- 1二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:10:02
桜も散った4月の中旬。昼間は概ね暖かくなったけど、夜は未だに冷え込むそんな季節。
私こと、サトノクラウンは私の担当しているトレーナーが仕事を一段落したところに声をかける。
「トレーナー。今、大丈夫かしら」
「あぁ、今なら大丈夫だけど。何かな」
「来週、平日でもいいから、何処か夕方から夜にかけて空いている日はないかしろ」
「来週ね。……だったら、月、木ならいいけど、何か会社に関係すること?」
とりあえず、トレーナーの時間は確保できるみたい。どうやら彼は私が遅めの時間帯を指定した事で仕事に関係することと思ったみたい。でも、違うの。これから、お願いするのは私のプライベートなお誘い。
いつもなら、気軽に頼み事でも、今日は何だか胸がドキドキする。
「いいえ、仕事とは関係ないわ、あのね、来週の夜に見に行きたい所があるのだけど…。その初めて行く場所だから迷うかなって。だから、トレーナーに道案内を頼みたいのだけどいいかしら?」
本当は事前にアプリのナビを使えば一人でもたどり着くはず。だけど、私が行きたい場所にあなたに連れていって欲しいの。レースで導くように。だから、仕事とは関係なくあなたのプライベートな時間を私に頂戴。
「あぁ、そう言うことなら構わないよ」
彼は頼られたことが嬉しいのか、私のお願いを快く承諾してくれた。どうやら私の思惑には気付いていないみたい。良かったわ、気付かれてたら少し恥ずかしいもの。私はホッと胸を撫で下ろす。 - 2二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:10:37
「多謝多謝。恩に着るわ」
「それで、その見たい所って何処かな?門限に間に合う距離だよね……」
「ふふっ、安心して、そこらは大丈夫よ。場所は……それは当日までのお楽しみに」
私はトレーナーの質問にそう答える。場所を教えないのはサプライズにしたいの。楽しんでもらいたいのはもちろんある。行く道でその話で盛り上がったりして、私が見たいものをあなたとその日たっぷりと共有したいのだから。
「……そっか、それは楽しみにしとくよ。じゃあ、もう少し日時とか決めようか」
「そうしましょう」
そうして、私は来週トレーナーとお出かけの約束を取り付けることが出来たの。ふふっ、来週が待ち遠しいわ。 - 3二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:11:22
「お待たせ、トレーナー。それじゃあ、ここに連れていってくれる」
「了解。……ええっと、ここね。まずは駅に向かうか」
1週間経ったあくる日。軽めの練習メニューを終えてから、夕方頃に私達は学園を出た。その道中にて、トレーナーが私に声をかける。
「しかし、意外だな」
「你做咩呀?トレーナー」
「この藤祭りは確かに綺麗だ。でも、クラウンが藤に興味持ったのがね」
どうやら、トレーナーは私が指した場所を調べたみたい。そう、私が今日、見に行きたいのはライトアップされた藤の花。でも、彼は私が見に行きたいと言うほど熱意を持っていることに意外だったらしい。
「あら、そうかしら。いい、トレーナー。桜や菊が有名たげど、藤もね、日本でしか
見られない、とても綺麗なお花なの」
「なるほどね。全然知らなかったよ。それなら、今日は藤の花見を楽しんでね」
私が得意気に説明すると、彼は納得した様子。
「えぇ、楽しむわ。でも、トレーナーもせっかく一緒にいるんだから、あなたも楽しまないとダメよ」
「はは、そうだね。せっかく、クラウンの道案内として来たんだし、俺も楽しまないとね」
「そうよ。それにね、あなたと一緒だからこそ楽しみなの」
もう、あなたが謙遜するから、つい本音が出てしまう。その私の一言に彼は少し照れ臭そうに微笑む。 - 4二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:12:30
「そう言われると光栄だな。ところでクラウン。今から、行く場所は屋台もあるみたいけど、日本では行ったことあるかい」
トレーナーからの意外な質問に少々戸惑いながらも答える。
「そうね……。あまり来たことはないわ」
「それなら、向こうに着いたら。屋台もついでに見て回ろうか」
私ってば、うっかりしていた。花を見に行くことだけ計画していたから、屋台の事は頭になかったわ。それだけに彼の提案に嬉しくなる。
「ふふっ、それじゃあ、向こうでもエスコートをお願いね」
「えぇ、仰せのままに」
今日の楽しみがまた一つ増えたわ。
その後、私達は電車で数駅移動してから、徒歩で目的地に到着。
着いた頃には日は沈み、お空は真っ暗。それで目当ての藤の花は他にもそれを見ようとするお客さんでいっぱい。ようやく、見れた藤の花。それはその暗闇に紛れてくる出てくる魔を追い払うが如く、淡い青みかかった薄紫色がまるで闇夜の中から浮かび上がるかのように優しく照らされていた。
「好!!綺麗……」
「そうだね、これは確かに見応えがある」
そのライトアップされた藤の花が見せるその幻想的な美しさに思わず感嘆の声を上げる。トレーナーも私と同じようにこの光景に見惚れている様子。誘って来たかいがあったわ。 - 5二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:13:16
「ねぇ、トレーナー」
私は彼を呼ぶと彼は私の方に顔を向ける。
「ん?どうした、クラウン?」
「記念に写真でも撮らない?この景色を私のスマホに収めておきたいの」
そう提案すると、トレーナーは快く承諾してくれた。
「あぁ、いいよ。それじゃあ……」
そして、私達は自撮りモードにして、藤を背景にして写真を撮った。その写真には私の隣にトレーナー。心の中で小さくガッツポーズ。だって、私の願い通りの写真が手に入ったもの。
しばらくの間、藤を楽しんだ後に彼から声がかかる。
「クラウン、そろそろお腹すいただろう。屋台で何か買って食べようか」
「そうね。私もお腹すいたわ。それじゃあ、トレーナー連れて行ってもらえるかしら」
「もちろん」
そう言って、一旦藤から離れて屋台がある通りに向かう。日頃食べれないものでも食べようかしら。 - 6二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:14:14
「ねぇ、トレーナー。今日はありがとうね」
帰る途中、私はお礼を言う。私達は屋台で食事を済ませた後にもう一度、藤を堪能し、帰路に着いた。
「どういたしまして。クラウンが楽しめたなら何よりだよ」
私のお礼に対して彼は優しくそう返してきた。そして、続けてこう話。
「それに俺もクラウンとこうして一緒に過ごせて楽しかったよ」
その一言に思わずドキッとする。もうっ、不意打ちでそう言う事を言うなんてずるい。
「それなら、良かったわ」
私は辛うじて冷静さを保ちながらそう返す。本当、トレーナーは不意打ちがお好きね。
そんな私の様子に気付かずに彼は話を続ける。 - 7二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:15:01
「クラウンとはよく一緒にいるけど、こうして2人きりで夜の景色を見に出かけたことはなかったから、新鮮で楽しかったよ」
「あら、そうだったかしら。楽しめたなら、それは良かったわ」
確かに言われてみればそう。私はいつもトレーナーといるけど、こうして夜景を見に2人きりで出かけたことはなかったわね。だから、私も新鮮だったし楽しかったわ。
「あっ、それなら。今度は花火を見に行きましょう。日本の花火って、カラフルって聞いたわ」
だから、私は付かさず二人で夜景を楽しめるよう彼に次の予定を提案する。今度は遠回しのものではなく、直球で。
「花火か、確かにそれもいいかもしれないね」
彼はそう呟きながら空を見上げる。その横顔は何処か懐かしそうなものに見えた。私はこの機会を逃すまいと、更に畳み掛けた。
「えぇ、楽しみね。浴衣見せちゃおうかしら」
「そうだね。クラウンの浴衣姿も見て見たいし、花火には丁度いいね」
私の軽い冗談にも彼は真摯に返してくれた。私は彼のその反応に思わず嬉しくなる。
i'm confident。これで次の予定も出来たわ。勿論それは2人きりでね。 - 8二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:19:01
藤の季節は一ヶ月前でしたが、書きたかったので書きました
- 9二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 22:30:08
書きたくなったならお題の季節感なんて関係ないんだぜ!!
良い意味でしっとり感があって良きSSでした - 10二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 23:17:14
クラちゃん回りくどい…だがそれが良い!
クラウンとクラトレがイチャイチャしてるSSなんてなんぼあっても良いですからね、ご馳走様でした