【SS/トレウマ】雷鳴とココアシガレット

  • 1◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:20:39

    『気圧の谷の影響で未明にかけて雷を伴う激しい雨が降るでしょう──』

     人気のないトレーナー室に、型落ちの薄型テレビから流れるウェザーニュースが無機質に響いている。

     ときおり晴れ間が見えたタイミングもあったものの、気象予報士の見立てにおおよそのまちがいはなかった。朝方から降りはじめた雨はトレセン学園の校舎も石畳の通路も、グラウンドのダートもターフもひとしく濡らす。
     締め切られた引き戸のむこう、せわしない足音とともにウマ娘たちの喋り声が通りすぎていく。

    「ジムの予約やっぱあかないっぽい」
    「ええ〜、どーする? この天気じゃ外周も行けっこないしぃ」
    「あ! 西校舎の多目的ホール開放だって。筋トレする?」
    「そーしよっか!」

     ──中高生らしい学業だけではなくアスリートとして日々トレーニングにいそしむウマ娘たちにとって、軽めの小雨ならともかくとして重い六月の雨は、けして歓迎できるものではない。
     ウマ娘のなかには濡れ切った重馬場や不良馬場を得意とする者もいる。しかし、実践ならともかくとしてトレーニングともなれば、得意不得意は関係なくその機会はうしなわれてしまう。

     それにくわえて、ともすれば鬱陶しさを助長させる雨音や湿気は、年相応の女学生でもある彼女たちのコンディション、たとえるならば朝から苦労してまとめたヘアスタイルであったり、尻尾の手入れだったりにも大きく関わってくるものだから。
     
     窓辺に置かれたソファに深く沈み込むウマ娘──ナカヤマフェスタの鹿毛耳も、どこか陰鬱に重く伏せられていた。

  • 2◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:20:51

     たん、たん、と。学園指定のストラップシューズの靴底が、リノリウムの床に不規則なリズムを刻む。

     ナカヤマフェスタはうつくしく長い髪を持つ同室とはちがい、登校前の準備に余念のないタイプではなかった。そして、授業が終わるごとにメイクだの前髪だのをいちいち気にする同期ともちがう。
     どうせ午後からのダンスレッスンなりトレーニングなりで髪やらなんやらなんてご破算だ。必要以上にキメるのは舞台に上がったそのときだけでいい。ふだんは最低限、自分にも他人にも不快を振りまかなきゃそれでいいだろ──そんな彼女ではあるものの、ニット帽の下、くせの強い鹿毛が湿気に踊れば踊るほど、その仏頂面にけわしさが増していく。
     
     もっともこのときの彼女が、そのすみれ色の眼を窓の外の天候のように据わらせていたのは、うねりがちの髪が原因ではない。
     そうなっちまったもんはしかたない。いまにはじまったことじゃないさ。無意識の感情が宿りやすい尻尾を、背とソファの間に隠すナカヤマフェスタは、ある程度のあきらめの良さも心得ていた。

     吹き荒ぶ風のせいで雨垂れに濡れる窓の向こうは、相も変わらず悪天候。勢いのある雨音が、ばちばちと強く地面を打っていた。
     ウェザーニュースが終わり夕方の報道番組までの時間を潰すバラエティの再放送は、トレーナー室にひとりきりのナカヤマフェスタにとって、もはや雑音にしかなっていなかった。彼女以外に誰もいないからこそ、そのいらだちを彷彿とさせる足踏みは止むことはない。
     影を帯びたすみれ色の瞳がゆるりとさまよい、その視線はかたわらに置かれたスクバへ向けられる。少女らしい華奢な指先がファスナーをたぐり、中身を探ったあと取り出されたのは、金文字の『ORIONS』に目が行くネイビーのパッケージだ。

  • 3◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:21:04

     ナカヤマフェスタの日々は、幾多の勝負に彩られている。

     それはレースだけにとどまらず、テストであったり授業であったり。プライドを賭けたものであったり、ちゃちでささやかでしょうもないものであったり。ピンからキリまでさまざまに繰り広げられる。
     手当たりしだい見境なく勝負をしているわけではなかったが、彼女が勝負をしない日はなく、勝負師であると公言しているゆえに勝負を仕掛けられない日もまた、存在していない。
     手のひらにおさまる程度の大きさの長方形のそれは、勝負の末に手にした、いわゆる戦利品だった。中身にあたる透明の個包装は学内で取り出すことはさすがにためらわれたが、ひとりきりのトレーナー室ならとがめる存在もいないだろうと踏む。
     小指程度の長さのの白い円柱を一本つまむ。少し考えたのち、首をかしげつつもしなやかで華奢な人さし指と中指ではさみ直したところで。

     背後、入り口の引き戸が、野暮ったい音とともに開いた。

     廊下にただよっていただろう雨のにおいが湿気とともにトレーナー室に滑り込み、ナカヤマフェスタの鹿毛耳はぴょこんと起き上がる。
     ときに尻尾同様に感情豊かだと言われるウマ娘たちの耳は、どんな仏頂面をしていたとしても口ほどに物を言いがちだ。
     たとえば怒りを感じているのならその付け根から絞られる。よろこびの感情が宿るのなら瞳が見開かれるさまのよう。哀の色が強ければ強いほど折られ伏せられへたれていく。
     鼻先をくすぐるはずだったココアと薄荷の香りは、ナカヤマフェスタの意識から吹き飛んだ。いきおいよく身を起こそうとしたところで我にかえる。やっと帰ってきやがったか。革張りのソファがかすかにきしんだがなにごともなかったかのように身体を起こした。──指先の、まるで煙草のようにも見える細く短い『それ』はそのままで。
     どこで油を売ってたんだいお大尽、と。居住まいをただし部屋のあるじを迎えようとした。そのときだった。

     視界の端で窓を染めるような閃光が走ったのと、耳をふさぎたくなるような轟音。そして。

    「──ナカヤマ?!」

     担当トレーナーの切羽詰まった声音が届いたのは、雷鳴とほぼ同時だった。

  • 4◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:21:16

    ***

     ナカヤマフェスタの担当トレーナーは、どちらかといえば物腰のやわらかいタイプだ。

     気は優しくて強い言葉は使わないおひとよし。眉をさげて笑い、いつだって懸命で、裏路地に放り込まれれば身包みすべて剥がされてしまいそうなあぶなっかしい風情があった。
     反面、担当ウマ娘がとれだけ強く当たっても、けして動じることはなかった。どれだけ凄まれ睨まれても、侮られすぎるような気弱な態度を見せることもなかった。毅然と、はたまた凛々しく……のような気迫とは違うものの、たゆまぬやわらかさがいつもそこにあった。

     そんな担当トレーナーの表情が、このとき、驚愕にゆがんでいた。

     瞳が見開かれ、半開きの唇はわなないていた。手にしていた荷物がさらに強さを増した雨に負けない音を立て足元に落ちる。

    「トレーナー? どうしたんだよ」

     雷に打たれたのならいまごろトレーナー室はそれどころではないはずだ。呆然と立ちつくすその姿に声をかけると、トレーナーははっと息を呑む。驚きを隠しきれなかった瞳がさまよって、そこでようやく、ナカヤマフェスタの知る担当トレーナーの面影が顔をのぞかせた。
     雷にビビりでもしたのか。そう軽口を叩こうとして、担当ウマ娘はソファから立ち上がる。荷物を落としたことに気づいてねぇのか? 怪訝さは隠さず近づくさなか、いつものスティックキャンディにするように、指先で挟んでいたそれをくわえる。
     ココアと薄荷の香りが口の中に広がって、──担当トレーナーが、眉を寄せた。

    「ナカヤマ、それ」
    「ん?」

  • 5◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:21:28

     雷光に影でも縫われたか。いまだ身動きが取れていない担当トレーナーのかわりに身をかがめ、ナカヤマフェスタは荷物を拾い上げる。おそらく出版社から送られてきただろう献本に、トレーナーを介して注文していた最新の蹄鉄。こんな雨の日に有用な室内トレーニング用器具。授業が終わりいの一番にトレーナー室に向かうももぬけの殻だった理由の山に、担当ウマ娘は拍子抜けする。さきほどまで不機嫌に垂れていた耳はどこへやら。

     しかしこのとき。
     担当トレーナーとしては安堵どころの話ではなかった。

     それ。
     と、かすかにふるえる声が指し示すのは、担当ウマ娘がくわえる白い円柱。まるで『煙草』のように短く、細く、小指ほどの──。

     担当トレーナーのよわよわしい指とゆれる視線の先をナカヤマフェスタはたどる。行き着く場所がみずからの口許にあると認識し「……あぁ」と腑に落ちた反応を見せた。
     一言を発するだけでも精一杯と言わんばかりの担当トレーナーに対し、担当ウマ娘の様子に焦燥の色はない。そのかわり、すみれ色の瞳がかすかに翳った。荷を片腕で抱え直し、ナカヤマフェスタは一見『煙草』にも見えるそれを、立てた歯で噛みくだいて見せる。
     ばり、だの、ぼり、だの小気味良い音を聞いた担当トレーナーが「え」と言葉をこぼす。──信じられない、と、言わんばかりに。

    「ココアシガレットだよ」
    「……ココアシガレット?!」
    「知らねぇ? 駄菓子の」
    「知ってるけど……」
    「食ったことは?」
    「……ない」
    「なら食ってみろよ」

  • 6◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:21:38

     金文字の『ORIONS』。
     そして白文字で『ココアシガレット』と書かれたネイビーのパッケージを、ナカヤマフェスタはみずからのポケットから取り出した。そのまま片手で差込式の蓋を器用に開けば、トレーナーの眼下にココアシガレットが五本並ぶ。
     それを見つめるまま微動だにできなかったからか、箱ごとぐっと押し付けられてしまい、トレーナーはおっかなびっくり一本つまみ上げた。まるでウェットティッシュを一枚、引っ張り出すようなたどたどしさで。
     くわえて舌でふれれば、鼻孔を薄荷の香りが吹き抜ける。それから、子ども向けの駄菓子にしてはひかえめな、ココアの甘さ。

     はりつめていた緊張がゆるむ。背後、部屋の引き戸に背をあずけたと思えば、そのままずるずるとしゃがみこんだ。
     とびきりの安堵に、ほんの少しの後ろめたさ。さきほどの担当ウマ娘のように、ココアシガレットを噛み砕く。間違えようもないラムネ菓子。

    「……おい、なんだよ。……大丈夫か?」

     担当ウマ娘が、彼女にしては柄にもないぎょっとしたような声を上げている。トレーナーのかわりに抱えていた荷物をリノリウムの床に下ろすついでに、尻餅をついたトレーナーと視線を合わせるように膝をついた。
     強い風が分厚い雲を追いやったのかどうなのか。さきほどよりは遠く、ごろごろと雷が鳴っている。

     そうしてようやく、ナカヤマフェスタの担当トレーナーは詰めていた息を解した。

    「よかった、チョークかと思った……」

  • 7◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:21:50

    ***
     
    「いや、何でだよ」

     ナカヤマフェスタの担当トレーナーは、いつだって懸命で、いつだって真面目であった。そして、いつだって担当ウマ娘を信頼し、信用していた。
     そのため、かすかに眉をひそめ気遣わしげな様子だった担当ウマ娘ががらりと表情を変えてきた理由について、いっさい思い当たらなかった。
     さすがに手振りまではなかったため『ツッコミ』ではなく反射的に飛び出た疑問のたぐいだろう。『何で』とはなんだろう? まだ舌先に残っているココアシガレットの風味を押し流しつつも首をかしげると、ナカヤマフェスタはひどく大きなため息をついた。
     いわゆるクソデカため息というやつだ。さきほどまで鋭い眼光を担当トレーナーに向けていたわりに、唇をひんまげつつそのすみれ色の目を据わらせて、小さく舌打ちをする。……とても、始末が悪いとばかりに。

    「おかしなこと言ったかな」
    「白墨(チョーク)を食う趣味はねぇよ。子山羊をかっ喰らう狼じゃないんだし」
    「うん、だから、チョークじゃなくてよかったよ。備品を食べてしまうくらい追い詰められることでもあったのかって、びっくりした」
    「だから、そうじゃねぇだろ」

     そうじゃない?
     担当ウマ娘の言葉の意図がわからないまま、担当トレーナーはふたたび首をかしげてみせた。それから、ふたりでトレーナー室の入り口に座り込んでいることに思い至る。

    「荷物落としてしまってごめんね」
    「べつに。……いいよ、私が持ってく。いまのアンタじゃ危なっかしい」

  • 8◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:22:01

     尻餅をついていたところで立ち上がり、ナカヤマフェスタのかたわらの荷物の山に手を伸ばそうとするものの、瞬発力は彼女のほうが上だった。
     トレーナーが両手で抱えていたすべての荷をまとめて軽々持ち上げ、苦にもしないとばかりにトレーナーデスクへ向かう。すこしばかり乱雑に、しかし乱暴すぎないように机上に置くその背、その横顔は、ずっと気まずそうだ。

     そうじゃない。なら何だろう。
     担当トレーナーは考える。ココアシガレットをチョークと見間違えたことが『そうじゃない』としたならば。

     ……なんだろう?

     彼女にしては子どもっぽい不貞腐れ顔で、ナカヤマフェスタは自分宛ての荷と担当トレーナー宛の荷を分けている。遠きフランスからのエアメール。蹄鉄。健康食品。サプリメント。立ち仕事もなんだからとパイプ椅子を差し出すと、担当ウマ娘の眉間のシワがよりいっそう深まった。
     それでもその親切をわざわざ無下にしないのがナカヤマフェスタだ。嘆息ひとつパイプ椅子に腰を掛けるのを横目に、トレーナーもまた荷に手を伸ばした。
     学園宛の荷物が集まる荷捌き場は外気が通りやすい。この天気のせいで雨のにおいが染み付いている包をトレーナーが開きはじめれば──こらえきれないと言わんばかりに、担当ウマ娘が口をひらいた。

    「煙草」
    「え?」
    「……とか、あるだろうが。チョークよか先に、思いつかなかったのかよ」

     火はついてなかったが。投げ槍とばかりの言葉は言い訳にも似た語調だ。

  • 9◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:22:12

     ナカヤマフェスタからすれば、今の状況は誤算でしかなかった。
     もっとも担当トレーナーの前でココアシガレットをくわえていたのはただの油断だった。たとえ駄菓子であろうと、そのパッケージに堂々とココアシガレットと書いてあろうと、誤解をされる可能性のある存在の前で食べる気はなかった。清廉潔白なんてクソ食らえだが、勝負に至るまでのネガティブイメージの取捨選択くらい、この荒みきったウマ娘はきちんと心得ている。
     だから誰が見ているかもわからない学内で口にするつもりはなかった。『そのこと』を忘れくわえっぱなしだった自分が浅はかであったことも、彼女は自覚している。

     ココアシガレットを口にした自分が、それが『ココアシガレット』だとわからない周囲にどう思われがちか。

     ナカヤマフェスタは理解している。

     だからこそ、ココアシガレットであることを証明するために担当トレーナーの前で噛み砕き、まるで保証を求めるがごとく差し出した。果たして誤解は解け、めでたしめでたし。そんなシナリオを描いていたのだ。

     にも関わらず担当トレーナーはそれをチョークだとのたまった。

     挙げ句の果てに。

    「だって君自身から煙草のにおい、したことがないし、……思いつかなかったや」

     そんなことを言うのだから──担当トレーナーの視線から逃げるように、遠きパリの香りをただよわせるエアメールの文面に目を滑らせようとしていたナカヤマフェスタは、ぴたりと硬直した。

     そんな彼女の様子に、担当トレーナーはまだ気づかない。

  • 10◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:22:23

    「君が走り続けようと思う限り、心肺機能に影響を及ぼすような真似をするとは思っていないし……。ええと、すくなくとも、いまここにいる君は」

     ナカヤマフェスタは知っている。
     食事のために常連の居酒屋に入れば、顔馴染みの男たちがおもむろにその手の煙草を灰皿でもみ消し始めることを。店の空調が悲鳴を上げる勢いで稼働しはじめることを、知っている。
     気遣うなと言っても聞きゃしない。生まれ持った大切な肺なのだからと──けしてそんな殊勝な言い方はされないが。

     そうだ。
     私の肺を灼くのはターフの熱気だけで充分で。
     馴染みの男たちも、担当トレーナーも、きっとそう思っている。信じている。

     なんてむず痒い。

    「ナカヤマ……?」

     微動だにせず言葉すら発しない担当ウマ娘の様子にトレーナーはようやく気づく。またなにかおかしなことを言ってしまっただろうか? みずからの発言を顧みてみるも、担当トレーナーには原因が思い当たらない。想定外の返しをしたという自覚も当然ない。
     それがチョークでなくココアシガレットならば、それ以外の選択肢などなく──担当ウマ娘とのやり取りを行きつ戻りつ思い返し、そこでようやく「あ」と息を呑んだ。

    「ごめん、その、……君のにおいがどうのって、……き、きもちわるかったよね?!」

  • 11◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:22:34

     相手は裏路地を渡り歩く百戦錬磨であったとしても、女学生であることに変わらない。コンプライアンス! ハラスメント! 倫理観! 年若いトレーナーであったとしても、相手は未成年、自身は成年。
     やり取りとして相応しいか相応しくないかと問われたら、間違いなく後者だった。さきほどからなにやら様子がいつもとちがうのは、もしかすると嫌悪感が原因なのではないか──?!
     またもや突拍子もない内容で焦り出した担当トレーナーを見、ナカヤマフェスタはふと息を解した。

     ナカヤマフェスタの担当トレーナーは、いつだって懸命で、いつだって真面目であった。
     そして、いつだって担当ウマ娘を信頼し、信用している。疑うことを知らない。……疑う余地すらないのだから。

    「アンタからも煙草の匂いはしたことがねぇだろうが」

     読みかけのエアメールを膝に置き、ナカヤマフェスタはみたび、スカートのポケットの中を探る。手のひらに乗るネイビーのパッケージを取り出して、一本、ココアシガレットをつまみ上げた。
     それを、いつものスティックキャンディを食べるときのように口許へ。「煙草の趣味はないからね!」誇らしげに言うものだから厄介だ。いつだって、担当トレーナーは厄介で。

     一服どうぞ? とばかりにもう一本差し出せば、それがチョークでないことを理解している担当トレーナーはにこやかにココアシガレットを受け取る。

  • 12◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:22:48

     かじる。噛み砕く。ココアの甘さと薄荷の香りが、ビターな風合いを運ぶ。

    「今日のところは痛み分けだな」
    「なんのこと?」

     雨のにおいが消える。
     ほんのしばらく、薄荷とココアの香りはふたりのあいだにとどまり続けるだろう。

    「こっちの話さ」

  • 13◆s.yi1y1z5A24/06/20(木) 21:23:15

    おしまい
    梅雨ってもう来ましたかね……

  • 14二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 22:22:49

    とっても良かった!
    トレーナーがいなくて不貞腐れてるナカヤマかわいいしトレーナー来たときにココアシガレットがどっか行ってしまうのも良い……
    あとトレーナーが驚いたタイミングで雷なってるところすき
    ココアシガレット食べたくなったし探しに行こうかな〜

  • 15二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 22:25:18

    このレスは削除されています

  • 16二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 22:26:34

    このレスは削除されています

  • 17二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 00:03:07

    このレスは削除されています

  • 18二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 00:26:33

    この絶妙な2人の距離感良いよね……

  • 19二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 01:25:43

    ナカヤマが煙草に手を出さない事を信じ切ってるから出てくる天然ボケ笑った

    だからってそうはならんやろ

  • 20◆s.yi1y1z5A24/06/21(金) 06:55:23

    お読みいただき感謝です~

    ちょっと管理しました。17さんはお気遣いありがとうございました……!


    >>14

    細かなとこまで気づいてくれて感謝!

    >>18

    このくらいの距離感が書いてて楽しいです!

    >>19

    なっとるようにしてしまいましたね……!

    当初は煙草だと疑うパターンだったのですがトレが疑うと思えなくて……

  • 21◆s.yi1y1z5A24/06/21(金) 16:40:11

オススメ

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