- 1二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:34:38
※モブ&SS注意
「お待たせしました」
低い、けれどよく通る声と共に商品が手渡される。袋の中には旬の魚と、小さな袋が入っていた。買った覚えの無いものに首を傾げると、阿形さんが話し始めた。
「あぁ、取引先から貰った新商品のサンプルです。ふりかけですけど、卵焼きとかに入れても美味いかもしれません」
「良いんですか?」
「お客さん、ウチの店をご贔屓にしてくれてるので。特別です」
特別、という言葉に心が跳ねる。贔屓にしているのはここのお魚が美味しいから、という理由もあるけれど一番は──
ちら、と視線を上げると穏やかな茶色と目が合う。急に黙った私に軽く首を傾げている。
「どうかしました?」
「あ、いえ何でもないです!」
見つめすぎてしまった。変に思われていないだろうか。頬にじわりと熱が上るのを自覚しながら、出口へ足を向ける。
「またのご来店、お待ちしてます!」
背中から聞こえた元気な声に、会釈だけ返す。振り返ることはできなかった。あくまで店員として親切にしてくれている貴方に、こんな下心を知られたくはないから。 - 2二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:35:06
最寄り駅の改札から出て、アスファルトを見つめる。少し優しい言葉をかけられたぐらいで動揺する自分の頭が恨めしい。浮かれすぎだ。手に持っている袋の虹顔市場のロゴさえもこちらを攻めているような気がして、ため息をつく。
「しばらく行かないほうがいいかなぁ……」
既に日は落ちて、辺りは暗い。ぼうっと歩いていた私は、裏路地に入り込んでしまった。面倒な、早く帰りたいのに。少し苛立ちながら踵を返すと、ソレは音も無く私の背後に立っていた。 - 3二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:36:12
「よう、お嬢ちゃん」
「……!?」
2mはあろうかという体躯、目深に被ったフード。口元だけがゆるく弧を描いているのが不気味だった。明らかに異質な存在に肌が粟立つ。
「ど、どちら様、ですか……?」
「そう怖がるな。少し聞きたいことがあってな」
警戒心丸出しの私を前に男は親しげに笑いかけてくる。逃げなければいけないのに、足が動かない。ねばついた涎を無理矢理飲み込んで、次の言葉を待った。
「松之助に懸想しているのか?」
「……は?」
マツノスケ、は確か阿形さんの下の名前だ。マツノスケに、懸想?どうして見知らぬ男に個人的な交流関係を聞かれなきゃいけないのか。私の困惑を他所に、男は続ける。
「やめておけ。アイツはそういう余分を良しとしない男だ」
「それ、は……」
一度だけ、市場の外で阿形さんを見かけたことがある。普段の明るい表情とは正反対で酷く昏い目をしているように見えた。以来、阿形さんに不穏なものを感じてしまっているのは事実だった。そして、ただの常連の1人である私が彼の助けにはなれないということも。黙り込んだ私に男は語りかける。
「そこで良いモノがあるんだが、興味はあるかい?」
懐から何かを取り出した。掌ぐらいの大きさで、宝石のようにカットされている。
「……なんですか、それ」
「カオストーン。万能の力を宿す石だ」
まるで御伽話だ。目の前の不審者とはそぐわない言葉に眉が寄る。もう話を聞かないで走って逃げた方が良いのでは。
「コイツを握って願うだけで全てが手に入る。金も権力も、……意中の男だって、な?」
私が反応する暇もなく、男は手に石を握らせてくる。仮にその話が本当だとして、どうして私なのだろう。素直に疑問を口に出す。 - 4二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:36:36
「どうして、私に?」
「……俺は松之助が心配でな。アイツはあのままじゃ、自分自身さえも焼き尽くして死んじまう」
何を言っているかは詳しくは分からない。でも、あの時の阿形さんを見るに、何か重い事情があるのは確かだ。
「その前に、だ。嬢ちゃんがアイツの特別になってどうにか引き留めるんだ。」
特別。私が阿形さんの特別な存在になれるとしたら。ストーンが放つ輝きから目を離せない。石を握りしめる。これが、あれば。
「どう使うかは嬢ちゃん次第だ」
男はひらりと手を振り、私の肩を叩く。──精々有効活用してくれや。やけにフランクな声だけが鮮明に耳に残った。 - 5二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:37:01
その後のことはほとんど覚えていない。どうやって帰ったのか、気がつけばアパートの自室でへたり込んでいた。手中の硬い感覚が私を現実に引き戻す。
「ある……」
手を開けば、妖しく輝く奇妙な石。カオストーン、とか言ったか。奇妙な邂逅は夢ではなかったらしい。石を掌で転がしながら、考える。願いの叶う石。非現実的だが、御伽話にでも頼らないと、多分。
「……嫌、だな」
あの日の冷たい表情が忘れられない。阿形さんはきっと何か重いバックボーンがある。そして、それをただの常連客なんかには明かしてくれない。他人同然なんだから当然だ。でも、その壁を壊せるような何かがあれば。
すうっと息を吸う。あの男の言ったように、石を固く握りしめる。
「……やってみる、だけ。少しだけ、だから」
──あの人が、私のことを見てくれたら。
そう願ってしまった瞬間、黒い光が私の顔を覆って。そ れ、から - 6二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:37:30
『次のニュースです。XX日、虹顔市内のアパートで爆発音がしたと近隣住民から通報があり──』
『302号室在住の女性と連絡がとれず──』
『警察は事件の可能性があるとして捜査を進めています』
っていうガオナ化エンドの阿形ニキ夢小説が読めると聞いたのですが…… - 7二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:37:56
カオスイズムが心の弱った人を狙うなら人の欲望に付け込むこともあるかなと思って書きました
マイタスてゃも阿形ニキもエアプだしガオナ化もエアプだけどリリース前だから許してクレメンス - 8二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:57:47
マイタスたそに唆されなければこの人は淡い恋心を抱えたままただの常連さんでいられたんですよね
でも日常が踏み躙られるのが性癖なのでガオナになってもらいました - 9二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:58:56
- 10二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 21:59:04
このまま気づいてくれなくても良いし常連さんと気付かずに倒してくれても良い、どっちでも嬉しい
常連さんが来なくなったことと人がガオナ化することが結びついちゃった瞬間の阿形ニキの表情はきっと美しいよね
いやまぁ人とカオストーンの相関関係は明日になるまで分からないけど - 11二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:03:30
1日前だからこそ溜め込んだ劣情を解放したくなって……我慢できなかったんです
- 12二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:09:32
恋した人から憎悪の目を向けられて殺されるのいいよね
- 13二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:10:53
阿形ニキもあにまんフレンズの仲間入りだね!
よ う こ そ - 14二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:12:44
- 15二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:13:14
- 16二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:24:39
人が異形化した時にありがちな生前の行動の反復も良いんですけど、阿形ニキにはそんな暇も与えられず焼き尽くされたいのだとてもわかります
- 17二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:25:25
今までの閲覧注意スレは見てきたけど阿形の兄貴に劣情を抱いているあにまん民がいることは分かっているんだ
怖がらないで劣情を開示してほしい
色んな阿形ニキが見たいだけなんだ - 18二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:56:36
そう言われてもあと24時間以内には『答え』出されるからおいそれと劣情開示できねえよ
単独でカオスイズムアジトの一つや二つ焼き滅ぼして欲しいとは思ってるけど - 19二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 23:00:50
暴走するのとお母さんムーブはほぼ確なので楽しみ😊😊松之助ママスレが立つのもそう遠くないだろう
- 20二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 23:07:29
マイタスたそにボッコボコにされる兄貴は見たいが……
- 21二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 23:10:51
先に投下しないと矛盾が出るかもだからな…
- 22二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 23:45:33