- 1キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:54:59
- 2キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:55:32
- 3キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:56:02
- 4キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:56:35
- 5キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:57:52
あーもうバカバカバカバカバカバカバカ!
落としてんじゃねぇよ大バカ野郎!!
規制されなければ今日お出しします!本当にお待たせしました - 6キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:58:33
それと決意新たにトリップ付けました ちゃんと出来てるかな?
- 7キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:59:09
怒りの保守
- 8キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:59:23
憎しみの保守
- 9キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 01:59:53
悲しみの保守
- 10キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 02:00:20
嘆きの保守
- 11二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 17:54:10
懐かしいスレが細々とやってて驚いたぜ……
- 12編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/05/21(火) 20:46:34
落として申し訳ない……
- 13キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 20:51:11
それはこちらのセリフ……
日付と日数感覚が狂った阿呆で申し訳ない
見捨てられないだけで本当にありがたい
それはそれとして新節はCMの後! - 14二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 22:28:40
9
「何とか撒けたようだな……」
「えぇ」
アリュメイアからの追走を振り切ったクウェンサーとアドレイドは、『アンナマリー』を観察できる位置に佇むビルの影に再び身を潜めていた。
道中でチェイスを繰り広げた『キャロライン』達に関しては挟み撃ちを仕掛けようとした個体同士をギリギリで躱して同士討ちの誘発、配電盤に突っ込ませて高圧電流によりショートさせる、ミキサー車に積載されていた生コンクリートを浴びせて固めるといった方法で動きを妨害し無力化してきた。
決定打を与えられる矢の温存を優先していたが故に、本体に撃ち込めた個体は少ない。そのため本当に活動停止に追い込んでいたかについては正直なところあまり確証は持てていない。
それに加えて逃げる中で幾つかの違和感を覚えていた。
「結局やり合ったのはのは最初の一機を無力化した後に差し向けられた奴らだけだったな。もっと数を呼び寄せたり、俺達の進路上に待ち構えるように配備されていたらチェックメイトだったろうに。そういった『粗』でさえ、あのエリートにとっては『遊びだから』という理由だけで説明出来ちゃうかもしれないんだけどさ」
「それでも『アンナマリー』はじぶんたちにとって本丸であることはさすがにりかいできてはいるでしょう。たとえあそびの範疇でもとりにがすなんてわざわざじぶんの評価をさげるような失態をさらすかしら?」
「…………………………誘い込まれたって言いたいのか?」
「そうね。あるいは……」
ズッ……、ズズズ……。
アドレイドが何かを告げようとしたが、その前に近くから発せられた何か重たい物が引き摺られるような音によって阻まれた。 - 15二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 22:29:34
「「っ!」」
音源の正体は突如内側からズラされたマンホールの蓋。
先程『キャロライン』のキューブが湧き出たスポットであったことを思い出して二人はそれぞれの持つ武装を構えようとしたが、奥から這い出て来たのは彼らが危惧していたものではなかった。
「おっしゃドンピシャ!安全にお膝元まで辿り着けたぜ!やっぱり俺様の読みに間違いは無かったってこった!」
「エリートの空間認識能力を駆使してここまでみちびいてやったのはだれなのかわすれんなこのやろー」
久々に耳にする聞き慣れた声。
騒ぎに際して逸れてしまったヘイヴィア=ウィンチェルとノエル=メリーウィドウのペアであった。
懐かしい面子の出現に安堵の息を吐いて、ドラゴンスレイヤーコンビの片割れはいつも通りの軽口を穴から頭を覗かせた相棒に浴びせかける。
「お、生きていたか不良貴族。相変わらず悪運が強いようで何よりだ」
「それはこっちのセリフだぜもやし野郎。てめぇのことだ。どうせそっちの女狐におんぶにだっこだったんだろ」
お馴染みのやり取りにニヤリとした笑みを交えつつ、ヘイヴィアは地上へと這い出ると穴の底に待機しているノエルに向かって声を送る。
「ヘイ、地上の安全は確認したぜ。おまけに逸れた連中共もいやがった。昇って来ても構わねぇぞ」
「りょーかーい!んしょ、んしょ……」
「何だか見てておっかないな。ほら、引っ張り上げてやるから掴んで」
合図に従って取り付けられた梯子を上がるノエルだったが、視界が暗いせいかどうにも覚束ない様子であった。今にも手か足を滑らせそうでどうにも危なっかしい。
その様子を覗いていたクウェンサーが手を伸ばして補助しようと試みたが、そこで悪友に止められた。
「おっと、そこのアホ眼鏡とは握手を交わさない方がいいぜ。機械仕掛けだから一歩間違えるとグチャグチャにされんぞ」
「えっ、何それ。怖っ」 - 16キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:30:45
衝撃のカミングアウトにより咄嗟に手を引っ込める意気地無しに対し、あんまりなあだ名(自業自得)で呼ばれた少女は頬を膨らませて抗議する。
「ちからの加減くらいちゃんとできるわい!……多分。それと『アホ眼鏡』ってよぶなし!」
「はいはい、インテリジェンスガール。というかさっきから通って来た場所のせいか変な匂いがするんだけど。具体的に言うとちょっと臭い」
「ガーン!キサマ、オンナノコにむかってそんなセリフをよくも……!」
紆余曲折を経て改めて四人が揃った。
別行動を取っていたヘイヴィアとノエルの調子を見るに目立った負傷は無さそうだ。こうして敵の本拠地を前に誰一人欠けずに合流を果たせたのは僥倖と言っても過言ではない。
ならば突入する前にまず最初にするべきは情報の交換と共有といったところか。
特に『キャロライン』の存在は作戦を遂行するにあたって大きな障害となる。知らせておいて然るべきだろう。
「─────というわけなんだけど」
「クソッタレが……。オブジェクトがもう一機いやがるだと?」
「わたしたちは地下にいたから会わなかったけどラッキーだったんだね」
「その地下についてだけれど、これいじょうはもぐりながら『アンナマリー』にちかづくことはできなかったのかしら?」
「あぁ、無理だな。一通りぐるりと回ってはみたが、生憎どの方角からも人間が通れそうな通路は見当たらなかったぜ」
「じゃあやっぱり地上から攻めるしか無いってことか」
時間は有限かつ新たな敵がいつ襲って来るのかわかったものではない。そのためさっさと内部に突入してしまいたいのだが。
「さて、どうするか……」
そう素直に即決して実行するには些か躊躇われているのが現状であった。
その原因。
全員の視線が『アンナマリー』の足元に構えられた正面ゲート。正確にはその手前に設けられている広場へと向けられる。
観光パンフレットによると敢えて建造物を置かないことで、様々なイベントなどの興行に利用できる多目的スペースとして開放されていると書かれていた。
平時ならば表向きの顔である憩いの場として市民や観光客らで賑わっていたであろう石畳が敷き詰められたそこは、今や深夜の学校のグラウンドのようにガランとしている。 - 17キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:31:27
無。
動くものが一切存在しない地平。
埋め尽くさんばかりに待ち構えていると予想していた無人兵器達は一機たりとも見当たらない。
「……こいつは流石に不自然すぎるよな」
「どうする?ふみこんじゃう?」
「早まんじゃねぇ。完っ璧に罠に決まってんだろ。地雷やセントリーガンが仕込まれてるかもしれねぇし、擬態が出来る例の『キャロライン』っつうオブジェクトが控えてやがったら遮蔽物も無しに太刀打ちできねぇぞ」
「ついでに『アンナマリー』は『ネバー』のなかで大差をつけていちばんたかい建造物だから、引き返してほかのビルからパラシュートやウィングスーツで屋上にとびうつるといったアプローチもつかえないときたわね」
最終防衛ラインがノーガード。
通常の戦略に則るならばまずありえない白々しい無防備さは、「来れるものなら来てみろ」という黒幕からの傲慢な挑発なのだろうか。
真意は測りかねるが少なくとも何も用意されていないと汲んで迂闊に踏み込むのは間違いなく危険すぎるということだけは理解できる。
しかしながら、こうして足踏みしている間にも時間が削れていくこともまた確かであるが故、いつまでも代わり映えのしない景色を眺めて様子を伺っているわけにもいかない。
そんなある種の膠着状態に陥っている最中、事態は突如破られた。
「っ!ねぇ、あれ……!」
クウェンサー達が何かをしたわけではない。
変化を齎したのはノエルが指を差す『アンナマリー』正面ゲートの自動ドア。
思考を雁字搦めにして侵入を阻んでいた城門が開かれて、内側から何者かが登場した。
「おいおい、あいつは……!」
「自らおでましってワケね」
その正体は高級そうなスーツを纏った茶髪オールバックの男。
ドミニーク=G=ラスティネイル。
この街の王にして、此度の作戦における最重要ターゲット。世界を牛耳ろうとするクソ野郎は貼り付けたような笑みを浮かべて、いかにも「友愛を讃えています」といった感じの作り物めいた明るい声音でこちらに呼びかけてきた。 - 18キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:32:32
「やぁ諸君!ここに来るのを待っていたよ!歓迎しよう!そんなところに隠れていないで姿を見せたまえ!武装解除は結構だから!私の目的は文明人に相応しい理知的な対話だ!少しばかり話をしようじゃないか!」
「野郎……っ、俺達が潜んでいることを把握してやがるのか……!?」
「おもいっきりこっちのほうを見ているわね。どうやら位置までわれてるみたい」
「無視するか?」
「そんなマネをしたら、無人兵器なり『キャロライン』なりをけしかけられるでしょうね」
アドレイドがうんざり気味に溜息を吐いているのを知ってか知らずか、『ネバー』の王は政治家らしく言葉をもって四人の命運を掌の上で弄ぶ。
「私としては特別ゲストである君達を野良犬のように追い立てたくはない。30秒程時間を与える。何が自分達にとって懸命な選択か考えてほしい」
そう言って指を鳴らすと、黒い球体が正面ゲートの奥からゾロゾロと姿を現す。
『キャロライン』の本体がざっと十数機。
要求に応じなければ命令を下して一斉に襲わせるという意思を示すようにそれらはズラリと整列させられる。
「ほらね」
「ど、どどど、どうすんのさぁ!?このままここにいてもすりつぶされるだけだけど、だからといってバカしょうじきに出ていっていいワケっ!?」
「こうなってはしかたないわね。いっそのことここは乗っかってしまいしょう。かれは内心じぶんの庭があらされてはらわたがにえくりかえっているだろうから、その下手人をつまらないほうほうなんかで始末しないはず。そういうおとこよ」
「それってつまりは鬱憤を晴らすためジワジワと惨たらしく殺されるってことじゃねぇかよ」
「打開策は?」
「………………。あるにはあるけれど……」
いずれにせよ向こうにこちらの位置が知られている時点でどちらが不利なのかは明白だった。
一先ずの生を得るために十分な警戒を挟みつつ四人は姿を晒し、ドミニークの言に従って広場を横切っていく。 - 19キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:33:29
「絞首台に送られている気分だぜ」
「実際その認識で間違ってないでしょ」
アドレイドの推測通り、途中で奇襲や騙し討ちを受けることは無かった。
それでも破裂してしまいそうな緊張感を携えて一行は『アンナマリー』の正面ゲート前へと辿り着く。ターゲットまで目と鼻の先だというのにそれを阻む『キャロライン』達のおかげで、直ぐ近くにいるのに余りにも遠く感じられる。
「ふむ、よく出て来てくれたね。改めて歓迎しよう」
クウェンサー達と対面するとドミニークは客人でももてなすかのように朗らかな笑顔を向けてきた。しかしながら、やはり目だけが笑っていないので作り物臭さが拭えない。
「アドレイド!こうして直接顔を合わせるのは久々だね。ロズウェルで君の生体反応が消えた時は心配していたんだ。生きていて実に喜ばしいよ」
「あらそう、私はできればあいたくなかったわね」
「ははっ!これはこれは相変わらず手厳しい!しかし本当だとも。過去のことはお互いに水に流そう。こう見えて私は数々の危機を打破し、こうして喉元に迫りつつある君達を高く評価しているのだから。つまり、だ」
一拍置いてドミニークは一つの提案を告げた。
「どうだね、私の下で働かないか?報酬なr
「「「「お断りだ。クソ野郎」」」」
当然の即答と同時にアドレイドの拳銃とヘイヴィアのアサルトライフルが同時に火を吹いた。
二つの銃口から放たれた弾丸によって、それなりの体格を誇るはずのドミニークが着弾の衝撃で後方へと吹き飛ばされる。
有り体に言えば奇襲・不意打ちだった。
「卑怯」と指摘されれば全く持って仰る通りだが、戦場では「正々堂々」や「騎士道」を掲げる輩から先に死んでいく。良し悪しに関わらず、生き残れる手段こそが「正解」で「正義」だ。
そもそもゲス野郎の戯言に耳を貸す義理なんて彼ら四人にとっては最初から持ち合わせてなどいない代物であったのだから。
- 20キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:35:08
「御大層な演説なら地面にでも披露してろ政治家野郎。そのまま起き上がってくんなよ」
「あ、やっぱりふつうに撃っちゃうんだ……」
「態々最後まで律儀に聞く理由が無いからな。先手必勝だ先手必勝。それよりちゃんと急所は外したんだろうな。まだ殺しちゃダメじゃなかったっけ?」
「銃を携行する資格すら持ってねぇシロウトがうるせぇよ。勿論念頭にゃ入れてたから心配すんな」
地味に窮地であったがターゲットがこちらを舐め腐ってくれていたおかげで、ノコノコ顔を合わせたところで無力化を果たせた。
主の危機に反応して『キャロライン』達が動き出すケースを懸念していたが、幸いなことにそういった気配はない。
あとはこのまま何も起きなければ、予定通りドミニークを締め上げて必要な情報を吐き出させて作戦は9割方完了だ。
「ふ、フフフ……」
そう思っていた矢先。
銃弾を浴びて地面に仰向けで横たわっている男が不意に笑みを溢した。
それは徐々に膨らんでいき、直ぐ様呵々大笑となって広場を貫いていく。
「フフフ、フフフフフフフフフフフ……!ハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!」
「ッ!」
確かに違和感は存在していた。
仮にスーツの下に防弾ベストを着込んでいたとして、銃創は防げても衝撃までは殺し切れない。
命中した箇所は金属バットで殴られたような激痛が走っているはず。部位によっては骨が滅茶苦茶に折れていても不思議ではない。
訓練を受けていないただのビジネスマンであったならば悶絶して呻き声を上げるくらいが精一杯で、とてもあのようににけたたましく笑っていられるわけがないのだ。
得体の知れない黒幕の様子に一行は再び警戒度を一気に引き上げて銃口を向け直す。
「何がおかしい?自暴自棄か?」
「いやぁ、決してそんなことは無いとも。こんな単純なトリックに騙されてくれるとは思わなかったのでね」
「もしかしておかねにまかせて超高級最新式の防弾ベストでもきこんでいたとか?」
「少なくとも俺の持ってる知識の中には、銃弾の雨をほぼノーダメージで抑える程高性能なブランドは無かったと思うけど」
「えぇ、そもそもこのおとこが迂闊n
『あぁ、その通りだとも』 - 21キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:38:19
アドレイドが最後まで言い切るよりも前に、横合いから発せられた声が遮る。
目を向けるとそこには先程銃撃した相手と同じ顔と同じ格好と同じ声を持った人物、ドミニーク=G=ラスティネイルがそっくりそのままもう一人佇んでいた。
『まったく、死んでしまったらどうするんだ。酷いじゃあないか。人の話は最後まで聴くものだと親や学校の教師から習わなかったのかね?』
「……偽物か」
「そんなことだろうと思ってたぜ。人形を介した腹話術でしか他人と話せねぇチキン野郎が」
ボゴ、ボゴゴゴゴッ!
硬い物体が泡立つような音と共に銃撃されて倒れていた方のドミニークの形をしていたカタマリが無数の立方体となって崩れていく。
『キャロライン』のキューブ装甲。
それらは地面に散らばると独りでに蠢き、地面を転がって本体へと吸い込まれていく。
立方体を寄せ集めて表面の色彩を整えれば一人の人間がその場で動き、喋っているように錯覚させるなど造作も無いということか。
つまるところ最初からドミニーク本人は自分達の前に立ってなどいなかったのだ。
『短気で頭に血の登りやすい君達の引き金が軽いであろうことは容易に想像できたのでね。「島国」には「備えあれば憂いなし」という格言があるそうだ。それに倣ったが懸念通りとなったようだね。そもそも臆病な私が無策に姿を現すわけがないだろう?あぁそうそう、君達に話しかけている「これ」も本物の私ではないから銃撃しても無駄だと先に言っておこう』
確保すべきターゲットはここにはおらず、自分達は両手の指の本数よりも多くの『キャロライン』達による包囲網。
僅かな間だけ形勢逆転したかに見えたが、結果的に敵の術中にまんまと嵌って事態は不利な状態へとリセットされてしまった。
勝利を確信したドミニークは余裕たっぷりの態度で侵入者達にチェックメイトを突き付ける。 - 22キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:40:29
『さて、君達が必死に張り巡らせた「策」とやらがただのつまらない不意打ちというのなら結果はご覧の通りだ。まだやるかね?』
「いいえ、てづまりよ。さいしょから奇襲なんてつうようするとはおもってもいなかったのだし」
それ対してアドレイドは肩を竦めて俯きながらホールドアップのポーズを取る。端からその姿勢を眺めれば全てを諦めた者のように見て取れただろう。
『おや?用意周到な君らしくない。ならばここが君達の終着点だ』
「あら、ほんとうにそうかしら?」
だがしかし、女スパイの口元だけは負け犬に似つかわしく無い獰猛さを伴って不敵に歪んでいた。
その様子を見てドミニークの眉が怪訝そうに動くと同時だった。
前触れも、警告も、予兆もなく事態が急変する。
『待ちたまえ。何がおかs
今度は彼が言葉を遮られる番だった。
突如並べられていた『キャロライン』のうちの一機に携行ミサイルが突き刺さり、槍のような爆発物はその装甲を貫通しめくれ上がらせたのだ。
それが合図となった。
ワァアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!という歓声にも似た雄叫びを上げながら、武装した人々が『アンナマリー』を目指して雪崩込む。クウェンサーから見えているだけでもざっと百人以上は数えられた。
軍服に身を包む者もいれば、中には潜入時の自分達のような観光客らしいラフな格好のまま銃火器を振り回している者もいた。
更に銃声にかき消されて微かにではあるがよく耳を澄ますと自分達のいるエリアから幾つか離れた先のブロックからズズンッ……!とくぐもった腹に響く重低音と鼓膜を刺激する甲高い破裂音が聴こえてくる。おまけに音源であろう箇所からは環境に悪そうな黒煙が数条立ち昇っていた。
ここだけではなく『ネバー』のあちこちで戦闘が勃発している証だ。
『ッ………………やれやれ、アリュメイアはしくじったようだな。些か騒がしくなりそうだ』
- 23キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:41:16
ドミニークはあくまでも冷静な態度を崩さなかったが、小さく含まれた舌打ちをクウェンサーは聞き逃さなかった。
「ざまぁみろ」と舌を出して煽ってやりたかったが、何が起きているのか理解できていないのでどうにも憚られた。
果たしてドミニークと敵対する所属が定かでない集団が突然湧いて出て来たことは自分達にとって吉なのか凶なのか。
それが判明しない限り、安易に次の行動を興すのは得策ではない。
というか情報を処理し切れず軽くパニックに陥っていた。
「はわわわっ!?ナニコレェ!?」
「一体どこの誰なんだよこいつらっ!?」
「知るかよ!俺達を巻き込むことに躊躇しねぇことから鑑みるに、ピンチに颯爽と現れた助っ人ってわけじゃなさそうなのは確定だクソッタレ!」
事態を上手く飲み込めていない三人へ唯一一行の中で事情を把握していると思われるアドレイドが漸く説明を行う。
「どうやら間にあってくれてたようね。私たちを追いかけた『キャロライン』。どうにも数がすくないと思っていたのよ。アリュメイア=キングスバレイが手をぬいていた可能性もこうりょしたけれど。こたえは単純。いたのよ。私たちいがいにもこの街のほうかい、あるいは機密情報のだっかんをかくさくしていた勢力が」
「これだけのスパイと潜入部隊が既に『ネバー』に潜り込んでいたのか……。よく見ると『正統王国』の兵士もいるぞ」
「それはそれとして毎度のことながら分の悪い他力本願100%の賭けでサラッと俺達の命を差し出してんじゃねぇよ!あと10秒何も起こらなかったらどうするつもりだったんだこの野郎!」
元々亡命者を無秩序に受け入れているおかげで、各勢力からの反感を買いやすかった土壌があったのだろう。
それぞれの上層部は『ネバー』を内部から崩壊させる部隊を密かに送り込み、『キャロライン』の監視を掻い潜りつつその機会を伺っていた。
そんな折、自分達が「最初のペンギン」となってトリガーを引いたタイミングを好機と判断して同時に動き出したという筋書きだろうか。 - 24キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:42:40
『ふぅむ、仕方がない。ここは一旦退かせてもらおう。非力な私にとって荒事は専門外なのでね。なのでこの場はかわいい『キャロライン」達に任せるとしよう』
多くの兵士達が眼前に迫りつつある状況下で、溜息を吐きつつドミニークの代弁役を担っていたキューブ人形は下半身から地面に沈むようにその形を崩していく。最後まで残っていた頭部は無機質な瞳でこちらを見据えていた。
『交渉が決裂したのなら仕方あるまい。何よりも興が冷めてしまった。執務室で待つとするよ。全ての決着を付けたいのならそこまで昇って来るといい。優秀な君達のことだ。どうせこの状況も切り抜けて来るのだろう?健闘を祈るよ諸君』
そう勝手な約束を言い残すと偽物のシルエットは完全にバラバラとなって『キャロライン』達に吸収されていった。
それを皮切りに押し寄せる敵を迎撃するために『キャロライン』達は躍り出るように広場の各地へ散らばっていく。
全てを巻き込んだ正真正銘の「戦争」の火蓋が切って落とされる。
「ひ、ヒィィィィィィッ!」
「とりあえず危ねぇから伏せてろド素人!」
「ここじゃおちついてはなしもできないわね。アレに身をかくすとしましょう」
とりあえず四人は間抜けなヘッドショットを貰うことを避けるために地面に這いつくばり、破壊された『キャロライン』の残骸の影へと匍匐前進で辿り着く。
今のところは小銃程度の弾丸は防げているが携行ミサイルに不意に遮蔽物を飛び越えてくる手榴弾、多角的な十字砲火を防ぐには余りにも心許ない。いつ致命の流れ弾が飛んで来るかわからないピリピリとした緊張感がクウェンサーの背筋を炙っていく。
そんな中、所持していた無線機が不意に通信を拾った。タイミングから考えて、目の前で繰り広げられている乱戦と無関係でないのは確実だろう。
案の定発信元はベースゾーンに待機しているはずである上官からであった。 - 25キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:45:01
『クウェンサー、ヘイヴィア。聞こえているならどちらでも構わん。直ぐに応答しろ』
現場で満足に支援を与えられないため、作戦が完了した時まで聞くことはないだろうと思っていた声。つまりは傍受される危険性の無視や想定していたタイミングを逸脱してまで伝えなければならない事態が発生した証だ。
「こちらクウェンサー。現在『アンナマリー』付近にいます。それと色々ありましたがこの場に全員揃ってます」
『そうか、よかった。無事だったか』
通信機越しに上官が安堵の息を漏らす音が聞こえたが、今はいつも厳しい彼女の意外にも部下想いな一面に感涙で咽び泣いている場合ではない。
何故ならこの瞬間も現在進行形で命の危機に晒され続けているのだから。
「そんなことよりもさっきから街中で俺達以外の誰かがドンパチしているんですけどっ!?何ですかこれ!?」
『遅かったか……。いいか、よく聞け。簡潔に述べるとその街に潜入していたのはお前達だけじゃない』
「それは何となくわかりますが具体的には一体どこの……!?」
『わかりやすく言うなら四大勢力雁首揃えて、だ。どこかの馬鹿が全勢力に「宝探し」の景品がそこにあるとリークしやがった。今暴れているのは元からスパイとして潜伏していた連中だろう』
「……っ、どうします?同じ『正統王国』軍に合流して協力を促しますか!?」
『いや、友軍に説明する時間すら惜しい。人間と無人兵器でじゃれ合っている間はまだいいが、これから更にヤバイ奴らが控えている』
「時間が惜しいってまたタイムリミットが縮まったってことですか!?それに『ヤバイ奴ら』ってまさか……!?」
対人における脅威である無人兵器よりも更に上。クウェンサーの脳裏に次世代戦車で編成された車両部隊や爆撃機などの航空戦力を浮かべたが直ぐに振り払われる。
年若いながらも歴戦の将校であるフローレイティアが今更そんなありふれた兵器を「ヤバい」などと形容するはずがない。
だとするならば、更に更にもっと上の想像しうる限り最悪のパターンに決まっている。
- 26キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:46:33
『既に察しているようだな。おそらくお前の予想通りだ。あと一時間程で四大勢力のオブジェクト多数が「ネバー」にやって来る。確実にな』
「オブ……ジェクト……」
「マジかよ……」
「そんな……!」
「……………………」
その場に居た全員の顔が凍り付く。
たった一機でも同じオブジェクト以外にはオーバーキルだというのに、それらが複数並んで一つの標的を集中砲火したらどうなるか。
少なくとも一都市程度ならば比喩抜きで地図上から物理的に消し去ることなど容易いのは確実だろう。
『お姫様には時間を稼ぐように頼んではいるがおそらく長くは保たない。だから、私からの命令はただ一つ。白々しくもドス黒い正義を掲げる馬鹿共が取り返しのつかない破壊と蹂躙を撒き散らすその前に片を付けろ。以上だ』
上官との通信が切れると再び闘争による騒音がクウェンサーの鼓膜を震わせる。
それでも思考はクリアだった。
(お姫様……)
こうしている間にもよく見知った操縦士エリートの少女は、たった一人で万全とは言い難い『ベイビーマグナム』を引き摺って怪物達と対峙しようとしている。
無論、フローレイティアが言ったように勝ち目などあるはずがない。
それでも逃げずに立ち向かわんとする彼女の為に自分達ができることは何か。
- 27キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:48:16
決まっている。
安全圏から高みの見物を決め込んでいる黒幕野郎をぶっ飛ばして、連合軍のオブジェクトが到達するか目論見が達成される前にこの事件を終わらせることだ。
「行くぞ。この混乱に乗じて『アンナマリー』に乗り込む」
他の三人からは返事の代わりに賛成を意味しているであろう無言の頷きが返ってきた。
ヘイヴィアとノエルの顔は青白かったが、それぞれ闘志はまだ燃え尽きていないようだ。
この場にいる自分達だけでなく第37機動整備大隊が一丸となって事に当たっていることを改めて意識し直し、辛うじてではあるが己を奮い立たせているのだろう。
修羅場に関しては経験豊富なアドレイドについては言わずもがな。
死地にこそ活路が開かれている。
走り続けなければ勝てない。
否、走り続ければ勝てる。
勝たなければ生き残れない。
否、勝てば生き残れる。
決意を新たに、一行は虚栄の銀塔を踏破すべくを更なる危険地帯へと踏み出していく。 - 28キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/21(火) 22:49:22
一旦ここまで
もう二度と落としてたまるかこの野郎
欲しがりません 完結させるまでは - 29キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/23(木) 21:55:06
こいついつもタイムリミット縮めてんな
- 30編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/05/25(土) 22:12:57
ほしーゅる
- 31キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/27(月) 21:15:10
あれ?おほほの喋り方ってどんなだっけ?
原作原作…… - 32キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/29(水) 21:29:41
干しゅ
- 33キャラシート◆BP2qeK/ddM24/05/31(金) 20:48:54
ほ し ゅ
- 34キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/02(日) 19:46:53
絶望だ……
明日から数週間にわたって朝4時起きから夕方まで仕事……
とりあえず体力振り絞って少しずつ書いていく所存 - 35編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/06/02(日) 22:03:02
おぉん……身体大事に
こちらも保守とかしていける時はやっていこう - 36キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/04(火) 19:30:22
職場燃えろ♥
- 37キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/07(金) 01:01:19
徹夜覚悟の保守
- 38キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/08(土) 21:27:33
土曜も仕事とか労基案件か?
- 39キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/10(月) 19:16:01
HOSHU
- 40キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/12(水) 19:45:45
ぬん
- 41編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/06/14(金) 21:29:03
ほしーし
- 42キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/16(日) 20:49:32
憤りの保守
- 43キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/18(火) 20:40:15
ゲロ吐きそうなくらい忙しい すまんぬ
- 44キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/21(金) 14:37:34
規制怖い……
ゅしほ - 45キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/23(日) 20:45:00
ヌ゙ッ
- 46キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/26(水) 11:41:29
\突 然 の 規 制/
- 47キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/27(木) 22:06:04
コツコツ……コツコツ……
- 48キャラシート◆BP2qeK/ddM24/06/29(土) 22:28:02
ほ
- 49編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/06/30(日) 22:35:59
保守
- 50キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/02(火) 22:10:11
づがれだー
- 51キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/04(木) 22:50:48
HO
- 52キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/07(日) 00:24:30
干しゅ
- 53キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/08(月) 22:25:59
★
- 54キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/10(水) 23:19:32
時間だけがあっという間に過ぎていく…… 恐ろしや
- 55キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/13(土) 09:30:51
ぽ
- 56キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/14(日) 23:16:38
。
- 57編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/07/15(月) 22:26:31
保守
- 58二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:45:59
このレスは削除されています
- 59キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/19(金) 23:18:52
ぬわー!
- 60キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/21(日) 21:50:37
!
- 61編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/07/21(日) 22:42:05
まともに保守出来なくて申し訳ない
- 62キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/23(火) 21:43:11
こちらこそ見捨てないでいてくれてありがとうございます
そしてクソ遅筆で申し訳ない
現在の進歩は節の7割ほど
筆を放棄したわけではなく多忙につきカタツムリのような歩みだけれど進めてはいるのでご安心を - 63キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/25(木) 21:57:50
。
- 64編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/07/27(土) 23:02:59
保守っしゅ
- 65キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/29(月) 22:26:39
ドゥンドゥン
- 66キャラシート◆BP2qeK/ddM24/07/31(水) 23:07:01
もうちょい!
- 67キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/02(金) 23:33:09
明日お出しします
- 68キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:18:14
10
─────同時刻。
通称『お姫様』ことミリンダ=ブランティーニは『ネバー』周辺に広がる砂漠にて、これからやって来る四大勢力のオブジェクトを迎え撃つべく『ベイビーマグナム』のコックピットに収まっていた。
スクランブル発進だったため修復が間に合わず、『ヴァニッシュラプター』との戦闘で負った損傷を抱えたままの愛機の状態は通常時と比べて精々7割程度といったところ。
ただでさえ「時代遅れの特徴に乏しい第一世代」と揶揄される機体だ。
全体数を把握できていない程のオブジェクト達と対峙するなど、百人に聞けば百人が無茶な暴挙と評するだろう。お姫様自身さえ実際にそう思っている。
ただし自分の目的は向かって来る怪物兵器の全てをスクラップに変えることではない。
足止めに徹して、『ネバー』に潜入したクウェンサー達が作戦を遂行するまで抑えていることだ。
勝たなくていい。ただ時間を稼ぐだけ。
寧ろ一機でも破壊してしまえば本格的に自分達は『ネバー』に味方する「世界の悪」と見做されてしまう。
付かず離れずの間合いを保ちながら、仲間達が無事に作戦を成功させることを祈るしかない。
『済まないわねお姫様。あなたにはじっくり休んでいてほしかったのに駆り出してしまって』
命令を下したフローレイティアの声音には申し訳無さの色が滲んでいた。
いつも気丈な彼女らしくない調子に対して、あくまでお姫様は普段通りの平坦な調子で言葉を返す。
「ううん、気にしてない。なんとなくだけどこうなるような予感はしてた」
核兵器にすら耐えうる怪物を止めるには戦車や戦闘機では余りにも力不足だ。その役割を担えるのは同じ怪物を手繰る自分となるのは必然だろう。
しかし、そこに驕りや自惚れといった優越感はは無い。
操縦士エリートだろうと一兵卒だろうと全員が全員、自分のできることを精一杯にこなしているだけなのだから。
かつてのアラスカでの経験を経て学んだことだ。 - 69キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:19:12
『いくら多数のオブジェクトが押し寄せてくるとは言っても、彼らにとって「ネバー」の擁するオブジェクトはどれ程の実力なのかは未知数となっているわ。だから、ある程度近づいたら様子見として一旦は止まるはずよ』
「わたしがそのすきにあたまを冷やすように交渉をもちかけてみる、でしょ?」
『危険な役割には違いないから気を付けて。何度も念を押すけれど、交戦することになったら多勢に無勢でまず負ける。誰が「最初のペンギン」を担うかの譲り合いが長引くように立ち回ってちょうだい』
「りょうかい。ちょうどきた」
お姫様はコックピット内の計器の一つにに視線を移すと、レーダーには50m以上もの巨躯を誇る物体の反応が複数体こちらに迫りつつあることを捉えていた。
自分こそが一番槍の栄誉を得ようと、幾筋もの砂煙を舞い上げながら怪物兵器達が先を競うように向かって来ている。
その進路上に立ちはだかる。
向こうもレーダー若しくは人工衛星のカメラを通してモニターに映し出されるよりも前に『ベイビーマグナム』の存在に気付いていたはずだ。
交戦許可を出されていない機体を前にオブジェクトの群れは一時行軍を停止する。
『おほほ、どこのだれかとおもえば「正統王国」のどろくさいエリートさんではありませんか』
最初に口を開いたのは見覚えのある機体を駆る聞き覚えのある声の持ち主であった。
左右にガトリング状に束ねた主砲を携えた『情報同盟』に所属する『ラッシュ』。
そして、それを操る自分達と何かと因縁のある「おほほ」と呼ばれる操縦士エリートの少女。
他の機体を差し置いて最初に声を発したということは彼女がこの一団、少なくとも『情報同盟』のオブジェクト達の代表なのだろう。 - 70キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:20:08
『なんのつもりですか?世界の総意によってほろぼすべきとけっていされたあのまちに背をむけて私たちの行く手をさまたげるようなマネをするなんて』
「ここはとおさない。あなたたちが砲をむけようとしているさきにはなんの罪もないひとたちがふくまれている。それにあのまちにはいまクウェンサーたちがいるんだから」
『まぁ、あのとのがたがいるんですの?おほほ、また騒乱のちゅうしんにいるだなんてつくづくにぎやかなかた』
「かならずかれらが作戦を成功させてこのバカげたさわぎをおわらせる。だからオブジェクトなんてひつようない。このままひきかえすかここでとまっていて」
『おほほ、そのようなざれごとに素直にしたがうとでも?』
やはりすんなりと引いてくれる気配は無い。
元々互いに犬猿の仲だ。
最初からそんな関係の相手からの言葉など鵜呑みにしてくれる程甘くはないだろうと思ってはいた。
とはいえ聞く耳は持たずとも今『ベイビーマグナム』が多数のオブジェクトに囲まれながらも戦闘に発展していないのは、「無辜の民をいたずらに犠牲にするべきではない」という自分の意見に対して「一理ある」と判断できなくもない部分があるからだろう。
尤も、その理由は「大義名分が掲げられていたとしても、虐殺への積極的な加担は外聞がよろしくない」という博愛とは程遠い利己的なものなのだろうが。
それでも功を焦った『情報同盟』上層部から正式に交戦許可が下されてしまえば待っているのは多勢に無勢の嬲り殺しには違いない。
ギリギリの膠着状態が齎す緊張により、操縦桿を握るお姫様の手に力が籠もる。
そのような一触即発の空気を、
『そこまでだ』
引き裂く者が一人。 - 71キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:21:00
『ボクは「ネバー」安全管理部隊隊長ローアイン=ラスティネイル。そして都市防衛オブジェクト、「アンナマリー」の操縦士エリートだ』
若者、というにはやや幼い印象の少年の声。
それも話を聞く限り、現在自分達が攻略しつつも守ろうとしている『ネバー』側に属する人物。
更に絶賛攻め込まれる原因となっているオブジェクトのエリートであった。
こちらがそのような事情を把握していることなど露知らず、都市の防人は「敵」に向けて警告を発する。
『「安全国」をじゅうりんしようとする侵入者たちよ。すみやかにたちされ。それいじょうちかづくのならようしゃはしない。交戦の意思アリとみなしてぜんりょくではいじょさせてもらう』
それに対し、おほほは「『敵』へ下手に出る必要などない」とばかりにいつも通りの高飛車な態度を持って応じるだけであった。
『あら、そちらからせっしょくしてくるだなんて好都合ですわ。おほほ、ローアイン=ラスティネイルさんとやら。あなた、なにかかんちがいしているのではなくて?ようきゅうをつきつけるのはこちら。あなたの愛するはこにわをだいなしにされなくなければただちに降伏しなさいな。現代におけるオブジェクト戦とはあらかじめ各じんえいのほゆうする機体のかずできまっています。けっかはみえているでしょう?』
『その返答はしたがう気がないとはんだんする。ならば覚悟してもらおう』
『それはこちらのセリフです。おほほ、私たちからのせめてもの慈悲をきょぜつしたむくいをうけなさいな』
わかりきっていたかのように、互いの最後通牒はいとも容易く跳ね除けられた。
故に和解の余地は無く、予定調和の宣戦布告が滞りなく交わされる。
そして、開戦にわかりやすい合図など存在しなかった。 - 72キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:21:43
「……!まって……!」
お姫様が制止する間も無く、先に仕掛けたのは連合軍側であった。
現在、彼らのいる位置から『ネバー』までは約20km以上は離れている。オブジェクト同士の戦闘においては長距離とされている間合いだ。主砲を命中させて致命傷を与えるには最低でも10km以内に接近する必要がある。
なので距離を詰めるために副砲で牽制しながら一斉に躍り出て行く。
どうせ目標はその場に固定されて逃げることのできない棒立ちの木偶の坊。
副砲と言えど一発一発がトーチカを跡形も無く破壊し、イージス艦の腹に風穴を開ける威力を誇っている。
それが一度に数百発。
スコールのような密度で砲撃が銀の塔へと殺到する。
並のオブジェクトが浴びたならばオニオン装甲を貫通せずとも、ボコボコに歪められて全ての砲を喪失し中のエリートは衝撃でトマトジュースになっていてもおかしくは無い。
しかし─────。
『あまい』
その尽くが『アンナマリー』どころか『ネバー』に届くことはなかった。
レーザービームや下位安定プラズマ砲由来の光線系は屈折してあらぬ方向へと逸らされ、コイルガンやレールガンから放たれた実弾は着弾前に空中で蒸発したからであった。
その様子を目の当たりにしたおほほをはじめとする連合軍のエリート達は思わず驚嘆の声を漏らす。
『無傷、ですって……!?』
『ちじょうのビルぶぶんの壁面に副砲がびっしりと……。なるほど、あのきょたいにふさわしく迎撃兵装はたりてるってワケか……』
『じめんの表面温度がふしぜんなほどにたかい……!くうきが熱せられて温度差の「層」がつくられている……?砂のしたになにかあるのか?』 - 73キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:23:32
周囲が混沌とした雰囲気に包まれる中、アドレイド=”エンプレス”=ブラックレインからリークされた情報を知らされていたお姫様だけがこの場で何がどのようにして起きたのかを理解していた。
(じめんにうめたJPlevelMHD動力炉によってあたためられたくうきが光線をまげたんだ。アドレイドが言っていたとおり、動力炉によるエネルギーきょうきゅうの「網」はすでに街のそとのさばくにまではりめぐらされている……!)
そして、あくまでも冷静に考察を重ねていく。
(『アンナマリー』は「うごけない」んじゃない。「うごくひつようがない」。これだけ迎撃システムがととのっているから)
それに加えて、オブジェクトに用いられる動力炉には単なるエネルギー源以外の使い道が存在する。脳裏には先日のロズウェル空軍基地跡においてアドレイドが発していたとあるブラフが過っていた。
(むこうはやろうとおもえばスイッチひとつでうめた動力炉を臨界じょうたいにして起爆させることだってできるはず。いくらオブジェクトでもまともにくらえば大破はかくじつ。これじゃあ迂闊にみうごきすらできない)
数には数で対抗する。否、最初から既にされていた。
蜘蛛の巣のように張り巡らされた動力炉の熱による空気のバリアーと地雷。
巨躯を誇る本体側面からびっしりと生えた副砲による迎撃網。
これら二重の守りによって『ネバー』並びに『アンナマリー』は鉄壁の布陣を敷いていたのだ。 - 74キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:26:16
『このていどか。怖気づいてあしぶみしているというならば、つぎはこちらからいかせてもらう』
そして、ローアイン=ラスティネイルは漸く先行を許した相手から自分のターンが回ってきたとばかりに、返す刀で明確な攻撃の意思表示を示す。
つまりは砲撃を届かせる手段を現状持たない連合軍とは異なり、『アンナマリー』は有しているという証左。
しかし、何が起きようとしているのかについてはここからでは遠すぎてカメラでは確認できない。
代わってベースゾーンの電子シュミレート部門所属のオペレーターが状況の説明を担うこととなったが、その口調は今までにない程の焦りを大いに含んでいた。
『衛星からの映像によると「アンナマリー」の上部から先端にかけて80m程が開こうとしています!まるで花弁のように!……熱源反応から推測するに、その一つ一つの全てが主砲と見られます!至急9時の方角に回避挙動の準備を!来ますっ!』
「っ!」
聞いてる方の精神が炙られるような切迫とした指示に従って、お姫様は咄嗟に言われた方向へと操縦桿を倒す。
─────と同時にそれは放たれた。
『あれはいったい……』
『な、なんッ……!?』
『まずい、よk』
連合軍のエリート達は決して呆然と立ち尽くしていたわけではなかった。
ある者は自慢の機動力を持ってして避けようとした。
ある者は砲撃で巻き上げた砂のカーテンで身を隠そうとした。
ある者は愛機に搭載せれている得体の知れないテクノロジーを駆使して対抗しようとした。
しかし、彼らの動きを無駄だと一蹴するように、『アンナマリー』を起点する放射状となった幾条もの極太のレーザーが砂の大地を貫く。
たった数瞬の出来事、されどその刹那の間であってさえ致命に至る砲撃が射線上に重なる連合軍のオブジェクトとその操縦士エリート達を無差別に蹂躙していった。 - 75キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:29:11
『「ハンマーシュート」、主砲喪失!どうか速やかに離脱の指示を!』
『「スティンガー659」、反応消失!その他友軍の僚機にも被害多数!』
『「ジゼル」大破!エリートの無事は未だ確認できません!』
『「フォルトゥーナ」推進部位に被弾、これ以上の戦闘行動は不可能です!』
「…………っ!」
『ベイビーマグナム』の通信網に次々と雪崩込んで来る勢力を跨いだ脱落者達を告げる絶望的な報せを前に、お姫様はただ唇を噛んで耐え忍んでいるしかなかった。
そして─────。
『アンナマリー』による壮絶な死の洗礼が一旦止むと、広々とした砂漠の一角に咲き誇る花のようなシルエットを象る破壊の軌跡が刻まれていた。
莫大な熱に晒されたその表面に張られているのは光沢を煌めかせるツルリとした何か。
その正体はガラス。
特に珍しくもないありふれた素材が物語っているのは熱せられた砂が含んでいたケイ素が急激に冷やされて固まったという事実と、それ程の現象を発生させる熱量を先の砲撃は伴っていたという証だ。
『なっ……!?』
たった一機のオブジェクトによって引き起こされた惨状に晒されたおほほをはじめとする生き残っていた操縦士エリート達は完全に狼狽え、恐慌状態へと誘われていく。
『ちょっ、ちょっと!あれだけの出力があるだなんてきいていませんわ!いったいどういうことですっ!?』
ピクニック気分で討伐に赴いた敵からの予想外の反撃に『情報同盟』のアイドルエリートは悲鳴のような甲高い声を上げる。
先程の『アンナマリー』の主砲の餌食となることは免れたものの、それはただの幸運が齎した偶然。
もしも砲撃範囲が『ラッシュ』のいた位置と重なっていたならば、蒸発していたのは彼女だっただろう。
連合軍全体が「次は自分だ」という危機感でざわつき始める雰囲気を尻目にローアインは高らかに告げる。 - 76キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:32:00
『けっかならさいしょから見えていたとも。ボクたちの勝利だ。あなどったな連合軍。たとえオブジェクトが何機こようともそのすべてをボクの「アンナマリー」がけちらす。これでもまだふみこもうとするかね?』
反論しようとする者は誰一人いない。
しかし、その沈黙こそがこの戦場を支配しているのは誰なのかを雄弁に示していた。
『「インドミナス」をしっているならべつにおどろくほどの代物じゃないだろう?こんなものタネもしかけもない。あきれるほどたんじゅんに街中にうめこんだ動力炉からあつめたエネルギーをたばねて解きはなっただけだ』
ローアインの口振りから、やはり『ネバー』の各地や周辺の砂漠にはJPlevelMHD動力炉が無数に埋まっているという仮定は真実のようだ。
それらからエネルギーを供給して主砲に回したのだとしたら、これ程の威力を発揮するのも頷ける。
下手すれば現在侵攻中のオブジェクトの総数を上回る火力を生み出せる可能性すら存在しているかもしれない。
「フローレイティア」
だからといって、恐怖に屈して「無様に撤退する」という選択肢など今更取れないし取るつもりもない。
少しでも状況を好転されるためにお姫様は上官に指示を仰ぐ。
「連合軍への説得はしっぱいしたし、予想いじょうに『ネバー』はたんどくであってもてごわかった。このままだと勝ってしまうかもしれないほどに。……わたしはどううごけばいい?」
『少なくともローアイン=ラスティネイルからしてみれば、オブジェクトを駆っている以上、あなたも「倒すべき有象無象」と判断しているでしょうね。だから、自衛のための砲撃は解禁するけれど、うっかり巻き添えにならないようやはり回避に専念してちょうだい。砂漠は舗装道路や水面のように真っ平らじゃないわ。吹き付ける風によって作られた「丘」や「窪み」といった高低差を利用してあの砲撃を躱しなさい』 - 77キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:32:35
「それに」と一拍置いてフローレイティアは言葉を続ける。
『現在は数の不利を覆して「ネバー」側が圧倒しているように見えるけれど、これは「アンナマリー」からの思わぬ反撃とその火力に連合軍が驚いて、これ以上自陣の被害を増やさないように二の足を踏んでいるからよ。よってこの膠着状態がいつまで続くのかは未知数。何しろオブジェクトは戦場・戦術によってその形態や性能を無理矢理にでも歪ませる怪物兵器。私達の想像が及ばない最新技術を搭載したゲテモノが戦局を変えるべく新たに投入されるかもしれないのだから。』
「つまり、わたしがめざすポジションはつりあった天秤をどちらにかたむけるのかをきめる『最後の分銅』ってこと?」
『ええ、その通りよ。とにかく最後まで生き残るのがあなたの役目。事が全て収まった時にクウェンサー達を迎えに行けるのは『ベイビーマグナム』しかいないかもしれないのだから』
いずれにせよ、この場において誰の味方でも敵でもない自分はより繊細な立ち回りが要求される。
降りかかる砲火を凌ぎながら、どちらの陣営にも勝たせないように均衡を保ち続けるバランサーに徹し切る。
更に困難で命懸けの渦中へと身を投じていくことは間違いない。
「りょうかい。まかせて」
故にここからが正念場。
少女よ、踏み止まれ。
仲間達が成し遂げるその時が訪れるまで。 - 78キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:33:08
【アンナマリー/Annamarie】
全長…500メートル
最高速度…なし
装甲…0.2cm×2000層(耐震・耐衝撃緩和建材装甲)
用途…都市防衛用大型兵器
分類…陸戦特化型第二世代
運用者…『資本企業』(便宜上所属となっている)、『ネバー』
仕様…なし
主砲…都市電力収束超火力プラズマ砲
副砲…民間人保護用ジェル、対空・対地兵器多数
コードネーム…アンナマリー
メインカラーリング…銀色 - 79キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/03(土) 22:38:20
一旦ここまで
いやー苦しかったー 職場粉微塵になれ
おほほは出す予定なかったのにレンディさん出したから自動で連合軍メンバーに 地理的に居ても不自然じゃなかったので
せっかくだからフォルトゥーナを名前だけ出演 やられ役だけど
……やっぱり一つの動力炉で星抜ける火力出せるインドミナスおかしいって! - 80キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/05(月) 22:29:50
オブジェクト戦の書き方だいぶ忘れてた……今回は特異だけれども
それはそれとしてアドレイドって今のところクウェンサー
とヘイヴィアを名前で呼んでないのか どう呼ぶのが正しいのか自問自答中……
ノエルは速攻で呼び捨てに移行しやがったんだけどなぁ此奴 - 81編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/08/06(火) 20:32:21
忙しくて見れてなかった 申し訳ない
インドミナスはねぇ……アレは最初に出たことが僥倖すぎる
SCPの某トカゲの如く強さのラインになったからね - 82キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/06(火) 21:01:59
「線」の破壊力の一点においては後継機のダモクレスを除いたら出てこなかったからのぉ
あんなのがポンポン出て来てたまるかってモンだが - 83キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/08(木) 22:16:49
うーむ、順調に元スレのチャートから逸脱しとる……(今更)
- 84キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/10(土) 23:02:26
それもまた人生
- 85キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/12(月) 22:50:49
干し
- 86キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/14(水) 22:39:21
旅行中なので執筆は一旦ストップ
ただでさえクソ遅筆なのに何やってんだテメェ…… - 87編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/08/14(水) 23:16:27
執筆だけ考えてはいけない
旅行楽しんでくださいね〜 - 88キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/16(金) 22:25:57
帰還
- 89編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/08/17(土) 08:03:30
- 90編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/08/17(土) 18:17:37
- 91キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/19(月) 00:18:35
ようやっと規制抜けた
うおおおおおおおおおおっ!!!
新作SSじゃあー!それも一番難しい完全オリジナル!
懐かしい名前が次々と出てきて感涙ものですたい
ジン、お前やっぱりズルいヤツだよ(褒め言葉)
そしてピーチ姫と化したもやし野郎
それに搭乗者が決まってなかったヤナギカゲのオブジェクトのエリートの名が新たに明かされてワクワク
『セリーヌ』然りやはり透明オブジェクトは強い(確信) 一方的に敵を嬲れるからそれだけでもうズルい
ああもう色々まだ感想あるけど興奮してまとまらねー!
書き上げてくれただけでもすごいのに更に続きがあるという嬉しさよ 本当にありがとうございます!
次なる舞台は『大陸』ですと!? - 92キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/19(月) 17:54:06
ふぅむ、時系列は鑑みるに3巻後〜21巻以前?
『大陸』でヤナギカゲとなると多分「あの子」も出るよな? - 93キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/20(火) 23:10:39
悲しい時ー悲しい時ー
「このシーンいらんな……」と思い至って1000文字くらい一気に削った時ー - 94キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/23(金) 13:02:36
星ゅ
- 95編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/08/24(土) 21:18:33
ほしーし
x.gd - 96キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/25(日) 22:00:42
もう続きが!
少し言及されていた胡蝶街がここで出るか 九龍城的アジア特有のごった煮混沌ダンジョンはロマン
しかしクウェンサー、アフリカから極東までしれっと地球半周くらい移動させられとる…… - 97キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/27(火) 22:14:30
実際の九龍城でも汚水避けに傘・帽子が売られていたそうですなぁ うへぇ
- 98キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/29(木) 22:37:42
またいらない場面を書いては消してる……
カット!割愛!省略! - 99二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 20:20:10
- 100編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/08/31(土) 20:57:18
文章の断捨離が難しいねんな……
- 101キャラシート◆BP2qeK/ddM24/08/31(土) 23:52:07
- 102キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/02(月) 22:12:34
もし時系列が6巻の後だとしたらフェンが通信越しとはいえ面識(?)のあるクウェンサー&ヘイヴィアと一悶着起こさないでよかった
元々引きずるタイプでもないか - 103キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/04(水) 23:22:39
★
- 104キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/06(金) 22:26:00
ヌッ
- 105編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/09/08(日) 18:49:14
- 106キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/09(月) 21:20:03
2章お疲れ様ー
フェン(『ヘッジホッグボマー』)が倒されたことに言及されたこととやっぱり出てきたコイヒメちゃんがお姫様と初対面な様子から時系列は『ネバー』の一件から14巻までの間の出来事?
だとしたらヘイヴィア、お前の挙げた変態共は近い未来に出会うことになるぞ
そしてなんやかんや便利なおほほ 好戦的だから色んな輩に喧嘩売ってくれるし丁度いい強さだから勝たせても負けさせても株が変動しないのだ
意外だったのは『ジャンクヘッド』の弱点 被弾が想定されていない箇所のガードは適当は安価がウリの機体ならでは
はてさて道連れにカラフルな三人娘が加わりましたがどうなることやら
ノエルといいアドレイドといいヒロインは現地調達するもの! - 107キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/11(水) 22:17:06
もうちょい
シリアスパートむずい……
かといってコメディパートも得意というわけでもない
じゃあテメェは何ができるってんだよぉ! - 108キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/13(金) 23:05:45
保守柿
- 109キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/15(日) 23:21:46
ままならぬ
- 110編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/09/16(月) 02:05:08
最近エリートの会話を考えてたらデイビスのCVが津田健次郎で脳内再生されるようになってきた……
x.gd - 111キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/16(月) 19:25:18
まさかまさかの『原子崩し(メルトダウナー)』とは
読んでてリアルに「マジかよっ!?」って声出た
いや、確かにオブジェクトの動力炉のエネルギーを転用してそこにブラックホールを圧縮して乗せる技術が加わればあの貫通力が実現するのかも
ちっぽけな人間サイズの麦野でもイージス艦貫通できるそうだし
……ブラックホールをどう作るかは木原の頭脳のみぞ知る
これから明かされるのだろうけど『ドーマウス』を経てジンの理解が及ぶ範囲で調整したのがおそらくザンザスの『ナァールウァル』?
それにしても再三思うがやっぱり『インドミナス』も『テトラグラマトン』も爪痕残しすぎなんよ
初期三大ラスボスのトリを飾った『フツノミタマ』が大人しく見えるくらいに
まぁ、ただよく切れる包丁()を振り回している()よりも防御無視で地球の裏側からでも標的を串刺しにできる絶対貫通持ちと上空からバリア展開しながら一方的に広範囲を消し飛ばす機体の方が脅威度が段違いなのは当然か
そして黒幕の本名を知って一安心
「あ、コイツちゃんと倒されてくれる悪役だな」 - 112キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/16(月) 19:40:25
キャラクターにCV.当てちゃうのはあるある
なんか気恥ずかしいし想定している声優さんで世代がバレる恐れがある諸刃の剣
自分の中でノエルはうるさい時の福圓美里さんでアドレイドは不二子ちゃんモードの沢城みゆきさん
うーん、安着 - 113二次元好きの匿名さん24/09/16(月) 23:57:09
wikiで作品読んで楽しませてもらってます
いつもありがとう
オブジェクトやキャラ発想のコツとかあったら知りたいところです - 114キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/17(火) 21:50:22
あら、新規さん いらっしゃい
自分の場合は乗ってる人物がどんな境遇で生きてきて操縦士エリートになったかとかこのオブジェクトにはこんなエリートを乗せたら面白いとかを意識して作ってますね
良くも悪くもをキャラクターを中心に考えているというか
オブジェクトは靴でエリートは踵のイメージです
ぴったりベストフィットさせるのが主流な一方であえて相性を悪くして「靴ズレ」する様を眺めてニヤニヤしたり - 115キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/17(火) 21:56:16
オブジェクトのテクノロジー部分に関しては……
科学に詳しくはないのでぶっちゃけテキトー
自分はおそらく直感派なので「こういうことできたら面白いかも」から発足させて何とかそれっぽい知識と理論を後からセロテープでツギハギしてこじつけて組み立てて行く感じです
強さに関しては特別盛ることを意識した機体でもない限り、クウェンサーとヘイヴィアの援護なしの『ベイビーマグナム』に十分な勝機が存在することを意識してます - 116編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/09/19(木) 22:27:49
ほしーし
- 117キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/21(土) 22:41:50
明日出します
- 118キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:39:05
11
滑り込むように正面ゲートを通り抜け、メインホールへと踏み込む。
まだまだ玄関先ではあるが『アンナマリー』への潜入は果たした。
しかしながら、ウカウカしていたら無人兵器を掻い潜って来たどこの誰とも知れない他の部隊にすぐにでも追いつかれてしまう。
せっかく手にした一番乗りのアドバンテージを活かすには迅速な行動が求められる。
自分達の目的は二つ。
『サイトシーカー』から抜き取られた機密情報データの奪還、もしくは破壊。
ドミニーク=G=ラスティネイルの抹殺。
従って向かうべき場所は地下のサーバールームと高層階に構える執務室の二箇所。
一つ一つを4人で取り掛かれば成功率は上がるかもしれないが、現実的に考えてそれでは時間が到底足りないことをここにいる全員が理解している。
解決策の提案を促す役を担ったのは年長者であるアドレイドであった。
「わたしと学生くんがドミニーク、貴族くんとノエルがサーバー。この二つのチームでそれぞれうえとしたにわかれましょう」
「得意分野と戦力の分配を揃えるならそれが妥当だろうな」
「俺も特に異論はねぇが正確な場所が割れてる執務室はともかくサーバールームへはどうすりゃ辿り着けるってんだ?『島国』のニンジャ屋敷みてぇに隠し扉をいちいち探して何枚もくぐり抜けなきゃいけねぇなら時間的にちと厳しいと思うんだがよ」
「それについてはしんぱいいらないわ。一度だけドミニークにつれられて見せびらかされたことがあるもの」
そう言って女スパイが取り出した携帯端末の画面を細長い指でスラスラと数回動かすと、ヘイヴィアとノエルの携帯端末にデータが送信される。
中身は『アンナマリー』の間取り図であった。ご丁寧に順路を示す赤い矢印付きときた。これに従って進めば目的地に到達することができるだろう。 - 119キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:40:34
「ったく、用意の良いこった」
「私がしてあげられることはこれだけ。道中はおおくのトラップがまちうけているのはかくじつだから、そういったセキュリティの突破はノエル、あなたのハッキングにかかっているわ」
「ゔぇっ!?わたし!?」
急に大役に抜擢されて狼狽える眼鏡の少女にコンビの片割れとなる不良貴族が悪意無く畳み掛けていく。
「当たり前だろポンコツエリート。サーバールームはドミニークの野郎にとってまさぐられたくねぇ心臓部には違ぇねぇだろうからどんなえげつない仕掛けが待ち構えているかわかったもんじゃねぇ。マジで頼んだぜ」
「あわばばばば……。すんごいプレッシャーなんですけどぉ……」
「だから物理的に対処できるヤツは俺が何とかするからてめぇ一人にワンオペを押し付けて過労死はさせねぇよ。どちらかが見逃してまんまと引っ掛からねぇよう気ぃ引き締めて行こうぜ」
話が纏まったことでここからはいよいよチームごとに分かれての別行動となる。
どちらも一筋縄では行かない命懸けのルートとなることが予測されるだろう。
なので、クウェンサーはこれまで多くの死地を共に乗り越えてきた悪友と向かい合った。
言っておくべきことは後悔しないよう言えるうちに伝えておくべきだ。
「死ぬなよ貧乏貴族。なんてったって、この間貸した10ユーロをまだ返してもらっていないからな」
「てめぇこそあっさり黒幕に力及ばず返り討ちなんてつまんねぇ死に方すんじゃねぇぞ。もやし野郎が」 - 120キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:41:55
ドラゴンスレイヤーコンビはいつもと変わらないにやけ面で軽口を交わすと、突き出した互いの拳と拳を打ち付けた。
引き締まった堅苦しい別れの雰囲気や言葉など彼らには不要。何故なら直接口にせずとも、また再会できると双方が信じているのだから。
そんな彼らのやり取りを見ていたアドレイドはノエルへと目を向ける。
「アレがオトコどうしの別れってやつかしら?青春キラキラでまぶしくっておねえさんクラクラしちゃいそう。ためしにどうかしら?私たちもやる?」
「だれがやるかアホンダラァ!わたしたちのほんらいの関係をうやむやにしようとしてんじゃねー!つぎ合流したらかくごしておけよ貴様ぁ!」
「あら、うれしい。その言いぶんだとわたしが生きてもどることをねがっているように聞こえるわね」
「むきーッ!そういうとこだぞ!そういうとこ!ホラホラッ!さっさといったいった!」
こうして彼らは背中を向けてそれぞれの道を進んでいく。
別れた二人の足音はあっという間に遠くへ離れてもう聞こえない。
自分達も目的地を目指すべきだが、その前に一つはっきりさせておくべきことがある。
「で?執務室ってどうやって行くんだ?確か一般が立ち入れる限界階層の展望室より更に上に構えているんだろ。やっぱり階段を探して地道に登って行かなきゃいけない感じなのか?」
「いいえ、どうやらそれにはおよばないみたいよ」
「?」
女スパイが徐ろに指を差した方向はエレベーターホールであった。
更にクウェンサーが目を凝らすとズラリと並んだ機械仕掛けの箱の一つの扉が開きっ放しになっており、脇の昇降を示す矢印は上方向にチカチカと瞬いている。
無論彼ら二人が操作したわけではなく、他にそれが可能な人影が周囲にいるはずもなかった。
だとすれば考えられる可能性は一つ。
自分達以外にこんなマネができる人物といえば。 - 121キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:43:02
「ドミニークがよこしたリムジンかしら。どうやらアレにのっていくしかなさそうね」
「マジかよ……。昇っている途中でワイヤー切られたりしないだろうな……」
「そんな細工をほどしているヒマがあったら、いりぐちからここまでくるのにトラップの障害物競走だったはずよ。それがろくになかったということはよほどかれは私たちをじぶんの手でしまつしたいようね。──────その証拠に」
女スパイは言葉を区切ると徐ろに近くの棚に飾ってあったこの街のゆるキャラらしきぬいぐるみを非常階段の方へと投げ込んだ。
すると宙を舞っていた布と綿の塊は床に落下するよりも早く、仕込まれていたセントリーガンによって空中で四散した。
それは迂闊に踏み入れていたら、「こうなっていた」というもしもの自分の末路そのものだ。
「なるほどね。そっちのルートを無理矢理突破しようとしたら何時間かかるかわかったもんじゃないな」
「それにラスボスにいどむまえだというのに何百mも自力でかけあがって息をあらげてふくらはぎをパンパンにするというのもカッコつかないでしょう?」
「それもそうだけどさぁ……。まぁ背に腹は代えられない、か」
不信感を募らせたままのクウェンサーと安全を確信しているためか足取りの軽いアドレイドの対照的な両名はエレベーターに乗り込んでいく。
扉が閉まるとボタンに触れてさえいないのに虎穴へと続く籠は独りでに上昇を始めた。
おそらくドミニークにより、「来客」が乗り込んだら自動で執務室へと招くように設定されているのだろう。
静音と無振動を専売特許にしているおかげか、二人を乗せたエレベーターは滑らかに高度を上げていく。
目的の階へと到達するまで束の間の「何でもない時間」が生じるので、クウェンサーは沈黙を裂いて期間限定の相棒にずっと気になっていた質問をぶつけてみる。
「ドミニークとやり合う前にアンタに聞いておきたい」
「あら、なにかしら?お姉さんのホクロの位置でもおしえてあげましょうか?」
「この期に及んでフザケてはぐらかすのは無しだ」
年下の少年の語気の強さから誤魔化しは通じないと判断したのか、女は直ぐ様態度を切り替えた。 - 122キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:44:17
「……どうやらマジメモードをごしょもうみたいね。それなら真摯にこたえるのがスジってものかしら。どうぞ、言ってごらんなさい」
「未だにアンタの真意が掴めない。どうしてこんな事件を起こしてまでこの街を潰したいんだ?復讐か?『資本企業』の常套句、『金のため』?まさかドミニークとの痴情のもつれなんてことはないよな?」
エレベーターは静かに上昇を重ねていく。
外側に面するガラス張りの壁から見える景色は下へと流れ、地上がどういった状態にあるのかが見て取れた。
あちこちから火の手か上がり、連続した爆発が絶え間無く散見されている。
果たして燃えているのは機械か人間か。
悪意が伴っていたのかはともかく、少なくない割合で隣に立つ女スパイが原因となって引き起こされた惨状であるという事実には変わりない。
「…………………………」
そのような現在の『ネバー』の様子を一瞥した後、彼女はゆっくりと口を開いて語り出した。
「私はね、うまれてからいちどだって自由だったことがないの」
項垂れたまま女スパイは言葉を紡いでいく。
前髪に隠れて目元はこちらから見えないがその視線の先は眼球で捉えられる外界ではなく己の内側、脳内の記憶に向けられているのだろう。
「私のこれまでの生涯は上からのめいれいで『世界のバランスを保つため』という大義名分をかかげて、そのさまたげとなる人間をはめつにみちびいていくためだけのものだった。善人であろうと悪人であろうともみな平等に。それが『正しいこと』なんだとおもいこんでいた。──────おもいたかった」
「思いたかった」。
含みを持たせるような過去形。
それは既に失われて戻らない往日の残滓を表しているかのようで。
即ち。
「でも、その無邪気にしんじていた『正義』はちがったの。ターゲットたちがいとんでいた『普通の日常』をこわすたびに『ほんとうにこれでよかったのか?』という疑問がちくせきしていったわ。そして次第におもうようになった。『ほんとうに世界がよくなっているのなら、なぜ私のしごとはいっこうになくならないのか』って」 - 123キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:45:36
スパイとして仮初めの「普通の日常」に溶け込んでいるうちに抱いてしまった疑念。
常人の目線でロールプレイと俯瞰を重ねてきたからこそ浮き上がった己の為してきた所業との乖離。
それらがアドレイド=”エンプレス”=ブラックレインを縛り付けていた鎖に亀裂を生じさせた。
「すこししらべればすぐに判明したわ。けっきょく私がおこなってきたのはいちぶの権力者にとってつごうよく金をかせぐために邪魔者をはいじょするという欲にまみれたただの清掃作業だったことを。そして、知ってしまったからには自覚してしまったの。スパイがいちばんいだいてはならない『ある感情』を」
「──────それはつまり、『罪悪感』ってやつか?」
「えぇ、気づくにはあまりにもおそすぎたけれどね」
罪悪感。
それはただ任務を熟す機械として生きてきた誰でもない女の奥底にて僅かに残っていた「人間らしさ」。
そして当たり前の感情を取り戻した彼女は過去の全てを「仕方なかった」の一言で片付けて、元の「アドレイド=”エンプレス”=ブラックレイン」に戻ることを選ばなかった。
開き直って再び言われるがままに非道をはたらくであろう自分を到底許すことなど出来なかったから。
それが例えこれまで自分が行ってきた所業に向き合い、苦しみ、後悔に苛まれることを意味していたとしても。
「しんじていた正義にすらうらぎられてしまった以上、それからはもうすなおに上からくだされるめいれいにしたがっていることがばかばかしくなっちゃってね。このままつかいつぶされるだけの人生をおくるだけというのなら、すべての勢力をてきにまわしてでもじぶんのやりたいようにやって自由になるついでに世界をすくおうと思ったわけ」 - 124キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:47:21
戦場と化した眼下の景色にもう一度眼差しを向ける。
鉛玉と煙に汚された未来都市。
数刻前までは実態が真っ黒だったとはいえ、無辜の人々によって賑わいを見せていたはずであった。
そういった営みを自分が壊したという事実を再認識したのか、力の無い苦笑と共にアドレイドの口から自嘲が溢れ出す。
「けっかはごらんのありさまだけれどね。けっきょく、すくうために行動したのにまた私はまたこんな方法でもくてきをはたそうとしている。滑稽でしょう?」
「………………そうだな。酷いやり方には違いない。何機のオブジェクトが破壊されたのかわからないし、肝心な場面は運頼みの綱渡りばかり。アンタの計画は不安定極まりないお粗末なモンだ」
機密データの強奪、拡散。
「餌」に釣られてやって来た並み居るオブジェクト達の殲滅。
協力者の確保。
心臓に埋め込まれた装置の除去。
他にも成功するのか判らない一か八かの不確定要素を並べようとすれば枚挙に暇が無い。
どれか一つでも失敗していれば計画は水泡に帰していたのは間違い無いだろう。
なので率直な感想に基づく容赦の無い酷評をくれてやった。
しかし。
「でも、アンタが動かなければ誰も止められずに世界はドミニークの物になっていた。それは確かだ」
クウェンサーはアドレイドの自虐や道程の拙さを指摘する一方で、彼女がクソ野郎の野望を挫くべく立ち上がったことを否定はしなかった。
「フローレイティアさんから聞いた。『ヴァニッシュラプター』に倒された5機のオブジェクト。いずれもエリートが積極的に戦闘を仕掛ける好戦的な性格だったり、攻撃力が自慢の機体だったらしいな。そして、機体は大破させられても全員生存していたって。これは俺の勝手な推察だが、おそらくアンタは今回の騒動においてなるべく犠牲が少なくなる方法を常に選んできた。誰にも協力を仰げない状況でアンタにとって最悪の中で選んだ最善こそが今なんだろ?違うか?」 - 125キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:54:33
対峙したエリートの安否を無視して葬った方が『セリーヌ』の消耗を少なく抑えられたかもしれない。
ノエル=メリーウィドウの命など利用し尽くした後に処分してしまった方が後腐れがなかったかもしれない。
非殺傷のスモークではなく無差別に爆発物をばら撒いて『ネバー』の住民を巻き込んだ阿鼻叫喚の混乱をあちこちで起こした方が無人兵器の目を掻い潜って『アンナマリー』への潜入もスムーズに行えたのかもしれない。
それでも、アドレイドはそういった手段を使わなかった。
クウェンサーにとってそれら計画の成否に関わらない、寧ろ足を引っ張る「無駄」こそが彼女がかつての己と決別しようと足掻く意思を示しているように思えてならなかったのだ。
「……バレてたのね。でもあまり買いかぶりすぎないでちょうだい。私がこの事件のひきがねをひいたことにはやはりかわらないのだから」
「そりゃあ何も犠牲にしないなんてパーフェクトじゃなかった。だとしてもなりふり構わず流血を許容していればもっと楽やショートカットが出来た場面だってあったはずなんだ。『悩むな』だの『胸を張れ』とか『誇れ』なんて言わない。でも、アンタは過去の自分から変わりつつある。それを受け入れろ」
ズラリと並んだボタンの上方には小さな電光掲すー示板があり、現在の階層と地上からの高度が記されている。
現在標高350m。目的の執務室が構えられている階まではもう間も無くで到着するだろう。
「だから、ここまで来た以上は勝つぞ。『積み重ね』に報いる為に。今までのことを後悔しているんだろ?自分の意思で世界を救うんだろ?全てに決着を付けるまでまだ失敗でも成功でもしていない。この作戦が終えても人生はそこで終わりじゃ無く続いていくんだ。新しい門出を迎えるなら全てを精算して清々しく気分で迎えるのがハッピーエンドってモンだろ」
「…………………………」 - 126キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/22(日) 23:58:25
慰める意図は無い。隣に立つ女はそんな物は望んでいないだろう。
彼女に必要なのはありのままの自分を評価して、その上で背中を押してくれる誰かの手だ。
この場で他にいないなら自分がその「誰か」になってやってやるのも悪くない。
「すこしじぶん語りがながすぎたかしら。しめっぽい雰囲気にしてしまってわるかったわね。でも、いくらかきぶんが晴れたわ。ありがとう」
己の心の中で何かの一区切りが付いたのか、既にアドレイドはいつもの不敵な調子を取り戻していた。
そして、会話が終わると同時にピンポーンという目的階の到着を告げる電子音が鳴り響き、連動してエレベーターの扉が開かれる。
かつての女スパイはもう足元ではなく、目の前に広がる見据えるべき「前」を向いていた。
その様子を横目で覗いたクウェンサーは安堵したかのように口角を上げる。
「もう大丈夫だ。自分達に恐れと迷い」は無いという確信を抱いて。
「気にするな。その代わり『資本企業』風に言うならお代の分はしっかり働いてもらうぞ。知っての通り、俺はガチンコバトルが不得意な健康優良インテリジーニアス青少年だからな。頼むぞ敏腕つよつよ女スパイ」
「ふふっ、その肩書きはきょうでおしまい。でも、看板をたたむにふさわしい有終の美をかざってあげるからまかせてちょうだい」
自分だけではない。
『ネバー』という街に囚われた全ての人々を「偽物の安寧」という呪縛から解放するため。
これ以上自分に嘘をつかないため。
新しい人生を手に入れるため。
アドレイド=”エンプレス”=ブラックレインは籠の中から一歩踏み込んで最上階へと繰り出していく。 - 127キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/23(月) 00:00:05
一旦ここまで
日付変更ギリギリじゃねぇか!
というわけでダラダラとアドレイドの言い訳パート
空気を読んで長話がおわるまで着くの待ってくれるエレベーターくん - 128キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/23(月) 00:10:57
エリートのセリフ
ひらがな多用するから誤字りがち
wikiに載せるために読み返したけどもう3つくらい見つけた おのれ - 129編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/09/23(月) 11:42:14
飄々として冷徹なようだけれど意外とナイーブで人間性に溢れてるアドレイド
ビビリでヘタレだけどタガが外れるとやべーことするノエル
というかノエルって狂言回しに向いてるよなあ……トラブルメーカーというか爆発オチにさせる天災というか性格的にも物語を動かすのに長けてる
エリートの漢字の割合をどこまでにするかも割と難しいですしね……
- 130編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/09/23(月) 11:42:51
- 131キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/23(月) 22:20:32
早い、早すぎる……
ジンお前地理的に近いとはいえよりによってダストパラダイスから危険生物輸入してんじゃねぇ!サファリパークというかビオトープというか聞こえは良いけど一歩間違えれば幾らでも「環境保全」の名目の下、ゴミを投棄していい第二のダストパラダイスになりかねないよぉ!それも『資本企業』の本国の目と鼻の先で!
馬鹿二人はパオラと初対面のようだからまだあそこの洗礼を受けてないご様子
オーキッドは思考が在りし日の帝制ブリカスかぁ? 流石元『正統王国』ッパリだな
ホミノイドってこうやって動くとターミネーターというよりメトロイドドレッドのE.M.M.I.(エミー)って感じか こわー それを溶かすリデュースミトコンドリアやばー
そして、最後にクリフハンガー気味に出て来たのは一体何者か
しかしこれだけの人数のエリートを喋らせるのはいろんな意味で含めて大変でしょうなぁ
キャラ分けとか誤字とか 特に女性キャラは油断するとみんな一人称が「わたし」になる 誰が話しているのかわからん
自分は2章のエリート4人を捌くのでさえ手間取った思い出 - 132キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/25(水) 22:38:34
ふーむ、どうやって執務室で生身の人間二人に『キャロライン』。倒させるか…… 実はまだ考えていない
- 133キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/27(金) 23:04:20
安価では窓から落とすと書かれていたが……
ハンドアックス投げて当てる暇ないくらい速くて、アサルトライフル程度の弾は通さない硬さの相手にどうやって?
頭の捻り所さん - 134編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/09/28(土) 20:01:55
保守ー
- 135編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/09/29(日) 20:21:38
- 136キャラシート◆BP2qeK/ddM24/09/30(月) 22:13:16
今度はジンがピーチ姫枠に インガオホー
オーキッド煽り効きすぎて草
兄弟姉妹いるとはいえ「家族」に思い入れのあるジンに対して「ごっこ」呼ばわりしたなら致し方無し
好き過ぎてその人自身の姿を真似る
グレイシャーはプロフィールの頃から倒錯していたけれど文に起こされるとヤバさがマシマシ…… - 137キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/02(水) 22:46:13
★
- 138編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/10/05(土) 06:56:45
ほしゅう
- 139キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/06(日) 23:03:24
ホスト規制はたまにフライング気味で夜23時くらいからやられることがあるから怖い
- 140編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/10/08(火) 22:30:43
ほしゅ
- 141キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/10(木) 22:31:29
ヌヌヌ
- 142キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/12(土) 22:38:44
ドミニーク棒立ちになるな……
乗せるか - 143キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/14(月) 21:24:40
1日よ 48時間になれー
- 144二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 21:03:58
HO二次創作やってみたいんですがこのスレって今はオブジェクト製作やってないんですか?
- 145編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/10/16(水) 21:11:20
- 146二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 21:21:07
- 147キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/16(水) 23:05:13
力になれず申し訳無い
参考にWikiを閲覧してもらうと何か閃くかもしれないですね
応援してます - 148キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/18(金) 22:56:40
もす
- 149編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/10/20(日) 20:54:27
うーむ燃え尽き期間に入ってしまった
- 150キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/20(日) 21:53:21
あれだけのペースで執筆していたら充電期間も必要でしょう
自分がこんな有り様ですしゆっくりおやすみなさい - 151キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/22(火) 23:01:08
もうちょいや!……多分
- 152キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/24(木) 23:13:37
明日お出しします
- 153キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 19:59:55
12
──────そこは壁によって区切られた「部屋」という概念が無く、広大なワンフロアを丸々使われた一つの空間であった。
まず、最初に目に付いたのは10m以上もの高さで隔てられている黒い床と天井。
そのどちらも磨き抜かれており、光源として蛍光灯を用いず間接照明として上下から照らし出される淡い光が上映直前の映画館のシアタールームにも似た落ち着いた雰囲気を醸し出している。
次にその間に屹立する幾本もの太い柱。
これらが階層全体を支えると同時に地下の動力炉から送られてきたエネルギーを通す『アンナマリー』の「血管」をの役割を担っているのだろうか。
その閑散とした広大さと神殿の内部のような威容に対してクウェンサーは、いつかどこかの本かドキュメンタリー番組で見た地下に聳える巨大放水路を思い出していた。
そして、最後に地の果て。
フロアの突き当たりには壁の代わりにグルリと階層の周囲全体を縁取る形で一面に透明なガラスだけが貼られていた。おそらくここの主が360度窓際のどこからでも己の箱庭の様子を俯瞰するために拵えたのだろう。
「ここが、執務室……」
「気に入ってくれたかね?ここまで来て外を眺めてみると良い。素晴らしい景色が広がっているとも」
「っ!」
思わず声を溢した少年に応える何者かがいた。
隣にいるアドレイドではない。
音源はエレベーターから降りて正面に広がる柱の林の奥からだ。
よく目を凝らすと高級そうなビジネスデスクを一台挟んで背を向けて立つ誰か。
心当たりなど一人しか存在しない。
『ネバー』の支配者に留まらず、世界の王に君臨しようと此度の騒動を画策した男。
ドミニーク=G=ラスティネイルがそこにいた。 - 154キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 20:00:31
「これが『アンナマリー』、ひいては『ネバー』の防衛システムだ!凄まじいだろう!主砲のたった一度の斉射で虐殺を行おうとした不届きなオブジェクトが何機も葬られていく!おっと、もしかすると君達の知り合いが含まれていたかもしれないがね!気になるのならここまで来てみるといい!」
「……ッ、ドミニーク!」
眼下に広がる世界を眺めていた全ての黒幕は自らの命を狙いに来た刺客が目の前に迫っているという状況でありながら、わざとらしいハイテンションな調子でこちらへと振り返る。
その人の神経を逆撫でする馴れ馴れしい態度と最も過酷な戦場にて今も奮戦しているであろうお姫様を思い起こして激昂しそうになるクウェンサーを制しつつ、アドレイドは黒幕にアサルトライフルの銃口とチェックメイトを冷徹に突き付けた。
「ここまでよ。『ネバー』とあなたのくだらない野望はもうおわり。じきに四大勢力のオブジェクトがこの街におしよせてくるわ。いまはどうにかできているようにごまかせても、たった2機のオブジェクトでどうこうできる戦力差じゃない。さいだいのきりふだを切ったあなたはもうあとがない。しょせんはムダなていこうにすぎないわ」
「ふぅむ、そうだな。確かに勝てはしまい。だが構わんよ。勝つ必要すらないのだからね」
「勝たなくていい……?何を言っているんだ?」
意味がわからなかった。
確かに『アンナマリー』は都市外周のオブジェクト、『キャロライン』は内部の歩兵を足止めしているがそもそも籠城戦自体が勝機が存在しなければ行う必要が無い。
何故なら攻める側は消耗してもほぼ無限に補給が出来る一方で、守る側は内に蓄えた限られた資源のみでやりくりしていかなければならない不利を常に強いられるのだから。極論攻撃を加えずとも補給路を絶って何もせず放置するだけでそのうち勝手に干からびる。
しかし実際にジリ貧に陥ることを理解した上で未だに白旗を上げないということは、この状態を打開するアテに心当たりがあるのか。
ドミニークは得意気に自らの余裕が崩れない理由をツラツラと述べていく。 - 155キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 20:01:49
「そのままの言葉の通りだとも。あれ程の戦力を差し向けてきたということは、やはりあの機密情報のデータはそれだけの価値があるということだろう。独占して他の勢力を出し抜くために各勢力のエリートの半数程は上からこう命令されているはずだ。『まだドミニークとあの塔型オブジェクトには利用価値がある。亡命を希望したらどちらも無力化に留めて保護しろ』、とね。だから、私の手で君達を捻り潰した後にここでのんびりと座して待つだけでいいのだよ」
「随分とか細い頼みの綱だな。監禁、拷問、処刑。亡命が叶ったとしてもその先でどんな目に遭うのか分かったもんじゃないっていうのに」
「そこは私の政治家としての弁舌の見せ所だな『知りたい情報』と『知らされたくない情報』のバランスを上手く保ったままオークションで自分の価値を最大限に吊り上げて取り入らせてもらうとも。幸い脅迫の手札は幾らでもあるのだからね。そうして迂闊に手を出せないポジションに立ってしまえば、盤石な地位を築くのにそう時間はかからない。君達は何やら命懸けで私の邪魔をしているようだが、そんなものは取るに足らない無意味な行為に過ぎないのだよ。『ネバー』は何度でも蘇るのだから」
「させないわ。そうなるまえに私たちがあなたを始末するもの」
これ以上の言葉の応酬は不要。
そもそもクウェンサーとアドレイドは窓際に佇んでいるクソ野郎を始末するためにやって来たのだ。
誘い込まれたとはいえまたとない機会であることには変わりない。罠であるのならば発動される前に叩き潰せばそれで全てが終わる。
故に最短最速、先手必勝。
会話を打ち切るや否や、アドレイドが手にするアサルトライフルが火を吹いた。
フルオートで発射された弾丸の雨がドミニークに向かって真っ直ぐに吸い込まれていく。
心臓と脳を正確に捉えた弾道。
数瞬後には双方それぞれを貫いて標的を完璧な絶命へと至らせるだろう。 - 156キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 20:07:25
「おっと、危ない危ない」
しかし、そうはならなかった。
トリガーが引かれると同時に、それに呼応して遮る物が反応したからだ。
正体はドミニークの傍らにあったビジネスデスク。
のように「擬態」していたナニカが、主人の生命が脅かされるよりも先に変形して盾となったのだ。
『キャロライン』のキューブ装甲。
変幻自在かつ神出鬼没のソレは一通り銃弾を防ぐと盾の形を崩し、小さな立方体の群れとなって床に散らばり溶けるように姿を消していく。
「……やっぱり丸腰ってわけは無いか」
「やれやれ、また不意打ちか。芸の無い。こちらの準備が整うまで少し待ち給え。ヒーローの変身シーンを邪魔するのは無粋極まりないだろう?」
そう言ってドミニークが指を鳴らす。
何かを呼び出すためのサイン。
パチンという音が響くや否や、『キャロライン』の本体がヌルリと柱の影から現れた。
応じてから登場するまでの間があまりにも短すぎる。
潜めていたのだろう。自分達がこのフロアに足を踏み入れる前から。
考え得る最強の兵器、オブジェクトによって侵入者を排除する。
これこそがドミニーク=G=ラスティネイルが仕掛けた単純至極にして最大の策であり罠であった。
ある程度予測出来ていたとはいえ、怪物兵器を目の当たりにしたクウェンサーとアズレイドの眉間に皺が寄る。
「マズイわね。ひろくて足のあった市街地とちがって、ここはにげ場がない。真正面からじゃまずしょうぶにならないわ!」
「だったら本格的に動く前に棒立ちのアホを狙うまで……!」
- 157キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 20:09:30
後手に回っては不利なのは明白。
二人揃って同じタイミングで床に敷き詰められた高級そうなカーペットを蹴って駆け出し、 『キャロライン』のシルエットに隠れてしまったドミニークを仕留めるべくその側面へと回り込む。
「なっ……!?」
しかし、件の標的の姿はどこにも見当たらない。
まるでイリュージョンのように消えていた。
『言っただろう。「私の手」で捻り潰すと』
『キャロライン』に内蔵されたスピーカー越しに先程までここにいたはずの人間の声が聞こえてくる。
即ち考えられる可能性は一つ。
奴は乗り込んだのだ。
本体を盾にしている間に機体後部から内部へと。
『待たせたね。それでは気持ちの良いフェアな勝負を始めるとしよう』
これでドミニークは上下前後左右あらゆる角度からの攻撃を分厚い鉄壁の装甲に守られることとなる。
アサルトライフルの弾程度では、まず破れはしないだろう。
ありったけのハンドアックスを用いたとしても、まともに爆風を浴びせたところで貫けるかどうか。
「何故だ?」
しかし、それ以前に。
オブジェクト設計士志望の学生であるクウェンサーは黒幕が自信満々に取った策へ疑念を抱かずにはいられなかった。
「他の無人兵器ではなく『キャロライン』?一体どうして?お前はエリートじゃない。それにエリートであったとしても、オブジェクトは基本的にそのエリート個人専用に調整された機体にしか操縦できない仕組みになっている。変わった形の棺桶に収まったまま死にたいのか?それともずっとそこに閉じ籠もって時間切れを狙っているのか?」 - 158キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 20:10:36
絶対安全の兵器の中にいる余裕とこの場を支配したつもりでいる余裕の表れ故か、黒幕はわざわざ律儀に少年からの質問に答える。
『ふむ、クウェンサー=バーボタージュ君。君の指摘は正しい。「普通のオブジェクト」ならばそうだろう。だが、「キャロライン」は少々特殊な機体でね。実際に見てもらった方が早いか。ほら、1・2、1・2』
掛け声に合わせて目の前のオブジェクトは社交ダンスのステップのように優雅かつスムーズな動きで床に8の字の軌跡を描く。
そこにぎこちなさや不安定といった様子は存在しない、サーカスのクラウンが一輪車で行う曲芸のように滑らかな挙動であった。
『このように小型故に分割した一機だけならばこうしてエリートではない私でも乗り熟すことが出来るのだよ』
操縦士エリートと普通の人間を隔てる条件の一つに「Gへの耐性」が挙げられる。
50m以上の全長と20万tの重量。これ程のサイズのスケールで高速戦闘を行うオブジェクトのコックピット内は常に莫大なGの負荷の影響を受けるため、「改造」や「調整」されてない人間では例えベルトに固定されていたとしても到底耐えることなどできない。
短時間であったとしても頭部の穴という穴から出血し、最悪全身が潰れて絶命する。姿勢を維持するどころか意識を保つことに精一杯で、機体の操縦といった肉体・頭脳共に細かく複雑なタスクが要求される作業など熟すなど以ての外だ。
一方で『キャロライン』一機の大きさはキューブ装甲をフルで纏わせても精々5m程度。
同じオブジェクトでもこれだけ小さければ発生するGは抑えられ、操縦士エリートでなくとも乗り熟すことは可能となるだろう。
実際にその最たる例は今まさに目の前にこうして存在している。認めざるおえない。 - 159キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 20:11:59
『さぁ、おもてなしの時間だ。私が勝って世界を掌握するか、敗北して君達に計画を阻止されるか。白黒はっきりつけようではないか。尤も既に結果はわかり切っているがね』
「……………………」
「……………………」
オブジェクトという圧倒的な「武力の象徴」を駆る優位性を示すようにドミニーク乗せた『キャロライン』がジリジリと追い詰めるように近づいてくる。
怪物兵器対生身の人間。
それもこちらはたったの二人。
まとも戦えばどちらが勝利するか、100人に聞けば100人とも前者と答えるのが普通だろう。
それでもクウェンサーとアドレイドは一歩も引かずに『キャロライン』を睨みつけ、獰猛に笑ってみせた。
「そうね、結果ならわかりきっているわ」
「あぁ、間違い無い」
そして、己を鼓舞するように言ってのける。
「勝つのは俺達だ」「かつのは私たちよ」
お行儀の良い「普通」や「常識」など知ったことではない。
蓄えた知識を振り絞り、この場に存在するあらゆるものを利用しろ。
悪運すら味方につけて、生にしがみつけ。
決して諦めず活路を探し続ける者にこそ最後に掴み取れる物があるのだから。 - 160キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 20:15:01
一旦ここまで
いや、戦闘パートまで行かんのかーい!
長くなりそうだからここで切ってCM代わりにヘイヴィア&ノエルサイドを描写しようかと……
決して倒し方が思いついていないからじゃないよ!ホントだよっ! - 161キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/25(金) 20:19:50
あ、執務室のイメージは春日部にあるバカでかい放水路ね
特撮でお馴染みの - 162キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/27(日) 21:32:32
毎度毎度の文字数を数えたところ20万字突破しており申した
4章だけで8万字超え こりゃ完結する頃には全体の半分になるな…… そして浮き彫りになる1章のスカスカさ
とはいえただでさえ二次創作が少ない作品なのでクロスオーバーを除く世界観基本そのままに限定すればひょっとして一番では?では?
まぁ、何はともあれまずはさっさと完結させろって話なんだけどネ! - 163編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/10/29(火) 22:10:19
ほしゅ
- 164キャラシート◆BP2qeK/ddM24/10/31(木) 21:43:46
たぶん今年度一急がしかった業務より帰還
世間で沸き立っているハロウィンとは特に関係はない
……そういえばジャック・オー・ランタンモチーフのベルナデッタというオブジェクトがいたような - 165編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/11/02(土) 20:11:03
- 166キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/04(月) 21:45:48
ああ誤字よ wikiを見返す度に現れるお前よ
あれだけ叩き潰したはずなのに何故幾度も湧いて出る - 167キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/06(水) 22:37:31
星ゅのカービィ
0% 0% 0% - 168キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/09(土) 00:10:17
体調が良くないくせに夜更かししてる奴
- 169キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/10(日) 22:34:09
。
- 170二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 23:51:22
このレスは削除されています
- 171編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/11/14(木) 21:07:54
☆
- 172二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 23:58:07
このレスは削除されています
- 173キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/18(月) 22:49:46
うーむ、書き始めた頃は目も当てられない粗さは勿論あったものの筆が軽く次々と表現が湧いてきたんだけどなぁ……
衰えたのぉ
それはそれとしてできることをするだけじゃが - 174キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/20(水) 23:00:58
も
- 175キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/23(土) 00:03:25
カットオブカット
読み返すと無駄部分多すぎて石柱から彫刻を削り出す作業みたいになっとる - 176キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/24(日) 23:27:51
ほほししゅゅ
- 177キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/26(火) 22:46:04
ようやく終わりが見えてきた ……本当デスヨ
- 178キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/28(木) 21:59:41
やめて……
11月終わらないで…… - 179キャラシート◆BP2qeK/ddM24/11/30(土) 23:14:41
もうちょい
- 180編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/12/02(月) 22:35:46
ほしーし
- 181キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/04(水) 23:51:35
体調不良
だが生きてる - 182キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/06(金) 23:04:25
最後が纏まらないねんな……
それはそれとして近日公開 - 183キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 00:27:51
今日の晩お出しし申す
風邪って久々に罹るとマジしんどい - 184キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 20:56:31
13
一方でクウェンサー&アドレイドと別れて『アンナマリー』地下のサーバールームへと向かったヘイヴィア&ノエルはというと──────。
「撃て撃てぇ!この戦いを制した者が世界を掌握し、長きに渡る争乱に終止符が打たれる!騎士達よ!勝利の栄光は目前だ!大義は我らに在り!続けぇっ!」
「例のデータを手にするのはデジタルにおいて他を凌駕し、適切な管理を唯一可能とする私達にこそ相応しい!貴様ら情報弱者に渡してなどたまるものかっ!」
「金の価値を知らない貧乏人風情が!どうせお前達が手に入れても有効活用が出来ず身の程知らずの浪費が関の山だ!『もったいない』がどれ程の大罪なのか思い知らせてくれる!」
「神の名の元に貴様らを断罪する!その威光の前に平伏せ異教の猿共め!死をもって罪を贖い、これまでの不信心を後悔しながらその魂まで地獄の業火に焼き尽くされろ!」
「排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス排除シマス」
絶賛各勢力の部隊と無人兵器がぶつかり合う乱戦に巻き込まれていた。
「ひ、ヒィイイイイイイイイイイイイィィィッッ!!」
「そのまま頭下げてろ!迂闊に上げたら額に鉛玉をもらっちまうぞっ!!」 - 185キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 20:59:38
現在彼らがいるのは当初の目的地であった地下のサーバールーム。
トラップをコツコツ解除してここに辿り着いたまでは良かった。
しかし、それとほぼ同じタイミングで地上の広場から抜け出してきた各勢力の部隊と『キャロライン』をはじめとする無人兵器達に追いつかれてしまったのだ。
そして、あっという間に人間と機械が入り乱れる交戦へと発展。
手持ちの装備だけであれだけの人数を相手取るなど無謀。
飛び交う弾丸と無機質な殺意から逃れるためには身を隠すしかなかった。
幸いここは奥を見渡せない程の広大な面積に業務用冷蔵庫よりも巨大なスーパーコンピューターがズラリと並んでおり、遮蔽物の確保には困らない。
しかし、ずっとこうしてはいられないのもまた事実。
今自分達のいる場所がいつまでも安全とは限らないし、何よりもタイムリミットが迫っている。
このまま「待ち」の姿勢に徹するばかりではどこの誰とも知れない馬の骨に機密データを掠め取られてしまう可能性も否定できない。
攻勢に転ずる必要が有るだろう。
周囲の音に掻き消されないようにヘイヴィアは声を張り上げる。
どうせこの銃声の嵐だ。至近距離にいる者以外には聞こえない。
「やっぱ『アレ』が『サイトシーカー』から奪ったデータを解析してやがるなんかすげぇ演算装置っつうことでいいのか!?」
「それいがいになにがあるっていうのさ!」
彼らが指している「アレ」とはこの広い空間の中央に鎮座している巨大な正八面体の水晶の塊のような物体。
20m以上あるその全高はサーバールームの床から天井までを縦に貫いており、夥しい数の電極やコードに繋がれていた。
周囲の業務用冷蔵庫のように角張った無骨なスーパーコンピューターとは明らかに異なる一際目立つ威容。
果たしてその正体は。 - 186キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:03:15
「『塩基プリズム立体基盤』」
「あん?」
ノエルの口から溢れた名称にヘイヴィアは眉を潜める。
基盤と聞こえたからおそらくコンピューター関連の何かなのだろう。
しかし、一応本職がレーダー分析官の身である彼も全くの素人というわけではないのだが、いまいち覚えのある用語ではなかった。
もし科学と結び付いて関連しているのだとしたら、その手の分野に詳しいクウェンサーが何か知っているかもしれない。今はいないので確かめようは無いが。
よって素直に詳細について尋ねてみることにする。
「塩基プリ……何だそりゃ?」
「きょくたんに通電性をたかめたとくしゅな塩水でみたしたおおきな水槽をまるまるひとつのおおきな演算装置にしたやつ。きぞんの電子基盤よりも『立体的』で『密度が高い』から高度な演算がかのうになるの。そのぶん国家予算なみのコストがひつようになるから『情報同盟』でもかぞえるほどしかそんざいしてないんだそうだけど。『ネバー』がおかねをためこんでいたのはひょっとしてこれをつくるためだったのかも」
「そいつは御大層なこった。ひょっとしてひょっとするとアレが奪われたデータの解析をしてる脳味噌だったりしねぇか?正直この乱痴気騒ぎの中、手当たり次第に冷蔵庫ぶっ壊してくのは現実的じゃねぇ」
「うん、おそらくは。黒幕としては一刻もはやくデータのなかみがほしいのなら、いちばん処理がはやいものをつかうはずだからまちがいないとおもう」
ノエルの仮説を聞いてヘイヴィアは安堵の息を吐く。
彼女が言っていたことが正解ならばどうにか的は絞れそうだ。
正直なところ、彼は焦っていた。
タイムリミットが迫っていることもそうだが、直接的な要因がもう一つ。
時間を経るに連れて抗戦の怒号よりも悲鳴の方が聞こえてくる割合が段々と増えつつある気がしていたからだ。
- 187キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:05:10
「だったら尚更悠長にしてられねぇな。無人兵器側が押してやがる」
「そうなの?」
「生憎な。ハイエナ共は機密データを欲しがっちゃいるが、それを邪魔する無人兵器をぶっ壊すのに手っ取り早い携行ミサイルみてぇな火力のある火器をあまり使ってねぇ。うっかり流れ弾でぶっ壊しちまわないよう出し渋ってんだ。片や鉄屑共はご自慢の固いボディで体当りすりゃ人間なんざ挽き肉に変えられるから無駄な破壊を回避して気ままに動き回ってやがる」
「マズイじゃん!いまは身代わりになってくれているけど、かずがへってきたらねらわれる可能性がドンドンはねあがるってことでしょ!?はやくなんとかしないと!」
少女の意見はご尤も。
あの演算装置をどうするか。
ヘイヴィアは事の発端となった元凶であり、ある意味で一番の被害者であるノエル=メリーウィドウに敢えて問いかける。
「後腐れを残したくねぇからこの期に及んで聞いてやるぜ。あの機密データをてめぇはどうしてぇんだ?取り戻して『情報同盟』に返り咲くか、全部ぶっ壊してこのクソみてぇな乱痴気騒ぎを終わらせるか。今ここで選びやがれ。時間は無ぇから手短にな」
「それはぁ……」
眼鏡の少女はもう一度かつて自分が保有していたデータを解析している演算装置に視線を送る。
『情報同盟』で操縦士エリートとして活動していた頃を思い返す。
立場もあり自由は無いがその辺の人々よりは享受できていたそれなりに贅沢な日々。
孤独ではあったが一生生活していくのには困らない額の給与。
『スペシャルナンバーズ』の一桁に選ばれて戦闘力では劣っていても自分は「特別な存在」なのだと思い込んで満たしていた自尊心。 - 188キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:07:53
「…………………………………………」
危険な目に遭いながら淡い期待と打算を抱いてここまで来たのは何のためか。
失われた機密情報を取り戻して返り咲く為だろう。
しかし仮にそれを叶えたとしても、もう世界は知ってしまっている。
自分達の秘密が収められた禁断の匣が存在していることを。
そして、存在しているならば再び良からぬことを企んだり、それを阻むために先んじて奪おうとする連中が現れる可能性はいつまでも捨て切れない。
結局は同じことの繰り返し。
その度に今回のような世界全体を巻き込んだ戦争を起こしてしまうとしたら─────。
何を優先すべきか。どうするのが正しいのか。
心の内にある天秤が、傾いていく。
「……………………もういいよ」
ポツリと呟く。
やっぱり未練ならたっぷりあるし、時間を巻き戻せるならやり直しを選択するかもしれない。
だがしかし。
それを踏まえた上で見過ごせないことだってある。
「アレがあるせいでこんなみにくいあらそいが起こるならないほうがいい。あんなものがあるせいでだれもしあわせにならないっていうのなら、わたしは操縦士エリートの地位も過去ももういらない!」
今度は大声ではっきりと告げた。
これまでの全てを捨てると。
宣言した以上もう後戻りは出来ない。
だが、「捨てる」という行為は何も悪いことばかりではないはずだ。
しがらみや後ろめたい過去といった煩わしいものごとを引っ括めて彼方へと連れ去ってくれるのだから。
- 189キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:13:12
「あーあ、言っちゃった……。もっとワガママで自己中心的なにんげんになれたら是が非でも必死にとりもどそうとしたんだろうけど。やっぱりわたしはどこまでいっても小心者みたい。たはは……」
「ま、ヘタレのてめぇにしちゃ悪くねぇ啖呵だったぜ。その覚悟を汲んで派手にぶちかましてやろうじゃねぇか」
言葉とは裏腹にどこか満足げで晴れやかな表情の少女に対して不良軍人はニヤリとした笑みを浮かべると背中に背負っていた携行ミサイルを構えた。
狙うは例の演算装置の下部。
液体が満たされているというのなら、底の付近に大きな穴を空ければ重力に従って漏出していくはずだ。
あとはトリガーを引くだけ。
それだけで彼らに課された任務は達成される。
だが、そう易々と事態が丸く収まることを許さないモノがいた。
「っ!あぶないっ!」
突如として身を隠すために利用していたスーパーコンピューターが薙ぎ倒される。
最初に反応したのは周囲をキョロキョロと警戒していたノエルであった。
だが、警告は間に合わない。
狙いを定めていたせいで無防備を晒していたヘイヴィア目掛けて衝撃で砕き割られた破片が勢い良く降り注ぐ。
「ぐっ……!がぁ……っ!」
幸い数百kgに及ぶ重量の下敷きになりこそしなかったものの、まともに固いプラスチックや金属の塊を胴に浴びて悲鳴にならない呻き声を上げて床に転がされる。
『キャロライン』。
襲撃者の正体。
単純な体当たりだけで自動車による交通事故じみた惨状を容易く生み出せる意志無き怪物に発見されてしまった。
「逃……げろ……!」
「で、でも……っ!」 - 190キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:16:47
ノエルはこの場から離れるように促す相方を一瞥する。
骨折以上の重傷を負っているようでは無いものの、受けたダメージのせいで直ぐには立ち上がれそうにない。
そして、冷徹なる無人兵器は「倒しやすい敵」から殲滅するようにプログラミングされている。
故に彼の息の根を止めようと襲いかかるのに容赦も迷いなど存在しない。
今度こそ喰いそびれた手負いの獲物を確実に仕留めるべく、最短最速で圧殺せんと迫っていく。
2秒後には人間1人分の粗挽き肉が出来上がる。
その手前。
「……っおあああああああァァァっ!!させるかぁっ!!」
ノエル=メリーウィドウは喉の奥から叫び声を絞り出して『キャロライン』を思い切り殴り付けた。
ここには都合良く助けてくれる他の味方は誰もいない。
恐怖に心が竦み上がっていたが、「守れるのは自分だけ」という至極単純な事実が身体を動かした。
再び交通事故のような轟音。
機械化した腕によって強化された一撃は数百kg以上の重量を誇る無人兵器の体勢を崩して横滑りさせ、また別のスーパーコンピューターに激突させた。
「ノエル、てめぇ……!」
「いまので『配線』がイカれた!つぎはムリ!はやくトドメをさしてっ!」
「!」
確かに眼鏡の少女の腕は折れてこそいなかったものの、エリート専用スーツごと表皮が痛々しく裂けて中のケーブルが覗ける状態となっていた。
本人の言う通り二度目は期待出来そうにない。
動くならば、今この瞬間。
「づ……つああぁ!!」
鈍く残るダメージを振り切ってヘイヴィアは起き上がると床に落とした携行ミサイルをスライディングで拾い、横たわった姿勢のまま構えた。
狙うは勿論、瓦礫にめり込んでいる『キャロライン』。 - 191キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:20:05
「ガラクタ野郎が!くたばりやがれ!」
よく振られた炭酸飲料の缶を開けたような音と噴射煙を伴って放たれた弾頭は剥離しかけたキューブ装甲ごと巻き込んで本体へと吸い込まれていく。
命中、そして炸裂。
戦車をも一撃で葬り去る爆発が無人兵器を永遠の沈黙へと誘った。
「げほっ、俺もヤキが回ったぜ。てめぇにまた助けられる時が来るとはな」
「めっちゃほめてほしいけどそういうのはあと!それよりもいまのミサイルで最後なんでしょ?『塩基プリズム立体基盤』をこわす手段が……。ハッキングやウイルスに感染させるためのクロスボウはアドレイドがもってっちゃったし、そもそもアイツしかうまくつかえないしどうしよ……」
「それなら心配すんな。携行ミサイルなんざその辺に転がってる死体から漁りゃ補充出来んだろ」
「あ、そっか」
一旦の危機の打破した余韻も束の間。単純かつ身も蓋も無い解決策に従って、二人は血塗れになりながら物言わぬ肉塊と化している骸をスカベンジャーの如く検めていく。
目論見通り目当ての物は早く見つかった。
ヘイヴィアは『正統王国』軍兵士の骸から先程『キャロライン』を仕留めたのと全く同じ携行ミサイルを拾い上げる。やはり扱うならば使い慣れた物が一番良い。
「うっし!所属も思惑も別とはいえ同じ勢力の野郎の死体から拝借するのは気が引けちまうがこの際遠慮してる場合じゃねえからな」
何はともあれこれで漸く振り出しへと戻ることが出来た。
ヘイヴィアは改めて『塩基プリズム立体基板』に狙いを定める。
するとノエルが横合いから話しかけてきた。
どこで見つけたのかゴツいことこの上ないコンテナのような四連装ロケットランチャーをヨタヨタと担いで。 - 192キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:24:13
「あのさぁ、わたしも撃っていい?ケジメというかなんというか……。やっぱりアレはじぶんの手でおわらせてやりたいんだよね。あれだけおおきいんだからいくらノーコンのノエルちゃんでもはずすことはないだろうしさ。いいでしょ?」
「こりゃまたスゲェの持って来やがったな……。つっても、確実にぶっ壊すには数が多い方が確実か。構わねぇけど取り敢えずソイツの使い方は分かってんのか?つーかその壊れかけの腕で撃って平気なのかよ?」
「だいじょぶだいじょぶ。さっき説明書をよんだから。まずここをもってぇ、そんでつぎにここにゆびを……」
「おい、素人。そもそもその持ち方だと前後逆だ馬鹿野郎」
「え、マj……ゅらぶぅあっ!?」
唐突に素っ頓狂な声を上げて眼鏡の少女は素っ転んだ。
原因は足元の血溜まり。
どうやらポンコツはそいつで足を滑らせてしまったらしい。
それだけならばいつものドジで済ませられただろう。
しかし、既にご存知の通り。
─────ここで終わらないのがノエル=メリーウィドウという女である。
「……っ!何してやがる!早くそいつをはなs
ヘイヴィアが顔を一瞬で引き攣らせて取るべき行動を指示しようとしたがもう遅かった。
それよりも先にトリガーに引っ掛けていたノエルの指が尻餅をついた拍子に押し込まれたからだ。
「あ」
間の抜けた声と共に、前後逆に持っていたロケットランチャーに装填されていた弾頭が一斉に放たれた。
詰まる所、完全に暴発事故であった。
計4条の噴射縁の尾を引いた弾頭は運悪く(良く?)彼女の後ろ、つまりは砲撃する予定であった巨大な演算装置に意図せずして一足早く全弾命中する。
ものの見事に全弾クリーンヒット。
着弾の衝撃でバランスを崩した『塩基プリズム立体基板』は、自重によって繋がれたコードや電極を引きちぎりながら傾いていく。 - 193キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:29:35
「あわばばばばばばばばばばばばばばば………………!」
狼狽えても「崩壊」は止まらない。
あっという間に傾きは「臨界点」を迎え、崩れ去るようにガラスの塊は床へと叩きつけられた。
粉々になった残骸から漏れ出た塩水が床をみるみる浸していく。
漏電によって付近のスーパーコンピューターをショートさせ、広がる水溜りに足を浸けていた兵士と無人兵器を無差別に感電させながら。
一方で自らのドジで生み出した惨状の顛末を見届けたノエルはというと。
「…………………………ヨシ!任務達成!」
やらかしから全力で目を逸らすように額から滝の如く汗を垂らして、震えるドヤ顔でサムズアップをキメてやがった。
そんな嵐を呼ぶポンコツエリートの頭を不良貴族がスパァン!と無駄に良い音で叩く。
「『ヨシ!』じゃねぇ!何やり切ったみてぇなツラしてんだよ!毎度のことながら何やらかしてんだてめぇは!一個株上げたら直ぐに二個下げやがってもーっ!」
「あだぁっ!?いいじゃん!どうせこわすよていだったんだからさぁ!」
「そんでお次は開き直りかゴルァ!それにしたって目立ち過ぎなんだよっ!!」
- 194キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:31:40
案の定、この場にお集まりいただいた四大勢力軍の皆様は銃撃戦すら一旦休止し、雁首揃えて呆然としていた。
当然の反応だろう。
何とかして手に入れようとしていた機密データが突然失われたのだから。
知る由無いものの、とんでもない大馬鹿野郎の手によって。
その様子を陰から見ていたヘイヴィアは踵を返して脱兎の如く出口へと駆け出した。
その手には最早用済みとなった重いだけの携行ミサイルは握られていない。
まるで全力疾走するには邪魔になると言わんばかりに。
「ちょっと!どこいくのさっ!?」
「どこってトンズラだ!トンズラ!」
「は?え、えっ!?」
「死にたくなけりゃモタモタすんな!今はぶっ壊れた演算装置に目が行っちゃいるが、連中が冷静さを取り戻せば直ぐにでも『誰が』やったのか犯人探しが始まるぜ。見つかっちまったら最後、グロテスクな八つ当たりの憂さ晴らしが待ってやがる。そうなる前にこの場から抜け出すタイミングは混乱が蔓延している今しかねぇ!」
「ひ、ヒギィ!おいてかないでええええぇぇぇっっ!」
目的は果たしたが命の危機は未だ直ぐ側に佇んでいる。
遠足と同様には生きて帰るまでが軍事作戦。
容疑者として炙り出されるより前に、ヘイヴィアとノエルは地上に向かって一目散に逃げ出した。 - 195キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 21:37:40
一旦ここまで
ヘイヴィア&ノエルパートは一旦一段落
塩基プリズム立体基板は「データ解析しているスパコン見つけるの不可能じゃね?」というガバからでっち上げた代物でござい 理屈もテキトー
毎回ノエルを描いてて思う「ほんまええ加減にせぇよお前」感 楽しいけどさぁ……
とうとうコ◯ンドーネタまで擦りやがってからに
次回はいよいよドミニーク戦決着
倒す方法はぼんやりと浮かんでる!あとは描写チカラ! - 196キャラシート◆BP2qeK/ddM24/12/09(月) 23:12:28