セリザワ博士の弟子です【クロス】

  • 1二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:08:02

    「地下世界への降下許可は得ています。通して下さい」

    「ええ。歓迎するわ、Dr.……ガム?」
    
「日本語で“私の夢”という意味です。そのまま呼んで頂ければ」
    
「良い名前ね。よろしく、ガム」

    

アイリーン博士と握手を交わし、乗り込んだ飛行船“HEAV”。モナーク研究員として初めて乗り込む最前線に、僕は少なからず高揚していた。

    恩師が焦がれた神、その起源が眠る新世界。今から目にするのは、人智も及ばぬ未踏領域なのだ。

    

「おー博士、そのチャイニーズは誰だ?なんだかアンタ、HEAVに乗る時いつも違う男と一緒だよな」

    「悪い冗談はやめてバーニー。貴方を含め誰ともそんな仲じゃないし、彼は日本人だし、ジアの前よ」
    
「そりゃすまん。ところでだが俺はバーニー・ヘイズ、“大怪獣の真実”は聞いたかいジャパニーズ?」
    
「よろしくバーニーさん、僕の名前はガムです。すみませんがポッドキャストはやってなくて……」

    「そりゃ人生損してるな。帰ったら絶対聞け、モナークなんか目じゃない本質情報を随時プレゼンt」

    「それ以上喚いてたら地下突入中に放り出すぞ」
    
「ソーリー」

    「はは……」



    パイロットに嗜められた、後ろの座席に座る陽気な黒人──バーニーさんに会釈してから着席。同時に横からの視線に気付く。
じっと見つめてくるのは1人の少女。

  • 2二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:11:55

    「えぇと……《こんにちは、ジア。僕はガム・タカヤマです》」
    「……」
    「…………?」
    「《ごめんなさい。私はジア・アンドリューズよ》」

    急拵えの手話に間違いがあったかとまごついていたら、返ってきた応答に思わず安堵。顔合わせも済んだところで、いよいよHEAVはその脚を地面から浮かせた。海が渦を巻いて大口を開く。目指すは地の底、巨獣ひしめき人智の及ばぬ未踏の世界!

    「突入するわよ!資機材の保護は充分かしら?」
    「僕の粒子加速器は真っ平らにされても起動できますよ!」
    「それより自分の心配をしとけ!“舌を呑み込む”なよ?!」
    「何かのスラングですか?」
    「経験談dわぁぁァアア〜〜〜ッッ!?!」

    そうして始まる急降下、冒険への第一歩に心と身体が震え上がる。負けるものかと、僕はただ行先に待つ大地の輝きを見つめ───

    ───その日。

    「何だ、アラート……!?」
    「おいおい、積載装置が勝手に稼働してるぞ!触ったか!?」
    「まさか地磁気変位に干渉されて…いや、この特殊空間の影響か?!」

    僕達は。

    「オイオイオイ、まさか爆発するなんて言わないよな?言わないよなブラザー!!?」
    「そんなことはあり得ませんが、もしかすると意識が粒子加速に乗って変なとこに飛ばされちゃうかも───」
    「変なとこってつまりどk───」


    タ イ タ ン
    光の巨人を、見た。

  • 3二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:20:17

    熱気。
    目が覚める。

    「《大丈夫?》」
    「え、あ、うん」

    手話で返すのも忘れ、心配げに覗き込んできたジアちゃんにそう頷く。彼女以外でまず目に入ったのは逆さの大地。果てなく頭上に広がり、けれどそこに落ちていくなんて事は無い。
    そうか、ここが地下世界……!

    ……なの?

    「《多分違う。何か違う》」
    「《なんで分かるの?》」
    「《コングがいない。存在を感じないの》」

    恐らくイーウィス族特有のテレパシー能力。それによって得た知見を精一杯僕に伝えようと、ジアちゃんは懸命に手話してくれた。
    その事に感謝で応じながら、ふらつく足で立ち上がる。すると次に、話し合う男女の姿が見えた。

    「駄目。HEAVはどこにも無いし、本部とも連絡つかないわ」
    「そもそも此処どこだよ!?何回か潜らせて貰ってるけど、ポータル付近にこんな場所無かったぞ!」
    「そこなのよ。今まで探査してきたどのエリアの座標とも一致しないの、訳がわからないわ」
    「嘘だろ、彷徨った挙句木に食われるなんて真っ平ごめん……あっジャパニーズ!起きたなら説明しろぉ、お前の機械の所為なんだからなっ!!」
    「あっ待ちなさい!」

    掴むや否やガクガクと揺さぶり。そこまで動揺させてしまった事に申し訳無く思いながらも、自分なりの分析を交えて説明を試みる。

    「すすすすみませんんんん。たたた多分ですけど、今僕達が置かれてる状況は夢みたいなものでアッババババ」
    「夢!?これが夢だと!言い訳にしたってそんな嘘が通じる訳無ぇだろこのこのこのッ」
    「バーニー落ち着いてってば!……で、ドクターガム。“夢”とは言っても私たちの感触はしっかり存在してるわ、どういう事なの?」
    「あっはい。まず僕が今回HEAVに積んできたのは一種の粒子加速器なんですけど、これが起動すると接続されてる有機体の“情報”も加速するんです」

  • 4二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:28:14

    有機体の情報、つまり生命が持つ意識。相対性理論により、この世の存在は高い速度を得れば得る程に時間が遅くなる……が、実数の質量を持つ物は絶対に高速を超えられない。
    だが、質量を持たない概念──エネルギー化された意識なら?

    「地球の核の近くで、その磁場に乗せて被験者である僕の意識を乗せて粒子加速器を起動。星が辿ってきた歴史を追体験するつもりでした」
    「……つまり、どゆこと?」
    「なるほど。つまりガム、貴方は“地球の記憶”を辿るつもりだったのね」
    「そうです!僕は知りたかったんです、地球に最初のタイタンが生まれたその日の事を!」

    タイタンはこの星の支配者。自然を司り星の運行を担う巨神、それこそが彼らの正体。恩師が掲げたその理論は現在進行形で実証が進み、しかし彼らがなぜ星の運命を担うに至ったのかは未だ明らかになっていない。

    僕は知りたかった。如何にしてタイタンがこの星に産み落とされたのか。
    僕は知りたかった。恩師が命を捧げた王、その正体は何なのか。

    ……知りたかった。彼らに踏み潰されてきた命の、その死の原因を。

  • 5二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:29:41

    藤宮もおるんかな

  • 6二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:32:52

    「つまり、大きな視点で見れば僕の実験はこの時点で大成功を収めました。地球深部の磁場に乗れば意識を過去に飛ばせる、歴史をこの目で見る事ができると!」
    「で、俺達はそれにまんまと巻き込まれたと」
    「……すみません。いや、本当に」

    巻き込んでしまった彼らに対し、せめてもの誠意で頭を下げる。けれどバーニーさんは一転、軽快に笑って言った。

    「良いよ良いよ、安心したから。要は俺が今見て感じてるのはマジで夢みたいなモンで、身体は現代に残されてんだろ?つまり目覚めりゃ万事解決って訳だ!」
    「ここにいないのを見るに、運転手だけは巻き込まれずに済んだみたいだしね。彼が無事にHEAVを安定させてる事を祈りましょう」
    「あっ……その、えっとですね」

    続くアイリーン博士の安堵。それに対し注釈を加えようとして、でも僕の口は言葉を紡げなかった。
    何故なら、地響き。

    「これは……?」
    「ジア、どうしたの!?」

    アイリーン博士の声に目を向ければ、そこには地面に手をついて震える少女。何かを感じ取ったのか、立ち上がり彼女はジェスチャーを突き付けてくる。

    「《大地が揺れてる》」

    それはSOSか、それとも。

    「《風が震えてる》」

    断末魔か。

    「《地球が、泣いてる》」

    その瞬間だった。僕らが立つ断崖絶壁、そこから見下ろせる地平線が“裏返った”のは。
    出てきたのは夥しい数の“龍”だ。

  • 7二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:34:51

    「えっ……なにっ、なんだぁっ!?」
    「新種、いや古代のタイタン!最盛期にはこんな種がこれ程まで繁栄してたのか!」
    「ジア、下がって!!」
    「《……!》」

    古代の地球に行くんだ、これぐらいの想定はしていた。けれど引っ掛かるのは《地球が泣いてる》というジアちゃんの言葉。地球を統べるタイタンが暴れるなら、地球にとっても不都合は無い筈。
    ならば何故か。その答えは幸か不幸か、向こうから姿を現した。

    「……嘘だろ」

    彼方に黄金。降り立つ雷嵐。それで全ての説明がついた。

    「ギド、ラ」

    時を同じくし、遠くのポータルより青い光。高速で着弾したそれはすぐに立ち上がり、黄金へ吼えた。

    「ゴジラ……!」

    遥か過去。
    氷河期より前。
    ゴジラとギドラの、最初の戦争。

    自分達がこれから目にするのは、その一幕なのだ。

  • 8二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:38:14

    先手を打ったのはゴジラだった。
    蒼の閃光が大地を裂き、ギドラ率いる敵タイタン群に着弾。強烈な爆発を引き起こし、その熱風が僕らにも襲い掛かる!

    「伏せてっ!」
    「これ大丈夫なのかよぉ!?」
    「言い遅れましたが、万が一絶命したらそのまま精神も死にます!現実の肉体も脳死状態になるので絶対に死亡しないでください!!」
    「全然大丈夫じゃねぇじゃんかぁぁぁ?!?」

    岩陰に退避する間にも事態は動き、次に仕掛けたのはギドラ。半数を消し飛ばされた群れに対し号令──恐らくはアルファコールを掛け、強制的にゴジラに差し向ける。彼らに逆らう術は無く、連携の欠片も無い有様で各々が本来の王に歯向かっていった。
    群の暴力が個のゴジラに襲い掛かり、しかし一挙手一投足で叩き飛ばされる有様。同胞をちぎっては投げ、その度ギドラに向けて放たれる咆哮に更なる怒りが乗る。
    でもギドラは一顧だにしない。ゴジラを度外視し、あらぬ方向へ進撃を再開し始めた。

    「奴はどこに向かってるんだ?ギドラにとってゴジラは殺したくて殺したくて仕方ない相手なんだろ、それを無視するって事は相当だぞ」
    「僕に聞かれても……」
    「ギドラが地下世界にまで侵攻してたなんて初発見よ。もしかすると、地核エネルギーを求めてここまで来たのかも」
    「……メカゴジラみたいに?」
    「メカゴジラみたいに」

    もしそうなら、とんでもない化け物が誕生してた筈だ。実際ギドラは慣れないメカゴジラの身体で、それでも地核エネルギーを得た事であれほど大暴れしたんだから。もし元のギドラの体でそれを得たのなら、ゴジラでも倒せない程の力を得ていた筈。
    逆説的に、そうはならなかった。きっとゴジラが事前に阻止したからこそ、ギドラは南極に封印されたんだ。

    「不味いぞ、もうゴジラは追いつけない!」

    でも、そうだったら、今僕たちが見ている景色は何だ?
    差し向けられた肉盾に阻まれ、ゴジラはギドラを追えていない。三首の龍は気ままに地底を蹂躙し、地核に至り得る箇所を探し続けている。
    モスラはいないのか。コング族は?他のタイタンの助力は無かったのか!?

    「掘り当てた……!」

    そして遂に、その時は来てしまった。

  • 9二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 21:47:34

    ゴジラの光と同じ、青のチェレンコフ光。ギドラの破壊した一角から遂に、その光が顔を出してしまう。
    食われる。地球が、ギドラに。
    本当にここからゴジラが逆転できるのか。それを信じられず、僕達は目を逸らした───

    ───ジアちゃんを除いて。

    「《大丈夫》」

    彼女は告げる。

    「《地球が、怒った》」

    星の意志を。

    噴き出す青い光が“紅”に染まったのは、その瞬間の事だった。
    赫い光が、食らいつこうとしたギドラを高く“殴り”飛ばしたのもその刹那の事だった。

    それは人の姿をしていた。
    けれど、人間と呼ぶにはあまりにも大き過ぎた。
    大きく、重く、力強く。
    何よりそれは、眩し過ぎた。

    それは正に、光の巨人だった。

    「……“ウルトラマン”」

    不意に浮かんだその名を口遊む。
    .         タイタン
    それがきっと、あの巨神の名なのだろうと。

  • 101◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/09(木) 21:57:01

    という訳でモンバス×ウルトラマンガイアの概念SSスレとなります。この前失敗した奴のリベンジです

    続きの書き込みは不定期になりますので、そこの所よろしく

    トリップは念の為


    >>5

    存在はしてますとだけ

  • 11二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 08:17:03

    おもしろ!! 続き期待の保守

  • 12二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 10:46:29

    ほうほう、面白いですな!

  • 13二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 11:10:16

    ダイナOPのフレーズ好き

  • 141◆63tEWD7TMg24/05/10(金) 20:13:40

    保守に感謝を。少ないですがちびちび上げていきます

  • 151◆63tEWD7TMg24/05/10(金) 20:15:24

    あれっちょっと待ってなんかトリップ変わってる?なんで?
    ごめん本人証明出来ないけど信じて

  • 161◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/10(金) 20:18:19

    「高山。ガイア理論は知っているか」
    「地球を一個の生命体として考える説ですよね。このご時世ですもん、そりゃ知ってますよ」

    ある日、芹沢先生はそう聞いてきた。サンフランシスコでの一件以降、世界各地でタイタンの動きが活発化し始めた報を読みながらの事だった。

    「なら、王権神授説は」
    「いえ政治の事はあんまり……字面からある程度予測はつきますが」

    全くジャンルの違う話に困惑するけれど、先生は至って真面目なようで。きっと彼の脳裏にはあのタイタンの面影が色濃く残っているのだろう。
    ゴジラという影が。

    「人類は長らく霊長として地上に君臨してきた。諸説こそあれど、その事実自体は特に否定要素も無いだろう」
    「……人類が自然を支配していたと?」
    「そうではない。が、一種の調停役として機能していた側面はあった筈だ」

    だが、と続けられる言葉。そこに憂いの色を見て、僕もまた顔を引き締める。

    「その権利が、人類自身が勝ち取った物ではなく……“神”から賜った物だとしたら?」
    「地球における神、それは地球自身かもしくは……タイタン」
    「人類は飽くまで委託されていただけ。いや、家の主人がいない間に居着いた盗人か?我々は神に何もかも明け渡すべきなのか……!?」
    「先生、落ち着いて下さい!」
    「………すまない。私はもう、人類の叡智すら誇りには思えないんだ」

    巨神達の激突を目の当たりにして、先生の心は弱っていた。僕にはどうする事も出来なかった。


    ────

  • 171◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/10(金) 20:20:23

    ────

    結論から言うと、僕の記憶は巨人の登場と同時に途絶えている。それはアイリーン博士達も同じ。
    気付けばHEAVの中に舞い戻っていて、そしてそのHEAVはコングの手の中にあった。外付けカメラを確認したところ、どうやらパイロットも気絶して落下していたところに駆け付けてくれたらしい。

    その後、僕は実験を中断して地上に帰還。地下突入中の機材暴走の原因や、あの時の光の巨人の正体を探るべく再び研究室に籠ることを選んだ。
    ……けれど、どちらも難航。不具合の温床は見つからず、巨人の文献も全く存在せず、疲れた合間に“大怪獣の真実”を聞くぐらいしか出来ない。

    『エイペックスはまたも悪事を企んでいる!タイタンに支配された地球に見切りをつけ、ごく少数の上級市民だけで宇宙脱出しようと企んでいるんだ。ゴジラが再び世界各地のリゾート地に現れ、威嚇行動を繰り返すのもその証拠!!』
    「陰謀論が過ぎるでしょバーナーさん……」

    ゴジラが活動を再開しているのは確かに事実、でもその実態は人類の生活圏を遠巻きに眺めて数度吠えてから去る程度に留まっている。現在モナークでは、彼の行動の意図を探るべく東奔西走中だったり。
    僕にもその仕事の一部が回ってきてるし、これもまた難解なんだよなぁ。キャスに協力を頼めるかなぁ……?

    「パパの馬鹿ァ!」
    「マディソン、待てッ!!」

    ふと聞こえてきた怒声の応酬。気になってドアを開けた瞬間、その目の前を少女が駆け抜けていった。

    「マークさん、今のってもしかして」
    「見苦しい所を見せてすまん……ああそうだよ、娘だ」

    疲れ果てた様子の先輩を労わりながら思いを馳せる。そうか、彼女がエマさんの……

  • 181◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/10(金) 20:35:25

    「もういい。また私達でやってやるわよ、ジョシュ!」

    パパはやっぱり分からず屋だ。前よりは聞く耳を持ってくれてるけど、それでもまだ頭が固い。ゴジラはいつだって地球の事を考えて動いてるのに、尻込みする理由がどこにあるの!?

    「えぇ…前の件で僕、君のお父さんに殺意向けられてるんだけど」
    「地球が滅んだらパパに殺される前に死ぬのよ?」
    「とほほ……」

    頼りないけど頼りになる相棒、ジョシュを今回もお供にする。目指すはエイペックス本社、ただし車ではなく電車だ。車借りれなかったし。

    「安心しなさい、今回は危ない橋を渡るつもりは無いから。私はお父さんを助けたいだけで、お父さんを困らせたい訳じゃないし」
    「あれっ。君そんな殊勝なキャラだっけ?」
    「ブン殴られたい?……流石に自覚したのよ。はっちゃけてる時の私、“ダメな時のママ”そっくりだって事」
    「Ah-Huh……」

    前回、メカゴジラの暴走に巻き込まれた時は怖かった。抱きしめてくれたお父さんが温かくて、そして一層叱られたのが効いた。もうあんな向こう見ずな真似はしない、必要に迫られない限り。

    「正攻法よ。アポだってとってあるんだから」
    「エイペックスに個人で?よく取れたね」
    「言っとくけどコネは使ってないわよ。快く応じてくれた親切な人がいたの」

    世の中捨てた物でもないわね、と相棒に見せたのは顔写真。これから会いに行くエイペックスの研究員、それもあのメカゴジラを作った奴とライバルだったらしい人だ。

    「ヒロヤ・フジミヤ。なかなかイケてる人でしょ?」
    「……何がイケメンだよ、こんな奴」
    「何よ急に拗ねちゃって」

    ───

    「蓮。お前は、今の俺を見てどう思う」

  • 191◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/10(金) 20:38:04

    異郷の墓に眠る同胞へ、彼は問う。

    「俺はお前とは違う。ゴジラを憎まないし、憎めない──抗えない」

    王へ身を捧げた父とは真逆、王を殺す方角へ舵を取った友。しかし彼は、そのどちらへも追随しなかった。
    .           ・・
    その手に握る光電子管の、青い輝きがそうさせたから。

    「……アイツにも、笑われてしまうだろうな」

    その声音に諦念を滲ませ、彼は踵を返す。祖国にて父と同じ墓に入る事を拒んだ友が、彼に言葉を返す事はついぞ無かった。

  • 201◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/10(金) 20:39:49

    トリップ云々は普通に自分の間違いが原因でした。お騒がせしました
    という訳で今回はここまで

  • 21二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 20:41:26

    モンバスで地球の意思が人間に答えてるのってセリザワはどう思うのだろう?

  • 22二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 20:44:49

    ガイアとアグルは地球の光だからタイタンでもおかしくないけど、光の国とかのウルトラマンは地球外=天から来てるしオリンピアンとか呼ばれるんだろうか

  • 23二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 22:06:57

    ブリッツブロッツみたいな根源的破滅招来体怪獣はでるのだろうか?

  • 241◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 10:02:18

    セルフ保守

    >>23

    多分出ません(無慈悲)

  • 251◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:27:23

    「隕石……ですか?」
    「ああ。太陽系外から地球に迫っている」

    出向してきた米軍人はそう言ったが、聞いた僕達に出来る事など多くは無い。各々で顔を見合わせてから次の言葉を待つ。

    「直径100mほどの大きさだ。そのまま大気圏に突入すれば、甚大な被害を齎すだろう」
    「……で、我々に何をしろと?」
    「ゴジラだ」

    要は、ゴジラがこの隕石にどう対応し得るのかを予測しろという事。それに対し一番早く口を開いたのは、当然というかゴジラの動向を専門として解析している同僚だった。

    「少し待って下さい。参考までに、隕石がいつどの方角から来るか聞いても?」
    「明後日、グリニッジ標準3時にオリオン座の方角から。恐らく東京付近へ」
    「あー……すみません、これ確実に気付いてますねゴジラ。最近の行動パターンを見るに、恐らく“迎撃場所を下見してる”かと」
    「えっ……!」

    つまり正午の東京に落ちてくる隕石を、ゴジラが迎え撃つと言う事。どうやってかなんて聞く余地も無い、地殻を貫く程の出力を放てる熱線だ。
    そんな物が隕石と激突したら、その熱量が都民の頭上に降り注ぐ事になる……!

    「米軍の力でなんとか出来ないんですか?事前にミサイルで軌道を逸らすとか!」
    「実の事を言えば、既に行って失敗しているのだ。異常な硬度と“軌道修正”によって…っ」
    .              ・・・
    「…そんな事が出来るのなんて、ギドラくらいだ」
    「まさか…?」

    ここにきて最悪の可能性、つまり外来タイタンである説さえ浮上し始めた。もしそうだとしたら地球全土がゴジラに与して戦わなければならない案件で、とてもじゃないが東京一つに構ってられない。避難してもらうしかない。
    ……今から?間に合うのか?

    「既に日本政府の協力は取り付けてある。在留米軍に応援を送り、自衛隊と連携して対応する事になるだろう。後は、」
    「ゴジラ次第と」

  • 261◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:29:30

    そこで話はおしまい。ミーティングを終え、各々が業務に取り掛かる。
    僕に出来る事は……無いのか?

    「………すみません!ちょっと待って下さい!」
    「どうした?まだ何かあるのかね」
    「“ファイター”の開発はどうなってるんですか!?アレなら宇宙空間だって飛べます、大気圏外で戦闘機による破壊を試みれる!」
    「何故君がファイターの事を?重大機密の筈だが」
    「リパルサーリフトの開発者は僕ですっ!」

    タイタンが跋扈する地上において、人類の安全保障は著しく脅かされている。例えタイタンの活動に正当性があっても、人類がそれに備えてはいけない理由にはならない筈だ。その一心で僕は、モナークを通じて米軍に技術供与をしていた。
    けれど軍の応答は芳しくなくて。

    「そうか、君が……しかしアレはまだ試作に入るか入らないかの段階だ。人を乗せて宇宙に飛ばせる代物ではない」
    「そんな!」
    「……すまない」

    今度こそ終わり。何も出来ず、何も成せず、指を咥えて眺める事しか許されない。

    「………間に合わなかったのか」

    ほぼ確定した故郷の破滅に。
    僕のしてきた事は、何一つ。

    (力が、欲しい)

    この運命を覆す力が。
    黄金の絶望すら殴り飛ばした、あの光のような……希望が。

    ふわりと、蝶が舞い降りたのはその時の事。

  • 271◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:37:13

    「え?」

    ヒラリヒラリと舞い遊ぶ羽は、人工物に占められたモナーク基地には相応しくない物。けれど目の前に確かに存在するそれは、僕を誘うように離れていく。
    その導きのままに歩き出し──気付けば、整備されたHEAVへ案内されていた。

    「……乗れって言うのかい」

    蝶は答えてくれない。不思議な事に、周りであくせく動く人達は僕達に気付きもしない。
    その様子を見回してから──覚悟を決めた。


    ───


    『●●●●●ーーーッ!!』
    「ありゃ紛れも無い威嚇行動だね。方向は……」
    「ドンピシャリだ。いよいよって具合だな」

    地上へ向けてドラミングするコング。それを見上げるトラッパーとネイサンへ一瞥してから、ジアを見た。
    彼女を迎えに来てくれた地下イーウィス族も。

    「《脅威が、近付いてる。お母さんも一緒に来て》」
    「《私にはやらなきゃいけない仕事があるの。また後で会いましょう》」
    「《ずっと一緒って言ったのに》」
    「《その約束を果たす為よ。貴方と私の、地上の故郷を守るの》」

    それを最後に、一族の護衛に目配せ。有機体の膜が閉ざされ、その向こうにジア達の姿は隠された。
    ……これで良い。少なくとも、隕石の影響は地上よりかは免れる筈だから。

  • 281◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:38:31

    「良い訳ないだろ。それは全てが終わってから出すべき結論だ」
    「どういう事かしら?」
    「安心するのはジアが気兼ねなく地上に来れるようにしてからにするべきって事だよ先生。サンダーグローブの調整も終わったぜ」

    来たる混沌に備え、コングの装備の点検の為に連れて来た2人。それが終わったようで。
    後は待ち構えるだけだ。逆に言えば、待つ事しか叶わない。

    「やれるだけやったんだ。後は土俵際でギリギリまで踏ん張るだけ、胸張ってやろう」
    「貴方ホント……臆病者だったのが嘘みたい」
    「バカ言うな、怖くて仕方がないって」
    「生きるも死ぬも時の運さ。ドーンと行こうぜドーンと」
    「「死にたくないから頑張ってるのよ(だぞ)!?」」

    ………無力でも、無力なりに。
    私達はただ、黙って滅ぼされる為だけに生まれて来たのではないのだから。

    そんな私の覚悟へ応えるように、コングは一際強くその胸を叩いてくれたのだった。

  • 291◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:49:05

    時は進む。事態が進む。
    当日朝、日本時間6時。ゴジラ、東京に上陸。厳戒態勢が敷かれ無人となったビル群を尻目に、悠々と都心を闊歩する。
    やがてその歩みが止まった。とある塔の真隣で。

    『……ッ!』
    「ゴジラ、東京タワーを破壊!以降その場に留まっていますっ」

    邪魔とでも言いたげに積み木の如く崩される、昭和の繁栄の象徴。軋みを上げて倒壊する鉄骨を踏み荒らし、ゴジラがその場で行ったのは“四股”であった。
    一歩。地面が凹む。
    もう一歩。大地を揺るがす。
    最後に尻尾。打ち付けられた世界が慄く。

    自らをアンカーに、地球へ固定するかのよう。

    「体内核エネルギーが増大中。ここを迎撃地点と定めたようです」
    「……なら、この街も見納めという訳だな」

    市民への人的被害は皆無に出来た。だがこの地に刻まれた人々の営み、その記憶は熱波で消し飛ぶだろう。
    しかし他に選べる道は無い。人類はゴジラに身を委ねる他無く、命だけは助かる事に感謝する。それが今この時代の本質なのだから。

    分水嶺まで6時間。その時は着々と迫っていた。

    ───

  • 301◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:51:42

    ───

    機材は全て積み込んだ。条件は“あの時”と揃えた。
    後は出発するだけだ。

    「……ん?オイ誰だ、こんな時にHEAVを!」
    「すみません、お借りします!!」

    浮上と同時に、窓に泊まっていた蝶も飛び立つ。また僕を導いていく、地下空洞へ続くポータルへ。

    分かってる。僕が今やってるのは他力本願、だとしても!

    「守りたい世界が、あるんだ!」

    人類の未来だけではない。その尊厳も、と願うのは傲慢だろうか?

    意を決して踏み込んだペダルが急加速を示し、舌が喉の奥に詰まりそうになって。それでも開き続けた視界が、地球の光に染まった。

    果たしてそこに、ウルトラマンは待ってくれていた。

  • 311◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:53:56

    「君の光が欲しい!」

    単刀直入に告げる。人として、人の形をしたその光に、僕は縋った。
    そこに誤魔化しは不要だと、魂が告げている気がした。

    「僕に力を!!」

    巨大な掌が翳される。それはまるで迎えてくれるかのように。
    それに甘える形で、応じる形で、僕もまた両手を掲げてみせた。

    距離が縮まる。熱気が、光が、僕の体に入ってくる。

    「“君”に!なりたいんだッ!!!」

    ──身を捧げる覚悟だった。先生がそうしたように、自分を生贄にしてでもこのタイタンに救って欲しかった。今思えば、そうする事で先生の最期を理解しようとしていたのかも知れない。
    なのに僕は今、このタイタンの力を自分の物にしたいかのような言動をしている。その理由は自分でも分からない、保身ゆえの傲慢が無自覚に浮き出たんだろうか。

    それでも、光は。
    僕の身に宿る形で、それを叶えてくれたのだった。

    「……───!』

    力が満ちる。膨れ上がり、舞い上がる。
    地の底から地の上へ、その先の空へ。

    もっと。もっと高く、もっと高みへ。

    やがてその果てに、地平線が丸みを帯びたタイミングで、“敵”を見初めた。

    打ち砕け。

  • 321◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:56:23

    午前11時58分32秒。その異変は、地上に展開された全部隊に目撃される事となる。

    「こちらアルファ2-6!目標と思われる隕石に、突如飛来した赤い光が激突!大爆発を引き起こした模様です!」
    「赤い光はモナーク管轄のポータルより出現したとの事。正体不明」
    「ゴジラ、熱線発射を中断!様子を伺っているようですっ」
    「隕石、衝撃で二つに分裂した模様……待って下さい、片方が大幅に制動しつつ郊外に落下して来ます!?」

    幸か不幸か──いや間違いなく幸運にも、突然の闖入者によって被害を免れた東京。しかし脅威が終わった訳ではなく、フラフラと落下しクレーターを作った隕石、その正体に一同は戦慄する事となった。
    目を殺意に光らせ、その隕石は両の足にて立ち上がったのだ。

    「報告します!隕石の正体はタイタン!宇宙から来た外来性タイタンですっ!!」
    「やはりか……!」
    『▲▼▲▼▲▼!!!』

    咆哮を轟かせ、そのタイタンは山々の向こうに聳えるビル群を睨む。ギドラによく似た破壊衝動と悪意を携え、それは一歩を踏み出そうとし。

    降り立った巨人に、その進撃を阻まれる事となった。

    全員の開いた口が塞がらなかった。それは初めて確認される姿形──シルエットがコング以上に人間“そのもの”だったから。
    驚かなかったのはゴジラだけ。王もまた、光が着地する様から目を離さなかった。

    地震を齎し、地盤を捲り上げて立ちはだかる巨影。纏う光が収束し、その胸に碧い輝きを灯す。
    やがて彼は、守るべき人々の営みの証を背に。勇気と闘志を燃やし、迫る敵へ構えた。

    『ジェアッ……!!』

    その名はウルトラマン。

    その名は、ガイア。

  • 331◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/11(土) 17:59:21

    ※隕石怪獣のイメージ
    ※ギドラの幼体という設定。カイザーではない

  • 34二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 18:57:13

    光から現れた味方のヒューマノイド型タイタンとか神様扱いされそう

  • 35二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 23:44:13

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 23:56:46

    人型と人型のバトルか…めっちゃ映えそうだ

  • 37二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 08:42:32

    ほしゅとらまん

  • 38二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 09:58:13

    光の巨人改め光の巨神(タイタン)か… 良い…

  • 39二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 13:41:00

    期待

  • 40二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 19:18:47

    待機

  • 41二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 01:39:12

    保守

  • 421◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/13(月) 07:36:12

    お待たせしました。IP制限に引っかかってヒヤヒヤしました

  • 431◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/13(月) 07:38:22

    戦端を開いたのは外来タイタン──後にモナークによって“モンスターX”と定義される怪獣の放つ光弾だった。
    1発で軍用ビルを粉微塵にするような破壊エネルギーが、絶え間なく連射。スキュラ辺りが喰らえば一撃ずつ脚を捥がれていくであろう威力を前に、しかし巨人は避けない──背後の街へと流れ弾を飛ばさぬように、選んだのは腕による防御。
    飛来する一撃一撃を、脅威的な反射で以て的確に叩き落とす。一、二、三、四五六七八───二十を叩き落とし、なおも彼は無傷だった。

    「巨人、健在!どちらを援護しますか?!」
    「上の指示を待て!……なんだ、巨人の様子が……?」

    その頑強さに驚いたのは人類側だけでなく、他ならない巨人もまた慄いている。その戸惑いを突いて、Xが次に選んだのは突進だ。
    気付いた時にはもう遅く。衝突、衝撃が巨人の身体を襲う。大地が砕け、土埃が舞い、遷ろう戦況。進撃は進み……やがて、止まった。

    『▼▲!?』
    『ジッ…!!』

    巨人が、止めた。
    組み合った腕を強引に捻り上げ、相手の質量を完全に制する。強大な膂力で宙に浮かされ、Xが苦悶の声で威嚇する。
    対しガンを飛ばすように、目前で巨人が咆哮した。

    『ジアアァァアッッ!!!』

    言葉は分からない。だが現地の自衛隊員も、米軍人も、一様にその意味を理解する。
    “ここから一歩も下がらない”、彼はそう叫んだのだと!

    『〜〜〜ッ▲▼▼▲!』

    怒りを高らかに吠え、Xが力任せに地へ降りる。離れたかに思った瞬間、飛び上がり回転。敵を薙ぎ倒さんと迫るは尻尾。
    巨人は屈んでそれを躱し、しかし回転の勢いそのままに振るわれる裏拳が、二の太刀とばかりにその頬を捉えた。
    予想外の一撃で、推定身長80mの巨体が横に吹き飛ぶ。それに気をよくしたのか、喜色を浮かべながら追撃しようとしたXの瞳を、迫る光が赫く染める。
    。           クァンタムストリーム
    飛び起きての反撃。逆転の 光 線 が、その顔面に直撃したのだ。
    急所への大ダメージにひっくり返ったXへ、一気呵成に巨人が詰め寄る。その尻尾を掴み、豪快にジャイアントスイング。山に叩きつけられた白黒の獣が悲鳴を上げた。

    GIF(Animated) / 1.48MB / 1920ms

  • 441◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/13(月) 07:41:17

    「圧倒的だ……」

    まるで地球をその身に纏っているかのような重厚さ。ある米軍人は、まるでゴジラのようだと巨人を形容した。それ程の強さだった。

    ──なお一方で、巨人の正体である我夢の精神はそれどころではない。

    ───

    (えっ出た!?なんか出た!!ビューって出ぇたぁ?!)

    人生で初めて行う喧嘩、使うのは未知の力で懸かる運命は地球規模。そんなプレッシャーの中でヤケクソに足掻いていたら、突如暴発した赤熱の光に困惑してしまった。いや、確かに“距離が空いたし遠距離攻撃できないかなぁ”とは思ったけども!

    (ええい、どうとでもなれっ!)

    でも僕が今死線に立っている事だけは理解しているので、当然戸惑っている暇など無い。とにかく相手が動かなくなるのを祈って、攻勢を掛けた。
    投げる、殴る、蹴飛ばす。一挙手一投足の度に力が溢れ、弾け、自分の制御から外れそうになる恐怖。
    何より怖いのは、先述の通り喧嘩もした事無い筈の僕が、それでも的確に相手に打撃を与えれている事。どんどん流れ込んでくる力の使い方、過去の記憶のような物に、身体を操られているかのようだった。

    (こんな物を、タイタンは……ゴジラは使いこなしてるのかっ!)

    その偉大さに畏怖し、そして自分の置かれた状況に何より恐怖した。今僕は、僕の意思で身体を動かせているのか?それは錯覚で、もっと大きな何かの意思で操り人形にされてるのでは?
    ……そんな迷いが頂点に達した所為で、攻勢が緩まった。解放された敵タイタンが攻撃範囲から飛び退いてしまう。

    目が光る。多分敵の光弾、いや光線?今回は念の為避けて……いや、モナークの調査部隊が背後の山に陣取ってる!

    (くそっ、壁とか作れないのか!?えっ作れる?そうか、バリア!!)

    またも流れ込んできた記憶に従い、両腕で力場の防壁を作り出した。次の瞬間に発射される雷撃は、ギドラがかつて放ったそれと酷似していた。
    怖い。でも………!

  • 451◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/13(月) 07:44:21

    『▲▼▲▼▲▼▲▼ーーー!!!』

    光弾とは比べ物にならない出力で押し寄せられ、ゴリゴリと削られるバリア。内側からそれを補強し、でも同時に僕の中の“力”の総量が無くなっていくのも分かった。このままじゃ……と思ったその時。

    「攻撃目標、外来タイタンの後頭部!責任は俺が取る、発射!!」

    ミサイル、目算10発が敵の頭に着弾した。その衝撃で体勢を崩し、光線が途切れる。僕を助けてくれた……?

    「FOX3リーダー、まだ攻撃命令は出てない筈だ!」
    「現場判断だよ!俺は好きにした、アンタも好きにしろ!!」

    何故か聞こえる通信に、確信を深めて立ち上がった。ありがとう、僕は──勝つ!

    『ジュッ!』

    これもまた記憶が教えてくれた。この巨人が持つ最強の切り札。かつてギドラの片翼を斬り飛ばし、地殻を貫いて地表の南極圏まで追い出した、ウルトラマンの必殺技を。
    “力”が滾る。流れ、集い、頭部から現出する。鞭のようにしなるそれは、必殺の威力を誇る光の刃。

    『ァァァァアァ……ッ!!』

    唸れ。叫べ、心を砕け!その一心で、投げ付けるように解き放った。光流は一直線に、戦闘機に気を取られていた敵の胸に命中。光が浸透し、体内から斬り刻む確かな手応え!

    『ッ、▼、▲▲▲▼〜〜………?!?!!』

    名状し難い断末魔を上げ、倒れる巨躯。次いで、決着の大爆炎。
    未だ怯える調査隊をその破片から守りながら、僕は空を見上げてサムズアップを翳した。戦闘機の人、これで伝わるかな。伝わると良いなぁ。


    ……疲れた。

    GIF(Animated) / 3.57MB / 5100ms

  • 461◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/13(月) 08:12:32

    ピコン、ピコンという音は胸から。疲労を表すように鳴り響くそれは、明滅する光によって僕自身の消耗を伝えているようだ。
    それはともかくとして……どう元に戻ろう?まさかとは思うけど、2度と人間の姿に戻れないとか?それは困るなぁ、覚悟はあったけどいざ直面するとこう……!?

    (ぐあっ!!)

    突如背中を襲った衝撃に倒れてしまう。そのまま押さえつけられ、ギリギリと首を絞められた。
    視界に映ったのは、さっき倒した筈の敵怪獣の姿……いや、違う!

    『▼▼▲▼▼……!』
    「2体目だと!?」
    「隕石の片割れから出て来たのか!」

    無駄の多い戦い方をしてしまったから、僕にもう力は残されていない!万事窮すか…!!


    そんな僕の思考を置き去るように、焼き尽くすように。

    熱線、一閃。

    『……!』

    敵は一瞬で絶命した。上半身を蒸発させられ、死に別れた下半身が力無く倒れた。
    自由になった上体を起こせば、視線を感じ振り向く。東京都心、かつて東京タワーの聳えていた場所こそが熱線の発射地点。

    ゴジラの狙撃によって、助けられたのだと。そう判断するには余りにも容易過ぎた。

    (どうして……?)
    『………』

    怪獣達の王は答えてくれない。地平線の彼方からじっとこちらを睨み、そして数拍の後に踵を返してしまった。きっと海へ、恐らくはローマに帰るのだろう。

  • 471◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/13(月) 08:16:35

    それを見送って、今度こそドッと力が抜けてしまった。もう気張れない、意識を保っていられない。とっくの昔にギリギリのラインを超えてたみたいだ。
    これからどうなるんだろうか。身柄を確保されたら……モナークが一番マシなルート。自衛隊が次点、米軍はどうかな?いずれにせよ、最終的に人体実験にでも利用されちゃうかもな。

    (でも、後悔は無い)

    守れた。人の営みを、タイタンの脅威から。
    救えた。地球の平和を、宇宙の脅威から。
    それにゴジラが見逃してくれたって事は、そこまで悪い帰結にはならない筈だ。そう楽観的に考えてから、僕はその意識を閉ざした。

    その寸前。視界の端に映り込んだ一羽の蝶が、僕を労ってくれたみたいだった。

    ───

    「すっげ……」

    ジョシュという少年が、俺のハッキングした衛星映像を見て驚嘆する。新たなるタイタン、それも人型のそれが悪の宇宙怪獣を撃破するその姿は、まるで子供番組のヒーローのように彼の目には映ったのだろう。

    「市街地を庇った?ただの偶然?でも最後のサムズアップは明らかに人間特有の文化……ねぇ、背中あたりにチャックとか無いわよね?」

    一方、マディソン・ラッセルは怪訝な目つきで分析している。流石はマーク博士・エマ女史の愛娘といったところか、学者としての視点を濃く受け継いでいるようだ。
    ……俺はと言えば。

    「お前は、何者だ……?」

    人の姿を象った巨人、その力を手に入れた者。その正体に思いを馳せていた。
    俺と近似した研究分野、俺と相似したアプローチ、でなければあの研究“成果”は掴めない。
    ・・・・・・
    俺と同種の光を、どうやって?

    モニターに問いを投げても、答えは返ってこなかった。

  • 48二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 08:20:37

    舞ってた

  • 49二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 13:02:24

    👍

  • 50二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 13:26:02

    地球の化身が選んだ事は尊重する王?

  • 51二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 18:44:55

    なんかゴジラVSメガロ思い出した

  • 52二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 01:37:06

    保守

  • 53二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 08:40:36

    保守

  • 54二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 16:42:44

    Hosyu

  • 55二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 21:32:13

    ホシュワッチ!

  • 56二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 22:37:08

    "王権神授">>16

    ───────

    「人類は長らく霊長として地上に君臨してきた。諸説こそあれど、その事実自体は特に否定要素も無いだろう」

    「……人類が自然を支配していたと?」

    「そうではない。が、一種の調停役として機能していた側面はあった筈だ」

    だが、と続けられる言葉。そこに憂いの色を見て、僕もまた顔を引き締める。

    「その権利が、人類自身が勝ち取った物ではなく……“神”から賜った物だとしたら?」

    「地球における神、それは地球自身かもしくは……タイタン」

    ───────

    巨神なき時代に栄え地上における支配者たると自認してきた人間と

    地球における支配者であると示してきたゴジラ


    モンバス地球において王権神授を当てはめるとすれば

    地球を統治する巨神が人類を残しその権利を一部認めた形と言える?


    けど地球自身が産み出す光 ガイアとアグルがいるならば

    地球そのものの意志が地球の危機を治める力を人の身に託したのであれば…


    この世界の地球の支配権はだれが「授ける」のか

    そして「授けられるのか」

    …あるいは「勝ち取るのか」


    あんなことやこんなことやで展開への妄想が捗るので更新楽しみにしています!

  • 57二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 00:58:19

    面白いssに出会えた
    続きを待とう

  • 581◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/15(水) 03:02:46

    ──3年前。


    「上手くいかないッ!!」


    机上の書類を薙ぎ倒す友人。その姿を後ろから見る。散らばったのは偽の王──メカゴジラの図面。


    「……蓮。お前は、」

    「言うなよヒロヤ。俺が父さんにこだわってるから“コレ”を作ったとでも?」

    「否定しようにも、そのツラじゃ説得力が無いだろ」


    設計者として難題に阻まれ、血走るその目は正気には思えない。やはり彼が変わったのはあの日──セリザワ先生の訃報が届いてからだ。不仲の親子関係である事は知っていたし、その上で信仰を培って来た。だがこうなっては……


    「違う……違うぞ藤宮。ゴジラは人類の隣人ではない、越えなければならない“壁”なんだよ!」

    「その為なら、ゴジラが他のタイタンを抑えて保っている秩序も破壊すると?ハッキリ言うぞ、今のお前は道を踏み外している!」

    「じゃあ支配に迎合するのか?まさかお前、サノス女の自滅論に同調でもしたか!!」

    「なっ……!?」


    ヒートアップする口論。しかし互いにライン超えの自覚があったのが幸いし、沈黙を謝罪とする事で双方矛を収める。ため息と共に、次に口を開いたのはレンの方で。


    「ヒーローが必要なんだよ、ヒロヤ。ヒーローが必要なんだ」

    「メカゴジラが人類の英雄だと言うのか」

    「今の時代のどこに未来がある。どこに希望がある?タイタンという天井に踏み潰されていては、人類は進歩など出来ない………必要なんだよ」


    タイタンに並び立てるという証明が。ただ踏み潰されるだけの存在ではないと、人間の沽券を示す根拠が。

    そうレンは宣う。俺は肯定できず、しかし否定もできない。


    「その先に待つのは……血を吐きながら続けるマラソンだぞ」

    「何を言ってる?世界は初めから生存競争だろうに」


    https://bbs.animanch.com/storage/img/3331653/1

  • 591◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/15(水) 03:03:57

    嗚呼。レン、お前はやっぱり変わったよ。
    自らをおざなりにしてきた父に早逝され、見返す機会を失ったお前は。その矛先をゴジラに変えて、否定する事に躍起になっている。
    さっき掲げた論も決して嘘じゃないんだろう。むしろ本心からそう信じて理性的に判断したのだろう。

    (だが、早急が過ぎる…!)

    理性だけではない感情の後押しによる焦燥。それに駆られ、彼は禁忌に手を染める事すら厭わなくなっていた。
    ……もし。俺が“あの光”の事を、明かしたら。
    それにより訪れる未来の事を話したら、止まってくれるだろうか?

    「ッ……」

    ダメだ。言えない。今ポケットの中で握り締めた光電子管、その中に眠る“海色の力”の事は。
    俺だって。俺だって、人としてタイタンに対抗する力を求めていたんだ。なんならお前より早く“手に入れた”。

    ──手に入れてから、“手に入れるべきではなかった”と知ったんだ。

    「……その座を手に入れるのは人類にはまだ早い」
    「いいや。今がその時だ」

    隠し事をしながらの苦し紛れの反論、それをレンは切って捨てる。これで議論は終了。

    レンと疎遠になったのはこれ以降。
    エイペックス社上層部が、周囲の反対を押し切ってギドラの頭骨を買い取ったのも同時期。
    ゴジラが社の施設を攻撃し始めたのもその頃合いから。

    俺は、何もしなかった。
    恩師の息子にして親友が、突き進んだ道の果てに死ぬまで、何も。

    代わりに彼を止めてくれた少女達の申し出。それを受け入れたのはきっと、下らない代償行為が動機か。

  • 601◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/15(水) 03:05:33

    ───

    「本題に入ろう」

    時は戻って今。巨人がその姿を掻き消した翌日。徹底的な情報統制が敷かれたようで、外来タイタンと光の巨人の事は公になっていない。

    「巨人の事ね!?」
    「違うだろ」

    完全にゴジラの行動原理の件を忘れている。まぁそれだけウルトラマンの件が衝撃的だったのだろう、呆れると同時にその子供らしい愛らしさに微笑んでしまった。

    「そうだよエマ、僕らはゴジラが世界各地に現れて人類に威嚇してる件を……あれ?でも昨日解決したんじゃないの?」
    「ふむ。そう思うに至った過程を聞こうか、ジョシュ君」
    「ゴジラが動くのは地球の危機が迫った時だ。それに対し警戒を促す為に各地で吠えて、そして今回の脅威である隕石怪獣はもう撃破された訳で……」
    「なら、注意喚起をする必要の無くなったゴジラはもう暫く現れない、と。悪くない仮説だが、早速答え合わせといこうか」
    「あっるぇ!?」

    ポチッと点けた最新ニュース映像には、それはもう派手に都市へ威嚇をかます怪獣王の御姿。今朝ハワイ沖に現れすぐに去ったとの事で。

    「という事は……まだ危機が過ぎ去ってない、って事?!」
    「あぁ。そして威嚇対象が人類にずっと限られているのを見るに、メカゴジラの時と同様に完全に人類に非があるパターンと捉えるべきだろう」
    「最悪じゃない!!」

    そう、最悪だ。母なる地球を人間が傷付けているという、『命綱を自分で切り刻む』に等しい愚行。同族としてこれ程腹が立つ事も無い。
    ……それに対する俺の見解を聞いて。君達はどうする?

    「その犯人について、心当たりがある」
    「本当!?」
    「“DS”って知ってるか?」

  • 611◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/15(水) 03:10:37

    「任●堂のゲームハードの事?後継機のオンラインサービスが最近終了したよね」
    「バカッ!安心してDr.ヒロヤ、こう見えて私達は寝る時アルミホイルを巻いてるし洗脳の心配は不要よ」
    「無理に話を合わせなくても良いから」
    「「アッハイ」」

    ────

    「HAHAHA!良かったなブラザー、俺のお陰で実験動物ルートは回避だ!」
    「は、はい…ホントに助かりました」

    幸か不幸か、力尽きると同時に人間の姿に戻れた僕。でも一歩も動けなかった所を、駆けつけてくれたバーニーさんが匿ってくれて助かった。
    どうやって隔離区域に入って来たのかは分からないけど、彼って、過去には半壊してたとはいえエイペックス社施設のかなり深部まで潜入してたらしいし。今回はそれに助けられた以上、あまり詮索はしないでおこう。

    「で、これからどーすんの?折角巨人になれたんだ、他のデストロイヤー系タイタンをブッ倒してくか?」
    「まさか。そんな大それた事なんかしないよ」

    後部座席で車の振動に揺られながらふと、手元の光電子管を見た。今もその中に、僕の姿を変えた赫い光が宿っているのを認める。
    僕は、なんでか、“選ばれて”しまったらしい。

    「この力を与えられた意味を、僕は探す」

    当面の行動指針はそれ。未だ収まる気配のないゴジラの活動情報をラジオ越しに聴きながら、勇気の光をギュッと握り締めた。

  • 621◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/15(水) 03:14:14

    今回はここまで。藤宮は陰謀論者ではない(腹パン)
    まぁモンバス世界って陰謀論こそ真実みたいなとこあるし多少はね

    保守に助けられてます、誠にありがとうございます

  • 63二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 09:57:51

    ハワイで一体何をしてるんだ…DS?ディープステート?

  • 64二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 12:29:16

    ゴジラ的には王権を神(モスラ)から託されてる形になるんやろか

  • 65二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 17:18:56

    Hosyu

  • 66二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 18:09:10

    モスラは神の代弁者・メッセンジャーみたいな立場で
    神:地球 と教皇:モスラ のイメージでいるなぁ
    王の戴冠式の司会になって王冠被せる役やってそう
    (※個人の妄想です)

    戦闘力以外の能力がタイタン内で一番神秘的というかなんというか他とあまりにズレててモスラは神様じみてるよね

  • 67二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 23:11:59

    >>66

    ガイア世界だとそれこそミズノエノリュウとか神様に近い怪獣だけど、今後出て来たりするかな?

  • 68二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 06:31:57

    ・46億年前から輪廻転生して記憶を引き継ぐ
    ・祈られたとき光の粒が集まって現れる
    地球の意志と何らかの関わりがありそうではあるね

  • 691◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 07:52:36

    書き込んでいきます
    筆者は頭にアルミホイルを巻いてると思って読んで下さい(予防線)

  • 701◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 07:54:41

    モナークは多忙極まっていた。ゴジラの件、外来タイタン2体の件、そして何より赤い巨人の件。引っ切り無しに情報が入ってくると言うのに、どの案件においても情報が不足すると言う矛盾じみた事態である。
    マーク・ラッセルもまた、その渦中に揉まれる1人だ。

    「……どうしろと言うんだコレ……」

    本件の他にも、部下であるガムの失踪・娘の暴走という問題が彼にのし掛かって来ている。どれから解決したものかと、頭を悩ませていたその時。

    「マーク。来てちょうだい」
    「何ですか長官」
    「急用よ。絶対に貴方が関わった方が良い案件が、たった今発生したの」
    「勘弁して下さいよっ」

    渋々、モナークを統べる彼女の後に続く。しかし次に長官の口から飛び出した言葉に、彼の表情は一変する事となった。

    「エマの使っていた回線を通じて呼び掛けがあったの。ご指名は貴方よ」
    「!!!」


    「やぁDr.マーク。君の事はエマから聞いている」
    「……我々はテロリストとは交渉しない。さらばだ」
    「待て待て待ちたまえッ!!」

    アラン・ジョナ。かつてエマがモナークに繋げた秘密回線を使い、コンタクト図ってきたのは他ならぬ彼。オルカを用いてギドラを呼び覚まし、世界中にタイタンによる悲劇をブチ撒けた環境テロリスト。
    通信を一方的に切られそうになり、流石の彼も慌てふためいた様子を見せる。

    「手配書の間抜けヅラを拡大して眺めるような暇は無いんだ。既に軍にこの通話も傍受させている、震えて待て」
    「そんなのは既に対策済みだ、君に通信を切るデメリットこそあれどメリットは無いのだよ」
    「……なに?」

  • 711◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 07:59:28

    含みのある言葉に耳が傾く。その様子に気を良くして、ジョナは言葉を続けた。

    「まず前提として、我々は“タイタンを頂点として調和した世界”を夢見る者として、志を本来同じくする存在だ。違いなど、そこに人類の介在する余地があるか無いかに過ぎない」
    「何が言いたい」
    「“ガイアリセッター”。悪しき人類が目論む環境破壊計画であり、それがゴジラを怒らせたのだ」

    寝耳に水とはこの事。そんな大それた計画など聞いた事も無いし、ともすれば「このテロリスト、とうとう陰謀論にハマったか」「そもそもお前は陰謀側の人間だろうが」とツッコミたくすらなる……
    ……が。それを言おうとしたマットの口は、たった今届いた電子文書の内容を見て閉ざされてしまった。

    「はぁ?……っ、事実!?」
    「信じ難いだろうがね。尤も、具体的にどう地球をリセットするつもりかは以前掴めないが……そこに記されている連判状の通り、“地球ごとタイタンを皆殺しにする”という思想の下に、複数の金の亡者が結託しているのは確定だ」
    「馬鹿な!自分の住む世界ごとなんて正気じゃない!!」
    「狂気の在処についてテロリストに同意を求めるかね?まぁ完全に同意なんだが」

    大国とは言わずとも、国家複数を余裕で動かせる程の大金が動いていた。どこから捻出したとか、そんな事を考えている場合ではないのは確かだ。

    「我々が直々に叩き潰し、市民からの求心力を得ても良かったのだがね。相手もやり手のようで、早々にその手段を断たれてしまった──故にこそ、“手柄”を君たちに譲ろうという事だ」
    「俺達に穢れ仕事やらせて、お前は悠々と後ろで踏ん反り返るという算段か」
    「悪様に言ってくれるじゃないか。だが他に取れる手があるか?」

    無いだろうと宣う彼に対し、マークの返答は沈黙。それを肯定と受け取り、ジョナは嘆息を一つ吐く。
    同調を確信し、誘いの口説き文句を───

  • 721◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 08:03:02

    「───お前にしては随分と甘い目算だったな」

    告げるその前に、瓦解を突き付けられる。

    「どういう事だ?」
    「テロリストが手に入れられるような情報を、アメリカの諜報部が得てない訳がない。その上でこれまで音沙汰が無かった……つまり公的機関は抑えられてるって事だ。俺達モナークも含め、知らない内に」
    「違うな、モナークだけはタイタン関連で独立した特権を行使できる筈だ。故にこそ私は君達に、」
    。・・・・・・・・・・
    「お前がやらかすまではそうだったよ」

    ジョナの顔色が変わった。
    “心当たり”があった所為だった。

    「お前がエマをモナークから引き抜いて世界を滅茶苦茶にした所為で、モナークは四方八方なら睨まれるようになった。それでもタイタンに関する事なら胸を張って自由に動けるが、こんな対人要素しか無いパワーゲームじゃ下手に動きを見せただけで初動を潰される。世の中“動かす”より“動かさない”方が労力も少ない、俺達など端金で黙らされるよ──お前の所為でだ、アラン・ジョナ」
    「なっ……馬鹿な!そんな小手先に阻まれた程度で、地球の危機を見過ごすつもりか!?」
    「動いてなんとかなるなら動いたさ。だがお前はテロリストという警戒されて当然の身分で、“上”に筒抜けの状態で俺達に情報を明け渡し、隠れて探るという手段すら奪った……やってくれたな。これでモナークは完全に手詰まりだ、満足か?」
    「違……!」

    それを皮切りに、モニターから銃撃音。逆探知か何かで嗅ぎ付けた特殊部隊が、奴らの対策とやらを無力化し突入したのだろう。

    「恨むなら手前の悪因悪果を呪ってくれ。俺はお前達の浅慮と無能さを呪う」
    「愚かなっ!!」

    捨て台詞と共に通信途絶。緊張から解放され息を吐くと、後ろから肩を叩かれた。

    「……ハンプトン長官」
    「先ほど国務長官から直通電話があってね。内容は予想通りよ」
    「釘を刺されたという訳ですか」
    「少なくとも迂闊には動けないわね」

  • 731◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 08:05:52

    大統領からの電話ではなかった辺り、ガイアリセッターとやらも全てを掌握してる訳ではなさそうなのが救いだが、それにしたって取れる手段が少な過ぎる。ここからどう手札を揃えたところで、公的機関である以上は縛られるのだから。
    かと言って、個人で動いてどうにかなる規模ではない。毒されてない組織をこれから探す?恐らくはもう手遅れだ。
    この窮状を覆すとするなら……それは人類自身の意志に依る物ではなく。

    「またゴジラに、人類の尻拭いをしてもらう事になるのかしら」
    「………」
    「…どうかした?ゴジラが止められるか不安なの?」
    「まさか。人間が小賢しく立ち回ったところで、容易に踏み潰していくのがタイタンです」

    その光景をマークは何度も見てきた。ましてや、そのタイタンの頂点に立つのがゴジラだ。同格のギドラを躙り殺し、秩序の為に犠牲を厭わないのが怪獣王だ。
    きっと今回も、彼は企みを挫くのだろう。地球を穢さんとする者達を決して許さず、焼き滅ぼすのだろう。

    ……その対象は、企んだ者達のみに留まるだろうか?

    「もしゴジラが…人類に未来無しと、そう判断してしまったら」

    この種族に自浄作用はないのだと、地球意思の代弁者に断じられてしまえば。

    我らは、どうなるのか?

    「………」

    長官は答えない。彼女の最後のテレビが流す有人ロケット打ち上げ予定の報、本来祝われて然るべき筈のそれも慰めにはならず。


    悪夢は数日の後、現実となる。

    ───

  • 741◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 08:10:07

    「まず、君達は“ゴジラが威嚇行動を繰り返すのはまたエイペックス社がやらかしてるから”だと思ってここに来たんだろうが……結論から言えば、それは違うと断言しておこう」
    「そうなのDr.ヒロヤ?そう言ってまたメカゴジラ2代目だのスーパーだの三式だのシティだの作ってたりしない?」
    「社は前回の件で社長が死亡し、政府直々に改革されてモナークとの協力体制を強いられているんだ。とてもじゃないがそんな余力は無いさ」

    代わりに、と言って俺が見せたのはリスト。改革の際、その方針に反対して離反した重役および技術者達のリストだった。
    中には高名な識者もおり、見知っていたのだろうジョシュ少年が感嘆の声を上げる。

    「ノーベル賞学者が何人も……この人達は今何を?」
    「………」
    「…なるほど。モナークに影響された社の意向に背き、怪獣絶滅路線を引き継いだこの流れ者達こそが真犯人って訳ね」

    相変わらずマディソンは鋭い。そう、発端こそエイペックスだがその実、動いているのは離反者の方という事。
    そして彼らが何を為そうとしているのかというと……その答えも得ている。

    「このデータを見てくれ。コイツをどう思う」
    「凄く……世界中の濃縮汚染物質がハワイに掻き集められてます……」
    「ちなみに離反者達の動向ルートがこれ」
    「完全に一致してるじゃない!まさか劇毒を一気にブチ撒けようって訳!?」
    「タイタン達が浄化し切れるかし切れないか、出来たとしても命が引き換えになる量を…という事だ。その間、本人達は地球外に脱出して、タイタン達が死に絶えるまで軌道上で待つ作戦だろうな」
    「最っ悪…!」

    そう思うのも無理はなく、寧ろ当然の事。若者らしい義憤に内を焼かれて、彼女は既に怒髪天を突いている。
    ……けど、それも無意味だ。

    「彼らも相当本気みたいで、離反学者もそのスポンサー達も全財産を使い切るつもりで動いてる。タイタンへの憎悪、ここに極まれりといった所か」
    「“DS”ってそういう事……世界中の資産家の内、タイタンに支配されてる現状に耐えられなくなった人達が支援してる」
    「止めないと!」
    「どうやってだ?まさかまた一般市民の身の上で無謀な潜入を試みるのか?前にエイペックス社に侵入した時、君達は暴くどころか捕まって交渉材料にされかけたんだろう?」

  • 751◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 08:16:32

    そう言ってしまえば、痛い所を疲れたように口を噤む少年少女。流石に可哀想になったので、何かしらフォローしてやろうと思った。
    だがそれより早く、ジョシュの方が問い掛けてきた。

    「……だったら、なんでこの情報を僕達に教えたんですか」
    「──っ」
    「公に出した所で握り潰される、だから出さない……それは分かるでも、貴方以上に力の無い僕達と共有する理由が分かりません。メリットが無い」

    ……正直なところ、マディソン・ラッセルのオマケとして見ていた。しかしどうして、鋭い質問に思わず唸らされる。
    そういえばそうだ、とマディソンもジョシュの隣で頷く始末。ここまで来ると隠してはいられない……と言うより、俺も俺自身と向き合わねばならない。

    なぜ俺は、彼等を此処に招いてしまったのか。
    意味が無いと分かっていて、どうしてここまで明かしてしまったのか。

    ……考えれば、簡単な事だった。

    「答える前に、これを」
    「何これ。試験管?」

    1人で抱えたままではいられなかった。
    既に限界だったんだ。

    「……綺麗」
    「そうか。美しく思えるか、この光が」
    「違うんですか?」
    「いや。俺も、この輝きを尊く想う」

    ただこの海の青さを、他者と分かち合うだけで居られたら。どれだけ幸せだったか。
    なぁ、レン。

  • 761◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 08:22:00

    翌日。マディソン達を帰してから、俺はとあるアドレスへメールを送った。
    もし予測が正しければ、光を手にしたのは“アイツ”だ。それを信じて、集めていた証拠を託した。
    さぁどうする。相手となるのは金任せ、力任せの邪悪な願いだ。それでいて、タイタンの猛威に怯える悲痛な叫びだ。

    それに容赦無く絶望を叩きつける覚悟が、お前にあるか?

    もう1人の“ウルトラマン”。

    ───

    「……バーニーさん」
    「行くのかよブラザー」
    「行かなきゃ、恩師に顔向けできませんから」
    「そうかい。一応言っとくけどな、俺がお前の師匠なら“無理すんな”って言う所だぜ」

    気遣いが温かくて、でもそれに甘えてられない。
    もしかするとこれが、僕が選ばれた意味なのかも知れないんだから。

    「きっと、地球がくれた“チャンス”なんです」

    人類の不始末を、人類の手で拭う為の。
    確証は無いけれど──そう信じて、思い込む事で、僕は心を奮い立たせる。

    朝焼けの水平サインに掲げた光。すると100万ワットの輝きが身を包み、僕を彼方まで攫って行った。

    「……無事でいろよ。Dr.ガム」

  • 77二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 08:25:29

    ああ…だからこの世界の藤宮に海の光 アグルの力は託されたのか
    海と地球をただ汚すために汚すイカれた計画を知る男に…

  • 781◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/16(木) 08:33:30

    ───


    ……警告はした。

    ヒントも与えた。

    これが最後だ。群としてのヒトには、もう期待出来ないのならば。

    後は何の因果か今このタイミングで目覚めた“光”。その出方次第。

    (来たか)

    大地の輝きが頭上を進む。海底よりそれを見送り、我は再び地熱エネルギー渦巻く島々──ヒトがハワイと呼ぶそれを見遣った。

    心せよ、選ばれし者。その身に光宿す者よ。

    お前が臆したのならば……裁定を下すは、我だと知れ。

  • 79二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 12:14:44

    ゴジラも地球の"光"の動向は流石に気にするんだな…
    もう一人の巨人が居る事はゴジラも知ってるんだろうか

  • 80二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 13:44:09

    ”人間“が光に選ばれたと知ったら色々変わりそうな世界

  • 81二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 19:29:30

    ゴジラからしたら地球が自分以外の調停役を遣わしてきたのは複雑な心境なのだろうか

  • 82二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 20:11:42

    >>81

    ゴジラ(まあ人間の代表として考えればいいだろう)

    と考えたりするだろうか

  • 831◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 07:35:13

    セルフ保守
    2014ゴジラを復習したけど、卵爆破されたムートー雌が悲壮過ぎて「な、泣いてる……!」ってなった

  • 841◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 12:07:31

    ハワイのロケット発射場。かつて地元住民の猛反対によって建設が難航していたそれは、今ではしっかりとその威容を誇っている。
    一説によれば、タイタンひしめく地上に絶望した事で逆説的に巻き起こった宇宙への希望論。それに後押しされ、建設が推し進められたという。

    「これは酷い……」

    ……情報通り、そこに運び込まれる劇毒物満載のコンテナ達を見て思わずそう呟いた。薬物の処分場などここには無く、更にロケットに偽装された“ミサイル”まで複数見つかった事で、最終的な確信を得る事が出来た。出来てしまった。
    “ガイアリセッター計画”とやらは本当なんだと。

    「ミサイルを世界各地に打ち込んで環境汚染するつもりなのか。それで本当にタイタンを絶滅出来ると思ってる……?」

    仮に億が一、地表タイタンを奇跡的に衰弱させられたとして、地下のタイタンの事を完全に度外視している。空洞世界への警戒が足りてない辺り、モナーク側からの情報流出は少なくとも無さそうだ。
    ………で。

    「どう止めよう」

    問題はそこ。莫大な金がミサイルの用意だけでなく各国の口封じにも使われてる以上、公的機関は頼れない。僕個人で何が出来るのか──なんて、答えは既に決まっていた。

    (ウルトラマンの力を使った、破壊)

    それがある。それしか無い。だがこの力を壊す事に使って良いのか、その覚悟が足りてないんだ。

    「どうしよう……」
    「大丈夫ですか?」
    「あぁすみません。邪魔だったらどきます」
    「いえそうではなくて」

    街のベンチで項垂れていると、体調不良と間違われて声をかけられてしまった。顔を上げると、鍛えられたガタイを持つ白人男性。恐らく米国軍人。

  • 851◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 12:10:01

    「ビックリしましたよ、死にそうな表情で蹲ってるんだから」
    「ほんとうにすみませn「父さーん!早く〜!」

    遮るように上げられた声。10代前半と思しき少年が手を振り、男性を呼んでいた。

    「家族連れでしたか」
    「ええ。アイツがハイスクールに進学したんで、その記念旅行に」
    「なるほど」

    彼らの表情に翳りは無く、未来に希望を見て健やかそのもの。
    ……ガイアリセッターが成功してしまえば。この光景も消えて無くなるのか。

    「親父から“家族のところに戻れ”って言い残されたんです。だから俺はいつだって妻と子供と一緒だし、ずっと笑ってられる世界を守ってやりたい──とは言っても、いつタイタンの被害に巻き込まれるか分からないのが現状ですが」
    「それは……良いお父さんですね」
    「自慢の父でしたよ」

    そうだ。この営みを守りたい、その願いに応えてくれたから光は、僕に宿ってくれたんじゃないか。
    彼の言葉でそれを思い出し、立ち上がった。

    「僕はガム・タカヤマです。失礼ながらお名前を伺っても?」
    「フォード・ブロディ。よろしく、ガム」
    「そう、フォードさん。ありがとうございます、決心がつきました」
    「なんだか分かりませんが、後押しになれたなら何よりですよ」

    握手を交わして別れた。フォードさん──どこかで聞いた名前だけれど、全てが終わったら挨拶に伺おう。大事な休暇旅行を潰してしまう、その事への謝罪の為にも。

    (いつ嗅ぎつけられるか分からない。決行は明日朝、出来る限り人がいなくなった時間帯だ)

    人的被害は避けたい。そんな甘い事を考えながら、それでも僕は進み始める。

  • 86二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 15:42:44

    ゴジラを星が想像した神獣(リヴァイアサンとバハムート)とするなら、ガイアとアグルは人類を保護するアララト山と人類を滅ぼす洪水の権能を人間に与える事で天使にした存在なのかねェ

  • 87二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 19:45:17

    ブロディ大尉!

  • 881◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 21:24:44

    巨神の輝きが朝焼けを照らし返す。突如顕現したそれを、人々は見上げる事しか出来ない。
    東京にて新たに確認されたタイタンの再出現に、その報を知らされていない市井は、驚愕の嵐に見舞われた。

    「こちらハワイ駐留部隊!応答願います、未確認のタイタンが出現しました!対象は本島北部より中央……恐らくはロケット基地に向けて侵行中!!」
    「防衛線を張れ、これ以上好き勝手させるな!!」

    流石と呼ぶべきか、即座に地上部隊を配した米軍の砲火。対し彼は腕を交差させた防御姿勢で突き進む。反撃はせず、しかしびくともせず、歩みを微塵も止めはしない。司令部は漏れなく旋律に見舞われる事となる。

    「駄目です、戦車砲では歯が立ちませんっ」
    「目標は川を遡上する形で依然進行。市街地を避けている……?」
    「周辺住民の避難が完了しました、スクランブルOKです!」
    「地上全力で駄目なら航空戦力だ!発進せよ!!」
    「モナークからの返答は?」
    「碌に役に立たん!!」

    戦闘機編隊も加わり、苛烈さを増す迎撃。ダメージは無くとも姿勢を揺るがす衝撃はあり、だがそれでも尚彼は止まらない。その巨躯を手繰るガムは、進撃する自身の肉体に一種の手応えを感じていた。

    (やっぱり、前より“馴染んでる”……!)

    東京で戦った時より体が軽い。精神が力に馴染んだのか、格段に効率が上がっていた。
    前は3分でバテてしまったが、今この調子なら半日変身し続けてもギリギリ大丈夫だろうか。
    そうしている内に川が曲がり、進行方向から逸れてしまった。このまま歩けば市街地を踏み潰してしまう……ので、跳躍からの飛翔を選択。人間には本来不可能な挙動であるため、着地の際の二次被害を懸念して避けていたが、見事に目的地前で軟着陸した感触により確信を深めた。
    ……準備運動は終了。本題はここからである。

    (これから此処は、破壊されるんだ)

    眼下に広がる発射場。立ち並ぶロケット群。どれがガイアリセッターの物なのかを、外見から知る術は無い。
    だからガムは、苦渋の思いで拳を振り上げた。

    (…僕の、この手で!)

  • 891◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 21:26:22

    ───

    「分かってる。ああ見えてる、今からそっちに向かう。指揮系統はどうなって……そうか。了解」
    「フォード……」
    「エル、すぐ戻る。幸いあの巨人は破壊活動を好まないようだしな」

    基地からの電話を受けて身支度。憂う妻を励まし、しかし今度は息子に行く手を阻まれた。

    「でも父さん、爺ちゃんだってタイタンに!」
    「サム、それでも行かなきゃいけないんだ──」

    またゴジラが助けてくれる、だなんて楽観はしない。そもそも彼は彼の愛する世界を守っているだけで、人間が助けられてるのはただの偶然だなんて分かり切ってるから。
    ……それでも、彼が地球にいる。それだけで、どんなタイタンがいても安心だと思えてしまうのは……嗚呼、これじゃ親父を笑えない。

    「──ママを頼むぞ。男の約束だ」
    「っ、パパぁ!!」

    思春期に口調を変えてしまった我が子。だから、そう呼ばれるのは本当に久しぶりだった。
    その呼び声に後ろ髪を引かれながら、それでも巨人の背を追った。

    ───

    伸ばした手のひらから三日月状の光弾を飛ばす。待機中のロケットに当たったそれは切断と同時にエネルギーを浸透させ、外殻ごと中身を分解する。
    あ、これはガイアリセッターじゃなかった……っ。

    「これで五基目です!止められません!!」
    「ロケットが邪魔で撃てない!他所に誘導は出来ないのか!?」
    「何にも反応を示さない、コイツ目標目掛けて一直線だ!」

    これまで破壊した中で、毒物の積載を確認出来たロケットは3基。これが世界全土に向けて発射される予定だったと思うと恐怖しか無く、けれど同時に人が精魂込めて作り上げた機器を潰す度に心が悲鳴を上げるようだ。宇宙への夢で作られた筈、でもどうしてこんな事に。

  • 901◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 21:31:08

    (考えるな!)

    何故、だなんて責任逃れだ。僕は地球の為に、地球に息づく人々の為にこうすると決めた。他に考える事があるのか!?
    そう叱咤し、頭から放った光刃が一挙に4基を薙ぎ払う。残り、1!

    「死守せよ!」
    (どいてくれ!!)
    「「「ホワァァァァ!!?」」」

    通せんぼするように立ち塞がった戦車隊。踏み潰すわけにもいかず、ロケットが暴発した場合の爆風に巻き込む訳にもいかず、しゃがみ込んで手で除けた。数秒食ったがミッション完了はもう目の前。
    これで終わりだと。そう思った刹那だった。

    「待ってくれぇ!!」

    ロケット下部から人影が飛び出し、思わず手を止める。その隙に人影は、なんと噴射孔に縋り付いてしまったのだ。

    「これは人類の希望なんだ!タイタンという悪夢を振り払う黎明への祈りなんだよ!!」
    (ち……違う!)

    断固として反論できる。地球を傷付け、多くの人を見捨てて撃たれるそれが、祈りなんかである筈が無い!
    ……けれど、その人の叫びは。

    「タイタンが目覚めて、地球は地獄に変わってしまった!どこにいたって安全なんか無い、愛する人を安らかな眠りにすら就かせてやれない!そんなのが永遠に続くだなんて、死んでも嫌なんだよ!!」
    「っ…!!」

    ───後から知った事だけれど。

    この人は、エイペックスから離反した学者である彼は、サンフランシスコの一件で両親を失っていた。死因は倒壊した建物に巻き込まれての圧死。
    ボストンの一件で妻の墓を踏み潰されていた。遺骨も遺灰も見つからない、2度とお参りすら出来ない。
    最後に。疎開させたリオデジャネイロで、我が子が重篤な凍傷。両足を切断し、2度と大好きなかけっこが出来なくなったという。

  • 911◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 21:39:24

    望む全てをタイタンに奪われた男。だから、と言うのは言い訳だろうか。

    「やめてくれっ……化け物共を!皆殺しにさせてくれぇぇえええッ!!」

    その叫びに、惑わされてしまった。

    (──どうして)

    否定するのは簡単だ。というか、否定されなければならない理屈だ。
    けれど今の世界で幸せなど掴めないという、その生き証人を前にして、ただ正論を突きつけて何になるのだろう?

    (どうして、こんな事に……!)

    先刻の疑問がぶり返す。自問に自答を返せず、振り上げた拳が行き場所を見失いかけた。
    でも……それでも!

    (その願いを、通す訳にはいかないんだッ!!)

    冷気を纏う掌。学者を無事のままロケットを破壊する、その唯一の手段がこれだった。人を殺さず、僕はこの計画を止めようとした。

    その過程で。



    『───── 臆 し た な ? ─────』



    ───悪手を、踏んでしまった。

  • 921◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 22:00:56

    ・・・
    底冷えするような、殺気。
    。      ・・
    肩を擦過した、熱い殺意。
    ロケットに直撃。引火。

    「いゃ──!」
    (あっ…!)

    学者の姿が爆炎に飲まれる。骨まで焼き尽くされ消し炭になる様を、ウルトラマンの瞳は克明に捉えてしまった。
    火を振り払いながら、誰の仕業かに思いを馳せる。いや馳せるまでもない、あの“熱線”は!

    『■■■………!』
    (ゴジラっっ!!)

    唸る巨獣に対し、僕が抱いた感情は“怒り”。どうして撃った。どうして介入してきた。どうして僕に最後までやらせてくれなかった?どうして彼を、死なせた!!

    『ジェアッ!!!』
    『………』

    答えろ、という思いが戦志に変わり、掛け声となって放たれる。対しゴジラの返答は以下の通りだ。
    輝く背鰭。再度放たれる熱線──ただし、標的は僕やロケット発射場ではない。彼の胸元まで揺蕩う水面である。
    海水中に瞬時に生まれた、摂氏で裕に万を超える超熱空間。それに揮発・膨張させられた蒸気が隣の水を押し出し、巨大な水の壁を反り立たせた。

    (なっ……!?)
    「た、たっ…退避ぃぃぃぃ!」
    「「「うわああああああ!!!」」」

    王は津波すら容易く引き起こす。
    この星の王であるが故に、自然災害すら彼の物なのだから。

  • 931◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/17(金) 22:02:55

    ※途中の進撃画像は飽くまでイメージです。攻撃に耐えながら進むシチュにはまぁ……我慢強いブラウンの画像が合っている

  • 94二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 23:09:13

    ゴジラ(やっぱり同種相手に躊躇したり臆するのは好ましくないな、放っておけばこの世界を破滅させかねない存在なのだから)

  • 95二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 02:36:26

    保守

  • 96二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 04:13:52

    モンバスゴジラって神道における荒魂みたいだよね

  • 971◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/18(土) 11:31:42

    『ジュァアァッ!!』

    取れる選択肢は一つだけ。前の戦いでも使ったバリアー、それでハワイ諸島を庇い津波を跳ね返す!規模が桁違いな分エネルギー消費も凄まじい事になるけど、迷ってる暇なんか無いっ!!
    両手から全力で力場を放ち、更には西方向50km範囲で展開。水の質量爆弾を、これで……!

    (退けぇぇぇっ!)

    衝撃と加圧。高さ10mかつ連続的な波浪に、障壁が軋みを上げた、でも初撃は受け切れた!ここから水流を制し、ベクトルを掌握して、巻き返せ。

    「し、新型タイタンにより津波は阻害。いや、押し返していきます!」
    「守って……くれたのか?!」

    死に物狂いの甲斐あって、津波はなんとか解決。広がっていく波紋はいずれ他の国に押し寄せるかも知れないけれど、各々で対処してもらう他ない。僕はもう目の前のことで精一杯だ。

    返ってきた濁流にもゴジラは動じていない。涼しい顔で沖に座し、けれどその眼はしっかりと僕を睨みつけている。
    でも、ここまで見境のない破壊行為は初めてだった。MUTOにしろギドラにしろコングにしろメカゴジラにしろ、ゴジラが動く時には明確な攻撃対象がいて、それ以外の事象に対し大々的に巻き込むような真似はしてきていない。ローマから移動する時だって、基本的に河を移動してくれている姿からもそれは明らかだ。
    にも関わらず今回、彼は津波という範囲攻撃を用いた。本来敵であるガイアリセッター及びその推進者達だけならまだしも、無関係な市民まで巻き込んで鏖殺しようと……!!

    (どうしてなんだ、ゴジラ!?)

    先生は、そんな事を望んで貴方に身を捧げた訳じゃない。そう言いたくて、だがそれに何の意味がある?彼の行動のどこに先生の介在する余地があるというのか。

    その答えを示すように、ゴジラが動いた。進撃という形で。

    「目標、進路こちらに真っ直ぐ!!来ますっ」
    「新型タイタン、迎撃の姿勢を取った模様!」
    「……攻撃対象変更。新型を援護し、ゴジラを迎撃せよ!」
    「仲間と見なすのですか!?」
    「状況判断だ!!」

    GIF(Animated) / 1.38MB / 1500ms

  • 981◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/18(土) 11:35:52

    (やるしかッ…!)

    高速で湾内に侵入し、上陸するなり地響きと共に駆けてくる巨躯。迎え撃つべく、僕もまた丘を駆け下りた。既に避難が済んでいるとはいえ踏み潰す街並み、でも構ってられない!

    『■■■■■───ッ!!!』
    『ジャッ…!?』

    そして激突の時は来た。襲い来た衝撃、その重さに意識が飛んだ。
    。     ・・・・・・
    何だこれ……地球そのものか!?

    (駄目だ、押し負け…!)

    エネルギー消耗とか関係なく、地力で完全敗北している。余裕で押し込まれ、全然阻めない!
    そんな僕を援護してくれるかのように、戦闘機が機銃を打ち込んでくれるけど、正直焼け石に水というかッ!?

    (うぁあ──っ!!)

    肩に噛みつかれ、そのまま投げ上げられた。500mくらい宙を舞い、姿勢を制御出来ない!
    どうしようと思う、その瞬間に。

    脇腹に痛打。
    落下のタイミングに合わせて振られた尻尾が、ウルトラマンの身体を容赦無く吹き飛ばした。

    痛い。
    苦しい。

    (立て、ない……!)

    悲鳴も上げれずのたうち回る僕を尻目に──ゴジラの背鰭がまた、蒼く輝く。

  • 991◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/18(土) 12:04:31

    そして爆裂。熱線がロケット発射場に着弾。
    大爆発が、そこにいた全ての人々を飲み込んで。

    (あぁっ!)

    悲鳴が聞こえる。命の火が消える音がする、僕の目の前で。
    何の為の力だ。この光を貰っておいて、なのに僕は…っ。

    (く、そ…………)

    意識が明滅。ここで気絶したらきっと、人の姿に戻ってしまって2度と立てない。
    ゴジラを止めなきゃいけないのに。彼が暴れる理由を解き明かさなきゃいけない、の、に……────


    「やめてくれッ!!」


    聞き覚えのある声が、僕の鼓膜を叩いた。

    ───

    何が起きている?
    新型タイタンの攻撃を止めるべく、軍の援護に向かおうとしていた。タイタンが人への直接攻撃を躊躇い、交渉の可能性が示唆された。そこまでは良かった。

    「ゴジラ、何故だ」

    彼が現れ、全てを覆してしまった。
    皆殺しを目的とした津波。無差別破壊を前提とした市街地突破。それを抑えようとしたタイタンを前にし、尚も最優先攻撃対象を人間から変えない様。

    「どうしてなんだっ!」

  • 1001◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/18(土) 12:10:50

    人類の夢が込められた発射場が跡形もなく消し去られ、キノコ雲が立ち上っていた。いつぞや、日本にいた時、歴史の教科書で教わったヒロシマ・ナガサキのような。
    人類の罪を、示し、再現したかの如く突き付けてきた。

    「……やめろ……」

    その下で背鰭が光る。尻尾から胴を遡上するように、確死の光が三度灯されていく。

    「やめてくれぇッ!!!」

    ジープの中から叫んだ。届くとは思えなくとも、そうせずにいられない。
    そして何より驚くべき事に……声は届いたらしい。

    『……■■…』

    唸り、王が振り向いた。その眼差しに心から震え上がり、硬直して跪く事すら叶わない。
    俺の声で彼を止められたのか?──否。

    チャージ音。ただでさえ全て光っていた背鰭が、さらに輝度を増す。

    「は、は」

    もう駄目だ。俺という個人を識別した上で、彼は殺しに来た。

    紫に色を変えてまで、オーバーキルするつもりなんだと。

    「エル、サム」

    最期に呟くのは家族の名前。愛してると、そう言いたくて。
    ……そんな俺の願いは。

  • 1011◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/18(土) 12:12:07

    『ジュァアァッ!!!』
    『!?』

    割り込んできた巨人の突進に。
    「それは生きて伝えろ」と、そう行動で示され終わった。

    ──

    フォードさんの叫びで意識が戻る。まだだ、まだ終わりじゃない!終わりにする訳にはいかない!!

    (させるかぁぁぁ!!)

    飛び起きると同時に駆け込み、慣性を味方に付けたショルダータックル。横合いから捩じ込んだそれに、さしものゴジラもようやくダウンしてくれた。
    今しか無い、千載一遇のチャンス!

    (喰らってくれ!)

    起き上がるその隙に最大チャージ。僕が、ウルトラマンが放てる最大火力でゴジラを撃ち倒す!殺せなくとも、少なくとも追い返すんだ!!

    『ジュワッ!!』

    頭部から繰り出すフォトンエッジ。最後の力を掻き集め束ねたそれは、以前の数倍の太さでゴジラに迫る。届け、食らえ、効いてくれ───!


    「……そんな」

    効かな、かった。
    まさかの無傷、いや吸収。浸透した光の刃はすぐさま背鰭に伝達し、その中に大人しく収まってしまったのだ。ゴジラの力は地核の力、同種の力ならコントロールも彼の方が遥かに上という事か。

    (勝機は、無いというのか……っ?)

  • 102二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 12:31:13

    ここでアグルが仲裁に来たら熱い

  • 1031◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/18(土) 12:32:44

    膝を突く僕を、ゴジラは睨む。トドメを刺す気か……嗚呼、口が開かれた。やはりそうなのか。

    『───■■■■■■!!』

    しかし、出てきたのは熱線ではなく咆哮。大気を震わし、しかしタイタン同士では威嚇や命令以上の意味合いを本来持たないそれをゴジラは選んだ。
    理由はすぐさま明らかとなる。ウルトラマンとしての身体に“ノイズ”が奔った事によって。

    (まさか……!)

    大地の光が小さくなる。僕の中でみるみる内に鎮静化され、眠りに就いていく。
    僕が、ウルトラマンで、なくなる。

    「ゴジ、ラ……っ」

    完全に人に戻ってしまって、そこで僕の命運はとうとう尽きた。体が悲鳴を上げ、その意識を絶ってしまったからだ。
    その闇に視界が閉ざされるまで。王者はずっと、じっと、僕を見下ろし見つめていた。

    ────

    躊躇った時には落胆した。向かってきた際には憤った。

    その力は地球の物。なればこそ地球を守る為に、地球の敵を破壊する為に使われねばならない。妥協があってはならぬのだ。例えそれが同族であったとしても、だ。
    お前は“殺せない”と示してしまった。ヒトに自浄作用は無いのだと、その行いで。

    (最早ヒトは害そのものだ)

    度重なる環境汚染に、ギドラの覚醒幇助。我を偽る紛い物を造り、そして今回の件。益があるからと見逃してきたのも限界、星の敵とせざるを得ない。
    個々の悪性が全体に当て嵌まるとは思わず、しかし種として全体がある限り、その中より悪が生まれ出るのならば。

    星の敵となるならば、我は討つまで。

  • 104二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 12:42:49

    このレスは削除されています

  • 1051◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/18(土) 12:46:53

    ……だが。自ら罪を背負い、禊ごうとしたのは、その姿勢は、やはり。

    (赦そう、選ばれし者よ)

    お前だけは。星から選ばれるに足る理由は、既に示されている。
    依然未熟、故に光は封じさせてもらった。地の底へ逃れよ。そこから全てをやり直せ。



    ところで。

    (かの者も、此処にいたとは)

    MUTO共との衝突の折、居合わせたヒトの雄。我を呼び止めようと声を張り上げていた、その姿を思い返す。
    無論、対応に差異など無い。躊躇などありはしない。だから我は、せめてもの誠意と共に“全力で”殺そうとした。阻まれこそしたが、我の殺意に曇りは無い。

    だがそれでも、感慨に耽る心持ちは否定出来なかった。

    『………』

    儘ならぬ物だと。そう吐き捨て、我は“光”という不確定要素の消えた海路を進む。
    。 ・・
    次の標的へと。

  • 1061◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/18(土) 12:49:12

    ここで今回は打ち止め。レス番号的にも物語的にも(恐らく)折り返し地点です

    >>102

    期待させてすみまそん。こんな顛末になっちゃいました

  • 107二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 13:00:52

    >>106

    いえいえ、1の物語なのでそこはお任せ

  • 108二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 20:46:00

    アルファコールのような特殊な「声」なのだろうか
    ガイアと形は違えど地球のエネルギーを力にできるゴジラだからこその能力だね

  • 109二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:19:42

    ゴジラも大変だね

  • 110二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 07:58:56

    保守

  • 111二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 12:12:04

    タイタンに明確に上位存在がいるとしたらそれこそ地球意思ぐらいだろうからな。
    それに選ばれたとなるとゴジラとしては無視も無碍もできないんだろうな。

  • 112二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 12:43:04

    我夢が地球の光そのものを宿してるとはいえ1万年以上地球の頭を張り続けてるゴジラとは流石に経験値が違いすぎるよな・・・

  • 113二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 14:22:27

    >>111

    あくまでゴジラは地球という星の秩序を守る最も強い王であって地球の意思そのものではないからな、地球意思が人間を代弁者に選んだ理由とか人型になるのは重要なテーマになりそう

  • 114二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 16:15:13

    人間が現在の地球の王であるゴジラすら尊重せざるを得ない地球そのものに選ばれ、力を与えられたって知られたら死ぬ程面倒なことになりそう、宗教化とかでもした時には目も当てられない

  • 1151◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/19(日) 17:39:58

    ────また、あの蝶だ。

    ブラックアウトした視界に現れたそれは、倒れた僕の喉元へ降りる。どこか所在無げに。

    (……謝ってるのかい?)

    当たり前だが、返答は無い。代わりに口吻が伸び、僕の胸──さっきまで地球の光が秘められていた、でもゴジラによって封じられたそれを叩いた。

    要領を得ない。でも明確な答えも無いまま、腸は羽ばたいてしまう。
    手を伸ばす事も出来ないまま、僕は………


    「……ハッ」
    「っ!目が覚めたのね、Dr.ガム!!」
    「心配させんなよブラザー!こちとら、もうどうなる事かと……!」
    「ここ、は…?」

    目に入ったのは見慣れぬ天井と、見慣れた顔。意識を取り戻した僕を、アイリーン博士とバーニーが出迎えてくれたらしい。

    「モナーク・バルバドス支部の病院よ。ハワイで倒れていた貴方をフォード大佐が見つけて、彼から引き渡された“協力者”が此処まで運んでくれたの」
    「バーニーさんですか?」
    「俺は日本でお前が倒れる有様見て絶叫してただけだよ。ここにいるのは博士の口利きだ」
    「そう騒ぐな面白黒人。相手は傷病者だぞ」
    「誰がギャグ枠だって!?」
    「ネイサン、バーニー、2人とも!こんな時にやめて!!」

    ネイサン先輩まで入って来た所で、起き上がろうとした身体を激痛が迸る。特に脇腹、やはりゴジラから貰った一撃が尾を引いているようだった。

  • 1161◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/19(日) 17:45:06

    「貴方達は……僕の事を……」
    「……巨人の正体の事は、ここにいる皆が知ってるわ。でも公にはしてない」
    「助かります………」
    「だってどんな影響や問題を齎すか分からないもの。貴方を診たトラッパー曰く、肉体構造に特異な変化は見当たらなかったから隠蔽するのも楽だったけどね」

    タイタンに立ち向かう術の無いこの世界で、抑圧された人類の手に突如タイタンの力そのものが舞い降りてしまえばどうなるか。具体的にどうなるかは検討もつかないけれど、きっと碌な事にはなるまい。それを見越した先輩学者に、心から敬意と感謝を送る。

    ……で、ゴジラは?

    「ニュースを見れば早いわ」

    問うより早く点けられたテレビ画面に、すぐに彼の姿は映された。薙ぎ倒され炎に包まれる工場地区、その中を突き進むゴジラの姿が。

    「中国の工業地帯が……?!」
    「それだけじゃない。お前が起きるまで要した15時間、それまでに襲われた国際的大都市が3つ。犠牲者も無論……また独自に開発していたと見られるODミサイルの類似品を中国が打ち上げたんだが、なんと発射5秒後に地平線越しの熱線狙撃で撃墜された始末だよ。お陰でミサイル基地から周辺10キロ圏内の居住区域は漏れなく全滅だ」
    「そんな……!」

    ネイサン先輩から伝えられた、寝ている内に巻き起こった惨劇の内容に歯を食い縛る。ガイアリセッター計画はそれ程までに、怪獣王の怒りを買ったというのか。
    そう考えていた、その時。

    「なっ……」
    「モスラ!?」

    ニュース映像が、地中より飛び出す輝きを捉えた。鱗粉を放ち現れた翼、それは僕を度々誘った蝶にも似ていて。
    舞い降りた怪獣女王は、ゴジラの前で浮遊する。まるで妃が、暴走する王へ諫言を捧ぐが如く。

    『□□□!◇……!』
    『■■───』

  • 1171◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/19(日) 17:51:47

    「オイオイオイ、こりゃ希望が見えたんじゃねぇの?ゴジラはモスラに頭が上がらないんだ、上手いこと説得してくれりゃ止まってくれるぞ!」
    「落ち着け!まだ何も分からん、期待はするn──ぁ」

    『 ■ ■ ■ ■ ッ ………!!』
    『□…っ』

    バーニーさんの期待も虚しく、王の咆哮。怒りというより“諭し”の側面が強いような落ち着いた声音に、モスラが揺れる。すれ違っていく王の一歩を、彼女は止めなかった。

    「モスラですら諌められないなんて…っ」
    「……コングを、呼ぼう」
    「っ、それだけは絶対ダメよ!人類の不手際に彼をこれ以上巻き込めないわ!」

    愕然とするアイリーン博士、震える声音で提案するネイサン先輩。彼らの議論を聞きながら、僕は心の中で確信を深めていた。

    (ゴジラの怒りは、今回の一件だけを発端にした物じゃないんだ)

    積もり積もってきた罪禍。並べたそれを前に判断し、判決したが故の冷静さが、今の彼にはあった。怒りではなく理性で人類文明を攻撃しているのだと。そしてゴジラは、今まで地球環境の問題に対して、誤った判断を下した事が無い。その実績が表す事とは。

    「人類の削除こそが、“正解”。そういう事だ」

    新たなる声に、時が止まったようだった。その声に振り向けば、なんとも……懐かしい旧友の顔があった。

    「………やぁ、フジミヤ」
    「久しいな。ガム」

    分かっていた。僕にガイアリセッターの情報を送って来た匿名人物の正体も、アイリーン博士が言ってた“協力者”も。同じ師の下で研鑽を積んだ、君なんだって。


    「……おーいヒロヤ先生。患者の様子を診たいからどいてくれん?」
    「あっすまん」

  • 118二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 18:26:40

    まあ人間側から見ても愚かとしか言いようがない行いが実行される寸前だったからゴジラの決定も間違いとは言えないよな・・・

  • 119二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 00:07:23

    そもそも人類君、これまで見逃されてたのが割と不思議なくらいだし

  • 120二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 07:10:20

    保守

  • 121二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 10:35:00

    ガイアとアグルの力もそもそも地球を守る為ならゴジラに渡せばいいだけだもんなあ、モンスターバースでは矮小で問題ばかり起こす存在である人間に渡したっていうのは地球の基準に強さや賢さ以外の何かがあるってことだろうな

  • 122二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 10:39:38

    >>121

    地球が人間に授けた事に意味があると思いたい

  • 123二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 19:46:20

    「酷い顔だな」
    「……まぁね」

    モナークの仲間達(バーニー含む)には席を外してもらい。連れ立った屋上で2人、旧交を温め合う。
    フジミヤはセリザワ先生の研究室における同門、同期の研究仲間だった。放射線、地核エネルギー、そしてタイタンを調べる友だった……先生が死ぬまでは。

    「メカゴジラ暴走事件の時、犠牲者名簿に君の名があるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」
    「生憎紛い物の製作にはノータッチだ。関わってるとでも思ったか?」
    「いやだって君は……」

    タイタン駆逐派に回っていたじゃないか、と。でもあの時と違い、より影を帯びつつも病みからは脱した様子の彼に、それを言うのは憚られた。とはいえ沈黙こそが答え、容易に見抜かれてしまったようで。

    「ああ、そうだ。俺はあの時タイタン打倒へ研究の舵を切り、先生の理念を継いだお前とは袂を別った。だから先にその道を進んでいたレンと合流した」
    「でも今の君に、当時のような焦りは見えない。何があったんだ?」
    「……そもそも。実の事を言うと最初から、俺は別に反タイタン思想なんて持っちゃいなかったんだよ」

    驚きの返答。だが疑問は深まる、それなら何故先生の意志から外れる必要があったのか。どうしてわざわざエイペックス社に入ったのか……その答えもまた、聞く前に彼自身の口から。

    「俺は………共感してしまったんだ。エマ・ラッセルの淘汰思想に」
    「!!」
    「環境を傷付け続ける人類文明を一度、地球上から消去すべきだと思えてしまった。レンにもそれを見抜かれかけて…あの時は心から焦った」

    きっと、そう思った自分を否定したかったからこそ、逆に怪獣排斥にのめり込もうとした。そしてそれも叶わず、迷走の果てに彼はここまで来てしまったんだと。そう理解出来たのは一拍置いてからの事だ。

    「君は本当に……極端だなぁ」
    「知った風な言い方するなよ」
    「同郷の兄弟弟子だよ僕ら。知らない方が無理sッッてて──!」
    「ガム……っ」

    笑った刹那に襲い来る痛み。気遣わしげに屈み込んで来た友人を手で制し、荒げた息をなんとか鎮めた。

  • 1241◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/20(月) 19:52:43

    「………なぁフジミヤ。僕はどうすれば良い」
    「───」

    痛みの後に訪れたのは、無力感。

    「僕はチャンスを逃した。ゴジラの目の前で、人類を守るチャンスを……この事態は僕が招いたような物だ」
    「そう思うのか」
    「そうだよ!」

    あの時、もっとテキパキとガイアリセッターを破壊出来ていれば。躊躇するザマを見せなければきっと、ゴジラが出てくる事なんて無かったんだ。あの時の甘さが怪獣王の怒りを買った。
    せっかく貰った光だって……!

    「何度起動しても答えてくれない…見放されてしまったんだ、地球に!」

    手に握った光電子管は、もうどんなアプローチにも応えてはくれない。ゴジラの一声で制されて以降、あの光は僕の手から離れてしまっていた。
    だからもう、チャンスは無い。僕にゴジラを止められる力はもう……!
    .   ・・・
    「……逃げた俺じゃ、碌に気の利いた言葉は返せない」
    「………ごめん。これじゃ八つ当たりだもんな」
    「それで諦めるのかしら?」

    聞こえて来た3人目の声。フジミヤと振り向くと、そこにはハンプトン長官の姿が。

    「いつからっ!」
    「ついさっきよ──あぁ安心して頂戴、詳細は聞こえなかったし詮索するつもりも無いわ。けどねDr.ガム…貴方が思ってる以上に、人間ってのは生き汚い物なのよ」

    歩み寄って来た彼女から手渡されたデバイス、そこに表示されているのは“FIGHTER”………まさか!?

    「モナーク長官として命じます。Dr.ガム、リパルサーリフトの開発者として人類存亡を賭けた作戦に参加しなさい」

  • 1251◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/20(月) 19:53:37

    >>123はコテハン忘れです

  • 126二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 22:59:12

    >>124

    おっ、この世界でも開発されたか

  • 1271◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/20(月) 23:15:43

    リパルサーリフト。それはガムが開発した反陽子浮遊システムであり、揚力を不要とした飛行を人類にもたらす新次元発明であった。
    具体的に言えば、飛行機にUFO的な機動を可能とする。地上からの連続的な超火力対空砲火を前にしても、三次元の立体的な回避を可能とできる訳だ。

    そう。遠距離攻撃を備えたタイタン相手だとしても、空中戦を可能と出来るほどの。

    「そのシステムを応用した戦闘機、“ファイター”。君の技術提供により着手された人類の武器だ」
    「……わぁ」

    格納庫に堂々と並ぶ、その試作9機を前に。発明した当の本人でさえ感嘆の声を漏らす。
    ここはシャイアン・マウンテン基地。米国が冷戦時代、核攻撃に備え造ったこの基地は地下に存在し、即ちゴジラの遠距離熱線狙撃に対しても幾らかの防御力を見込める事も示している。その更に下層に新設された格納庫へ、僕とフジミヤは招かれていた。

    「システムチェック!」
    「エラーを残すな!!万全に仕上げるんだッ」
    「燃料足りねぇぞ早くしろォ!」
    「侵攻状況は!?」
    「“相手”が誰か忘れんな!!!」

    周囲を走り回る人々、その種類は整備員だけに留まらない。学者、オペレーター、軍人ら多種多様にそれぞれの仕事へ奔走している。

    「ここにいる誰も、諦めてなどいない」

    そう言ったのは僕達を招いた人──石室と名乗った、その彼だ。

    「ゴジラが人間を切り捨てた。それは否定のしようの無い事実なんだろう……しかしだからと言って、我々ただ告げられた死を待つだけの存在ではない。一欠片でも希望がある限り最後まで足掻く、それこそが人間のあるべき姿なのだから」
    「人類にこそ“非”があるとしてもか?」

    反論したのはフジミヤ。その瞳には確かな疑念が宿っている。

  • 1281◆RUTtJ6O5Nh8y24/05/20(月) 23:20:44

    「フジミヤ博士、ガイアリセッターの件は我々も把握している。人類の上層が地球に仇為した、その事実がある以上ゴジラの選択には否定し難い側面がある事も」
    「分かっていて尚拒むのか」

    咎める口調。それを止めようとする前に、石室さんが「わかっている、だがな」と応報する。ある種、人類の運命を問う審問がここに在った。

    「我々は償わねばならん、そして償うには生きていなければならんのだ。そのために我々は生きとし生ける人類を守る、例え不義理の泥濘を舐めようともだ」
    「「──!!」」
    「その上で頼みたい、タカヤマ博士。我々はこの新型ファイター達に全てを賭ける所存……彼らを万全に飛ばす、その手助けをしてくれないか……っ」

    ………頭を下げてくるこの基地の司令官。対し、僕の答えは既に決まっていた。

    「…パイロットの方達は、従来の戦闘機乗りですか?」
    「ああ。全員“トップガン”と呼ぶに足る精鋭をかき集めた」
    「じゃあ全員集めてください!リパルサーリフトの挙動制御にはZ軸方向への理解が不可欠です、僕がその点を擦り合わせなきゃ!」
    「!!っ、感謝する!」

    善は急げ。そうとばかりに召集令を出してくれた石室さんの後に続く──前に、キョトンと目を瞬かせるフジミヤへと向き直った。今の内に頼み事を!

    「フジミヤ、先生の研究室はあの日からそのままだ!そこからゴジラに関するありったけの資料を集めて来てくれないか!?」
    「なっ……何のつもりだ?」
    「ゴジラの行動パターンを読むんだ!ファイターがその力を十全に発揮できるような作戦を考えなきゃ!!」

    きっと急に生気を取り戻した僕の様子に混乱してるんだろう。僕自身、こんなに元気が出るなんて思わなかった……でも仕方無いじゃないか。皆頑張ってる、その姿を見せられちゃったら。

    (誰もウルトラマンの力なんて無いのに、それでも一人一人が人間として!)

    それを見ていたら、光に見放された程度でウジウジしている自分が、情けなくて仕方無くなったんだよ。
    この希望に満ちた世界を、滅ぼさせたりなんかしない。例えゴジラ相手だとしても!

    「この世界は、滅んだりしない……!」

  • 129二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 23:24:09

    コマンダーの頼もしさはやっぱ異常だわ

  • 130二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 00:06:59

    ノア「(無言の微笑)」

  • 131二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 00:50:28

    この世界のガイアとアグルは戦ってゾーリム呼ぶことなさそう

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