【トレシャカSS】by the way…

  • 1二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:24:32

     トレセン学園のある日の昼休み。他の生徒達が思い思いの時間を過ごしている中、オレはトレーナー室でデータ整理をしていた。
    学園内のどこに居てもファインやらタップやらが絡ンできて集中できやしねェからだ。
     ここには当然オレのトレーナーが居るンだが、最近のアイツは無駄に話し掛けて来ることが無くなった。
    オレが本当に集中したい時は適度に放っておいてくれる。
    コーヒーを淹れたり、オレが糖分補給をしたい時にそっと菓子を寄越すくらいだ。
    糖分補給のタイミングを知ってンのは正直キモいが、まあなんだかんだ長い付き合いだ、嫌でも覚えたンだろう。多分。
     
     さて、オレはこの部屋で作業する際、いつもならソファーに座っているンだか、今日はトレーナーが普段使っているデスクに向かっていた。何故かって?それは…
    「Zzz…」
    トレーナーがソファーで眠りこけていたからだ。

  • 2二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:24:55

     もう随分前の話になる。
    「オイ、ちょっと匿え。」
    と初めて昼休みにトレーナー室に来た時に
    「これからも好きに使っていいからな。」
    と言っていた。
    始めはあまり乗り気じゃなかったが、トレーナーの程よい干渉が意外にも居心地悪さを感じさせなかった。
    その日以降、ちょくちょく昼休みに来るようになった。
     その為今日もこの部屋に来たわけだが、ドアを開けた途端、目に飛び込んできたのがソファーで横になっているトレーナーだった。
    (…好きに使って良いなンて言ってた癖に占領してンじゃねェ。)
    「オイ、起き…」
    と起こそうとしたンだが…
    トレーナーの目の下には大きな隈ができていた。
    どうせまた深夜まで仕事だの勉強だのしてたンだろう。
    「…チッ、しゃーねェな…。」
    流石にそンな奴を叩き起こすほど、オレだって鬼じゃねェ。
    それで仕方なくアイツのデスクを使っているワケだ。

  • 3二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:25:21

     「ンー…っはぁ…。」
    ぐーっと体を伸ばすと、関節が鳴る。
    データ整理が一旦切りが付いた。コーヒーでも飲みてェなと思ったが、今トレーナーは寝てるンだったな…。
    (そういや全然起きねェな…。)
    それほど疲れていたのだろう。なんとなく気になって様子を見にソファーへ近づく。
    180cm以上ある無駄にデカイ図体が横になっており、ソファーから足がはみ出している。
    仰向けの状態のその体には何も掛けられていない。
    テーブルの上を見ると、オレが普段使っている膝掛けが綺麗に畳まれて置いてあった。
    (別に使や良かったのに...。いや、他人の膝掛け勝手に使う方がキモいか。)
    なンて思いながらトレーナーの顔の近くにしゃがみこむ。
    気晴らしに、普段は遥か上にあるトレーナーの顔を観察してみることにした。

    (不細工じゃあねェよな…。俗に言うイケメンってワケでもねェと思うけど…。)
    フツメンって言うのか?ツラの良し悪しなんて興味無ェけど。
    (…?)
    トレーナーの顔を見ていると、胸の辺りがざわついてきた。何だこれ…何か…直視出来ねェ…。
    何故か気まずくなって視線を少し下げ、耳を見てみる。
    (近くでじっくり見ンのは初めてかもな…。ヒトの耳ってこンな形してンのか…。思ったより複雑で、ちょっとキモいかもな…。)
    だが興味深くはある。どう進化してこの形になったのか…。
    フーン…と思考していると、耳たぶについて一つ納得いかねェことを思い出した。
    (料理のレシピに"耳たぶくらいの柔らかさ"なンてあるが、流石に個人差があンだろ…、ロジカルじゃねェよなァ…。)
    「………。」
    考えるより早く、オレはトレーナーの耳たぶ摘まんでいた。柔らかさを確かめるように親指と人差し指を使い、挟むように何度も動かす。
    包み込むような…押し返すような…癖になりそうな…。
    「…ッ!?」
    何度か摘まんだ後ハッと我に返り、手を離す。
    (何やってンだオレは…。)
    立ち上がりデスクに戻ろうとした時、ふとあることを思い出した。

  • 4二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:25:40

     それは昨日の夜の事だ。
    昨日は珍しくネカフェではなく、寮の自室で作業していた。
    コーヒーでも淹れようと一階に降り、談話室の前を通りがかった際、寮長のフジキセキと後輩達の話が聞こえてきた。
    どういう経緯か知らねェがフジが、
    「その時トレーナーさんにこう言ったんだ。『そういえば、良い匂いと感じた相手とは、遺伝子から相性が良い』ってね。」
    なンて言ってた。
    それを聞いた奴らはキャーキャーと騒いでいたが、
    (うるせェ…何騒いでンだか…)
    その説は聞いたことがある。確か、
    『遺伝子の作りが違う相手ほど良い匂いだと感じ、その相手との間には感染症に罹りにくい子供が生まれる。故に相性が良いと言える。』
    だったかァ?
    (興味ねェ。そもそも"良い"匂いってどんな匂いだよ…。何をもって"良い"とするのか、そこ曖昧にすンなよな…。)
    なンて思いながらコーヒーを淹れ、部屋に戻った。

  • 5二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:25:59

     「………ッ」
    ドアの方へ顔を向ける。施錠はされてないが、しっかりと閉められている。
    「オイ、起きてるか?」
    再び顔をトレーナーの方へ向け、中腰になり小声で呼び掛けるが反応は無い。良く眠ってやがる。
    今度は耳を澄ます。どこからか喧騒が聞こえてくるが少なくともこの部屋周辺からではない。
    (これは…好奇心だ…そう、他意は無い。ただの好奇心…。)
    トレーナーの首元にゆっくりと顔を近づける。
    トレーナーの顔のすぐ近くまで来た。
     小さかった筈の寝息がはっきり聞こえる距離まで近づいた時、オレの身体に異変が起き始めた。 
    顔に熱が集まるのを感じる…。
    勝手に尻尾が高く持ち上がり、
    胸も、まるで全力で走り終えた直後みてェに鼓動がバクバクと、うるさくて仕方ねェ…。
    (顔が、身体中が熱ィ…なンだこれ…。)
    気が付けば、制服の胸元をシワになる程握り締めていた。
    高鳴る胸を抑え、一呼吸ついてから目を瞑り、鼻から大きく空気を吸い込んだ。
    「………」
    「アホらし…何やってンだオレ…。」
    ボソッと吐き捨て、テーブルの上の膝掛けをトレーナーに掛けてやり、デスクへ戻る。
    作業を再開しようとしたが、全身の火照りが治まるまで集中出来やしなかった。

    …アァ?どンな匂いだったって?
    ………知らねェ。

  • 6二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:26:18

     「ん…ううん…あれ…?」
    ソファから少し掠れた声と布擦れの音がする。エアシャカールのトレーナーが目を覚ましたようだ。
    「膝掛け…シャカールの…?なんで…?」
    「ン…?あぁ、起きたのか。」
    トレーナーが上体を起こし声のする方へ顔を向けると、デスクでPCに向かい、何やら作業するエアシャカールがいた。
    「シャカール?来てたのか……あぁごめん、ソファー使っちゃって、起こしても良かったのに。」
    「別に、座れりゃどこでも良い。」
    「そっか…それと、膝掛けありがとう。掛けてくれたんだろ?でも、俺が使って良かったのか?」
    「構いやしねェ、気にすンな。」
    「そうか…ありがとう…。」
    「ン…。」
    会話の後、ぼんやりと虚空を見つめ何か言いたげなトレーナーが気になり、エアシャカールは彼に声を掛けた。
    「なンだよ、何ぼーッとしてンだ?」
    「いや...なんか…」
    とトレーナーが続ける
    「さっき寝てる時に、…気のせいかも知れないけど…なんか…良い匂いがしたような気がして…。何だろう…なんだか…優しい?匂いのような…」
    「気のせいだろ、寝ボケたこと言ってねェでとっとと顔洗ってこい。」
    トレーナーの言葉を遮るようにエアシャカールは捲し立てる。
    「あはは…そうだな…うん、ちょっと顔洗ってくるよ。」
    立ち上がり伸びをした後、タオルを手に取り部屋を後にするトレーナー。
    「…ッ…ハァ~…」
    パタリとドアが閉まった後、エアシャカールは大きく息を吐きながらデスクに両肘を突き頭を抱えた。

    「アイツも良い匂いだって感じてたのかよ…クソッ…」

    またしても顔に熱が集まるのを感じたエアシャカールは、帰ってきたトレーナーに自身の顔の色を指摘された際、何と言って誤魔化すかを思案していた。

  • 7二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:26:37

     エアシャカールは気付いていなかった。自分がミスを犯したことを。
     遡ること数分前、中腰で自身の顔をトレーナーの首元に近づけていた時、彼女はウマ娘の優れた聴力を持ってしても気付けない程集中していた。
    閉まっていた筈のドアが少しだけ開かれており、ドアの向こうに三つの人影があったことに。
     人影の正体は彼女の友人である三人のウマ娘、ファインモーション、タップダンスシチー、アグネスタキオンであった。
    その三人は中の様子を窺いながら、小声で話をしている。
    「キャ~!見て見てっ!シャカールったら、あんなに真っ赤な顔して!」
    「ヒュ~♪it′s naive love!こりゃこれ以上見てるのは野暮ってやつかな?」
    「ふゥン…。シャカール君には手伝ってもらいたいことがあったんだが…仕方ない、他をあたるとするか…。」
    三人は静かにドアを閉め、一切音を立てずその場を後にした。
    エアシャカールを揺さぶれるような大スクープを胸に抱えて…。

  • 8二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:28:44

    今回は一度はやってみたかった、匂いネタのトレシャカSSです。
    難しかった…。

  • 9二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 19:53:36

    応援スレに推薦しておいたゾ

  • 10二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 20:21:18

    素晴らしい…某スレでゲノム相性100を叩き出したシャカールを思い出したけれど、内に秘めた想いで悶々としちゃう彼女は美しいと思うんです…

  • 11二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 21:36:52

    ありがとう
    生き返った
    スレ主にいいこと沢山ありますように

  • 12二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 21:37:27

    尻尾が上がるシャカールすき

  • 13二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 00:04:24

    もう二度とクールでロジカルなウマ娘は名乗れないねぇ…

  • 14二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 00:15:40

    良いゾ~バレてる事がバレた時が楽しみだな♡

  • 15二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 09:29:51

    皆さん感想ありがとうございます。
    シャカールはもし仮にトレーナーに恋心を抱いても自覚するまで時間掛かりそうだし、自覚しても最初は絶対認めないだろうなぁと。

    ファイン達に見られてしまった件については「揺さぶれる」とは書いていますが、皆良い子達なのでシャカールを揺するなんてことはしないでしょう。
    たまにちょっとからかったりはするでしょうが。

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