿22/01/30(日) 16:50:44
「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。鬼龍が、さんざんあの方を愚弄しても、キャプテン・マッスルは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」
「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い!マフマドベコフ。」
「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」 - 67二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 16:52:48
- 68太宰お猿22/01/30(日) 16:54:12
言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、キャプテン・マッスルは走った。キャプテン・マッスルの頭はからっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、キャプテン・マッスルは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。
「待て。その人達を殺してはならぬ。私はキャプテン・マッスルだあっ。約束のとおり、いま、帰って来たっ。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれて嗄れた声が幽かに出たばかり、マネモブは、ひとりとして彼の到着に気がつかない。 - 69太宰お猿22/01/30(日) 16:57:49
すでに廊下を練り歩く準備がされ、縄を打たれた死神医療チームは、徐々に練り歩かされてゆく。キャプテン・マッスルはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだようにマネモブを掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、刑吏!殺されるのは、私だ、キャプテン・マッスルだあっ。彼等を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに廊下に上り、練り歩いている友の両足に、齧かじりついた。マネモブは、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。死神の医療チームの縄は、ほどかれたのである。 - 70太宰お猿22/01/30(日) 17:01:53
「死神医療チーム。」キャプテン・マッスルは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
死神医療チームは、すべてを察した様子で首肯き、廊下一ぱいに鳴り響くほど音高くキャプテン・マッスルの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑ほほえみ、
「キャプテン・マッスル、私達を殴れ。同じくらい音高く私達の頬を殴れ。私達はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
キャプテン・マッスルは筋肉に唸りをつけて死神医療チームの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」三人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。 - 71太宰お猿22/01/30(日) 17:03:42
マネモブの中からも、歔欷の声が聞えた。暴君 宮沢・鬼龍は、マネモブの背後から三人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、俺の心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、俺をも仲間に入れてくれないか。どうか、俺の願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」 - 72二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:03:57
まだ間に合っただけでキャップの処刑はこれからやん
- 73二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:04:47
- 74二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:05:24
医療チームは二人で一つだと考えられる
- 75太宰お猿22/01/30(日) 17:06:07
どっとマネモブの間に、歓声が起った。
「万歳、鬼龍万歳。」
ひとりの少女が、緋のマントをキャプテン・マッスルに捧げた。キャプテン・マッスルは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「キャプテン・マッスル、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、キャプテン・マッスルの筋肉を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
勇者は、ひどく赤面した。 - 76二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:06:19
- 77二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:06:59
パンチの衝撃波で猿空間送りにされたと考えられる
- 78二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:07:17
ふうん キャプマスが処刑したと言うことか
- 79二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:09:00
怒らないで下さいね
廊下を練り歩いて処刑なんてバカみたいじゃないですか - 80二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:09:46
- 81二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:11:28
鬼龍が王の国の時点で変な薬決めてる連中しかいないんだ
悔しいだろうが仕方ないんだ - 82二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:14:47
名作タフ・スレだあっ!伸ばせ伸ばせ!
- 83太宰お猿22/01/30(日) 17:18:55
- 84二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:19:32
コテハンで愚弄するマネモブの鏡
- 85二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:44:44
貴様ッ 太宰先生を侮辱する気かっ
- 86二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:46:01
- 87二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:49:08
ぶっちゃけそんなことはどうでもいいんだ。タフで遊べればなあっ
- 88二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:52:46
猿先生リスペクトと考えればマイペンライ!
- 89二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 17:54:02
カラーだから見づらい
Wordファイルにして - 90二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 18:29:24
練り歩くがほぼほぼ真の意味で使われてて戸惑っているのは俺なんだよね
- 91二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 21:25:00
(古伝説と、シルレルの詩から。)
- 92二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 23:32:15
このレスで死ぬほど笑ってるのは俺なんだよね
- 93二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 03:08:05
なにっ名作
- 94二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 03:21:18
まあ死神医療チームは今週荼毘に伏されたんやけどなブヘヘヘ
- 95二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 08:57:40
- 96二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 09:16:28
- 97二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 15:16:18
妹がまだ16ってことは、キャプマスはああ見えて結構若いんスかね?
- 98二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 15:17:47
メロスの友でもあるんだ。死神医療チームは顔が広いんだ、人望があるんだ。
- 99二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 17:53:22
- 100二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 18:11:22
こんなに猿展開に溢れる内容なのに原文が名作
なのは伝わるんだよね 凄くない?
もちろん改変後もメチャクチャ名作 - 101二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 21:53:56
100年後まで残すべき名作だと考えられる
- 102二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:47:22
駆込み訴フも作るべきだと考えられる
- 103二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 00:17:36
マネモブって奴は結構インテリだな。
- 104二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 01:46:23
- 105二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 01:53:42
- 106二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 10:01:06
ふぅん
世界名タフ劇場というわけか - 107二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 10:02:49
- 108二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 10:44:53
最強愛国者はモンキー・ファクトリーから生まれる
- 109二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 13:53:53
マネモブのあにまん民なのに文豪なんだよね 凄くない?
- 110二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 17:25:57
しゃあっ!名・作!
- 111二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 23:23:47
先生がマネモブとかモンキーインプリンティング不可避だろ
- 112二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 07:54:30
未来を宝が本当の猿に育つんだ。日本が強まるんだ。
- 113二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 16:49:38
- 114二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 17:26:15
このレスは削除されています
- 115二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 19:48:12
このレスは削除されています
- 116二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 22:21:01
しゃあっ!続編・希望!
- 117二次元好きの匿名さん22/02/03(木) 07:55:55
これで国は平和になったんスかね?
- 118二次元好きの匿名さん22/02/03(木) 12:51:38
- 119二次元好きの匿名さん22/02/03(木) 15:23:13
- 120二次元好きの匿名さん22/02/03(木) 15:23:38
2年前の鬼龍に一体何が…
- 121二次元好きの匿名さん22/02/03(木) 15:25:21
この手の改変って絶対粗が出るのにそれすら猿展開でカバーできるんだよね
凄くない?