- 1◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:34:31
「アヤベ、週末に星を見に行かないか?」
珍しいことも有るのね。あなたから誘うなんて……いつもは私についてくるだけなのに。
……別に予定も無いし、拒否する理由もない。
「……いいけれど」
「ありがとう! それじゃあ、また連絡するよ!」
──そして週末
着いた先は、学園から少し離れた高台にある公園。
そう言えば、ここに来るのは初めてかもしれない。
高台だからかしら? 星がきれいに見えるのね。
ただ無言で肩を寄せ合い、夜空を見上げる。
澄んだ夜空が良く見える。
……! あれは、流星群?
トレーナーさん、もしかしてこれを見せるために?
星の事は逐一調べていた。でも、今日のこのことは知らなかった。
トレーナーさん、どうやって調べたの?
……よくわからない人。 - 2◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:34:52
お姉ちゃん、久しぶり! 元気にしてた?
ちゃんとトレーナーさんと一緒に来てくれたんだね!
トレーナーさんの夢に出た甲斐が有ったよ~。お姉ちゃん、素直じゃないんだもん。
今日はね……別になんてことない日なんだけど、お姉ちゃんにプレゼントを贈るね!
実はね、私、宇宙で星のみんなとお友達になったんだ! みんなお姉ちゃんの大ファンなんだよ?
今夜はね、星のみんなと地球に降りようと思うの。
お姉ちゃんから見れば流れ星みたいに見えるかな?
見ててね、お姉ちゃん。きっときれいだから。
さあ、みんな! 準備はいーい?
お姉ちゃんにいいところ見せようね!
それじゃあ、いっくよー!! - 3◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:35:06
貴女の事を知ったのはつい最近の事であります。いや語弊がありますね。
我々の時間からすれば最近の事ですが、貴女にとってはずいぶん昔の事でしょう。
水の惑星から届いた光の中で見た貴女は、まだ幼いお姿でした。軌道上を航行する我らを見つめるその瞳、よく覚えております。
普段は気にも留めません。長い長い時を進む我ら星団にとってはほんの一瞬。大した事象では無いのです。
ですが、貴女に関しては違ったのです。いわゆる一目惚れ、というものです。
それからは大変でした。ほんの一瞬のはずなのに、次の再会までが恐ろしく長く感じたのです。
そんな折、我々に転機が訪れました。もう一人の貴女に出会ったのです。
彼女は色んなことを我々に教えてくれました。貴女の苦悩、喜び、想い人。
……申し訳ありません。最後の件はのぞき見の様な真似を……どうかご容赦ください。
さて、いつも精進なさっているそんな貴女に贈り物がございます。
我ら星団からの最初で最後の贈り物であります。
どうぞご覧ください。夜空を彩る命の輝きを、最後の煌めきを。
我ら星団による降下作戦を、どうぞご覧ください。
入電! 目標地点まで航行開始!
総員、展開せよ! 展開せよ! 隊列を乱すな!
総員、降下準備! 降下準備! 最終点検急げ!
さあご覧ください! 我らの命の輝きを、最後の煌めきを!
総員、降下せよ! 降下せよ! 遅れをとるな! - 4◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:35:30
お二方、見えておりますか? 我らの姿が!
残念ながら我々からは何も見えません。視界は真っ白、灼熱のホワイトアウトであります。
地上へ向かって秒速40kmで降下中であります。その間にも各隊からあらゆる情報が伝達されております。
既にいくつかの隊は壊滅もしくは焼失。散り散りになった残存兵は各個任務を続行。
ああ、見える、聞こえる。戦友たちの煌めきが、声が。
希望に満ちた玉砕が見える、絶望無き断末魔が、賛美と祝福の絶叫が聞こえる。
私の隊も最早壊滅状態。私もそろそろ限界でしょう。
どうか最後までご覧ください。我らの雄姿を。
残存兵諸君! これが最後だ! 己の命を燃やし尽くせ!!
我らが一等星に栄光あれ! 祝福あれ!! - 5◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:35:47
みんなの声が聴こえる。
みんな、お姉ちゃんとトレーナーさんを讃え、祝福している。
賛美と祝福の絶叫。
もしかしたら、お姉ちゃんも聴こえているかな?
今度はお姉ちゃんの夢にお邪魔するね!
みんなのこと、教えてあげるからね。 - 6◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:36:10
何かが聴こえた気がした。
まるで大勢の人の声。
その声は、まるで希望に満ち溢れた楽し気な声。
「何か、声が聴こえたな」
同じ疑問を投げかける前に、トレーナーさんが問いかける。
「……トレーナーさんも聴こえたのね。あの声が」
「ああ、よく聴こえた。人の声かはわからないけど」
確かに流れ星の音が聞こえることは有る。それは星から発せられた電磁波。
光速で降り注ぐそれは、地上の物に共鳴し音に変換される。
ただの偶然。偶然、人の声に聞こえただけ。なんてことはない現象。
しばらくの沈黙。彼のある一言でそれは破られた。
「実はさ、今日はある夢を見たから誘ったんだ」
「夢?」
「そうなんだ、アヤベにそっくりな子が教えてくれたんだ。流星群のことを」
「……そう」
夢で見たから誘うなんて……本当によくわからない人。
……もしかしてあの子かしら?
根拠はないけれど、そんな気がする。
ありがとう。お姉ちゃん、頑張るね。
今度は私に会いに来て。夢で待っているわ。 - 7◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:36:23
以上
最後の煌めきって、素敵だね。 - 8◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:36:34
豆知識その1:流星の音
¬¯ÉºÁÄ·±¦é¹www5e.biglobe.ne.jp - 9◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:36:44
- 10◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 22:43:27
- 11二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 22:44:42
流れ星が落ちるたびに妹さんに会えるんだなぁ……
あと最後の煌めきというと流れ星じゃないけどはやぶさ思い出したわ - 12◆yFCsk53BHGs124/06/14(金) 23:33:02
- 13二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 23:40:54
- 14二次元好きの匿名さん24/06/14(金) 23:53:40
- 15◆yFCsk53BHGs124/06/15(土) 01:23:11
- 16二次元好きの匿名さん24/06/15(土) 11:35:06
流れ星、堕ちて燃えて尽きて、そして……
- 17◆yFCsk53BHGs124/06/15(土) 21:06:59
その魂は輪廻の輪を巡り新たな器を手に入れるか答えは神のみぞ知る