- 1二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:19:09
やあ、諸君。ご機嫌如何かな? 今日も今日とてウマ娘が到達せんとする限界のその先への探求で大忙しのアグネスタキオンだ。
唐突だが、キミ達は昼寝や仮眠は取る方かい? 私は研究や閃きが捗るとそちらを優先させがちなのだが、昼下がりの休憩がてらそこの窓から木陰を見ると実に大勢のウマ娘が昼寝をしている事が分かるよ。
多い所で言うと、フラワー君がスカイ君を伴ってというパターン、木陰から視線の先にいる子を応援していたデジタル君がそのまま横になったと思われるパターン、後はウララ君がパートナーを入れ替わり立ち替わり交換しながらお昼寝しているパターンと言ったところか。
デジタル君の場合は寝ているのではなく気絶してるのかもしれないが、あれはデジタル君の通常運転なのであまり気にしなくても問題ない。気絶と言っても再起動には数分とかからないし、起き上がった瞬間スパートを掛けて走り去るのもお手の物さ。
今後は記録装置を常時着用して貰って覚醒した瞬間だというのに発揮される爆発力の何たるかを解き明かしたいものだが、まあこれは一先ず置いておこう。
さて、昼寝と言うとサボりの代名詞のように思われがちだが、脳や身体の使用効率を上げる上で昼寝や仮眠の重要度は非常に高いのだよ。1時間、30分と言わずとも、環境が整ってさえいれば瞳を閉じ、思考を閉じて10分間静かに横になっているだけでも身体や脳の覚醒を促すのに効果的だ。
調子を上げて午後からトレーニングに挑みそのデータを有益なモノとする為にも、昼寝や仮眠の導入には一考の余地以上の価値があると言えよう。 - 2二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:21:55
何故急にこんな話を始めたか、と聞きたげだね。素晴らしい、実に良い質問だ。
先程も言ったが、私は閃きが奔ると研究を優先させがちなので、研究室に誰かがやってきても特段気にする質ではない。一段落ついてふと後ろを振り返ると居なかったハズのカフェがティータイムの準備をしていたので驚いたこともあった。曰く、挨拶にはちゃんと応えているらしいが、恐らくは無意識だろう。
そんな事が続いたせいか、近頃は後ろの気配でなんとなく誰が来ているのか察しが付くようになってしまったよ。
さて、それを念頭に置いた上でくるりと椅子を一回転してみようじゃないか。
「ん……ダンツー……むにゃ……」
「はーい、私だよー……えへへ♪」
うんまあ概ね予想通りと言って差し支えあるまい。
あちこち柔らかそうなダンツ君の身体に包まれて、実に心地よさそうにポッケ君が眠っているね。どうやら私がアヤベ君のツテで手に入れたそのソファと比べても、ポッケ君にとってはダンツ君の方が良いらしい。
寝言で名前を呼ばれたダンツ君も随分と嬉しそうに耳をピコピコ揺らしているし、今日も見せつけてくれるじゃないか。もう慣れたよ。
「んん……っと、悪い、ダンツ。思いっきり寝ちまってた」
「良いよ、ポッケちゃん。今日はいつもよりぐっすりだったね。もしかして、疲れてる?」
「別に、そんなんじゃねぇよ。まあ、なんだ。ダンツにこうして貰うとさ……なんつーか、安心感が凄くてよ。気付いたら落ちてるっつーか」
「そうなの? えへへ、ポッケちゃんにそう思って貰えると、嬉しいなぁ」
「……おう」
相も変わらず仲が良いようで私は心底安心したよ。後はここが私の研究室だという事をもう少し意識してもらえると助かるのだがね。
確かに研究に集中している時はあまり周囲を気にしない私だが、だからと言って相手に全く気にしてもらえないというのもどうかと思うんだよ。
もう少し言わせて貰えるなら、今そうして横になりながら抱き合っている君たちの目と鼻の先でパソコンと向き合っているとはいえ私にそのやり取りが全部聞かれているという事についてなんとも思わないのはどうかと思うのだが。
それとも、私が間違っているのだろうか? これも一考の余地有りとみるべきか。 - 3二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:23:55
「おっし。ダンツ、交代」
「えっ、わっ、ポッケちゃん!?」
「寝心地とか抱き心地とかはわかんねーけど、やってもらってばっかじゃ悪いしな。それに俺も……」
「俺も……なに? ポッケちゃん」
「ま、まあ細かいことはいいからさ。ほら、こっち来いよ、ダンツ」
「……うん。じゃあ、ちょっとだけ……えへへ」
攻守逆転? いや、この場合は上下逆転と言うべきか。デジタル君が描いている本にそんな描写もあったような気がするね。
確か、Reverseがどうとか言っていたかな。派閥の境界線であり地雷原でもあるから、不用意に触れる事は許されないとも言っていた気がするが、まあこの二人ならば関係あるまい。
「力加減とか、苦しかったら言ってくれよな」
「ううん、大丈夫……ポッケちゃんにギュってされるの、私、好きかも」
「そっか、なら良かった」
「うん。なんかね、ポッケちゃんが私の事、守ってくれてるって感じがして、すごく安心するんだ」
「っ……何だよ、それ」
照れ隠しがてらぶっきらぼうにダンツ君の台詞を流そうとしているようだが、目も表情も口程以上に物を言っている。ダンツ君にも言えることだが、素直でウソをつけない性分というのは良いモノだと私は思うよ。
次の研究テーマは『親しい関係にある二人以上のウマ娘による身体の触れ合いと会話がもたらす走力への影響』とでもしてみようか。
「あっ、ごめんね、変なこと言って」
「別に、気にしてねぇよ。それに……」
「それに?」
「……ダンツに何かあった時、守ってやりてぇってのは、間違ってねぇから」
「あぅ……」
「お前には、いつだって俺がついてる。だから……安心、していいぜ」
「う、うん……ありがとう、ポッケちゃん」
いやぁ、今日の二人は面白いほど表情がくるくる変わるね、感情の機微が手に取るように分かるよ。
しかし、ちょっと本音を口にしただけで顔を真っ赤にしてしまうとは、いやはや二人の関係が進むのが予想より遅いのにも納得というべきかな。 - 4二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:28:17
良すぎます…ありがたい…
- 5二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:28:23
「あ! そ、そういえばさ! フジさんがこないだ面白い話をしてくれてさ!」
「う、うんうん! なになに?」
「誰かと一緒に居る時、いい香りがするな、って思った相手は凄く相性が良いらしいぜ」
「へぇ、そうなの? じゃあ、私はポッケちゃんと相性が良いのかな」
「俺、そんないい香りするか? 制汗剤くらいしかしてねーけど」
「うーん、そういうのとはちょっと違くて……ふとした時に感じて、あっ、好きだな、って気持ちになる、そんな香りなんだ」
「ふーん、そういうモンか……」
さっきの会話では思いっ切り顔を真っ赤にしたのにその会話は大丈夫なのかい? 私はいよいよ君たちの基準が分からないよ。挙句の果てに"それでも二人は私を気にしません"ときている。
おや、このフレーズは確か……『おおきなかぶ』だったかな。そう言えば、つい最近絵本を読み漁る機会があった。
正直言って、デジタル君に最近のものを借りるまでは絵本は子供向けと侮っていたが、なかなかどうして面白いものだよ。人生に通ずる教訓は伝えるが決して押しつけがましくない。あの優しい語り口のバランス感覚は見事なものだ。君たちも一度書店で適当な絵本を読んでみたまえ。きっと世界が広がるハズだ。
うん、私は何を考えているんだろうね? これが所謂、現実逃避というモノなのか。
「んじゃ、俺もダンツと相性いいってことか」
「私、いい香りする? ギュってしてる時とか?」
「いや、それだけじゃねぇんだよな。オフの時だけじゃなくてさ、レースとかトレーニングとかで一緒に走る時、感じただけで目が覚めるっつーか、そんな痺れる様な香りがするんだ。こうやって一緒に居る時の香りも好きだけど、俺はターフでダンツとぶつかり合う時の香りの方が好きだ。今までも、これからも。きっと、な」
「そっか……じゃあ、私たち……両想い、だね」
「お……おう! そういうことだな! へへっ……」
「えへへ……♪」
耳と尻尾をピコピコ揺らしながら互いに頬を染める様は実に微笑ましい。実際微笑んでる訳だが。ここにデジタル君がいたらどんな反応を示してくれるだろうねぇ。 - 6二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:32:09
それも非常に興味深い所だが、今はそれより優先すべき事がある。すっくと椅子から降りた私は、暖かなそよ風が心地よい午後の空へ向かい、思いっきり息を吸い込んだ。
「カフェー! 早く来てくれー!! 今すぐ私に熱いコーヒーを煎れてくれー!! この間の特製深煎り焙煎が恋しくて堪らないんだよー!!」
突然叫びだして一体何をと思うかもしれないが、ここまで二人に口出し一つせず黙っていた事は褒められて然るべきだと思う。
胸に堪った澱みを勢いよく吐き出した私が溜め息をついて振り返ると、驚きの表情でこちらを見つめるポッケ君達と、丁度良くこの部屋にやって来たカフェの姿があった。
「……急に何なんですか? 貴方という人は……」
「あーびっくりしたー……いきなり叫び出すから何かと思ったぜ。つかタキオン、お前ホントにカフェの事好きな」
「もしかして、苦手だったコーヒーが飲みたいって言えるようになったのも、カフェちゃんのおかげかな」
もしも私に砂糖一匙分の体力が残っていたならば、ここから盛大に会話が連鎖してこの部屋はびっくりするくらいうるさくなっていただろう。
この時の私には、頬が桜色に染まったように見えるカフェに対し"そう言う割には満更でもないようだねぇ"と返してみたりとか"誰のせいだと思っているんだい?"等とポッケ君に反論を始めたりする気力はとうに残っていなかった。
兎にも角にもカフェが現れた事を好機にこの場の空気を切り替える事しか考えていなかったのだよ。 - 7二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:34:52
「やあやあ、丁度良かった。噂をすればという事もあるものだねぇ。早速だがティータイムにしようじゃないか。私はカフェが来るまでの頭脳労働その他アレやコレやピーチクパーチク寿限無寿限無で大いに消耗しているんだ。今私の身体はカフェインと糖分をこれ以上無い程に求めているのだよ!」
「ハイハイ、分かりましたよ……全く、もう」
「あっ、私、手伝うね」
「んじゃ、俺はスイーツでも調達して来っかな。タキオンも行くか?」
そしてこの切り替えの速さときている。さっきまで重なり合って両思いだなんだとか言ってた二人の態度かい? これが……。
「そうだねえ、偶には自分で選ぶのも悪くないかな」
「いや、いつもそうしろよ。お前、人任せにするクセに我侭言うじゃねぇか」
そんなポッケ君の小言には背を向け、私は颯爽と研究室を後にする。今日もなんとかカフェが来るまで乗り切ったが、果たしてコレはいつまで続くのだろう。
そこまで気になるなら二人に直接言えばいいのではないかって? もしそれでポッケ君に"気にして無かったわ"とかあっけらかんと言われたらどう責任を取るつもりだい?
私だってね、傷つくことくらいあるんだよ。
さてさて、とは言え無事にティータイムを迎えられそうだし、今日はこの辺で暇乞いとしよう。
今日で随分お互いの認識も進展したようだし、次諸君に見える時には私もこうして一人紋々と考え込む必要も無くなっていることだろう! 実に素晴らしいじゃないか!
「はい、ポッケちゃん、あーん♪」
「お、サンキュー……ん! 美味いなコレ!」
「えへへ、そうでしょ? ミラ子先輩のお墨付きなんだよ」
「よし、そんじゃ俺も……ダンツ、あーん」
「あーん♪ んー! 美味しい!」
「……お二人は、今日も仲良しですね。深煎りのコーヒーが、甘く思える程に」
「……だねぇ」
前言撤回、どうやらもうしばらくはカフェの淹れる深煎りコーヒーのお世話になりそうだ。 - 8二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:38:04
べネ!
- 9二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:39:18
以上です。ありがとうございました。
アグネスタキオンの憂鬱【ダンポケ+α・SS】|あにまん掲示板 やあ、諸君。今日もウマ娘の秘めたる可能性の探求に大忙しのアグネスタキオンだ。早速だが、君達は感情が走りにもたらす影響についてどう思う? まあ、トレセン学園に在籍する諸君ならば聞くまでもあるまい。誰よ…bbs.animanch.com前回、こちらで研究室で四六時中イチャつくダンポケに巻き込まれるタキオンというお話を書かせて頂きましたが、また降ってきたので取り急ぎ形に致しました。
ブラックコーヒーから砂糖黍が生えてくるレベルでイチャイチャするダンポケは健康に良い。この尊さはDNAに素早く届く。
- 10二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 23:42:00
ターン制照れさせあいバトルするダンポケいいぞぉ!!!!!もっとやれ!!!!!!
- 11二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 00:13:44
相変わらず人前扱いされないタキオンで芝2400m
これは仮にくっついても研究室に入り浸られるフラグ…… - 12二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 07:12:00
- 13二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 11:39:24
前作よりイチャイチャもタキオンのモノローグもパワーアップしてて良かった
「ほら、こっち来いよ」ってコレ絶対優しさ入りのイケボで言ってるやん…… - 14124/06/06(木) 21:11:59
皆様、読んで頂きありがとうございます。
こちらこそありがとうございます。ダンポケ良いよね……。
ありがとうございます! ベネ!
しかもお互いノーガードで殴り合ってます。堪らないですね。
更に火力が高すぎてタキオンが巻き込まれています。逃げられないですね。
今まで以上にイッチャホイするダンポケに対しタキオンは悟りを開くのか負けじとカフェとイチャつきだすのか、気になる所です。
どこか投げやりな台詞に心の内が現れています。
これでも耐性が付いた(付けざるを得なかった)方だったり。
優しさ入りのイケボに眩しい笑顔をトッピングです。
ポッケ君がお好き?結構、ではますます好きになりますよ。
- 15二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 21:21:36
乙です。タキオンの反応がいちいち面白かった。
- 16124/06/06(木) 22:31:22
- 17二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 00:30:40
とても良い!
- 18124/06/07(金) 07:14:07