- 1君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 14:57:43
- 2君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 15:00:18
※現在、テレグラフが貼り付け不能になっているようなので、テレグラフが再び貼り付けられるようになるまでキンペイバイの詳しい設定は前スレのテレグラフにてご確認ください
- 3君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 15:11:58
あらすじ
夏合宿
疲労困憊につきアキュートとアルダンにマッサージをしてもらった結果、尻尾の根本を握られ如何わしい声が出てミギミミ達のウマソウルを刺激してしまった - 4君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 15:25:59
次の日の朝…
1.マッサージのおかげもあり体調は絶好調
2.何故か部屋の距離感が近くなった気がする
3.昨日の件でモジモジしている
dice1d3=3 (3)
- 5君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 16:00:00
「あ、あの昨日はその……ごめんなさい」
部屋のメンバーで朝食をとっている際中、キンペイバイが恥ずかしそうにモジモジしながら消えいりそうな声でしきりに頭を下げている。
全員が一瞬何のことかと顔を見合わせたが、次の瞬間には「マッサージ」の事だと理解した。
「気にしなくて大丈夫だよ。誰にだって弱点や弱いところはあるものさ」
「そうそう、私もお腹のとこをくすぐられると弱くて…」
真っ先にフォローしたのはフジキセキ。流石は栗東寮の寮長というところだろうか。それに続くようにユキノビジンもフォローに入るのだが、果たして自分の弱点を開示する事はフォローになるのだろうか。
「結構海老反りしてたし柔らかそうだよね体。怪我とかあまりした事ないんじゃない?」
「えっと…たしか転んで擦りむいたくらいしか」
話題が明後日の方向に吹っ飛びそうなシービーの謎のフォロー?もありつつモジモジもなくなっていた。 - 6君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 17:05:51
そしてまた地獄の砂浜50往復が始まる。最初こそ気合いで走っていたキンペイバイであったが、本格化に入りかけているウマ娘の適応性と向上した身体能力のおかげでタイムも疲労度も改善されていき、初日に昼前から走り始めて昼過ぎに終わっていたのが次の日にはお昼頃に、その次の日にはお昼ご飯に間に合うようになり、走り方のロスが少なくなって体力も長続きするようになり、1回ごとの往復に割く意識の割合も増えていった。
こうなった理由の一つとして夏場の海という練習環境によるものがある。砂浜はターフやダートに比べて圧が逃げやすく踏み込もうとすればするほど体力を奪われ速度も減速してしまい、結果的に距離も伸びなくなる。さらには夏場のカンカン照りで砂が熱せられたことで足裏から熱が非常に伝わりやすい状態になっている。こうした自然的要因の掛け合わせにより、逃げる圧・熱い砂浜に対応するようにピッチが高速になっていったのである。
足が沈む前にもう片方の足で踏み込み、また沈みそうになったら片方の足で…と高速で足を動かして水上を走るバジリスクが如く砂浜に適応したキンペイバイは以前よりも段違いなピッチを手に入れたのだった。 - 7二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 17:10:33
保守
いつも長文ありがとな
キンペイバイちゃんの供給がここしかないのは世界のバグだと思う - 8君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 17:12:20
- 9君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 17:54:50
そうしてトレーニングについていけるようになってくると自然と時間も経つもので、今日は待ちに待ったOFFの日である。
部屋単位での団体行動が主な夏合宿期間中では遊ぶ時もほとんどはその部屋のメンバーでとなり、街に出るときには部屋のリーダーに許可を貰わなければならない。キンペイバイの部屋は当然のようにフジキセキがリーダーを務めており、好きに行動していいよとお達しがあったが結局全員で海で遊ぶ事になった。
「夏合宿1回目のお休みはやっぱりこうなるんだよね」
何度も合宿に参加しているフジキセキは手慣れた様子でビーチパラソルを組み立てマットを敷いて休憩場所を拵えている。オフの日ということもありいつものスク水ではなく、黒のビキニを身につけている。
周りで準備運動をしているウマ娘達も同様でみな思い思いのものを持参していた。
「皆さーん!お待たせしましたー!」
入水前の準備運動としては定番のラジオ体操が2番に入りかけていた頃、準備に手間取っていたキンペイバイが手を振りながらようやくやってきた。
なれるちゃんの水着
1.胸元でリボン結びしてあるタイプの可愛らしい水着(ビキニ)
2.パレオタイプ
3.ハイネックビキニ
4.バンドゥビキニ
5.オフショルダー
6.ホルターネック
dice1d6=2 (2)
- 10二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 17:59:58
このレスは削除されています
- 11君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 18:01:24
- 12二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 19:20:38
- 13君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 19:28:06
- 14君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 20:11:26
キンペイバイの格好はオフショルダーのトップスに下にはパレオを巻いたもので、泳ぐことよりもビーチで楽しむことに主眼を置いた構成になっている。
パレオである程度隠されている尻はマシだが、オフショルダーのトップスは彼女の豊満な膨らみと組み合わさると凶悪の一言に尽き、走るたびにバルンッバルンッと揺れる様はまさしく圧巻である。
「わぁ!ペイバイちゃんの水着すっごく綺麗!」
「えへへ、ありがとうマヤノちゃん。マヤノちゃんの水着もとっても可愛いよ」
マヤノの水着はオレンジを基調とした彼女らしいチューブトップである。どちらもおおよそ14歳が着るような水着とは言い切れないがここには一般の人間はやってこないのが幸いであろうか。
「それパレオですよね?とっても綺麗…!」
目をキラキラさせて反応したのはユキノビジン。シティーガールに憧れる彼女は後輩の身につけるパレオがとても気になるらしく、どこで買ったの、どうやって付けてるのとキンペイバイに質問攻めをしていた。 - 15君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 20:36:14
「まぁ随分ハイカラなおべべだねぇ。んーっと、どれがぱれおなのかねぇ」
ひょこっと顔を出したワンダーアキュートは無地のワンピースタイプのシンプルなもので、彼女の整ったボディラインの美しさを引き立てていた。
「はい!パレオはこの腰に巻いているやつなんですけど、これにもいろんな巻き方だったりスタイルがあって…あ!そもそもパレオって言うのはタヒチって島の民族衣装で現地の言葉で巻き付けるスカートを意味するパレウから来てて!!」
待ってましたと言わんばかりに矢継ぎ早に言葉を放つキンペイバイ。ワンダーアキュートは豆鉄砲を喰らったような顔をしてキンペイバイの言葉をあまり理解していないようであった。
「こらこら、アキュートが困っているからそれまでにしてあげて」
「あっ……すみません、私つい……」
そんなアキュートを見かねたフジキセキによってキンペイバイのマシンガントークは終わった。どうやら自分の好きな分野となると口が止まらなくなるタイプのようだ。 - 16君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 21:42:24
海での遊び方と一口でいってもその種類は多種多様であり、海に入らず砂浜でお城を作ってみたり、ビーチバレーに勤しんだり、スイカを割ったり、海の上ではヨットやサーフィン、サップなんかもいいだろう。勿論、海に潜るのも一つの楽しみであるし、単純に海水を掛け合うのもそれはそれで楽しいものだ。
さて、キンペイバイはというと……
1.ビーチバレー
2.水掛け合戦
3.砂のお城作り
dice1d3=2 (2)
- 17君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 22:33:03
「そーれ!」
「きゃ〜!」
水掛けというのは何とも原始的な遊びであるが、何故か心揺さぶられるものがあり、人間はちょうどいい水場があるとそれをせずにはいられなくなる。
これは太古の時代における獲物を追い込むときの狩猟本能が目覚めているからという学説もあるようだが、本能的に高揚感を感じているのは間違いない。
しかし、このような可愛らしいお遊びであっても余りあるパワーを持ったウマ娘達が行うと、ボタンの掛け違い一つで大変なことが起こるものであり……
「いっくよー!それー!あっ…」
一歩間違えると掬い上げる水の量とその速度は凄まじいものとなり、まるで大波の如く水の壁となって飛んでいく。その破壊力たるや凄まじいもので、手元が狂ったマヤノの掬い上げた水は水壁となって目の前のキンペイバイに押し寄せ、彼女を吹っ飛ばすに至る。 - 18君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/01(土) 22:55:37
慌てて駆け寄るがキンペイバイは「大丈夫」と返すばかりで、あまり気にしていない様子であった。むしろ乾き始めた水着がペタペタと皮膚に張り付いたのがむず痒いらしく、ボディラインがくっきり出てしまっているのにも気づいていない様子である。
「ふふっふー!じゃぁ、次はこっちの番だよ!」
そう言うとどこからともなくバズーカ型水鉄砲を取り出すキンペイバイ。
「えぇー!なにソレ!?ならマヤも!」
マヤノもどこからともなくマシンガン型の水鉄砲を取り出すと両者互いに見つめ合い、足に波がかかるのと同時に走りだす。クロスレンジの戦いは熾烈を極め、ヒシアケボノがお昼ご飯の支度が出来たと呼びに来るまで続いたらしい。 - 19二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 01:54:09
なんだろう、マヤノが遊んでると某キャラソンが脳内再生されるんだけど。
ゴルシ「マヤノォォォォォォォォ!!!」 - 20二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 08:27:49
水着爆乳ロリはいいぞおじさん「水着爆乳ロリはいいぞ」
- 21君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/02(日) 17:21:21
お昼はヒシアケボノとヒシアマゾン、それと当番で無理やり連れてこられたヒシミラクルのヒシ3人によるカレー風味シーフードお好み焼きが振舞われた。
生地にカレー粉を加え、具材はイカやオオアサリとシンプルなシーフードお好み焼きであるが、ソースではなくキーマカレーがかけられているのが特徴であった。
おかわりが次々に焼かれているので、食べ盛りのウマ娘達がゾクゾクと列をなしていた。
もっとも、こなれた様子で捌き続けるヒシアマゾンやヒシアケボノとは違い、今日は一日中怠惰を極めようと思っていたヒシミラクルは降って湧いた(正確には忘れていた)仕事のあまりの量の多さに目を合わしヒーヒー悲鳴を上げていた。
多くのウマ娘と同じように列に並ぶキンペイバイは食堂の隅にコードヘブンの姿を見つけた。基本的に部屋単位で食事をするのが夏合宿のルールのはずであるが、彼女の周りに他の人影は見えず、1人で昼ごはんを食べているようだった。 - 22君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/02(日) 20:50:51
キンペイバイの母が書いた小説にはこんな一文がある。
『北国の体に吹き付ける風雪よりも冷たく、痛々しいものがあるとするならばそれは孤独である。孤独とは喉元に突き付けられたナイフのように息苦しさと不快感が付き纏うもので鈍った感性では飯が冷えていることも、その味の優劣も知覚できない』
つまるところ1人で食べるご飯というのは味気なくなるもので、誰かと食卓を囲むことこそ望ましい食事であるという意味だ。当然、母の小説を読んで育ってきたキンペイバイが知っている人間が1人で飯を食べているのを見て何もしないわけはなく、図々しくもコードヘブンの前の席に腰を下ろしておかわりしたカレーお好み焼きを食べ始めた。
「美味しいですよねこのお好み焼き!アマゾン先輩達って本当に料理上手で私憧れちゃうな〜」
「コードヘブン先輩はあまり沢山食べないタイプですか?私は結構たくさん食べるタイプで……」
「午前中は何をしていたんですか?ここ海が綺麗でトレーニングに使っているのと同じ場所のはずなのに観光地に来たみたいでなんだか楽しくなっちゃいますよね」
なんとかコードヘブンと会話を試みるキンペイバイであったが、何を話してもコードヘブンは仏頂面のままで、むしろより不機嫌な顔になっているように見えた。 - 23君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/02(日) 21:20:32
「もしよかったらコードヘブン先輩も一緒に……」
「よくもまぁそんな呑気なことが言えるね」
しびれを切らしたコードヘブンがギロリと睨む。語気にはイライラが含まれ、遊びに誘えるような雰囲気では無さそうだ。
「その水着…」
「これですか!?え、えっと…結構悩んで買って、足りない部分は手直ししてて」
「だからあなたは勝てないって何でわからないの?」
水着のことを話そうと思ったキンペイバイをそんな一言が刺す。
「えっ……」
「この合宿の意味、何もわかっていないようね。遊びで来てるわけじゃないの、強くなるために来てるの。あなたがどれだけ遊び呆けていようがアタシの知ったことではないけど、あなたが遊んでいた分だけアタシは先に行っている」
「せいぜい馴れ合い仲間と楽しくやっていればいい、アタシにはそんなものは必要ない」
最後のセリフを言い切る前にコードヘブンは食べ終えた食器を持って食堂を後にしてしまった。 - 24二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 02:00:09
ちょっと冷たすぎない?
アヤベさんタイプとは思えないし... ...。 - 25二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 02:51:56
- 26二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 03:48:38
- 27二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 11:11:15
一貫してレースで勝つことしか考えてないし、ペイバイちゃんにも冷たい反応はしても顔は覚えているあたり割と絆されるのも近いかも
- 28二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 17:50:48
トゲトゲアイドルが最近出てきた躾のなってないチワワだったらヘブンちゃんのモノローグも見たくなるw
- 29君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/03(月) 20:27:54
合宿所の風呂場はトレセンの寮の風呂に比べると少々古く感じるが、スポーツ系団体御用達ということもあり広さだけでいえば寮以上と言えるだろう。
風呂も当然部屋単位での行動が主であり、キンペイバイの部屋の他にも2.3部屋がまとまって風呂に入っていた。
「海に入った後はねぇ熱いお湯じゃなくてぬるめのお湯で解きほぐすように洗うと髪が傷まずにすむよぉ」
「海水は弱アルカリ性だからほっておくと髪がすーぐ痛んじゃうんだよね。あ、ペイバイちゃん、マヤノちゃん、これ使ってみて。低刺激だから髪にも優しいシャンプーだよ」
流石はターフに比べて汚れやすいダートを主戦場とするウマ娘である2人。特殊な環境での手入れにはめっぽう強く、今も最年少組のマヤノとキンペイバイに自らの知恵を伝授していた。
「解きほぐすってこんな感じですか?」
「根本は大丈夫そうですが髪が長い分中心から先端までが少し絡まってしまっていますね、少しいいですか?」
「お願いします」
「マヤちゃんのはあたしがやるね」
「ありがとうユキっぺ」
後輩2人が髪を洗うのに苦戦をしていると、それを見かねたアルダンとユキノが手助けにやってきた。
「ふふっ、青春だね」
「フジはアタシにしてくれないの?アタシも髪長いんだけど?」 - 30君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/03(月) 20:41:05
- 31君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/03(月) 21:01:10
「コードヘブンか…案外彼女は素直でまっすぐな子だよ」
8人分の体積だけ浴槽のお湯がこぼれて湯気になって立ち上る。小から特大まで様々なサイズの双子山が連なり、その存在感はエベレストやアルプス山脈の山々にも劣ることはない。
「本当ですか?こんなこと言うのはアレですけど、何度話しかけてもずっと突っぱねられちゃうんですよ!」
フジの語るコードヘブンと自身の中の彼女へのイメージの乖離具合が信じられず、もんずとフジの方へと詰め寄る。キンペイバイが動くたびに山脈が発生させる高波がマヤノやユキノを襲う。
「確かにそう見えちゃうかもしれないけど、よく聞いてみると言ってる意味はそのままだったりするものだよ」
それだと私がトレーニングに不真面目ってことになっちゃいますよー!と言うキンペイバイにフジは苦笑いで返す。
「じゃ、じゃぁ!コードヘブン先輩がどんな人なのか教えてください!私全然知らないので!」
そうせがむキンペイバイであったが聞かれたフジキセキは少し困ったような顔をして頬をぽりぽりと掻いていた。 - 32君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/03(月) 21:41:20
「お恥ずかしいことに実は寮長である私も彼女の事については詳しくは分からないんだ。というよりも彼女が話したがらないというのが正しいかな」
「話したがらないって自分の事をですか?」
「そう。本当に自分のことについて何も話さないし、親しくしたいと声をかけても拒否して逃げてしまうんだよね。なんというか彼女は孤独を選んでいるというよりも、誰かと一緒になることが嫌というように写るというか、意図的に誰かと親しくなるのを避けているようにも思えるんだ」
どうしてそんな事をとキンペイバイは疑問に思うが、フジキセキもどうしてコードヘブンが極度に集団行動や馴れ合いを嫌うのか、その割に他人に興味がないわけでな無さそうな理由は何故かというのは分かりかねるようであった。
「レースに集中するための精神統一みたいなものの一種なんじゃないかな?」
「それならいつもピリピリして張り詰めてすっごく疲れちまいそうなもんだがなぁ」
「何かトラウマがあって内面を曝け出すことに抵抗があるという可能性はないでしょうか?」
「案外、ただのカッコつけただけの寂しがり屋だったりしてね」
4者4用の考えを出すが、これだ!というものはなくあーでもないこうでもないと議論を交わすたびに起こる山脈由来の大津波は全てユキノとマヤノの方へと流れて行った。
「ねぇマヤちゃん」
「なにユキっぺ?」
「大人になったら絶対ボインになろうね」
「うん、絶対なる」
2人の間で奇妙な友情が形成された瞬間であった。 - 33君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/03(月) 22:46:20
──翌日
一日中遊んだ楽しいオフの日も終わり、2週間目に突入した夏合宿トレーニングはその強度を更に増していた。
すでに午前中で砂浜50往復を達成できるようになっていたキンペイバイに新たなトレーニングの内容が言い渡された。
1.森の中の獣道を止まることなく全力で駆け抜けよ
2.特設コースでの練習
3.なにやらクイズ大会のようなセットが組まれている…
dice1d3=1 (1)
- 34二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 23:34:37
根性トレか?
- 35二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 08:18:50
保守
- 36二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 08:30:05
あーわがまま言わないからキンペイバイちゃん程度の歳と体の彼女ほしいー
- 37二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 10:28:22
近年まれにみる強欲さ
- 38君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/04(火) 17:22:36
「ここを走り抜けろ……ですか?」
午後の追加トレーニングがあるとじじトレに呼ばれてやってきたキンペイバイの目の前には青々と茂る広葉樹が広がっていた。
「そうじゃ、なるべく全速力でこの道を駆け抜けるのが午後の追加課題じゃ。道は一本道だから迷子になるとかの心配は不要じゃよ。」
そう言って指差した先には道と言えるか怪しい獣道が一本。ある程度踏みならされていそうではあるが、おおよそ走る場所とは言えないだろう。
「最初は歩いて道を覚える所から始めてええからのぉ。道を覚えて慣れてきたら次はジョギングくらいの速度で、最終的にはトップスピードに近い速さで抜けられるように最終日までになればええよ」
「わかりました!頑張ります!」
この時のキンペイバイはまだ知らなかった。この課題が想像を絶する過酷さであるということに…… - 39君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/04(火) 18:52:20
獣道を歩き始めるとまず最初に二つの分かれ道が現れる。この道は円状になっており、どちらの道を選んでも最終的にこの分岐点に戻ってくるらしい。
とりあえず今回は右を進んでみることにした。
古代の原生林にでも迷い込んだかと思うほどに深い森は、背の高い木々が日差しを遮り真っ昼間だというのに少し薄暗かった。潮風の影響だろうか、地面は少し湿っていて蝉の鳴き声が少々うるさい。
20分ほど歩き、そろそろ新鮮味が無くなってきた森を歩き続けてキンペイバイはある事を発見した。ソレはこの獣道がかなりの蛇行をしている事である。片田舎暮らしのキンペイバイは道を作るにも自然条件により様々な制約がかかる事を知っており、そのこと自体に何か驚くことはなかったが、ことこれが走るコースだと考えると途端に億劫になってくる。
普段緩やかなコーナーを主戦場とするキンペイバイにとって細かいカーブの連続というのは慣れておらず、不安がつきまとう。事実、このようなスラロームは直線加速力に優れるウマ娘よりも細やかに動けるヒトミミの方が得意であったりする。
「最初はただ森を走るだけかと思ってたけど、これは骨が折れそう…」
40分ほどかけて森を回り終わったキンペイバイは明日から本格的に始まるであろうこのトレーニングをどう乗り切るかソレばかりを考えて宿舎へと戻っていくのであった。 - 40君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/04(火) 20:37:44
翌日から本格的に午後トレーニングが開始されたが、キンペイバイの想像通りこのトレーニングは一筋縄どころか四筋縄くらい順当には進むことはなかった。
まず持ってウマ娘の機動力と道の蛇行具合が全くあっていない。これは事前にキンペイバイも気づいていた点であるが、やはり走るとその凶悪さを身をもって知ることとなり、ただ闇雲に走っていては木々にぶつかって怪我をしてしまう。
さらに新たな問題として浮上してきたのは求められる判断の量とその間隔である。蛇行しまくっている獣道には当然障害物となる枝やぬかるみなどがあり、それらを瞬時に判断してコース取りを選択しなければならず、広い視野と適切な判断力が求められる。
側から見ればその程度かと感じてしまうが、実際にやるのとでは天地の差があり、流石のキンペイバイでもこのトレーニングの達成は不可能なのではないかと諦めかけたほどである。
自分1人では無理だと以前トレーニングに付き合ってくれたゴールドシップにアドバイスを貰おうとした所、「ゴルシちゃんの走るとこ見て覚えな」と実際にトップスピードに近い速さで駆け抜けて行ったため、トレーニング達成が不可能ではないと分かったため続けざるを得なくなった。
もっとも、彼女の走り方は途中ターザンになったりセミになったり常人には出来なさそうなので再現性という点では参考にならなかったが。 - 41君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/04(火) 20:52:57
- 42君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/04(火) 21:28:38
練習開始から2週間が経つというのにまだ最高速で走られるのは全体の半分程度で、それも全速力を出しては曲がりきれない場所で急減速したり判断が遅くて立ち止まったりと滑らかに走るという当初の目的には程遠いものであった。
焦らなくてもいいとじじトレは言うが、日ごとに秋華賞が近づいているという事実は変わりなく、どうしようという不安ばかりが先行して頭にモヤがかかったかのようであった。
「ペイバイちゃん、ボールいったよ!」
マヤノの声で現実に引き戻される。目の前にはボールが迫ってきていて、慌てて合わせた両手でボールを跳ね上げたが、体制が崩れて尻餅をついてしまう。
浮いたボールはチームメンバー達が懸命に繋いで相手のコートへ突き刺さり、得点板の数字が増える。
「大丈夫ペイバイちゃん?」
「ごめんマヤノちゃん、ちょっと考え事してて…」
キンペイバイ達は今、部屋対抗のビーチバレー大会の真っ最中である。
マヤノの手を取り立ち上がり、尻餅をついた時にスク水についた砂を落とし、とにかく今はバレーに集中と気持ちを切り替える。
1.やっぱりこの水着ちょっとキツい……
2.それでもやっぱりトレーニングの事に思考が偏ってしまう
3.意外とバレーの上手いキンペイバイ
dice1d3=1 (1)
- 43二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 21:37:28
合宿半分で達成も半分だし悪くないいいペース
- 44二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 22:01:47
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- 45君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/04(火) 22:06:43
ミチィ…ミチィ…という音が聞こえていそうなくらいキンペイバイの水着は彼女の豊満なボディを隠すには少々物足りない様子である。この水着は今年買ったものであるのだが成長期に加え、徐々に本格化最盛期に突入しつつある事もあり、もうサイズが合わなくなってきているようだ。
胸や尻に布の縁が食い込み、ピッタリとした素材ということもあり、小さな体に詰め込まれたメリハリの効いたダイナマイトボディを容赦なく強調させ、より肉感たっぷりに魅せていた。
しかも胸の部分は布が足りずに谷間が露出する形となっており、抑えのない上部は動くたびにプルンプルンと肉の波を立てている。
旧スク水から新スク水になってから久しく、ズボンタイプの宿命の太ももの食い込みも勿論あり、彼女の太く頑強なトモがより強くその存在感を放っている。
これらだけでも十分強力なのに、肉の食い込みを気にして何度も水着の縁を直し、視線に気付いてはすこし胸元を隠す素振りを見せるため、もしここに少年がいたら1時間は部屋から出てこなくなるだろう。
右ミミ達のウマソウル反応度
dice1d100=63 (63)
(高いほど反応になり、100に近づくにつれウマソウルが暴れ出し、魂が雄になっていく)
- 46二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 22:08:49
夏合宿になってからスレタイ通りのシーンが続いてナイスナイスナイス
- 47二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 22:09:12
ペイバイちゃんはどうしてこう、センシチブなイベントばっか踏み抜くんですか?
- 48二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 22:14:08
このレスは削除されています
- 49君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/04(火) 22:16:06
魂が雄になりかけてる右ミミ達の行動
1.シンプルにガン見
2.わざとボールをキンペイバイの方に送り、動いて揺れる様子や尻餅をついたりするのを誘う
3.おっと、マヤノがなれるちゃんを押し倒してしまった
4.その他(安価)
dice1d4=3 (3)
- 50二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 22:36:16
このレスは削除されています
- 51君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/04(火) 22:39:54
試合も白熱してきた最終盤、相手チームが放った強烈なスパイクをファルコがなんとか受け止めるが勢いを殺すことはできずそのまま天高く打ち上げられ、マヤノとキンペイバイのちょうど中間地点に落ちてきた。
ラリーが長く続きボールに対しての集中力が極限まで高まった状態ゆえに双方が走ってきている事に気づかなかった2人はそのまま衝突する事になり…
「きゃっ!」「わぁっ!」
体格的にキンペイバイよりも優れているマヤノがキンペイバイを押し倒す形で倒れてしまった。
ぶつかった衝撃で目を瞑ったマヤノだったが、自身の胸部にあたっている柔らかでありつつ弾性に富んだ暖かか大きな感触に気づいて目を開けると、ほんの数センチ先にキンペイバイの顔があった。
瞬間、2人の時間が止まる。この1年間友達として毎日のように顔を合わせているというのに近づいた距離が離れない。
朝焼けをそのまま切り取ったかのような爛々と輝く瞳は数秒マヤノを見つめた後、恥ずかしそうにその姿を瞼の裏に隠す。
「マヤノちゃん……ちっ……近いよぉ…」
「はっ…ご、ごめん」
顔を赤らめるキンペイバイから慌てて離れるマヤノ。当然ボールは地面につき、相手の点数が1点増えていた。
その後、試合には勝ったがその試合中キンペイバイに声をかけられなかったマヤノであった。
マヤノの胸ドキ度
dice1d100=59 (59)
(50を超えると少しやばい。100近くだととてもやばい)
- 52二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 23:13:03
マヤノトップガン(ヘイルトゥリーズン系)
キンペイバイ(テスコボーイ系)
競走馬キンペイバイの父を仮にテスコボーイの孫サクラバクシンオー、母を仮にアーバンシーとすると、ナスルーラの5×5クロスがあって相性良さそう - 53二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 00:01:32
このレスは削除されています
- 54二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 09:16:14
マヤノ×ペイバイだとステイヤーは確定かな?
- 55二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 15:51:09
規制される前にあげとくか
あにまんのホスト規制ルールわかんねぇ - 56君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/05(水) 16:56:00
それじゃぁちょっと寄り道してダイス振ろうか
マヤノ×キンペイバイの産駒は
1.3.いる 2.4.いない
dice1d4=3 (3)
- 57君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/05(水) 17:00:41
なれるちゃんのウマソウル元の活躍時期が2006〜2010年の間と仮定して、マヤノが種牡馬をやっていたのが2014年までなので候補は第1子〜第5子の間になるね
マヤノトップガン×キンペイバイ産駒
第dice1d5=4 (4) 子
性別
1.牡馬 2.牝馬
dice1d2=2 (2)
- 58君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/05(水) 17:03:40
第4子はOP勝った子ですね。マヤノはここまでかなりガッツリストーリーに貢献してくれたので産駒の成績をもう一度ダイスしてOP勝ち以上ならそれに成績を上書きします
dice1d100=95 (95)
<実力早見表(その産駒の最高成績)>
1〜50:op勝ち
51〜60:GⅢ1勝
61〜65:GⅢ複数勝
66〜74:GⅡ1勝
75〜79:GⅡ複数勝
80〜89:GⅠ1勝
90〜99:GⅠ複数勝
100:JRAが消し炭になる戦績
- 59君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/05(水) 17:05:47
とんでもない子が産まれてしまった……
- 60二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 17:09:43
日本競走馬の上から5%以内
見たいに考えたらあまりにもモンスター… - 61二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 17:16:57
これで産駒の重賞馬が10頭、GⅠ勝っているのが6頭だから52%くらいで重賞馬を産んで31%くらいの確率でGⅠ馬産んでる…
- 62君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/05(水) 20:48:01
ビーチバレーにもコードヘブンの姿は無く、彼女の相部屋達曰く夜も帰ってこないことが多いらしく、いつどこで何をしているのか全くの不明らしい。少なくとも昼間はビーチで走り込みをしたりタイヤを引いているところは目撃されているためこのビーチにいることは確かなのだが、真実は夜の闇の中である。
その日も午後の森ダッシュを終え宿舎へと帰って来たキンペイバイはトレーニングの報告をすべくトレーナー陣が寝泊まりしている一つ隣の宿舎を訪れていた。ウマ娘達が暮らしている建物に比べれば幾分か小さいが機能面では決して劣っているとは言えないものである。
「────で───はい────それが────」
じじトレの部屋の近くに来ると、誰かの話し声が聞こえて来た。じじトレの部屋から聞こえるそれはじじトレの声では無く、若い男の声に聞こえる。
もしかしたら何か大事な話し合いかもしれない、そう思ったキンペイバイは部屋の入り口のすぐそばの壁に寄りかかって話が終わるのを待つことにした。
聞き耳を立てずとも部屋の中の会話は外に丸聞こえで、ウマ娘の鋭敏な聴覚は一言一句残さず会話の内容を拾っていく。
「それで、医者の診断は?」
「……お医者さんが言うにはもう大逃げはしない方がいいと。このまま続ければコードヘブンはもう走れなくなると、そう言われました」
「えっ………」
思わず声が出た。
コードヘブン先輩が走れなくなる。考えもしていなかったことが、今現実としてキンペイバイの元にやって来ていた。 - 63君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/05(水) 21:17:23
「来ておったか、そこに立ってないでお入りなさい。ささ、ここに腰掛けて」
キンペイバイの座ったソファの左隣の椅子には20代半ばくらいの若い男が座っていた。どうやら彼がコードヘブンのトレーナーらしい。
「あっ、あのっ!コードヘブン先輩が走れなくなるって…どういうことですか?」
開口一番挨拶も忘れて心を支配している疑問を口にする。
「……その、まぁ、言葉通りなんだけどね。君もレースを走るウマ娘だし、レースでの走行で少なからずウマ娘に負担がかかっているのはわかるよね?」
「はい。全力で走ると特に」
「彼女…コードヘブンの得意な走り方は大逃げだ。ただでさえスタートからゴールまで全力で足を回し続けて、息つく間もなく常にトップスピードを要求される逃げのさらに極まったことをやっている彼女の体にかかる負担は想像を絶するものがある。彼女はそれをデビュー戦からずっとやり続けているんだ」
「でもそれだけじゃ走れなくなるほどにはならないんだ。一般的な脚の強度なら十分な休息を取って適切なケアをふれば問題はあまり無いんだ。一般的なウマ娘の脚ならね」
どこか含みのある言い方をするコードヘブンのトレーナーは、深呼吸を挟むと眉間に皺を寄せながら話を続ける。
「脆いんだ彼女の脚は。出来うる限りの治療やケアはやって来たつもりだけど彼女自身の力に彼女の骨格が耐えられないんだ……」 - 64君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/05(水) 21:35:20
『本格化不全症候群』
本来、成長期のウマ娘はある時期を境に肉体が著しく成長しそれまでと比べて格段に身体能力が向上する本格化という現象が起こる。これは筋肉、骨格、内臓に至る全ての部位で起こり、大抵のウマ娘はそれらがバランスよく向上するためどこかが極端に釣り合いが取れなくなるという事はない。
しかし、ごく稀に本格化が正常に進行せず、成長度合いに極端な偏りが見られるウマ娘が現れる。そのようなウマ娘の症状は本格化不全症候群と呼ばれ、大抵の場合一芸に優れるがそれを帳消しにしてしまうほどの身体欠陥を発現してしまう。現代医療では対処が不可能な症状であり、一度なったが最後、本格化終了しても身体能力の歪みは体に残ってしまう。
コードヘブンもこの本格化不全症候群の発症者だった。
彼女の症例は「全身の筋肉の異常発達」「骨組織の本格化不全」。筋肉の密度が常人の数十倍ある彼女は単純な瞬発力・持久力で言えばウマ娘全一といっても差し支えない。しかし、その恵まれた筋肉に彼女の骨格はついていけなかった。骨格の本格化が微量であった彼女は、自身の持つ最大限の力を発揮するとその力に骨が耐えきれなくなり自壊してしまうのだ。
本来、瞬間的に力を出すような走り方であったり、骨に負担をかけにくい走り方を全てなのだが、不幸なことに彼女には逃げの才能があった。
尋常ならざる身体能力とその身体能力について行くことができない体、そして天性の逃げの才能。これらが組み合わさる事により生まれたのが後続に影さえ踏ませやしない、自分の肉体を壊しながら走る破滅的な大逃げである。 - 65君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/05(水) 21:49:27
どうしてそんな未来を捨てるような走り方をするのか、喉元まで出かけた疑問を飲み込む。そんなの勝ちたいからに決まっている。レースに走るウマ娘であればそこにかける熱量に違いはあれど誰でも勝つために走るものだ。
しかし、レースの先にも人生は続く。これから先の長い人生を一生不自由なままに生きる事になるような走り方を勝ちたいから以外の"しなくてはならない"理由があるはずだ。
「天国に行くため……ですか?」
コードヘブンが常々口にする『天国』というワード。それが何なのかキンペイバイにも少しずつ分かってきた。どうして彼女が天国に"行く"と言うのかも。
「彼女は身の上話をしてくれなくてね。トレーナーとして信頼されていないのか、会話も必要最小限で…本当はどうして天国に行きたいのか教えて欲しいんだけどそうもいかないんだよね…」
はぁーとため息をつくコードヘブンのトレーナーは相当疲労が溜まっているようだ。自分の担当が身を壊して走ることを是としその理由を教えてすらくれないのだ、無理も無いだろう。
「天国のぉ…儂は大体の人間は天寿を全うすれば行けるものじゃと思っておるが、今の若い子はそうは思わんのかのぉ。天国に行くためには優秀なウマ娘出なくてはならないとそんな強迫観念にも思えるわい」
結局のところ、真実がわからない以上全ては妄想の域を出ず、具体的な対策も何も出ないまま夕食の時間を迎えるのであった。 - 66二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 00:15:39
寝る前に読むのが最近の楽しみ
スレ主さん楽しく読ませてもらってるぜ
頑張ってくれよな - 67二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 02:43:57
ドヘブちゃんに重い過去現在未来……
- 68二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 04:54:00
天国に行きたいと考えてる時点で割と思考が固まってるなぁコードヘブンちゃん。
そんなんじゃあ駄目だよ、もっと気楽に「行けたらいいなぁ」ぐらいじゃないと - 69二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 11:39:31
勝ちたい気持ちの表れだろうけど壊れながら進むってのは思ったよりもかなりやばい子だな
- 70二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 12:24:48
どうせ長く走れない身体なら
最高の舞台で、最高の勝ち方をして壊れ、砕けた破片の煌めきをもって全ての人々の記憶に刻み込まれんとする
だとすればヤバい - 71二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 13:08:07
- 72君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/06(木) 21:06:55
コードヘブンの話を聞いた夜、キンペイバイは…
1.夜の浜辺で涼んでいた
2.マヤノが持ち込んだトランプで遊んでいる
3.少年に電話
dice1d3=1 (1)
- 73君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/06(木) 21:31:25
「お月様綺麗だなぁ……」
夏の海と月というのは古来より日本人に風情を感じさせるものであり、そこに存在しているだけで画になる。
母の小説ではこんな誰もいない星空の下で男女が愛の言葉を交わしたりなんてことが書かれていたが、キンペイバイにはまだ縁のない話である。1年ほど前のあの事件以降、キンペイバイの中から恋への憧れはほとんどなくなってしまっており、進んで恋をしようという気もなかった。
そもそも今はティアラ路線で忙しい時期なのだ、恋にうつつを抜かす時間などあるはずもない。
「私もいつかまた、恋をするのかな……」
未来への不安を含んだ独り言は誰の耳に止まることもなく、潮風が空高くへと運んでしまった。 - 74君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/06(木) 21:41:38
時は過ぎて8月中旬。
夏の暑さがさらに増し、そろそろクラゲが浜に上陸して来そうなこの時期、合宿終了が2週間後に迫っていた。
合宿でのトレーニングで力をつけている実感のある者たちはより力をつけるための特化したトレーニングを、まだ自覚のできていない者たちは少しでも実力を伸ばすためにがむしゃらにトレーニングに打ち込んでいた。
そんな中、今日も午前中の練習を終え森の中を駆け回るキンペイバイのトレーニングの成果は
49+dice1d51=35 (35) %ほどになって来ていた
- 75君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/06(木) 21:49:22
もう何回も走っていた事でだいぶ慣れたもので、スイスイと獣道を駆け抜けていく。
このトレーニングの本質は「細やかなコーナリング」と「広い視野」を培うものである。蛇行しまくり直線では進むことのできない獣道は無駄のないコーナリング技術を磨き、トップスピードで駆けるために常に二歩先、三歩先を見据える必要のある視界は自然と広くなり、前よりもずっと色んなことに気づくことができるようになっていた。
森の奥に行くと生えている木の種類が変わったり、森の外側には花が、奥にはキノコが多いこと、今まで気づかなかった色んなことに気づくことができるようになっていた。
手本にしたのがゴールドシップだったため、完成度が如何程かはキンペイバイ本人には実感しずらいが、その能力は『弧線のプロフェッサー』『お見通し』のレベルにまで到達していた。 - 76君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/06(木) 22:06:41
「肝試し…ですか?」
夕食の冷製トマトパスタをフォークでくるくると巻きながら話題の発生元のアルダンの方を向く。
「少し前までは夏合宿の定番イベントだったそうなのですが、最近は悪天候などでできていなかったので今年こそはどうですかとフジキセキさんに相談したんです」
夏合宿、海、肝試し、なるほど確かに定番イベントと言えるだろう。数年間開催されていない理由には毎回開催しようと決めた日に限って台風が直撃したり、怖いのが苦手な子が多く人数が集まらなかったと色々あるらしいが事故や心霊現象が理由なことは一度もないらしくホッと胸を撫で下ろす。
「あれ?もしかしてペイバイちゃん怖いの苦手〜?」
隣に座るマヤノが悪戯っぽそうな顔でニヤニヤと煽ってくる。
「こ、怖くなんてないよ!お化けも幽霊も出ないなら平気平気」
強がって言ってみるのはいいものの、キンペイバイの瞳は完全に泳いでいた。
「そう言えば、お化けや幽霊の伝承は暗闇での緊張状態で木々が風で揺れたり、枯れ木を見間違えたりなんて場合が大抵って聞いたことあるな。ここは夜はそこそこ風が吹くしお化けが出たと勘違いするくらい怖かったり……」
「ちょっ…怖いこと言わないでくださいシービー先輩!!」
ハハと笑う他の部屋メンバーであったが、こういったものに耐性のないキンペイバイにとっては死活問題もいいところである。
その日の夜は恐怖が拭えずフジキセキを起こしてトイレへと行った。 - 77君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/06(木) 22:38:19
「何でアタシが参加しなくちゃいけないワケ!?」
肝試し当日、天気に恵まれ快晴の夜空。手持ち懐中電灯ではかき消せないほどの星々が空の上で瞬いていた。
この肝試しは部屋関係なくランダムに決められたペア2人で行い、山道の石碑までの道を一周する。そろそろキンペイバイのペアの順番となった時、隣にいたコードヘブンが愚痴を漏らした。今回のペアの相手は何を隠そう彼女なのだ。
「まぁまぁ、これも親睦を深めるためだと思って、ね?」
「…フジ寮長、アタシは馴れ合いがしたくてこの場所に来たわけじゃありません。第一、こんな事に何の意味が」
「一緒に肩を並べて走るウマ娘同士、互いを知って信頼関係を築くのも立派なトレーニングのうちの一つだよ。それとも…もしかして怖いのかな?」
噛みついてくるコードヘブンにフジキセキは若干の煽りを込めて返す。
「わかりました、行けばいいんですよね」
1人で勝手に行こうとするコードヘブンにキンペイバイは数歩遅れてついてくる。振り返るとフジキセキが頑張れと言わんばかりにサムズアップを決めていた。 - 78二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 23:40:07
このレスは削除されています
- 79二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 08:18:45
保守
- 80君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 08:22:21
「さっさと終わらせて帰るからね」
コードヘブンは何かの雑誌の特集で「今年最も美しいクラシック級ウマ娘」として紹介されていた覚えがある。確かに、木々に遮られ木漏れ日として射す月光に反射し煌めく白い髪も、黄金比に近い整えられた肢体も、すらりと伸びた手足も、そこにいるだけで画になるような美しさだ。
早歩きで山道を歩くコードヘブンの後ろ姿からは、まさかもう体が壊れかけであと一戦走れば2度と走れなくなるかもしれないなどとは考えることもできないだろう。
レースの道を志しトレセンの門を叩くウマ娘というのは皆、レースに対して強い憧れや情動を持っているものだ。それなのにそのレース生命を絶ちかねない走り方をして、徐々に自分の競技ウマ娘としての寿命を削っていくという恐怖はキンペイバイには分からない。母親譲りの頑丈な体で生まれてきたということもあり、怪我とは無縁のキンペイバイにはコードヘブンに軽々しく気持ちが分かるなんて口が裂けても言えなかった。
それでも、少しでも何か力になりたかった。困っているのなら手を差し伸べたいし、悩みがあるのなら聞いてあげたい。多くの友人や先輩が自分にそうしてくれたようにコードヘブンにもそうしてあげたいと思う。
だから色んな人に聞いて回った。「もし自分の脚が壊れるのが分かった上でそれでも走るか」と。
答えは様々だった。壊れかけの脚を治す事に専念する、壊れないように走る、潔く諦める。ウマ娘にとって脚は自分の命も同然、それを失わないようにすると答えたウマ娘が多数を占める中、メジロアルダンを筆頭に一部のウマ娘はこう答えた「たとえ脚が壊れると分かっていてもそれでも勝利が欲しい」。
だがそれでもそう答えたウマ娘は全員その後に、だからといって進んで壊れるようなマネはしないとも答えていた。コードヘブンの壊れてもいいという諦めじみた執念とは正反対のものであった。 - 81君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 09:48:08
そしてもう1人、この事について聞いていた人物がいた。
『良いじゃない?俺も壊れるまで走りたい派だし』
数日前、夕涼みの後にキンペイバイは少年に電話をしていた。少年はもともと陸上競技の選手であり、今回のことについて彼なりの意見が聞きたかった。それに、キンペイバイが困った時、助けてくれるのはいつも少年であった。
『こういうこと本当はあまり言っちゃいけないんだけど、壊れるまで走るってのも一つの才能なんだよ。普通の人間はそこまで走れないし、走れるようなやつでもそんな事普通はしようとしない。本当に壊れる才能のあるやつだけができる事だよ』
返ってきたのは意外にも壊れることへの肯定であった。キンペイバイの中のイメージの少年はこういう事に断固として反対するイメージであったが、東京で数年間過ごして小学生から中学生になり色々と考え方が変わったのだろうか。
『レースってか走りの世界だとさ、壊れるまで走らせてもらえる事なんてそうそう無いよ。だいたい皆、そのずっと手前で不完全燃焼で燃え尽きて燻ったまま引退していく。結果を出して、その果てに壊れたならそれはそれで幸福な事だと思うよ。だってさ、全力で最後まで駆け抜けられたって事なんだからさ』
『勿論、無事に怪我なく走り抜いて次に繋げるのが1番だよ。でも……それすら許されず無念のうちに終わるより何百倍もマシでしょ?』
少年の言葉は確かに一理ある。重賞特にGⅠなんて一度勝つだけでそのためだけにレース人生の全てを捧げても良いほどの名誉なのだ。それを得るために命を賭す事すら厭わないのはある意味でランナーとしては当たり前のことなのかもしれない。
だからこそ、少年の言葉は現実的すぎてあまりにも悲しいではないかとそうキンペイバイには思わざるを得なかった。 - 82二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 16:01:58
ほ
- 83二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 18:13:34
少年達観してるなと思ったけどおっさんになると今後いかにトラブルなく生きていくかにシフトしちゃうからな
- 84君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 20:39:32
石碑までは徒歩20分程度とそれなりに距離があり、早歩きで10分ほど歩いた現在でもまだその姿を見ることは叶っていない。
陸と海の気温差によって吹く夜風で時折、木々が大きく揺れその度にキンペイバイがビクッと震える。
「こ、怖いですねー……コードヘブンさんは大丈…って置いてかないでくださっ…」
怖がるキンペイバイなど気にも止めずコードヘブンは山道を進んでいく。ペア行動の意味を理解していないのだろうか、別に1人が好きならばそれでいいが暗い夜道で置いていかれるのだけは勘弁してほしいというのがキンペイバイの本音であった。
「あっ、待って…!」
置いていかれると思い走ろうとするキンペイバイ。そんな彼女のすぐ横の道端にある茂みが大きくガサッと揺れた。
「ぴぇぇぇぇぇぇ!!!」
あまりの恐怖に全速力でコードヘブンに追いつくと小動物のようにプルプルと震え出す。ただの風だと分かっていても怖いものは怖い。アワアワと震えては腰が抜けそうになっていた。
「ちょっと、暑いんだけど」
「ごっ…ごめんなさい…でも怖くて……」
涙ながらの訴えが響いたのか、数分間キンペイバイが落ち着くまでその場で黙って添木になってくれた。 - 85君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 21:04:48
合宿所近くの石碑がなぜ肝試しのスポットとして選ばれたのか、それにはこの石碑にまつわる昔話に理由がある。
昔、合宿所近くの街が小さな漁村だった頃のことである。
その漁村の外れにとある貧しい母娘が住んでいた。大黒柱という存在が必要不可欠だった時代である、母親しかいない、村はずれに仲間はずれのように立つオンボロな家、この家族がどれほど苦労をしてきたのかは想像に難くはない。
そんな母娘にある日不幸が起きた。大きな街へ出稼ぎに行くと数週間前に出かけて行って、ついに今日母が帰ってくるとなった日、母親は帰っては来なかった。娘は何日も何日も待っていたが、1ヶ月、半年、1年となっても母が帰ってくることはおろか、文のひとつも届くことはなくなっていた。
村の誰もが母親が2度と帰ってくる事はないと考えていたが、まだ母親が必要な歳の娘にそんなことがわかるはずもなく、母親とよく景色を眺めに行った丘にある目立つ大きな石に毎日母が帰ってくるようにとお祈りをしていた。
それでも母が帰ってくる事はなく、月日だけが過ぎ、娘が遠くの街に嫁に貰われる日が来た。あれから毎日のように祈りを捧げていた石にお別れの挨拶をしに来た娘。別れを惜しみ母との思い出の詰まったこの地を離れたくないと石に涙をこぼした時、彼女の目の前にほのかに光るものが現れた。いまにも消えいりそうな光は彼女の前で母の姿を取ると、手招きをするように大きな波が叩きつける崖の方へと彼女を誘った。
次の日、崖下で亡くなっている娘を発見した村人は娘が祈りを捧げた石が何か災いを招いたのだと考え、その石を「誘石」と名付け、月夜には母親の怨霊が現れ崖へと誘われると言い伝え、夜にこの石には近づいてはいけないと言い伝えてきた。 - 86君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 21:22:24
「よくある地方の昔話ね」
石碑の前を通り過ぎ、帰路を歩んでいる最中コードヘブンが情緒もへたっくれもないことを言い出した。
「大方、子供や若い人間によるに危険な場所へ行くなっていうための教訓的お話でしょうね。娘が翌朝死体で発見されたのなら娘が石の前に行った時は1人だったはず。母親の霊を見たなんて誰も分かるはずない」
リアリストなのか作り話にマジレスをしたがるタイプの人間なのか、肝試しの前にフジキセキが語ってくれた言い伝えに全力で反論するコードヘブンを見てフジキセキの言っていた真っ直ぐな性格とはこういう感じのことを言うのかと、少し疑問符が頭の上に浮かんだ。
「せっかくのイベントで風情がないと、あなたそう思っているわね」
「えっいや……」
「この世の心霊現象なんて大抵作り話か勘違いでしかないの。あなたが怖がっている木々の揺れも風邪の引きを起こした現状でしかないし、暗い道もその形は明るい時に見るのと変わらない。しっかり考えて見れば怖いものなんてないわ」
そう言って相変わらずズカズカと進むコードヘブン。これは彼女なりの気遣いなのだろうか、白い髪の後ろ姿の彼女がそれ以上の言葉をかける事はなかったが、先ほどよりは少しだけ怖さのなくなったキンペイバイであった。 - 87君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 21:37:39
帰り道も中間に差し掛かった頃、いきなりコードヘブンが立ち止まった。
「あ、あの……コードヘブン先輩……?」
虚空を見つめて口をパクパクさせている彼女が心配になり声をかけようとしたが、伸ばした手が届く寸前にコードヘブンは何かに誘われるように暗い森の中へと歩み出した。
歩くたびに潮の匂いが強くなっていく。どうやら海が近いようだ。昼間であれば木々の間から海が見えるんだろうなと思いながら未だ立ち止まる気配を見せないコードヘブンを追う。
やがて森が開けるとそれなりに広い場所に出た、辺りが暗くよくわからないが、波の音がすることから察するに崖か何かだろうか。
そこでキンペイバイは伝承の話を思い出した。嫁入り前の娘が何かに誘われ崖下に落下してしまうあの誘石の伝承とこの状況は酷似しているではないか。
「コードヘブン先輩!行っちゃダメです!」
相変わらず見えない何かを追って、それに手を伸ばしていたコードヘブンの手を慌てて握って引き寄せる。
「やめて!お母さんが行っちゃう!!やだっ!行かないで!今度はちゃんと約束守るから!行かないでお母さん!!」
暴れるコードヘブンをなんとか抑えようとするが、体格差ゆえに長くは持ちそうにない。コードヘブンは完全に錯乱して母親を呼び叫んでいた。
「しっかりしてください!あそこにお母さんはいません!」
限界の近くなっていたキンペイバイが張り上げた大声にようやく自我を取り戻したのか、大きな相貌から大粒の涙を流しながらコードヘブンはその場にへたりこんでしまった。 - 88君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 21:46:23
ずっと抱き抱えられそうもなかったため、手近な木にコードヘブンをもたれ掛からせるとハンカチで彼女の涙を拭う。
「もう……大丈夫………」
強がるコードヘブンはハンカチを持つキンペイバイの手を押し除けるが、その表情から憔悴しているのは明らかで、立ち上がる気力も無さそうだった。
「何を見たのか、教えていただけませんか?」
とにかく現状を把握しなければ対処もできないため、酷ではあると分かりつつもキンペイバイは物怖じすることなく質問した。
コードヘブンは少し悩むそぶりを見せると、ため息をひとつつく。
「しばらく立てそうにないし、いいよ、教えてあげる。……アタシが見たのはお母さんで間違いない…うん、絶対そう、間違えるはずがない」
大きく息を吸って深呼吸をすると、覚悟を決めたように口を開く。
「アタシのお母さんは、アタシが7歳の頃に死んだ」
コードヘブンの口から語られたのは彼女の半生であった。 - 89君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 22:37:47
アタシが生まれたのは由緒正しいウマ娘の家系、いわゆる名家と呼ばれるところだった。大政奉還以降に行われ始めた本格的な黎明期のウマ娘レースにおいて特段素晴らしい成績を残したらしい私の先祖はレースの世界でそれなりの力を持ち、いつしかレース界に出資し、優秀なウマ娘を多く輩出する名家となっていった。
アタシの母はその家で「落ちこぼれ」として扱われていた。母は体が弱く、競争ウマ娘としてはGⅢを1つ勝っただけであった。本来それでも誇れるものであるのだが、100年ぽっちの家のプライドはそれを許さなかった。
G Iの土を踏むことがなかった母は一族の中で疎まれ、次代を1人でも多く作るために学園に通っている途中で退学という形で家に引き戻された。
ちょうどアタシと同じくらいの歳……母は家の繋がりでできた10も歳の離れた男と子を設け、17歳でアタシを産んだ。小柄で体の弱い母にとって私を産み出すことは相当な困難だったようで、大量出血で生死の狭間を彷徨い、授乳期間中は乳母に子を奪われ、その胸から我が子に乳を与えることはついぞ一度もなかった。
アタシが3歳になる頃、20歳になった母は複数の合併症を患っていた。アタシを出産したときのあの大量出血が原因らしいが詳しい事は教えられなかった。
そのからの私は厳格な祖母に育てられ、レースの英才教育を受けていた。小さな子供はあれをしろこれをしろと押し付け、泣くことすら許されなかった。人目を盗んでは母のところに行きその胸の中でたくさん甘えさせて貰ったことをよく覚えている。
父には甘えたことはない。家庭に無関心でいつ家にいるのかもよくわからない人だから好きになるとかそういうことの以前に興味を抱くことができなかった。 - 90二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 22:49:01
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- 91君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/07(金) 22:50:15
厳しい教育で泣いたたびに母はアタシの頭をたくさん撫でて子守唄を歌ってくれた。歌詞のないハミングだけど私にはそれが何よりも心地よくて、祖母の好みの古めかしい埃を被ったような歌よりも何倍も素晴らしく思えた。
「コーちゃんは、生きてるだけでとっても偉いのよ」
それが母の口癖だった。今思えば死にゆく自分の体のことをわかっていての言葉だったんだと分かる。だけどあの当時は何をやっても怒られてばかりでただ甘えているだけで褒めてくれた母が大好きってそればかりだった。
母のベットの上でたくさんのことをした。折り紙、お歌、お絵描き、春には窓から庭の桜を見ながら2人でお饅頭を食べたことがあった。何かするたびに弱々しく動く母の細い指と自分の指を比べて、「お母さんの方が指が長い」と子供ながらに無邪気に笑っていた。日々痩せ細る体で未就学児の相手をするのはさぞ大変だったろうに母は嫌な顔ひとつせず、いつも私もアタシに微笑みかけてくれた。
こんな日々がずっと続くのだろうとあの時のアタシは信じて疑わなかった。明日は金色の折り紙で鶴を折ろう、今度の日曜日は一緒にお出かけしよう、未来への約束を笑顔でできていた。アタシにとって最も幸せな時間だった。 - 92君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/08(土) 07:51:08
小学校に入ったアタシは入学後すぐにレーススクールに通わされた。毎日夕方ごろまで練習があって母との時間が少なくなってしまうのは寂しかったが、同い年の子達と走るのは純粋に楽しかったし、その頃のアタシはまだ走ることが純粋に好きだった。
アタシが6歳の頃になると母はもうベットから動けなくなっていた。起き上がることもできず、介護用ベッドのリクライニング機能で身体を起こすのにも負担がかかるようで、アタシがいない時はずっと横になっていた。
その頃のアタシは初めてできた友達から聞いたきょうだいの話をきいて弟妹が欲しいと思うようになっていた。その事を母に言うと、母は目尻に涙を溜めてごめんねとただ繰り返していた。子供心にアタシにきょうだいはできないんだなと理解した瞬間であると同時に、母を泣かせてしまったと未だに後悔している出来事でもある。
小学校に入学してしばらく経った頃、アタシはレーススクールで1番脚が速くなっていた。6年生の子達もアタシには勝てない。友達からすごいすごいと言われて調子に乗っていたけど、アタシに勝てる子がいない環境でそれが収まることはなかった。
アタシの成績を聞いた祖母はアタシに大会に出るように行ってきた。そこまで大きいわけじゃない地方の小学生レースだ、対して実力のある子がいるわけもなく調子に乗っていたアタシははタカを括っていた。
そして負けた。
アタシよりも先にゴールラインを駆け抜けたのは違うレーススクールの5年生の子。初めての敗北にショックを受けたアタシに待っていたのは祖母の平手打ちだった。
走ってクタクタの体にいきなり刻み込まれた衝撃はその後の祖母の激昂すらもかき消してしまうほどで、痛みに涙が流れる余地すらなく、ただ茫然と何か大変な事をしてしまったのだと「ごめんなさい」と呟きながら6歳ながらに激しく後悔した事をよく覚えている。 - 93二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 19:08:50
重い…重くない?
- 94二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 19:15:47
あれ?ここだけ重力10倍になったんか?
- 95君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/08(土) 19:44:08
レースで負けた後、アタシはレーススクールを辞めさせられ少し遠くにある強豪のレーススクールに通わせられる事になった。スクールの子や先生にお別れを言える時間もなく急に決まった事で、次は絶対に勝つからと泣いて駄々をこねたが祖母が聞く耳を持ってくれることはなかった。
新しいスクールは以前に通っていた場所とは異なり個人主義、勝利主義の強いところであった。本来ならば入学テストを合格しなければならないのだが家のコネで無理矢理入れさせたようで、アタシは指導陣からは腫れ物のように扱われ、スクール生からは依怙贔屓と揶揄われることになった。
友達と離れ離れになったばかりで新しい友達を作る気にもなれなかったアタシは、入ったばかりの大事な時期をいじけてばかりで過ごし、スクール卒業まで友達らしい友達を作ることができなかった。
私の人生が灰色に染まり始めた矢先、母の病状が悪化した。 - 96君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/08(土) 20:10:07
その日は、ないレーススクールでまた上級生に冷やかされてつまらない気持ちになったのを母に聞いてもらおうと思いながら母の部屋を訪ねた。しかし、部屋に母の姿はなく捲り上げられシーツの皺だけが母がここにいた事を証明するベットからは熱が消えていた。
母が行きそうな場所も母の体では隠れるのは無理そうな場所も探し回ったが、母の姿を見つけることはできなかった。どうしようもなくなったアタシはその日たまたま家にいた父に母の行方を尋ねた。
新聞を読む手を止め、視線を下に落としながら父はこういった。
「あの人はもう家には帰れない」
私が再び母の顔を見ることができたのはそれから4日後の週末のことだった。祖母の目を盗んで家から飛び出し、父から聞いていた病院へ1人で向かった。とはいえ私は当時齢7歳、地図もろくに読めないものだからバスの車掌さんや道ゆく人に聞きながら時間をかけて病院まで辿り着いた。
看護師さんに案内されて母の病室へと向かう。すれ違う人達は全員看護師さんか先生だけで、患者さんとは一度もすれ違うことはなかった。
ガラガラとスライドドアを開けると、そこには母の姿があった。もっともそれは腕に夥しい数のチューブが刺さって、酸素マスクまでしている普段の母とはかけ離れた姿であった。
看護師さんが部屋を後にし、アタシと母の2人だけが残った。ベットサイドのモニターのピッピッという周期的な電子音と酸素マスク越しの母の息遣いだけの世界に私の靴底を鳴らす音が加わる。
あまり体に触ってはダメと看護師さんに言われていたのでベットの手すりに掴まって母の名前を呼ぶ。初めは反応が無く心配になってつい手を握ってしまった。母の手は驚くほど冷たく、少しでも暖かくなるように両の手でギュッと胸元に抱きしめた。 - 97君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/08(土) 20:27:35
そうしてしばらく経つと、母の顔の方から別の音が聞こえた気がして床に散らばった大量のコードを踏まないように慎重に母の顔の近くまで行くと、母が目を開けていた。私に何かを言おうとしていたが酸素マスクのせいで上手く喋れないのだろう。おぼつかない手つきでアタシが酸素マスクを外すと母は目に涙を浮かべて消え入りそうな程小さな小さな声でアタシの名前を呼んだ。
母が目覚めると帰る時間までの少しの間、アタシは母にめいいっぱいいろんな事を話した。来週は何をするのか、今週の給食は何が美味しかったか、他愛もないいつもの会話。お土産として下手くそながらに折った折り紙の鶴や花を母にプレゼントすると、母はまたもや小さな涙を流して喜んだ。
2年生になったらやりたい事も話した。
「2年生になったらね、結婚式するところに行くんだよ。あたしドレス着てみたいな!」
「うんうん、きっとコーちゃんによく似合うよ。お母さんに似てくれた真っ白な髪に純白のウェディングドレスだもの、きっとコーちゃんお姫様みたいに素敵なお嫁さんになっちゃうね」
そういえば、小学生になる頃よりも前のアタシの夢はお嫁さんになる事だったか。母は幼少期のアタシの些細な夢すら覚えていてくれたようだ。
「お母さんもコーちゃんのドレス姿見たかったなぁ…」
「じゃぁ2年生になったら見せてあげるね!先生に写真撮ってもらうんだ!」
無邪気に笑うアタシにありがとうと母は頭を撫でてくれた。頭のてっぺんが少しひんやりして、いつもよりも優しく、今思えば弱々しいものだった。 - 98君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/08(土) 20:55:14
もう帰らないといけない時間になった頃、さよならの挨拶の代わりに母はアタシをベットの上に招くと慎重にアタシを抱きしめた。
「コーちゃん、危ない事をしちゃダメだよ」
「しないよー」
「健康で怪我ない丈夫な体になってね、長生きして、美味しいものたくさん食べて、たくさん遊んで、可愛いお洋服をたくさん着て、いっぱい友達を作って、お勉強は難しくても諦めちゃダメだよ、趣味も沢山持って欲しいけど好きな事一筋でもいいね、たくさんいろんな事を経験して、恋もして、旦那さんにはいい人を、それから……それから………」
アタシを抱きしめる母の力がほんの少しだけ強くなる。
「沢山…沢山、幸せになってね」
「幸せってどうやってなるの?」
「……今のコーちゃんにはまだ分かりづらいかな?でも、きっといつかその意味が分かるようになるよ。だから……だから……それが分かるその日まで生きる事を諦めないでね」
「うん!あたし頑張る!だからお母さんも早くお家に帰ってきてね!」
「…………大好きだよ、コーちゃん」
最後にもう一度、母はアタシを胸に抱いた。薄い胸から母の心臓の音が聞こえる。その音は聴いているとなんだかとてもリラックスしていつまでも聴いていたくなる。
「あたしも大好き」というと母はまた涙を浮かべて笑った。
それが、母との最後の会話だった。 - 99二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 21:02:16
ちょっと前の閲覧注意「叡智だから」
いまの閲覧注意「背景が重馬場すぎる」
ペイバイちゃんならなんとかしてくれるはずうううう - 100君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/08(土) 21:33:29
母の葬儀の事についてアタシが覚えている事は少ない。誰にどうやって母が死んだ事を告げられたのか、棺に入った母の死に顔も、母の葬儀に駆けつけた母と同い年くらいのウマ娘たちの顔も、全てモヤがかかったかのように鮮明に思い出すことができない。
ハッキリと覚えているのは、かつて母だった白いカケラを親族たちが箸でつまんで骨壷の中にしまっているところからだ。
「随分貧相な姿になって…」
「これは…相当苦労なさってたんでしょうね」
「こんなに小さく…」
母よりも歳が上で祖母よりも歳が下の人達がヒソヒソと喋りながら母だったもの達を仕舞っていく。当時のアタシはそれを見て何も思うことができなかった。大好きな母、世界でただ1人アタシの味方だった母、その母がいなくなり面影すら焼き尽くされた姿で目の前に現れた事で色々と限界が来ていたのだと思う。
粛々と進む納骨の最中、祖母が大きなため息をついた。
「全く、こんな姿になってしまって……せめてもう1人くらい子を残して逝きなさいなこのバカ娘が…」
その言葉を聞いて私の中の何かが決定的なまでに音を立てて崩れる音がした。私の目には悪態をつく祖母も、それを聞いて何も言い返さない父も、祖母の悪口に乗っかるように母を愚弄する親戚達も等しく悍ましい悪魔のように見えていた。生前の母の言葉を思い出す。いい事をした人間は天国へ悪い事をした人間は地獄へ行くと母は言っていた。なら今この場にいるアタシ以外の人間は地獄に堕ちる人間で、母だけが天国に行けるだろう。
この世界にアタシに優しくしてくれる人間はもういない。全てを無くして、全てに裏切られ残ったのはぽっかりと穴の空いた心だけ。
その時、アタシは心に誓った。こんな思いをするのであれば、失う痛みを再び感じなければならないのなら、もう友達も家族も大切な人も何もかもいらない。アタシの味方は、アタシの大切な人は母だけ。もう一度母に会いたい、そのためにアタシは天国に行くのだと。 - 101君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/08(土) 23:04:52
良い人間になるにはどうしたら良いか、簡単だ誰よりも素晴らしい成績を残したウマ娘になれば良い。どんなレースだろうと勝ち続けて歴史にその名を残すほどのウマ娘になれば天国もきっと私を快く招いてくれるはずだ
それからのアタシはレース以外の全てのものを捨て去った。年頃の娘が着るような可愛らしい洋服も、アタシを気にかけてくれた優しい友達も、大好きだった折り紙も、何もかもを捨て去りただトレーニングに明け暮れた。その結果、レースに出れば連戦連勝、強豪トレーニングスクール内であってもトップの成績へと短期間で登り詰め、指導陣が腫れ物扱いしてくる事もスクール生がバカにしてくる事も無くなった。
そんなアタシの姿を見て祖母は何も言ってこなかった。母の死以降話す事さえ無くなったが同じ家で暮らしている以上は嫌でも目に入る訳で、日に日に小さくなっていくように見える祖母の姿にアタシは内心ザマァ見ろと思っていたのは本当のことだ。
トレセンに入ってからは本格化のタイミングを待つ日々だった。親族の目を気にする必要のない寮暮らしはトレーニングには最高の環境で、アタシが今まで閉じ込められていた狭い世界の何百倍も広く感じられた。
相変わらず友達を作る気はなく、色恋にうつつを抜かす同級生を見て内心馬鹿にしていたがその度に心の奥底でチクリと痛むものがあった。それが何かを探そうとはしなかった、というよりも探してしまったらドツボに入ってしまう気がして怖かったのだ。
そして本格化を待って3年の時が経った。 - 102二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 04:45:49
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- 103二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 05:17:53
言いたくないんだけどさ、ハッキリ言ってライバルの過去を見ても「だから何?」としかならない。
だってライバルのお母さんはともかく、ライバル自身はクソみたいな実家から逃れようと何も抵抗してないじゃん。
そりゃあ子供にできる事なんてたかがしれてるけど、実家も名家とはいえそこまで権力を持ってるようには見えない(だからやりようなんていくらでもある)し、身内に頼れる人がいないなら外部に助けを求めるなりすりゃいいじゃん。
正直それすらしないで自縄自縛っぽい状態になってるのを見ても正直同情できないんだけど。
なんかのマンガで似たような境遇のキャラがいたけど、周囲の助けを借りて実家と絶縁するだけじゃなくて、実家の悪事を暴露して叩き潰すのに成功してたから、やろうと思えば実家に対抗する手段なんていくらでもあると思うんよ。
まぁ別に個人の問題だからどうするかは個人の自由だけど、だからって周囲にあからさまにトゲトゲした態度をとるのはアウトだと思う。 - 104二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 06:18:22
ちょっと言い方がとげとげしすぎかもだけど個人的には似たような意見かも。子供だったからとか、実家の考えが普通だと思ってたとかそういうことを抜きにしても誰か外部の信頼できそうな人に「助けて」ぐらい言えんかったかなって思っちゃうかな。
- 105二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 07:44:16
唯一の味方と思ってる母親が死んだ7歳の女の子にそれは酷というか…それに描写を見る限り10年前の出来事っぽいし現代換算だと2013年なら子供も助けてもらう手段を調べる術も少ない時代だろうし
- 106君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/09(日) 08:24:37
トゥインクルシリーズでもアタシは負けなしだった。アタシについてくれたトレーナーは気弱そうな男だったけど、トレーニング方針をきちんと定めてくれて、何かと私に対して心配をかけてくれた。父以外の男とまともに関わったことのなかったアタシにとっては、アタシのことをこんなに気にかけてくれる男がいるのかと驚いたほどだ。
正直に言えば惹かれるところもあった。でも、その度に心の奥底の幼き日のアタシが問いかけてくる。大切な人を増やしても本当にいいのか?また失った時に後悔するんじゃないかと。だからアタシはトレーナーとの間に分厚い壁を何枚も作ってしまった。態度もそっけなく、表情は冷ヶしく。
それは友人間でも同じだった。隣の席になった子、同じ部屋になった子、班活動で一緒だった子、みんなアタシに優しかったけど、アタシはその優しさを拒み続け孤独でいようとしていた。
それらを犠牲にして勝利を得られるなら安いものだとさえ考えていた。アタシは愚鈍で、何もできないノロマで…井の中の蛙だったアタシが強豪スクールでトップに立てたのは、他の子が手放さないように大事に抱えていた荷物を全て捨てレースのみに己を捧げたからに他ならない。
アタシは根本的に何かを抱えて走れるほど強くはない。全てを捨てて身軽になってようやくそれで勝てるようになった、中身も何もない勝利が欲しいだけの哀れで惨めで空っぽなウマ娘が本当のアタシ。
隣で走る子達の笑顔が、未来への希望が、情熱が、夢が、眩しくて見たく無くて、見えないようにアタシは逃げた。
澄み渡る空と鮮やかな緑のターフ、私の呼吸、それだけがアタシのレースの全て、アタシにとってのレースは孤独で辛いだけのものだった。 - 107二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 18:06:56
保守。
ペイバイちゃんはコドヘちゃんの救世主になりうるのか……!? - 108二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 18:19:19
だから、どうした。
ここにいるのは、どいつもこいつも腹ン中に何か抱えてる奴ばっかりだ。
自分だけがこの世の不幸を代表してますみたいなツラしてんなよ!
と熱血ドラマ風にはペイバイちゃんの性格的にいかなさそうだしなぁ - 109二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 20:54:27
保守あげ!
- 110二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 22:39:44
このレスは削除されています
- 111二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 22:43:39
文才が発揮されてる
- 112二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 01:50:50
う~ん、年齢一桁の頃ならともかくトレセン入学後はなんとか実家と絶縁できないモンかね?
正直実家と絶縁しないと絶対ロクな事にならないだろうし。
お母さん時代はわかんないけど、今なら理事長(代行含む)や生徒会メンバーに寮長コンビと頼れそうな人はいるし、いままでのレスを見た感じ実家は名家とはいえ権力はそこまで持ってなさそうだから、なんとかいけそうな気もするが... ...。
でも続々と裏事情が明かされたけど、あのトゲトゲっぷりはどうしても受け入れられないんだよなぁ... ...。 - 113君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 07:40:29
桜花賞のレースで1人のウマ娘に出会った。
そのウマ娘は特段レースの順位争いに食い込んでいたわけではないがレース終わりのアタシを見つけるとアタシのそばまでかけてきて手を伸ばしてきた。
握手でも求めているのだろうか。くだらない。そうやって負けてもヘラヘラしているから勝てないのだ。アタシはその手を払い除けた。
だけど、払い除けた手の持ち主が心底悲しそうな顔でこちらを見つめていたのを見て胸の奥底でチクリとするものを感じていた。
アタシの走りに体が耐えきれないと医者に言われたのは確かこの辺りだった。本格化不全症候群という珍しい症例らしいが元々、実績を積むことだけを目的としていたアタシにとってはそこまで重要なことではないと考えていた。
むしろ、壊れるタイムリミットが分かっているのならばそれまでの時間を全力で駆け抜ける。それこそが天国への近道だとも思っていた。
頭の片隅ではそれが母の願いを裏切る事になると分かっていた。でも、アタシは天国に行くことが全てでそれ以外の全てはその過程でしかないと本気で考えていた。
日に日に足に違和感と痛みを感じる事が増えていってもこれも天国へ至るための試練だと、都合のいい妄想を重ね、心配するトレーナーをよそに自分自身を取り返しのつかないところまで追い込もうとしていた。 - 114君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 07:53:53
結局、足の負担のため走るトレーニングに制限が設けられる事となった。感謝祭の頃には1週間のうちに全力で走って良いのは3日以内と医者に宣告された。初めて告げられた時は自分の体のことは自分が1番よくわかっている、だから制限なんて必要ないと抗議したが、「君は自分の体に無頓着すぎる」と逆に怒られてしまい、渋々受け入れる事になった。
相対的にトレーニングの日に空きが出来たことでアタシは暇な時間ができた。以前なら毎日ずっと走ってトレーニングしていたのであまり関心を向けていなかったが、どうやら近々ファン感謝祭というものが行われるらしい。暇なのに手伝わずふらふらとしているのも居心地が悪かったため、荷物運びの手伝いくらいはする事にした。
どこを見ても楽しそうに準備をするウマ娘達。その中でアタシは1人心底つまらなさそうな顔で荷物運びをしている。そういえば誰かとこうしてイベント事に取り組むのはいつぶりだろうか。数秒で振り返れるほど薄っぺらな人生を辿ってみるも母が死んでからそうしたものを避けるようになっていた気がする。
他人の輪の中で笑う自分の姿が想像できず、むしろ背筋に嫌な汗が流れるほどの嫌悪感が顔を覗かせる。まだアタシは友達が怖いらしい。 - 115二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 07:58:39
とげとげハートが折れて丸くなるのもいいものですぜゲヘヘ
- 116君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 08:07:17
周りの景色を見たく無くて俯いて歩いていると誰かとぶつかってしまった。ふと顔を上げるとここは階段の近くで、アタシが吹っ飛ばしたのは随分と小さな子のようだ。
「大丈夫?」という言葉が喉奥につかえて出てこない。荷物を置いて転んだ子を介抱しなくちゃいけないのに地面から支柱が立っているみたいに動けない。
「コードヘブン先輩!ご、ごめんなさい前が見えなくて」
アタシを見上げるその子の顔はどこかで見覚えがあった。確か、桜花賞でアタシに握手を求めて来た子だ。
どうしよう、謝られてしまった。謝らなければいけないのはアタシなのに。
「そういうのはいいから、早く立ちなよ。ここだと迷惑になるでしょ」
アタシの口から出たのは謝罪の言葉でもなんでも無い、むしろ冷たく厳しい言葉だった。
おおよそ、自分に非がある人間がして良い言動ではない。
「この前のレース、凄かったです!私全然追いつけなくて…でも、次こそは私が勝ちます!」
アタシに冷たくされているというのにこの子は桜花賞の時と同じく目を輝かせてアタシに話しかけて来た。こういう時、母ならなんて返すだろうか。
「ウザいよそういうの」
「えっ…」
「アタシは他の奴らみたいに馴れ合いがしたくて走ってるんじゃない。何の理由もなくただ勝ちたいからってだけで走る有象無象にアタシは負けない。アンタらは仲良しこよしやってればいい」
「次は私が勝つ?その台詞はこの後のレースで勝ってからにしなよ」
違う、母はこんなこと言わない。アタシが頑張った時やこれから頑張る時には抱きしめて褒めて応援してくれたはずだ。これではまるで……祖母と同じではないか。 - 117二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 08:44:14
他人が怖くて付き合い方が分からずヤマアラシ化してるのか
この内側にも向いてる全方位ヤマアラシのトゲが折れた時の反動が楽しみですなグヘヘ - 118君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 10:25:23
ファン感謝祭当日、アタシは1人でふらふらと学園の中を徘徊していた。こういったものの楽しみ方も学んでこなかったアタシは楽し気な周囲の輪に馴染む事ができず、何かの出店に顔を出す事も催し物に参加する事もなかった。
それでも桜花賞ウマ娘、しかも珍しい白毛のウマ娘ときたもので道を行くたびに多くの人間に振り返られ、口々にアタシの事を呟いていた。
正直、その視線は好きじゃない。アタシという個人では無く「桜花賞ウマ娘」という称号だけを見られているようで、そこにコードヘブンという個人を見てくれる人間がいないように感じられた。
もっとも、アタシは別に人に称えられたり敬われたりしたいから走っているわけではない、母の元に行くためそのためだけにレースをしている。だから個人として見られなくても何も問題はない。だけど、そういう事を1つ聞くたびにこの世界でアタシは孤独なのだとそう自覚させられて、惨めな気持ちになる。
楽しそうに出店を営み、協力して行動する同級生達。
彼氏と一緒に楽しんでいる後輩。
手を繋いで次の催し物の場所まで歩く親子。
忙しそうに走り回る裏方。
グラウンドで走る生徒達を目を輝かせて観戦する子供達。
ここには見たくないものが多すぎる。
ここには欲しかったものが多すぎる。
ここにはもう手に入らないものが多すぎる。
だからアタシはまた逃げ出した。 - 119君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 11:06:50
そしてオークス。そこにはあの小さなウマ娘の姿もあった。スイートピーでギリギリ入着して出走権を獲得したらしい。次は勝つと言っておきながらすでに敗北している彼女を見て心のどこかで落胆している自分に驚いた。
勝たなければならないレースで他人の事を考えるなどあってはならない事だ、そんな暇があるのならレースプランを考えろという祖母の言葉が呪いのように心と頭を這い回る。
土砂降りの後のターフは酷くぬかるんで、特に最終コーナーは酷い。あんなところに飛び込むのは人生の馬鹿が破滅主義者に違いない。となると、今回のレースではコーナー外側を大きく回る事を強いられるだろう。
脚の悲鳴はまだ聞こえない。不安は勝利で晴らせば良い。
曇天の下、いつも通りアタシは走り出した。 - 120君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 20:22:58
『コードヘブン1着!コードヘブン1着!』
解説者の興奮したような声と割れんばかりの歓声がレース場を満たす。その渦中のど真ん中にいるアタシは樫の女王の称号を得た事を喜ぶよりも先に、あるウマ娘に畏怖の視線を送っていた。
掲示板でアタシの名前のすぐ下に名前を刻んだ泥まみれのウマ娘。
最終コーナーで誰も行きたがらなかった内側にあえて飛び込み、喉元まで迫ってきたあの走りにアタシは恐怖していた。トゥインクルシリーズを走り始めて今日ほど明確に「負ける」と冷や汗をかいたことはない。以前は掲示板にすら入らなかった無名のウマ娘がだった数ヶ月でここまで至っている。次の秋華賞ではもしや…そう考える弱い自分にイライラする。
「だから言ったでしょ、ただ走ってるだけのアンタらじゃ私には勝てないって」
まるで負け犬の遠吠えか何かだ。勝者はアタシのはずなのに焦っているのはアタシなのだ。
「でも、影は踏めました。次こそは私が勝ちます!」
アタシにはその言葉がとても恐ろしく感じた。その恐怖を誤魔化すようにその場から逃げる。そんな自分が情けなくてため息が出る。
「影が踏めた?だから次は勝つ?バカも休み休み言って。アンタとアタシじゃレースに掛けてるものが違う、アタシに勝ちたくてレースをするのなら勝手にすればいい。だけど、そんな気持ちでレースをするような奴にアタシは負けない」
声の端が震えているのが自分でも分かった。 - 121君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 20:39:33
「そして夏合宿を迎えて、だんだん足が壊れていってるのが自覚できるようになってきて…それが現在」
どれくらい話しただろうか、先ほどまで出ていた月は分厚い雲に覆われて見えなくなってしまっていた。そのおかげで目の前にいるキンペイバイの顔がよく見えないのは、つまらない昔話をする上では気恥ずかしさが紛れて幾分か助かった。
「どう?呆れて声も出ない?……それもそうだよね、桜花賞とオークスを制覇して三冠に大手をかけた歴代最速なんてメディアで持て囃されてるウマ娘の正体が、こんな矮小で空っぽで母の願いを裏切り続けて現実から目を逸らし続けてるつまらない小娘なんだから…失望させたかな?ずっと追いかけ続けていたウマ娘の正体がこんなで」
アタシは昔話をあまりしたくないタイプだ。こんな話をしたところで心の空白が埋まる事もなければ何かを得る事もない、何より母との思い出を安売りしたくなかった。
なら何故、大して仲も良くないこの子に話したいと思ったのだろう。命を助けられたから?いや、それは違う。なら何故……答えは出ない。
「……グスッ…ンッ……」
あの子の方から鼻を啜るような音が聞こえた。目を凝らしてみれば、闇の中で顔を拭っているような動作をしているようにも見えた。
「……泣いてるの?」
「だって…だってぇ……先輩が今までどんな思いで走っていたか考えたら胸がギューって…」
よほど感受性が高いのだろうか、こんなつまらない、よくある不幸な人間の話でこんなにも涙を流すなんて。 - 122君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 20:57:08
(そういえば、アタシのために泣いてくれる人、母以外にいただろうか…)
「私、決めました」
厚い雲が海風に流され月光が再び差し込んでくる。コードヘブンの目に泣き腫らして目を真っ赤にしたキンペイバイの姿が映る。
朝焼けを切り取ったような瞳と夕焼けを切り取ったような瞳が見つめ合う。
「私、先輩と友達なります。友達になって、友達として次の秋華賞を絶対に勝ちます!」
「は……?」
予想外なキンペイバイの言動にコードヘブンは豆鉄砲を喰らったような顔をして、喉奥から素っ頓狂な声を漏らした。
「友達って…アタシに友達なんて必要ない」
「嘘です、先輩さっきお母さんの話をした時にすっごく悲しそうな顔をしていました。でもそれと同じくらい友達がいらないとか、大切な人を作らないって言ってた時も悲しそうで辛そうな顔をしていました。本当は先輩も友達が欲しいんじゃないんですか?」
「分かったような事を言わないで!」 - 123君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 21:15:50
「分かります!」
荒げたコードヘブンの声にキンペイバイも声を張り上げる。
「……私は1年生の頃に悪いトレーナーさんに騙されました。その人との出会いは私の憧れそのもので、無知だった私はその輝きの正体すら知らずに何の疑いもなくその人を信じていて、そして裏切られました。そんな甘い話ある訳なんてないのに、いっときの高揚感のために私は憧れを浪費してしまったんです」
「ちょ……もしかして1年くらい前にトレーナーが逮捕されたって噂、あれアンタの……」
他人に対して興味の薄いコードヘブンであってもその噂は聞いた事があった。中央トレセンのトレーナーが今まで多くの生徒を食い物にしていたのが発覚し逮捕、解雇され裁判にかけられたのだと。まさかその被害者が目の前のキンペイバイだったとは思いもしなかった。
「あの時は沢山の人に助けられました。感謝しても仕切れないくらい沢山の人に。でも、もし誰も助けてくれなかったら…そう考えた事があります。先輩はその私なんです。致命的なところまで進んでしまったのに誰にも助けて貰えなかった私なんです!だから、先輩の気持ちも……」
「ふざけないで!気持ちが何!?アンタには友達が仲良しこよしの仲間がいるんでしょ!それなのにいないアタシの気持ちを"もし"何で辛い言葉で片付けないで!」 - 124君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 21:30:54
聞いた事もないくらい大声で金切り声にも近い叫びを上げてコードヘブンは息を切らしていた。
「…アタシは、本当は1人が好きなんじゃない。孤高の天才なんて持ち上げられてるけど本当は人付き合いが分からないだけのただのコミュ症。アタシだって本当は………本当は………友達……欲しいよぉ……」
息を切らしながらもぽつりぽつりと呟くコードヘブンはついに"本音"を語り出した。
「でも怖い……もしまた離れ離れになったら、もし喧嘩して話せなくなったら、もし……お母さんみたいにもう会えなくなったら……そんなの嫌だよ…もう大切な人が遠くに行っちゃうのも会えなくなるのも嫌だよぉ……」
いつも顰めっ面のコードヘブンの表情がどんどんと崩れていく。目尻からはポロポロと涙をこぼし、まるで小さな子供のように泣いていた。
そんなコードヘブンをキンペイバイは優しく抱きしめる。
「ア、アタシ…アタシ本当はお母さんみたいな優しい人になりたいのに…でも、人と話すとお婆ちゃんと同じことしかか言えなくて……それが1番辛いってアタシが1番よく分かってるのに…」
思えば歳を重ねれば重ねるほど対人関係に後悔しかなかった。優しい母の娘のはずなのに口から出てくるのは、幼い日に祖母から言われ続けたようは心を傷つける言葉ばかり。治さなくてはと思う度に在りし日の祖母の言動に近づいていく。母の娘である以前に祖母の孫娘だと自覚させられる。 - 125君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 21:45:41
「お母さんが死んだ時、本当は誰かに助けて欲しかった…でも、どうやって助けを呼べば良いか分からなくて……お母さんのところに行けばまた守って貰えると思ってそれで……お母さん、アタシに健康に生きてって言ってたのに、無茶して自分の体を壊すようなことばかりして…」
もう涙を止めることはできなくなっていた。この10年間誰にも打ち明けず、ずっと心の中に溜め込んでいたものが濁流となって心の壁に入ったヒビから漏れ出し、壁を削りとっていく。
「お母さん最後に、幸せになってって言ったの…でもアタシ……今、全然幸せじゃない」
「どれだけ勝っても、どれだけ名声を得ても、それを喜んで欲しい人がもういない…いないから……」
コードヘブンが今まで走っていたのは全てもう一度母と再会するために他ならない。だがその本質は、母に喜んで、褒めて欲しかっただけなのだ。自分を認めてくれる誰かに自分を褒めて欲しい。それは幼少期から祖母に一族の後継としての重圧をかけられ、どれだけ頑張ろうと褒めてもらえなかった彼女の本当の願いだった。
だが、母の死をきっかけに大切な人を失う事を極度に恐れるようになったコードヘブンは自分を認めて親しくしてくれる人を作る事を恐れ、他人を拒絶した。誰よりも他人を求めていたのに誰よりも他人との関わり合いを恐れ、心の壁という鎧を身に纏いその中に閉じこもり続けた。 - 126君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/10(月) 22:05:49
「なら、これから作りましょう。喜んで欲しい人をたくさん」
「無理だよ…アタシ、どうやって人と接すれば良いか分からないし、アタシが傷つけた人だってきっとたくさん…それに、アタシと仲良くなりたいなんて人きっといない」
「人との接し方はこれから勉強していけば良いんです。最初はぎこちなくたってきっと上手くできるようになれます。先輩が傷つけてしまった人はいるかも知れません。でも、それ以上に皆、先輩のことちゃんと見てるんですよ?きっと皆、先輩と仲良くしたいはずです。私だってそうです」
コードヘブンの不安をキンペイバイが一つ一つ解きほぐしていく。閉ざされた鎧を一枚一枚外していく。
「皆んないなくなったりしないかな……アタシのこと好きになってくれるかな…」
「先輩が思っているよりも皆、先輩のことが大好きですよ。フジ先輩も真っ直ぐな人だって言ってました。それに、いなくなったりなんてしません。だって…」
「だって私は追込ウマ娘ですから。むしろ、先輩が逃げたって絶対に逃しません。今度こそ勝つって言いましたから。……勝ち逃げ、しないでくださいね」
「………うん」
自身の胸に顔を埋めるコードヘブンをキンペイバイはほんの少し力を強めて抱きしめた。
キンペイバイも友達に助けてもらった身だ。友達がどれだけ大切か痛いほど分かる。だからこそ、コードヘブンを見捨てられない。友達のありがたさを知っているからこそ、友達のいない孤独の辛さを理解できてしまう。
あの日、手を差し伸べてくれた多くの友のようにキンペイバイもその手を目の前で泣いている少女に伸ばした。 - 127二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 00:37:39
とりあえず一安心かな?
でも根本の問題が解決してないし、どないしょ? - 128二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 08:19:37
コーちゃん(息が出来ない……ここは海の中?ちがうこれは山だ……遥か高き双峰の……人間が穢してはいけない聖峰……からだがかるくなってきた……てんごくはここにあったんだ……ガクッ
- 129君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/11(火) 19:40:03
月が照らす夜の森を2人のウマ娘が歩く。
長身の白毛のウマ娘は泣き腫らして真っ赤になった目を擦り、ぐすぐすと鼻を鳴らしている。
青いインナーカラーの青毛の小さなウマ娘はそんな白毛のウマ娘の手を取り、寄り添うように歩っている。
一見、仲のいい姉妹にも歳の近い親子のようにも見えるが、その実、泣き疲れて足取りが覚束ない白毛のウマ娘を小さなウマ娘が手を取って先導しており、道が荒れていればその都度声をかけてゆっくり一歩ずつ確かに歩みを進めている。
「アンタに先を行かれたのはこれが初めて」
「油断していたら次も私が追い越しちゃいますよ」
「アンタの背中を見るのはこれっきり」
出発した時の剣呑な雰囲気は最早感じられず、どこか遠慮している空気感はまだあれど、2人の姿は「友達」と言って差し支えないだろう。 - 130君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/11(火) 19:59:14
「次の秋華賞もアタシが勝つ。アンタは特等席で新しいトリプルティアラを頂くものが現れるのを見れる」
強気な勝利宣言。それ自体はいつものコードヘブンと変わらない。だが、以前までは寒々しく他人を傷つけるように宣言していたそれは今はすっかり丸くなり、笑顔さえ滲ませるようになった。
「残念ですけど、次の秋華賞は私が勝ちます。そうしたら私は先輩の三冠を阻止したライバルウマ娘で、先輩の最初の友達ですね」
その言葉にコードヘブンは驚いたように目を丸くすると、くすりと笑った。
「なら尚更負けられない、決めたから……友達になりたいって、アタシから言うってそう決めたから」
間も無く山道を抜ける。この肝試しが終われば間も無く夏合宿も終わり、2人は秋華賞に向けて自分と再び向き合う事になる。再び相見えるのは秋華賞のターフの上だろう。
繋いだ手は解ける。
だが、コードヘブンもキンペイバイもその手がもう一度繋がると信じて疑っていなかった。いつか再び繋がるその日まで2人は走り続ける。
出口の月明かりに2人は並んで駆け出した。 - 131二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 23:03:26
母性やな…
- 132二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 01:30:35
やっぱ本心を吐露できる相手がいるってのはいい事だな(なんでも言っていいわけじゃないけど)。
- 133二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 10:45:22
ゲスい大人に騙されてた子がこんなに立派になって……(感涙)
- 134二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 10:50:08
なんだ女神か?
- 135二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 12:30:42
やっぱおっぱいはすごいな
- 136二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 14:18:19
- 137二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 20:24:02
ペイバイちゃんやっぱその身体であのおっぱいは凶器だよ。ミギミミちゃんたちの気もそぞろだよ
- 138君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 20:26:11
夏合宿が終わり、2学期が幕を開けた。
ここ数年続く異様な酷暑は今年も健在で、9月だというのに気温は下がるそぶりを見せず、ギラギラと照りつく太陽のせいでコンクリートの地面の上に陽炎まで現れている。
秋華賞をあと1ヶ月後に控えたキンペイバイはレースに向け追い込み期間に入っていた。
1.ふわふわで買収されたアヤベさんが駆けつけてくれたぞ!
2.トレーナーに頼まれてタイシンがトレーニングを付けてくれるらしいぞ!
3.謎の笹針師があらわれた!
dice1d3=3 (3)
- 139君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 20:56:31
最近、トレセン学園で不審者の目撃情報が多数挙げられていた。なんでも怪しげな仮面をつけ、白衣を見に纏った女性が出会ったウマ娘に手当たり次第にブスッ!とやっていくらしい。
キンペイバイも最初聞いた時は東京には変な人がいるものだと思う程度であったが、その後も学園での不審者の目撃例は後を絶たず、豪を燃やした生徒会によって監視が徹底されたり、どうやあの特徴を持つものに取り調べを行ったりしていた。
この際、とあるウマ娘ATが怪しまれて取り調べを受けたのだが、不審者と関わりは無かったものの全身が発光する試薬の問題性を指摘され近々そういうのに詳しい人達が調査に入るらしい。
そんな事もあり未だ行方の掴めない不審者の噂はもはや記憶の片隅で風化を待つだけの存在になっていた。
今日、この日までは。
トレーニングに行こうとグラウンドへ続く裏道を歩いていたキンペイバイの前に突如として白衣の女性が身を踊り出したのだ。ピッタリとした赤いドレスの上に白衣、顔にはオペラに出てきそうな仰々しい仮面。間違いない、噂の不審者であった。 - 140君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 21:41:19
「ふ、ふ、ふ……ふしんっ……!」
「おぉ刺ヶ美ちゃん、久しぶりじゃのぉ」
あまりの衝撃につい叫びそうになるキンペイバイ。その叫びが喉から出切る前にどこからともなく現れたじじトレが不審者に声をかけた。
「じじトレさん!ご無沙汰してま〜す」
「1年振りくらいかの、姉妹共々元気にやっておるかの?」
「おかげさまで大〜繁盛。じじトレさんは相変わらずお元気〜?」
「儂はまだバリバリの50代じゃぞ、若いもんには負けてられんわい」
親しげに話す不審者とじじトレ。その光景にキンペイバイは困惑しっぱなしだった。
「あの、こちらの方は……」
「おっと、儂としたことが紹介を忘れてしまったわい。この子は刺ヶ美ちゃん、お嬢さんの勝負服を作った衣咲美ちゃんの姉じゃ」
「あなたキンペイバイちゃんよね!活躍は常々聞いてるわ〜!持ち味はコーナリングと最後の直線加速!ティアラ路線で絶対女王コードヘブンちゃんともバチってる強豪ウマ娘!あたしファンなのよ!」
「あ、ありがとうございます……」
これまた凄い人が来てしまったとキンペイバイは苦笑いするしか無かった。 - 141君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 21:59:00
「あ、そうじゃ。この際だから刺ヶ美ちゃんに針治療でもしてもらうかのお嬢さん」
突然思いついたようにそんな事をいうじじトレ。何か恐怖を感じたキンペイバイはジリジリとその場を離れようと後退りする。
「あ、あの私……針を刺すのは怖いなぁ〜って…」
「あぁなんじゃそういうことか、安心せい。なんてったって刺ヶ美ちゃんはルドルフちゃんの治療を担当したことのある腕利じゃからな」
「い、いやそういうわけじゃ…」
後退りを続けていると不意に何かに当たってしまった。恐る恐る振り返ると、頭上にはあの仮面の女の姿が…
「ワォ、あんし〜ん☆」 - 142君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 22:21:44
保健室へと連れて行かれたキンペイバイはベットに寝かせられついに逃げ場がなくなってしまった。
チャキチャキと刺ヶ美が笹針を準備する音が恐怖を無駄に煽り、震えが止まらなくなる。キンペイバイは注射を泣くほど怖がるようなタイプではないが、注射自体は嫌いだしそれよりも太い針が刺さるなんてもってのほかである。
「現地で遠くから見る機会はあったけど、実際に見ると小さな体にミッチリと筋肉が…」
「もう一思いにやってください!」
ブスッとするのは?
1.強いウマ娘になれる秘孔
2.レースで勝てる秘孔
3.元気で健康になれる秘孔
4.魅力アップの秘孔
5.なんでもいいのでもう一思いに全部やってください!
dice1d5=5 (5)
- 143二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 22:35:52
笹針師お前マジで育成で一回も成功した試しがないんだけどなんで?
- 144君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 22:37:09
施術が終わり針の恐怖から解放されたキンペイバイ。ベットから立ち上がろうとしたその瞬間、今までにない違和感に気づいた。
体が圧倒的に軽いのである。物理的に軽くなっているわけではない。ただ今までなら多少なりとも大きすぎる胸に重力がかかり腕に力を入れなければ上体を起こせなかったのに、特に力を入れなくても立た事でできるようになっていた。
「今回突いたのはレースに勝てる秘孔、強いウマ娘になれる秘孔に元気モリモリの秘孔と魅力アップの秘孔、さらにさらにおまけで色んなところも突いておいたわ〜!」
「体がすごく軽いです」
「それは大成功の証よ〜!"いいとこ入った!"から今までの貴方とは別人に大変〜身。魅力アップの秘孔のおかげですっごくキラキラよ!今なら気になるあの子もイ・チ・コ・ロ♪」
実際、今回の笹針治療は大成功であった。元々素質はあれど長期的なスパンで鍛えなければなかなか才能が発現しづらい体質だったキンペイバイの才能をいくつも覚醒させており、彼女がすでに習得した一部の技能はその威力を一段上へと押し上げられているものもある。
「腕を上げたの刺ヶ美ちゃん」
こうなる事を分かっていたと言わんばかりにじじトレは後方腕組みしていた。 - 145君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 22:50:56
「実は最近まで全国の地方トレセンを行脚して回ってて、この街に帰って来たのは久しぶりなのよ」
ズズズとほうじ茶を飲みながらこれまで行ったトレセンで施術をしたウマ娘達のことを話す安心沢。じじトレのトレナー室は他のトレーナー室とは違い小上がりの和室のあり、そこに設置された掘り炬燵を囲む形だ。
「そういえば安心沢さんはルドルフ先輩にも針治療をしたとお伺いしましたが本当なんですか?」
「本当よ〜ルドルフちゃん一時期筋肉痛に悩まされてた時期があってね、どうにもそれが原因が分からなくてあらゆる手段を試してもダメだったからダメ元で一か八かであたしがルドルフちゃんを診せてもらうように懇願したのよ」
少々思い描いていたストーリーとは違うが嘘はついていないように思える。ルドルフが最後まで走り抜けていたこと、そして自分の変化を考慮すると確かに目の前の仮面の針師は腕利きのようだ。
それならばとキンペイバイはある考えに思い至る。
「安心沢さん、もう1人だけ見て欲しい人がいるんです」 - 146君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 22:59:36
「絶ッッッッ対にイヤッッッ!!」
凄まじい力で部屋の柱を掴んで離さないコードヘブンはキンペイバイが全力で引っ張ってもビクともしない。
「先輩の脚、きっと良くなりますから!」
「アタシ注射だけは絶対に嫌!嫌なものは嫌!」
頑なに対抗し続けるコードヘブン。その姿勢は無駄によく、柱にちょうど直角になっていた。
「これじゃ埒があかない……安心沢さん!」
「任せて〜☆キンペイバイちゃん、そのままコードヘブンちゃんを抑えててね」
コードヘブンを柱から引き剥がすのは無理だと判断したキンペイバイはコードヘブンの体をホールドし固定するように持ち替えると、安心沢にバトンタッチし、この状態でブスッとするように頼んだ。
「えっ、ちょっ、やめ…やめろぉぉぉ!」
「大丈夫☆痛みは一瞬効果は一生、そ〜れブスッ☆」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」
その時のコードヘブンの悲鳴はそれはそれはよく響いたそうな。 - 147二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 23:01:53
ギャグ堕ちが早くてたすかる
シリアスキャラのギャグ描写は心に沁みる…… - 148君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/12(水) 23:20:58
「うぅ……もうお嫁にいけない…」
「大丈夫です、先輩ならきっと素敵なお嫁さんになれますよ」
治療が終わってよほど怖かったのかコードヘブンはキンペイバイの胸に顔を埋めて泣いていた。ひょっとすると夏合宿の肝試しの時よりも弱々しいかもしれない姿を晒していたが、それを守るようにキンペイバイが彼女を抱きしめて包み込んでいた。
「さっき突いたのは"全身の筋肉のコリをほぐす秘孔"と"骨密度を上げる秘孔"の2つ。少しは筋肉を動かしやすくなってるはずよ」
針治療道具をしまいながら安心沢は語る。その口調は先程までのイケイケで独特な感じはなく、真面目で病院の先生のようでもあった。
「コードヘブンちゃん、あなたのお体の事情は聞かせてもらったわ。できる限りはやってみたけどあたしは針治療師、全身の骨を今すぐ強くしたり絶対に怪我のない体に作り替えることはできないわ」
「それくらいは…」
「だからこれからは自分の体をちゃんと大切にして欲しいの。全国行脚の道の途中で頑張りすぎて針治療ではどうにもならなくなってしまったウマ娘ちゃん達をたくさん見てきたわ。あたしはその中の1人にあなたがが加わって欲しくはないの」
体を壊すウマ娘というのは特段珍しい訳でもなくどちらかといえばありふれた存在である。だが体を壊してもリハビリや治療でなんとかなる場合がほとんどであり、安心沢の言う頑張りすぎたウマ娘というのはそういうものでどうこうできなくなってしまった最悪のパターンになる。
「もしあなたがこれからも走り続けたいのなら、あたしの針治療でどうにかできる範囲を超えちゃダメよ。それが守れるなら、あなたが最後まで走り抜けられるようにあたしに頑張らさせてちょうだい」
「……卒業まであと2年くらいありますよ。費用は賞金払いで」
「ワォ、頼もし〜い☆」 - 149二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 04:45:35
このレスは削除されています
- 150二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 09:30:55
- 151二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 14:00:53
hs
- 152二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 16:18:55
キンペイバイちゃんの何に顔を埋めるのいいぞ…
- 153君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/13(木) 19:42:15
そして訪れた秋華賞当日。
トリプルティアラ達成をあと1勝とする歴代最速の女王コードヘブン。如何なる者にも影さえ踏ませないその圧倒的スピードに17人のウマ娘達がどう喰らいつくのか。
新たなら伝説を目にしようと京都競馬場には多くの人が訪れていた。
京都競馬場の天気
1.快晴・良バ場
2.曇り気味・良バ場
3.曇り気味・重バ場
4.雨・不良バ場
5.快晴・良バ場・酷暑
dice1d5=5 (5)
- 154君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/13(木) 20:14:07
10月だというのに真夏ばりの暑さはターフから水分を奪い、遠くには陽炎さえ見える。
間も無くゲートインの時刻、そろそろ出走するウマ娘達が集まってくる地下道にはひと足先にコードヘブンとそのトレーナーの姿があった。
「いよいよだね、これに勝てば君はトリプルティアラウマ娘だ」
「そうなったらトレーナーは新人にしてトリプルティアラの担当だね。一生自慢できるんじゃない?」
あの夏合宿から少しずつ前向きに変わっていったコードヘブンは今やこうしてレース前にトレーナーと軽口を言い合えるようにまでなっていた。
「……ここまで来て僕から言うことは何もないよ。とにかく全力を尽くして後悔のないように。それと、必ずここへ無事に戻ってくること」
「そんなのは当たり前、全力を尽くして勝って、天国に一歩近づいて見せる。……それとねトレーナー、頼みたいことがあるんだ」
一歩前に踏み出してトレーナーに背中を見せるコードヘブンは振り返るとどこか後ろめたそうに俯く。
「謝りたいんだ、今までアタシが傷つけてしまった人達に。トレーナーを含めてね。でも、今更どうやって謝っていいのか分からなくて……だから、謝る練習付き合ってくれないかな」
「勿論!君の手助けをする事がトレーナーの務めだからね!」
「……ありがとう」
そう言って微笑みを残してコードヘブンは光の中へと歩み出した。 - 155君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/13(木) 21:19:43
「あらぁ!──くん!?大きくなったわねぇ!」
「ご無沙汰しています、元気そうで何よりです」
観客席ではキンペイバイの母と少年が久方ぶりの再会の挨拶を交わしていた。キンペイバイから少年のことはたまに聞いていたが、想像よりもずっと大人びてきている少年の成長をキンペイバイの母は我が子のように喜んだ。
「どうウチの子は、美人に育ったでしょ?あんな可愛い子世界中探してもいないわよ。どう?もし彼女がいないならあの子を…」
「あっいや、そのぉ……」
グイグイと娘の押し売りをする母に少年はタジタジになっていた。若干14歳、この手のものにはまだまだ弱いのだ。
「御二方、お嬢さんがゲートに入りますじゃよ」
手招きで2人を呼ぶじじトレは少年にとってはまさしく天からの助け舟、観客席の手すりに駆け寄って話題をキャンセルすれば少し罪悪感は残るものの少年の心の安寧は守られる。
「(キーちゃん、本当に凄いなぁ…‥こんな場所で走れるなんて)」
手すりを握る手に力が入る。
少年の瞳にはどこか羨望の眼差しが混ざっていた。 - 156二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 08:26:14
ここ数年10月後半下手したら11月まで暑いことあるよね
- 157君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 10:54:21
ゲート入りの定刻時間、秋華賞の大舞台を彩る18人のウマ娘達が煌びやかな衣装を身に纏いターフの上へと現れる。
先頭を征くのは桜花賞、オークスと2冠を獲得しトリプルティアラに王手をかける最速の女王コードヘブン。露出度の高い姫騎士のような勝負服を見に纏い、白銀のアーマーが陽光に照らされ光り輝いている。
彼女に続くように続々と名だたるウマ娘達が観客の声援と共にゲートへと歩んでいく。
紫苑ステークスを1番人気1着で駆け抜けた快速テュランダイナ、昨年の阪神ジュベナイルフィリーズを制したフェルティローザ、絶世の美貌と高い実力を兼ね備えたファン投票上位常連リリスファタール、オークス以降メキメキと頭角を表してきている褐色肌の注目株プリムモカ。
そしてオークスで常識破りの超重馬場のコーナー内に飛び込んでコードヘブンにあと一歩まで迫ったミニマムボディの白金ウマ娘キンペイバイ。
誰が勝ってもおかしくない、ティアラ路線の強豪達がこのレースに集結していた。
ゲートに入る直前、振り返ったコードヘブンと目が合う。
その瞳には以前のような勝利への妄執はなく、代わりに燃えたぎるような覚悟と執念が渦巻いていた。
その瞳にキンペイバイも覚悟と勝利への渇望を込め返す。
全員のゲート入りが確認され、レース会場に一瞬の静寂が満ちる。
今日ここにいる誰もが勝ちに来ていた。
されど勝者はただ1人。
残された1つの宝冠を求め、闘志を燃やすウマ娘達の前に閉じられたゲートが今、開放された。 - 158二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 14:45:57
保守あげ
俺も少年になっておっぺぇのでかい同級生に脳破壊されたいものじゃ - 159二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 19:00:27
でもその同級生1年生の頃に最初の担当トレーナーに脳破壊されて恋愛は今はいいかな…ってなってるぞ
- 160君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 20:13:27
1.コードヘブンが先頭を行き、それを他のウマ娘が追随するいつもの形
2.コードヘブンのさらに先頭を行くウマ娘が!
3.コードヘブンが先頭より少し手前につけている!?
dice1d3=2 (2)
- 161二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 20:35:46
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- 162君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 20:42:24
レースはコードヘブンが絡んだいつものレース通り……とはならなかった。
完璧なスタートを決め好位置についたと思われたコードヘブンの先を行くウマ娘がいたのだ。
彼女の名はテュランダイナ、コードヘブンと同じ逃げウマ娘であり世代随一のスタートダッシュが評価されているウマ娘である。
「(上手い…っ、"コンセントレーション"の域まで鍛え上げられてる…!)」
「"先手必勝"ォ!悪ィが最後の冠はアタシが貰う!」
金髪のポニーテールを大きく揺らしながらテュランダイナはさらに速度を上げる。驚異的な持久力で最初から最後まで高スピードを維持し続けるタイプの逃げウマ娘であるコードヘブンとは違い、テュランダイナは序盤に自身の持つすべての力で持って集団を引き剥がし、その優位が追いつかれる前にゴール板を走り抜けるいわゆるロケットスタート型である。
ともすれば体力切れで自爆してしまいそうな走り方ではあるが、先頭との距離をあまり離されたくないというウマ娘の競走心理により、後ろのウマ娘達はテュランダイナに"合わせよう"とするのだ。そうなれば通常のレースプランニングなどあってないようなものであり、彼女もまたコードヘブンと同じくレースクラッシャーと言えるだろう。 - 163君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 20:55:54
「でも、それじゃアタシは止められない!」
コードヘブンが踏み込む!
オークスとは比べものにならない速度でテュランダイナへと迫っていき、遂に真横へと並んだ。
テュランダイナの真紅の瞳が驚きで丸くなる。無理もない、今までコードヘブンは大逃げウマ娘で通っており、前に行く道を封じられては敵わないとネットではよく対策議論が持ち上げられていた。
だが、多くの人間が勘違いしていたことだが、コードヘブンは大逃げだから強いのではなく、"速すぎるから大逃げ"でしかないのだ。その強みを知っているコードヘブンにとってどれだけ最序盤に差をつけられようとも関係ない、ただ自分の速度で走っていればそれでレースに勝てるのだ。
本来ならばテュランダイナとの勝負に付き合うこともないのだが、前を走られて少し不満に思ったのか涼しい顔で抜いていく。
「…お先に失礼っ!」
「なっ……クッソ!"トップランナー"気取りかよ!」
2人の逃げウマ娘の意地の張り合いから始まったレースはコーナーに入る前から互いの最高速で殴り合うようなレース展開となり、後ろのウマ娘達のペースを乱しに乱しまくっていた。 - 164君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 21:16:26
レース中盤の展開
1.コードヘブンを先頭にバ群がかなり縦に伸びている。先頭では未だテュランダイナとコードヘブンが先頭争いしている
2.リリスファタールのデバフコンボ!スピードが遅くなる!
3.フェルティローザが好位に付け虎視眈々と機会を伺ってい、プリムモカも足をためている。
dice1d3=2 (2)
- 165君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 21:34:02
このまま高速展開になると思われたレースは第3コーナーに差し掛かるかといったところで急激にその速度を落とし始める。
もちろん怪我や落鉄などがあった訳ではない。
ただ皆一様に魂を逆撫でされるような不快感と理由のない焦りにペースを乱され、速度を維持できなくなっていた。
レースにおけるテクニックは数あれどその中でも特異なものがあった。いわゆる『デバフ』と呼ばれるそのテクニックは正確に言えば再現性のある技術という訳ではない。
このテクニックは使用者のオーラのようなものが周囲のウマ娘に影響をもたらしているものだと考えられている。
その本質はウマソウルに起因すると説く者もいるが、レース中にのみ発現するこの異能とも呼べるテクニックについてはまだ研究があまり進んでおらず、それを体験したウマ娘達からの証言以上のものは未だにない。
そんなデバフを使いこなすのは絶世の美貌を持つ美しすぎるウマ娘リリスファタール。彼女は高い実力を持っているが、突出した走りの技能は身につけていない。その代わりに周囲のウマ娘に多大な影響をもたらすデバフを備えている。まさしく名前の通り「惑わす夜の魔女」である。
彼女のデバフは強烈であり、先頭を走っていたコードヘブンとテュランダイナはまるで重しをくくりつけられてように著しく速度を落とし、周囲のウマ娘達も少なからず速度を鈍らせ馬群が徐々にコンパクトになっていった。 - 166君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 21:49:45
そしてレースは最終コーナーへ。
ここを抜ければあとは数百メートルの直線を残すのみ。各ウマ娘が仕掛けるタイミングを狙って虎視眈々とその機会を待ち、わずかな勝利の糸を手繰り寄せようと全神経を集中させている。
先行を走るフェルティローザは現在3番目、テュランダイナとコードヘブンによる高速レースは彼女の望む展開ではなかったが、リリスファタールによるバ群の圧縮で勝利の道が見えてきた。
中盤を走るプリムモカは前のウマ娘に阻まれなかなか抜け出せずにいる。
リリスファタールはデバフを継続中ではあるがこちらもバ群からの抜け出す道を虎視眈々と狙っている。
現在2番手コードヘブンのすぐ後を追うテュランダイナはなかなか越せないその背中に苛立ちを感じていた。彼女のレースプランの性質上、こうした永遠と続く競り合いは極めて不得意であり、消耗し切った体力を根性で誤魔化しているような状態であった。
そんな中先頭を走るコードヘブンは酷暑で上がった体温により発汗はしていても息の上がるそぶりは見せていない。
まるで何かを待っているかのようにただ先頭をキープし続ける - 167君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 22:00:12
そしてそれはやって来た。
彼女以外のウマ娘が高速展開とデバフによりペースを乱され本来の走りが出来ていない時に、ただ1人だけそれに当てはまらないウマ娘がいた。
何度も何度も格上の先輩ウマ娘達に距離適正、脚質を問わず挑み続けていたそのウマ娘だけが"自分のレース"を貫き通すという何よりも1番大事な技能を完璧に身につけていた。
バ群最後尾、レース開始から「18番目」だったそのウマ娘が最終コーナーを抜ける直前より猛烈にスピードを増してぐんぐんと順位を上げていく。
今まで前にばかり気を取られすぎていて多くのウマ娘は忘れていた。そのウマ娘の存在を。あの強烈な追い上げが持ち味の小さな小さなウマ娘の姿を。
「来たねッ!!」
一瞥した背中越しに見えたその青い輝きにコードヘブンの全身の血が沸騰したように熱くなる。待ち望んだその姿を見て口角を釣り上げ笑う様はまさに女王。
そんな女王に挑まんとキンペイバイが抜け出した! - 168君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 22:28:56
バ群から抜け出し持ち味の圧倒的コーナリング性で加速しながら直線に入ったキンペイバイ。残りはあと300m、ジリジリとコードヘブンの首に近付いていく。
「(アタシは本当はこのレースに勝ったら走れなくてもいいと思っていた。トリプルティアラ、歴代でも両の手で数えられるほどの数しかいない存在。そんな存在になればきっとすぐに天国に行けると思っていたから)」
残り200m。2人の差は2mほど。前方にはコードヘブンとテュランダイナの姿、そのすぐ後ろにはフェルティローザもいる。しかし、テュランダイナとキンペイバイの距離は1m未満、いつ抜き去ってもおかしくない距離だ。
「(でもあの日、あんたにここのに溜まってたものを打ち明けて、久しぶりにたくさん泣いたらほんの少し心が軽くなった。繋がりを恐れて孤独になっていたアタシに手を伸ばそうとしてくれた姿がお母さんの姿に重なって見えていたの。おかしい話だよね、歳下の子にお母さんの面影を感じるなんて)」
あと100m。ついにテュランダイナを抜き去った。
「(アタシはあんたに感謝がしたい。しても仕切れないと思うけど、たとえ一生かかったって私が貰った温もり、癒し、希望、そういうものを返したい。だからアタシはこのレースに勝つ。勝ってあんたにありがとうを言うために!)」
残り100mを切る。もう1位争いはコードヘブンとキンペイバイの2人だけのものとなる。最後の一息、キンペイバイが叫んだ。
「ずっと貴女の後ろ姿を見てきた!」
「最初は影さえ踏ませてくれない先輩に勝ちたいと目標を持った!オークスの時は限界まで頑張っても勝てなかった先輩の強さに羨望さえ抱いた!それは今でもそう、先輩は私の目標で憧れです!」
「…本当の先輩はちゃんと弱いところもあって、それでも立ち上がれる人なのだと知りました。先輩!貴女は強いです!だから今日!私が勝ちます!先輩とこれからもずっと走り続けたいから、だから私が勝ちます!」 - 169君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/14(金) 22:30:05
雄叫びを上げる2人。しかし、勝者はただ1人のみ。
ゴール板を駆け抜けた時、2人はほぼ横一直線になっていた。観客にはどちらが勝者かどうか見当がつかない。
それはキンペイバイ達も同じでゴールを駆け抜け、上がった息を整える事さえ忘れて掲示板を見る。そこに記された事実を受け止めるため、大きく深呼吸の後に目を開いた。
キンペイバイ dice1d2=1 (1) 着
- 170二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 23:31:40
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- 171二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 06:07:53
おめでとう。
- 172二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 13:27:20
やっと追いついたんやなって
- 173君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 15:59:37
暑さと酸欠でうまく思考のできない脳に必死に酸素を送り視界の明瞭さをなんとか取り戻そうとするたびに疲労しきった筋肉が悲鳴をあげて胸を締め付ける。
遠くに割れんばかりの拍手と歓声らしきものが聞こえる。それは現実感がなくて上に引っ張られるような浮遊感と共に夢枕の囁きの一つのようにも思える。
だがしかし、少女の瞳の先に映る電光掲示板に表示された名前は少女の現実となり、地上へと疲労による脱力という重しが彼女を地面に縛りつける。
1.勝利したことは理解できているがそれに対する感情の出力ができず他人事のようにただ掲示板を眺めている
2.勝利の叫びが喉元まで出そうになったところでコードヘブンへの心配が勝り彼女の姿を探す
3.息を整えているはずなのにどんどん息が乱れて嗚咽となり大粒の涙が溢れてきた
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- 174二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 19:46:33
これで胸をはってライバルと言えるか
- 175君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 20:23:56
勝利の叫びも気の利いた言葉も夜な夜な考えていた勝利のポーズもそのどれもを忘れるくらいの衝撃が少女の頭からつま先までを駆け巡る。
勝った、GⅠレースを、コードヘブンとの勝負に、少女はついに勝ったのだ。
嬉しくて嬉しくてたまらないはずなのに、吐き出す吐息は震えて、深呼吸は水音まじりの嗚咽となり目から大粒の涙を流した。おおよそ勝者にあるまじき姿であるが、少女はその全てを止める術を持ち合わせていなかった。
やがては少女を苛烈な陽光から守るように人型の影が覆う。見上げればそこにいたのはコードヘブンであった。
「なんで泣いてるのさ、勝ったのはあんたでしょ」
「だ゙っ゙で…… ゙だ゙っ゙でぇ゙ぇ゙………」
涙の止まらないキンペイバイの手をコードヘブンが掴むとそのままヒョイと持ち上げ立たせてしまう。頭垂れるのは勝者のすべきことではないと2冠の女王が掴んだままの新たな女王の腕を点高く掲げる。
その光景に歓声を上げる観客達。コードヘブンのトリプルティアラが達成されなかった事に落胆するものは少なからずいた。だがしかし、今日ここで最高のレースを演じそして勝利を手にしたキンペイバイを観客達は祝福していた。
「おめでとう」
「ばい゙………!」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔でキンペイバイは大きく笑った。 - 176君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 20:44:49
ライブも終わり観客達が帰路に着く頃キンペイバイ達はコードヘブンの控え室に集まっていた。理由は言わずもがなコードヘブンの脚の事である。
部屋の主のコードヘブンが椅子に座り、その周りをキンペイバイ達が囲んでいるという状況だった。
「多分まだ壊れていないと思う。まだあと一回は走れるかな。あの笹針師のおかげだよ」
そうへろへろと口角を上げるコードヘブンの様子からそれが嘘だとは思えなかった。あと1回だけなら耐えられるのは真実だろう。そしてその1回で確実に壊れることもまた事実なのだ。
「アタシ、しばらく休む事にする」
コードヘブンのその一言に一同は衝撃を受ける。あれだけ天国を目指し文字通り命懸けでがむしゃらに走っていたコードヘブンが休むと言い出したのだ驚くのも無理はない。
「それって、私が秋華賞を勝って先輩の目標を奪ったから……」
「違う。あんたが秋華賞を勝ったのには感謝てるんだ」
もしや自分のせいでと頭を下げようとするキンペイバイをコードヘブンは制止する。
「確かにあんたに負けて今すっごく悔しい、今すぐ泣いて暴れたいくらいに悔しいよ。でも、それ以上に今度はあんたに勝ちたいって思ってる。本気のアタシで本気のあんたに」
一瞬天井を見上げる。そうしなければ涙が溢れてしまいそうだったから。強く閉じた瞼で涙を封じ、再び開いたコードヘブンの瞳には燃え盛るような闘志が宿っていた。
「だからちゃんと休んで足を万全の状態にしてそしてからまた走るよ。現実に目を背けるためじゃなくて、アタシの心がしたいと思うようにね」 - 177君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 21:02:23
「私もそれまで待ち続けます。友達として、ライバルとして」
キンペイバイなりの決意を込めた言葉であったがコードヘブンはそれを聞いてポカンと口を開けていた。
「あ、あのやっぱり私なんかがライバルなんて烏滸がましかったですか……?」
「だってアタシまだ友達になってってあんたに言えてない……」
えっ、と素っ頓狂な声がキンペイバイの口から漏れる。恥ずかしそうに俯くコードヘブンの姿があまりにも普段と違いすぎて面食らいそうになる。
「……私はその、あの肝試しの時にもう友達になったとばかり…」
「アタシと友達になってくれるの?」
「友達ってなろうとしてなるんじゃなくていつの間にかなってるものじゃないですか、先輩?」
「そっか、そうだったんだ……なぁーんだアタシ、友達作れたじゃん…」
コードヘブンの胸中を駆け回る感情の動きはそのまま彼女の表情に現れていた。右目から小さな涙を一つ溢すと初めてニコリと少女らしい笑顔を見せる。
友達でライバル、先を行く者と追う者、正反対な2人が交わしたこの繋がりは今後一生消えることはないだろう。
いつかターフの上での再戦を約束し、キンペイバイの激動のティアラ路線が幕を閉じた。 - 178君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 21:42:59
秋華賞が終わり数週間後、世間で何かと話題なあのイベントが今年も開催される時期になっていた。
そう、ハロウィンである。
トレセン学園にもハロウィンのイベントは存在しする。それが寮合同のハロウィンパーティーである。その日は皆思い思いの仮装をしてお菓子を配りあったり、驚かしあったりして楽しむのだ。
キンペイバイのハロウィンパーティーへの意欲
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- 179君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 21:55:22
秋華賞を勝ちたちまち世間にその名が知られるようになったキンペイバイであったが、実際の生活が激変したわけでもなくそれまでと変わらない普通の生活を送っていた。
ハロウィンパーティーにもそれなり以上には乗り気であり、特技であるコスプレの技術を遺憾なく発揮するため今日もミシンが唸りを上げる。(ちなみにこれはレースに勝ったご褒美に賞金で買ったもの)
世間からのキンペイバイの評価
1.酷暑で汗をかきやすかったこともあり、シースルー部分が肌に張り付きπの形が丸わかりになっている動画が拡散されている
2.コードヘブンがキンペイバイの手を取り勝者を称えるポーズをしたため彼女ら2人のカプ創作が日々増産中
3.最終コーナーからの爆発的加速力をバズーカ、ミサイルやロケットランチャーのように例えられ、ファンの間でも話題になり、海外サイトでは「バズーカガール」と呼ばれ始めている。
4.桜花賞と秋華賞での体の成長をまとめたツイートがプチバズりしていた
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- 180君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 22:40:49
そんなわけで絶賛コスプレ衣装制作中のキンペイバイであった。
コスプレの方向性
1.アニメキャラ
2.ハロウィンらしいお化けコスをアレンジ
3.メイドや警察官、狐お面巫女風やキョンシーなど今風のハロウィンコス
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コスプレ衣装の製作量
1.自分1人分
2.数人の親しい人たちの分も新造
3.結構な人数のハロウィン衣装の手直し中
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- 181君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 23:07:20
「そ、その衣装! プリファイ☆'s(スターズ)のプリンセスシャリオですわよね!?すっごい再現度…まるでテレビの中から飛び出して来たようですわ!」
キンペイバイの衣装を見てカワカミは大興奮していた。
「えへへ〜こういうニチアサアニメのフリフリドレス系は作るの初めてで結構苦戦しちゃったんですよね。時間をかけたからその分今までの衣装の中でも最高傑作です!」
キンペイバイが作っていたのは大人気シリーズプリファイのテレビシリーズ3作目にあたるプリファイ☆'sの主人公、北極星からやって来た星の姫プリンセスシャリオのものである。普段彼女が作るメイド衣装やサイバーパンク系アニメとは別物すぎる衣装ゆえに制作に難航し、なんとかパーティーまでに間に合わせることができた。
ちなみにキンペイバイにとってのプリファイ直撃世代がプリファイ☆'sである。
「プリファイ☆'s……シャイニープリンセスに導かれ地球にやって来たプリンセスシャリオが仲間との交流を通じて強くなり、強敵達に立ち向かっていくストーリーラインはシンプルながら価値観の違う他者との交友や、立場の違いからくるすれ違い…最高の一作ですわ」
「分かります。特に中盤で敗北と同時に命を失う運命だったリバースプリンセスが"レースの勝者はその背中に負けた他のウマ娘の夢を呪いとして背負っていかねばならないのよ"って今際の際に叫ぶシーンは今見ても圧巻ですよねぇ…」 - 182君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/15(土) 23:13:07
その後のキンペイバイ
1.カワカミと濃厚なプリファイトークを楽しんだ後、お菓子の交換をしたり、振る舞われたケーキを食べたりしてパーティーを楽しんだ
2.コスプレ写真を自撮りしてSNSにあげたら万バズした
3.他の子達からも衣装を褒められ来年は私の分も作ってと依頼が殺到
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- 183君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/16(日) 08:43:09
次どうしましょうか
- 184二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 08:55:15
秋華賞のあとの勝ち鞍って決まってたっけ
エリザベス女王杯とか?近すぎるか - 185君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/16(日) 15:59:04
実は勝ち鞍は何も決まっていません
というかストーリー何も決まっていないところから無計画に始まってるのでこれからどう転がすかも決めてません
割とこのスレの皆さんが考えてくれたアイデアが超大事だったりするのでこういうのが見たいとかこんな展開はどうだとか提案してくれると嬉しいです
あと、コメントが増えるとやる気が上がります
- 186二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 16:09:27
いっそ背伸びしてJC行ってみる?
- 187二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 16:45:20
- 188二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 16:58:12
- 189二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 17:03:59
やっと勝てたけどそれは牝馬の中での話で雄と一緒に走ったら自分が雌である事実を突きつけられるくらい蹂躙されちゃうんやつ
またの名をわからせ - 190君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/16(日) 17:11:50
では>>195までキンペイバイちゃんにやってほしい事、走って欲しいレースを募集します
- 191二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 17:15:06
万バズいってるなら人気投票も堅いな
なら有馬記念だ! - 192二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 18:18:06
JC→有馬
- 193二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 21:13:07
有馬かJCで分からされて欲しい心と今年は一旦お休みでいいんじゃないかと思う心がふたつある〜
- 194二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 21:47:38
牝牡混合レースは出てもらいたい、そしてウマソウルを刺激されて粉かけに行っちゃう右耳ウマ娘ちゃんを見たい
- 195二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 21:48:25
今年はお休み
- 196君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/16(日) 21:49:30
皆さんありがとうございます。
では、残りスレも少ないので続きは次スレで行いたいと思います - 197君は繁殖牝馬になれるちゃん24/06/16(日) 21:52:33