- 1二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 12:24:51
「ヴィクトリアマイル、制したのはヴィルシーナです!」
電光掲示板に確定の文字が明るく点滅し、彼女の勝利をほめたたえる。観客席からもヴィルシーナを祝福する声がたくさん上がっていた。
「おめでとう!」
「G1初勝利おめでとうーー!」
「よかったな!」
「ヴィルシーナ様おめでとうございます!!」
「はあ……はあ、皆さん、ありがとうございます……!」
こらえきれずあふれ出て来るものを流したまま、ヴィルシーナは観客席に向けて何度も深々とお辞儀をして感謝の気持ちを伝えたのだった。
……その様子を指定席から見下ろす2人のウマ娘がいた。
「良かったですね、ヴィルシーナ先輩。ジェンティル先輩はどう思います?」
「……そうね。あんな表情の彼女を見るのは初めてね」 - 2二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 12:31:00
そこにいたのはウオッカとジェンティルドンナ。ウオッカはこのヴィクトリアマイルを歴代最多の7バ身差で勝利したウマ娘でもある。
「これまでずっと苦しそうな表情をしていましたもんね、ヴィルシーナ先輩」
「ええ、そうね。ずっと苦しそうだった」
「良かったじゃないですか? あの晴れやかな表情の方が……ジェンティル先輩好きでしょ?」
「あなたの言う通りよ。それにしてもウオッカさん、私の考えが手に取るようにしてわかるのね」
「そうっすか? まあギム先輩からも似たような事言われた事ありますけど……」
2人はそれからも、勝利の余韻に浸るヴィルシーナをそっと遠くから見守っていた。
その後。ヴィルシーナは悩んでいた。次にどのレースを選択するかを考えていたからである。自分としては宝塚記念でジェンティルドンナに再び挑みたい気持ちはあった。しかしトレーナーとの相談では阪神2200の舞台よりもヴィクトリアマイルと同条件である安田記念……東京1600の方が向いているのでは? という考えが可視化されたからである。 - 3二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 12:36:33
とはいえ、安田記念も生半可なレースではない。ヴィクトリアマイルはあくまでティアラ路線のウマ娘達が集う舞台だったが安田記念ではクラシック路線の経験もあるウマ娘やスピード自慢の猛者達が集う舞台である。しかも今年はロードカナロアというスピード王者も出走を表明しているのだ。
それにヴィクトリアマイルから安田記念は中2週のローテーション。そしてこのローテで2つとも制覇したウマ娘は現状ウオッカだけ。あのトリプルティアラを達成したアパパネでさえも達成できなかったローテである。
(私はどちらを選べば……)
ヴィルシーナは考えた末、ある人物の元に訪れてみる事にした。
「ウオッカさん。話があるの」
「先輩? なんですか?」
「結論から言うわね。私、次のローテで迷ってるの。安田記念に行くか、宝塚記念に行くか」
「……好きな方選べばいいんじゃないですか? それと先輩はジェンティル先輩と戦いたいんでしょ?」
「……」
「1戦くらい違う道を行ってもありなんじゃないですか?」
「ウオッカさん」
「ジェンティル先輩はその程度では怒らないですよ。あのヒトは挑戦する事に対してはそんな事、思ってないと思うんです」 - 4二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 12:41:07
「確かに、そうね……」
ヴィルシーナはつい床の方へと目線を向ける。それをウオッカはターフでの先輩として・先に道を作った女帝として穏やかな目線を向けていた。
「ジェンティル先輩を倒すか、俺に並びたいかは挑戦しないと始まらないですよ?」
「……そうね。そうだわ。教えてくれてありがとう」
「いえいえ。アドバイスできなかったかもっすけど。頑張ってください。応援してます!」
「ふふっありがとう」
ウオッカの元から去り、廊下を歩いて自身の教室へと戻るヴィルシーナ。そこへ多目的教室へと移動中だったジェンティルドンナが声をかけた。
「私に挑む道も、ウオッカさんに挑む道も並大抵の事ではありませんわよ。覚悟はよろしくて?」
「ええ、もう決めました。勿論いつかあなたには勝ってみせます」
「ふふっ。良い心がけだわ」
ヴィルシーナはあえて、安田記念への挑戦を決めたのである。そこからはまた険しい道のりにはなるだろう。しかし彼女は折れないくじけない。貴婦人や女帝と同じように女王として挑戦するのみだ。 - 5二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 12:41:21
以上、ここまでとなります
- 6二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 12:43:17
おつ