- 1二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 20:21:09
夜の街、ネオンぎらつくメインストリートから少し外れた奥まった道の先にある大人びた雰囲気の店。店にかけられた看板には「Bourbon Tsumugi」の文字。
夜の間のみ開くこの店は、普段なら満席とまではいかずとも、ある程度客で賑わっている。
だが、今日はドアに「Closed」のプレートがかけられ、店内にはマスターであるツムギと、”慈愛の怪盗”清澄アキラの二人だけであった。
ツムギ「ここはバーボンなんですから、何か頼んだらどうですか?」
アキラ「バーボンなんて店名に冠してますが、実際はお酒なんて出ないでしょう?」
”バーボン”とは夜の店というテクスト。そこにはただの言葉以上の意味がある。実際、酒は出ないものの、この店がどういった店であるのか、その属性を決めていた。
ツムギ「まぁ、マスターの私が学生ですからね。出るのはソフトドリンクだけですよ。それはそれとして、お店で何も頼まないのはあなたが普段語る────『美学』。……ですか?お客様?」
アキラ「手厳しいですね…それでは、ナツミルクを一杯。」
ツムギ「好きですねそれ。」
ツムギが牛乳をベースにミキサーとなるドリンクを混ぜていく。暇になったアキラは店内をぐるりと見渡す。
店内にはピアノにギター、執筆スペースなど創作活動の助けとなる設備が並んでいる。壁には訪れた客が描いた絵が飾ってあり、店の雰囲気作りに一役買っている。
アキラは慣れた様子で棚から小説の合作集を一冊取り出し読み始めた。とあるトリニティ生二人をテーマとして思い思いの内容を書いたものであり、マスターであるツムギの作品から始まっている。内容は短いため、ほんの数分でアキラは読み終わり、丁度本を閉じたタイミングでツムギがグラスを差し出す。 - 2二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 20:22:51
ツムギ「それ滅茶苦茶よかったでしょう!!?最初は強引に迫るような展開で書いたんですが!最終的には共依存関係になったり学生らしい純愛になったり!!凄い数の文豪が集まってくれたんですよ!!」
アキラ「ツムギさん。ロックモードになってますよ。」
アキラは慣れた様子でツムギをなだめる。
ツムギ「…熱くなってしまいましたね。すみません、是非アキラさんとこの作品について語り合いたいと以前から考えていたもので。」
アキラ「気持ちはわかりますよ。私もツムギさんと芸術について語る時間は、何物にも代え難いですから。」
グラスを傾け、口に含んだドリンクをゆっくり味わった後、アキラは微笑みながら言葉を続ける。
アキラ「私はあなたのような理解者に恵まれて幸運ですね。芸術に関わるものとして、理解者がいるのといないのとでは、人生の満足度が違いますから。」
ツムギ「先日話していた”先生”も理解者ですかね?私もお会いましたよ。」
アキラ「ほぉ…!先生と。どうでした!!?」
ツムギ「珍しいですね、あなたが取り乱すなんて。そうですね、例えるならば──────『演出家』。…とでも表現すべきでしょうか。」
アキラ「その心は?」
ツムギ「あの人は”青春”を演出してくれます。大人として、指導者として、一歩引いた立場から、それでいて生徒へは何者による邪魔も許さず、青春の物語を書き上げてしまいます。あの方相手ならば、慈愛の怪盗でさえもただ一人の生徒となってしまうでしょうね。」
アキラ「一人の生徒…ふふ、そうですね。私も同じ意見ですよ。」 - 3二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 20:23:57
その後もツムギの新曲をこっそり聞きに来ていた話、最近来たお客さんが描いた絵の話、以前アキラが出会った生活安全局のくせに現場に突っ込んできた二人のヴァルキューレ生の話。
そのような他愛ない話をしている中で急にアキラの目が鋭くなる。
アキラ「それでマスター、例の物は揃っていますか?」
ツムギ「ええまぁ、全て揃えてありますよ。」
ツムギがドリンクの並んだ棚をいじると、棚の奥が開き隠し扉が現れる。その中に入ったツムギは両手で抱えるサイズのケースを持ち出し、アキラの前で広げる。中身はスモークグレネードやワイヤー銃など様々な道具である。
アキラ「いつもすみません、ツムギさん。自分で用意するのには限界がありますからね。」
ツムギ「美術品の前で無駄な血を流さないという信念。その要望にあった装備というだけでも難しいのに、あなたは装備に慈愛の怪盗を想起させる装飾まで付けろとおっしゃるんですから。こんなもの私以外に注文したら、正体がバレてしまう可能性が非常に高いですよ?」
アキラ「ふふ、注文・受け取りの安全性だけでなく、品質も完璧。やはりツムギさんに任せるのが一番信頼できますね。一流は一流を頼らなくては。」
アキラは一つ一つ手に取って確認をし、自身の装備に加えていく。そんなアキラの様子を見ながらツムギが意を決した様子で口を開く。
ツムギ「後どれぐらい、怪盗を続けるつもりなんですか?」 - 4二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 20:26:41
アキラ「世の中が真に芸術に目覚める時、芸術品が全てのお嬢さんたちに平等に接する機会を作る。そのために、この世の美術品全てを私が管理する。まだまだ道のりは長いでしょう。目標を達成した暁には、ツムギさん。私手ずからあなたをまずご案内しましょう。盗み出したシチュエーションの説明も合わせて、ね。」
ツムギ「私としては、こんな危ないことは早くやめて欲しいですけどね。英雄の凱旋──とでも言わんばかりに堂々と帰ってきますが…喧嘩してきた野良猫みたいに毎回大小様々な怪我してるじゃないですか。この調子なら美術展よりも先に怪我の展覧会が開けそうですよ。毎回治療しているのは誰だと思ってるんですか?」
アキラ「いつもお世話になってます♪」
アキラは悪びれもせず礼を言う。
ツムギ「そういえば、今までの装備代だけじゃなくて治療費も頂いてませんね。」
ツムギ(そうだ、彼女には返してもらわなければならないものが沢山ある。そしてそれは…)
ツムギ「もう怪盗なんてやめて私と───」
アキラ「それ以上は言わないでください。私も困ってしまいますので。」
アキラはツムギの唇に人指し指を当て、言葉を紡ぐのを止める。そのまま自身の口元に一指し指を持っていき”静かに”のジェスチャーを行う。
アキラ「いつもありがとう、愛してますよ。ツムギ。」
仮面を装着した慈愛の怪盗は、店を出て、今宵の獲物を狙いに行く。
ツムギ「彼女は今夜も、私から奪ったものを返してくれそうにないですね。」
カウンターを拭きながらツムギは深くため息をついた。
ツムギ「ええ、私も───愛してますよ。」 - 5二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 20:27:31
以上です。最近38度の高熱にうなされていた際に見えた幻覚を、そのまま文章にさせていただきました。怪盗の拠点が古馴染みの経営してるバーみたいな展開、皆さんは好きですか?私は大好きです。
- 6二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 20:27:59
- 7二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 21:23:20
この感じ、慈愛の怪盗として活動する前からワイルドハント(アキラは確定してないが)で友人だったりするのかな。
貴重なツムギSS助かる - 8二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 21:38:39
この二人は絶対肉体関係あると思う(偏見)
- 9二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 22:22:26
最高です
- 10二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 22:28:22
熱を出せばこの光景が見られる……
- 11二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 23:23:04
アキラ✖︎ツムギだと!?こんなの僕のデータにないぞ!!
- 12二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 23:33:28
…雰囲気で騙されそうになったけど、よく考えたら惚れた女の店を拠点にしてるあげく、装備代も治療費もツケにしてるのナチュラルにクズでは?
- 13二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 00:32:24
あえて明言はしないでおきます。
ちなみに、いつものバーボンツムギはスレ主のアバターみたいな感じで、こっちはここだけ椎名ツムギがバーボンハウスやっている世界線っていう感じです。
バーボンツムギから着想を得た、ツムギがバーボンしてたら面白いんじゃねっていうのが「Bourbon Tsumugiスレ」です。気が向いたら続編を書くかもしれません。
いつものバーボンツムギスレの方も現在鋭意執筆中です。
- 14二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 08:02:37
データキャラやめちまえ!!
- 15二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 15:29:42
バーボンツムギのマスターと、Bourbon Tsumugiのマスターは別人ってことね。バーボンツムギの二次創作って感じかな?
- 16二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 19:30:49
そもそもキヴォトストップクラスの犯罪者ではあるので…
- 17二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 01:11:15
おー、現在バーボンツムギスレも製作中か。次はどの生徒を書くのかな?
後最後まで書け(強制) - 18二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 08:30:25
ナイスバーボン
- 19二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 19:51:41
俺と一緒に滝行でも行くか兄弟?
- 20二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 03:03:32
この二人、もっと情報欲しいから早くワイルドハントが実装されてほしい