- 1二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 19:00:41
トレセン学園では毎年7月から8月にかけて海辺の合宿所で夏合宿を行っている。大きなレースの少ないこの時期に競走能力を強化する目的で開かれており、多くのウマ娘が毎年参加している名物行事だ。この期間で実力を急速に伸ばした者が秋のGⅠ戦線で活躍したりすることも珍しくない。そんな合宿に私も当然の如く参加していた。
「ダンツ!ペースを維持!」
「はい!」
綺麗な海を遠泳したり、砂浜を走ったり、施設にあるトレーニング機器を使ったり。うだるような夏の暑さの中の運動は中々に過酷で、毎日大量の汗を流しながら己の肉体をいじめ抜いていく。つらい期間だけど、私がさらなる成長をするための必要な痛みだと思って頑張ることができた。無論、ずっとトレーニング漬けな訳でもない。しっかりと学生らしい遊びの時間もある。
「海だ〜〜!」
「冷たいですね」
「タキオン、こっち来いよ!」
「遠慮しておこう」
合宿所近くのビーチには多くのトレセン学園生徒が訪れていた。かくいう私もテンション高めで同期の皆と海で遊んでいる。海水を掛け合ったり、砂のお城を作ったり。この時だけはトレーニングを忘れて年頃らしくはしゃぐことができるのだ。
「トレーナーさんもどうですか!?」
「俺は遠慮しとくよ」
一方で海パン姿のトレーナーさんはパラソルの下に寝転がってくつろいでいた。あまり子供みたいにはしゃぐ元気は無いとは本人の弁だ。私が誘ってもやんわり断られる。というか、今日のトレーナーさんはいつもよりよそよそしい。なんだか目を合わせてくれないというか。何故か考えていると、ある可能性に思い至った。 - 2二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 19:01:30
「トレーナーさん…」
「どうした?」
「あのですね…その…私の水着なんですけど」
目を逸らしたトレーナーさんの視線の方向に移動する。出来るだけ女性的な部分が目に映り込むようにして屈み込む。そして、なけなしの勇気を振り絞って…
「…似合ってます?」
トレーナーさんは一瞬目を見開いた後、数秒の間沈黙した。何を言うべきか迷ったのだろうか。そして、意を決して口を開いた。
「綺麗だよ」
ファッションセンスに対して肯定的な反応を得た。喜ばしいことだ。でもそれ以上に心を占めた感情は安堵だった。
「よかったぁ…」
もし否定的な反応が帰ってきたらどうしよう。トレーナーさんの性格上そんなことは無いとわかっていても。どうしても勇気がいることだった。何故なら私にとって、気になる異性からの肢体に対する論評を重要に感じられたから。いくらか楽になった私はトレーナーさんの眼前で立ちあがり、手のひらを胸の前で祈るように合わせた。
「…嬉しいです」
それは、まだ私にもチャンスがあると確認するかのような。将来の光景に期待する、淡い思いの発露だった。 - 3二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 19:03:57
以上です
- 4二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 19:26:23
いいSSですね。真夏の淡い一場面、大好物です
- 5二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 19:28:19
持ち前の武器はどんどん使って行くといいゾ
- 6二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 20:06:04
- 7二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 21:45:42
ダンツは卑しい?
- 8二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 23:39:01
卑しさはこれから憶えていくんだ
- 9二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 02:49:30
- 10二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 02:58:08
ものすごく苛立つし腰の炎が燃え盛る
- 11二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 06:37:06
- 12二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 10:05:59
とても素晴らしい小説でした…
- 13二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 13:38:06
- 14二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 01:15:42
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