【ばんえいウマ娘】オリウマ娘が北の大地を駆ける3

  • 1◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:34:03

    あたしは、特にこれといった特徴のない、どこにでもいる平均的なウマ娘!
    それでも、ウマ娘に生まれたからにはレースの世界に飛び込んでみたい!
    輝いてみたい!

    その念願がかなって、帯広トレセン学園に入学できました!
    そう、あたしことカミノクニスノウは、ばんえいウマ娘です!

    勝利と敗北を積み重ねて、ジュニア級の初重賞競走であるGⅢナナカマド賞が目前です!

  • 2◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:34:53

    ※注意事項
    このスレは、ばんえい競馬を見に行って脳を焼かれたスレ主がなんとなく作ったダイスを使ったレースゲームのテスト用です。
    スレ進行とノリでゲームルールが改訂/アップデートされます。
    まだキャラの外見や特徴が未定な点が多く、最低限の特徴を捕らえただけなので、絵は今後も変わっていくかもしれません。

    それでも良ければお付き合いください。

    現在、テレグラフが貼り付けられないため、まとめテキストを貼っていきます。

  • 3◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:35:35
  • 4◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:36:55

    キャラクター紹介

    【概要】1/2

    名前:カミノクニスノウ

    種別:ばんえい種(日本輓系種)

    耳飾り:左耳

    目の色:濃い青灰色

    学年:不明

    毛色:青毛

    身長:191cm

    スリーサイズ(いずれも100に近いほど大)

    B:dice1d100=31

    W:dice1d100=9

    H:dice1d100=50


    脚質:先行


    特技:未定

    苦手な事:未定


    ルックス:dice1d100=59(100に近いほど美形。1に近いほど可愛い)

    雰囲気:dice1d100=9(100に近いほどボーイッシュ。1に近いほどガーリー)

    髪の長さ:dice1d100=32(100に近いほど長い/100で腰以上。1に近いほどショート/1でシャカール並み)

    髪の癖:dice1d100=91(100に近いほど直毛/ストレート。1に近いほど癖っ毛/ウェービー)

  • 5◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:37:35

    【概要】2/2
    趣味:
    イラスト描き
    ほとんど熱中しておらず、暇な時にちょっと描いたりするくらい。
    描き始めて5年ほどで腕前は人並みか、やや下。

    得意な事:
    ・動物(特に猫)の扱いが上手い
    ・ヘアアレンジが得意

    備考:
    ・出生地は北海道上ノ国町(かみのくにちょう)。
    ・実家はコメ農家。
    ・五人姉妹の長女。妹はヒトミミが二人。ウマ娘が二人。
    ・祖母はめちゃくちゃ強かった。通算成績109戦50勝の通称”上ノ国の女傑”。
    ・トレセン入学前の一時期が残念な環境だっただけで幼少期の実績はある。
    ・実は怪我からの復帰直後(入学前に肋骨を骨折。現在は回復済み)
    ・実はすごい寂しがり屋。
    ・愛用のどきゅーとタイシンを実家に置いてきている。二体目を寮にお迎えするのは断念した。代わりのぱかプチ六体の為にアルバイト奮闘中。
    ・各種職業への適性がやたら高い。むしろレースより仕事した方がいいくらい。
    ・ジンギスカンはタレ派。

    戦績:
    選抜レース (ばんえい200) 9着
    模擬レース (ばんえい200) 3着
    メイクデビュー (ばんえい200) 1着
    ジュニア級Cクラス戦 (ばんえい200) 1着
    ハイセイコーマート帯広駅前店リニューアル記念 (ばんえい200) 1着
    白菊賞 (ばんえい200) 3着
    いちい賞 (ばんえい200) 1着

  • 6◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:38:16

    AIイラストのプロンプト:
    《masterpiece》, 《best quality》, {{top quality}}, 《ultra-detailed》, (super-detailed), ((umamusume)), (horse girl, horse ears:1.2), ((horse tail)), ((Anime Style, Flat Design)), ((thick lines)), vibrant colors, sharp focus, 1girl, (solo), 18 years old, (black hair, medium hair, straight hair:1.5), (dark blue streaked hair), blunt bangs, bob cut, break, dark green eyes, ((freckles)), perfect detailed hands, perfect detailed fingers, ((tall)), athletic, medium breast, narrow waist, big hip, curvy, (BULKY:1.3), Biceps, (muscular girl:1.3), (muscular female:1.4), fit, ((leg muscles)), ((thigh muscles)), arm muscles, break, (hair ornament on the left head), break, {tracen school uniform, purple sailor suit, pleated skirt, serafuku:1.8},SLIGHTMUSCLE, BULKY, BODYBUILDER, summer uniform, thighhighs

  • 7◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:38:54

    寮の同室

    【概要】

    名前:シャコータングラム

    種別:ばんえい種(日本輓系種)

    耳飾り:左耳

    目の色:暗緑色

    学年:不明

    毛色:芦毛

    身長:208cm

    スリーサイズ(いずれも100に近いほど大)

    B:dice1d100=95

    W:dice1d100=5

    H:dice1d100=42


    脚質:逃げ


    特技:未定

    得意な事:未定

    苦手な事:未定


    ルックス:dice1d100=18(100に近いほど美形。1に近いほど可愛い)

    髪の長さ:dice1d100=4(100に近いほど長い/100で腰以上。1に近いほどショート/1でシャカール並み)

    髪の癖:dice1d100=15(100に近いほど癖っ毛/ウェービー。1に近いほど直毛/ストレート)


    備考:

    ・出生地は北海道積丹町(しゃこたんちょう)。

    ・ジンギスカンは塩コショウ派。


    戦績:

    いちい賞 (ばんえい200) 3着

  • 8◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:39:34

    カミノクニスノウのトレーナーさん

    【概要】

    名前:正式名は未定

    種別:人間男性

    年齢:27歳

    実力:dice1d100=55(100に近いほどハイスペック)

    ルックス:dice1d100=32(100に近いほど美形。1に近いほど地味)

    体形:dice1d100=69(100に近いほどグラマー/デブ。50で標準。1に近いほどスレンダー/痩せ)

    性格:dice1d100=46(100に近いほど明るい/ポジティブ。1に近いほど厳格/物静か)

    人格:dice1d100=83(100に近いほど人格者)

    人脈・コネ:dice1d100=41(高いほど広い)


    趣味:

    ゴルフとクロスワードパズル

    どちらも結構ハマっている。ゴルフ歴7年、クロスワード歴3年。

    腕前は不明。北海道だしゴルフはパークゴルフかも?


    備考:

    ・カミノクニスノウを勧誘した理由は、たまたま模擬レースを見て、磨けば光るものを感じた。

    ・スレ主の解釈としては「チームのサブトレ上がりか新人トレーナー」「地味だけど爽やかな体育教師」。

     ただし未定部分が多いので、大いに変化する可能性あり。

  • 9二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 22:40:14

    このレスは削除されています

  • 10◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:41:53

    【概要】

    名前:クインルゴサローズ

    種別:ばんえい種(日本輓系種)

    耳飾り:左耳

    目の色:ローズレッド

    学年:不明

    毛色:芦毛

    身長:205cm

    スリーサイズ(いずれも100に近いほど大)

    B:dice1d100=69

    W:dice1d100=44

    H:dice1d100=67


    脚質:先行

    特技:未定

    得意な事:未定

    苦手な事:未定


    ルックス:dice1d100=79(100に近いほど美形。1に近いほど可愛い)

    髪の長さ:dice1d100=85(100に近いほど長い/100で腰以上。1に近いほどショート/1でシャカール並み)

    髪の癖:dice1d100=81(100に近いほど癖っ毛/ウェービー。1に近いほど直毛/ストレート)


    備考:

    ・出生地は北海道美唄市。

    ・大輪の花のような雰囲気のほわほわ口調ウォーモンガー。


    戦績:

    白菊賞 (ばんえい200) 1着

    いちい賞 (ばんえい200) 2着

  • 11◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:43:15

    【概要】

    名前:モチモッツァレラ

    種別:ばんえい種(日本輓系種)

    耳飾り:なし

    目の色:マゼンタ

    学年:不明

    毛色:鹿毛

    身長:219cm

    スリーサイズ(いずれも100に近いほど大)

    B:dice1d100=23

    W:dice1d100=11

    H:dice1d100=32


    脚質:逃げ

    特技:未定

    得意な事:未定

    苦手な事:未定


    ルックス:dice1d100=38 (100に近いほど美形。1に近いほど可愛い)

    髪の長さ:dice1d100=25 (100に近いほど長い/100で腰以上。1に近いほどショート/1でシャカール並み)

    髪の癖:dice1d100=20 (100に近いほど癖っ毛/ウェービー。1に近いほど直毛/ストレート)

    性格:dice1d100=47 (100に近いほど明るい/ポジティブ。1に近いほど厳格/物静か)


    備考:

    ・出生地は北海道美深町。

    ・粘り強い足腰が持ち味。

    ・試しにパラメータを振ったところ根性がほぼ最低値だった為に他ステと入れ替えられた。


    戦績:

    白菊賞 (ばんえい200) 2着

  • 12◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:43:58

    【ルール説明】
    ・コースについて
    ――ばんえい競バで使用されるコースは、直線200メートルのダートのみ。
    ――スタートからゴールまで走るレーンが決まっているセパレートコースとなる。
    ――ばんえい競バで使用されるコースの直線200メートルは、五つのエリアから成り立っている。

    ――スタートから第1障害までの約35メートルの直線。『第1直線』。
    ――続いて、高さが1メートルになる『第1障害』。
    ――降りた後が、第1障害から第2障害間で約77メートルの『第2直線』。
    ――続いて、高さが1.6メートルになる『第2障害』。
    ――最後が、第2障害からゴールまでの約62メートルの『最終直線』。
      なおゴール手前40メートル地点には、上り勾配5パーセントになる10メートルの坂がある。


    ・判定について
    ――対象エリアごとに2d6を振る。
    ――対象エリアは、それぞれ難易度に応じた基準値を持つ。これに『ばんえい重量補正』を加えた値が、その対象エリアの最終的な基準値となる。
    ――各エリアでは使用するパラメータが決められている。
      ( 2d6の出目 + パラメータ補正 + 根性補正 + 脚質補正 ) が、そのエリアでの自分の走りの値となる。
    ――( 2d6の出目 + 各種補正) - ( 基準値 + 『ばんえい重量補正』 ) = 成功量となる。
    ――成功量が大きいと、そのエリアでの走りが良かったことになり、小さいと悪かったことになる。

    ――5エリア分の成功量を出したら、最終着順ダイス1d10を振る。
    ――1d10の出目 - ( スタミナ補正 + やる気補正 + 天候/馬場補正 + 5エリア分の総成功量) = 最終着順となる。
    ――各エリアをスムーズにクリアしている(総成功量が大きい)と最終着順ダイスの出目が悪くても勝利となる。
    ――いずれかのエリアで成功量がマイナスになってスタミナ補正でカバーしきれなくなると、そこがスタミナ切れの表現となる。
    ――天候/馬場補正は、スキルの天候/馬場○×とレース状況にあわせて最終着順ダイスに補正値(-1~+1)を受ける。

  • 13◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:44:20

    ・作戦について
    ――作戦は、そのレースで取る作戦となる。
    ――脚質と作戦が一致しないと、下記の脚質補正は得られない。
      なお現状で作戦と脚質に関するスキル未実装なので脚質と作戦を変える意味は今のところ無い。

    ――脚質により得意範囲が決まる。脚質ごとに全5エリア中の2エリアを対象とする。
    ――対象エリアでのダイス判定への補正値+1を受ける。
    ――逃げ → スタート-第1障害~△第1障害 =『第1直線』+『第1障害』
    ――先行 → △第1障害~第1障害-第2障害 =『第1障害』+『第2直線』
    ――差し → 第1障害-第2障害~△第2障害 =『第2直線』+『第2障害』
    ――追込 → △第2障害~第2障害-ゴール =『第2障害』+『最終直線』


    ・各種補正について
    ――ばんえい重量500kgごとに、各エリアのダイス判定を行う際の基準値に対して補正(+1~+10)を受ける。
      未勝利戦で重量2500kg、G1クラスは重量5000kgとなる。

    ――やる気(絶不調~絶好調)に応じて、最終着順ダイス判定への補正値(-2~+2)を受ける。

  • 14◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:44:37

    ・スキルについて
    ――スキルごとに、発動するエリアや条件、発動するための基準値、効果がそれぞれ決められている。
    ――レース中に発動条件が一致すると自動的に発動判定となる。発動判定の際は、賢さの補正値がダイスの出目にプラスされる。
    ――( 2d6の出目 + 賢さ補正) ≧ スキルの基準値 で発動成功となる。

    ――レース中に行われる各種動作は、自分だけではなく他人も行っている(例えば、刻んだりする等)。
    ――本システムにおいては、他者よりも上手く「その動作を行える」と言うことがスキルの表現となる。

    ――今のところ実装されているのは『集中力』のみ。
    スキル『集中力』
    スタートが得意になり 出遅れる時間がわずかに少なくなる。
    発動エリア:第1直線
    基準値:8
    効果:発動成功時に、第1直線での判定ダイスの出目に+1される。

  • 15◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/05(水) 22:48:00
  • 16二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:00:21

    スレ立て乙乙
    感謝祭か

  • 17二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 10:08:34

    保守

  • 18二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 19:14:29

    北海道行きたい

  • 19◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/06(木) 21:17:27

     いちい賞が終わった直後。
     クラス会議は紛糾していました。クラスと言ってもレースでのクラスの方ではありません。学級の方です。紛糾しているのは、あたしのクラスだけではありません。同じ時間に同じテーマでどこもクラス会議となっているので、ドアの向こうから他クラスの遠い喧騒が聞こえてきます。
     ちょうど9月下旬から10月中旬にかけては、ジュニア級からシニア級まで、どの学年でも重賞競走がありません。
     そこをついて行われるのが、帯広トレセン学園の秋のファン大感謝祭。
     中央ですと如何にも文化祭といった様子らしいですが、帯広トレセンでは半分くらいは畑の実りを祝う収穫祭です。
     クラス会議のテーマは、収穫祭での出し物について。
     大変な授業やトレーニングの合間のイベントですから、出来るだけ楽しみたいので、何をするかで揉めるに決まっています。我がクラスの担任は、こういう時、だいたい微笑みながらクラスの様子を眺めています。
    「さーて、うちのクラスは何やろうか。何かやってみたいとかある人~?」
     黒板の前には、半分ダレたようなグラムさん。
    「喫茶店とかやりたいでーす!」
     グラムさんは学級委員長ではないのですが、この手の話し合いの時、なぜか人の輪の真ん中にいます。委員長も進行を、そうそうに彼女に任せてしまっていました。彼女は人の意見を自然に引き出すのと、人に役割を振り分けるのが上手いのです。
    「メイド喫茶みたいなのは出店数が制限されてるんよねー。
     なんでも去年に先輩らがビキニ喫茶やって風紀委員の手入れ喰らったらしいんさ。それで今年から生徒会の目が届くようにしたいっぽいね。
     したっけ希望しても良いけど、結構な倍率のクジ引きになるっしょ」
    「あー」「残念ー」「先輩のアホ―」
     うめき声が上がります。
     希望してもいいのですが、クジに外れれば当然ながら次の準備時間は削れるので、なかなかに博打です。

  • 20◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/06(木) 21:20:22

     それぞれが自分の周りと相談し合う、潮騒にも似た静かな騒めき。
     今から演劇だのダンスだのを出し物としてやるには、到底間に合いません。
     黒板に様々な案が書き出されては、バツ印をつけられていきます。
    「となってくると、やはり食べ物系の屋台が安全だと思うんよね」
     それぞれのアイデアが詰まりそうなタイミングを見計らって、グラムさんが言います。
    「いいんじゃない?」「賛成ー」「なに作りましょうか~」「私、人参オッチャホイがいい!」「流行ってるから他と被りそうじゃない?」
    「そんじゃま、方向は決まりっしょ」
     パン!
     グラムさんが手を打ち鳴らします。
     注目が集まったところで、普段とはまるで違う、真面目な口調になるグラムさん。
    「前に寮で丼祭りやった時にいた子らは知ってると思うけど、今回は自分らで食べるだけの持ち寄りじゃない。
     客に売るからには、こちらも材料はきちんと代金を支払って買わせて頂く。
     米はスノウの実家から送ってもらうけど、これも同じように買わせて頂く」
     そこは確定ですか。別に問題ないですけど。
     グラムさんは続けます。
    「さて、問題となってくるのは、ほっかほかの炊き立て新米の横にいるオカズの選択だ。
     今回は寮の裏手を好きに使えた前の時とは違う。当日は目の前には腹をすかせた客もいる。
     あれもこれもとなってくると調理場やバックヤードのスペースが足りないし、時間もない。その為には、作るメニューは絞る必要がある」
     一息に喋り、反応を伺います。
     グラムさんは滔々と熱弁と拳を奮います。
    「そこで問題が出てくる。現在、帯広に奴らがいる。そう、あそこの農高の連中だ。
     あちらには酪農科があるが、ウチら帯広トレセンにはない。つまり肉を扱う上では、一歩先んじられている。であれば、同じ土俵で勝負するのは愚の骨頂。
     こちらはこちらの強みを活かすべきだとウチは思う。
     野菜だ!
     採れたてのトマト!人参!採った後で熟成させといたカボチャ!これなら互角に勝負できる。
     こいつらと米をツートップとして、米と同じ皿に盛れて、お客様が揺らしてもこぼれにくく持ち運びが楽なヤツ!作り置きがきくヤツ!そう、カレーだ!」
     ウオォォォ……。
     教室中が沸き返ります。

  • 21◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/06(木) 21:24:36

    「ばんえいウマ娘どもは農作物を愛しているか?」
     手に持ったチョークをマイクに見立ててグラムさんが大声で問えば、クラス中が一斉に大声で応えます。
    『生涯忠誠!命懸けて!豊作!豊作!豊作!』
    「作物を育てるものは?」
    『熱き汗だ!汗だ!汗だ!』
    「ウチらの作ったものの出来はどうだ、お嬢様方?」
    『最高!最高!最高!』
     なんで、うちの生徒はこと食べ物のことになると、レースへの情熱に負けないくらいにこうも熱くなるんでしょう。あたしも人のこと言えませんけどね!
     人と共に在り続けて、共に働き続けてきた、ばんえいウマ娘の本能とでも言いましょうか。
    「と言う訳で、スノウ。
     スノウんチの米、前みたく送ってもらえるように頼んでもらっていいかな。
     お金は払うつもりだから、まずはいくらくらいかかるか聞いといてくんない?」
    「はい!聞いておきます」
     あたしは胸を叩いて請け負いました。
     もう収穫は終わってますからね。ぴちぴち獲れたての新米が届きますよ。
     玄米60kgの卸相場があれくらいなので、どちらかと言うとお米そのものよりも輸送の方にお金の方がかかりそうです。
     トレセン内部に精米機はないので、今回も精米してから送ってもらいます。
    「いやぁ、美味い米が手に入るのは助かるっしょ。
     という訳で、寮の食堂にある業務用の回転鍋、またアレ使わせてもらえるように交渉よろしくね。
     今回は寮でコメとカレー作って大鍋に入れて手で運ぶことになっから、そっちも使わせてもらえるようによろしく」
    「えっ」
    「経理とかはウチがやっとくわぁ」
    「えっ」
    「誰かテントとか机とか、機材と資材の手配をやってくんなーい?
     あ、そうだ、スノウんとこからくる新米と鶏肉をkg単位で交換してくれそうな人いたら手ぇあげて?」
    「はいはーい!ちょっと、おとうちゃんに聞いてみるべさ」
    「キノコでよければお家からもってこれるかもー」

  • 22二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 22:08:44

    斜め上の話振られてえってなってるスノウは間違いなくかわいい

  • 23◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/06(木) 22:11:10

     収穫祭当日。
     生徒達の手作りによる装飾などで、精一杯のおめかしを施された帯広トレセン学園。
     校門には、収穫祭の時だけ引っ張りだされる巨大なゲートが据え付けられています。
     それは信じられないほどの人出でした。
     朝から校門前には長蛇の列ができており、危険なので入場規制をかけてお客さんをゆっくり入れるほどの混雑ぶりです。
     あたし達が収穫した農産物を売っているテントの辺りは激戦区です。
     クラスの数人は手伝いに回されましたが、あたしはカレーの準備で忙しく、近寄りたくても近寄れないのは助かりました。人混みが凄いというか、なんか殺気立ってますよ。
     寮の食堂で借りた設備で、何人もの同級生たちがカレーを作っています。なにせアルバイト経験が豊富な子が多いので、料理はスムーズです。
     売り物とするのは、トマト、人参、ピーマン、玉葱、カボチャ、マッシュルーム、鶏肉の野菜ゴロゴロチキンカレー。
     これ一択です。
     出来るだけ商品展開を少なくして、手間を減らす作戦です。もし作戦が外れても、売れ残りが余って困ることはないでしょう。一声かければ、スタッフが美味しく頂いて、鍋が空になるのは目に見えているので。
     下拵えとメインの調理は前日までに済ませてあるので、収穫祭当日の今日はあとは温めるくらいです。
     ただ、カレーだけですとなんとなく寂しいので、急遽、有料のトッピングとして小さな規格外ジャガイモを丸ごと素揚げしたのが用意されました。

  • 24◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/06(木) 22:15:03

     お店の制服として着る事になったディアンドルを着たまま、カヌーの櫂のようなサイズのシャモジで大鍋をゆっくりかき回すと、熱で立ち昇ってきたカレーの胃袋を刺激する良い香りがふんわりと辺り一帯に立ち込めます。
     ディアンドルは、ドイツ伝統衣装です。中央所属のエイシンフラッシュさんの勝負服と言えば、分かりやすいでしょう。
     何故か「10月でオクトーバーフェストだし、どうせなら可愛いの着てやってみようよ」という事で、クラス一同、着ることになりました。
     あたしのクラスはメイド喫茶ならぬ、ディアンドルカレーショップです。
     帯広でディアンドルを売っているお店なんかないので、それ風の衣装をウマゾンで通販しました。
     ブラウスは胸元が大きく開き、首筋から肩周りや胸元までのデコルテを強調するデザインで、ゆったり目のスカートは鍛えたばんえいウマ娘でも着やすいです。伝統衣装のであれば本来ならロング丈なのですが、あくまでそれっぽい衣装なのでミニスカ風です。
     ブラウスとエプロンが可愛いです。可愛いは正義です。正義ですが、胸元が寂しい気がほんのちょっぴりします。
    「ねー、これ食べたーい」
    「ダメだよー、売るもの無くなっちゃよー」
     何度繰り返したか分からない会話と、笑い声。
     カレーがいい具合に温まり、実家から送られてきた新米も蒸らしが終わりました。
    「お米とカレーが出来ました!」
    「ういっス、輸送班は集まるっスよー」

  • 25◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/06(木) 22:18:26

     お米や調理室の手配とスケジュール調整をしているうちに、あたしは、またしても実行委員長のような役割となっていました。そこが今回のキーポイントなので仕方ありませんけど。
     あちこち回って状況を把握しておかないといけませんので、輸送班と一緒に教室に行きます。
     道すがらに見れば、校内のあちこちでイベントも行われています。
     特設ステージの上では、有志や同好会が代わる代わるに演奏やパフォーマンスをしています。
     帯広トレセン全体が揺れるとまで言われるシニア級GⅠ勝者達によるド迫力のソーラン節。
     観客まで暑苦しいと評判のボディビル大会。
     これらは長年続く伝統ある演目だそうです。
     屋台だけではなく、真面目な研究発表を行っているクラスやグループもあります。クラスで育てた野菜の育成や研究報告、トレーニング理論を自分達で実践してみた結果のレポートなどなど。

     レース場では、ばんえいウマ娘と、人間チームが橇を曳くばんえいレースが予定されています。
     近隣の消防、警察、自衛隊、大学のアメフト部や柔道部など力自慢のチームが、ばんえいウマ娘に挑戦するべく多数エントリーしてきているそうで。
     こちらからも重賞勝利者を含んだガチめのメンバーが選出されて迎え撃ちます。
     勝負服を着たウマ娘と勝負する機会はそうそう無いでしょうし、こちらにはプライドがありますから、お互いに本気です。
     今はレースコースは開放中の時間なので、まだ幼いばんえいウマ娘ちゃん達がわちゃわちゃ走ったりしているのが、ちらっと見えました。

  • 26◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/06(木) 22:21:58

     人が多すぎて、なかなか運んでいるカレーが教室まで届けられません。

     楽しそうに過ごす人々のカオスな動きに、思わずため息が漏れます。当然、来場された方々が楽しんでくれているのは嬉しいのですが、教室に保温用のヒーターはあるとしても、輸送中に冷めてしまわないか心配です。

     それに、普段から帯広競バ場もこれぐらい混んでくれればいいんですけどねぇ。

     より多くの人に見てもらいたい。

     より多くの声援をその身に浴びて、レースをしたい。

     そして、出来れば勝って、その声援の全てを独り占めしたい。

     それは多分、ここにいるばんえいウマ娘達に共通する想いかもしれません。

     先輩や教官の話では、いつも農産物販売を目当てに早朝から主婦の方々をメインに列はできていたそうですが、今年の混み具合はそれを上回っているようです。

     それもその筈。生徒会と学園の共催で、府中トレセンからゲストが招かれているんです。

     それは dice3d114=29 32 85 (146) さん達。

     トゥインクルシリーズとローカルシリーズは同じ平地競争であれば、交流競走という形での交流はそれなりにあります。しかし同じローカルシリーズに属していても、ばんえい競バと中央の選手が交流競走というのは、どちらにとっても競う意味がありません。それはしばしば、F1カーとブルドーザーが競争するようなもの、と例えられます。こちらは1200mを走り切るのも難しいでしょうし、あちらは錘なしの橇でも曳いたら故障するでしょう。

     その為、中央と帯広の交流の一環として、競争ではなくお互いのイベントにゲストとして招き合うことになったのです。

     トークショーの他に、収穫祭を締めくくるイベントとして特設ステージでライブがあります。是非とも見なければ!

     今から逸る心を押さえつけるのが大変です。

     それは皆も同じ筈。

     ほとんどの出し物や屋台が終わってから生徒が見に行けるようにと、余裕のあるスケジュールになっているので安心です。

  • 27二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 22:23:12

    思いっきり北国出身が前面に出ている二人とタキオンか

  • 28◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/06(木) 22:25:48

    ※本日の進行はここまでといたします。
    ゲストとして招かれたのは、ユキノビジン、アグネスタキオン、ホッコータルマエとなりました。

    一名ほど里帰りついでの疑惑が。

  • 29二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 22:55:31

    里帰りったって苫小牧と帯広じゃあなかなかの距離だよw

  • 30二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 00:34:57

    距離がですね

  • 31二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 00:36:41

    航路なら苫小牧も玄関口……と思ったけどタルマエは船酔い体質なんだったな……

  • 32◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/07(金) 00:45:03

    ※スレ頭でシャコータングラムのイメージイラスト貼り忘れてたので、貼っておきます。
    トークショーの内容が想像つかずで。

  • 33二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 08:36:41

    保守

  • 34二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 12:06:35

    帯広から苫小牧ならレンタカーあれば片道3時間で行けるから平気平気(感覚麻痺

    トークショーするタキオンというか、わざわざ出張ってくるとこが想像つきにくいのが困る
    実は重種バの各種データ貰ってて学会発表みたいなことはしそう

  • 35◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/07(金) 21:42:28

    「ありがとうございます!二杯で1000円になります!今、係の者が……」
    「二名様、こちらにどうぞ~」
     盛況です。
     ひっきりなしにお客さんが来る状況で、会計も接客を担当する子らもかなり忙しいです。とは言え、自分達で考え、自分達で作った物がどんどん売れていくのは嬉しいもので、みんな楽し気に仕事しています。
     基本的に来場者が多いので他の屋台と取り合いにならずに済んだのと、カレーの香りによる宣伝効果でしょうか。
    「やぁ、スノウ君。賑わってるね」
    「あ、トレーナーさん。いらっしゃいませ!」
    「トレーナー陣の出し物も終わったんでね。覗きに来たんだ。
     一人分お願いでき……」
    「はい、らっしゃいませー。お二人様ごあんなーい」
     突然、グラムさんが割って入ってきました。
    「スノウは朝からあんま休憩取ってないっしょ。休憩がてら、二人で食べてけばいいさー」
     あれよあれよという間に、トレーナーさんと一緒のテーブルにまとめて案内されてしまいました。
    「あはは……すいません、トレーナーさん。いきなりこんな風になっちゃって」
    「謝ることはないさ。クラスの皆がいいというなら、いいんじゃないか。
     今日はまだまだ長いだろうし、休める時に休んでおこう」
     料理を待っている間、色々な話をしました。
     またしても寮にお米が送られてきて置き場所に困った話。
     クラスの出し物を決めるのに大騒ぎになった話。
     衣装合わせでグラムさんが右耳に飾りを付けた子達にもみくちゃにされていた話。
     トレーナーさんはレースやトレーニングの話は持ち出しませんでした。せっかくの楽しいお祭りなのに、現実を引っ張り出してくるのは野暮と言う配慮なのでしょう。
     ドンッ!
     と、カレーが出てきました。
     けしてグラムさんが乱暴に置いたのではありません。そもそも彼女は食べ物を乱暴に扱うような性格ではありません。カレーが盛られた皿自体は、静かに丁寧に置かれました。
     ドンッ!
     と、突き出されてきたのは、グラムさんの胸です。
     椅子に座って視点が下がっているので、庇のように張り出たソレを見上げる形になり、暴力的なまでの勢いで視覚を占拠します。

  • 36◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/07(金) 21:45:37

     グラムさんのその胸はとても豊満です。クラスでも、いえ、帯広トレセン全体でもトップ争いに加わっているレベルでしょう。
     特に今日は、着ているディアンドルのおかげで胸がロケットの先端のように大きく前に出っ張っているので、机にカレー皿が乗ったお盆を置こうと近づくと、まず真っ先に胸が差し出されてしまうのです。
     机の脇に立つだけで、それです。
     グラムさんが屈みこめば、突き出た部分は水平から垂直になるように角度を変えていきます。
     ブラウスの両脇と下から締め上げられた柔肉は押され、自然と開放されている部分へと密集します。すなわち開いている胸元へと。
     グラムさんのディアンドルの広く開いた胸元は、内側からの肉圧でより一層押し広げられ強調されています。
     机にお盆を置くために前屈みになった彼女の胸元には、それはそれは長く深い乳肉の峡谷が露わになっていました。その胸はグランドキャニオンですか?センシティブなので風紀委員に連れていかれてしまえ。
     トレーナーさんの眼前に差し出されているのは、健康的に白い肌。鍛えられた見事な張り。同性ですら気を取られてしまうほどの美しい谷間。
    「?!……ぉっとぉ」
     瞬時にトレーナーさんの目が吸い寄せられたのを、あたしは見逃しませんでした。
     なんとか大人としての態度を保とうとしていますが、グラムさんの胸元が発する吸引力にトレーナーさんの目が泳いでいます。それはもうバシャバシャと泳いでいます。あたしの方に目線を向けて気にしていない態を装っていますが、ちらりちらりとグラムさんの胸元に意識が向いています。女性は、そういう動きはよく分かるんですよ。

  • 37◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/07(金) 21:46:29

     あたしとトレーナーさんとの関係は、あくまでアスリートとトレーナー。生徒と教育者の間柄を出ません。それは当然です。
     しかし何故でしょう。
     目の前にいるあたしを差し置いて、他の女性の胸に気を取られていると言うのは。
     なにか、こう、非常に腹立たしいです。
    「ほい、カレー二人前、お待たせいたしましたー」
     それを知ってか知らずか、グラムさんは普段と変わらずの調子で、カレーをほいほいと配膳していきます。
     最後にトレイに乗せたボウルの中から取り出したものを、
    「なっ……?!」
     刺せば、我がクラスのカレーの完成です。
     カレーの仕上げにトレーナーさんが絶句しました。
     カレーに入れる人参ですが、切って煮込んではいません。
     丸ごと一本、白米の山に縦にぶっ刺すのが、ウマ娘の流儀です。
     圧力釜で火は通して味も染み込ませてあるので、人間でも噛り付いたりナイフで切れば食べられるようになっています。見た目は人参が生のまま丸ごと刺さっているように見えるでしょう。
     どうやって食べようか悩んでいるトレーナーさんには、もう少し困ってからでないと教えてあげませんけどね!

  • 38◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/07(金) 21:53:02

     ユキノビジンさん。
     アグネスタキオンさん。
     ホッコータルマエさん。
     ユキノビジンさんとホッコータルマエさん二人でのトークショーは、北国あるあるネタで場を沸かせていました。同じ道内で苫小牧推しですとほかの地域出身者の不興を買いそうなものですが、全くそんな雰囲気にさせずに盛り上げていくのは、さすがは永年アイドル活動を続けている苫小牧のロコドルです。
     アグネスタキオンさんはトークショーではなく、トレーニング理論の発表会みたいになっていました。わざわざモーションキャプチャー機材やサーモカメラを持ち込み、その場で希望者のフォームなどのデータを採って独自の動作解析までして改善プランを挙げていくという、これはこれですごい盛り上がっていました。
     収穫祭の最後は、中央からわざわざゲストとして参加してくれた三人のミニライブです。特に道内出身のホッコータルマエさんの人気は凄まじく、同じ苫小牧出身の生徒達が本気の応援を見せていました。
     最高でした。
     ステージの上で輝くと言うのは、まさにあのような光景を指すのでしょう。
     ダンスも、歌も、その全てテレビやスマホで見るのとは迫力がまるで違いました。
     一挙手一投足に自信が満ち溢れた動き。
     ステージまでは遠いのに、まるで目の前にいるように感じられる、圧倒的な存在感。体が内側から輝いているかのような熱量。
    「いいなぁ……」
     我知らず、ぽつりと呟きが漏れます。
    「あたしも、いつかはあんな風に輝いてみたいなぁ……」
     それを今までになく真剣な表情で見つめるトレーナーさんに、あたしは気付いていませんでした。

  • 39◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/07(金) 21:55:07

    ※AIを使って描いた、ディアンドルを着たスノウちゃんのイメージイラスト。
    なおディアンドルを着たシャコータングラムもAIに描いてもらいましたが、予想通り北半球がヤバかったのでお蔵入りです。

  • 40二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 00:33:11

    保守

  • 41二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 09:59:08

    保守

  • 42二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 10:46:15

    ディンドル輓曳バの攻撃力…ッ!

  • 43◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 15:06:09

    テレグラフのNGワード回避のテスト。

    tの後ろの全角スペース『あ』を削除で。


    tあelegra.ph
  • 44◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 21:31:48

     北海道の秋は短いです。
     夏よりももっと短い秋は、あっという間に過ぎ去ろうとしており、吹く風は既にたっぷりと冬の気配を帯びています。
     トレセンの各部屋に備え付けられているセントラルヒーティングの温水ヒーターはもう動き始めていて、毎朝トレーナー室のヒーターもガキンガキンうるさく配管を鳴らします。お湯が通れば静かになりますが、古い設備ですしね。
    「スノウ君。君に確認しておきたい」
     収穫祭が終わり、祭りの余熱も引いたある日。
     放課後。
     トレーニング開始前のミーティング時に、トレーナーさんが今までになく真剣な表情で問うてきます。
    「ナナカマド賞に出走しよう。それでいいね?」
     BGⅢナナカマド賞。
     ジュニア級にとってはデビューしてから初めてのグレードを冠した重賞であり、ジュニア級三冠の初めの一つでもあります。
     正確に言えば、ばんえいグレード、つまりBGⅢと表記されます。ただ他の平地競争と混同しようがないので”ばんえい”の部分を略したりもします。
     重賞。
     一定以上のレベルに達している大きなレース、多くの観客を集めることができる看板ともなるレースです。それはつまり、一定以上の強さがあると認められたのと同じで、出走する事自体に名誉があるとも言えます。
     あたしは、その言葉に、はっきりと頷きました。
    「はい!出ましょう!」

  • 45◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 21:35:05

     おばあちゃんが大昔に辿った道の入り口に、あたしも立ちました。
     とうとう、ここまで来ました。
     来たからといって止まりません。進み始めたからには、前に進むしかありません。
     それはレースと同じ。
     たとえ立ち止まったとしても、ゆっくりではあったとしても、前に進む事それ自体を躊躇いはしません。
    「分かった。登録を進めておく。今までのスノウ君の実績であれば、出走枠には確実に入れる。
     ただし、ナナカマド賞でのばんえい重量は3000kgだ。今までに経験のない重量でのレースになる」
     その重さでのズリ曳き運動は経験済みで、練習はしています。3000kgであっても曳く自信はあります。
     練習はしていますが、しかし、やはり練習と本番は違うのがレースです。
    「強力なライバルがいなければ楽だが、このレースの性格として、確実にそうはならないだろう。
     ジュニア三冠の初戦だ。当然、この世代で実力のある子は勝ちを狙いに来る。
     だがしかし、スノウ君が実力を出し切れば勝ちは十分に狙える。そのレベルにいる」
     トレーナーさんはそこで言葉を区切り、一呼吸、入れました。
    「僕はそう信じている」
    「はい!」
     決まりました。
     次走は、10月半ばのGⅢナナカマド賞です!

  • 46◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 21:35:40

     シャコータングラムさん、クインルゴサローズさんは既に出走登録しています。

     お二人が出てくるのは予想通りですし、怪我や不調はなさそうなのは嬉しいです。

     モチモッツァレラさんの動向が気になるところですが、彼女はナナカマド賞に…

    1.出走する

    2.出走しない

    dice1d2=1 (1)

  • 47◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 21:39:20

     第10R、BGⅢ、ナナカマド賞。
     本日のメインレースです。
     同室のシャコータングラムさん、なにかと一緒になるクインルゴサローズさんとモチモッツァレラさんも出走です。
     重賞。BGⅢ。
     それに出ている。あたしが?
     余計な事を考えないようにと追い出しても、牛が反芻しているかのようにまた戻ってきては、頭の中でぐるぐる回ります。
     すー。
     ふー。
     思考もですが、自分の呼吸音がやけにうるさい。
     パシーン!と、いきなり、あたしの太腿が良い音を立てました。
    「いったぁ!」
    「スノウ君、そんなに緊張してどうする。重賞と言っても、所詮は賞金が少し多くてちょっと周りより強くないと出れないというだけだ。
     見ろ、メンバーはいつものクラス戦とほとんど変わらないぞ。それにそんなガッチガチのトモでどうする。もう少しストレッチしなさい」
    「はぁい」
     床に足をまっすぐに伸ばした四つん這いのような姿勢になって左右のリザードウォークを入念に。次に立ち上がっては左右のニーハグ。筋量が多いと身体が硬いと誤解されがちですが、十全に筋肉を伸縮させて鍛えるには柔軟性は必須です。
     トレーナーさんに叩かれて太腿についた掌の形をした熱が引くにつれ、頭の中のグルグルも引いていきました。
    「勝ったら、そうだな……肉でも食べに行こうじゃないか。祝勝会だ」
    「もし負けたら?」
    「そうだな……肉でも食べに行こうじゃないか。残念会だ」
    「あはっ!なんですか、それぇ。同じじゃないですか」
     トレーナーさんが、ニッと笑います。
    「そうだ、同じだ。全て、やる事はいつもと、同じだ。
     練習でも曳いた重さを今日はレースコースで曳く。それだけだ」
     あたしへのトレーナーさんの言葉は、それはまるでトレーナーさんが自分自身に言い聞かせているようにも聞こえました。
    「パドック入場でーす!」
     パンパンとトレーナーさんが、あたしの二の腕を軽く叩きます。
    「イイ感じに抜けたな。さて、時間だ。楽しんでおいで」
    「はい!いってきます!」

  • 48◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 21:39:59

    ばんえい重量は、3000kg。

    『ばんえい重量補正』 = 6(3000kg~3499kgは6で)

    カミノクニスノウのやる気は『絶好調』です!


    天気は、

    1.晴れ 2.曇り 3.雨(雪)

    dice1d3=2 (2)


    それぞれウマ番は…

    1.カミノクニスノウ 2.シャコータングラム 3.クインルゴサローズ 4.モチモッツァレラ

    dice4d10=4 6 3 10 (23)

    です。


    あたしの人気は…

    dice1d5=1 (1)

    です。


    みんなのコンディションは…

    1.シャコータングラム 2.クインルゴサローズ 3.モチモッツァレラ

    1.絶不調 2.不調 3.普通 4.好調 5.絶好調

    dice3d5=3 3 2 (8)

  • 49◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 21:59:59

    『夜空を覆う雨雲が緊張感を演出します、帯広競バ場。まだ雨は降り出していませんが西から冷たい夜風が流れてきます。
     今日のメイン競争はジュニア級の重賞、ナナカマド賞、BGⅢ。寒空の帯広に熱き心の若駒が揃う!
     曇天模様の帯広競バ場。バ馬水分は1.9%。ややバ場の乾いた重めのバ場になりました!』
     流れるアナウンスに場内が沸きます。太陽は地平線の向こう。既にナイター照明が灯っていますが、それでも観客は帰らずにメインレースの始まりを今か今かと待っています。
     人が多い。声援が多い。これが重賞。
     あたしは握った左右の拳で、自分の太腿をトントンと軽く叩きます。
     いきますよ、あたし。いきますよ、あたしの脚!
    「日本の米はぁ……」
     そのまま右拳で左肩、左拳で右肩を。
     パァン!
     最後に両手が頬を張った乾いた音が、辺りに響きます。
    「世界一ぃ!!」
     熱くなった筋肉。
     時刻は夜の七時過ぎ。肌には10月の冷たい夜気があたり、緩やかに身体から熱を奪っていきます。でも暖めた体が冷え切るまでに勝負はついているでしょう。それが白となるか黒となるかは、これから分かることです。
     眼の奥から後頭部にかけて、じわりじわりと熱くなる感覚。
     薄く長く吐いた息が、蛇の舌のような、長く白い帯を作ります。
    『注目の1番人気、4番カミノクニスノウ』
    『前走まで好走が続いています。キラリと光るものを持っている私イチオシのウマ娘です。
     ジュニア三冠の第一戦目を制して実力を証明してほしいですね』
     帯広の広い夜空に、ファンファーレが響きます。
    『さぁ各ウマ娘、ゲートイン完了。準備が出来たところから係員が離れています。
     ……出走の準備が整いました』
     スターター台の上で、赤い旗が天を指します。

  • 50◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 22:02:01

     一瞬の静寂。

     最高に高まる緊張。張り詰める興奮。時間が飴のようにねっとりと伸びる感覚。


     ゲートが開きました!

    『各ウマ娘、一斉にスタートしました』

     橇とウマ娘をつなぐ装具が一斉に、盛大に鳴り響きます。

    「ッだっっしゃあぁぁっ!!」


    『第1直線』 ばんえい重量補正基準値=10 判定 dice2d6=5 3 (8)

     →スキル『集中力』 基準値=8 判定 dice2d6=6 2 (8)

    『第1障害』 ばんえい重量補正基準値=12 判定 dice2d6=1 6 (7)

    『第2直線』 ばんえい重量補正基準値=14 判定 dice2d6=2 4 (6)

    『第2障害』 ばんえい重量補正基準値=16 判定 dice2d6=2 4 (6)

    『最終直線』ばんえい重量補正基準値=14 判定 dice2d6=6 2 (8)


    最終着順ダイス dice1d10=3 (3)

  • 51◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 22:09:32

    ――本レースより、最終着順の計算が変更される。
      1d10の出目 - ( スタミナ補正 + やる気補正 + 天候/馬場補正 + 5エリア分の総成功量+ライバル補正) = 最終着順となる。
    ――同じレースに名ありのライバルが出走していると、ライバル一人につき-1の補正を受ける。


    『第1直線』の成功量 = 出目(8) + パラメータ補正(6) + 根性補正(0) + 脚質補正(0) + スキル発動(1) - 10 = 5
     →スキル『集中力』発動成功!
    『第1障害』の成功量 = 出目(7) + パラメータ補正(3) + 根性補正(0) + 脚質補正(1) - 12 = -1
    『第2直線』の成功量 = 出目(6) + パラメータ補正(6) + 根性補正(0) + 脚質補正(1) - 14 = -1
    『第2障害』の成功量 = 出目(6) + パラメータ補正(3) + 根性補正(1) + 脚質補正(0) - 16 = -6
    『最終直線』の成功量 = 出目(8) + パラメータ補正(6) + 根性補正(1) + 脚質補正(0) - 14 = 1

    最終着順 = 出目(3) - (スタミナ補正(6) + やる気補正(2) + 天候/馬場補正(0) + スキル発動(0) + 総成功量(-2) + ライバル補正(-3)) = 0

    順位は……一バ身差をつけての1着!

  • 52◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/08(土) 22:17:13

    ※ダイスが全体的に上振れしてくれたので、スノウちゃんの勝利となりました。
    計算上は2d6の期待値通りのままでは、ライバルが3人いると3着でした。
    トレーナーさんの言葉通り、スノウちゃんは力を出し切って勝ち星を掴みました。

  • 53二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 22:22:44

    実力を遺憾なく発揮して勝ちきったな

  • 54◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/09(日) 00:47:29

    ※2着以下を決めたいので、それぞれのダイスを振ってみます


    【シャコータングラム】

    『第1直線』dice2d6=1 4 (5) 『第1障害』dice2d6=4 5 (9) 『第2直線』dice2d6=6 2 (8) 『第2障害』dice2d6=3 6 (9) 『最終直線』dice2d6=2 5 (7)

    最終着順ダイス dice1d10=3 (3)


    【クインルゴサローズ】

    『第1直線』dice2d6=4 1 (5) 『第1障害』dice2d6=1 1 (2) 『第2直線』dice2d6=3 2 (5) 『第2障害』dice2d6=3 6 (9) 『最終直線』dice2d6=2 1 (3)

    最終着順ダイス dice1d10=4 (4)


    【モチモッツァレラ】

    『第1直線』dice2d6=4 5 (9) 『第1障害』dice2d6=6 5 (11) 『第2直線』dice2d6=2 4 (6) 『第2障害』dice2d6=1 2 (3) 『最終直線』dice2d6=4 3 (7)

    最終着順ダイス dice1d10=4 (4)

  • 55◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/09(日) 01:02:47

    【シャコータングラム】
    『第1直線』=出目(5)+パラメータ補正(6)+根性補正(0)+脚質補正(1) - 10 = 2
    『第1障害』=出目(9)+パラメータ補正(7)+根性補正(0)+脚質補正(1) - 12 = 5
    『第2直線』=出目(8)+パラメータ補正(6)+根性補正(0)+脚質補正(0) - 14 = 0
    『第2障害』=出目(9)+パラメータ補正(7)+根性補正(0.5)+脚質補正(0) - 16 = 0.5
    『最終直線』=出目(7)+パラメータ補正(6)+根性補正(0.5)+脚質補正(0) - 14 = -0.5
    最終着順=出目(3)-(スタミナ補正(7)+やる気補正(0)+天候/馬場補正(0)+総成功量(7))=-11

    【クインルゴサローズ】
    『第1直線』=出目(5)+パラメータ補正(7)+根性補正(0)+脚質補正(0) - 10 = 3
    『第1障害』=出目(2)+パラメータ補正(5)+根性補正(0)+脚質補正(1) - 12 = -3
    『第2直線』=出目(5)+パラメータ補正(7)+根性補正(0)+脚質補正(1) - 14 = 0
    『第2障害』=出目(9)+パラメータ補正(5)+根性補正(0.5)+脚質補正(0) - 16 = -0.5
    『最終直線』=出目(3)+パラメータ補正(7)+根性補正(0.5)+脚質補正(0) - 14 = -2.5
    最終着順=出目(4)-(スタミナ補正(4)+やる気補正(0)+天候/馬場補正(0)+総成功量(-3)) = 3

    【モチモッツァレラ】
    『第1直線』=出目(9)+パラメータ補正(2)+根性補正(0)+脚質補正(1) - 10 = 3
    『第1障害』=出目(11)+パラメータ補正(7)+根性補正(0)+脚質補正(1) - 12 = 8
    『第2直線』=出目(6)+パラメータ補正(2)+根性補正(0)+脚質補正(0) - 14 = -5
    『第2障害』=出目(3)+パラメータ補正(7)+根性補正(3)+脚質補正(0) - 16 = -2
    『最終直線』=出目(7)+パラメータ補正(2)+根性補正(3)+脚質補正(0) - 14 = -1
    最終着順=出目(4)-(スタミナ補正(4)+やる気補正(-1)+天候/馬場補正(0)+総成功量(3)) = -2

  • 56二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 01:10:22

    グラムとんでもねぇなおい

  • 57◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/09(日) 01:12:54

    帯広第10Rの着順が確定いたしました。
    1着カミノクニスノウ
    2着シャコータングラム
    3着モチモッツァレラ
    4着クインルゴサローズ
    と確定しました。
    シャコータングラムは終始良い走りを見せ、カミノクニスノウとどちらが1着となってもおかしくない場面が多々ありましたが、最終直線の伸びで突き放されました。
    反面クインルゴサローズは全体的に奮わず、不調ながらも第1障害をスムーズにクリアしたモチモッツァレラに追いつく事が出来ませんでした。

    ※同じシステムで戦わせるとスノウが負け続けになります。

  • 58二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 08:21:24

    スノウちゃんお見事!
    これで心置きなく肉が食える
    つまり…さよなら、トレーナーのおサイフ…

  • 59◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/09(日) 13:34:06

    モチモッツァレラが意外に上位に食い込んできましたが、外観が鹿毛の長身スレンダー/癖のない肩辺りまでの髪という事くらいしか決まっていません。
    せっかくですので、盛りたい属性など募集します。

  • 60二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 15:25:22

    乳製品が苦手。

  • 61二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 17:13:03

    寮内でも一目を置かれるジンギスカン奉行

  • 62二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 18:04:15
  • 63二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 20:30:09

    美深町で何かないかなと調べてみたらチョウザメ養殖してキャビア獲ってんのか……

  • 64◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/09(日) 22:41:36

    ※来客があり書く時間が取れませんでしたので、フレーバーは明日以降に書きます。

  • 65二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 07:27:31

    保守

  • 66二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 16:38:07

    保守

  • 67二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 20:08:30

  • 68◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/10(月) 21:43:20

    『カミノクニスノウ、今ゴールイン!
     2着に一バ身の差をつけての堂々の1着!
     ジュニア級三冠の一つを手に入れ、世代最強に一歩近づいた!』
    『カミノクニスノウが地面を踏みしめて吠えていますね。よほど嬉しいと見えます』
    『惜しくも2着となったシャコータングラムも素晴らしい曳きを見せてくれました!今年はこの二人が台風の目となっていくのか!』

     スタート前のトレーナーさんとのやり取りが緊張を抜いてくれたおかげだと思います。
     するっとレースに集中できました。
     目の奥は熱いのに、視界は普段よりも広い。興奮と緊張は体を熱く駆動させているのに、どこか一歩引いたような感じでゲートに入れました。
     体と心の歯車がきちっと噛み合ったような、奇妙な感覚。
     ゲートが開くや否や、10人それぞれが好スタートを切り、横一線の飛び出しを見せました。
     あたしもスムーズな出足で、そのまま勢いを殺さずに第1直線を過ぎ、軽快に第1障害を突破。
     逃げるグラムさんモチちゃんに先行されますが、予想通りなので慌てはしません。第1障害でこちらの速度が落ちるのは想定内です。

  • 69◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/10(月) 21:46:02

     それにしてもモチちゃんが第1障害を越えるのが早い。
     モチちゃんの逃げに焦ったのか、クインルゴサローズさんのペースが大きく崩れました。
     彼女をパスしながらも、あたしも思わずモチちゃんを追いかけたくなるところを、ぐっと堪えます。
    (待ちなさい、あたし。今日はちゃんと周りが”見えてる”。障害で追っちゃダメですよ!)
     モチちゃんはあたしよりパワーはあるし粘り強い足腰をしています。障害で勝負するには分が悪い。けれど、スピードではこちらが有利です。
     10人全員がレースでは未知のばんえい重量3000kg。
     しかしながら実力者ぞろい。勢いよく中間点を通過し、第2障害にたどり着きました。
     でも、まだ逃げるグラムさんには追い付けない。
     焦らず、第2障害の麓でしっかりと刻みます。熱が籠ってオーバーヒートしかけで、息切れしかけている全身の筋肉達を冷まして酸素を送り込みます。踏ん張っていた血圧が急激に抜けてグラグラと眩暈と頭痛がします。
     残るは、第2障害と最終直線。
     力の弱いあたしでは、いくら刻んでもバイキを上手くこなせても第2障害では地力の差で大きく劣ります。特にグラムさんには到底敵わない。
     仕掛けどころは、あたしのスピードを活かせる、障害の天辺から最終直線。
     這い上がるようにして第2障害をクリア。
     グラムさんにはまだ追いつけない。
     一瞬、先行して第2障害を下るグラムさんの、その背中がブレました。橇の重みに押されたのか、少しだけ砂に足を取られたのか。
    「行くなら、ここだぁぁっ!」
    「ヤッバ!ック……ソァ!いかせねーっしょぉっ!!」
     逃げるグラムさんを捉えました。
     ゴールが遠い。
     残り35メートル。
     上り勾配5パーセント。あたしとグラムさん。二人の足が、その傾斜に絡みつかれて止まります。
     ゼハッゼハッと観客席まで聞こえるほどの荒い音。天を仰いで、肩というより上半身全体を使って呼吸します。
     ここで脚を止めたのを好機と見たのか、中盤まで控えていた他の子達や、抜いた子達が猛烈な勢いで第2障害を越えてきたのが、橇の鳴る音で分かります。軽くて一歩が長いリズムの足音はモチちゃんの。あの重い足音はクインルゴサローズさんの。
     息を整えたらすぐにバイキをかけて歩き出し、追い込みをかける後続を放します。
    「でも、この距離ならぁッ!」
     あたしの足は負けない!

  • 70◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/10(月) 21:47:40

     身体を駆け抜ける衝動。
     ヘトヘトの身体はその喜びを表現させようとするには動きが足らず、行き場を探していた興奮は、自然とまだ動く足に向かいます。
     あたしは、地面をズンと思い切り踏みしめました。
     ごつい蹄鉄とシューズが、乾いたぶ厚い砂に沈みこみます。
     どれだけ強烈に踏みつけてもやんわりと受け止めてくれる、頼もしい大地の感触。
     勝利の雄たけびが、焼けそうなほどカラカラの喉を付いて迸りました。

    『カミノクニスノウ、今ゴールイン!
     2着に一バ身の差をつけての堂々の1着!
     ジュニア級三冠の一つを手に入れ、世代最強に一歩近づいた!』
    『カミノクニスノウが地面を踏みしめて吠えていますね。よほど嬉しいと見えます』
    「にくだーー!!」

  • 71◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/10(月) 21:50:30

     肉です。
     ニク、ニク、ニク、ニク。
     ニクタベイコウ。ソウシヨウ。
     さすがに頑健なばんえいウマ娘とは言え、全力を出し切ったレース直後では、まともにご飯は食べられません。
     数日経ってからジンギスカンです。
     実際、レース後の回復としても、体作りとしても良質な蛋白質の補給は欠かせません。ばんえい競バを走るウマ娘は筋肉の重さが負担になるような長距離を走るステイヤーではないので、筋肉はしっかり育てる必要があります。
    「ところで、どうして皆さんもいるんですか?」
    「いやぁ、スノウが肉だっつーから。
     そっち祝勝会こっち残念会。まとめてやれば楽っしょ」
    「次こそは負けませんわぁ。その為には一刻も早く体を戻しませんと。
     それにはやっぱりお肉が一番ですわぁ」
    「あの、私も、一緒にお肉、食べたいなって。
     あ、ジンギスカンで食べるラム肉ですけど体内で合成できない必須アミノ酸やミネラルビタミンがバランス良く含まれていて低脂肪高蛋白質でアスリートの体作りにとても役立つ良質な食材で……」
     お店の中に立ち込めている、煙と香りと音。
     その全てが食べ盛りの乙女の食欲をばちばちに刺激します。
     四人の乙女の、ですが。

  • 72二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 21:51:25

    そうきたかw

  • 73◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/10(月) 21:52:56

     トレーナーさんと二人で行く筈だったのですが、どこでバレたのか、ジンギスカンパーティのようになってしまいました。

     ばんえいウマ娘、それも現役競走バが四人も同じテーブルについていると狭くて仕方ありませんので、お店には申し訳ないですが、仕方なく隣のテーブルも使わせてもらっています。空いたお皿を置く専用として。

     それでも狭いので、ばんえいウマ娘のテーブル、トレーナー陣のテーブルと別れて座ることになりました。向こうのテーブルにはあたし、グラムさん、クインルゴサローズさん、モチちゃんのトレーナーさんが席に付いています。お冷の入ったグラスを片手に、それぞれのトレーナーさんが微妙に引き攣った顔をしています。

     それにしても、身長2メートル近い巨体のウマ娘が四人もいると、密度がすごいです。筋肉がみっちりしてます。

     帯広に住んでいれば、ばんえいウマ娘が集まっているのはそんなに珍しい光景でもないのですが、他所ではまずお目にかかれない光景でしょう。たまたま来店していた観光客の方と一緒に記念撮影もしたり。中央と違って知名度が低く、観光資源としての面も強いばんえい競バにとって、ファンサービスは大切です。

    「今回は負けたけど、次はヤングチャンピオンシップで勝負するさー!」

    「その前にトライアルですね!」

    「望むところですわぁ。でもぉ今日はお肉の量で白黒つけるといたしましょうか~。

     ぶっ潰して差し上げますわぁ」

     ぶっ潰すのはあたし達のお腹ですか、お店の在庫ですか、トレーナーさん達のお財布ですか。

     どこかからか、悲鳴が聞こえた気がします。


     でりしゃす!


    カミノクニスノウの焼肉代 dice4d9999=5139 1907 1735 5664 (14445) + \10,000

    トレーナーさんの食事代 dice4d999=75 579 842 401 (1897) + \500



    シャコータングラムの焼肉代 dice4d9999=7102 1502 8935 3628 (21167) + \10,000

    クインルゴサローズの焼肉代 dice4d9999=3599 5854 3512 5816 (18781) + \10,000

    モチモッツァレラの焼肉代 dice4d9999=8555 3415 2293 5854 (20117) + \10,000

  • 74◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/10(月) 21:58:23

    ※焼肉代が割と常識的な範疇に納まってしまったので、もう少しダイスを盛っても良かったかもですね。
    一冠を取りましたので、このままジュニア三冠路線で行くと、スノウちゃんとグラムは南北海道産駒特別で対決→ヤングチャンピオンシップとなります。
    しかしウマ娘世界で産駒って単語は使っていいのかしらん?

  • 75二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 22:52:27

    まあ流石に置き換えだとは思いますが……>産駒

    かといって「2歳→ジュニア」とか「牝馬→ウマ娘」とかそういう例が多分アプリ実装レースにはないんじゃないかな……

    なんかそれっぽいのを考えないとかもしれませんなぁ

  • 76二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 23:19:39

    この場合の産駒は生産地を指してるからウマ娘世界だと出身地って事になると、○○地区予選とかでいいんじゃないかな。

  • 77◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/10(月) 23:44:04

    参考にさせて頂きます。ありがとうございます。
    若駒ステークスとかで"駒"と表現するのはありますが、"産駒"となるとだいぶ違和感があって悩んでいました。

  • 78二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 09:12:57

    保守

  • 79二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 18:20:05

    保守

  • 80◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/11(火) 22:09:33

     授与されたナナカマド賞の優勝レイがトレーナー室に飾ってあります。家具一つ増えただけですが、なんか一気に部屋が強豪チームといった風に引き締まって見えます。
     吊るされているそれを見ると、自分でも分かるくらいに顔のニヤニヤが止まりません。
    「実際、スノウ君は世代の中では強豪の一人だよ」
    「うふへへへへ、重賞ウマ娘って呼んでくれても良いんですよ?」
    「すぐ調子に乗らない」
    「はい」
     とは言え、窘めるトレーナーさんだって時々顔が緩んでますよ。
     ナナカマド賞に勝利したことで、今後の路線は決まりました。
     ナナカマド賞からトライアルレースの南北海道地区選抜特別を経てBGⅡヤングチャンピオンシップに至る路線は確定です。GⅢを勝ったと思ったら、いきなりグレードが上のGⅡに挑戦ですが、ここで躊躇う理由はありません。
     三冠路線を回避しても、ジュニア級では他の重賞競走がBGⅡ翔雲賞かBGⅡ黒ユリ賞しか無いので、躊躇ったり回避したりする意味も少ないというのもあります。しかも翔雲賞と黒ユリ賞は開催時期が一週間しか離れていないので、実質的には一レースです。
     ヤングチャンピオンシップのトライアルレースは、全道を北央、南北海道、北見、釧路、十勝の五つの地区に分け、その地区を出身地とするウマ娘だけで争う特別競走。「ばんえい甲子園」と呼ばれる一連のレース群のことです。
     あたしの場合、上ノ国町は檜山振興局管内なので南北海道地区選抜特別を走ります。
     南北海道地区の対象エリアは、石狩、後志、渡島、檜山、胆振、日高と道外出身者限定。
     そして、グラムさんことシャコータングラムの出身地は積丹町。後志振興局管内です。つまり、このままいけばヤングチャンピオンシップの前に、トライアルで直接対決となります。
     南北海道地区選抜特別の出走資格は満たしています。

  • 81◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/11(火) 22:17:13

    「トライアルなので本番よりも若干ばんえい重量は軽いけど、ほとんど差は無い。本番並みの厳しさと言っても良い。
     ナナカマド賞から南北海道特別までは一ヶ月あるけど、ここをどう使うか、だろうな」
     トレーナーさんの言葉に、あたしは頷きました。
    「普段通りにレース後の回復と基礎能力の向上に努めるのもいいだろう。スノウ君の体に無理をさせないので、トレーニング中に故障するようなリスクが少ない。
     他には、何かしらの武器を磨いてみる、あるいは弱点を減らすという手もある」
    「武器、ですか」
    「ナナカマド賞、曳いていた時の感じはどうだったかい?」
     あたしを人差し指を頬に当てて考え込みました。
     レース展開は、ビデオでいくらでも検証できます。なので、そういう事を聞いているのではないと理解できます。トレーナーさんが求める答えは、データに現れない曳いていたあたしにしか分からない感触、でしょう。
    「うーん、調子は良かったと思いますけど……なにか上手くハマったというかそんな感じがしました」
    「うん。上手くハマった、つまり実力を十分に発揮できれば勝てる、という事かな。ただ、それは上手くハマらなければ厳しい、という事でもある。
     いつでも十分に実力を引き出せるように練習している訳だけど、と前置きするトレーナーさん。
    「この先は大きなレースになればなるほど、ばんえい重量が増えていく。したがって基礎的な能力を上げていくだけでは厳しくなってくる可能性は十分にある。
     地力に優れていれば言うにこした事はないが、フィジカルの才能はなかなか得られるものでもない。そこで、それ以外の武器を持つと言う選択肢が出てくる。
     得意な点があればそれによりレースを有利に展開できるようになるし、不得意が少なければ相手の有利を押し付けられたりミスした時でも凌ぎやすくなる」
     ただ漫然とトレーニングをしているだけでは勝ちは覚束ない、という事でしょう。
     あたしは何を求めて、次のトレーニングをしていきましょうか。

  • 82◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/11(火) 22:24:45

    次のトレーニング方針として…

    1.自分の強みを活かす。相手を振り切り、追い越すための速度を磨きましょう。

    2.弱点を克服したい。更なるばんえい重量にも怯まない力が欲しい。

    3.様々なシーンで効率よく物事を運べるテクニックを身に付けたいです。

    4.時に精神は肉体を超えます。全てを出し尽くしてなお競り合い勝負する根性をいれましょう。

    5.実戦に勝るもの無し。練習では身に付かないものがきっとあるのでレース経験を積みましょう。

    6.リスクは取らない。回復と基礎能力向上に努めます。

    dice1d6=1 (1)

  • 83◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/11(火) 22:35:21

    ※スノウちゃんは自らの持ち味にさらに磨きをかける方向でいくようです。
    どんなトレーニングにするかを考えるので今日の進行はここまでとしますが、面白そうなメニューがあれば募集します。
    他にもキャラの特技だとかエピソードだとかの妄想や存在しない記憶もぜひ。

    また、成長の判定は下記のようにしたいと思います。

    ――パラメータ上昇判定
    パラメータは低いと上がりやすく、高いと上がりにくい。
    判定は対象パラメータのランクによって変動し、
    ランクA~B:2d6≧9
    ランクC~D:2d6≧7
    ランクE~G:2d6≧6
    で+1となる。
    上がらなかった場合は、次回の成長チェック時に確率アップするヒントLvが付与される(ヒントLv1につき次以降の出目+1)。

    ――スキル習得判定
    対象スキルの発動基準値が、そのまま習得の基準値となる。
    2d6+賢さ≧基準値
    で習得する。
    習得できなかった場合は、次回の習得チェック時に確率アップするヒントLvが付与される(ヒントLv1につき次以降の出目+1)。

  • 84二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 07:38:58

    保守

  • 85二次元好きの匿名さん24/06/12(水) 18:20:11

    ばんえいウマ娘のジムトレ風景が見てみたい
    ムワッムキッときゃぴきゃぴ可愛いの両立が見たい

  • 86◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/12(水) 21:49:37

     ボコォン!
     軽快な音。
     大空に打ち出されたバレーボールが、青い背景に白い弧を描きます。
     ズシャズシャズシャと重く砂を踏みしめる音がバレーボールを追います。
    「今度こそ……ッ!」
     必死に差し出されたあたしの手は、追いかけたボールに届くことなく、使い込まれてだいぶ茶色に染まってきたバレーボールは空しく地に落ちました。
     そのまま派手にバウンドして転がっていきます。
    「おそい!もっと地面を上手く使って足を回せ!
     もう一本いくぞ!」
    「はい!」
     全力疾走で乱れた息を整えながら速歩でトレーナーさんのところまで戻ります。だいぶ冷たくなってきた風が、汗が滝のように流れる肌を撫でていき心地よい。
     ショットガンタッチ。
     射出されるボールへの反応速度と、純粋に加速とトップスピードを鍛える練習です。
     二つの高速回転するローラーでボールを打ち出すバレーボールマシンから放たれたボールと同時にスタートして、ボールが地面に付く前にキャッチするかタッチする。
     やることはシンプル。
     やろうとすれば至難。
     あたしの持ち味であるスピードにさらなる磨きをかけるための練習です。なので、今までよりもボールの飛距離が長い。つまり、速く走らなければ追いつけません。
     普段のトレーニングに加えてのメニューですが、なかなか成功する気配が無いです。惜しいところまではいくのですが。

  • 87◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/12(水) 21:52:32

    「スノウ君。これを見たまえ」
     次のボール発射を待ち構えているとかけられた言葉に、あたしは振り返り。
     そして、絶句しました。
     トレーナーさんの手には、新品と思しき、ぱかプチタイシンが握られていました。
    「な?!なにをするんですか、トレーナーさん!」
    「今、スノウ君が考えている事だよ。
     この彼女を汚れた砂まみれにしたくなければ、君が受け止めてあげれば済む。
     スノウ君を鍛えるためなら、僕は鬼にでもなろう!さあ、位置について」
     電動モーターが唸り、ローラーが無慈悲に回転を始めます。
     ボコォン!
    「あーーーー!タ゛イ゛シ゛ン゛ーー!」
     頭はトレーナーさんのあまりに突飛な行動にパニックですが、あたしの体は自動的に反応していました。
     一瞬でフォームを整え、ギュッと膝を曲げてバネを貯め、体重を乗せた蹴りで全身を打ち出します。あっという間に、あたしの、二メートル弱のばんえいウマ娘の巨体がトップスピードに乗ります。
     それでも宙を舞う放物線と、地を駆ける自分のベクトルは交差しない。
     速度が足らない。
     これ以上は足のピッチは上がらない。
     地面を踏む力をもっと上げてもスリップするだけで意味が無い。
     だったら、スリップするギリギリのところを見極めて、限界まで力を込めて地面を踏む!
     踏み込んだ脚を自分の筋肉だけで上げているのでは間に合わない!
     踏んだ力が地面から跳ね返ってきたのをふわりと受け流して自前の筋力と合力させて、脚を前に出す!
    「くっ!あぁぁぁ!ぉ落としてぇぇ!」
     宙を舞うソレが砂の落ちる前に指先が、かかりました。
    「たまるかぁあああっ!!」
     ぐっと指に引っかけて、両腕で掻き込むようにして、走り込む勢いそのままに胸に飛び込ませました。
     胸の抱えられたそれは、茶白いバレーボールでした。
     ぱかプチタイシンがローラーに潰されて丸くなってる!
    「タイシンになにしてくれてんですかぁ!」
    「ぐっはぁ!」
     あたしが投げた砲弾のような勢いのバレーボールの直撃を受けたトレーナーさんが吹っ飛びました。
     ナイス、キル!

  • 88◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/12(水) 21:55:23

     ……いや、違いますよ!

    「ああああごめんなさい、トレーナーさん!大丈夫ですか?!」

     一瞬で頭が冷えます。ぱかプチタイシンをマシンで打ち出す暴挙を目にして頭に血が上り、ちょっとやり過ぎかもしれません。

    「いたたた……よく見てくれ。さすがに僕でもそんな事はしないよ。

     打ち出す寸前にすり替えておいたのさ」

     バレーボールマシンの横には、透明なビニール袋に入ったぱかプチタイシンの姿が。

    「でも酷いじゃないですか!」

    「すまない。今思えば、スノウ君をモノで釣って走らせたし確かにひどいな。

     僕の方も焦ってしまっていたようだ」

     申し訳なさそうな顔のトレーナーさん。

    「ぱかプチは勝ったお祝いのプレゼントだよ。

     スノウ君はそれが好きなようだし、こういう時なら記念にもなるかと思ってね」

     袋には小さなリボンシールが貼られていて、そこには『ナナカマド賞優勝おめでとう』と手書きの文字が。

     沸き上がる二つの喜びの衝撃に、喉から言葉が出てきません。

     ビニール袋を剥がして早く抱きしめたいのですが、汗と泥で汚れた体操服でそんな事をしたら汚れが移ってしまうので出来ず、もどかしいです。抱きしめたいのに抱きしめられないアンビバレンツ。

    「喜んでもらえたのなら良かったよ」

     吹っ飛ばされた時に身体中に付いた砂を払い除けながら話すトレーナーさん。

     それ以外にも得るものはあったようだしね、と続けるトレーナーさんの言葉は半分くらいしかあたしに届いていませんでした。


    ――パラメータ上昇判定(スピード)

    カミノクニスノウのスピードはランクBのため、2d6≧9で+1となる。

    dice2d6=3 4 (7)

  • 89◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/12(水) 21:58:25

    スピードのヒントLv1が1上がった(次回以降のスピード成長チェック時に出目+1)

    スノウちゃんのぱかプチタイシン 0/6体 → 1/6体

    やる気は絶好調をキープしている

  • 90二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 07:57:45

    トレーナーも丈夫だな

  • 91二次元好きの匿名さん24/06/13(木) 16:14:28

    保守

  • 92◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/13(木) 22:18:43

     1ヶ月のトレーニングでさらなるスピードの為の何かは掴みかけているのですが、残念ながらモノには出来ずじまいでした。もやもやっとした感じに朧げに見えてはいるのですが、手の内に納めきれていないというか。
     何かを掴みかけてはいますが、時間は容赦なく過ぎていきます。
     ちょっとでも待って欲しいのですが、待ってくれる訳がなく。
     今自分にあるモノもっているモノで勝負するしかありません。
     その代わり、体調は万全ですよ。

     第10R、本日のメインレースの南北海道地区選抜特別です。
     同室のシャコータングラムさんも出走です。
     このレースの上位2名にBGⅡヤングチャンピオンシップの出走権が与えられます。
     つまり1着ではなくても、次に進めます。
     2着でも何とかなる。
     でも、あたしが狙うのは1着です。
     対戦相手にはグラムさんもいます。他に出走する子達だって、なんだかんだで同クラスの強者です。
     2着でもいい、なんて最初から腰の引けた意気込みでいたら喰われます。
     勝ちたい気持ちはみんな同じ。
     そこに勝てなくてもいいかも、なんて半端な気持ちを抱いたままでゲートに入るのは、居並ぶ同級生たちにすごい失礼というものです。
    「その意気だスノウ君。出るからには常に勝ちを狙っていこう」
     トレーナーさんが背中をパンと叩いてくれました。
     背中と一緒に気持ちも押されます。
    「はい!」
     檜山管内出身でヤングチャンピオンシップに優勝したウマ娘は、せたな町出身のヤマカツエース先輩ただ一人。
     今までの優勝者は、帯広競バ場がある十勝出身者が圧倒的に多いです。
     ばんえい競バのメインストリームから外れた地区にだって強いウマ娘がいるってことを分からせてやりましょう。ギャフンと言わせてやりますよ。
     その為にも大切な、この前哨戦。
    「勝ちます!」

  • 93◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/13(木) 22:19:24

    ばんえい重量は、3000kg。

    『ばんえい重量補正』 = 6(3000kg~3499kgは6で)

    カミノクニスノウのやる気は『絶好調』です!


    天気は、

    1.晴れ 2.曇り 3.雨(雪)

    dice1d3=1 (1)


    それぞれウマ番は…

    1.カミノクニスノウ 2.シャコータングラム

    dice2d10=2 3 (5)

    です。


    あたしの人気は…

    dice1d5=1 (1)

    です。


    シャコータングラムのコンディションは…

    1.絶不調 2.不調 3.普通 4.好調 5.絶好調

    dice1d5=5 (5)

  • 94◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/13(木) 22:34:41

    『雲一つない星空のもと行われる、帯広競バ場。ダート直線200m、10人のウマ娘たちが挑みます。
     今日のメイン競争はジュニア級の特別競走、南北海道地区選抜特別。
     からりと晴れた帯広競バ場。バ馬水分は1.2%。バ場状態の発表は重となってしまいました』
    『ここまで重たいバ場だと得意、不得意が出てきちゃいますね』
     流れるアナウンスに場内が沸きます。ナイター照明に照らされた白い息が輝きます。
     重賞ほどではないですが、人が多い。さすがはGⅡのトライアルレースと言ったところでしょう。熱心なウマ娘ファンが、すでにここから本番のレースは始まっているとばかりに目をキラキラさせて応援してくれています。
     あたしは握った左右の拳で、自分の太腿をトントンと軽く叩きます。
     いきますよ、あたし。いきますよ、あたしの脚!
    「日本の米はぁ……」
     そのまま右拳で左肩、左拳で右肩を。
     パァン!
     最後に両手が頬を張った乾いた音が、辺りに響きます。
    「世界一ぃ!!」
     熱くなった筋肉。
     眼の奥から後頭部にかけて、じわりじわりと熱くなる感覚。
     喉の奥がひりつく感覚に、思わず唾を飲み込みます。
    「スノウ、気合入ってんねー」
     隣のゲートからグラムさんが話しかけてきます。まだ全員のゲートインが済んでいないので、ちょっと言葉を交わすくらいの時間はあるでしょう。
    「はい!グラムさんこそ調子良さそうじゃないですか」
    「まぁね~、けっこう気ぃ使ったさー。ま、お互いけっぱるべや。
     ……今日は負けないから」
     普段とはまるで違う、気迫に満ちたぎらりとした眼光があたしを射ます。
    『注目の1番人気、2番カミノクニスノウ』
    『前走のBGⅢナナカマド賞を熱戦の末に制しました。パドックでも注目を集める素晴らしい仕上がりですね。
     ジュニア三冠の第二戦に向けての前哨戦となる本レースですが、ナナカマド賞で惜しくも2着となった3番シャコータングラムとの再戦にもなります。
     これはライバル同士の熱い鍔迫り合いが見られそうですよ』
     帯広の広い夜空に、ファンファーレが響きます。
    『さぁ各ウマ娘、ゲートイン完了の様子。
     すべての係員が離れまして……出走の準備が整いました』
     スターター台の上で、赤い旗が天を指します。

  • 95◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/13(木) 22:36:47

     一瞬の静寂。

     最高に高まる緊張。舌でちろりと唇を湿らせます。

     ふーっと、吐き出された十本の白い息が緩やかに流れて煙る様は蒸気機関車の群れのよう。


     ゲートが開きました!

    『各ウマ娘、一斉にスタートしました』

     橇とウマ娘をつなぐ装具が一斉に、盛大に鳴り響きます。


    『第1直線』 ばんえい重量補正基準値=10 判定 dice2d6=6 4 (10)

     →スキル『集中力』 基準値=8 判定 dice2d6=1 3 (4)

    『第1障害』 ばんえい重量補正基準値=12 判定 dice2d6=6 5 (11)

    『第2直線』 ばんえい重量補正基準値=14 判定 dice2d6=1 1 (2)

    『第2障害』 ばんえい重量補正基準値=16 判定 dice2d6=6 5 (11)

    『最終直線』ばんえい重量補正基準値=14 判定 dice2d6=5 1 (6)


    最終着順ダイス dice1d10=10 (10)

  • 96◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/13(木) 22:42:12

    『第1直線』の成功量 = 出目(10) + パラメータ補正(6) + 根性補正(0) + 脚質補正(0) + スキル発動(1) - 10 = 7
     →スキル『集中力』発動成功!
    『第1障害』の成功量 = 出目(11) + パラメータ補正(3) + 根性補正(0) + 脚質補正(1) - 12 = 3
    『第2直線』の成功量 = 出目(2) + パラメータ補正(6) + 根性補正(0) + 脚質補正(1) - 14 = -5
    『第2障害』の成功量 = 出目(11) + パラメータ補正(3) + 根性補正(1) + 脚質補正(0) - 16 = -1
    『最終直線』の成功量 = 出目(6) + パラメータ補正(6) + 根性補正(1) + 脚質補正(0) - 14 = -1

    最終着順 = 出目(10) - (スタミナ補正(6) + やる気補正(2) + 天候/馬場補正(0) + スキル発動(0) + 総成功量(3) + ライバル補正(-1)) = 0

    順位は……一バ身差をつけての1着!

  • 97◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/13(木) 22:46:02

    ※概ね半分は1着取れない計算なんですけど、なんかスノウちゃんはダイス目だけで勝ち続けてますね。
    他に名ありが出走していないので、シャコータングラムは2着という事でいきます。
    しかし、そろそろシャコータングラムが曇りそうで怖い。

  • 98◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/14(金) 00:52:34

    ※AIを使って描いた、ロードワーク中のスノウちゃんのイメージイラストで保守。

  • 99二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 09:26:30

    保守

  • 100二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 19:01:50

    なかなか大変そうよねぇ

  • 101◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/14(金) 23:17:55

    ※寝不足と疲労で頭が回らずテキストが書けておりません。
    ばんえいウマ娘は基本的にのんびりしている気質なので、ギスギスはしないでしょう。
    レース場を離れれば変わらずにスノウとグラムは一緒にソフトカツゲン飲んだり、たまに一緒のベッドで寝たりしていることだと思います。

    スノウがGⅡ出走権を得て、スノウ含めてライバル達もそろそろ勝負服が見えてきた頃かなと。
    ある意味、信念のカタチともいえる勝負服ですが、当のスノウがレースにかける思いが「輝いてみたい」という曖昧な状態です。
    勝負服のデザインや、何を求めて走るのか、というのを深堀りしていきたいと思います。
    スレ主の癖としては、わりと最速の機能美寄りボディなので肌色面積は少ない方なのかなぁと。

  • 102二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 02:19:48

    お疲れ様です
    どうか無理はなさらず。書き手のコンディションあってのことですから

  • 103二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 12:13:10

    ほしゅ

  • 104二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 12:22:07

    雪降ったら除雪のバイトたくさんありそう

  • 105二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 17:35:32

    いいね

  • 106◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/15(土) 21:31:34

    「スノウさー、まだ体の戻し中っしょ?ウチも同じだし、わりと時間に余裕あるしバイト行かん?」
    「いいですね!あたしも本調子じゃないので、あんまりハードなトレーニングするなってトレーナーさんに言われてます。
     体の慣らしに丁度いいかもです」
     寮の自室。
     グラムさんの芦毛を櫛で梳かしながら答えます。
     夕ご飯も終わり、消灯時間までの自由時間。各々が寮のトレーニングルームで追加の汗を流すか、共同浴場のお風呂やサウナで汗を流すか、自室で勉強するか、談話室でおしゃべりに興じているか。
     グラムさんの髪は短いですけど、癖がなく素直にスッと櫛が入ります。毛艶も良いですし綺麗な芦毛は羨ましいです。派手な色のアクセサリーが引き立って見えます。
     梳かしたあとから、この間買ってきたリボンを編み込んでいきます。消灯も近いのですぐに解いてしまいますが、手遊びのようなものです。
     あたしが座ったグラムさんの後ろから櫛を入れている間、グラムさんの綺麗な芦毛の尻尾がぱさりぱさりと揺れては、あたしの脚を撫でます。
    「しっかし、この間の南北海道特別は惜しかったな~。勝てると思ったのにな~」
    「いやー、あれは危なかったです。グラムさんの巻き返しがすごくってドキドキしました」
     グラムさんと走った南北海道特別。
     あれは、今思い返しても全体的にかなりちぐはぐの走りでした。どうも気合が入らなかったというか、レースに対しての集中力に欠けていたというか。

  • 107◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/15(土) 21:38:04

     上手く第1障害まで越えられたと思ったら、その次の第2直線ではペースはとっ散らかるわバイキをかけるタイミングはズレてまともに力が入れられないわで散々でした。
     リカバリーしようと頑張ればばっちりフォローできたですが、それでちょっと気が緩むと、またグダグダになる。
     ただグラムさんも調子はかなり良かったのですが、レース運びは似たようなものでした。おかげで勝てたようなものです。
     他の子達もこちらの隙を逃さずに迫って来て、結果的には白熱したレースになりました。
     最終直線でもあまり得意のスピードは発揮できずじまいで、何度も足を止めてしまい、他の子の末脚に追い込まれかけました。
     お客さんは沸いていましたが、そんなどこか浮ついた様子は、実況と解説とトレーナーさん達にはしっかり見抜かれていました。それぞれトレーナーさんにレースの分析とお小言をしっかりもらったのでした。
    「トレーナーさんにGⅢ勝ったからと言って調子に乗るなと怒られましたからね。
     次はもう少しちゃんとやらないと」
     思い返して、大きな嘆息を一つ。
     南北海道地区選抜特別の結果は、あたしが1着、グラムさんが2着。
     BGⅡヤングチャンピオンシップには揃って出走可能です。
    「どっちにしろ、やんのは一か月以上先だし?今はゆっくり休んで、そんで練習するさぁ。
     とりあえず、明日にでも学生課にバイトの求人見に行くべさ」
     先を見据えて動くのも大切ですが、なんだかんだで開催は先になりますし、目の前にあるやりたいこともやっていきましょう!

  • 108◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/15(土) 21:38:55

    レース後の身体中を苛む重っ苦しい疲労感も抜けてきましたし、今なら仕事でヘマはしない辺りまで体は戻っているでしょう。たぶん。

    約束通り、グラムさんと一緒に学園の学生課に来ました。

    さて、現在、学園に来ているアルバイト募集ですが…

    dice7d2=2 1 2 2 1 2 1 (11)

    1.ある

    2.ない

    1.道路 2.建設 3.農業 4.林業 5.畜産 6.水産 7.その他

  • 109◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/15(土) 22:18:53

    初雪が過ぎて、本格的な冬支度となってきた今は身体を動かす単発バイトはいくらでもあります。

    トレーナーさんとも相談した以上、あまりハードなのはダメですが、軽めで良ければ体を動かすのはリカバリーにも良いとのことで。

    あたしもグラムさんも畜産系は得意ではないので、今回は自動車工場さんのタイヤ交換ヘルプ(7.その他)でいきましょう。

    この時期ならではのアルバイトです。

    普通は初雪前にタイヤ交換は済ませておくものですが、なんだかんだで駆け込みとなってしまうケースはあるので、自動車工場はまだまだ多忙です。

    自家用車のタイヤはばんえいウマ娘が手伝わなくても十分に何とかなるので、ばんえいウマ娘のあたし達はトラックや重機などのタイヤ1本の重さがかなりあるクラスの手伝いがメインです。

    除雪用のホイールローダーなんかはチェーンも巻きますが、それでも冬タイヤは必須なわけで。

    外したタイヤを保管場所まで持って行ったり、新しいタイヤを出してきては手で持ち上げて軸出ししたり。

    「いやー、お嬢ちゃんらが来てくれて大助かりだわー」

    あたしとグラムさんの二人がかりでやれば、そんなに疲れずに本数こなせますからね。


    今回のお給料(適性の分だけ振るダイスが増える。まだプロではないのでランクAがカンスト)

    dice6d2=1 2 1 2 2 2 (10) × \1,000

  • 110◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/15(土) 22:21:07

    スノウちゃんのお財布の中身 \28,064 → \38,064

    やる気は絶好調をキープしている

    「……今日は寄り道はせんからね?」
    「わかってますよ?!大丈夫ですよ?!」

  • 111二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 00:35:15

    だいぶ懐あったまったなぁ

  • 112◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/16(日) 10:42:42

    通常ぱかプチ\4,000、巨大ぱかプチ\8,000くらいの設定で頑張ってバイトしてもらいましょう

    その中に、喋る!歌う!DXぱかプチナリタタイシンとか1体混ぜ込もうとしてお金すり減らすのが、スノウちゃんクオリティ

  • 113二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 21:12:17

    保守

  • 114二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 23:08:13

    ぱかプチみたいなのは、1体買うと絶対増殖するというのは分かる
    スノーちゃんみたいに同種が増殖するタイプの人と
    いろんな種類が増殖するタイプの人がいるよね…

  • 115二次元好きの匿名さん24/06/16(日) 23:18:45

    痛バッグとかある種狂気よね……
    ぱかプチはほら、クレーンゲームで見ても分かる通り表情違いとか大小とかあるから……全く同一のものを無限回収する人に比べればまだ……

  • 116◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/17(月) 01:05:26

    もしこの世界にDXぱかプチナリタタイシンがあったら、隠しコマンドで聖なる一歩半フル詠唱するのか気になるところです

    勝負服イベントの展開で頭悩まし中なので、AIを使って描いた、冬季トレーニング中のスノウちゃんのイメージイラストで保守します

  • 117二次元好きの匿名さん24/06/17(月) 10:50:29

    保守

  • 118二次元好きの匿名さん24/06/17(月) 20:10:22

  • 119◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/17(月) 23:15:42

    「トレーニングお疲れさまでした!」
    「今日もお疲れ様。だいぶイイ感じじゃないか。
     最近めっきり冷え込んできたから、冷やさないように身体はしっかり拭いておくようにな」
    「はい!」
     外は寒いですが、一度動くモードに入った筋肉は運動し終わってもなかなかオフにならず、溜め込んだ熱を吐き出し終わりません。
     ジャージの胸元を開けてばっさばっさとやっていたら、トレーナーさんにタオルとドリンクを差し出されました。
     トレーナー室で、プロテインとBCAAを入れたドリンクを飲みながらミーティングです。
     レモン味のプロテインにして、気分だけでも温かいレモネード風です。プロテインは熱でダメになってしまうので、寒くなって来ても冷たいドリンクなのです。でも今はちょうど良いですね。
    「次の目標はヤングチャンピオンシップ。これは確定だ」
     ドリンクを飲みながら、あたしは頷きました。
    「これに向けてのトレーニングをどうするかだ。
     概ね一月半あるけれど、これをすべてトレーニングに充てるには、ちょっと勿体ない。
     どこかで少なくても一戦挟まないと出走間隔が開き過ぎてレース勘が鈍ってしまう恐れがある。レースで曳くことによるトレーニング効果も見逃せないしね」
     併走をお願いすることはできますが、やはりレースとは勝手が違います。併走自体はとても有効なメニューではありますが、実際のレースとは勝手が違うというか。
    「ヤングチャンピオンシップが12月29日。次の日がクラシック級三冠競走最後のばんえいダービーだ。まさに今年最後の大勝負の二日間になる。
     疲労回復と調整から逆算すると、次走は12月頭のAクラス戦あたりだろう」
     トレーナーさんはカレンダーをめくりながら言いました。
     あたしは、とっくに空になっているプロテインシェイカーの側面に描かれたメジロライアンのイラストを、意味もなく目で追います。
     何か引っかかるものがあります。
     今まででしたらすんなりトレーナーさんの言葉を聞けていたのでしょうけど、胸の中に何か言葉にできないモヤモヤがあって、それがあたしを戸惑わせます。

  • 120◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/17(月) 23:15:54

    あたしは…

    1.もっと走りたいです。何かは分かりませんが、練習では身に付かないものがきっとあるのでレース経験を積みたいです。

    2.リスクは取らずにトレーナーさんのプランでいきましょう。万全の状態でヤングチャンピオンシップに挑みたい。調子の維持と基礎能力向上をメインで。

    dice1d2=2 (2)

  • 121二次元好きの匿名さん24/06/17(月) 23:26:53

    冬場はやっぱりトレセン生総出で雪かきとかすんのかな

  • 122◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/17(月) 23:40:55

    「分かりました。どうせなら万全の状態でヤングチャンピオンシップに出ましょう。
     ばっちり調整して勝ちを狙いますよ!」
    「何か引っかかっているようだったけど、大丈夫かい?」
     鋭いですね。
     誤魔化しても黙っていても良い結果にはならないので、正直に打ち明けました。
    「どうも、この間から何か掴みかけているというか。モヤモヤしたものがあるんですが形が見えずで、妙な感じなんですよ。
     それが何かは分かりませんがもっとレースに出れば何か掴めるかな~って思いました。
     ぶっちゃけ、もっと走りたい気分です」
    「もっと走りたい、と言ってもロードワークしたいと言う事ではないね?」
     あたしは頷きました。
    「わかった。それについては何か考えよう。
     実戦に近いところで何かを磨きたい、といったところか……」
     トレーナーさんは顎に手をやり、思考に沈みかけたところで戻ってきました。
    「そうだ、今日は大切な要件がまだあるんだ」
     トレーナーさんの口調が真剣さを増します。
    「スノウ君の勝負服」
     どきりとしました。
    「スノウ君の実力であれば、既にイレネー記念も射程内と思っている。となると、君の勝負服も用意いないといけない。
     スノウ君はまだデザイン案を出していないだろう。残り4か月ではデザイナーさんと話を詰めて用意してもらうのがギリギリになってしまう」
     イレネー記念。
     それはジュニア級三冠の最後の一冠をかけての頂上決戦です。
     グレードは、ジュニア級唯一であり、最高峰でもあるBGⅠ。
     GⅠともなれば、当然ながら今と同じ衣装では出走できません。
     ローカルシリーズであるばんえい競バの衣装は、基本的にトゥインクルシリーズに準じています。GⅡまではゼッケンの付いた体操服です。
     これがGⅠになれば、勝負服を着てレースに出ることになります。

  • 123◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/17(月) 23:46:42

     勝負服。
     それはウマ娘の晴れ着ともいえる特別な衣装。 
     特注の専用勝負服でGⅠレースに出走し勝利することは、トゥインクルシリーズでもローカルシリーズでも、勿論ばんえい競馬バでも、およそ全ての競走ウマ娘の憧れです。
    「予算が少ないばんえい競バと言えども、学園から貸してもらえる汎用の勝負服はある。
     でも、やはり君には君だけの勝負服を着てもらいたい」
     専用のがない場合、トゥインクルシリーズでも使われているスターティングフューチャーという汎用勝負服が借りられます。そのままでは体格差があり過ぎるので、ばんえいウマ娘向けにデザインされ直していますけど。
    「専用の勝負服には、ウマ娘それぞれが追いかける夢や強い願い、そんな色んなモノがこめられている。
     ウマ娘であるスノウ君にとっては何を今さらだろうけれど、勝負風は言わばウマ娘の信念のカタチだ」
     いつになくトレーナーさんの言葉に熱が入っています。それも当然でしょう。なにせ、ほんの一握りのウマ娘しかバ場に立つことを許されないのがGⅠです。
     それはあたしにとっても同じです。自分専用の勝負服を着てGⅠの舞台に立てるかもしれない。それは途轍もない興奮を誘います。
     ぐっと握った拳に力が入り、手のひらが汗でべっとりと濡れています。
     ぐびっと生唾を飲み込んで喉がなります。
     しかし、あたしの心の片隅は奇妙なほどに醒めていました。
    「今から一着作るとなると時間は厳しいかもしれないが、何とかなるだろう」
     トレーナーさんは自分の言葉に一瞬躊躇い、言い直しました。
    「いや違うな、ここで僕が言うべきは『何とかする』だ。
     僕は君が君だけの勝負服をまとってレイを肩にかけている姿が見たい。その姿を、カミノクニスノウここにあり、と全てのお客さん達に見てもらいたい」
     ふと、帰省した時のおばあちゃんの問いかけが脳裏に浮かびます。
    『お前は競走バか?』
     と。
     それはつまり、レースにどんな想いをかけるのか、何を求めて走るのかと言う事。
     ある者は最強を求めて、ある者は栄誉を求めて、ある者は勝負そのものを求めて、走ります。
     あたしは、どんな勝負服にどんな祈りをこめて走ればいいのでしょうか。

  • 124◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/17(月) 23:49:52

    スノウちゃんの次走は協賛競争とします。

    そのレース名ですが…

    >>128

    です。

  • 125◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/17(月) 23:52:40

    ※迷え~迷え~若人よ~迷えるのは若者の特権だぞ~
    さんざん迷っても意外とどうでもいいところに答えは落ちてたりするぞ~
    と思いつつ、スレ主も迷っています。スノウちゃんの軸はどこ。タスケテ。

  • 126二次元好きの匿名さん24/06/18(火) 10:35:00

    レース専用のサラブレッドと違うから、勝ちたい走りたい本能が比較的薄いのかな

  • 127二次元好きの匿名さん24/06/18(火) 20:50:04

    kskst

  • 128二次元好きの匿名さん24/06/18(火) 21:00:42

    (どうあがいてもハセコマのお得意様が勝手に広告したアレを超えられる気がしない)
    季節感を大事に「赤鼻のトナカイ特別」で

  • 129◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/18(火) 23:26:19

    「失礼します!」
     大声で挨拶しながら、勢いよく装蹄所のドアを滑らせて、あたしは入室しました。
    「ジュニア級カミノクニスノウ、入ります!」
     大声で、所属と名前を言ってから入るには訳があります。
     答えは単純。装蹄所は、非常にうるさいからです。教官や職員の方々が煩いのではなく、物理的に音が大きい。音だけでなく、ドアを開けた途端、中から噴き出してくる熱が顔を舐めます。
     装蹄所は、基本的に鍛冶屋と同じです。稼働中の機材はうるさくて一歩間違えば命に係わるほど危険ですし、大きな工具類は視界を遮りますので、今は誰がいるのかをはっきりさせておかないと事故に繋がりかねないです。トレセン学園に入学してからこっち、口を酸っぱくして何度も何度も注意されます。
     今も、入室した装蹄所の中は、あちこちから大小様々な金属音がしています。
     カンカンと小さなハンマーの音なら可愛い方。
     ガキンガキンと据え付け式エアハンマーの、耳が痛いほどの重厚な打撃音も響いています。ベルトハンマーの機関銃のような連射音も混ざって本当の戦場のようです。
     室内と言っても装蹄所の壁一面はぶち抜きで外と繋がっているので半分屋外のようなものですけれど、それでも音量はかなりのもので、自然、ぺたりとウマミミが伏せます。
    「蹄鉄交換しに来ました!」
    「おう!吊るしてあるのを持っていきな!ご安全に!」
     今日は、レースで使うシューズの蹄鉄を、冬季用の刻み蹄鉄に交換しに来ました。
     冬以外では、ばんえいウマ娘が使う蹄鉄は平地競争のウマ娘と変わらず、凹凸の無い蹄鉄です。
     でも、雪が降ろうが地面が凍りつこうがレースを行うばんえい競バでは、冬には凍結したバ場でのスリップ防止に深い刻みの入った特製の蹄鉄を使うのです。
     刻み蹄鉄自体は、学園職員の装蹄士さんが作ってくれています。学園外でのトレーニングや、普通の靴に使う防滑蹄鉄は市販されている物で良いのですが、レース用の刻み蹄鉄は市販されるほど需要が無いので特製です。

  • 130◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/18(火) 23:31:22

     丸い鉄の棒を装蹄所に据え付けてあるガス炉で熱し、赤く熱く柔らかくなっている鉄棒をエアハンマーで叩き、平べったくします。
     細長く平べったい棒状にしてはまた熱し、別の専用ハンマーで叩いて棒の真ん中、長い軸の方向に1本の溝を刻み入れます。それが済んだらまた熱して、今度は短い軸の方向に等間隔に無数の溝を叩いて刻んでいきます。
     ここまで済んだら全体が真っ赤になるまで熱して柔らかくして、ガンガンとハンマーで叩いて曲げて冷ましたら、丸い鉄の棒が見事な刻み蹄鉄になります。
     ここまでは危険なのと専門性が高すぎて、ウマ娘はやらせてもらえません。
     でも、ここからは、ばんえいウマ娘それぞれが行います。トレーナーが全てやってくれているチームもありますので、そこは方向性次第ではありますが。あたしとトレーナーさんとの間の決め事では、自分の蹄鉄は自分でお世話、です。
     吊るしてある作り置きの刻み蹄鉄を貰って、それぞれのシューズに合うように調整して取り付けるのです。
     あちこちから上がっている、カンカンと鳴る小さなハンマーの音が、それです。
     初雪が降るころになると刻み蹄鉄が解禁になるのですが、実際に走ってみながらの調整は必要なので交換と言っても時間がかかります。
     それだけに、ジュニアからシニアまでのばんえいウマ娘達で装蹄所は盛況です。
     装蹄所にはとても入りきらないので、適当に積んであるビールケースを椅子がわりにハンマーと金床を借りて持ち出し、装蹄所の外でわいわいと白い息を吐いてお喋りしながらカンカンコンコン。ハンマーを振るって刻み蹄鉄を調整してはシューズに取り付けて、走りにいきます。
     走っては外して曲げを調整したり、大きなヤスリで刻みの深さを調整したり。

  • 131◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/18(火) 23:33:38

     その群れに、あたしも混ざります。
     まずは使い込んで磨り減った蹄鉄を外す。頑張ってくれた蹄鉄に、心の中で礼を言います。あたしのはリサイクル行きですが、有名選手の蹄鉄は回収されて、綺麗に磨いてから販売されたりします。
     貰った刻み蹄鉄を自分のシューズに合うように叩きます。
    「スノウちゃん、お隣借りるねー」
     あたしより一回りも大きな体躯。シニア級の先輩です。
     ドッカリと隣に座り、同じように蹄鉄を付け変えていきます。
    「うーん、みんなで装蹄所の前で駄弁ってるの、この季節ならではって感じ。
     まさに冬が来たって感じね」
    「あたしは今年が初めてなので分かりませんが、いつもそんな感じですか」
    「んんん?どうしたの、元気ないじゃーん」
     さすがにシニア級だけあって手付きは慣れたもの。目線はこちらに向けていますが、その手は独立した生き物のようにテキパキと外していきます。
     反面、あたしの手をほとんど止まるくらいにゆっくりになりました。
     勝負服の一件が、まだ心の中でわだかまっています。出てくる声は沈み、言葉は濁ります。
    「ええ、ちょっと……」
    「なになに、ちょっとどうしたのかな?恋のお悩み?
     誰かに話せば楽になることもあるし、お姉さんでよければ聞いてあげるよ?」
     どうしましょう。
     手は完全に止まってしまいました。
     先輩の言葉にも一理あります。今でさえ、一人で抱えてどん詰まりです。それは、幼いウマ娘が自分の尻尾を追いかけてクルクル回っているのと同じ有様でしょう。
     悩みは、まるで喉の奥につっかえた石を吐き出すようで、とても言葉にし辛い。
     散々迷った末、勝負服の顛末を話しました。

  • 132◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/18(火) 23:36:09

    「だぁいじょうぶ!」
     先輩は大きく胸を張って、請け負ってくれました。
    「それは、みんなが通る道だよ。きっと解決できるよ」
     自信たっぷりに、にっかりと笑う先輩の笑顔は、まるで季節外れの向日葵のよう。
    「スノウちゃんは大丈夫。たしかに今はすごく悩んでる。でもね、そんなに小難しく考える必要はないってことだよ。
     走る理由は頭で考えるもんじゃない。答えはきっと、スノウちゃんのここが教えてくれる」
     トン。
    「それに従えばいいんだよ」
     先輩の持った片口ハンマーの鎚が、あたしの胸の谷間、ちょっと左に寄ったところに当てられました。
     そこは心臓の上。
    「だって、スノウちゃんはウマ娘でしょ?」

  • 133◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/18(火) 23:43:16

    ※自前の写真に刻み蹄鉄の他、氷上蹄鉄の図があったので貼っておきます。

    帯広トレセンでは、ばんえいウマ娘の群れがオヤツとか持ち込んでキャッキャウフフしながら蹄鉄交換してる筈。

  • 134二次元好きの匿名さん24/06/19(水) 09:37:10

    保守

  • 135二次元好きの匿名さん24/06/19(水) 19:50:06

    保守

  • 136◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/19(水) 21:24:34

    「スノウ君、次走が決まったよ」

     トレーナー専用のタブレットに表示されているのは、次のレースのエントリー画面。

    「前走から3週間なので、ちょっと連続気味になって疲労残りが心配だけどね。スノウ君ならそこまで回復は遅くないと判断した。

     若干詰め気味にしたのは、この次を考えてだよ。

     このレースからヤングチャンピオンシップまでは4週間空けてあるので、疲労はそちらには影響しないようにしたよ」

    「次走は……個人の協賛競争ですか。レース名は、赤鼻のトナカイ特別。面白いですね」

    「季節柄だねぇ。どうせならみんなでトナカイの角でも付けて走れば見た目は面白いけれど、レースだからふざけるのは無しだな。

     クラスはジュニア級のAクラス戦扱いになる」

     そういうのは別の機会にやってもらおうかな、とトレーナーさん。

    「やる機会があるとは思えませんよ」

    「で、次走の予定が決まったところでトレーニングの話だ」

     トレーナーさんがタブレットをスケジューラーにします。

    「レース前でどうかと思ったが、模擬レースを行おうと思う。

     スノウ君の走りたいという希望は、ただ走るのではなく、一対一の併走よりも実戦に近い形での"走りたい"だとみた」

     あたしが黙っているのを、肯定と受け取ったのか、続けます。

    「コース自体は借りられるからいいけど、問題は一緒に走ってくれる相手だな。

     やるなら少なくとも同格、出来れば格上。強いばんえいウマ娘の胸を借りる形で走った方が、スノウ君は得るものが多いだろう。

     なんだかんだで僕も新人だし、そこまでの伝手はないが知っているチームとかに頼んでみるよ」

    「ありがとうございます!」

    「では、さっそく手配しよう。と言う訳で、悪いがスノウ君はアップをして、先にトレーニングを始めていてくれないか。

     メニューは昨日渡した通り。僕も遅れていくけど、ズリ曳きする前は身体を十分に温めて解すのを忘れないように」

    「はい!では、いってきます!」


    トレーナーの人脈・コネ:41を下回った人数だけ併走(模擬レース)に呼べる

    dice9d100=33 25 83 95 77 87 17 15 87 (519)

  • 137◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/19(水) 21:26:55

    4人ほどトレーナーさんの頼みに応えてくれました。

    スノウちゃんを入れれば5人立てです。


    先輩達の級は…

    1-2.クラシック 3-4.シニア 5.シニア2回生以上 6.引退済み

    dice4d6=3 2 4 4 (13)


    先輩達の実力は…

    dice4d100=8 94 20 67 (189)

    (100に近いほど強い)

  • 138二次元好きの匿名さん24/06/19(水) 21:30:03

    しれっととんでもないの混ざってて芝

  • 139◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/19(水) 21:42:57

    併走相手ですが、
    シニア:強くない。Cクラス。おそらくはあまりレースに本腰いれてないのかも
    クラシック:GⅠ勝ってるクラス。多分ばんえいダービー優勝最有力候補
    シニア:あまり強くないCクラス
    シニア:そこそこ強い。B~Aクラスくらい

    クラシック級GⅠは時期的にこれからなので、クラシック級の先輩は前年度のイレネー記念覇者でしょう

  • 140◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/19(水) 22:42:27

    「あのトレーナーさん」
     練習当日。共同で借用したコースには4人の先輩方がいました。
    「聞いていないのですが」
    『言ってないからね』
     しれっと言ってくれました。
    『レースではすべての情報があらかじめ集まっている訳じゃない。対策の軸に据えてた相手が直前で競争中止になったりすることだってある。
     現場判断でその場でプランを修正していく練習だよ』
     シニア級の先輩達が3人もいますし、特にあのクラシック級の先輩。一緒に走ったことはありませんが、無茶苦茶強いのは知っていますよ。一人だけオーラというか雰囲気がなんか違うんですけど!
     シニアのお二人はCクラスですけど、シニア級で勝てていないからと言って、ジュニア級のあたしより弱いという事にはなりません。
     そもそも身体の出来具合が違います。
     シニア級と言うだけでジュニア級とはばんえい重量が全然違うからです。ジュニア級では重賞で3000kgですが、シニア級では最も下のCクラスでも3000kgを曳きます。
     いや、かなり格上じゃないですか?!
    『格上の方が得るものが多いと言ったじゃないか。逆に言えば、相手もこれを単なる手伝いではなく、それぞれの練習の一環と捉えているんだ。
     あちらが級は上でも、スノウ君が走って意味のある相手と見なされているのは光栄なことじゃないか』
     トランシーバーの向こうから聞こえてくる、ディーゼルのエンジンノイズに塗れたトレーナーさんの声。
     練習コースの1番を借りての併走となりました。
     併走と言うか、人数的には模擬レースです。
     その準備のために、重機が忙しく練習コースの周りを走り回っています。
     あたしのトレーナーさんは先輩達のトレーナーさん方と一緒に、アタッチメントをバケットからフォークに換装したホイールローダーで橇を持ち上げては移動させてゲート後方に置いていきます。
     本番のバ場にはコース脇に小さい線路があって、ゴールを過ぎて曳き終わった橇は貨車に積んでスタート地点までまとめて移動させます。練習コースには、そのような設備はありません。重機が使えない場合、コースを使う子達が協力して橇を人力で移動させます。
     しかし、トレーナーさんがあんなに重機を上手く扱えるとは知りませんでした。すごいですね。

  • 141◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/19(水) 22:47:06

    『ばんえい競バのトレーナーだったら、これくらい出来ないと話にならないからね。
     サブトレしていた時は、よくチームのトレーニング前にこいつで雪かきしてたもんだよ』
     トランシーバーの向こうから聞こえてくるディーゼルの咆哮が落ち着きました。
    『最後の一台を並べたよ。僕らが退いたら、みんなで錘を載せてくれるかい』
    「分かりました!」
     レースでは橇に錘を乗せるのはレース運営スタッフの役割ですが、今日は自分達で載せます。レース本番では公平性の為に絶対に触れませんが、練習では不正も何もあったもんじゃないですからね。自分達でやります。
    「今日のあたしは、ばんえい重量3250kg、と」
     弁当箱の中に板状の錘を何枚も重ねて入れていきます。最後に弁当箱と橇を脱落防止用のプレートとワイヤーで固縛すれば完成です。
     ばんえい重量は、今までよりも重めです。
     格上の先輩達は、こっちよりもさらに重く設定してくれています。

     ペチン!
     あたしは両頬を軽く張りました。
     そうです。
     走る前からビビッてどうするんですか。例え相手がどんな強敵だろうとしても勝とうとしない限りは勝てません。それに、たかが練習です。せっかくトレーナーさんが苦労して用意してくれた舞台です。存分に先輩達の走りっぷりを肌で勉強させていただきます。

  • 142◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/19(水) 23:14:42

     本日の模擬レースは練習コース1番、5人立て。

     ほんのちょっと前までにこやかに一緒に準備を行っていた先輩達の雰囲気が、ゲートに入った途端、一変しました。

     ずしりと空気が重い。

     まるで、こちらを喰い殺そうとしている猛獣が隣にいるかのよう。

     本当に、隣のゲートにいるのは、ばんえいウマ娘ですか。

     ぐびりと勝手に喉が鳴ります。ふと、自分の手に視線を落とします。小刻みで不規則な振動。

     ふへっと肺から空気が抜けるような妙な笑いが出てきたのが分かりました。

     身体は狭いゲートに満ちた殺気じみた雰囲気に拒否反応を起こしかけている。でも、心は違っていました。

     走りたい。

     何故かなんて知りません。

     走りたい。

     そのあまりの差に、あたしは自分で自分がおかしくなっただけでした。


     その望みはまもなく叶うでしょう。

     鶏の骨格のような細く頼りないスターター台に立ったトレーナーさんが、赤旗を振り上げます。


     ゲートが開きました!


    ばんえい重量は、3250kg。

    『ばんえい重量補正』 = 6(3000kg~3499kgは6で)

    カミノクニスノウのやる気は『絶好調』。


    『第1直線』 ばんえい重量補正基準値=10 判定 dice2d6=5 6 (11)

     →スキル『集中力』 基準値=8 判定 dice2d6=1 6 (7)

    『第1障害』 ばんえい重量補正基準値=12 判定 dice2d6=5 3 (8)

    『第2直線』 ばんえい重量補正基準値=14 判定 dice2d6=6 4 (10)

    『第2障害』 ばんえい重量補正基準値=16 判定 dice2d6=6 5 (11)

    『最終直線』ばんえい重量補正基準値=14 判定 dice2d6=3 3 (6)


    最終着順ダイス dice1d10=1 (1)

  • 143◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/19(水) 23:22:56

    『第1直線』の成功量 = 出目(11) + パラメータ補正(6) + 根性補正(0) + 脚質補正(0) + スキル発動(1) - 10 = 8
     →スキル『集中力』発動成功!
    『第1障害』の成功量 = 出目(8) + パラメータ補正(3) + 根性補正(0) + 脚質補正(1) - 12 = 0
    『第2直線』の成功量 = 出目(10) + パラメータ補正(6) + 根性補正(0) + 脚質補正(1) - 14 = 3
    『第2障害』の成功量 = 出目(11) + パラメータ補正(3) + 根性補正(1) + 脚質補正(0) - 16 = -1
    『最終直線』の成功量 = 出目(6) + パラメータ補正(6) + 根性補正(1) + 脚質補正(0) - 14 = -1

    最終着順 = 出目(1) - (スタミナ補正(6) + やる気補正(2) + 天候/馬場補正(0) + スキル発動(0) + 総成功量(9) + ライバル補正(-4)) = -12

    順位は……十三バ身差をつけての1着!

    いや、ぶっちぎり過ぎでしょう。
    練習のために先輩方がばんえい重量を重く設定しすぎだったのでは?

    ※相変わらずスノウちゃんは本番に強いと言うか、レースになるとダイスの暴力で勝つというか。

  • 144二次元好きの匿名さん24/06/19(水) 23:38:24

    最終着順ダイス迫真の1!
    ……もそうだけどふっつーに各所でえげつない出目叩き出してるんだよなぁ

  • 145二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 07:50:47

    出目がえげつない…

  • 146二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 17:47:21

    保守

  • 147◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 21:25:17

    ※スノウちゃんのダイスの暴力にフレーバー書いてて困惑しきりのスレ主です。
    如何にもな雰囲気を出した文章を吹っ飛ばしてくれました。ソードワールドでダイスが回りまくったクリティカルの一撃でボスを落とされたGMの気分。
    雰囲気に飲まれかけて逆にハッちゃけたのかしら。

    模擬レース時と同確率の悪い方の出目になった時は逆に15着相当くらいにまで離されますので、バ身差の分布が広すぎますが、確率分布は悪くはないのかなぁと。
    ジュニア級はランクCまでクラシック級はランクBまでのように、級によってパラメータにリミッターかけといた方が成長判定をもっと絡められたので面白かったかもしれません。

  • 148◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 22:38:29

     一戦やって結果は1着。
     まさか、こんなに調子よく走れるとは。
     これ以上ない、というくらいの会心の走りでした。普段より重い癖に、橇を曳くのが爽快ですらありました。ゲートの中で感じた先輩達の凄まじい圧から、逃げ出したかっただけかもしれませんが。
     走りたいという胸に込み上げる衝動。
     そこに、猛者と走っている高揚感というピースがカチリとハマった結果。
     疲労も忘れて走ったのはとても心地よい感覚でしたが、実際に疲労はしているので気が付けば体の方はヘトヘトです。
     それでも、やはり走るのは、輓曳するのは楽しい。まるで、幼い子供にでも戻ったような心境です。
     自分自身でも思ってもみなかった結果と感情に、思わず笑顔とガッツポーズが出ます。
     ゾクリ。
     不意に冬の寒気を貫いて、背筋が冷えました。流れる汗で急速に冷やされたわけではありません。
     振り返って目に入ってきたのは、先輩達の凄い獰猛でにこやかな笑顔。
    「やるな、さすがはジュニアの台風の目。あの”上ノ国の女傑”の孫。そういう動きだ」
    「スノウちゃんやるじゃない。お姉さん、ちょっと驚いちゃった」
    「ひ、ひゃい……ありがとうございます」
     おかげでクラシック級の先輩と、シニア級の先輩の労いに応える言葉が縺れました。シニア級の先輩は、先日、装蹄所で悩みを聞いてもらった人です。
     虎や熊が笑うとあんな感じなのでしょうか。
     近づいてきた先輩達が頭を撫でてくれたり、健闘を称える様子でポンポンと肩を叩いてくれたりします。
     雰囲気は穏やかなはずなのに、どこかに剣呑な気配が隠れているような気がします。面倒を見てくれる先輩に甘えるとかそんな気持ちになりません。なんか怖いのですが!
     これからどうやって取って喰おうかと品定めをされているようにすら感じます。
    「さ、もっと走りましょ。
     次はスノウちゃんにいいところ見せてあげられるように頑張るからね」
     頭を、肩を撫でてくれていた手がいきなり動きを変えて、ガシッと万力のようにあたしを掴みました。
    「えっ」
    「おいおい、○○。一戦だけって話だったじゃないか」
    「そうだったなトレーナー、了解した。それじゃ、続きといこうか」
    「「えっ」」

  • 149◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 22:39:14

     その後、コースの端っこでお昼ご飯と再会するくらいボロボロになるまで存分に模擬レースさせられました。

    「ぅお゛っ、お゛ぁりがとう、ございばじだ……」

     走りがどうこうではなく、先輩達はタフでした。

     あれがクラシックとシニアの肉体、一年以上のトレーニングの差なのかとたっぷりと理解させられました。

     とは言え、模擬とは言え、ぶっ倒れるほどにレースをして楽しかったのは確かでした。


    ちょっとオーバーワーク…

    1.でした

    2.ではなかったです

    dice1d2=2 (2)

  • 150◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 22:40:43

    次走に向けての疲労チェック

    ――レース間隔による疲労チェック

    3週間間隔での出走で2d6≦3で疲労蓄積。調子1ランクダウン。2d6≦2でさらに調子1ランクダウン。


    dice2d6=5 4 (9)

  • 151◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 22:43:27

    第2R、個人協賛競争、赤鼻のトナカイ特別。

    本日のメインレースは第11Rのオープン戦ですので、あたし達はそれよりもだいぶ早い時間の出走です。


    基礎ばんえい重量は、2900kg。

    ただし、あたしは重賞を勝っている為に重量を追加されて100kg増の、3000kg。

    『ばんえい重量補正』 = 6(3000kg~3499kgは6で)

    カミノクニスノウのやる気は『絶好調』です!


    天気は、

    1.晴れ 2.曇り 3.雨(雪) 4.悪天候

    dice1d4=2 (2)


    あたしのウマ番はdice1d10=10 (10) で、人気はdice1d5=1 (1) です。


    レースの対戦相手の実力は…

    50 + dice9d50=18 41 19 21 21 49 40 41 28 (278)

    (75を超えるとライバル補正がかかる。ばんえい重量が他より重い為、相対的に対戦相手が強化されており名有りのライバル扱いとなる判定が緩めになっている)

  • 152◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 23:06:10

    ――本競争では、ライバル補正が4人分(-4)かかる。

    『どんよりとして今にも雪が舞い降りてきそうな空模様、帯広競バ場。ダート直線200m、10人のばんえいウマ娘たちが挑みます。
     第2競走、個人協賛競争、赤鼻のトナカイ特別。Aクラス戦となります。
     バ馬水分は1.7%。バ場状態の発表はやや重となっています』
    『観客席では、赤鼻のトナカイの着ぐるみが両手を振って、出走を今や遅しと待ち構えるウマ娘達を応援しております。毎年この協賛をしてくれる方ですね。
     えー、曇り空とは言えだいぶ乾燥しています。バ場が乾いていますから、力のいるレースになりそうですね』
     流れるアナウンスに場内がぱらぱらと沸きます。
     まだ開場してから間が無く、そこまでお客さんは多くありません。メインレースまでは時間がありますので、そのうち増えるでしょう。声援が少なくても、あたしの気合の入りは変わりません。お客さんが多くても少なくても沸かせて魅せましょう。さぁ、見ていてくださいよ!
     ナイターではないレースは久しぶりです。
     北海道の冬の太陽は落ちるのが早い。12月なら16時前には日没です。まだ第2競走なのに、西に傾きかけた光が眩しい。
     ふーっと大きく息を吐き、ゆっくり大きく吸う。
     あたしは握った左右の拳で、自分の太腿をトントンと軽く叩きます。
     そのまま右拳で左肩、左拳で右肩を。
     最後に両手が頬を張った乾いた音が、辺りに響きます。
     眼の奥から後頭部にかけて、じわりじわりと熱くなる感覚。
     自分の眼付きが、きりきりと引き絞られつつ弓のように、どんどんきつくなっていくのが分かります。
     しかし、それは周りの気配も同じ。
     普通のAクラス戦とは言え、これから重賞を狙っている子達だって出走しています。けして侮っていい相手ではありません。

    『注目の1番人気は、10番カミノクニスノウ』
    『前走の南北海道地区選抜特別を熱戦の末に制し、同室のシャコータングラムとワンツーフィニッシュとなりました。
     既にヤングチャンピオンシップへの出走権を得ていますが、今回の対戦相手達はいずれ劣らぬ実力者揃いです。
     熱い競り合いが見られそうですよ』
     ファンファーレが響きます。
    『さぁ各ウマ娘、ゲートイン完了の様子。
     すべての係員が離れまして……出走の準備が整いました』
     スターター台の上で、赤い旗が天を指します。

  • 153◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 23:08:52

     ガコン!

     居並んだ10人のばんえいウマ娘達の視界を塞ぐ、金属の扉が一斉に開きます。

    『各ウマ娘、一斉にスタートしました』

     橇とウマ娘をつなぐ装具が一斉に、サンタクロースを乗せた橇を曳くトナカイの鈴のように、盛大に鳴り響きます。


    『第1直線』 ばんえい重量補正基準値=10 判定 dice2d6=4 1 (5)

     →スキル『集中力』 基準値=8 判定 dice2d6=1 2 (3)

    『第1障害』 ばんえい重量補正基準値=12 判定 dice2d6=3 3 (6)

    『第2直線』 ばんえい重量補正基準値=14 判定 dice2d6=3 5 (8)

    『第2障害』 ばんえい重量補正基準値=16 判定 dice2d6=1 4 (5)

    『最終直線』ばんえい重量補正基準値=14 判定 dice2d6=5 4 (9)


    最終着順ダイス dice1d10=8 (8)

  • 154◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 23:14:20

    『第1直線』の成功量 = 出目(5) + パラメータ補正(6) + 根性補正(0) + 脚質補正(0) + スキル発動(1) - 10 = 2
     →スキル『集中力』発動成功!
    『第1障害』の成功量 = 出目(6) + パラメータ補正(3) + 根性補正(0) + 脚質補正(1) - 12 = -2
    『第2直線』の成功量 = 出目(8) + パラメータ補正(6) + 根性補正(0) + 脚質補正(1) - 14 = 1
    『第2障害』の成功量 = 出目(5) + パラメータ補正(3) + 根性補正(1) + 脚質補正(0) - 16 = -7
    『最終直線』の成功量 = 出目(9) + パラメータ補正(6) + 根性補正(1) + 脚質補正(0) - 14 = 2

    最終着順 = 出目(8) - (スタミナ補正(6) + やる気補正(2) + 天候/馬場補正(0) + スキル発動(0) + 総成功量(-4) + ライバル補正(-4)) = 8

    順位は……8着!

  • 155◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/20(木) 23:25:05

    ※スノウちゃんは8着と、ここまで大きく負けたのは、選抜レース以来となります。
    なんだかんだでばんえい重量差は大きく、本領発揮とはならなかったようです。
    あとは仕掛けるタイミングを対策されたか、デバフでも喰らったかでしょうか。

  • 156二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 05:36:29

    絶好調なのに派手に負けちゃったね…

  • 157◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/21(金) 09:55:40

    ※なかなか負けないのでライバル補正が多めになるように試してみましたが、ダイスの転がり方次第で十分勝ち負けするので、次は普通に戻そうかなと。
    AIを使って描いた、スターティングフューチャー着せてみようとして上手くいかなかったスノウちゃんのイメージイラストで保守します。

  • 158二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 19:17:22

    毎年協賛の赤花のトナカイマンは何者なんだ…
    ばんえいウマ娘のバキバキの腹筋ペチペチしてみたい

  • 159◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/21(金) 22:36:29

    ※スノウちゃんに勝負服を着せていたら、橇と接続するハーネスをどうやって付けさせようという問題が出てきました。

    ヒラヒラしてると巻き込むのでパドックで外すか、最初から装飾少なめの衣装にするか、かと言ってレオタード風に過度の露出はさせたくありませんしグヌヌ。


    とりあえず、赤鼻のトナカイ特別での1着と2着の選手名を決めたいと思います。

    1.アイリシュコブラー 2.アンデスレッド 3.インカアウェイクン 4.コガネマル 5.シャドークイーン 6.トカチゴールド 7.ノーザンアカリ 8.ノーザンルベウス 9.ノースパープル 10.メイクイーン

    1着 2着として、dice2d10=2 3 (5) です。

    それぞれウマ番は、dice2d9=9 5 (14) です。

  • 160二次元好きの匿名さん24/06/22(土) 02:45:59

    じゃがいもの品種名かw
    1着 9番 アンデスレッド
    2着 5番 インカアウェイクン
    でいいのかな

  • 161二次元好きの匿名さん24/06/22(土) 12:21:39

    デスレッドちゃんにインカちゃん

  • 162◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/22(土) 22:19:03

    『待たせしました、帯広競馬場。第2競走、個人協賛競争、赤鼻のトナカイ特別。
     協賛者の見守る中、さあ10人がスタートしました。
     基礎ばんえい重量は、2900kg。10番カミノクニスノウは一人、ジュニア級にとっては重い重い3000kgの橇を引きます』
     重い!
     前走とばんえい重量は変わらない筈。体に食い込むハーネスの痛みは変わりません。でも、前に進みづらい。
     先輩方との模擬レースがちょっと尾を引いているような気がします。オーバーワークとまではなっていませんが、中二週あけてのレースとほとんど変わりません。やり過ぎた感は否めません。
     しかし、今さら言ったところでどうにもなりません。
     トレーナーさんが言っていたように現場判断で何とかします。とりあえずは前に出て全体のペースを掴み、こちらのスタミナをなるべく温存したい。
    『各ウマ娘並んで1障害に向かいます。おっと1番人気の10番カミノクニスノウ、やや遅めの出だしか』
     いけない。
     逃げている子らのペースが早い。
     こちらもペースを上げようとしますが、ばんえい重量の差がきつく圧し掛かってきます。
     ペースを取りにいかなければ!
    『2番が先行して1障害を下りました』
     こちらも第1障害を越えにかかります。
     腰と足に力を込めて、斜面に蹄鉄をかけて、一気に越えます。
    『2番手以下もほとんど離れず。全ウマ娘、最初の障害を降りています』
     ここから第2直線。
     この段階で差しの子達と同列に並んでいるのでは、最終直線でヤバい。未だに前方に出れていない状態です。得意の速度を活かして、ここで前に出ておきたい。
     ググッと足の回転を上げていきます。
     前が刻み始めました。
    『一旦刻んだ2番。2番手以降も一旦刻んで……また歩きます』
     Aクラスとは言え、やはり重賞戦に近いばんえい重量はきついのでしょう。前の子達が次々に刻みます。
     しかし、あたしの方は、ここは無理してでも前に出たい。
    『各ウマ娘、吐く息が白く見えます。ここで10番カミノクニスノウ追い上げてきた、直行するか……ためます』
     足を止めて深呼吸を一つ。
     ブハーッと真っ白い呼気が、あたしの口元に広がります。

  • 163◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/22(土) 22:22:38

    『お昼頃は最高気温プラスでしたが、日が傾き始めてからマイナスに向けて冷え込んでいる帯広競馬場です』
     全身の露出している肌からもゆらゆらと白いものが立ち上っては、風に消えます。
     体が熱い。
     この間の模擬レースで散々曳いたとはいえ、さすがに3000kg。
     体が重い。
    『10人がややばらけ気味で今、1障害の中間。そこから9番のアンデスレッドが出てきましたが、止まります』
     他の子が刻んでいる間に前に出ようとします。
     しかし、あたしが歩こうとすると、常に誰かが歩いている。
     ゆっくりと競り合うように、一歩、二歩。さらにもっと。ザシ、ザシ、と冷たく柔らかい砂を踏みしめて進みます。
     限界近くまで歩みを進めることになり、そして無理やりに近い形で、刻む。
     しかし、あたしが刻もうとすると、常に誰かが歩き始める。
    「くっ!うぅ……いかせません!」
     いけません。
     満足に刻めない。ためている隙が無い。喉から肺までのすべてが熱く湿った空気で満たされていて、体の中の熱が逃がせない。肺に新鮮な空気を満たせない。
     何かがおかしいです。
     筋肉に酸素を持っていかれて酸欠気味の頭では、何かがおかしいのは感じますが、違和感の正体までは分かりません。
     自分の身体が自分の物でないような違和感。
     自分の意志で身体を動かしている筈なのに、誰かに動かされている。
    『まもなく2障害の手前』
     でも、まだ勝機はあります。
    『各ウマ娘、刻みながら来ましたが、9番のアンデスレッドが先頭できました。
     前半50秒で来ています』
     第2障害を上手くこなせば、降りる際のスピードを上手く使えば、挽回のチャンスはある。
     第2障害の手前で足を止め、正念場に向けて刻みます。
     腰に手を当て、障害を透かしてゴールを見るかのように、斜面を睨みつける。
     ス、ハッ。ス、ハッと浅く早い呼吸。
     貪るように呼吸を繰り返して筋肉と血液に、冷たい空気を少しでも送り込みます。
    『2番手以下ほどなく集まって……さあ問題はここから。アンデスレッド、挑戦始まったか』
    「まだです!まだ、勝てます!」

  • 164◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/22(土) 22:25:35

     遅れは取らない。
     そう思ってバイキをかけるべくググっと、身体を下げ始めた矢先。
    「お先に失礼。勝つのはオレだ」
    「え、あっ……!」
    「ダメだ!スノウ君!いくなぁ!!」
     隣から聞こえた余裕の声。
     酷く遠くから聞こえた切羽詰まった声。トレーナーさんの静止の叫びが聞こえたような気がしましたが、もうどうにもなりません。
     先行される。
     頭が抑えつける前に、酸欠と疲労で言う事を聞いていない足が、勝手に進み始めてしまいました。
     バイキをかけようと中途半端に下がった身体。
     前に進もうとする足。
     回復途中の呼吸。
     すべてが噛み合っていない。なのに、前進した。
    「ぐ、くあぁぁぁっ!!」
    『アンデスレッドを追ってカミノクニスノウも挑戦する』
     バネを縮めて伸ばす要領がバイキなのに、伸びきった状態からさらにバネを伸ばすような動きで、まともな力がかかる筈がありません。
     その無茶の反動は、すぐさま現れます。
    『しかし、これは、もっていかれた形だ。足が止まる』
     準備が整っていないのに隣に釣られて障害を登り始めてしまうことを”もっていかれる”と表現します。
     第2障害の砂に刻み蹄鉄が踏み込みますが、息も力も吐き出しきって弛緩したタイミングで登ればどうなるか。
    『カミノクニスノウが膝を折ります。そこを後続が追い抜いていく』
    「……負けま、せん、負けませんよぉ」
     膝に両の掌をついて、足を地面に押し込むような形で、無理くり上半身を起こします。
    『9番アンデスレッドにすぐ続いて5番インカアウェイクン。すんなり来た9番アンデスレッド先頭で2障害を下ります』
     しかし。
     酸素がなくなって、視界はゆらゆらと揺らめく陽炎の如く。
     第2障害の稜線の向こうに、他の子の橇の最後端が消えていきます。

  • 165◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/22(土) 22:27:54

    『そして、こちらもすんなり5番インカアウェイクン』
     淡々と実況が響きます。
    『2番手の後ろ2番。3番手から少し間があいて7番、今、2障害を下りました』
     注目の10番カミノクニスノウ、2障害で苦戦か。まだ上がってこない』
     血反吐を吐きそうなほどに痛む喉。
    『前は間もなく残り20mのハロン棒を通過。
     9番アンデスレッド、2バ身のリード。2番手5番インカアウェイクン』
     どうにか第2障害の天辺にまで辿り着きます。
    『残り3から4メートル。今、9番アンデスレッドが入線しました。そのまま止まらず歩を進めてゴール。
     9番のアンデスレッド、余裕の勝利です』
     第2障害を滑り降ります。
    『2番手の5番インカアウェイクンがなんとか歩を進めますが、際どいところで止まった』
     まだです。
     まだまだ、いけます。
    『3番手も詰まっていますが、どうか?2番手どうか。インカアウェイクンが先に入線しています。インカアウェイクンが懸命に歩を進めます。
     今、インカアウェイクンが完全にゴール』
     でも、足は言う事を聞いてくれません。
     腿が上がらず、立ち尽くすかのように、刻みます。
    『その後で、7番が3着。
     2番手争いが際どくなりましたが、これを尻目に9番アンデスレッドが悠々と勝利です』
    「しゃーっ!!トったぜ!!
     あとオレの名前はアンデスレッドじゃねえ!アン=ザ=デス・オブ・レッド!死の赤だ!覚えやがれ!!」
     アンデスレッドが勝利の雄叫びを上げる遥か後ろ。
     あたしは倒れ込むようにして、ゴール板を通過しました。
     結果は、8着。
    『観客席、ゴール板前では、赤鼻のトナカイの着ぐるみが飛び跳ねて喜んでおります。
     来年もお会いすることが出来るでしょうか』
     淡々として実況が、ひどく遠くに聞こえました。

  • 166◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/22(土) 23:06:49

    「あーあースノウったら完全に包囲されてるじゃん。クラスメイトながら、みんなえげつないなー」
    「仕方ありませんわぁ。クラスの中ではご友人でも、レース場に立てばぶっ潰すお相手ですからぁ」
    「お、ローズじゃん、そっちもスノウのレース見にきたん?偶然だなー」
    「これが偶然だと思えるようでしたらぁ、貴女は次のヤングチャンピオンシップでぶっ潰すまでもないですわねぇ」
    「まーねー。北央地区選抜特別は勝ったんだっけ?おめっとー。
     しっかし、スノウもあれだけ無理やり動かされたら、きついっしょ」
    「カミノクニスノウさんは一つとは言えGⅢ勝利済み、次のGⅡの出走確定済み、加えてこのレースの1番人気。
     これで注目しないのは、よほどの豪胆かよほどのバ鹿かのどちらかですわぁ」
    「ばんえい重量差を利用して、早めのペースに引っ張り込んで、スノウのスタミナを早めにすり潰す。
     他の足が止まるまで曳こうとしても誰かが歩き続けてるから、足を止めるタイミングが取れない。
     十分に刻もうとしても誰かが歩き続けてるから、切り上げざるを得なくて碌に息を入れられない。
     平地みたいにコース塞がれるのはウチらにはないけど、ペースの握り合いはどこでも変わらんしょ。
     9人から明確に対策ぶっつけられるなんて、いやぁ、怖いねぇ」

  • 167◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/22(土) 23:11:43

    ※本日の進行はここまでとします。
    休日だとなかなか文章が進められません。
    ちなみにアンデスレッドちゃんはファッション眼帯オレっ娘ですが、キャラデザは芋っぽいです。芋っぽい反動で、そういうキャラ作ってるのかも知れません。

  • 168二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 09:15:03

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 18:38:04

    じゃがいも軍団おそるべし…

  • 170◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/23(日) 23:24:19

    ※とりあえず拾ったら放り込むスレ主です。土日はなかなか進行させづらくて申し訳ない。
    AIを使って描いた、負けたスノウちゃんのイメージイラストで保守します。

  • 171二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 09:15:01

    保守

  • 172二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 20:23:48

    やっぱ駆け引きという点はまだまだなのね
    さー、反省会だ反省会!

  • 173二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 20:25:54

    これで厨二病キャラはレース中だけで、普段はすごい芋っぽく大人しいとそれはそれで可愛い

  • 174◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/24(月) 22:49:49

    「これは、やられたね」
    「はい…」
     レース翌日。
     トレーナー室のノートパソコンで、トレーナーさんとレースVTRを見返しながらの分析。
     こうして第三者の視点から見ると、走らされてた状態なのが良く分かります。
    「強くなれば注意を引くし対策もされる。それは分かっていたけど、結局は分かったつもりになっていただけ、か。
     注目される事の恐ろしさを理解できなかった、僕のミスだ」
     厳しい口調。
     誰か1人に狙われたのであれば、まだ挽回もできるでしょう。
     しかし、相手は9人。
     9人全員があらかじめ結託していたわけがありませんが、9人それぞれが別々にあたしを最大の相手とみなして作戦を練った結果、包囲網となりました。
    「ばんえい重量の差さえあればジュニアがクラシックやシニアにでも迫ることが可能なのは、模擬レースでスノウ君が身をもって示したことなのに。
     相手が軽さを利用してくることくらい予想してしかるべきだった」
     格上相手なら、まずは引っ掻き回して相手の得意とするところを好きにやらせないのは定石だ。
     ましてや、現状でカミノクニスノウは世代最強の一角。
     そう苦々しげに吐き出した言葉。溜息を、トレーナーさんがコーヒーと一緒に飲み干していきます。
    「トレーナーさんが悪いんじゃないです。
     先行されそうになって焦っちゃって刻みが半端になったのは、あたしの判断ミスです」
     あたしはノートパソコンを操作して動画を巻き戻し、第1障害あたりからまたスローで再生していきます。
    「先行されても、しっかり刻んで息を入れれば、その場だけ離されたとしても十分に追いつけたと思います。
     流れのペースが早いならそれに対応だけすればよかったのに、他の子達の動きに気を取られて、自分のペースを守れなかった」
     机の影。
     トレーナーさんから見えない位置で握りしめた拳が痛い。
    「あたしとトレーナーさん、どちらが悪いのでもないです。これは、あたし”達”のミスなんだと思います」
     どちらかの判断が間違っていたなら、どちらかがそれを直せばいい。
     それが出来なかった時点で、チームとして負けた、という事でしょう。
     そう言うと、トレーナーさんは静かに驚いた気配でした。

  • 175◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/24(月) 22:55:03

    「そうだったね」
     ゆっくりと、コーヒーが半分ほど入ったカップがトレーナーさんの手の内で回ります。
     揺れる漆黒に吸い寄せられている視線。
    「そうだった。僕らは二人で一つのチームだ。新人が二人の、完璧には程遠いチームだ。
     僕らにはゆっくり敗北に浸っている余裕なんてなかったな。勝敗に関わらず、今は全てが貴重な経験だ。負けをガツガツ喰らっていこう」
     真っ黒い水面を見つめていたトレーナーさんが、あたしを見ます。
     力強い眼差し。
     そこには、もう自分の選択を後悔していた人はいませんでした。
    「なんていうか、トレーナーさんは強いですね」
    「……僕らは、ヒトはレースを走れない。軽種のウマ娘と比べるまでもなく足は遅い。スノウ君達、重種のウマ娘のように重い橇も曳けない。
     だから、せめて、君らを支えられるくらいに心だけは強くなければ、ね」
     それもなかなか難しいから今もこうして精進中の身さ、とおどけるトレーナーさん。
    「それにしても……」
     トレーナーさんがとても優しい眼差しで、あたしを見つめていました。
    「スノウ君も強いな……敗北から目を逸らさない。僕も見習わなければ」
    「いやいやいや!そんな、あたしなんて大したことですよ!
     あ、でも褒めてくれるならもっと褒めてくれてもいいんですよ」
    「すぐ調子に乗らない」
    「はぁい」
     コツンと、わざとらしく振り上げられた拳骨が、ごくごく軽く頭に当たります。
     トレーナーさんはコーヒーを、あたしはお茶を、それぞれカップを傾けます。
     窓の外を見れば、雪がひらひらと舞い降りています。
     12月に入ってから気温は下がる一方。本格的な冬に向かっていますが、ちょっとくらい吹き荒れても温かくなれば解ける。まだまだ根雪になるには遠いです。
    「さぁ、この辺で反省会は終わりにしよう」
     トレーナーさんが勢いよく、飲み切って空になったカップを机に置きました。
    「いよいよ次はヤングチャンピオンシップ。開催まで4週間を切った。
     けれど”もうそれしかない”ではなく”まだそれだけある”だと僕は思いたい。出来る限り、一歩一歩でいい。積み上げていこう」
    「はい!」
     しかし、あれもこれもとトレーニングをしている時間が無いのも、また事実。体調の調整と基礎トレーニングに加えてとなると、あまり選択肢は多くない。
     次のトレーニングをどういう方針でいきましょうか。

  • 176◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/24(月) 23:09:50

    トレーニング方針として…

    1.自分の強みを活かす。前回、掴みかけたスピードを確実にモノにしたいです。

    2.弱点を克服したい。更なるばんえい重量にも怯まない力が欲しい。

    3.様々なシーンで効率よく物事を運べるテクニックを身に付けたいです。

    4.時に精神は肉体を超えます。全てを出し尽くしてなお競り合い勝負する根性をいれましょう。

    5.今回のレースを教訓とします。相手の作戦を踏み潰せるスタミナを強化したいです。

    6.>>178>>180からダイス

    dice1d6=6 (6)


    ※12月に入ってクリスマスも迫ってきました。クリスマスイベをどうしましょうかねー。

    年末は12月30日までレースがありますし、スノウちゃんはまだ無関係ですが1月2日にはBGⅠ帯広記念が開催されるので、帯広トレセンには正月気分とかはほとんどないです。

  • 177二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 23:52:58

    おっと安価からのダイスか
    まあ、凹んでるステータスの凹み方がまあまあしんどいからなぁ。せめてもうちょい伸ばしておかないと厳しくなるんじゃなかろうか

    安価範囲なら根性

  • 178二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 01:29:07

    レース後半の底上げを狙って、根性・根性・ド根性~!

    クリスマスの寮内はおしゃれな空気皆無のザンギ祭りと化してたりとか
    帯広記念で出走しないトレセン生によるつきたて餅販売イベントとかありそう

  • 179二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 09:24:41

    パワーかなぁ
    グイグイ曳いていけるフィジカルの余裕が欲しい

  • 180二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 17:51:22

    ここは根性でいくべさ

    クリスマスには赤鼻とトナカイの角を付けたコスプレして、お菓子とかのプレゼントを積んだ橇と一緒に市内各所の幼稚園保育園を訪問してもらおう
    なお、各施設間の移動はおのおの橇を曳いての自走とする

  • 181◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/25(火) 21:50:13

    ※安価範囲外ですが、せっかく案を出して頂いたので4択からいきます。


    トレーニング方針としては…

    dice1d4=3 (3)

  • 182二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:48:43

    おおうピンポイント

  • 183二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 10:46:32

    保守

  • 184二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 20:19:02

    保守

  • 185◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/26(水) 21:40:27

    「パワーの強化、ですか」
    「ああ、僕はスノウ君の速度と体力はジュニア級としてはトップクラスだと思っている。そのスピードで先頭集団に食らいついてペースを握り、前にはプレッシャーをかけて揺すぶり、後ろは無理やり引っ張りだす。
     そして競争相手とのスタミナ勝負に持ち込む。その戦術はスノウ君の脚質ともあっている」
    「そうですね、いつもそのパターンを目指して走ってます」
    「しかし、障害をスムーズに越えられなくなると、前後にかけているプレッシャーが減ってしまう」
     あたしは言葉に詰まりました。
    「スノウ君が気にしているようなのであまり言いたくはないのだが、君はばんえいウマ娘としては小柄な部類だ。パワーも小さい。
     その反面、君は平地競争の子達で言うステイヤー体質のようなもので、その豊富なスタミナは筋肉という過重が無いが故だろう」
     トレーナーさんは続けます。
     身体も力も小さい。
     あたしの心の片隅に、常にこびり付いていること。
     そこに気遣ってくれていますが、そこで気遣いすぎてトレーニングや今後の展開に悪影響が出ないよう、言うべきことは言ってくれるトレーナーさんのスタンスは頼もしいです。
     見たくないものを無理やり直視しないといけないのは苦しいですし、胸の奥がチクチクしますけれども。
    「なので、単純に筋力を上げようとすると、今度は持久力にも影響が出てくるだろう。
     このバランスは長い目で見なければいけないし、何よりも筋出力の向上は地道な積み重ねがモノを言うからな。
     いきなり負荷を滅茶苦茶大きくして特訓、なんてのを本当にやったら身体がぶっ壊れてしまう」
     トレーナーさんは両肩をすくめます。
    「筋肉は裏切らないとは至言だけど、それは筋肉と地道な対話を繰り返して信頼関係を築いた上での話だからね。
     いきなり無茶言ってくる奴の言う事なんて、聞くわけがない」
     同感です。
     あたしは頷きました。

  • 186◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/26(水) 21:44:45

    「それに、君はまだジュニア級だ。身体はこれから成長していく。
     フレームに合わせてエンジンを大きくしていくべきであって、今の時点で闇雲に筋出力を追い求めてもデメリットの方が大きいと思う」
     そこで、とトレーナーさんはノートパソコンを操作しました。
    「単なる筋出力アップではなくRFD、Rate of Force Developmentの向上に主眼をおいてトレーニングを進めていこうと思う」
     ノートパソコンがこちらに向けられます。
     プレゼンテーション用ソフトウェアが起動しており、ディスプレイ上には色々な図や解説がまとめられた資料が写し出されていました。
    「パワーとは、力と速度の掛け算だ。例えば、バイキをかけるとき。最大筋力に向けてゆっくり力がかかっていくと考えるとどうなるか。
     極論すれば、最大限の仕事をするのは最大筋力がかかった最後の瞬間だけであり、碌にパワーが発揮できていないという事になる」
     トレーナーさんの手が、空中に緩い傾きの線を引きます。
    「単位時間あたりに加えられた力が大きければ、それだけ力と速度の積が増えるので、したがって、より大きなパワーが発揮できる。
     RFDとは言わば筋肉の加速力。力をゼロの状態から一気に出す能力だね。
     一気に最大出力まで持っていけるのであれば、短時間で効果的にパワーをかけられ、タイム短縮に繋がるだろう。もちろん、このトレーニングの過程では筋力そのものの向上も見込める」
     その手は、今度は急傾斜の線を引きます。
    「どうだろう?」
     あたしの身体にはなかなか筋肉が付かないのは、今までのトレーニングで分かっています。それが一朝一夕でどうにかなるとは思えません。
     最大値が簡単に上げられないのであれば、今の状態での最大効率を目指す。
     トレーナーさんの提案には無理が無いように思えます。
    「はい!分かりました。トレーナーさんのプランで行きましょう!」
    「RFDを鍛えるトレーニングのキモは、ゼロからマックスまで持っていくまでの時間を短縮することにある。
     要点は三つ。可能な限り素早く速く、静止した状態から一気に、反動を使わない、だ。
     まずはいつもやっているデッドリフトにデッドスナッチを追加、それからスレッドプッシュをやっていこう」

  • 187◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/26(水) 21:48:32

     毎日のトレーニングメニューにあるズリ曳き運動。練習場でいつもやっている、重めの荷重を乗せた橇を曳いては休みする練習。それをする前に、スレッドプッシュが加わりました。
     12月に入ってから、帯広トレセン学園にもちらほらと雪が積もる日が増えてきました。十勝地方は雪が少ないので、雪も寒さも本格化するのは年が明けたらです。
     雪が積もっては、ばんえいウマ娘の無数の蹄鉄と橇のズリ金に耕されて、半分凍った泥に戻るを繰り返す練習場。
     土舗装が施された広大なグラウンドは、茶色と白のマーブル模様です。
     その一角から練習用の橇を一つ、引っ張り出して空いているスペースまで引っ張っていきます。
     スレッドプッシュはズリ曳きとは違って、その名前の通りに橇を押します。
     適度に錘を載せたら、いつもは背を向けているハナ木と呼ばれる、橇の先頭の反りかえった部分に肩を当てます。
     身体はかなり前傾して寝かし、ちょうどラグビーでスクラムを組むような姿勢。
     足には力を入れず、膝はかなり緩めて、半分くらいハナ木にもたれかかる感じです。
     ふー……。
     長い長い呼気。
     吐き出した反動で冷たく新鮮な空気を肺いっぱいに、ゆっくり吸い込む。
     ピッ!
    「だあぁりゃぁあああっ!!」
    「いいぞ!可能な限り素早く!速く!速く!」
     トレーナーさんのホイッスルの合図に合わせて、弛緩していた体を一気に緊張させて重い橇を押す。
     全身に瞬時に力が漲り、体操服が内側から爆発しそうなるほどに膨らむ筋肉。
     一息に数メートル進んだら1セット終了。
    「セット終わり!休め休め!」
     また最初の姿勢に戻り、調息。
     ピッ!
    「くぅぉおりゃあぁっ!!」
    「まだまだ!もっと早くいける!コンマ一秒で筋肉を叩き起こせ!」
     それの繰り返し。
     一瞬のうちに筋肉を爆発させて押して、休んで、また押します。

  • 188◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/26(水) 21:49:32

    パラメータ上昇判定(パワー)

    パワーはランクEのため、2d6≧6で+1となる。

    dice2d6=3 6 (9)

  • 189◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/26(水) 22:00:47

    パワーのパラメータが1上がった(E→D)

    やる気は絶好調をキープしている

    ※劇中では12月も中旬に差し掛かり、本格的にクリスマスが見えてきました。
    トレーナーさんや、シャコータングラムへのプレゼントも考えたいです。
    帯広トレセンはおっとりふわふわした優しい筋肉ムキムキ乙女の園の想定の筈なのですが、なんか年中ジャージが似合う感じになっている気がしますので、ちょっとはお洒落なイベントでカワイイ成分をテコ入れしたいなと。

    トレーナーさんへのプレゼントは…
    手袋 スポーツタオル 高級ドリップコーヒー詰め合わせ

    シャコータングラムへのプレゼントは…
    耳飾り 尻尾用ラインストーン お肌トリートメント用のスクラブ 蹄鉄お手入れグッズ
    あたりでしょうか。
    アイデアを募集します。

  • 190二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 05:26:36

  • 191二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 12:00:40

    ザンギ祭りとは、デートにも誘われずトレーニングばかりのトレセン生が、ばっちりキメて外泊届も出してお出かけしたウマ娘達が門限までに帰らされた時の表情を肴に、おしゃれ空気皆無でザンギを揚げて喰らうイベントである
    ただし、その後のヤケ食いと愚痴にはしっかり付き合ってあげる優しさはあるものとする

  • 192二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 17:25:05

    >>191

    えぇ…

  • 193◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/27(木) 21:43:06

    基本、ばんえいウマ娘さん達は皆優しくて仲間の恋路は応援してくれると思うので、そうはならない筈。

    ただ、普通に皆でフライドチキンではなくてザンギを食べまくる祭りはやりそうです。


    スレも残り少ないのでお買い物は次スレになりそうですが、プレゼントだけでも決めておきます。


    トレーナーさんへのプレゼントは…

    1.手袋

    2.スポーツタオル

    3.保温水筒

    4.高級ドリップコーヒー詰め合わせ

    5.超難関クロスワードパズル本

    dice1d5=2 (2)


    シャコータングラムへのプレゼントは…

    1.イヤリング

    2.尻尾用ラインストーン

    3.額革

    4.お肌トリートメント用のスクラブ

    5.ちょっとお高めの蹄鉄お手入れグッズ

    dice1d5=1 (1)

  • 194◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/27(木) 22:14:43
  • 195◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/27(木) 23:11:52

    AIを使って描いた、スターティングフューチャー着せてみようとして上手くいかなかったシャコータングラムのイメージイラストで埋めます。

  • 196二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 09:39:30

    乙埋め

  • 197二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 11:59:28

    最大級の胸とぶっと腿の迫力

  • 198二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 22:57:13

    乙埋め
    200安価何かやります?

  • 199◆Lj.vT9ErJJ7R24/06/28(金) 23:13:22

    AIを使って描いた、スターティングフューチャー着せてみようとして上手くいかなかったクインルゴサローズのイメージイラストで埋めます。
    拾うネタが増えるので、200安価あると助かります。

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