ツチノコ「みんなに出逢えて嬉しいノコ〜」

1二次元好きの匿名さん21/09/07(火) 07:44:02

自分の絵を褒めてもらう。
他人の絵を褒めてあげる。
皆が優しく、その世界は感謝と思いやりで満たされていた。
そうした幸せな時間のなかで積み上がった絆を信じていた。
出逢えることの幸福を疑わなかった。

だから無邪気に喜びながらオフ会の誘いを快諾したのだ。
指定されたカラオケボックスが、高い防音性により悲鳴さえ封じ込める密室だなどとは思い至らなかった。

求められたかった。
それはこんなかたちではなかった。
認められたかった。
それはこんな欲望ではなかった。
確かめ合いたかった。
それはこんな行為ではなかった。

もうあれから暫く経つというのに、僅かな水音にさえ内臓の不快感を思い出す。
ひび割れた心を埋めるために救いの言葉を求めることも、もう辞めた。

「危機感が足りない」「バカなやつだ」「世間を舐めている」
「同情を引きたいだけだろう」「炎上ねらいか？」「ざまぁみろ」
「今まで散々ちやほやされた報いだ」「本当は楽しかったんだろう？」

SNSに流れる心ない文面が突き刺さる。
顔の見えない誰かとの繋がりが怖い。
衝動的に叩き割ったスマートフォンは触れることさえ怖くて未だに部屋の隅で沈黙している。
以前は輝いて見えた絵を描くことの情熱さえ、その裏側の欲望を知って色褪せてしまった。
世界を遮断し、泥のように眠る。
背を丸めて孤独の殻を纏うことだけが、今のツチノコに唯一許された安寧だった。