【オリキャラSS】す、すごいものを見ちゃった……!!②

  • 1環ハルト ◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 21:59:49

    ~前回のあらすじ~

    私は環ハルト!
    ただの鳥好きのトリニティ生……のはずだったんだけど、成績が悪すぎて補習授業部に入れられちゃった!
    そして、ひょんなことからカイザーコーポレーションのあくどい土地開発計画を知ってしまい、陰謀渦巻く戦いに巻き込まれることに……!
    そんな中、私たちがカイザーの計画を探っていることがバレてしまい、トリニティのとある分派からの襲撃を受けて絶対絶命のピンチ!
    一体どうなっちゃうの~!?

  • 2◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:01:01
  • 3◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:01:18

    キャラ
    ・環ハルト
    鳥が好きなトリニティ1年生。
    翼のある生徒も好きで、そのためにミレニアムから転入してきた。最推しはツルギ。なお本人に翼はない。
    銃は巨大な対物ライフルだが、エイムは苦手であり、ライフルを槍のように振り回すスタイルでの白兵戦が非常に得意。
    かなり知性に欠けるステ振りのため、補習授業部に入れられた。

  • 4二次元好きの匿名さん24/05/27(月) 22:01:28

    建て乙です!

  • 5◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:01:34

    ・富竜マヒル
    トリニティ地域の不良グループの1つ「パタパタヘルメット団」のリーダー。不良のような出で立ちだが、その実は高校デビューでナメられないようにしていただけであり、謎のカリスマ性で取り巻きが増えた。
    そのため実際は善人であり、グループの仲間にも他人に損害が発生する悪事はしないようにと伝えてある。
    アングリーアデリー推しのモモフレンズガチ勢。
    既に留年しており、さらに留年を重ねる寸前のため、正規の部員ではないが補習授業部に入り浸っている。

  • 6◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:02:18

    ↓本編続き↓

  • 7富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:03:00

    くっ……数が多い……!
    アイツらって少数派の分派じゃなかったのかよ!?
    この人数、分派の全員が出てきてるんじゃないか!?

    建物中央玄関。
    アタシたちは靴箱の陰に身を潜めながら攻防戦を繰り広げていた。

    どう考えても分が悪ィなぁ……!これじゃどうやってもジリ貧……アタシの取り巻きを呼んで援護してもらうか……?
    いや、これはアタシの戦いで、あの子達までカイザーの陰謀に巻き込んだらダメだ!

    と、そこで気がついた。
    今、真正面でマシンガンを乱射している生徒、確かウチのたまり場によく顔を出すやつの1人。でもあいつがヒュグノト派の所属なんて話は聞いたことがない。
    裏切り?いや、そうする理由がない。
    身を隠しつつ、彼女の顔を再び覗く。……なんだか、とても苦しそうな表情をしている。

  • 8富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:03:22

    まさか!?
    他の敵集団の顔を見る。
    どの人も表情が暗い。まるで……自分の意志に背いて操られているように。

    ヒフミ!アズサ!コハル!
    敵の様子がおかしい!
    一度退いて様子を見るぞ!

    「──おや、気づかれちゃったか」

    敵の波の中から、そんな声が聞こえてきた。
    銃を構える人ごみが割れ、1人の生徒が現れる。

    その姿を見て、アタシは息をのんだ。

    「久しぶり、お姉ちゃん」

  • 9富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:03:37

    そこにいたのは、アタシの妹だった。
    幼い頃からずっと一緒で、アタシの後ろをひな鳥のようについてきていた、可愛い妹。
    不良の恰好をするようになったアタシを更生させるんだと意気込んで、ヴァルキューレに入学した、正義感の強い子。
    それが、アタシの知る妹──富竜クリスの姿だった。
    それが、どうして。

    「ハトが豆鉄砲を喰らったような顔してるね。でも、私は退かないよ。私の計画を邪魔させるわけにはいかないもん」

    クリスがこちらに向けて手をかざす。
    その指には見慣れぬ指輪が嵌まっていた。

  • 10富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:03:49

    指輪を飾る赤い石が一瞬光った気がした。
    その刹那。

    「マヒル、避けて!」

    コハルの叫び声。そして、銃声。
    咄嗟に身を伏せ、撃たれた方向を見る。
    そこには、こちらに銃口を向けるコハルの姿があった。

  • 11富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:04:20

    「……ご、ごめん、私、なんで……!?」

    コハルは明らかに動揺している。
    その隣にいたはずのアズサも、なぜだか自分で自分の腕を必死に抑えている。

    「くっ……何故だか分からないが、身体が言うことを聞かない……!操られているような……そんな感じだ……!」

    どっ、どういうことだよ!?
    クリス、お前2人に何をしたんだ!

    「教えてあげる義理はないけど……お姉ちゃんの頼みなら教えてあげようかな?」

    クリスは悪戯っぽく笑う。

    「これは聖遺物の1つ。代々ヒュグノト派で保管されてきた、『翼を持つ者の精神に干渉できる』指輪、だよ」

  • 12◆8kXeI1ONP624/05/27(月) 22:04:47

    本日の更新は以上です!

  • 13二次元好きの匿名さん24/05/27(月) 22:07:40

    乙でした
    ガッツリオカルトアイテムが出てきた

  • 14二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 08:09:56

    妹ちゃんヤバい

  • 15二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 15:40:43

    保守

  • 16富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:31:06

    翼がある者の精神に……?
    道理でアズサとコハルだけに効果があったわけだ。

    無関係の人間を無理やり従わせ、使役し、戦わせる。
    クリス、アンタはどこで道を間違えた?

    ガトリングを構え、目の前にいる妹に向ける。
    トリガーさえ引けば必ず当たる距離だ。
    なのに、その指先がとても重い。

    「そっか、私がここまでやってるのに撃てないんだ、お姉ちゃん」

    クリスの冷たく鋭い視線がアタシを苛む。

    「マヒルちゃん!ここは一度退きましょう!バリケードを作って体勢を整えれば……!」

    ……いや、ここで決着をつけたい。
    つけなきゃいけないんだよ……!

  • 17富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:31:24

    再び、クリスの指輪が光る。
    それを合図に、四方から銃弾が飛んでくる。
    数は多いが、タイミングが分かるだけまだマシな部類。

    「……ぅ、まだやるつもり……?早く、諦めてよ……!」

    クリスの呼吸に乱れが見える。
    もしかして、あの指輪は副作用が……!?
    ここまでして……アイツは……!!

  • 18富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:32:09

    ……バカ野郎!!
    なんでお前はいつもそうなんだよ!!
    いつもアタシの後ろにくっついてるのに、1人で危ないことをして、そのたびにアタシが叱って……!
    トリニティじゃなくてヴァルキューレに入ったのは何のためだ!?アタシを更生させるためじゃ無かったのかよ!?
    お前が、お前が道を外れてどうすんだよ……!!

    銃弾の雨の中で、アタシは叫ぶ。
    ピタリと掃射は止んだ。

    「お姉ちゃん……私、私……!」

    銃口を下げ、クリスに近づく。
    そして──

  • 19富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:32:25

    パァン!

    クリスの頬に、渾身のビンタをお見舞いする。
    呆気に取られた顔のあと、大粒の涙がその目から溢れ出した。

    「お姉ちゃん、私は……叱って欲しかった!お姉ちゃんはずっと私の憧れだった!いつも皆の先頭に立って、皆から慕われて、友達がいっぱいいて、悪いことをしたら叱ってくれて……!お姉ちゃんは私のヒーローだった!でも、高校に入ってお姉ちゃんは変わっちゃって、ガラの悪い連中とつるむようになって、私は1人取り残された」

    涙で声を震わせながら、クリスは堰を切ったように話し始めた。

    「だから、私はヴァルキューレに入った。お姉ちゃんを更生させるために。……でも、その実態は正義なんかとはかけ離れてて。隠蔽、賄賂、怠惰、癒着……腐った果実みたいな世界があった。だから私は決めたの。私がこの腐った樹を芯まで腐らせる。そうしたら、他の誰かが今のヴァルキューレを解体して新しい正義の力を作り上げてくれるだろうって。それが、お姉ちゃんの更生に近づくと思ったから」

  • 20富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:32:58

    「私はカイザーに近づいて、この計画の裏で手引きする役を買って出た……まさか、こんなところでお姉ちゃんと再開するなんてね」

    そして、一呼吸置いたあと。

    「ねえ、私、こんなところまで堕ちちゃった。自分の夢すら叶えられず、学校を裏切って、お姉ちゃんの友達まで勝手に利用した。私、悪い子だよね……?だからさ、また、あの頃みたいに叱ってよ!悪いことをした私を叱ってよ!!」

    それは、心の底から出た、汚泥のような本音だった。

  • 21富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:33:12

    クリス、ごめん。
    アタシはアンタの気持ちに気づいてやれなかった。
    アンタはアタシのことを心配してくれてたんだよな。
    ありがとう。

    私は未だピンク色が残るクリスの頬に手を伸ばし……

    「痛い痛い痛い!?」

    思いっきり引っ張った。

    「おねえひゃん!いひゃいって!?」

    叱って欲しかったんだろ?
    悪いことしたら昔からこのスタイルで叱ってたからな、久しぶりのお説教だ!

  • 22富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:33:28

    それは、まだ2人とも小学生くらいの頃の話。
    イタズラをしたクリスの頬をグイッと左右に引っ張って変な顔にしてやるのが、いつの間にかアタシたちの間の「お仕置き」だった。
    厳しすぎず、甘すぎず、それでもその後は2人で笑いあえる「お仕置き」がこれだった。
    それを、10年ほど経った今、再びすることになるなんてな。

    「うぅ……ビンタの余韻と合わさってめっちゃ痛かった……」

    そう言いながらも、クリスの顔は今までのような仄暗いものではなかった。

  • 23富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:33:48

    「……ありがとう、お姉ちゃん。……これ、元々トリニティのものだから、返しといてよ。シスターフッドとかに持ち込めば、きっと代わりに保管してくれるから」

    クリスは例の指輪を外して、アタシに握らせた。
    そして、踵を返して、まだ混乱冷めやらない様子の人だかりの中へと進んでいく。

    ちょっと、どこ行くんだよ!

    「まだ、私にはやることがあるから。お姉ちゃんとは一緒に居られないけど、まだ捕まるわけにはいかないの。その後になれば……自首、するよ」

    アタシは立ちすくんだ。
    クリスの姿はそのまま、人々に紛れて消えてしまった。

  • 24◆8kXeI1ONP624/05/28(火) 19:34:21

    本日の更新は以上です!

  • 25二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 22:15:54

    乙です。妹ちゃんはカイザーとヒュグノト派の連絡要員ってところか……。しかしこれ、下手したらカルバノグ前にヴァルキューレの汚職が先生にバレるかもしれんね。

  • 26二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 07:39:18

    👺

  • 27二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 16:53:15

    保守

  • 28環ハルト ◆8kXeI1ONP624/05/29(水) 20:16:12

    ハルトです。
    さっきまで校舎の上から狙撃手として牽制やら威嚇やらをしていたんだけど、なんか急に足並みが乱れて、敵チームがバラバラと解散していってる……?
    何があったんだろ。
    これって一旦私たちの勝ち……なのかな?

    "ハルト、お疲れ様。敵の波が引いたみたいだから、一度教室まで戻ってきてくれるかな?"

    はーい、今行きます!

  • 29環ハルト ◆8kXeI1ONP624/05/29(水) 20:16:27

    「……とまあ、そういうことで、向こうは退いてくれたんだが……」
    「……なんというか、手放しには喜べませんよね……まさか妹さんが……」

    玄関をガードしていたチームはみんな沈痛な面持ちだ。

    「あ゛ー……まだなんか身体の主導権が戻りきってる感じがしないんだけど……重く感じる……」
    「拷問や苦行に耐える訓練なら受けてきたが、流石に私も精神に直接介入されたことはなかったからな……」

    コハルちゃんは机に伏してぐったりしている。
    アズサちゃんは姿勢こそいつも通りに見えるけど、心なしか翼がヨレヨレしている気がする……

  • 30環ハルト ◆8kXeI1ONP624/05/29(水) 20:16:41

    「ただ、去り際にその厄介な指輪をクリスがアタシに渡してくれたから、もし次に戦うことがあったとしても今回のようにはならない……と思う」

    えっ!?マヒルちゃんそれホント!?
    ……あっ、ごめん、つい……無神経なこと言っちゃったかも……

    周囲の「こいつマジか」みたいな目を一斉に受け、私はシュンとなった。

    「アッハハハ!ハルトらしいぜ!……なんなら試してみるか?」

    マヒルちゃんがポケットを探り、私に指輪を投げ渡す。

    「ちょ、ちょっと何で!?ハルトにそんなもの渡したらきっと……ああもう!」

    いやいや、流石にダメージがまだ残る友達に追い打ちをかけるようなことはしないよ……!?

  • 31環ハルト ◆8kXeI1ONP624/05/29(水) 20:17:15

    「ああ、それならきっと大丈夫だと思うぜ」

    どういうこと?

    「もらった時に実はアタシもこっそり試してみたんだよ。でも、怪しげな能力が使える感じは一切なかった……だから、使うには何か特殊な素質が要るんじゃねえかな?って」

    素質、ねぇ。
    一切無くても鳥好きとしては悲しいし、めちゃくちゃあっても鳥や翼を持つ子に言うことを無理やり聞かせるなんてオタクとしては最低の行為だし……

    そう思いながらも、ものは試しとして指につけてみる。
    ……特に何も変わった感じはない、かな?
    もっと精神を集中させてみて……

    !?

  • 32環ハルト ◆8kXeI1ONP624/05/29(水) 20:18:13

    指輪に意識を集中させると、僅かに感覚に変化があった。
    コハルちゃんとアズサちゃんの周りだけ、本当にうっすらと色がついて見えるような……?
    コハルちゃんの周りはちょっとピンク色が混ざった黄色……?アズサちゃんは……暗めの青緑……?

    !……プハッ!
    ハァ……ハァ……めっちゃしんどい!
    この状態の集中が5秒も続けられないくらいには負担がすごい。
    マヒルちゃんよりは私のほうが素質あるっぽいけど、妹さんはさらにめちゃくちゃ適性があるみたいだね。

    「へぇ、色か。翼がある奴の精神の状態が僅かに色で見える、ってことなのかねぇ」
    「私は普段通りの平常心だ。コハルは……おそらくハルトの指輪の悪用を心配して焦っていたんじゃないか?焦りを表すのが黄色ということかもしれない」
    「な、なんで分かるのよ!アズサも指輪使ってるんじゃないの!?」

    あ、そうだ。
    これって、「翼があるもの」が対象だから、鳥にも干渉できるんじゃないかな?
    もう一度やってみてもいい?

    「……無理はするなよ?」

    うん。
    呼吸を整えて……集中!

  • 33環ハルト ◆8kXeI1ONP624/05/29(水) 20:18:41

    ……近くの木に気配がする。
    さっきよりは明瞭に感じられる。
    この子は……餌を探している?
    あ、なんか「見えない手」みたいな、これで何かを操れそうな感覚がしてきた……
    こっちに来て……窓枠に止まって……窓ガラスをつついて……

    カツンカツン。

    うわっ!?
    目を閉じて集中してたから、急に音が鳴ってびっくりしてしまった。
    その途端に鳥を操るイメージは消え、窓枠にいたはずの小鳥は飛び立ってしまった。

    「今のって……」

    うん、なんか、できてたね……操作……

  • 34環ハルト ◆8kXeI1ONP624/05/29(水) 20:19:05

    「ヒトは無理だけど鳥はできるみたいですね」
    「さっきほど息が上がってる様子もねぇし、こっち方面には向いてるってことなのか?」

    いや……怖い!!
    めっちゃ怖い!
    操れる感覚がとかじゃなくて、これができてしまうと本当にドンドン自制が効かなくなる気がして本当に私が怖い!!
    私には早すぎた。これはお返しします!!

    慌てて指輪を外し、マヒルちゃんに押し付け、私は後ろに下がって距離を取る。

    「そんな怯えなくても……」

    "じゃあ、これは私が預かっておこうか"
    "またティーパーティーとかシスターフッドの子に会ったときに渡しておくよ"

    ありがとう、先生!

  • 35◆8kXeI1ONP624/05/29(水) 20:19:21

    本日の更新は以上です!

  • 36二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 01:07:01

    保守

  • 37二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 08:51:08

    魔法の指輪 ウィザードリング

  • 38二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 17:20:05

    指輪が呪いの装備だった

  • 39二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 01:06:37

    今日は更新休みかな。

  • 40二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 10:41:42

  • 41二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 20:11:20

    保守

  • 42◆8kXeI1ONP624/05/31(金) 22:36:54

    ──カイザーグループ傘下企業 会議室

    「で、負け帰ってきた上に遺物も奪取された、と。そういう訳だな?」
    「はい。……大変申し訳ございません。まさかその場に先生がいるとは思わず……」

    執務机に座ったロボットは、固く握った拳を机に叩きつけた。

    「君はトリニティ区内で顔が効くし、そもそもあのヴァルキューレの中で飛び級をして今の地位まで登りつめたその能力を買って今回の計画に参加してもらっていたのだが……これは一度評価を改めねばならんようだなぁ!」
    「……どんな処置も受け入れるつもりです。また、今回の尻拭いとして、既に自費で聖遺物の奪還を手配してあります」

    ロボットは目の前の相手を値踏みするように、無言で睨みつける。

  • 43◆8kXeI1ONP624/05/31(金) 22:37:08

    「……まぁ、君にはまだ利用価値はある。だが、次はないと思うことだな」
    「……はい、寛大な処置に感謝します。それでは、失礼します」

    そう言って、その生徒は部屋を後にした。

  • 44◆8kXeI1ONP624/05/31(金) 22:37:34

    本日の更新は以上です!
    短くてすみません!

  • 45二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 04:53:34

    乙。ついに黒幕の登場か…

  • 46二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 08:10:16


    カイザーは本当に懲りない

  • 47二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 17:20:30

    保守

  • 48二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 23:03:41

    妹ちゃん大丈夫かな…

  • 49二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 08:55:09

    保守

  • 50二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 17:02:24

    保守

  • 51環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/02(日) 21:51:11

    ハルトです。

    マヒルちゃんの妹による補習授業部襲撃から1週間ほど経ちました。
    この間は特にこれといった事件はなく、私の本来の目的である特別追試の対策をみんなに手伝ってもらって……。

    ん?先生からモモトークだ。

    『"例の地上げ計画の手がかりに繋がりそうな子が見つかったよ"』
    『"今から事情を聞くんだけど、立ち会うかい?"』

    わーお。
    流石は先生。人脈が広いなあ。

    私は皆にそのことを伝え、皆でシャーレへと向かった。

  • 52環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/02(日) 21:51:42

    シャーレの応接室に入ると、そこにはゲヘナの子らしきツノのある子たちがいた。
    ソファの真ん中にいる、ワインレッドの子がリーダーっぽいけど、先生に叱られるのが嫌なのか、雨に濡れた子犬みたいな表情になってる。

    "アル、怒ってないから安心して。便利屋の依頼人に騙されて利用されてるんだったら私も動かないと"
    「だってよ、社長……」
    「こんなにシナシナのアルちゃん久しぶりに見たなぁ〜」
    「うぅ……」

    「あれ、先生、手がかりを知ってそうな生徒って……便利屋68の方々ですか?」
    "うん。そうなんだけど……どうも依頼の経緯が変みたいでね……"

    ヒフミちゃんはこの人たちと面識あるみたいだね。

    「……あーもう!分かった、分かったわよ!先生の助けになるなら話すわ!」

    赤紫のコートを着た子……アルさん、だっけ?が急に立ち上がって、一瞬固まったあと、おとなしくソファに座りなおした。

  • 53陸八魔アル ◆8kXeI1ONP624/06/02(日) 21:52:17

    ……あれは日曜日のことよ。
    事務所に依頼の手紙が来たの。

    『この住所にある建物の主人から指輪を奪取し、次の金曜日に届けてほしい。届け先は追って連絡する』

    要約するとそんな内容だったわ。
    電話の主は不明、こちらからの返答をしようにも手がかりは無し、前金なのか封筒にはかなりの金額……
    どう考えても怪しいじゃない!?

    ただ、こちらとしてもプロのアウトローとして、ポリシーに反するとは言え前金を受け取ってしまった以上やるべきことをこなすのがスジでしょう?
    だから、事前調査がてら手紙にあった指示の場所に来たら……

    「どうみても、シャーレ、だね……」
    「ここの主人、ってことは先生の指輪かな〜?くふふ、先生も指輪なんてするんだね?」

    とまあ、シャーレにたどり着いてしまったのよ……
    先生なら事情を話せば依頼主探しを協力してくれるでしょうけど、ここで他人を頼るなんてアウトロー失格だと思わない?
    なんてことを考えていたら、コンビニから帰ってきた先生に見つかって……

  • 54環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/02(日) 21:53:57

    "で、今に至ると"

    アルさんの説明で大体の状況は分かった……けど、確かに不可解だなあ……

    「先生、指輪ってこの前のアレ以外に心当たりあるか?」
    "いや……ないよ。アクセサリーは着けないし、心に決めた人とかもいないし"

    「なら依頼主の勘違いの可能性はありませんか?住所の番地を書き間違えたとか……」
    「その可能性はすでに考えたわ。でも、こちらから向こうに連絡を取れない以上、これを信じるしかないし、向こうだって出す前に念入りなチェックをかけて当然じゃないかしら?」

    なるほど、確かにそれも一理ある。

    「あ、社長、ちょっといい?実はまだ手紙について大事なことがあってさ……」

    何かを思い出したように、目つきの悪い子が話し出す。

    「……さっき、シャーレにたどり着いたときに、この手紙をもう一度確認してみたんだけど……よく見たら、ここ。封筒の内側に何かが書いてあるの」
    「そ、それを早く言いなさいよ!?で、なんて書いてあるの?」
    「いや、社長ってばその後すぐ先生と会って取り乱してたじゃん……。先生、ちょっとハサミ借りるね」

    そう言って、その子は封筒をシャキシャキと切り開いていった。
    便箋だった紙に書かれていたのは、次の文言だった。

    『追伸:雇用や契約など関係ない、無慈悲無情のアウトローである貴方がたの事を信頼しています』

  • 55◆8kXeI1ONP624/06/02(日) 21:54:16

    本日の更新は以上です!

  • 56二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 23:32:26

    乙です
    妹ちゃんが言ってた自費での奪還策ってこれかあ…

  • 57二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 02:35:30

    まさかアルちゃんたちが絡んでくるとは思わなかった

  • 58二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 08:17:50

    ここからどうなるか…

  • 59二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 16:15:51

    保守

  • 60環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/03(月) 21:35:42

    「あー……これクリスのやり方すぎるな……」

    まあ、この状況下で暗躍してるのは妹さんくらいしか思い浮かばないよね……

    「アイツ、昔っからそうなんだよな。よくわからないなぞなぞとかイタズラを引っ掛けてきて、アタシや友達を困惑させてさ……今思うと、構って欲しかったんだろうな」

    ……マヒルちゃんは妹さん思いなんだね。

    「そりゃあな?大事な家族だしよ……」

    ……場が一気にしんみりした空気になった。

    「ちょ、ちょっと待って?その……クリスっていう妹さんはあなた達に指輪を自分から渡したんでしょう?なのになんで強奪の依頼なんかを……」

  • 61環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/03(月) 21:35:59

    "偽装工作、じゃないかな"

    偽装……?

    "カイザー側には無理やり奪われたと報告して、反省してるポーズを示すために第三者に指輪を回収してもらう"
    "便利屋68と私が互いに面識あることを知っていたら、私伝いにマヒル達に連絡がいって、依頼の内容から、例えば契約書にハンコが押される日とか、警備が手薄になる日、暗躍してるカイザー傘下企業のある建物なんかを伝えられる……"
    "なんなら依頼の履歴が残れば、便利屋68もカイザーのビルに堂々と入りこむことができる。そうすれば中に入ってから陽動なり契約書の奪還なりをする隙ができる"

    「まだるっこしいけど、確かにスジは通ってるな……」

    じゃあ、封筒裏の謎の文章は……?

  • 62環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/03(月) 21:36:13

    「……依頼主が先生の味方、と仮定するとなんとなく分かったかもしれないわ」

    アルさんが口を開く。

    「この文章を自分なりに考えてみたの。私の目指すアウトローは狡猾で、無慈悲で、何物にも縛られずに悪事を行う……その相手が依頼主であろうと平気で裏切るような……そんなアウトローになりたい」
    「ただ、自分を裏切ってほしい依頼主なんて普通いるわけないじゃない。でも、今のクリスさんの状況なら?本当は先生の味方だけど、立場上はカイザーの手先というか、駒でなければいけない。そしてこの依頼も、見た目の上ではカイザーに利益があるように見えないといけないわよね?だから、敵の敵は味方理論で、私たちが依頼主を裏切ってくれれば、結果的に本来の野望は果たされる……どうかしら、この推理?」

    「へぇ~、アルちゃんやるねぇ~?こんな冴えたアルちゃん久々に見たよ~」
    「アル様、名探偵みたいです……!」

  • 63◆8kXeI1ONP624/06/03(月) 21:36:31

    本日の更新は以上です!

  • 64二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 04:20:52

    乙。便利屋が無慈悲とかwと思ってたけどそういう含意があったのか。

  • 65二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 05:56:51


    なんだか大変そうだ

  • 66二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 14:12:15

    納得

  • 67環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/04(火) 22:10:11

    この推理がどこまで正しかったのか分からなかったけど、確かに数日のうちにアルさんのところには、指輪の届け先としてD.U.のとある雑居ビルの住所が届いた。

    "アロナ、お願いしてた調査はできた?"
    『はい!こちらが指定されたビルの間取りと……周辺の地図……そして近辺の監視カメラのデータです!他にも関連する資料を集めておきましたよ!』
    "ありがとう、アロナ"

    "さて、アロナが用意してくれたこれらの資料なんだけど……このビルに入居してる企業がカイザーと結びついてることはほぼ確実みたいだね"
    "クリスが金曜日に届けるよう指定したということは、彼女の目からしても計画を壊すのに都合が良い日というのは間違いないだろうね"
    "だから、地上げの証拠を掴む、あるいは契約締結を阻止するために、金曜日に襲撃をかける。ここまで何か質問ある?"

    先生の情報網すご……

    "うん、みんな大丈夫そうだね。で、ここから具体的な計画なんだけど……"

  • 68環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/04(火) 22:10:37

    "……というのが私のプランだ。どうかな?"
    「流石先生。私の美学に適うプランね」
    「了解した。完璧に遂行しよう」

    はい、私も問題ないと思います!

    「じゃ、当日はよろしくな!アタシは……一度、クリスに連絡を取ってみる」

    ……うん。妹さんと仲良くね。

    「おう!」

    ──もうラスボスは目前。
    私たちはそれぞれの準備をするためにシャーレを後にした。

  • 69◆8kXeI1ONP624/06/04(火) 22:11:05

    本日の更新は以上です!

  • 70二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 08:26:22

    保守

  • 71二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 10:05:34

    乙です。ついに決戦か……

  • 72二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 19:51:55

    保守

  • 73二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 07:08:49

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 15:26:07

    保守

  • 75二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 19:42:02

    保守

  • 76二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 00:25:29

    保守

  • 77◆8kXeI1ONP624/06/07(金) 00:30:06

    リアルが忙しくてなかなか更新できずすみません……!
    あと保守もありがとうございます!
    土曜日には更新できるよう頑張ります……!

  • 78二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 08:10:38

    頑張ってください!

  • 79二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 12:36:28

    保守

  • 80二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 15:20:52

    >>77

    乙です!リアルに支障が出ない範囲で大丈夫ですよ。無理は禁物です。

  • 81二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 00:01:15

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 09:14:26

    保守

  • 83環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/08(土) 17:46:00

    そして、決行当日の朝。
    私達はシャーレに集まって計画の再確認をしていた。

    「装備よし、弾薬のストック……よし」
    「時計、ヘッドセット共に動作良好……っと」

    "どこまで綿密に練った計画でも不測の事態はありえる。みんな、臨機応変にね……って、言わなくても分かってるか"

    先生、こちら確認終わりました!

    『便利屋も準備は完璧よ』

    "OK、それじゃあ各自、定位置に移動!"

    了解!

  • 84環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/08(土) 17:46:38

    『こちら便利屋、手はず通りにカイザーのビルまで入館完了』
    『こちらアズサとヒフミ、指定地点到着』
    『こ、こちらコハル、ハナコ、準備完了よ』

    あっ、私ハルトも準備完了です!

    今、私は先生と同じ場所……向かいのビルの屋上で対物ライフルを構えている。

    ”よし、じゃあ作戦第一段階、開始!”

    先生のその号令の数秒後、雑居ビルから爆発音と発砲音、少し遅れて非常ベルがけたたましく鳴り響いてきた。

    さぁて、いよいよ勝負のときだ!

  • 85陸八魔アル ◆8kXeI1ONP624/06/08(土) 17:47:14

    「こちら便利屋、手はず通りにカイザーのビルまで入館完了」

    カヨコがこっそりとインカムで連絡をしている。
    私の心はいつも通り、仕事前の緊張感はありつつも平常心を保っていた。

    『”よし、じゃあ作戦第一段階、開始!”』

    それが、始業の合図。

    いくわよ、皆!
    私は銃を上に掲げ、威嚇射撃をする。

    「はぁ~い、カイザーのみんな~?便利屋68だよぉ~?」
    「こ、このビルは私たちが乗っ取ります……!!」
    「大人しく抵抗しないで……ってそんなわけないよね」

    案の定、警備のオートマタたちが一斉に襲い掛かってくる。
    だけどこの程度、プロのアウトローである便利屋68の敵じゃないわ!!

  • 86阿慈谷ヒフミ ◆8kXeI1ONP624/06/08(土) 17:47:58

    「こちらアズサとヒフミ、指定地点到着」

    私とアズサちゃんはカイザービル裏口近くの路地で身を潜めていた。

    うう……緊張する……

    「……ヒフミ、怖いのか?」

    あっ、いや、ううん、大丈夫だよ。
    ただの武者震いみたいなものだし!
    アビドスの皆さんと銀k……共闘したときの方が緊張したし!

    「そうか。それじゃあヒフミ、この作戦も頑張ろう。……む、先生から連絡だ」

    私たちは黙ってインカムに耳を傾けた。

    『”よし、じゃあ作戦第一段階、開始!”』
    「了解」

    了解!

    そして、その数秒後。
    ビルから便利屋の皆さんのと思しき戦闘の音が聞こえ、裏口を見張っていたガードロボがビルの中に走って行った。
    それを見届けてから、私たちは誰もいなくなった裏口から、ビルへと侵入した。

  • 87浦和ハナコ ◆8kXeI1ONP624/06/08(土) 17:48:55

    「こ、こちらコハル、ハナコ、準備完了よ」

    コハルちゃん、連絡ありがとうございます♡

    「にしても、ハナコがヘリの操縦できたなんて……」

    そりゃあ、色々と嗜むタイプですので?

    今はヘリ(シャーレの備品)の中。
    私とコハルちゃんは屋上からの襲撃を任されています。
    勝手にヘリポートに着陸するとガードがすっ飛んでくるでしょうから、少し離れた空中でホバリングしています。

    『”よし、じゃあ作戦第一段階、開始!”』

    先生の威勢のいい合図がありましたね。
    今頃は便利屋の皆さんがナカで騒ぎを起こしているところでしょうか。
    ……そろそろ、ヘリを止めてもドサクサに紛れることができそうですね。

    「あれ、もう行くの?もうちょっと様子見したほうが……」

    いえ、おそらくヘリの存在自体はバレてると思いますので、混乱しているうちに一気にキメましょう♡
    「マスターキー」の用意をお願いしますね。

    「い、今やろうと思っていたの!」

    では、そろそろ着陸しますよ。
    備えてください♡

  • 88◆8kXeI1ONP624/06/08(土) 17:50:08

    本日の更新は以上です!

  • 89二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 00:00:38

    保守

  • 90二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 08:04:33

    保守

  • 91阿慈谷ヒフミ ◆8kXeI1ONP624/06/09(日) 17:00:42

    便利屋の皆さんが陽道してくれている間に、ここのボスを探して捕まえないといけません。
    私たちは1階から、ハナコちゃんとコハルちゃんは屋上から挟み込む感じで追い詰める手筈で……おおっと!?

    「大丈夫か?気を抜くと命取りだ」

    部屋に残っていたオートマタが襲ってきたのをアズサちゃんに助けられました。

    ありがとう、アズサちゃん。
    ……それにしてもこのビル、階段は1本しかないし、廊下も一本道だから、社長が逃げ出そうとしたなら見逃すはずがないんですが……見当たらないですね……

    「あれ、アズサ?」

    えっ、コハルちゃん!?もしかして、そっちも……?

    「ええ、上の階にはいませんでした」

    となるともしかして、最初からこれを見越して逃げたとか……!?
    先生!どうしましょう!?

  • 92環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/09(日) 17:03:41

    ”……!?それは本当かい!?”

    大変だ……
    周囲の路地は昨日のうちにこっそりとバリケードを作って袋小路にしてあるし、唯一塞いでない路地も私と先生が向かいのビルから見張ってるから、怪しげな人物が出入りすればすぐに分かってしまうはず……ですよね、先生?
    だから窓から出た可能性もないし、そもそもここの窓は通りに面したところ以外全て嵌め殺しらしいし……

  • 93◆8kXeI1ONP624/06/09(日) 17:08:42

    プロット考えてからボスがどう掻い潜ったか考えてなかったことに気づいたのでダイス


    ボスが見つからないのは dice1d4=4 (4)

    1.窓をブチ破って裏路地に潜んでるだけ

    2.トイレの個室とか、社長の席から離れた机の下とかに隠れてる

    3.1階でドンパチやってる奴らに紛れて脱出の機会をうかがってる

    4.そもそも元からこのビルに出社してない

  • 94◆8kXeI1ONP624/06/09(日) 17:10:19

    最悪だ……


    出社してない理由 dice1d3=3 (3)

    1.普通に休日 2.クリスの裏切り 3.クリスを信用してないから契約締結について偽の日程と場所を教えた

  • 95◆8kXeI1ONP624/06/09(日) 17:11:25

    ダイスが荒ぶってプロット練り直しなので今日の更新は以上です!

  • 96二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 17:13:04

    手強い

  • 97二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 23:11:27

    乙です。相手さんもなかなか勘が良いな……

  • 98二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 07:18:25

    なんて賢い奴なんだ…

  • 99二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 09:15:39

    >>97

    生存戦略 か?

  • 100二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 20:56:27

    保守

  • 101先生24/06/10(月) 21:18:40

    私は頭をフル回転させる。
    この状況で私にできることは何か?
    本当にここのボスはビルに居ないのか?
    もし──もし本当にボスがビルにいないとしたら?
    最悪の想像が頭をよぎる。

    本来の目的は地上げの証拠になりうる書類を奪取する、あるいはここの幹部を捕縛すること。
    しかし、目的の人物がビルにいないとなるとそれは不可能になる。
    そうすれば私たちは「無根拠の陰謀を主張して一般企業を襲撃したテロリスト」、カイザーのボスは「根も葉もない悪事を主張されてオフィスビルを襲撃された可哀想な経営者」となってしまう。
    それは、絶対に避けねばならない。私が関わったことであの子たちが犯罪者になることだけは────。

    それだけならまだしも、もしクリスに伝えられた場所と日程が偽で、すでに秘密裡に契約が成立していたら……?

  • 102先生 ◆8kXeI1ONP624/06/10(月) 21:19:08

    どんどんと悪い想像が膨らむのを、頭を振って追い出す。
    いや、私は「先生」だ。
    この場でできる最善のことだけを、ただするだけ。

    深呼吸をして、皆に指示を出す。

    ”便利屋は一度撤退。ただし、最後にできるだけ場に混乱を引き起こして。残りの捜索組はその混乱に乗じて来た道をもう一度探してみてほしい”

    これが、今の私の最善の策……一か八か、賭けるしかない!

  • 103◆8kXeI1ONP624/06/10(月) 21:19:49

    すみません、考えても打開策が出なかったのでダイス無視します!
    本日の更新は以上です!

  • 104二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 01:18:34

    乙です。ダイス神も無茶振りしすぎる時があるからね。仕方ないね。

  • 105二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 08:21:23

    保守

  • 106二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 15:53:09

    こんなにダイス神に暴走されちゃあね…

  • 107二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 00:19:33

    保守

  • 108二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 08:09:56

  • 109先生 ◆8kXeI1ONP624/06/12(水) 17:03:53

    ……状況はだいぶマズい。
    このまま決め手に欠ける状況が続くと、肝心の相手を取り逃す可能性が高い。
    マヒルが横でおろおろしている。
    今、私が不安そうな様子を見せるわけにはいかない。

    もう一度考え直してみよう。

    アロナに調べてもらった、ビルの間取り図を眺める。
    隠し部屋や秘密の通路が作れそうな空間は見当たらない。
    だが……なんだ、この違和感は?
    この図面、何か引っかかる……

    「先生、遅れてすまねえ!」

    !?

    唐突に声をかけられて振り向くと、マヒルが息を切らせて立っていた。

  • 110先生 ◆8kXeI1ONP624/06/12(水) 17:04:23

    マヒル、クリスと一緒に周辺の人の誘導や偽装工作をしているはずじゃ……?

    「そっちはもう終わった!で、アタシは何したらいい?」

    今はかくかくしかじかで……

    「なるほどなァ……先生、ちょっと図面を見せてもらってもいいか?」

    うん、いいよ。

    マヒルはしばらく難しそうな顔で図面を眺めていたが、唐突に口を開いた。

    「……ここ、2階のこの窓。他が全部嵌め殺しなのに、1つだけ可動する窓の記号で描かれてる」

    マヒルが指さすのは、通りとは逆側の壁にある窓。
    確かに、同じ壁の他の窓とは違う記号だ……

    「ここが開くなら、なんかあったらここを開いて隣のビルの窓もブチ破れば、窓伝いに隣のビル、に……」

    え、それって……

    「悪ィ先生!ちょっと行ってくる!」

    そう叫ぶやいなや、マヒルは今いるビルの屋上から颯爽と飛び降りて──

    無事に着地、カイザービルの横の路地を一目散に駆けていった。

    キヴォトスの子たちは頑丈とはいえ、窓からの急行は何度見ても心臓に悪い……

  • 111陸八魔アル ◆8kXeI1ONP624/06/12(水) 17:12:27

    『”便利屋は一度撤退。ただし、最後にできるだけ場に混乱を引き起こして。残りの捜索組はその混乱に乗じて来た道をもう一度探してみてほしい”』

    混乱する状況で、インカムから聞こえてきたのはそんな指示だった。

    ムツキ、ハルカ!今ある爆薬、全部使って構わないわ!とびっきりの爆発を起こして頂戴!

    「おっけーアルちゃん!」
    「は、はい、アル様……!!」

    ムツキが投げたバッグ。ハルカが投げた爆弾。
    その2つは放物線を描いて飛んでいき……

    ビル1階ロビーの柱2本を見事に爆砕した……

    「社長!マズい!柱が砕けた!多分このビルは保たない!」

    白目を剥きかけた私にカヨコが必死に声をかける。

    「ごめん、アルちゃん!やりすぎちゃった!」
    「あ、ああああアル様!なんてことを……このままビルと共に、し、死んでお詫びを……!?」
    「それどころじゃないから!逃げるよ!」

    なんでいつもこうなるのよーー!!

  • 112◆8kXeI1ONP624/06/12(水) 17:16:37

    本日の更新は以上です!

  • 113◆8kXeI1ONP624/06/12(水) 20:31:14

    >>109

    マヒルじゃなくてハルトだわ

    主人公なのに作者から忘れられてる……

  • 114二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 00:29:57

    保守

  • 115二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 04:28:49


    うーん、安定のアルちゃんwww

  • 116二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 10:14:12

    >>113

    主人公の存在感が薄れるスレが偶にあったりしますからね…

  • 117◆8kXeI1ONP624/06/13(木) 16:26:05

    保守
    今日は更新難しそうです……!

  • 118二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 00:12:29

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 08:47:29

    ゆっくりでも大丈夫ですよ〜

  • 120二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 17:52:21

    ほしゅ

  • 121阿慈谷ヒフミ ◆8kXeI1ONP624/06/14(金) 20:20:25

    ドォォォン。

    「キャッ!?」
    「敵襲か!?」

    下の階から大きな爆発音と、地震のような揺れ。

    『"ヒフミ達、無事!?"』

    こちらヒフミです!ここにいる4人は全員無事です!

    『"良かった!よく聞いて。便利屋の戦闘で柱が崩れた。ビルが崩壊する前に脱出と安全確保を最優先!"』

    わ、分かりました!

    「で、でもどうするのよ!?一階の柱が崩れたんでしょ!?今いる階から飛び降りたら無傷じゃ済まないわよ!?」
    「全員の服を裂いてロープを作れば良いかもしれない。ハナコ、頼めるか?」
    「あら大胆ですね♡でも、そんな長さのロープを作ってる時間はありますかねぇ」

    えっと……せ、先生、どうしましょう!?

  • 122先生 ◆8kXeI1ONP624/06/14(金) 20:22:02

    補習授業部のやり取りを聞きながら考える。

    落ち着け……どうすれば安全に脱出できる……?
    問題はヒフミ達の現在位置と時間の無さ……
    何か、ビルを一時的にでも支えてくれるものがあれば……!
    そのとき、あるアイデアが浮かんだ。……今はこれに賭けるしかない。

    "大人のカードを取り出す。"

    "アロナ、『チケット』を1枚用意して"

    『せ、先生?……!分かりました!大至急用意します!』

    それを聞いてから、私はインカムのスイッチを入れなおして。

    "ヒフミ、窓の外にデコイを展開!他の皆はすぐ移動できるよう準備を!"

    『ええっ??外ですか!?や、やってみます!』

    ありがとう、ヒフミ!

  • 123先生 ◆8kXeI1ONP624/06/14(金) 20:23:03

    『先生!ご用意できました!すぐに使用しますか?』

    ベストなタイミングだよ、アロナ!

    向かいのビルの窓を突き破ってペロロが現れたのを見届けてから、シッテムの箱に現れた『入場しますか?』のポップアップを承認。
    今、この状況なら引き寄せられるはずだ!総力戦ボス「ペロロジラ」を!

  • 124環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/14(金) 20:23:58

    先生がみんなにいくつか指示を出している。
    私に何かできることは……ないよね……今狙撃手がいても役立てそうには……

    って、ええええ!?ヒフミさんのデコイがどんどん巨大化していってる!?
    あれって……ペロロジラ!?
    先生!この状況で敵を増やしてどうするんですか!?

    "敵じゃない。味方にするんだ"

    先生がポケットから何かを取り出して私に握らせた。
    手を開くと、それはクリスさんがくれた例の指輪だった。

    先生、持ってたんですか……?

    "本当は、ただ返し忘れてただけなんだけどね"
    "ハルトなら、ペロロジラを従わせることができるって信じてるよ"

    ……分かりました。やってみます!

    指輪に人差し指を通し、目を瞑る。
    この前のときみたいに、集中して、人形を操るみたいに……

  • 125阿慈谷ヒフミ ◆8kXeI1ONP624/06/14(金) 20:24:57

    継続的に続いていたビルの揺れが、不意に収まる。

    『"みんな、聞こえる!?"』

    先生!揺れが止まりました!

    『"今、ヒフミが使ったペロロのデコイをもとにペロロジラを呼び出した!ハルトが「指輪」を使ってこのビルを支えるようにしてくれている!"』
    『"でも、それも保って3分ほど。皆のうちにビルからの退避と民間人の避難誘導をお願い!"』

    な、なんだか分からないですが、とりあえず了解です!
    逃げましょう、みんな!

  • 126◆8kXeI1ONP624/06/14(金) 20:25:27

    本日の更新は以上です!

  • 127二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 08:18:01

    保守

  • 128二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 12:58:47

    乙です。
    ペロロジラ(味方)とかヒフミが大喜びしそう

  • 129富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/06/15(土) 16:34:55

    走る。一心不乱に走る。
    ビルが倒壊するとかペロロジラとかなんか言ってるのが聞こえるけど、今アタシが気にかけてる余裕は無ェ。
    もしかしたらカイザー幹部がしれっと隣のビルから逃げてるかもしれないから。
    走って路地を抜け、襲撃したビルと反対側の通りに出る。
    ……ビジネス街だからサラリーマンが多い。でも、予めクリスに顔写真を貰ってあるから、顔は分かる。
    襲撃をかけてからまだそこまで時間は経ってない。きっと近くにいるはず……!

  • 130富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/06/15(土) 16:35:25

    くそっ……見当たらねえ……!
    ハルトはこういうの得意そうだが、今は無理だし……

    そう思ったとき、人影が路地に駆け込むのが視界の端に見えた。
    アタシは直感的にそれがカイザー幹部だと思い、その人影を追いかけた。

    待ちやがれ……!

    路地を抜けてもう一度、カイザーのビルがある通りまで出た。
    倒壊寸前のビルを巨大なペロロが支えているという奇妙な光景に、周囲には野次馬で人だかりができていた。

    この中から探すのか……!?
    今はちょうど逃げようとしてる奴らと写真を撮って騒ぐ奴らが入り混じり、辺りは混沌としている。

    先生!今ボスの顔写真を送る!ハルトの役目が終わったらコイツを探すように言ってくれ!

    そうインカムに叫び、スマホからヤツの顔写真を先生に送信。
    人混みをかき分けながら、アタシはカイザーの奴を探し続けた。

  • 131富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/06/15(土) 16:36:03

    後ろで、一際大きな叫び声が上がった。

    「ペロロジラが消えた!」「倒れるぞ!」「おい退けよ!」「脚踏まれた!」「押すんじゃねえ!」「うわっ、スリだ!」「手榴弾持ってたら危ねえだろ!」

    ビルの時間切れか……!

    場は一層混乱を極め、パニック状態に陥っていた。
    降り注ぐ瓦礫。逃げ惑う人々。あちこちで上がる爆煙。
    これじゃ闇雲に探すのは不可能だ!
    ここまで追い詰めてヤツを逃がすしかねえのかよ……!!

    『マヒルちゃん!右向いて!!』

    ハルトからの通信。
    咄嗟に右を向くと、2メートルほど離れたところで、誰かがぶっ倒れるのが見えた。

    「えっ何!?」「狙撃!?」「一体なんなんだよ!」

    周囲の人間が次々と転んだり、別の方向に逃げていく。
    人の波は余計に複雑になったが、それでも必死にかき分けてソイツのところまで近づく。

    それは、今回のターゲットである、カイザーの幹部だった。

    『久しぶりに命中した〜!マヒルちゃん、今のうちに身柄を確保して!』

    アシストありがとな、ハルト!
    この機を逃すバカはいねぇよ!

  • 132富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/06/15(土) 16:36:33

    さらに距離を詰めて、倒れているヤツに銃を向けようとしたその時。
    急に起き上がったソイツはアタシのガトリングの銃身を掴み、強く引っ張った。
    バランスを崩したアタシは倒れ込む形になり……

    「シャーレの先生、聞こえるか!?アンタの大事な生徒を無事に返して欲しければ、この件から手を引いてもらおうか!」

    羽交い締めにされて銃を突きつけられてしまった。

    「こちらは既に土地の譲渡契約を締結済みだ!正当な書類だってあるんだぜ?これは学園間の自治権に則ったもので、シャーレが口出しすると越権行為になる!」

    アタシの耳元、インカム越しにがなり立てる。

    先生!ハルト!補習授業部!アタシは良いからコイツを!

  • 133富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/06/15(土) 16:37:43

    「できねえよなぁ?大事な生徒を守るのが先生の仕事だもんなぁ?」

    コイツ、思ったより力が強い……!
    荒事は苦手だったとはいえ、それなりに場数を踏んできたアタシでも振りほどけない。

    先生がいるビルの方に向かって、煽るように茶封筒をヒラヒラさせる。

    『こちら陸八魔!まだ人混みに押されててそちらまで行けそうにないわ!』
    『こちらコハル!遠くて狙えない上に手榴弾を使ったら他の人を巻き込んでしまうから無理!』

    助けが来るのはかなり難しそうだ。

    さらに悪いことに、ビルの方から人混みに混じって向かってくるPMCのオートマタもチラホラ見え始めた。
    コイツ……援軍を呼んだな……!?

    そして、最後にハルトからの通信。その内容を聞いて、私はガックリと頭を落とす。

    「ハッハッハ!そちらはキミを見捨てたようだねぇ!どうだ?絶望して頭を項垂れる気分は!」

    カイザー幹部は勝利を確信して高らかに笑った。

  • 134富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/06/15(土) 16:38:27

    ──風が吹いた。

    「ぐわっ!?」

    悲鳴をあげて仰け反るカイザー。その一瞬の隙を突いて渾身の肘を鳩尾に叩き込む。

    体勢を崩したそのタイミングで、アタシはガトリングを握り直して振り向きざまにフルスイング。
    相手の身体は2メートルほど吹っ飛んでいった。

    どーよ!ハルト直伝の近接戦闘術!

    「ぐぅ……!……な、何っ!?封筒がない!?」

    封筒ならさっきでっけえトリが奪ってったぜ?
    美味そうなモンにでも見えたんじゃねえか?

    ──本当は、ハルトが操って「奪わせた」んだけどな!
    さっき入った通信はそれを伝えるためだった。大きな猛禽類が封筒を掻っ攫うから、できるだけ頭を下げてくれ、って内容だ!

    『トリじゃないです!アレはアビドスオオワシって言って、アビドス周辺の砂漠地帯にしか生息してないとっても珍しい鳥なんですけど最近トリニティ自治区内で見かけることが何度かあって……』

    デケェ鳥でいいだろ。デケェんだから。

    『ちょっと、マヒルちゃん!』

    ハルトの声が何か言ってるけど今は無視。
    さて、コイツにはどう始末をつけてやろうか……?

  • 135◆8kXeI1ONP624/06/15(土) 16:38:44

    本日の更新は以上です!

  • 136二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 23:16:53

    乙です。
    ここにきて前スレ1のアビドスオオワシが回収されるとは…!この海のリハクの眼をもってしても(略)

  • 137二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 09:50:02

    保守

  • 138環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 16:51:44

    ちょうどマヒルちゃんがカイザー幹部をぶっ飛ばしたタイミングで、サイレンを鳴らしながら何台もの大型車両が走ってきた。

    「ヴァルキューレだ!全員そこを動くな!」
    「救護騎士団です!怪我人はどこでしょうか!?」
    「正義実現委員会です。直ちに行動に移ります!」

    ヴァルキューレとトリニティの治安維持部隊が到着したのだ。
    私と先生も急いでビルを降りて現地に向かった。

  • 139環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 16:52:11

    「くっ……おお、ヴァルキューレの助けが!お、おい!あの不良に突然殴り飛ばされたんだ!暴行事件だよ!は、早く現行犯で逮捕してくれ!」

    地に伏したカイザー幹部はみっともなくヴァルキューレに縋り付く。
    その手に、ガチャリと手錠がかけられた。

    「……は?」
    「そうですね……現行犯とは言えませんが、トリニティの一部分派との癒着、贈賄、条約に指定された土地の内密な取引……などの犯人としてなら、逮捕して差し上げましょうか」

    クリスちゃん!来てたんだね!

    「富竜クリス……!き、貴様……!!裏切り者がッ……!」
    「あ、クリス先輩、お疲れ様です!容疑者を逮捕しました!」
    「うんうん、ありがとね。……いや、裏切りって……そもそも、後ろ暗い企業の社長にヴァルキューレ所属の生徒が近寄ってくる時点でおかしいと思うべきじゃないですか?」

    呆れたような顔をして見つめるクリスちゃん。
    当のカイザー幹部さんは心の底から悔しそうな歯ぎしりをした。

    「クリス、お前もこの賄賂には関わっているだろう!つまりお前のキャリアも道連れだ!残念だったな!」

    ……最後の負け惜しみを打ち砕くように、クリスちゃんは告げた。

    「それが何か?私はもう卒業する身ですからね。高校生活が楽しめたので後悔はないんですよ」

    心の底から悔いはないことがわかる、さっぱりとした声だった。

  • 140環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 16:52:54

    呆然とするカイザー幹部はそのままヴァルキューレの生徒に連行されていった。

    「ああ、ハルトさん!ここに居たのですね。探しましたよ」

    ミ、ミネ団長!?
    なんだか久しぶりですね!?

    「はい、お久しぶりです。最後にお会いしてから体調にお変わりはないでしょうか。今回の件で怪我などはありませんか?もしありましたら直ちに救護を……!」

    あ、いえ、大丈夫です!
    お気遣いありがとうございます。
    私は前線に立つ役割ではないですし、それよりも便利屋さんとかの方を……

    「そうですか、それは何よりです。他の皆様は既に応急処置をしてありますからご安心ください……失礼、本題に入りますね。実は、ナギサ様の代理人から言伝を預かっております」

    げ。何だろう、いつの間にかテストサボってたとか!?あるいは赤点取ったとか!?

    「具体的な話題は聞いていないのですが、次の月曜日の放課後に、ティーパーティ事務室までお越しください、とのことです」

    うわ……絶対叱られる奴じゃん……

    「……不安に思う気持ちは分かります。しかし、ハルトさんは今まで常に自分にできる最善を尽くしていたと先生から聞いております……ですので、あまり考えすぎず、今は十分な休息を取ることをオススメします」

    先生が……?
    ……そっか、補習のときも見ててくれてたもんね。
    ありがとうございます、ミネ団長。

    「ええ、こちらこそ。我々救護騎士団は常に、救護が必要な人の味方ですから」

    ミネ団長の蒼い翼がいつもより輝いて見えた。

  • 141富竜マヒル ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 16:53:24

    「……やっほ、お姉ちゃん」

    ……クリス。
    今回はお疲れ。
    ……自首、するんだっけ。

    「うん、そう。そのつもり」

    ……そっか。

    「ホントはね、お姉ちゃんに謝らないといけないことがあるの……粗悪品のアングリーアデリーのぬいぐるみ、私が仕組んだの。ああすればお姉ちゃんは報復とか、何か動き出してくれそうだなって」

    すげえ、よくアタシの動きが分かったな。

    「うん、これでもヴァルキューレで結構良い地位にいるんだよ?心理学だって勉強したし、これくらいは予想できるよ」

    ハハ、クリスには敵わねえな。

    「えへへ……うん、それじゃあまたね。気が向いたら面会に来てよ。いつになるか分かんないけどさ、罪を償ったらまた一緒に遊ぼうね、昔みたいに」

    涙が出そうになるのを必死に堪える。
    数年ぶりの妹との再会がこんな形で終わっちまう。
    でも、これは妹にとって必要な別れだ。
    震える声を抑え、言葉を振り絞る。

    おう、元気でな。

    クリスは、頷くだけで何も言わずに踵を返して去っていった。

  • 142◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 16:55:26

    本日の更新は以上です!
    もうすぐ完結予定……!

  • 143環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 23:53:50

    月曜日。
    私は数週間前と同じようにティーパーティ事務所にいた。

    うう……緊張する……絶対叱られるやつじゃん……
    せめて退学とかになりませんように……

    「お待たせ致しました、ハルト様」

    この前とは違う人だ。
    翼から微かにベビーパウダーみたいなフワッと甘い香りがする。お手入れに気を遣っていらっしゃるのだろうか。

    「まあ、そう緊張なさらず、是非くつろいでください。これは飽くまでもお茶会ですので。砂糖やミルクはご入用ですか?」

    あ、いえ……お気遣いありがとうございます。

    ふぅ……はぁ……
    深呼吸をして、リラックスを試みる。
    憂鬱だけど、少しマシになったかも。

    「ハルト様の先日のご活躍はこちらの方でも噂になっております。なんでも生態系として貴重な湿地の不法な取引を阻止したと……」

    うぅ……すみませんっ……!

    「いえいえ、ご安心ください。自然はどこの学園においても大きな宝です。私たちはその事を咎めることは一切いたしません。むしろ、ミレニアムからの転校生という立場にありながら、自主的に我が校の宝を守っていただいたことに感謝するのが道理です」

    は、はい……恐縮です……?

  • 144環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 23:54:14

    「聞くところによれば、その一件では補習授業部の皆様や素行不良の生徒さんと協力されたとか。……今回の本題は、他でもなく補習授業部で行った3回の特別追試の結果でございます」

    嫌な予感にゴクリと唾を飲み込む。

    「最初の2回は87点と91点……どちらも規定のボーダーの85点をクリアしています。ですが……先週火曜日の3回目の結果は72点。ボーダーラインを下回っています」

    うぅ……その時期は襲撃計画の準備で忙しくて……!

    「はい。そのことについてなのですが」

    ティーパーティの人は一度息を整えてから私に聞いた。

    「先週準備していたものは『襲撃』でしたか?それとも連邦捜査部シャーレの先生の指揮下での『違法な土地取引の捜査』の一環でしょうか?」

  • 145環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 23:54:37

    ……はい?

    「もし、それが会社の『襲撃』というのであれば、それは見過ごすことのできないテロリズムです。しかし、トリニティと協力関係にあるシャーレの『捜査』の一環であれば、先生に協力した功労者として、こちらの方で補習授業の結果などに特別な措置を行うことも吝かではありません」

    え、それってもしかして……

    「ハルト様、もう一度お聞きします。あの一件は『捜査』でしたか?」

    ティーパーティの人は笑顔でもう一度尋ねてきた。ちょっと貼り付けたような笑顔だったけど、不思議と威圧感はあまり感じられなかった。

    ……はい!あれは「捜査」の一環です!

    「……ええ、ハルト様がそういうのであれば、きっとそうなのでしょう。まさか、粗悪なキャラクターグッズの報復、などという理由ではありませんでしょうしね。それでは、先生と功績に免じた措置をこちらで講じておきます。本日はご足労頂きありがとうございました」

    バレてるじゃーーーーん!!!!!!!!!!
    トリニティの社交界……恐ろしい場所だ……

  • 146環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 23:55:53

    何はともあれ、私は補習授業部の活動からは解放された。
    でも、この短くて長い1ヶ月の間で繋がった皆との絆はきっとこれからも続くはず!

    「あ、ハルトちゃん!」
    「よっ!お茶会は終わったのか?」

    あ、ヒフミちゃんとマヒルちゃん!
    特別追試は合格だって!

    「わぁ、おめでとうございます!」
    「じゃあさ、先生とか、他のメンツも誘ってメシ行かね?先生に奢ってもらおうぜ!」

    いいね、それ!
    じゃあ今からシャーレ行こう!

  • 147環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 23:57:25

    眩しすぎるくらい晴れた空の下、みんなでおしゃべりしながら歩く。
    辺りには鳥の囀りが響き、青空を背景に鳥たちが飛び交う。

    ねえ、見てマヒルちゃん!あそこにカワラバトがいるよ!

    「どこだよ……?」

    あの枝が重なった奥!灰色で大きめの鳥!

    「あっ、アレか!……食ったら美味いのかな」

    えっ!?いや、カワラバトは狩猟対象外だし、ガトリングなんて撃ったら跡形も無くなるよ!?

    「へっ、冗談だよ……てか、食うこと自体は、止めねえんだなお前……」

    え?だって美味しいじゃん、鳩肉。

    「お前、普段あんだけ鳥好きって言っておいてマジかよ……」
    「あはは……まあ、感性はそれぞれですよね……」

    えーっ!?鳩肉に限らず手羽先とか美味しいじゃん!ねえ、コハルちゃん!

    「なっ、なんで私に振るのよ!!私が翼持ちだから!?セ、セクハラよ!?」
    「ハルト……私やコハルをそういう目で見ていたのか……」

    「うふふ、賑やかですねぇ♡」
    "それがみんならしい、良いところだよ"

    ご、誤解だっ!先生も誤解を解くの手伝ってくださいよー!

  • 148環ハルト ◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 23:58:00

    と、そんなこんなでカイザーの陰謀を巡る事件は幕を下ろしたのでした。

    あー、ここのところ、鳥を観に行く時間が無かったから、こうして双眼鏡を覗くのは久々だなぁ!

    ん?あれは……緑の体に白い頭……まさか、山海経と百鬼夜行一帯に棲むシロガシラアオバト!?

    あ、それじゃあ私はもっと近くであの子を見てくるから、またね!
    音を立てないように……抜き足……さし足……っと……。

  • 149◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 23:58:22

    本作はこれにて完結です!
    今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

  • 150◆8kXeI1ONP624/06/16(日) 23:58:59

    筆が乗りに乗って「更新は以上です!」したのに完結まで書いちゃった

  • 151二次元好きの匿名さん24/06/17(月) 00:55:52

    乙でしたー!

  • 152二次元好きの匿名さん24/06/17(月) 01:28:49

    乙です。
    妹ちゃん……今からでもおとり捜査だったということにして円満に処理できんかとは思うけど、できんのだろうなあ。悲しい。

  • 153二次元好きの匿名さん24/06/17(月) 13:04:33


    妹ちゃん…

  • 154◆8kXeI1ONP624/06/17(月) 14:40:48

    妹ちゃんこと富竜クリスは確かにもう少し救いをあげても良いかも……って今考えてます
    本編のヴァルキューレの様子を読み返さないとなぁ……

  • 155二次元好きの匿名さん24/06/17(月) 20:19:41

    じゃあもうちょっとだけ続くのですね…!

  • 156二次元好きの匿名さん24/06/18(火) 05:32:08

    いちおう保守

  • 157二次元好きの匿名さん24/06/18(火) 16:10:09

  • 158富竜クリス ◆8kXeI1ONP624/06/18(火) 17:29:37

    カイザーの違法土地取引事件が幕を下ろしてから数日。
    自首をするための準備として、私はこれまでのレポートや後輩への引き継ぎ資料を整理していた。

    不意に、自室のドアがノックされた。

    ああ、自首するまでもなく、あのカイザー幹部の証言から足がついた感じかな。

    そう思いながら、ドアを開ける。
    そこにはヴァルキューレ公安局局長──カンナさんが立っていた。

    「失礼……邪魔するぞ」

    あれ……部下の人とかは連れてないんですか?

    「ああ。今回はお前の確保が目的ではないんでね」

    カンナさんは私の方に向き直り、言った。

    「単刀直入に言おう。クリス、ヴァルキューレに戻る気はないか?」

  • 159富竜クリス ◆8kXeI1ONP624/06/18(火) 17:30:36

    ……!

    「……戻るも何も、まだ籍はうちにあるから、この聞き方は変かもしれない。だが、これから自首をするというなら、一度考えてみてほしい」

    それ、は……できません。
    私は……警官として守るべき最後の矜持を……清廉潔白であるべきこの身すら守れませんでした。
    なのに今更……

    「その気持ちは私にも分かる……ヴァルキューレ上層部に蔓延る汚職、癒着、嘘の吐き合い……そんなものに嫌気が差していたのはクリスも同じだろう?」

    カンナさんは大きく溜息をついた。

    「お前はカイザーとの癒着を悔い、恥じているのかもしれない。しかし、自身やヴァルキューレの利益のために手を汚した奴らとクリスとでは、決定的に違うところがあることに気づいているか?」

    「クリス、経緯はどうあれ、お前はカイザーの違法取引を阻止し、トリニティや他の地域を守ったんだ」

    そんなこと……ないです……

    「……これは独り言だが。今、SRTの1年生が公園を占拠して先生と行動していたり、カヤ室長が怪しげな動きを見せている。この状況で少しでもこちらの優秀な人員を減らしたくはないんだ。……牢の中で過ごすのも反省としては悪くないだろう。だが私は、ヴァルキューレに残ってキヴォトスの治安のために働くのも償いとしては有意義なものだと思うのだがな」

    カンナさん……そんなこと言われたら、私……!

    カンナさんは鋭く尖った歯を見せて少し笑った。

    「高校を卒業したあとも人生は続くんだ。今できる最善を尽くしてからでも、償いには遅くないだろう?」

  • 160富竜クリス ◆8kXeI1ONP624/06/18(火) 17:31:11

    ……はい!改めて宜しくお願いします!尾刃カンナ公安局局長!

    「いい返事だ。司法機関と上層部には『極秘の潜入捜査として必要な行動だった』と報告しておく。……これからも、信頼しているよ、富竜クリス」

  • 161富竜クリス ◆8kXeI1ONP624/06/18(火) 17:31:52

    「……で、結局何事もなく復帰できたってか」

    うん……私の行動に巻き込んじゃった子も何人かいたんだけど、私含めてしばらく謹慎で済んだの。
    カンナさんの根回しが効いてくれたみたい。
    あ〜〜、久しぶりにお出かけすると気分がいいね!

    「……アタシは警察組織には詳しくねえんだけど、そんなもんなのか?」

    まあ、そのへんは機密というか?ボカさないといけない話だし、いいじゃん!
    ねえお姉ちゃん、今日はどこいく?
    最近トリニティに帰ってなかったから、久しぶりに様子見たいんだけど、オススメのスポットとかある?

    「お、あるある!案内してやるから着いてきな!」

  • 162富竜クリス ◆8kXeI1ONP624/06/18(火) 17:32:44

    電車でどこに行くかと思ってたけど、これって……

    「おう、トリニティ自治区ヒュグノト派管轄区域、オーイェン・ラムスガット湿原!……つまり、アタシたちが守った土地だよ」

    目の前には広い湿原が広がっていた。
    うっすらと霧がかかり、ひんやりした温度が心を落ち着かせてくれる。

    すぅ……はぁ……
    深呼吸。湿った空気が肺に心地良い。

    私たちは、この土地を守ったんだね。

    「あれ、マヒルちゃん!クリスちゃんも!お二人も鳥見ですか?」
    「やっぱり来てたな、ハルト!そうだ、クリスに鳥見の良さを教えてやってくれよ!」
    「! わかりました!全力で布教します!」

    お、お手柔らかにお願いします……!

    「まずですね、鳥っていうのはですね……」
    「そっからかよ!?流石に鳥くらいわかるよ!」


    そんなこんなで、私たち姉妹とハルトさんを交えたお出かけは、平穏にかつ賑やかに過ぎていったのでした。

  • 163◆8kXeI1ONP624/06/18(火) 17:34:23

    おまけのエピローグ 富竜クリス編 でした!

    お楽しみいただけたら幸いです!

  • 164二次元好きの匿名さん24/06/18(火) 23:33:41

    乙です!
    妹ちゃんも戻ってきてハッピーエンドですね!

  • 165二次元好きの匿名さん24/06/19(水) 03:16:40

    乙です。
    カンナ局長、粋な計らいだ……。

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