俺はテイオーの兄ちゃん

  • 1二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 00:12:02

    ――――――もとい、テイオーのトレーナーである。
    うん、とりあえず保健室へ送ろうとするのは待ってほしい。確かにトレセン学園には担当ウマ娘に『お兄様』や『お兄ちゃん』と呼ばれてるトレーナーもいる。しかし俺とテイオーはマジで血のつながった兄妹なんだ。
    「兄ちゃんお待たせ―!今日もよろしくね!」
    「学園内で兄ちゃんはよせ、テイオー。これで3度目だぞ」
    ハーイ、と返事をしつつ、ジャージに着替えた妹は一足先にグラウンドへと向かう。
    ・・・・・本当に大丈夫かなあ、俺。

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 00:18:23

    時は数週間前に遡る。
    新米トレーナーとしてデビューした俺は、担当するウマ娘をスカウトするため模擬レースや選抜レースにあししげく通い詰めた。しかしそこは新米トレーナー、ウマ娘を見る目も実力も未熟なわけで。なかなかスカウトまでこぎつけることができなかった。無論、トレーナーとして勤める以上はウマ娘をスカウト・もしくは向こうからの逆スカウトがなければ話にならない。前途洋々とは全く言えないスタートに、俺は頭を悩ませていた。

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 00:34:39

    兄ちゃん呼びでMachico因子継承しとる

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 00:36:57

    「あ、兄ちゃん!」
    後ろから見知った声と足音が聞こえてくる。振り向かずとも容易に分かるのは、その分かりやすい声からか。それとも長年一緒にいたからか。
    トウカイテイオー。今期の入学生の中でも指折りの実力を持つと当初から話題だった、可愛い可愛い妹である。
    「ようテイオー。担当してくれるトレーナーは決まったか?」
    「うん!たくさんのトレーナーからスカウトされたんだよ!ボクったらモテモテだよねー!」
    そりゃよかった、と俺は返す。昔から多才ではあったが、エリートの集うトレセン学園でも差をつけられてしまった。
    「兄ちゃんはスカウト?うまくいってるのー?」
    痛いところを突いてくる。がしかし、ここで見栄を張っても仕方がない。からっきしであることを伝えた。
    「新人のトレーナーだもんねー。ボクも所属することになったのはベテランのトレーナーのところだし」
    「…なに、まだスカウト期間は十分ある。どうにかやってみせるさ」
    「うんうん、さすが兄ちゃんだねー!」
    実家のような雰囲気で話しているが、既に放課後、夕日も落ちようとしている時間である。急がないと日が暮れるぞ、と妹を寮へと送り出す。
    「…明日こそスカウトしてみせるぞお!」
    人気のないグラウンド脇で、俺は決意を口にした。

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 00:51:04

    とまあ、ああして意気揚々となったはいいものの、現実は厳しいわけで。なかなかスカウトは成功しなかった。
    「…なあ、お前まだ担当ウマ娘が決まってないのか?」
    食堂にて、同期のトレーナーから質問をされる。
    「ヤバい。マジでヤバい。こんなに引っかからないとか思ってなかったわ...」
    「俺でも担当する娘は決まったぞ。初年度は先輩トレーナーも助けてくれるし、サブトレーナーになるのはもったいないって」

    Q.もし仮に担当するウマ娘ができなかったらどうなりますか?
    A.ほかのトレーナーのサポートをメインに行うサブトレーナーになっていただきます。(当ss内調べ)

    そうなんだよなあ...とぼやきながらカツ丼を平らげる。カツがサクサクジューシーでめっちゃ美味え。トレセン学園サイコー!!
    …とか言ってる場合じゃねえんだわマジで!!さすがに初年度から担当ナシはヤバい。昨今のトレーナー枯渇問題の中でも売れ残ったトレーナーとかどんな烙印を押されるか分かったもんじゃねえんだわマジで!!(自分調べ)

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 01:08:19

    食堂を後にし、グラウンドへと向かう。この時間帯にウマ娘が走っているかは分からない。良しんば走っていたとしてもすでにチームに所属している可能性の方が高い。けど動くしかないんだわ!


    ――――――――――― 今日もダメだった。ホントにトレーナー枯渇してるの?トレセン学園。
    まあベテランのトレーナーが複数人、多いところだと10人とか受け持つこともあるらしいから年度によって変わるのかもしれない。今期の新米トレーナーは例年より多いらしいしね。
    「兄ちゃーん!」
    4時の方向から妹の声が聞こえてくる。正直言って、会いたくない。いまだに担当ウマ娘1人いない情けない兄を見てほしくない。そんな思いとは裏腹に、テイオーは座り込んでうなだれていた俺の隣に座りこんだ。

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 01:26:01

    「…もしかして、まだ担当決まってない?」
    相変わらず痛いところを突いてくる。昔から変わらないなあ、なんて思いつつ。
    「そうなんだ。ごめんなあ、情けない兄ちゃんで」
    「大丈夫だよ。ボクも一緒だからさ」
    「そうかー、お前も一緒かあー...ーーーーーーーーーーーーーーーーなんて?」
    「チーム。抜けてきたんだ、さっき」





    ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!????????
    抜けてきた!?ベテランのトレーナーが担当するチームを!?アイエエエ!?

    「なんというか、合わなくってさ。色々と」
    情緒が落ち着いた俺を相手にテイオーは話す。
    早い話、テイオーが圧倒的過ぎたのだ。ウマ娘を担当するトレーナーは、当然のことながら担当ウマ娘の脚質や距離適性、バ場にあったトレーニングメニューを組まなければならない。担当するウマ娘が増えればその分考える事も増えていく。
    トレーナーだけの話でもない。チームに所属するウマ娘たちは、お互いに競い合い、高めあう大切なライバルともなる。ここで問題が発生する。

    Q.チーム内に圧倒的過ぎる実力者が出た場合どうなりますか?
    A.時と場合にもよりますが、入学して間もないウマ娘にとっては強烈な『憧れ』にもなり、同時に『絶望』ともなりえます。(当ss内調べ)

  • 8二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 01:27:06

    兄がトレセンのライセンス持ってるってどんだけ優秀なんだこの兄弟

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 01:37:39

    今年入学したウマ娘の中でも、テイオーは他を寄せ付けない圧倒的な実力を持っていた。
    無論、本格化が進んでいない・自分の走り方を確立させていないといった要因から途中から本領発揮するウマ娘も多くいる。そんな磨き始め、これから先どうなっていくか分からない時期に『これ以上ない輝きを見せる同期の存在』を間近で見てしまったらどうなるか。

    ―――――――――折れてしまうのである。

    『自分はあの子以上の走りができるのか』
    『自分はあの子にクラシックで勝つことができるのか』
    『自分など取るに足らない存在だったのではないか』

    そうした思いが、知らず知らずのうちに自らを縛り付け、限界をつくってしまうらしい。
    良しんば折れなかったとしても、

    『あの子のように走ればいいのか』
    『あの子のようになるにはどうしたら』

    と、自らの在り方を羨望の対象へと変えていってしまう。結果、自らに適した走りができなくなってしまうのだ。

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 02:06:03

    テイオーをスカウトし、担当していたトレーナーとしても、苦渋の決断だったらしい。
    テイオーの他に担当しているウマ娘も、粒ぞろいの有力候補ばかりである(全員スカウト失敗したから覚えてる)。
    ――――――――― それでも、俺の妹は強すぎたのだ。他の子を狂わせてしまうほどに。
    「トレーナーには何回も何回も謝られちゃってさ。こっちが申し訳なくなっちゃったよ」
    ちょっぴり悲しそうに妹はつぶやく。生意気だが友好的な性格の妹だ。ほかのチームメイトともすぐに打ち解けていたのだろう。そして、こんな形で別れることになるとも思っていなかったはずだ。
    「でもねでもね、約束したんだ!みんなで絶対皐月賞に出るんだって!」
    皐月賞。クラシック路線の始まりにして、『もっともはやいウマ娘』が勝つとされているG1レース。数多くいる同期のウマ娘の中から、18名しかそのレースに出ることは叶わない。
    「でもどうしよっかなあ。トレーナーがいないとさすがのボクでもG1レースに出るのは厳しいしなー。どこかに手の空いてて、マンツーマンで教えてくれるトレーナーがいないかなー?」
    「ハハハ。さすがにこの時期に手の空いてるトレーナーとかいるわけ――――――――――。」

    いたわ。いるじゃん。ここに一人。左手にサイコガンはついてないけど。
    「ねえ兄ちゃん。ボクのトレーナーになる気はない?」
    変なことを考えているうちに、テイオーの方から質問が飛んできた。しかも今一番、喉から手が出るほど欲しいやつが。
    「いいのか?スカウト成功率0パーセントのトレーナーだぞ?」
    と、冗談交じりに返す。四の五の言ってられる状況下ではないが、俺たち兄妹なわけで。家族間での担当契約とか前例とか無いだろうし。
    「兄ちゃんなら大丈夫だよ!ボクのこと、誰よりよく知ってるでしょ?きっといいトレーナーになると思うんだー!」
    ――――――― 参ったなあ。実の妹に助け舟を出されてしまうとは。重ね重ね情けない。けど、
    「わかった。俺がテイオーのトレーナーになる。一緒に頑張ろう!」
    こうなった俺たちは、昔から強いもんな。

    【続く(?)】


    「あと兄ちゃん、スカウトするときはもうちょっと落ち着いた方がいいと思うよ。ライブとかで見る看板もいらないよー!」
    「.....マジで?」

  • 11二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 02:07:39

    >>8

    テイオーの実家ってクッソ金持ちの名家だし良い教育うけとるんやろなぁ…

  • 12二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 03:39:13

    私こういう兄妹でトップを目指す物語好き!!

  • 13二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 06:50:30

    続きを期待

  • 14二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 08:06:20

    これは期待
    もしや兄さんの羞恥心は某一流トレーナー並みなのでは

  • 15二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 09:35:28

    トレーナー多分ルドルフに頭上がらないんだろうな

  • 16二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 09:48:27

    ルドルフとテイオーの教育方針について頻繁に話し合ってそう

  • 17二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 16:34:14

    保守

  • 18二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 16:47:56

    続きをくれ…

  • 19二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 16:50:39

    実際こんな妹がいたら可愛くて仕方がないだろうな…

  • 20二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 02:03:24

    続きがみたい…

  • 21二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 02:56:26

    兄ちゃんがトレーナーなら過保護なテイオー両親も安心だな!

  • 22二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 09:32:46

    すごく可愛い!

  • 23二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 09:43:57

    将来複数担当のチームになって兄狙いのウマ娘たちに将を射んと欲すれば方式でテイオー争奪戦が始まる未来が見える見える

  • 24二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:15:22

    かわいい

  • 25二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 21:06:53

    早く続きを書くんだよあくしろよ
    嘘です尊いものをありがとうございますお体大事になさってください

  • 26二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 21:33:07

    続きは...もう少し待ってくれ。リアルに腹が痛くてな...

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