- 1二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:14:49
オグリキャップさんの調子を何としても落としたいのに空回りする>>1ちゃん、そしてルームメイトの>>110ちゃん、さらには二人の後輩ちゃんたちのあれやこれやを妄想して楽しむスレです。
次スレは>>190の人がお願いします。
- 2二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:16:00
前スレ
ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って…そうだ……!Part45|あにまん掲示板オグリキャップさんの調子を何としても落としたいのに空回りする>>1ちゃん、そしてルームメイトの>>110ちゃん、さらには二人の後輩ちゃんたちのあれやこれやを妄想して楽しむスレです。次スレは>&g…bbs.animanch.comはじまりの地
ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って...そうだ......!|あにまん掲示板大量のにんじんを押し付けてやる!https://bbs.animanch.com/img/243226/595いくら良く食べると言ってもこの量は迷惑でしょ!これで体調でも崩せばいいのよ!bbs.animanch.com - 3二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:16:41
- 4二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:17:06
- 5二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:17:42
- 6二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:18:22
- 7二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:18:48
- 8二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:19:02
わからないことは下のwikiにアクセス!
過去スレへのリンクはもちろん、SSやファンアートも詰まっています。
派生スレなど、細かいところも掲載してますので是非一度お目通しください
resanchorone @ ウィキ【7/18更新】レスアンカーワンwikiへようこそ https://bbs.animanch.com/board/255217/ を発端に、ウマ娘世界に爆誕した>>1ちゃん(仮名:レスアンカーワン)のまと...w.atwiki.jp編集のお手伝いをしてくれる方をいつでも募集しています。
- 9二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:19:39
◇ルールのようなもの◇
合言葉は「あとはふんわり」!
イチちゃんをはじめ、オリキャラたちの外見や性格、戦績などの設定、そのほかカップリングなどは全く固定されていません。
大小問わずすべての概念(妄想)を受け入れ、楽しむスレとなっています。
しかしながら、
・本家ウマ娘の二次創作ガイドラインの順守(例:直接的なセクシー表現・演出などの禁止)
・他スレなど外部への持ち出し
これら迷惑行為はしないようにお願いします。 - 10二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 19:25:40
モニ「あ゛づいいいいいい」
タマ「どないなっとんねん日本……。まだ6月やぞ……」
モニ「言ってももう7月ですけどね……」
タマ「せやけどもう少し手心加えてもええやんお天道様──ん? あの二人は何してんねん? 二人して顔真っ赤にしてそっぽ向いて」
モニ「ああ、あれですか。なんでも二人して同じ夢見て気まずくなってるみたいです」
タマ「どんな夢や?」
モニ「んなもん、卒業してから一緒になってイチャコラしてる夢ですよー」
タマ「聞かな良かった……。暑いのに加えて口ん中じゃりじゃりになったわ……」 - 11二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 20:49:18
立て乙なんだ!
- 12二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 20:52:24
- 13二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 21:00:13
味がしなくなりそう
- 14二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 01:50:55
新スレ乙
チャンミ今のところ順調なんだ - 15二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 07:31:25
うーんいつ見てもすげーママ
- 16二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 17:38:57
投稿乙なんだ!
- 17了船長24/06/21(金) 18:43:25
「はい、今日のトレーニングはここまでです」
トレーナーさんの声に、脚を止めるイチちゃん。息を整えてふと、視線を上に向けるとまだまだ明るさが目立つ空。
「もう終わりですか」
「あはは、そう思いますよね」
「ずいぶん日が長くなったなあ」
「そういえば、今年の夏至っていつなんでしょうね?」
雑談もそこそこに、それじゃあミーティングはまた明日で、とトレーナーさんと解散するイチちゃん。身支度を整えて部屋に戻ると、そこには早めに戻っていたモニちゃんが。どうやら湯上りな様子。私も済ませなきゃ、とシャワーとお風呂、ついでにごはんも済ませてきたイチちゃん。
部屋に戻ってくると、モニちゃんはベッドの上でごろごろしていた。ついでに、ぐー、とお腹が鳴っているのを聞く。
「うわー、聞かれた」
「聞かれた、ってモニー、お夕飯食べてないの?」
「明るくてなんか、食べる気になんねーの」
そういうもんかしら、と不思議に思いつつも、手を取って食べさせにキッチンへ連れていくイチちゃん。スマホを見たまま足を突っ張って抵抗するけど、そこそこ素直に引きずられていくモニちゃん。
(いちイチ保守)(今年の夏至は今日ですので、去年の夏至ネタで) - 18二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 23:46:59
いつもありがとうございますなんだ!
- 19二次元好きの匿名さん24/06/22(土) 06:31:55
そろそろ夏バテにも注意しなきゃいけないんだ
いけないはずなんたが雨のせいかなんか寒いんだ - 20二次元好きの匿名さん24/06/22(土) 12:34:24
暑かったり寒かったりで大変なんだ!
- 21二次元好きの匿名さん24/06/22(土) 22:26:20
クーラー浴びまくって体調崩しそうなのはモニちゃん
- 22二次元好きの匿名さん24/06/22(土) 22:52:42
モニちゃんはキャラ的に不摂生なイメージがありますねえ
- 23了船長24/06/23(日) 02:22:01
「そこのホネ、私と勝負しなさい!」
脚を肩幅よりも少し広く開きながら、グレイベリコースはキッチンにいるレスアンカーワンに向かって、大きな声で宣言した。言い放った達成感で自信に満ちた様子の彼女だったが、当の本人からの返事はない。その代わり、彼女の周りにいる何名かの生徒たちが、何事だと振り返って、歩き去る。
数秒後に返事がないことに気づき、片目を開いてキッチンの様子を見れば、レスアンカーワンは忙しそうに、しかしどこか楽しげな様子でいくつかの台所仕事をこなしている。その手際は一目見ても見事なものだったが、まるで完全に無視を決め込んでいるようにも見えた。
実際のところは、夜食どきでにわかに賑やかになっているために、声が届いていないだけだったのだが、無視の印象を受けたグレイベリコースは拳を握りしめ、眉間にシワを寄せながらつかつかとキッチンに歩み寄る。 - 24了船長24/06/23(日) 02:24:14
「ホネ娘!」
「はいはい――今度は何よ、ベリコース」
すっかり慣れた様子のレスアンカーワンは、控えめな大盛りサイズに握られたおにぎりの形を体の横で整えながら、ベリコースに近寄った。会話しながらでもおにぎりに唾などの飛沫がかからないように、という彼女なりの配慮だ。
「無視するなんて、どんなつもりなのッ」
「無視も何も、今はじめて呼ばれたわ。今度は何?」
「私と料理で勝負しなさい!」
「別にいいけど。あ、ちょっとそこどいてあげて」
「何よ、真正面から話さないつもりッ」
「そうじゃなくて、ほら動いて」
真剣さが少し宿っている目線と声色で促され、渋々といった様子で横に一足分移動すれば、背後には四人ほどの生徒が今か今かと、期待に目を光らせて列を作っていた。 - 25了船長24/06/23(日) 02:25:16
(イチちゃんに勝負を挑む、ベリちゃんの話です)
(例によって長くなりそうですので、ちょっとずつ投稿していきます)
(連日1〜2レス程度を目安に……) - 26二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 03:06:53
ホネ娘とは失礼な!着やせするタイプかもしれないだろ!
イラストだって母親譲りのムッチムチやぞ!ボンキュボンやぞ! - 27二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 04:27:49
- 28二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 04:45:21
- 29了船長24/06/23(日) 09:03:07
ベリちゃんがイチちゃんのことを呼ぶとき、まあ普通に名前や愛称では呼ばないよね、ということで、明らかに蔑称だが悪口になりすぎないラインの言葉を探さなきゃいけなくなりまして。
どのへんの投稿かは忘れてしまいましたが、ポンコツを指す「馬の骨」→ウマ娘世界なのでウマ娘の骨だなあ→ホネ娘なら可愛いラインかな、と思い立ち、使ってみたら評判の良いレスをもらえたので自分の中ではこれが定着しちゃいました
身体が成長して全然ホネじゃ無くなったイチちゃんを見て唖然とするまであと数年……
自分のSSではご両親が一代で財を成した成り上がり系お嬢様を採用しています 少なくともそのつもりで書いている
どうかどうか悪しからず
- 30二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 18:12:09
よろしくお願いしますなんだ!
- 31二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 20:44:13
成金お嬢様なベリちゃん 礼節はそつなくこなし同期や後輩ウマ娘の羨望の眼差しを受けるもメジロやサトノ、シンボリ、ダイイチ、トウカイと本物に対面したとき決まって料理の味がわからなくなるほど緊張する
といいなあ 可愛いし - 32二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 21:30:50
そういえばそうでしたホネ娘にも由来があったんだよね
- 33了船長24/06/24(月) 01:06:23
「今日の夜食はイチちゃん先輩だって!」
「今日はおにぎりと豚汁らしいよ」
「豚汁のだいこんとにんじん、また大きく切ってほしいなあ。夏場だから悪くならないように薄くなっちゃってさ」
「ねね、おにぎりだけどさ、お互いに好きな具だったら交換しようよ」
すっかりお腹をすかせた様子の生徒たちは、ベリコースのことも二の次に、箸とお盆を手に持って、料理を受け取る準備に入っていた。こころなしか、落ち着きが無い。
「あっ、お邪魔でしたわね、ごめんください」
「みんなお疲れ様。ほら、ベリコースも出すの手伝って」
「ちょっと、私の話はまだ終わって――」
「みんな、おにぎりと豚汁を貰ったあとに小鉢もあるからちょっと待っててね。ベリコース、はい、これ」
- 34了船長24/06/24(月) 01:07:38
レスアンカーワンから半ば強引な形で渡された豚汁のお椀を注意深くお盆にのせていく。お椀の中の大根は一口では頬張りきれないサイズに切られており、それを見た生徒たちから短い歓声が上がる。続けて大きいおにぎりがキッチンから一人に3個ずつと、小鉢であるひじきの煮物が出されてきて、唇を少し尖らせながら、それらもお盆に乗せていく。
成り行きでレスアンカーワンの手伝いをする羽目になったベリコースだったが、事情を知らぬ生徒たちから、期待と善意のこもったようなとびきりの笑顔を向けられてしまう。異を唱えようとキッチンの方に振り返るも、言うべき対象はすでに奥の方へ消えてしまっていた。
「ありがとう! あなたは食べないの?」
「い、いえ、私はたまたま居合わせただけですわ」
「イチちゃん先輩にいただきますって伝えておいて」
「美味しそうっていうのも!」
「だいこん、ありがとうございますって!」
「え、ええ。承りましたわ」 - 35了船長24/06/24(月) 01:08:41
カフェテリアが閉まる時間まで練習を続けていたウマ娘たちに向け、ボランティアで夜食を作り提供する活動に参加しているレスアンカーワンは、気づけばその活動の中心人物の一人になっていた。このボランティア自体は以前から存在し生徒たちからも感謝されていたものの、美浦寮のものと比べて栄養バランスや味付けの面で不安定だったことが問題視されていたのだ。
しかし、彼女が参加してからその問題は瞬く間に解決された。野菜を中心にした家庭料理が提供されるようになり、味はもちろん、栄養バランスに富んだ献立が主菜・副菜を問わずに一品増えたことで、体重コントロールや糖・脂質制限を気にかける必要が少なくなったのだ。食べ慣れたような家庭料理は、ホームシック気味な一部の生徒の快復にも貢献した。
本人も料理を作ることに積極的で、彼女に感化されてボランティアに参加するメンバーも増えた。どうしてそんなに料理が好きなのかと聞いても、困ったように笑うだけで、きちんとした理由は誰も聞けずじまいだった。
生徒会に活動が認知され、寮母と寮長を通して専用の予算が組まれてからは献立の内容も更に充実し、従来のメンバーたちからも頼られるようになっていた。
「普通の料理で、あんなに……」 - 36了船長24/06/24(月) 01:12:35
(みんなに頼られイチちゃんと、なんでそんなに喜ばれているのか分からないままのベリちゃんで今日はおしまいです)
(作中に出てくる豚汁は、自分が仕事でお世話になっている豚汁のおいしいとあるラーメン屋さん(???)を元ネタにしています。めちゃくちゃ具が分厚くて美味しいのですが、分厚く切ると腐りやすくてこのシーズンは薄切りに。さみしい。)
(誰もわからずじまいだった、って書いちゃいましたけど、実際のところはバレバレっぽいですよね。イチちゃんより下の学年の子たちは知らないくらいかな?) - 37二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 01:21:40
夜中になんてSSを…腹へってきた
豚汁食いたい - 38二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 01:57:19
イチちゃん栄養士なんじゃないか…すごいんだ
そしてお腹が空いてしまったので夜食食べちゃったんだ - 39二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 04:31:55
夜中にふと目を覚ましてお腹が空いたから夜食食べてそうなモニちゃん
モニちゃんの夜中飯 - 40二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 05:56:41
太り気味には気をつけて(一敗
- 41二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 12:33:30
食べ過ぎ注意なんだ!
- 42二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 21:45:04
wikiコメ デジたんとの出会い
イチちゃんがいじらしすぎて好き - 43二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 00:46:50
- 44二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 07:41:44
流石に高いんだ!
- 45了船長24/06/25(火) 08:33:15
(読んでいただいてありがとうございます、嬉しい!)
(イチちゃんってルーチンワークをルーチンそのままにやっちゃいそうな子だよなって。良くも悪くも自分で刷り込んだことを繰り返す)
(十三夜って表現なんですけどもっと良いモノなかったかなって……「欠けているからこそ、想像で補完されて美しい」という日本的美的感覚を一言で言いたかったんですけど調べられなかった)
- 46了船長24/06/25(火) 08:38:42
ベリコースは、『ワクワクおにぎり定食』を笑顔で運んでいく生徒たちをしばしの間、見つめていた。呆けているうちに、後ろから声をかけられて我を取り戻す。
「で、勝負だったっけ?」
「――わっ、そ、そうよッ。オグリキャップ先輩をかけて勝負しなさい」
残りの後片付けを他のボランティアメンバーに任せて出てきたレスアンカーワンは、エプロンを畳みながら呆れがちにため息をついている。真剣に取り合われていないように感じられて、その仕草も憎らしく思われたのか、握りこぶしを深く作り直している。
「今度は何でやるの? 模擬レース? 前屈の長さ?」
「料理って言ったでしょっ」
「ああごめん、忘れてたわ。でも、どうやるの?」
- 47了船長24/06/25(火) 08:40:38
冷や汗が頬を伝う。
ベリコースは、必死に考えていた。この『ウマ娘の骨』に挑むには、普通の勝負で使うようなお題では不足しているからだ。勝負の設定には、十分に考慮を重ねたいくつかの条件が必要になる。
第一に、勝敗が明らかであること。第二に、勝算があること。第三に、レスアンカーワンを負かしたとき、十分に悔しがらせ、勝ち誇るに足ること。勝敗が明らかであればオグリキャップ先輩の目にもはっきりと見せることができ、勝算があればその確率は更に増える。
そして何より、打ち負かしたという実感を得られることが最重要項目だった。偉大でありながら親しみやすく、芦毛のジンクスをタマモクロス先輩に続いて打ち破り、いつまでも語り継がれる『スーパー・スター オグリキャップ先輩』の周りに、突如として顔を覗かせてきたこの『ぽっと出 レスアンカーワン』をやっつけてしまうということ。これこそがベリコースにとっての、最大のモチベーションなのだ。
その全てを包含した最も良い例が模擬レースだったのだが、過去4回の挑戦はいずれも負けっぱなしで、候補からは外している。それ以外の勝率もはっきり言えば芳しく無く、悩みのタネだった。
黙り始めてしまったベリコースを一瞥して、レスアンカーワンは畳み終わったエプロンのシワを手で伸ばし始めた。
「ちゃんと考えてから挑みなさいよ」
「なッ、余計なお世話よッ」
「こっちが言いたいんだけど……」 - 48二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 13:14:54
保守っと
- 49二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 14:05:32
なんだろうお母さんに挑む娘味があるなこの二人
- 50二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 20:45:23
投稿乙!
- 51二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 21:00:26
ええ!?べリちゃんイチちゃんにレース4連敗なのか!!?
オグリ補正があるとはいえ負けっぱなしなんて…ううむ本業大丈夫なのか - 52二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 21:06:13
べりちゃんもしかしてダートのほうが向いてるんじゃ……
- 53二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 02:24:53
泥臭いダートお嬢様…イイネ
- 54了船長24/06/26(水) 12:25:53
このままではまずい、と直感して、冷や汗がもう一粒、反対側の頬を伝った。始まる前から勝率が下がってしまっている。何か意味のあるようなことを言わなければならない。条件を一つずつ細分化して、考えていく。
勝敗がつき、オグリキャップ先輩に結果がすぐ届くこと。料理ならどちらのほうが美味しかったのかを評価してもらえば良いし、どうせなら本人に食べてもらえば話が早い。
勝てそうなこと。先程の生徒たちを見るに、自由に作らせてしまってはレスアンカーワンの方に分があると言わざるを得ないだろう。気に食わないものの、オグリキャップ先輩はホネ娘の料理をよく食べているという噂もあるから、味にも慣れていてやや不利だ。何か、こちらが得意で向こうが苦手そうなジャンルに閉じ込めてしまえばいい――例えば、イタリアン。
さらに、勝利に付加価値が付く――相手の得意分野であろう料理でその自信をへし折るのだから、なおさら良い。
ベリコースの脳内で弾けるように思いついた挑戦状は、その勢いをそのままに、再考の余地も無く彼女自身の口から飛び出した。握り込んでいた指をまっすぐ突きつけるように伸ばし、高らかに宣言する。
「私と、イタリアンで勝負よ!」
「はぁ?」
- 55了船長24/06/26(水) 12:28:29
ⅠⅠⅠⅠⅠ
「もしもし」
「どうしたんだいベリコース、こんな夜更けに電話なんかして」
「ねえパパ、お願いがあるんだけど――」
勝負をレスアンカーワンに申し込んだその日の深夜、彼女は自分の父親に電話をかけていた。誰にも聞かれないように、部屋をこっそりと抜け出て――実際のところ、ルームメイトのドゥアスグリサリアはぐっすりと寝込んでいるので自室でかけても全く問題はないのだが――、小声で素早く話している。
口調よりも声のトーンや周囲の様子を伺うことに気を回しすぎたことで、砕けた言葉遣いになってしまっていた。電話の向こうの父親は、それを聞き逃さずに追及する。
「パパではなく、お父様だ。何度も言っているだろう」
「ごめんパパ、ああ、申し訳ありません、お父様」
「こんな時間に電話をするのもマナー違反だ。家族以外には慎むように」
「はい……」
ベリコースに物心がつき始めた頃から、彼女の生活は大きく変わった。経済的にではなく、生活様式の面においてだ。気が付けば知らない大人の人、そのほとんどは彼女のお世話をしてくれるいい人たちであったけれど、ルールやマナーに厳しくなった。
ぐっと気持ちをこらえて、要件を切り出す。 - 56了船長24/06/26(水) 12:42:54
(ベリちゃんのおうち事情を考えるのが楽しいのですが、本人のことを思うとちょっと心が苦しくなっています)
(トレセン学園で、少しでも「家」から離れられれば……)
(頑張って続きを書いています)
(ところで昨日、やっと覚悟が決まって劇場版ウマ娘を見てきました)
(タキオンさんとポッケさんの狂気に自分もあてられてしまいました。何かを成したくなる)
(物語、また映像作品としても非常によくできていて、めちゃくちゃ感心しています。彼女たちがウマ娘であるということをこれほど嬉しく思えるとは……) - 57二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 19:06:12
新シナリオのオグリが思った以上に面白キャラになってて笑ちゃった
イチちゃんの料理待ってる間も暴走モードをこらえてるんかね - 58二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 22:16:31
新シナリオやってみた初感
イチちゃんなんで実装されてないの…… - 59二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 03:43:10
オグリとスぺが彷徨うゾンビみたいになってたんだよね
- 60二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 03:44:57
- 61二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 07:28:23
このスレで若干のお馴染みの大食い戦隊がフル出演してて笑った
やっぱり食いしん坊じゃないかあの四人 - 62二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 18:36:56
このレスは削除されています
- 63二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 18:59:11
「おう、いらっしゃい、イチちゃん! ずいぶんな買い込みようだねえ」
「お魚屋さん、こんにちは」
「さては今日、大飯食らいが帰ってくるんだな?」
「あはは、そうです。対策中で」
「うちの魚も安くしとくよ! 買ってって!」
「何が美味しいですか?」
「そうだなあ……これなんてどうだい!」
「鱚ですか」
「魚に喜ぶと書いて、鱚! 嬉しい気持ちをキスにも乗せて……なんちゃってな!」
「キス……」
「い、イチちゃん?」
その夜、苦手だし洗い物が増えるのを承知で、天ぷらをたっぷりこさえたイチちゃんがおったそうな。上気したような顔色なのは、きっと天ぷら鍋の油が熱いから。 - 64二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 19:00:11
Ⅰ◇Ⅰ◇Ⅰ
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした」
「座っていてくれ、後片付けは私が」
「食器を運ぶくらいはするわよ」
「ううむ」
「観念してね」
「ところで、イチ」
「なに?」
「どうして鱚の天ぷらだったんだ?」
「別に……安かったし、美味しいってお魚屋さんが勧めてくれたからよ」
「揚げものは苦手だったはずだ」
「たまにはいいでしょっ」
「……きす、か」
「ちょっと、キャップ」
◇Ⅰ◇Ⅰ◇
「……歯を磨いてからの方が、よかっただろうか」
「……ほっぺだから、別に」
みたいな同棲オグイチ。(誘い受けってことになるのか?)
(いちイチコピペ保守)(贅沢に二日分をまとめてみました) - 65二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 21:20:54
懐かしい
当時コメント欄で見た時変な声出たんだ - 66二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 23:27:10
ワンちゃんがしれっといるシリーズ好き
- 67二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 07:32:56
投稿乙なんだ!
- 68二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 17:41:09
かわいいんだ!
- 69了船長24/06/28(金) 21:56:12
「シェフの方に言伝をお願いしたいのです」
「シェフに?」
「はい。いくつかお伺いしたいことと、送って欲しいものがあるのです」
生活が激変して、悪いことばかりが起きたわけではなかった。良い変化の一つが毎日の食事だ。
ベリコースが帰宅すると、メガネを掛けた細身の先生のもと、宿題と次の日の予習、そして『社会に出ても恥ずかしくない』教養とも言うべき芸術や歴史の勉強の時間が待っていた。この家庭教師の先生が、彼女はあまり好きではなかった。特別厳しいとかそういうわけではなかったものの、緊張する学校生活から帰ってきて、すぐまた机に向かうのにむかっ腹が立っていたのだ。
しかしながら、予定されていたその先生の時間が6割ほど終わったころ。一回り大きめのトランクケースを持った優しい大人がやってくる。それが、今まさに話題に挙げている外部の『シェフ』であった。
彼が奏でる包丁とまな板がぶつかる小気味よいリズムは、引っ越して広くなった家の中でもベリコースの耳までしっかり届き、それから少ししてふわりと漂うベーススープの香りは一日の苦労を労うように鼻腔を撫で、淑女らしい硬いお辞儀で勉強の時間を終わらせるやいなや、彼女は飛び出すようにキッチンへ向かうのだった。
- 70二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 22:46:27
べリちゃんも裕福が故の責任と束縛があったんですねえ
- 71二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 08:11:33
大変なんだ!
- 72了船長24/06/29(土) 09:29:24
忙しく、緊張する毎日を送っていた幼少期のベリコースにとって、一日の終わりの合図でもあった食事の準備の時間はかけがえのない思い出の一つだった。シェフの手さばきを直接見ながら献立を尋ね、その内容に心が躍った。味見をねだると、『旦那様方……お父様たちには内緒ですよ』といたずらっぽく笑い、香ばしいソースから辛味のある調味料まで、色とりどりの味を直接楽しむことができた。
新しく出会うことになった大人たちはその誰しもが堅苦しかったが――シェフだけは彼女の味方だった。少なくとも、ベリコース本人はそう思っている。調理器具や食材に触ることは厳しく注意されたものの、髭を綺麗にそり落とし、貫録を感じるしわの深い顔で楽しそうに笑っておいしい食事を生み出す彼は、いつでも彼女の味方のように思われた。
両親が帰宅するのは料理が出来上がるころだから、二人きりで話すこともままあった。シェフの立場は両親からも程よく離れており、どんな話題でも気軽に持ち出すことができた。食材の好き嫌い、好みのおかず、昨日の夕食も美味しかった話。そんなとりとめのない話から、学校の悩み、家庭教師が気難しいこと、生活が変わってしまったことの苦悩――その悩みのすべてに、シェフは否定をせず、食材とベリコースの表情を交互に見比べながら、寄り添うようにして話を聞いてくれていた。
トレセン学園への入学を報告した日と、入寮するために家を離れると決まった日に彼が作った豪華なディナーは、今でも彼女の小さくない支えになっている。
「シェフがイタリアンを作ってくださるときに使っているフライパンと、ジェノベーゼのソース、それとタリアータのソースを一食分送ってほしいの」
- 73了船長24/06/29(土) 09:50:44
- 74二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 10:22:55
で、できらぁ!!
- 75二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 13:20:01
ほしゅ〜
- 76二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 21:05:07
ふぁいとなんだ!
- 77了船長24/06/29(土) 22:24:35
- 78二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 10:01:38
保守なんだ
- 79二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 19:56:54
新シナリオ理事長パワーアップして引けた身としては素直に嬉しいんだ
オグリが辛いのも割とイケるタイプなんだよね - 80二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:41:08
オグリはそれこそ失敗した料理でも平気で食べてそう
- 81二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 07:31:48
お腹壊さないといいんだけど…
- 82二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 17:36:54
どこまで辛いの耐えれるのかな?
- 83二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:22:57
ココイチの10辛くらいなら余裕そう
- 84二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 20:50:27
- 85二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 22:34:35
ナカヤマとかゴルシがよろこんで参加してそうね
- 86二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 23:52:39
- 87二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 07:32:04
青椒肉絲意外だと何が作れそう?
- 88二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 13:40:50
やっぱり麻婆系じゃない?
茄子とか豆腐とか - 89了船長24/07/02(火) 14:19:27
「ねえねえイチ先輩!」
「うん、どうしたの? みんな」
「イチ先輩って、作れないものってないんですか?」
「なんかもう、なんでも作っちゃうんじゃないかって噂なんですけど」
「その噂では、好きな人のためにいろんな料理を練習してたって……」
「そんな訳ないじゃない。苦手なものもあるし、好きなとか……そういうのもないわ」
「ふぅーん。中華料理とかはどうですか?」
「中華?」
「麻婆豆腐とか」
「レバニラ炒めとか」
「蒜蓉炒西蘭花とか」
「えっ何今の」
「ブロッコリーのニンニク炒めのことだけど」
「そう言ってよ! すみません、イチ先輩」
「ううん、びっくりはしただけ。でも、言われてみたらあんまり作らないかも。もし作るとしたら、麻婆豆腐の素、みたいなのを使うわね。とろみ用の片栗粉って保存しづらいし」
「イチ先輩でもそういうの、使うんですね」
「便利だし、食中毒の心配も少ないから。何より、おいしいもの! おいしく食べるのが一番大事じゃない?」
「うわ、その発想は無かったです。誰かに作るってそういうのもあるのかあ」
「寮のお夜食ならみんなに作るから、もちろん気を付けてるわよ? 食べてくれる子も増えたから、最近は尚更」
「え、オグリ先輩に作るときもやっぱり気を付けて――」
「なっ、なんで今オグリの名前が出るのよ」
「オグリギャルなんですよね?」
「その噂流してるの、誰っ」
「セレモニー先輩ですけど……あっ、行っちゃった……」
みたいな!?
- 90二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 14:23:37
- 91二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 21:59:07
ブロッコリー使った中華ってあるんだな知らなかったよ
美味しそうなんだ - 92二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 07:33:49
美味しそうなんだ!
- 93二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 09:13:05
火柱立つ厨房で炒飯作るイチちゃんか
- 94二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 13:08:06
炒飯を上手に作れる人は他の料理も上手なんだ(経験則
- 95二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:38:54
卵かけご飯を炒めてチャーハンっていうのは邪道かしら……?
- 96二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 22:42:02
今日はオグリの命日だったか
ありがとうオグリ - 97二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 22:43:53
- 98二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:18:35
なんか泣けてきたわ
- 99二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 06:45:56
あ、暑くてあまり眠れなかった…
助けてイチちゃん - 100二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 12:33:32
冷房をつけるんだ!
扇風機は能力不足だからだめなんだ!! - 101了船長24/07/04(木) 16:57:46
父親は「少し待ちなさい」とだけ言うと、しばらくの間だけ無言になった。やや気まずい空気を背筋に感じ、静かに呼吸をし直していると、少し離れたような声で「メモを取るからもう一度」と話すのが聞こえた。繰り返して同じ内容を伝え、声が元通りになる。
「一体、何に使うんだ」
「それは……寮のイベントで、料理を作りますの。せっかくだから、私が――私の家族も親しんだ料理を、お出ししたいと思いまして」
値踏みするような息遣いがスマートフォンのスピーカーから聞こえていた。父親との会話は、ちょうど生活様式が変わった頃から緊張の種だった。
「レシピのメモはいらないのか」
「あっ――ええと」
「一緒に入れるよう伝えておく」
「はい、お父様」
「他に必要なものはないか」
別段、問い詰められているわけではない。しかし、父親はしばしば威厳を出そうと肩ひじを張り、低い声で話そうと努力しているところがあった。それを感じられないほどベリコースは幼く無く、しかし気圧されるほどにはまだ子供であった。
- 102了船長24/07/04(木) 17:11:40
「大丈夫です」
「よく聞きなさい、ベリコース」
父親はそう言うと、咳払いで間をおいてから続きを話した。
「シェフも忙しい。別に私達の家にだけ来ているわけではないんだ。ましてや仕事道具を借りようというのだから、シェフの仕事の予定を崩せないかと頼んでいることと同じだ。自分がどういうことを願っているかよく考えなさい」
はい、と絞り出すように返事をする。そして、また気まずい沈黙の時間になる。ああ、また怒られてしまったと言わんばかりに耳から力が抜ける。恥ずかしい気持ちが胸とお腹の間からじわじわと頭に向かって生えてくるようで、その感情から一刻も早く目を背けたかった。
このままおやすみの挨拶をして、電話を切ってしまおうと思ったその矢先。彼女が口を開くよりも早くに父親が口火を切った。
「トレセン学園は楽しいかね」
「……はい。ルームメイトとも、うまくやれています」
「そうか。良かった」
父親はつとめて優しく、なごやかに聞いたつもりだったが、それが伝わるにはいささか唐突で、短すぎる質問だった。それじゃあおやすみ、と言って通話が切られる。
ベリコースは、スマートフォンの画面をしばらく見つめていた。父親に怒られてしまったことへの後悔で頭がいっぱいで、動く気力を取り戻すのに少しの時間を要した。シェフに迷惑がられてしまうかもしれない、という不安も肩と脚に重くのしかかっていた。
ようやくベッドに戻ろうという気力が戻り始めたとき、ブブッ、とスマートフォンが揺れたのを感じた。通知を触ると、それは父親からのメッセージだった。
『身体に気をつけよく励むように』
『おやすみ』
ベリコースの心の表面に浮いたアクのようなものを、父親がすくってくれたような気がした。 - 103了船長24/07/04(木) 17:13:51
(これだけ書くのにずいぶんかかってしまいました いや新時代の扉やルックバックで心がズタズタにされたとかそういうわけではあるんです)
(ようやく次から調理パートです ここまで時間かけすぎ!!!)
(もう少しだけお付き合いください……) - 104二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:00:00
うーむ、お父様厳しい…
愛情がないわけではないしシェフの都合も正論なんだ - 105二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:56:56
べリちゃんの家庭は上流ぽいんだ
- 106二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 07:31:14
上流階級に仲間入りしたが故の厳しさなんやろなあ
本来は娘思いな不器用ないいパパさんなんだろね - 107二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 12:40:55
投稿乙なんだ!
- 108ベリグリ24/07/05(金) 22:49:05
あまりにも忙しすぎて全然創作できないんだ…
どころかここに来るのもまあまあ久々なんだ…
イチちゃん仕事変わって - 109二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 23:10:05
リアル第一!暑いから身体器をつけて!
- 110二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 08:13:02
しっかり休んでほしいんだ!
- 111二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 15:49:55
突然の雷雨でお買い物行くの億劫になっちゃったんだ……
イチちゃんも買い物の途中で雨に降られてアンラッキーになったりするんだろうか - 112二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 20:04:11
- 113二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 21:21:22
災難すぎる……
- 114二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 23:18:19
- 115二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 23:48:50
- 116二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 23:50:57
- 117二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 08:06:11
ぜひぜひ雨が降って欲しくなったんだ!
- 118二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 13:34:37
暑い暑すぎる…エアコン付けずにいられない
モニちゃんは躊躇なく最低温度に設定すると見たね - 119二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 13:35:25
そしたら今度はイチちゃんが寒すぎるって温度を上げるんだ
- 120二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 20:53:04
無限ループ!
- 121了船長24/07/08(月) 00:37:33
- 122了船長24/07/08(月) 00:48:13
「やっぱりダメよね」
「おう、どうしたんや、イチちゃん」
「ええッ、タマモ先輩?!」
「アハハ、すまんなあ。今ちょっとオグリは手が離せへんからウチが代わりに出とるで」
「ごめんなさい、実はちょっと前にタマモ先輩にもかけちゃってて」
「そうなんか? ウチはロッカーに全部荷物預けてしまっててん、堪忍やで」
「大丈夫です、むしろ助かりました」
「ちょっと待ちいや、すぐダンナさんに代わるから」
「いやいやいや、いいです、あとダンナじゃなくて――」
「――タマモ先輩! 聞いてますか!」
「もしもし」
「なっ、ううん」
「やあ、イチ。タマが電話を渡してくれたんだ」
「知ってるわよっ」
「それで、どうかしたのか?」
「タマモ先輩にもう一度代わってっ」
「あ、ああ……それが、電話を渡したあと、すごい勢いで走っていってしまって……今もう第二コーナーに入るところだ。ぐんぐんスピードを上げて坂にかかった」
「実況しなくていいわ、ていうか、走ってるの!?」
「不良馬場の練習と言っていたが……今日は通り雨が来たから、そもそも中止なはずだ。イチはどう思う?」
「どうも思わないけどっ、明らかにおかしいでしょ!」
「そう言えばイチ、今、どこにいるんだ?」
「今、今は……外にいるわ」
「何っ、雨は大丈夫だったのか?」
「……それは」
「傘はあるのか、いや、もしかしてもう壊れてしまったのか」
「持ってきてなくて、それで……」 - 123二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 00:50:52
ということは今まさにずぶ濡れスケスケイチチャンが!
- 124了船長24/07/08(月) 00:58:23
「すぐ迎えに行く。今、どこにいるか教えてくれ」
「……大丈夫よ、帰れるわ」
「本当か、イチ」
「うっ、ほ、本当よ――」
「イチ。電話をかけているということは、何か困っているんじゃないのか」
「それは……」
「イチが困っているなら、嘘をつかないでほしい。私はイチにまた、調子を崩してほしくない」
「……オグリ」
「いつもごはんを作ってくれているんだ。私もなにか、贈りたい」
「……うん。それなら」
「ありがとう。何か必要なものはあるか」
「その……私のジャージ、届けてほしい。冬用のやつ」
「冬用の?」
「その……」
「まさか。おおい、タマ!」
「なんやあ!」
「戻ってきてくれ! すぐに!」
「イチ。今、どこにいるんだ」
「多分、言ってもオグリじゃ見つけられないかも。ちょっと、隠れてる感じ」
「すぐに行く。タマも連れていくから、場所を送ってくれ」
「うん。待ってる」
「寒くないか、熱っぽくは?」
「どっちも平気だけど……少し、不安」
「うん。電話は繋ぎっぱなしにしていてくれ」
「オグリ」
「ああ」
「……ごめん。ありがとう」
「すぐに行くから」 - 125了船長24/07/08(月) 01:07:26
ーー⏰ーー
「もうすぐ近くだ」
「茶化してホンマにすまんかった、オグリ」
「大丈夫だ。むしろ、タマがついてくれていなければ迎えには行けなかった。ありがとう、タマ」
「このへんやな」
「――あそこだ!」
「イチ!」
「……オグリ」
「待たせてしまって済まない」
「そんな泥だらけで」
「イチのほうが大変だ。さあ、羽織ってくれ」
「タオルも持ってきとる。イチちゃん、茶化してしまってスマンかった」
「大丈夫です。ありがとうございます――あれっ」
「どうかしたんか?」
「このジャージ、サイズが……」
「ああ、それはオグリのや。寮までイチちゃんのジャージを取りに行っとったら、トラブルに巻き込まれてしまうかもしれんからな」
「私のなら、少しサイズも大きいはずだ。制服の上からでも着れる」
「ウチのは絶対入らへんし……しばらくそれで隠してや」
「……すみません、ありがとうございます」
「その、イチ……」
「なあに」
「変な匂いとか、しないだろうか。今日はまだ着ていないから、大丈夫だと思うんだが……」
「――ううん、平気。ありがとう」
「良かった。さあ、帰ろう」
了 - 126了船長24/07/08(月) 01:12:22
- 127二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 07:34:18
安心と信頼の船長作品!!
- 128二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 12:40:03
投稿乙なんだ!
- 129二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 20:27:37
暑い中うだるグリちゃんとベリちゃん
なにか冷たいものを食べようとキッチンへ向かうも冷凍庫の中は空っぽ
ますますうだる二人のもとに現れるイチ
せっかくだから楽しくアイスを作ろうということになりとある機器を使ってサッカーやキャッチボールをしながらアイスを作ることになる
だんだん参加者が増えていき白熱するボール遊び
アイスができる頃には参加者全員汗だくに
みんなで風呂に入って汗を流したあとにアイスに舌鼓をうつ
大した量ではないけれどみんなと過ごした思い出の味 - 130二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 07:36:22
美味しそうなんだ!
- 131二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 17:38:15
いい青春だ
- 132二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 20:07:59
- 133二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 21:53:27
そんなのあるんだ…知らなかった…
UAFシナリオで出て来そうなアイテムですねえ - 134二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 22:01:14
トプロとミラコが途中からガチになるやつだ
そんで親父枠のディクタが本気になる
オグイチ世代とその他のガチンコサッカー対決 - 135了船長24/07/09(火) 23:14:06
- 136二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 23:24:00
タマ先輩かイナリがキーパーやってそうなんだ
- 137二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 01:54:39
基本キーパーは手足が長く身長高い方が有利なんだがタマとイナリは浪花江戸っ子根性でカバーしそう
- 138二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 07:39:44
アイスクリームメーカー 出来上がるのに一時間半程度かかるらしいから前半後半フルタイムで試合できるな
- 139二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 17:37:15
なかなか時間がかかるんだ!
- 140了船長24/07/10(水) 23:52:44
「モニちゃ~ん、メシにすんで」
ちょっとだらだら気味に見てたゲームの公式大会を切り上げて、居間に向かうモニちゃん。
「今日の夕飯、なに?」
「今日はタコか安かってん、たこ焼きやで」
まさか聞き間違えたかなと思いタマセンパイとちゃぶ台の上を見比べるが、そこには鰹節を熱く踊らせるタコ焼きの群れ。「たあっくさんあるからお腹いっぱい食べてや」と言いながらごはんをよそっているので、ツッコミも追いつかない。
まあ、食べれないこともないか?――と正当化に思考を寄せ始めたころ、少しさみしそうな声でタマセンパイ。
「冗談やって。ホンマはタコと大根の煮物や。そんなに驚かんでもええやん……」
「なんかごめん、でもなんでこんなタコづくし?」
「半夏生やからな」
今日の夕飯時は分からないことが多いな、と思いながら机を囲むモニちゃん。
(緊急コピペ保守!) - 141二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 23:55:03
タコって夏バテに効くのかな?
試してみたいぐらいには夏バテなんだ - 142二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 07:34:01
美味しそうなんだ!
- 143二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 12:35:04
投稿乙なんだ!
- 144二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 23:35:16
夏バテだ~~何もする気が起きない明日タコ買ってこようかな
- 145二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 07:37:45
ほんとに暑いんだ…
- 146二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 17:47:14
早く涼しくなぁれ
- 147二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 22:25:17
今回のリグヒはなかなか難儀なんですねえ
- 148二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 07:33:52
- 149二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 07:37:15
- 150二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 08:11:27
- 151二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 12:40:18
ありがたいです!
- 152二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 12:45:07
- 153二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 12:46:07
うふふ…イチちゃんはヽ(`Д´)ノプンプン顔がとても似合う
- 154二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 16:56:42
さてはイチむっつりな視線をオグリに向けておるな?
- 155二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 21:11:53
こっちのイチちゃんもすき!!!
- 156了船長24/07/13(土) 22:20:57
- 157二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 05:42:47
なんだか画力が↑↑なんだ
かっこいい - 158二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 12:43:32
そろそろ水着の季節か
イチちゃんは去年の温泉さんのイラストもあってヒラヒラな水着のイメージ - 159二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 17:11:34
だ、大胆なの着てもいいのよ?
- 160二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 17:31:47
- 161二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:22:37
- 162二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:50:16
- 163二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 01:57:47
大胆な水着って言うとどんなんだろうか
- 164二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 02:40:47
ビキニ全力でビキニ
イチママにはエレガントな紐黒ビキニ パレオを添えて(深夜テンション) - 165二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 12:36:08
海外の富豪が着てそうやね
- 166ベリグリ24/07/15(月) 13:47:48
お久しぶりなんだ。
包丁で指を切っちゃったベリ。
イチは咄嗟に指をこちらに差し出させ、応急処置と称して指を咥え──────────みたいなシチュを長々と書いてたんですが
調理中の台所で流石にそれはバッチいだろ!とセルフお気持ち表明した結果、なかったことになりました。
守ろう衛生観念。 - 167二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 19:24:15
衛生管理は大事と思う一方でちょっと読んでみたい
心がふたつある~~~ - 168二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 20:55:41
ぜひ読んでみたい!
- 169二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:52:36
水着を買いにきたモニちゃんとタマ
好きな人に水着を次々と見せるも顔を背けながら曖昧な返事
不満そうにするもモニちゃんは見た
背けたその横顔がわずかに朱に染まるのを
思わずカーテンを閉じて激しく鳴り打つ心臓を押さえつけるモニちゃんだった - 170二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 00:21:58
なんだよ…結構乙女じゃねえか…
- 171二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 07:39:03
かわいい
- 172二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 17:05:47
- 173二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 20:37:13
意外とオグリは食べ物に関して我慢が利くんだ俺は詳しいんだ
- 174二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 20:39:38
- 175二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 07:32:28
投稿乙なんだ!
- 176二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 12:40:49
すごくすごく可愛いです!
- 177二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 20:29:32
やばいな…因子周回イイの来ないからリグヒ用の子誰も作ってない
イチちゃん助けて! - 178了船長24/07/17(水) 21:48:20
父親への電話の日から二日経った放課後、グレイベリコースは荷物の受け取り口まで小走りで向かっていた。つたない日本語ながら、ルームメイトのドゥアスグリサリアが贈り物の到着を知らせてくれ、あまりの早さに驚きが先行した。
そしていざ受け取りしてみれば、想像以上に大きい段ボールが届いていて、さらに驚きを重ねることになった。一旦部屋まで戻りグリサリアに手伝いを頼む。二人でキッチンまで運び込み、事前に頼んでおいた冷蔵庫の空きスペースに何とか押し込めていく。
「Beli、コレナニ?」
「私の家に来ていたシェフが届けてくれたのですわ。オグリキャップ先輩に食べていただこうと思いまして」
「オグリSenpai! それなら”タカシに”、イッパイ要るネ」
”たしかに”ですわ、と指摘しつつ、父親には誰に食べてもらうとは言っていなかったことを思い出した。寮のイベントで使う、とその場で作ったウソがシェフに伝わり、それならばと送るソースや食材の量が増えることは想像に難くない。言葉だけを見れば、一人ではなく、複数人で食べると解釈されても何ら不思議ではないからだ。
なんて愚かなことをしたんだろう――チクリと、心の小さくない部分が痛んだ。しかし、正直に言うのもはばかられる。素直に理由を話したところで、父親はきっと聞き入れてはくれないだろう。後悔する気持ちを踏み越えて、荷物を取り出す作業を進める。
箱の底が見えてきたころ、蝋の封止めを模したシールが貼られた洋風の封筒を見つけた。グリサリアに見つからぬように制服のポケットへ忍び込ませ、一度キッチンの外に出る。練習終わりの生徒たちが帰寮し始め、にわかにざわついてきた廊下で、一人静かに中の手紙を取り出した。
『ベリコースお嬢様へ
一筆啓上。健やかに学園生活を過ごされてることと存じます。私の料理でよろしければ、喜び勇んで協力いたします。どうかお楽しみくださいませ。
御学友の皆さまとよくお作りになり、よくお食べなさって、どうかご健康に。』
清らかな水が湧き上がるように、爽やかな気持ちが芽生えた。それと同時に、自分の子供っぽさを強く恥じた。
パパとシェフに、今度きちんとお礼をしたためないと――大事に手紙を封筒にしまいなおし、キッチンに戻った。
- 179二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:48:33
このレスは削除されています
- 180了船長24/07/17(水) 21:58:12
ーーーーー
「肝心のオグリは呼んでるの?」
「ああっ!」
比較的涼しく感じられ、学園外周を走る集団走の掛け声が湿った空気に伝わり寮まで届く本番の日、レスアンカーワンの開口一番の言葉は、グレイベリコースの耳から踵までをまっすぐ貫くように気付きを与えた。
『食事会において最も重要なのは、ゲストをもてなすことです』と家庭教師は教えてくれたが、その肝心のゲストすらいなければ意味が無くなってしまう。
始まりから出遅れ気味なレース展開になってしまい、連絡を取ろうと思うも、オグリキャップ先輩との連絡先は交換していないことに気づいた。頭が真っ白になる。まだ調理もはじまっていないのに――
目の前の『ぽっと出』が表情を変えずに肩だけをすくめ、スマホに何やら打ち込み始めた。どうやら、連絡を入れているらしい。
「これでオグリは来るわ」
「どうしてそれがわかるのよッ」
「オグリは今日トレーニングだけど軽いメニュー。そのあとに後輩たちの指導役で集団トレに参加するって話だから、遅くなることは無いわ。それに、オグリがごはんの誘いを断るわけないし」
当たり前のような顔でつらつらとオグリキャップ先輩のことを話す骨ウマ娘が憎らしくたまらない。一度だけ深く息を吸って、吐いた。これからその先輩のために料理をするのだ。認めたくないけれど、食べてもらえる約束も取りついた。落ち着け、落ち着くんだ――
これから私が作る料理は、何せシェフの後ろ盾が付いた特製だ。どこの生まれかも分からぬ、先輩の周りをうろつく『ぽっと出の骨ウマ娘』が独学で学んだようなものとは格が違う。必ず美味しいと言ってもらえるのだから、ここで沸騰する必要はない。
「ここまで来るのに一時間半ってところかしら。そしたら、作りましょうか」
「なんでアンタが仕切るのよッ」
負けるわけがない。グレイベリコースは、張り切って冷蔵庫からパプリカを取り出した。 - 181了船長24/07/17(水) 23:15:59
一品目に使うナス、ズッキーニ、セロリをパプリカの隣に並べ、その後ろにきっちり分量を量りとったオリーブオイル、砂糖、塩コショウ、そしてシェフの白ワインビネガーを置いたところで、グレイベリコースの作業は中断されていた。
シェフが荷物の中に添えてくれたレシピをにらみつけるようにしてのぞき込む。切り方から盛り付け方まで丁寧な字で書かれ、文字で表すのが難しいところはややつたないものの、はっきりと内容を計ることの出来る簡易なイラスト付きで、料理にまるで経験のないグレイベリコースでも容易に理解が及ぶ。
しかし、理解が及ぶだけで、いざ実際に並べてみると手が動かない。失敗してしまったら、もし、読み取った意図と異なってしまったらという不安が、腕の動きを重くしているのだった。調理過程の一つ一つを想像で練習するその間にも、レスアンカーワンは手際よくトマトの湯剥きのためのお湯を用意し、フライパンの底が浸るほど入れたオリーブオイルを温め始めていた。まるで未来が見えているかのような動きのスムーズさに、気持ちが焦る。
焦った気持ちを落ち着かせるためにレシピに目を落とし、落としては不安になり、また手が動かなくなる。この流れから飛び出さなければいけないと思っているが、やはり身体がこわばる。どこから手を付ければ――と思っていると、見かねたレスアンカーワンが近づいてきた。
「とりあえず、皮を剝かなきゃいけないものから剝いちゃいなさい」
「な、何よ――」
「あ、パプリカもあるのね。そしたら中のヘタと種を取って捨てて、ナスとズッキーニの皮を剥く。っていうか、はい、これ」
「何、これ」
「三角巾。抜け毛が入ったらダメでしょ。手もちゃんと洗うのよ。石鹸はそこ」 - 182了船長24/07/17(水) 23:35:26
石鹸が備えられた蛇口を指さされ、言われるがままに手を洗い、三角巾を頭に巻いた。レスアンカーワンはその間に引き出しをいくつか開けてピーラーを探しており、水気を取った手に渡してきた。
癪だったが、言われた通りに皮を剥いていく。食材を支える指の位置に気を付けながら、一つ一つ手を動かして作業を進めた。全部剥き終わり、次にパプリカの両端を落として中の種を取り除いていく。これも左手の位置に気を付けながら、流水で取り残しの無いようにしていく。
一度何かの作業に入ると、弾みがついたのか、終わるたびにすぐ次の作業に移ることができた。セロリを食べやすい大きさに切りそろえたと思ったら、下ごしらえの終わった他の食材も順に切ることができ、気が付けばすべての食材のカットが済んでいた。
切り終わってレシピを見直せば、その工程のほとんどは終わっていた。
「意外と簡単じゃない」
思わずこぼしてしまった独り言に、レスアンカーワンが呆れたような笑顔を軟らかく浮かべるのを、グレイベリコースは見逃していた。それほどまでに驚きが勝っていた。
あとは、この具を煮込むだけ――中くらいの大きさのお鍋に調味料をあけ、火にかける。ストップウォッチにレシピ通りの時間を打ち込んで、火加減を調節しスイッチを押す。
一品目の「パプリカ・カポナータ、アグリジェント風」は、もう出来上がりを待つだけになった。
ーーーーー
達成感に包まれながら時計を見やると、慣れていない分、想像以上に時間が経ってしまっていた。慌てて次のレシピにページをめくっていく。横目でレスアンカーワンの方を盗み見ると、キッチンペーパーに素揚げしたようなズッキーニを並べて寝かせながら、スパゲッティを測って茹で始めるところだった。
乾麺の入っている箱の色に見覚えがあったベリコースは、近くまで行ってその柄を確認した。自分が今から作ろうとしているパスタ料理――『カペッリーニのジェノベーゼ』と、全く同じブランドで、思わず声を上げた。
「レスアンカーワン、アンタ、真似したのっ!」
「あ、ベリコースも細麺を使うのね」
「これは細麺じゃなくて、カペッリーニと言うのよ」
名前にこだわらないまま、あっけからんとした様子で調理を進めるレスアンカーワンから離れて、自分の鍋に水を張って塩を入れ、お湯を作った。 - 183了船長24/07/17(水) 23:36:12
(ちょっと尻切れトンボだけど、今日はここまでです)
(やばいやばいやばいスレ終わっちゃう) - 184二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 07:35:58
投稿乙なんだ!
- 185二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 17:41:28
- 186二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 20:39:35
始まりのスレってどこある?
- 187二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 20:42:47
カペッリーニ…???(べリちゃん並感
- 188了船長24/07/18(木) 20:46:58
お湯が出来上がるまでの間、レスアンカーワンの調理の様子を観察していたが、グレイベリコースの思い描く『調理』の姿からはかけ離れていた。レシピも何も確認せずにどんどん調理を進め、ときおり「あっ、いけない」などと言いながら数秒止まったかと思えば、「まあ、いいでしょ」と思いついたように調味料を足している。誰かに食べてもらうための料理なのに、目分量だとか勘だとか、そんなものに頼っている彼女が信じられなかった。
じっとりとした目線で小さな軽蔑の念を送っていると、ふいにベリコースの方に向き直った。念が通じてしまったのかと、少し取り乱してしまう。
「ベリコース、鍋!」
背後を指さされるまま振り返ると、早く煮えるようにと蓋をかぶせておいた鍋がカタカタと音を立てていた。慌てて蓋を取り、分量ピッタリのカッペリーニを手に取る。ボコボコと音を立てて沸き立つお湯に入れようとしたが、麺の方が長く、どうやっても入りきりそうになかった。
このままじゃダメですわね、と思ったベリコースは乾麺の両端を握り、そのまま半分に折りとってしまった。それを見たレスアンカーワンが、モッツァレラチーズを手に持ったまま「えッ」と驚きの声を上げる。
「ちょっと、何で折っちゃうのよ!」
「入らないからに決まってるでしょ」
「入るところまで入れてから、沈めるようにすれば大丈夫だから。もう……私の麺、使いなさい」
その後にもベリコースはもう一回、レスアンカーワンから注意をされた。借りてきた麺が茹で上がり、シェフから贈られたジェノベーゼのソースを温めている鉄製のフライパン――パデッラ、と言うらしい――に麺を移した後のことだった。
茹でた鍋に残ったゆで汁をまとめて全部、流しに捨ててしまったのだ。
「えッ、捨てちゃったのっ!?」
「だって、使わないでしょ」
ベリコースの返事に、呆然とした表情で肩を落とすレスアンカーワン。彼女が使っているコンロの方へ歩き、パスタの鍋の中をちらりとのぞき込んでから、火を入れなおした。
「本当は良くないと思うけど、分けてあげるわ」
「何よっ、恩を売ろうって言うの」
「そうじゃなくて、乳化しないとしょっぱくなっちゃうじゃない。そのレシピにも書いてあるでしょ?」 - 189了船長24/07/18(木) 20:47:36
- 190二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 22:08:15
イチちゃんの敵に塩を送るムーヴが光る!
- 191二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 22:21:00
も、申し訳ないが次スレお願いしてもいいでしょうか?
安価踏んじゃった… - 192了船長24/07/18(木) 22:32:16
まさにレスアンカーワンのいう通りで、『乳化』の意味が分からなかったベリコースは強く言い返せず、気まずさを感じながら黙り込む。
自分の料理だけでなく、ベリコースの料理にすらおせっかいを焼いてくるレスアンカーワンに、驚きと少しばかりの尊敬の念が芽生え始めていた。
ーー⏱ーー
「おお、これは凄いな!」
大きめのテーブルにクロスをかけ、並べられたイタリアンの数々を前に、ゲストであるオグリキャップは目を燦燦と輝かせていた。
「こっちが私の料理。カプレーゼに、ズッキーニの素揚げ、タコの冷製パスタ。で、反対側のがベリコースの夏野菜煮込みと、お肉のスパゲッティね」
「素揚げではなくスカペーチェ、冷製パスタはイタリアにはありませんからルール違反ですわ。あと、私のはパプリカ・カポナータとジェノベーゼ! ちゃんと調べてくださいまし」
ざっくりとした和名で料理を紹介するレスアンカーワンを訂正しつつ、喜びに満ち溢れた表情をするオグリキャップを前に、小さく緊張するグレイベリコース。
もう待ちきれないとばかりに、オグリキャップは二人の顔を交互に見た。
「ベリコースが企画したんだから、いただきますも言いなさい」
「もう食べてしまってもいいだろうか」
「ええ。たっぷり召し上がってくださいませ、オグリキャップ先輩!」
いただきます、と言うやいなや、料理を口に運び始めるオグリキャップ。一番最初に口にした料理がグレイベリコースのカポナータだったことに、嬉しさがこみ上げる。
「オグリキャップ先輩、あともう一品ありますので」
「本当か!?」
「ベリコースがね、ステーキも用意してるの。私はお肉をあんまり使わないから、付け合わせのローストポテトを担当したわ」
「ステーキではなく、タリアータですわ! 全くもう」
- 193了船長24/07/18(木) 22:49:51
うんうん、と食べながら頷いているオグリキャップの口元をナプキンで拭う。これだけ喜んでもらえるなんて、勝負を挑んだ甲斐があるというものだ。
「それで、オグリキャップ先輩」
「うん、ベリコースも食べるか?」
「私とホネ娘……レスアンカーワン、どちらの料理の方が美味しいと思われますか?」
ベリコースの質問に、オグリキャップはパチパチと目を大きく見開き、しかし食べる手と口は止めることなく、首を軽くかしげて考え始めた。レスアンカーワンも質問の結果が気になるのか、腕を組んで答えを待っているようだった。
「……どちらも美味しい。二人で食べて決めたらどうだろうか」
そう言って、二人の分も料理を取り分けはじめた。あっけにとられてしまったベリコースに対し、ふふ、と笑ってエプロンを取ったレスアンカーワンがキッチンの方へ歩き始める。
「ステーキも寝かせ終わったころだし、お皿とフォーク、取ってくるわ」
「なっ、それじゃこの勝負の意味が――あと、タリアータ!」
「はいはい、タリアータね。行きましょ、ベリコース」
慌てて後ろを追いかけるベリコースの背中を見て、ベリコースはタコが好きだろうか、と取り分けるかどうか頭を悩ませるオグリキャップだった。
了 - 194了船長24/07/18(木) 22:55:55
駆け込み〆でした 計画的にやらねば……
なんかもう本当にごめんなさいでした
アイデアもとはこの曲です。6月の頭に出会えてすごくかわいく、絶対に文章にしたかったのです
皆さんもぜひぜひ。この方の他の曲も非常に可愛いですので(『あめのこスキップ』めちゃカワでおすすめです)
たてますたてますおまかせください
- 195二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 23:00:21
- 196二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 07:34:25
- 197二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 08:58:56
たておつですー
んじゃ埋めますか - 198二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 09:25:37
- 199二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:50:21
モニちゃん最終日修羅勢な気がするけど日記だけはまめにつけてそうなんだ
- 200二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 21:40:40
200ならイチママあぶない水着