【ダイススレ】自分の分身のオリキャラをC.Eに放り込んでみた2

  • 1スレ主24/06/20(木) 22:58:09
  • 2スレ主24/06/20(木) 23:00:21
  • 3スレ主24/06/20(木) 23:01:24
  • 4スレ主24/06/20(木) 23:09:26

    シグーが煙幕を切り裂いて現れた時には、グレートフォックスとアルコンガラ
    は慣性航行へと移り、戦闘宙域から離れた後だった。

    クルーゼは深く息を吐いて、自機の有様を確認する。
    手に持った対艦斬刀は、焦げたところから折れ、推進剤もエネルギーも空っぽになる寸前であり、
    どうあがいても逃げていく敵を追う術は持っていなかった。

    クルーゼはコクピットの中で、小さく、そして歓喜したように笑う。

    クルーゼ「凶鳥…はっはっは…素晴らしかったよ。君との戦いは…!」

    ここまで純粋に戦いに興じたことはない。クルーゼは心から、
    凶鳥との戦いに喜びを抱いてーーそして同時に、次なる期待へ胸を高鳴らせた。

    クルーゼ「いつ以来だろうな!これほど喜びに満ちた感覚は!」

    願うならば、この喜びの中で死ぬことを祈るーー、クルーゼの中にあった邪悪なものは、
    その希望に塗りつぶされつつあったのだった。

  • 5スレ主24/06/20(木) 23:15:08

    ウィルの今回の経験値77+dice1d20=12 (12)


    100以上なら覚醒アセム・アスノ状態なので、シュラより強い。

    ただし、精神干渉を防げるかどうかは不明なので必ず勝てるわけではない。


    ウィルの疲労dice1d100=34 (34)


    50以下は動けなくなる(汗が踝まで溜まっている)

    50を超えると吐瀉物でバイザーを汚す

    70以上で気絶


    キラのメンタル270-dice1d100=42 (42)


    100を切るとメンタルケアが必要

  • 6スレ主24/06/20(木) 23:30:03

    ハルバートン「地球連合軍准将、第8艦隊司令。
    デュエイン・ハルバートンです。……お会いできて光栄です、アスハ代表。
    モニターごしで申し訳ありませんが、どうか、御容赦を願います」
    ウズミ『こちらこそ。智将と名高いハルバートン提督にお会いできて光栄です。
    作戦行動中の艦隊司令に、他国の者が通信を送るという事がどれだけ非常識かは、理解をしているつもりです。
    緊急時にご迷惑をかけてしまい、心苦しく思います』
    ハルバートン「迷惑など……」

    月、地球、そしてデブリベルト方面への航路を望める宙域。言うなれば[繋ぎ]のような空間。
    その中で、地球寄りになるポイントの一つに、30隻余りになる艦隊の姿があった。
    宇宙を海とする地球連合軍艦隊の一つ。
    大西洋連邦准将、デュエイン・ハルバートンが率いる第8艦隊である。
    自分達の指揮下に属する新鋭艦アークエンジェルと、それを支援するべく送り出した先遣隊
    ……両者との合流を計ろうとしている最中だった。

    言うまでもないが、作戦行動中だ。

    連合の宇宙拠点である月から、出撃して来ている所であり。
    まだ余裕があるとは言え、敵であるザフト宇宙軍の勢力範囲に接近しているのだ。
    ハルバートンは艦隊司令として、旗艦メネラオスの司令席に腰を降ろし、全方位警戒を徹底させている。

  • 7二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 23:30:31

    >>3

    レス番消し忘れてますよ

  • 8スレ主24/06/20(木) 23:30:42

    後方……それも他国のトップから、ノイズ混じりのリアルタイム通信を受け取るのは、適切ではなかった。

    それでも、それがハルバートンの所に来るには相応の理由があり、
    そして彼がそれを突っぱねる事を出来ない理由があるからこそ。
    この外交的な手順も何もあった物ではない、初対面同士による不思議な組み合わせの会談
    ……それが生まれていたのである。
    大西洋とオーブの国力差、そして状況……ハルバートンが下手に出る必要はそれ程にないのだが、
    彼の態度はあくまでも紳士的だった。
    むしろ申し訳ないとの感情が見えてもいる。

    ハルバートンの属する組織。大西洋連邦の問題がそれをさせていた。
    年や階級を考えれば、まだ若々しさを残していると言える顔つきの准将。彼は率直に詫びを口にする。

    ハルバートン「……一国の代表からの通信をたらい回しとは……わが国の事ながら、
    まことに申し訳ないと恥じ入るばかりです。重ねてお詫びいたします」
    ウズミ『貴国にとっては面倒事です。致し方ない。
    むしろ、有能と名高い提督に話を通して頂けた事を、ありがたく思います』

    提督の謝意に対して、ほんのわずかに苦笑しながら……目の奥に疲労を滲ませながら……
    気にしないで欲しいとの気遣いを見せたのは、威厳や貫禄と言った物を身に纏う男。

    オーブ首長国・代表、ウズミ・ナラ・アスハだった。

    一つの国のトップから、わざわざの通信……何の為に送られてきたのかを、ハルバートンはほとんど察している。

  • 9二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 23:31:41

    このレスは削除されています

  • 10スレ主24/06/20(木) 23:33:45

    ハルバートン「アスハ代表。ご安心ください。保護しているオーブ国民は、必ず、
    無事にお送りしいたします……ただ、あと少し、お時間を頂きたいのです」
    ウズミ『……よろしくお願いする』

    実際のところ、話は簡単だった。
    現在、アークエンジェルに保護しているヘリオポリス避難民。オーブ国民の話である。

    ――早く返してほしい。
    ――もちろん。安全を確保し、帰す為に努力している。少々お待ち頂きたい。

    言ってしまえば、これだけの話なのだ。

  • 11二次元好きの匿名さん24/06/20(木) 23:33:51
  • 12スレ主24/06/20(木) 23:34:07

    >>9

    報告ありがとうございます

  • 13スレ主24/06/20(木) 23:37:59

    何せオーブ自体による救助はとっくに終わっているのである。
    ……厳密には、未だ行方不明や所在確認のできない“推定犠牲者“が居るのだが
    ……とにかく後は、アークエンジェルに乗っている者だけなのだ。

    自国の国民が、望ましくない状態にあるのであれば。
    それを、早く返して欲しいというのは国家代表であれば当たり前の話であり、
    ここで下手に出たなどという話があれば、公式には好ましくない醜態になる。

    オーブ国内でも、[何処か]から妙な伝わり方で話が漏れてきているようで、少しずつ話題になってきている。
    それも、あまり良くはない形で。
    アークエンジェルに保護してもらっている者達の家族や、知り合いがオーブ国内で疑問を唱え出してきているのだ。
    抑えるにも限度がある。

    オーブは実質、アスハ家の国と言ってもいい政治体制だが、
    それはアスハ家に対する国民の高い支持……極端に言えば人気があるからできる事だった。

  • 14スレ主24/06/20(木) 23:44:27

    官民問わすに高い支持を持つアスハ家だから、オーブを統治できるのであって。
    だから多少の理不尽や無茶をやる余裕があるのであり。 れを失いかねない真似……
    その高い支持を下げるような真似は……特に難しい、というのがウズミの苦しい所だった。

    ハルバートンがブリッジで申し訳なさそうにして見せたのは、それを分かるからこその配慮である。
    ウズミとしては、国家代表の体面を保ちつつ内心で頭を下げるしかない状態だった。
    このように二人が苦吟しているのには、様々な理由が関わってきているのだが
    ……端的に言えば、やはり戦時だからの一言に尽きる。

    現場の人間の間では、大変だったな、お疲れ様、困った時はお互い様。
    究極的にはこれで終わる話が、上層部の間では変わってきてしまうのだ。

    戦時……宇宙と地球に跨がる大戦の最中。
    中立をうたうオーブと、地球連合の雄である大西洋連邦。
    そして地球に確固たる戦略拠点を築きたいプラント。この関係が絡まっており、厄介な問題になっている。

  • 15スレ主24/06/20(木) 23:44:49

    >>11

    報告ありがとうございます

  • 16スレ主24/06/21(金) 09:28:41

    宇宙を主とするプラントの支配領域を、プラントと敵対している連合の軍艦で引きずり回されて。
    攻撃され応戦したとは言え、オーブ自体は、まだ明確に宣戦布告をしていない現状……
    それを、なし崩しで戦闘に巻き込まれ、民間人の戦時徴用まで行われているともなれば。
    返還の催促や抗議の一つも入れるのは自然な流れである。
    仕方がない面があるにしても、それを出来ないのなら国としての立場がないのだ。
    政治体制、外交姿勢。世界情勢、戦局。投入した人員、消費した物資、戦力。
    そして戦死者。その家族に対する説明と補償。
    様々な勢力や派閥による権力闘争。……表には出てこない、ブルーコスモスの意向など。

    乱暴に言えば[見返り]を要求されているのがオーブの現状だった。 

    もちろん、それを問題というには少々酷な話だ。だが、問題になってしまっているのである。
    義理からか、宇宙にいる者の不文律からか、とにかく中立国の国民を助けて保護をする。
    その後は返して終了。
    しかし助ける為に戦死者を出し、多量の物資と時間を消費し、作戦や戦力を用意して支援をやって。
    そのついでに、ちょっと使えそうな人員……ウィル・ピラタを取り込もうとした所に、
    [全員]を確かに返して欲しいと要請をされれば、ブルーコスモスならずとも不愉快にもなるのだ。
    そして、また面倒な事に、オーブが自国の拠点から最短で送ったヘリオポリス救助隊は、
    全員を助けられていない点もある。

    単純に戦闘に巻き込まれたであろう者、単純にシェルターに間に合わなかった者。
    空いているシェルターを探している内に、空気の流出に耐えられず窒息したのであろう遺体。
    犠牲はやはり皆無とは言えなかった。
    惨い話だが、誰にも知られずに瓦礫に押し潰されてしまった者や。
    ザフトの攻撃、またはアークエンジェルの撃った砲撃で亡くなった者。
    宇宙に投げ出されて行方不明になった者もいる。
    運良く保護された者達と同じく、シェルターが壊れてしまい、
    同じく接地しているアークエンジェルを目指して、間に合わなかった者もいるのだ。

  • 17二次元好きの匿名さん24/06/21(金) 20:53:53

    前スレ終盤から今スレにかけては圧巻の文章量でした、読み応えあって良かったけど無理しないで下さいね

  • 18二次元好きの匿名さん24/06/22(土) 05:58:33

    民間シャトルも無事で済むといいなぁ
    外交は本当、裏と表があるから厄介なんだよな

  • 19スレ主24/06/22(土) 06:42:25

    アークエンジェルが居なければ、助かった者、
    助からなかった者の両方がいる事が、大西洋、オーブ共に面倒さを引き起こしていた。

    オーブ側にも引け目はある。

    その結果。ウズミが話を上手く……つまりはオーブ有利に運ぼうとした要請を……
    同盟も結んでいない国相手に、そこまで融通を利かせるつもりはない、と大西洋連邦に言われたのだ。

    中立を守ったまま……それらは変えないままに、相手にお願いを持ってきたのだ。

    他分野での、ある程度の譲歩は用意したとは言え、
    大西洋・地球連合にとっては遥かに物足りなかったらしく、突っぱねられたのである。
    ついにはそのオーブの姿勢にうんざりした大西洋の大統領が……ブルーコスモスの意向もあるものの……
    忙しいからという失礼すぎる理由を持ち出し。
    必要があれば現場の指揮官、司令部と《ご自分で》話すがよろしいでしょうと
    ウズミからの通信を回してきたのである。
    次から次に下部へ回され、地球から月へ回され、
    責任を取りたくない月本部の者達から今度は、ハルバートンに回って来たのが事の顛末だった。

    ただ大西洋も相応には必死なのだ。
    恩を着せても駄目なら、追い込むしかないのである。
    戦争が長引き始めたのに、未だにプラントに押されがちな面が強い戦局……
    そんな中でマスドライバーを持つオーブを、プラントに渡せないのだ。
    地球の鉱物資源などを自由に打ち上げられたりなどすれば、ザフトの戦略は重厚さを増す。冗談ではない。

  • 20スレ主24/06/22(土) 06:53:01

    ――味方になれ、でなければ損をしろ、味方にならないのなら潰れてもこちらは助けない。
    中立をいつまでも守り通せると思うなよ、もし敵になるならば――

    その2択を事あるごとに、そして圧力を高めてきていたのだが。
    それが極まったのが、今回のヘリオポリス避難民の件。
    そしてウィル・ピラタの件だった。

    それを理解するからこそ、ハルバートンはウズミを気遣った態度をしたのである。
    自国の上層部が、民間人を盾に見返りを要求している。政治としては分かる。
    だが、軍人として甚だ気まずく情けなく、激しく不快に感じていた。

    ウズミ『我が国の民を助けてもらっておいて、お恥ずかしい話だが、
    ……オーブは、決して一枚岩とは言いがたい』
    ハルバートン「お察しします」

    少なくとも今は、大西洋に味方はできないとのウズミの言葉を、ハルバートンは仕方ないのだろうと受け入れる。
    わざわざ隠して大西洋・オーブでモビルスーツ開発をやるくらいだ。
    必要だが、面倒事が多いから隠していたのだろうと。
    事が露見しても、内外を問わず問題が起きないように、というのは難しいのだと。

  • 21スレ主24/06/22(土) 08:11:19

    コーディネーター排除に染まりつつある地球連合、ナチュラル不要論を進めるプラント。
    共生を掲げるオーブ。

    これでは、どちらについても片方からは目の敵。邪魔だと思われる立地なのは明白で。
    そして、どちらについても、守りきってもらえるかは分からないのがオーブの苦しい所だった。
    自国を守れる戦力がないのが、更に舐められる一因なのだろう。

    ハルバートン「……だからと言って、軽んじる人間がどこにいる……」

    ハルバートンは現状に憤りを感じるが、それよりも、無力感を大きく感じてしまった。
    せめて、自分だけでも大西洋の人間として意地を通したい。
    しかし、大西洋連邦・地球連合の上層部から弾き出されつつある。
    孤立し始めており、立場が苦しかった。

    自分は切り捨てられつつある。
    副官に連邦上層部寄りの人間……ホフマン大佐が居るのが何よりの証拠。
    先遣隊という酷く神経を使う部隊に、官僚を同行させる無茶を了解しなければならない理不尽さ。

    軍人として民間人を守る。

    そんな当たり前の事をやり通すにも、自分の立場か、
    首を差し出さねばならない状態に陥りつつあるのを、薄々感じていた。

  • 22スレ主24/06/22(土) 08:11:29

    それがついにはっきりと分かってきたのは、ウズミとの会談の最中に、
    立て続けに入ってきた情報を把握するにつれてだ。

    一つは、プラント民間船を、連合が攻撃した。
    一つは、プラント本国より強力な艦隊が編成され、こちらへ進撃中。との通信傍受。

    一つは先遣隊がザフトより攻撃され壊滅。との報告。
    一つは、アラスカからのアークエンジェルに対する召喚。
    そして、ウィル・ピラタ准尉の大西洋連邦本部への召喚。

    それらをハルバートンが把握し、何が起きているのかを推測……理解するのに時間はかからなかった。

    ザフトの攻勢が強まっており、宇宙の戦闘は激化している。
    これ以上民間人を連れ回すのは不可能だ。
    しかし、オーブ避難民を地球に降ろす為には、踏みとどまらねばならない位置にいる。
    月周辺のザフト部隊は執拗に動いており、援軍は来ない。来る訳もない。

    ハルバートン「……生け贄に、なれという事か」

    智将と評される男はそれらを理解し、わずかに眉をしかめた。

  • 23二次元好きの匿名さん24/06/22(土) 19:12:42

    ハルバートンさんは連合の最後の良心…

  • 24スレ主24/06/22(土) 19:19:50

    まだ、脱出挺に乗っている者、怪我の治療のために適当な部屋に振り分けられている者。
    それが多数であればアークエンジェルの居住区に、人の気配はほぼ無いと言っていい。
    にも関わらず、一画……兵士用のエリアでは大きな声が響いていた。

    ミリアリア「……馬鹿ぁ!戦うなんて聞いてないわよ!」

    パイロットスーツを半分着たままのトールは怒られていた。いや、泣かれていた。
    ミリアリア・ハウにしがみつかれて、怒られながら泣かれていたところだった。
    酷く疲れながら「パイロットにはなっただろ……?」と言ってしまったトールをひっぱたいて、
    その後は大泣きしているのがミリアリアという少女だった。
    そういう態度を取られれば、トールにはミリアリアをひたすら宥めるしか選択肢はなかった。

    トール「悪かった。悪かったよ、ミリィ。時間がなくって、ごめん。悪かったって……」

    トールの姿が見えず、ブリッジにも入れなくなったミリアリアは嫌な予感はしていたのだ。
    だが、まさか本当にトールが戦いに行っているなど想像していなかったのである。
    たった数日の訓練でそんな事はあり得ないだろうと。

    戦闘が終わったと聞かされた後に、トールが保安部員に付き添われて姿を現せば、友人達は驚愕するしかない。
    実際に出撃していたと言われれば。
    兵器のパイロットとして志願した……そんな説明で納得してしまえる程彼らは、
    特にミリアリアは大人になっていないのだ。
    恋人が戦争に出ていたと聞かされれば、ショックを受けて当然である。
    キラ、トールの変化。そしてブリッジから何回か見た戦闘の光景は、
    ミリアリアに[命のやり取り]という生々しさを急速に感じさせていた。
    まだまだ若い恋人達の真剣な、かつ、どこか微笑ましいやり取りを聞いていたカズイは、
    ミリアリアが多少は収まったのを見てトールを労った。

  • 25スレ主24/06/22(土) 19:20:40

    カズィ「まさかトールが戦ってたなんてね……よく出たよね。やられちゃうとか考えなかった訳?」

    微妙に責めているのかと思える言葉だが、恋人を宥めるトールは言葉少なめに答えただけだった。
    そんなに大した事はできてない、と。

    ミリアリア「自分勝手な事して……! 心配したんだから!」
    トール「うん、悪かった……」

    ミリアリアを宥め続けるトールを見て、カズイは少々、居心地が悪そうにする。
    サイとフレイが居ないのだ。
    何でも、フレイの父親が来ているらしく、彼女は大喜びで会いに行ってしまっていた。
    サイもその付き添いである。
    トールとキラを、サイはかなり心配していたが、さすがに婚約者を放り出すのはできなかったらしい。
    すぐに戻ると言い、フレイと一緒に行ったサイ。
    カズイは何だか、皆がバラバラになったような気がしていた。
    大体、誰も教えてくれないのだ。今、この艦がどうなっているのかも。
    だから軍なんかは信用できないのだ。
    キラとトールの友人だから……という大雑把な理由でのいち早い居住区への移動だけは許されたが。
    内実は、そこまで手厚く構ってられないという、中々に切実な理由だった。

    トール「……キラ、ウィル、大丈夫かな」

    トールがぽつりと漏らす。トールはムウから褒められて帰ってきたのだ。
    良くやったと。ムウはトールを良くやった、よく生き延びてくれた、と手離しで誉めたのだ。
    整備班の面々も、保安部の者達も副長も、誉め、そして労ってくれた。
    トールも照れ臭そうにしながらも、恐怖と緊張で震えながらも、良かったと喜んだ。
    少しは役に立てたのかと。だが、こうして落ち着いてくるとトールにはよく分かる。
    自分は本当に大した事はできていないのだと。

  • 26スレ主24/06/22(土) 19:21:19

    別に自惚れていた訳ではない。特にムウはそういう気配が出れば、トールを容赦なく張り倒した。
    敵を舐めて死んだ新兵はそれこそ幾らでも居ると。
    モビルスーツへの真剣さが薄れ、機械への慣れが出る度にトールは強烈に怒られていた。
    お前らが乗っているのは戦闘兵器だぞと。
    だから、トールは自惚れていなかった。慎重に、慎重に行ったのだ。
    だいたい余裕なんかありはしない。
    出撃となれば体は勝手に震えてしまっていた。訓練とは全然違うのである。
    必死で火線を敷いた……最後の方はもう、滅茶苦茶に撃ってただけだ。
    そしてやられそうになった。
    驚くような動きですり抜けて寄ってくる3機のジンに、接近戦を仕掛けられそうになったのだ。
    対応できない……乏しい経験からでもそれが分かって、諦めかけた。
    そして相手が大破、爆発したのだ。トールは何が起きたのかは全く分かっていなかった。
    いきなり居なくなった敵を探して、あちこちを見回して。
    そして気が付いたら、近くに寄ってきてくれていたムウから褒められていた。
    もう終わったぞ。良くやった……よく生き延びてくれたと。
    それがトールの初陣だった。何もできなかったのだ。
    戦闘の興奮から少しでも落ち着けば、いかに自分は駄目だったか思い起こされてくる。
    あれだけ訓練したと思っていた射撃は当たらず、びっくりするような相手の動きでいちいち固まり、
    レーダーもろくに把握せずにひたすら目の前を撃ってただけだ。

    ……もちろん、ムウやナタルからすればトールは十分に良くやったと言える。
    彼の仕事はエンジン部を守る事であり、敵の撃破ではなかったのだ。
    数日の訓練で3機の敵モビルスーツを相手に、味方が来るまでの時間稼ぎをした。大した物である。
    だがトールは、キラ達と自分を比べてしまっていたのだ。
    グレーフレームに乗ってみて、戦ってみて、やられそうになってみて分かったのだ。
    いかにムウが遥か上の世界に居るのか。ウィルが、どれだけ凄まじい事をやり続けて来たのか。
    キラと共にどれだけこの恐怖に耐えて来たのかと
     
    ……全然駄目じゃんか、俺。
    友人のためと言いながら、全く役に立てなかった事をトールは思い知らされてしまっていた。

  • 27スレ主24/06/22(土) 19:36:14

    ザフトの襲撃を退けたアークエンジェルとグレートフォックスは、
    第八艦隊所属のコープマン大佐指揮の下、モントゴメリとローの二隻の護衛艦と合流を果たすことができた。
    だが、合流した二隻に搭載されていたモビルアーマーも、先の襲撃により失われており、
    戦力補充には充分とは言えずにいた。

    ムウ「急いでくれよー。これで、終わったって訳じゃないからなぁ」

    そんな中で、ムウはガンバレルストライクの修理を急がせていた。
    マードックや、アークエンジェルのクルーが総出で修復に当たっているが、
    ムウが予感する嫌な感覚に間に合うかどうかと言ったところであった。

    マードック「分かってまさぁー。…しっかし、疫病神なんじゃないですかねぇ、この船は!」
    ムウ「クルーゼの方だろう?そりゃぁ…」

    マードックのぼやきに、ムウもうんざりした様子で答えた。
    クルーゼのしつこさは重々承知していたが、彼がここまで執着心をむき出しにするのは
    ムウにとっても珍しいことであった。
    まるで何かに取り憑かれているかのように、執拗にウィルの駆るアーウィン
    と戦闘を繰り広げていたように思えてならない。

    ムウ(ウィルがそんなに魅力的なのかね?)

    グーレートフォックスに収容されたウィルを心配しつつ、そんなことを考えた。

  • 28スレ主24/06/22(土) 21:13:15

    アデス「このまま付いていったとて、ズタズタにされた今の戦力では、どうにもなりますまい」

    ヴェサリウス艦長であるアデスは、今自分たちが置かれている状況を正確に把握していた。
    逃げたアークエンジェルを追うために、被弾した箇所を封鎖して騙し騙しで後ろをついて行ってはいるが、
    戦力も削られ、こちらにできることはほぼ限られている状況だった。

    クルーゼ「連中も月艦隊との合流を目指すだろう」

    ボロボロになったシグーで帰投したクルーゼは、戦闘時に見せた驚喜を潜ませて、
    いつものように冷静な指揮官の役割に徹していた。
    アデスとしても、独断で出撃したクルーゼに物申したいことはあったが、事実、
    彼がいなければこの艦も餌食になっていた可能性も否定できなかった為、
    凶鳥を退けたということで事を収めることにした。

  • 29スレ主24/06/22(土) 21:13:30

    アデス「しかしー…みすみすこのまま、足つきを艦隊には…」

    ここまで追ってきたというのに、敵新造艦が地球軍本部と合流するのを、指をくわえて見送るのは面白くない。

    クルーゼ「ガモフの位置は?どのくらいでこちらに合流できる?」

    ガモフが合流できれば、必然的にイザークたちが合流するので、
    奪取したG兵器で再度攻撃を仕掛けることは可能だ。しかしーー

    アデス「現在、6マーク、5909イプション、0,3です。…合流には、7時間はかかるかと」

    7時間後。それはザフトにとって致命的だった。
    くわえて、本来の任務であるラクス捜索も再開しなければならないため、
    アークエンジェルだけに意識を向けるわけにはいかない。しかしだ。

    クルーゼ「それでは手を打つ前に合流されてしまうか…難しいな…」

    クルーゼは考えを巡らせる。
    このまま、逃すものか。
    必ず捕まえてみせる。
    その意思だけを心の奥にグッと隠して、彼は冷静な指揮官の仮面を被った。

  • 30二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 04:52:12

    正直、戦闘で敵を討つ事よりも生き残る方が遥かに大事。その意味にトールは気付いてくれるだろうか

  • 31スレ主24/06/23(日) 12:20:24

    コープマン「第八艦隊、護衛艦モントゴメリ艦長、トン・コープマン大佐だ」

    アークエンジェルのブリッジでは、無事に合流を果たしたコープマン大佐と、ローの艦長、
    そしてアークエンジェル、ジャックが一堂に会し、挨拶を交わしていた。

    マリュー「第2宙域、第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
    ナタル「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」

    二人の紹介の後、グレートフォックスの船長であるジャックは帽子のツバをつまみながら、
    困ったようにコープマンに言う。

    ジャック「無事に合流できたことを喜ぶべきか、どうするべきか、と言ったところですな」

    その言葉にコープマンも困ったような顔をして答えた。

    コープマン「まぁーー我々の任務は、新造艦であるアークエンジェルを無事に第八艦隊へ合流させ、
    月の本部へ向かわせることにあります。あれだけの襲撃があったとはいえ、合流できたのは御の字でしょう」

    失った戦力の痛手は確かにあるが、とコープマンはぼやいた。

    今の戦力で言えば、敵残存戦力のイージスにザフトの増援が合流した場合、
    まともな迎撃行動ができるのは、アークエンジェルとグレートフォックスくらいで、
    コープマンの指揮するモントゴメリは後方からの支援が精一杯だろう。
    今の自分たちとしては、第八艦隊に合流するまでに敵が増援を引き連れて襲ってこない事を願うばかりだ。

  • 32スレ主24/06/23(日) 12:21:37

    マリュー「我々の処遇は、どうなるのでしょうか」

    不安げにそう言うマリューの言葉にコープマンはふむと顎に手を添えた。

    コープマン「ああ、そうだな。アークエンジェルに乗艦する各士官は月の本部に到着し次第、
    再配置が行われることになるだろう。アルコンガラへの報酬もその時払われるだろう」

    事実上の任務達成。その言葉にマリューは安堵するように息をついた。
    ただの技術屋である自分に艦長などという役目は荷が重すぎたのだ。
    ほかの下士官も同じことを思っているだろう。
    まあ、アルコンガラの面々は身の振り方を考える必要があるが。

    すると、コープマンは安堵するマリューをジッと見据えた。

    コープマン「ところで、X-105ストライクのパイロットは誰だね?先の救出任務について感謝を伝えたいのだが」

    その言葉に、マリューもナタルも口を閉ざした。コープマンは、ストライクに正規の地球軍パイロットが
    乗っていると思っているだろうが、それと異なる事実をどう伝えるべきか、二人には考えがつかなかったのだ。

    ジャック「大佐殿、これには深い事情がありましてな」

    そんな二人に助け舟を出したのはジャックだった。いつもは被っている帽子を脱ぎ、
    ジャックは真剣な眼差しでコープマンを見た。

    コープマン「ーー話を聞こう」

  • 33スレ主24/06/23(日) 12:24:01

    その真剣な目に答えるように、コープマンの視線も真剣みを帯びて行く。
    ジャックはコープマンにもわかるように事のあらましを説明して行く。
    ストライクを操るのが、民間人であり、偶発的に戦争に巻き込まれた、
    なんの罪もない少女でありーーーコーディネーターであるということを。
    静かにジャックの言葉を聞くコープマン。そんなアークエンジェルのブリッジの扉の前では、
    ひとりの男が驚愕を目に浮かべていた。

    地球軍の機密であるストライクに乗る人物が、コーディネーター。
    その言葉だけが、彼の心の中に水音のように反響して行くのだった。

    ジャック「ついでに言えば我々は縁にのっとりアークエンジェルに味方しただけであり、
    今後も地球軍に味方すること確約出来ません」

  • 34二次元好きの匿名さん24/06/23(日) 23:30:12

    大人たちの思惑がホントに厄介だな

  • 35スレ主24/06/24(月) 00:07:47

    アークエンジェル、展望室。
    キラはストライクから降りて、誰にも告げずに一人きりでこの場所にやってきていた。
    宇宙を眺めながら、一人で考えている。アスランに銃口を向けてしまったときのことを。

    気がつくと、手が震えていた。

    自分のやってしまったこと、そしてやってしまうまでその恐怖と嫌悪感に気付かなかったことが、
    キラの純粋な心を傷つけていた。
    いつか自分は、戦場の激情に流されてーーほんとうにアスランを撃ってしまうのではないか?
    友や仲間を守るために取った剣で、自分の親友であり、幼馴染であるアスランを殺してしまうーー
    血濡れたナイフを持って、横たわるアスランを無機質な目で見下ろす自分。
    そんなことを考えるたびに、心はひどい拒絶反応を示した。

    クララ「キラ!」

    その声にキラは肩を震わせた。展望室にやってきたのは、クララとフレイだった。

    クララ「こんなところにいたの」
    「クララ、フレイ…」

    そう言うキラは、明らかに気分が落ちているのがわかった。
    ラリーはパイロットスーツのままガジガジと頭をかいてキラにかける言葉を考える。

    クララ「とにかく、さっきの作戦。おつかれさま。貴女はうまくやったわ」

    そう言ってみるが、キラの反応は思わしくない。クララ
    は意を決したように息を吐いて、真剣な眼差しで俯くキラを見つめた。

  • 36スレ主24/06/24(月) 00:07:57

    クララ「話は、リークから聞いたわ。アスラン、イージスのパイロットと面識があるの?」

    その問いかけに、キラの表情は暗く陰った。
    フレイは、そこで確信する。キラの中の葛藤に自分たちが気付けていなかったことを。

    キラ「私は…」
    フレイ「キラ、私はもうコーディネーターだからって差別しないわ。だから、できるなら、教えて欲しいの」

    フレイは、戸惑うキラの肩に手を置いて自分の本心をキラに伝えた。父の言うことは絶対じゃない。
    ウィルやキラ、ラクスとの交流で理解したのだ
     
    そして、キラは少しの沈黙をおいてから、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

    キラ「イージスのパイロットはーー僕の幼馴染みなの…」

    その言葉に、クララもフレイも、声をなくした。しばらくして、フレイが「そんな……」と小さく呟く。
    それは、キラを、相手が大事な友達だということがわかっていないまま、
    戦いを強要してしまった自分に対しての自責の言葉だった。

    キラ「まだ小さい頃…月で通っていた学校で知り合って、
    ずっと一緒でーーこのトリィをくれたのも、アスランなの」

    キラが肩に乗せる鳥型のロボット。それを作った相手がーー自分たちを落とそうとする
    ザフトのパイロットだったとは。クララは心の中で嘆いた。キラの肩も、震えている。よほど、辛かったのだろう。

  • 37スレ主24/06/24(月) 00:08:30

    キラ「私は…私は…みんなを守りたい…けど、私は…」
    クララ「キラ」

    肩を震わすキラに、クララはまっすぐと目を見つめて彼女の名を呼んだ。
    そして、まだ年端も行かない彼を、しっかりと抱きしめた。

    クララ「辛かったわね。よく、話してくれた」
    キラ「クララ……」

    キラは戸惑った目をして、隣にいるフレイを見たが、彼女もクララと同じように穏やかな瞳でキラに微笑みかけた。

    フレイ「キラ、ありがとう。ちゃんと言ってくれて」

    それが、決壊の瞬間だった。
    キラはだらりと垂らしていた手をクララの胸元に置いて、パイロットスーツに爪を立てるように拳を握りしめた。

    キラ「う、ううう…うぁあああ…!!」

    本当は、アスランと戦いたくない。けど、状況がそれを許してくれない。
    そんな板挟みの状況の中で、何のために戦うかを示してくれた二人が、
    キラの心の中にあった苦しみを優しく受け止めてくれた。
    キラは自分の中で堪えていたものを吐き出すように涙を流す。
    しばらく嗚咽をあげて泣くキラを、クララはぎこちない手つきで頭を撫でたり、背中をさすったりした。

    クララ「おーよしよし、泣きなさいな。ウィルと寝てるのは腹立つけど
    死んでほしいとかそこまでは思ってないもの」

  • 38スレ主24/06/24(月) 00:09:10

    こんどは、フレイは一足で二人の真ん中へ飛び込み、腕をめいいっぱい広げて、キラ達を抱きしめた。

    クララ「どうしたの?」

    いきなりの抱擁に、クララ達は驚いた声を上げたが、フレイは構わずに抱きしめる力を強めた。

    フレイ「ーー本当に、ありがとう…約束を守ってくれて。キラも、ウィルも、クララも、三人とも、
    ちゃんと帰ってきてくれて、嬉しい。ほんとに大好き」

    フレイの心からの感謝の言葉。予想していなかったそれを受け止めて、
    キラ達はお互いの顔を見合わせてから、気恥ずかしそうに笑った。

    アルスター「フレイ!」

    通路の向こう側から、床を蹴ってひとりの男性がこちらに近づいてくる。
    フレイは振り返ると、パッと花を咲かせたような笑顔になり、向かってくる男性の胸に飛び込んだ。

    フレイ「パパ!!」

    飛び込んだフレイを、ジョージ・アルスターもまた強く抱きしめる。

    アルスター「無事でよかった…!」
    フレイ「パパも、よかった…!」

    親子の再会に、キラ達も心に温まるなにかを感じながら、二人の抱擁を黙って見届けていた。
    すると、アルスターがフレイを離して、佇んでいるキラ達に視線を移した。

  • 39スレ主24/06/24(月) 00:09:37

    アルスター「君たちは…」

    アルスターの言葉が終わる前に、クララは規則正しい敬礼を行う。
    キラもそれにに倣ってぎこちなく敬礼をした。

    クララ「アルコンガラ所属、クララ・ソシオです」
    キラ「す、ストライクのパイロットの、キラ・ヤマトです」

    クララを眺めて、アルスターは感慨深く呟く。

    アルスター「そうか、君たちが…」

    アルスターの傍にいるフレイが笑顔で二人を見つめた。
    そうだ、彼らが父を救い、自分たちを守って戦ってきてくれた英雄だと言いたげに。
    そんなフレイを見ずに、アルスターは緩やかに片手を上げた。

    アルスター「そして、ストライクのパイロット…」

    アルスターが手を上げたと同時、二人の背後から武装した地球軍兵士が現れる。
    武装兵は、手に持ったアサルトライフルの銃口を、アルスターが向ける視線の先へ差し向けた。

    アルスター「コーディネーターの、キラ・ヤマト…」

    咄嗟の出来事だった。クララは素早く、キラを庇うように武装兵の前に立ち、
    隣にいたフレイは呆然とその光景を見ているだけだった。

  • 40スレ主24/06/24(月) 00:10:06

    フレイ「パパ…?」

    わずかに呟いた言葉も、アルスターの耳には届くことはなかった。

    クララ「アルスターさん!何を!」
    アルスター「最初は素直に感謝したよ。私たちを助けてくれた君たちに。
    けど、驚いたよ。ストライクのパイロットが、まさかコーディネーターだったとはね」
    フレイ「パパ!キラはパパの言ってるようなーー」
    アルスター「フレイ、コーディネーターは危険なんだ。今は大人の話をしている。わかるね?」

    フレイの反論も、優しい口調で制するが、アルスターがキラに向ける視線は明らかに嫌悪と侮蔑の眼差しだった。
    クララは視線を鋭くして、アルスターと向き合う。

    クララ「キラをどうするつもりなんですか」
    アルスター「彼は、ストライクの情報を知りすぎている。
    故に、月に到着し次第、然るべき処置をさせてもらうつもりだ」

    然るべき処置ーーブルーコスモス派である彼のその言葉に、クララは小さく舌打ちをして毒づいた。

    クララ「これだから、ブルーコスモスは…」

    そんな反発の目を気にもせずに、アルスターはフレイの肩を抱いて踵を返した。

  • 41スレ主24/06/24(月) 00:10:50

    アルスター「それまでは、モントゴメリの地球軍の監視が付く。
    そのつもりでいて欲しい。申し訳ないがね。さぁ、行こうフレイ。ここまできた話を聞かせておくれ」

    そう言って、アルスターはフレイを連れて通路の奥へと向かっていく。
    フレイは何度もこちらに振り返り、キラに申し訳ないというような瞳を向け続けていた。
    おそらく、父に逆らったことがないフレイは、どうすればいいのか分からなかったのだろう。
    アルスターがいなくなったと同時に、武装兵がキラを連行しようと近づいてくる。
    そんな彼らの前に、クララは殺気をみなぎらせて立ち塞がった。

    クララ「貴方達。キラを連れて行くつもり?」

    クララの気迫に、武装兵は戸惑いながらも語気を強くして言い返した。

    「わ、我々は命令を受けてーー」
    クララ「そんな命令糞食らえよ!!」

    助けてやった恩を仇で返すなんて!!っとクララは叫んで、
    歩み寄ろうとした武装兵の鼻っ柱に隠し持っていたM870ブリーチャーを叩き込んだ。

    クララ「キラ!グレートフォックスへ行くわよ!」

    クララは戸惑っているキラの手を掴んでそう言った。
    このままアークエンジェルにいるよりは、グレートフォックスにいた方が百倍安全だ。

    キラ「え、でも…」
    クララ「仲間を黙ってナチュラル至上主義者どもに渡すわけないでしょ!!」

    そうクララは叫んで、キラの手を掴みながら、通路の先でアルスターの指示のもと
    待機していたモントゴメリとローの下士官を「恥知らず」と罵りながらボコボコにして、
    グレートフォックスへ逃げ込むのだったーー。

  • 42スレ主24/06/24(月) 00:12:49

    キラのメンタル(228+dice1d100=69 (69) )-dice1d100=29 (29)

  • 43スレ主24/06/24(月) 07:37:25

    ジャック「どういうことか、説明してもらえるかな?」

    アークエンジェルを護衛するグレートフォックス。
    その艦の指揮を執るジャックは抱えた苛立ちを表すように深く帽子を被り、
    ツバの下から鋭い眼光を放って、モニターに映る弁明者を見つめていた。

    コープマン『すまない、我々の管理不足だ』

    その視線の先にいるコープマンも、申し訳なさそうに目を細めては、謝罪の言葉を返す。
    事の発端は、コープマンが連れてきたジョージ・アルスター事務次官の独断行動だった。
    彼は地球の政治家であると同時に、コーディネーターを忌み嫌う、
    ナチュラル主義を掲げる組織「ブルーコスモス」のメンバーでもあった。
    穏健派として有名であったからこそ、第八艦隊の指揮をするハルバートン提督もコープマンも、
    彼が先遣隊の船に乗り込むことを承認した。
    だが、その判断は間違いだったと思い知らされる結果となった。

    クララ「こうも恥知らずだとは思わなかったわ!!」

    船長室で、プライベートチャンネルを使ってコープマンと通信をするドレイクに、
    クララは机を手のひらで叩いて訴えた。彼女が、怒り心頭の様子でアークエンジェルから
    グレートフォックスに戻ってから、こうなるまでは時間はかからなかった。
    アークエンジェルで伸されたブルーコスモス派の下士官の回収に、モントゴメリのクルーはてんてこ舞いだ。

    ジャック「落ち着け、クララ。確かにアルスター事務次官の行動は認められないが、彼の言い分にも一理はある」

    故に、ブルーコスモス派の士官も同調したのだろう。ジャックは呆れたようにため息を吐いた。
    ここ近年になり、ブルーコスモス上層部の人間と、地球軍の癒着の噂は聞いていたが、ここまで深刻だったとは。
    コープマンも苦虫を噛みつぶすように、己の人を見る目の無さを呪っていた。

  • 44スレ主24/06/24(月) 07:38:47

    クララ「だからって、キラを差し出すなんて御免よ!!」

    再び、クララは机を叩く。一理あるからハイそうですかといって、
    キラをブルーコスモス派の人間に引き渡すことは、なんとしても認められなかった。

    クララ「月にキラが連れていかれたら、私達には打つ手が無くなる。軟禁で済めばまだいい、最悪の場合はーー」

    そこから先を言わずとも、ドレイクもコープマンも大方予想はついていた。秘密を知ったコーディネーター。
    カバーストーリーはいくらでもでっち上げられる。
    そのまま事が最悪の方に向かえばーースパイ容疑で銃殺刑なんてものもあり得る話だ。

    ジャック「おそらく、我々が会話していた情報を、アルスター氏は何らかの方法で知ったのでしょうな」
    コープマン『ああ、いくらハルバートン提督が、反ブルーコスモスとは言え、
    アルスター氏が乗艦している以上、一定数の配下の人間も紛れ込んでいたんだろう』

    モントゴメリの通信は、もう使い物にはならないだろう。
    秘密通信ができる、このプライベートチャンネルしか安心できる通信手段は無いと見た方がいい。
    唯一の救いは、アークエンジェルの通信網は何とかこちらが押さえることができたくらいだ。

    ジャック「まったく、政治屋というのは愚かな生き物だ…」
    コープマン『ジャック船長…そう言ってやるな。彼らも必死で』
    ジャック「必死なら、地球のエネルギー供給網があんな馬鹿な事になる前に、
    誰かが核の発射を止められた筈ですよ、大佐」

    プラントが強硬姿勢を見せていたのも原因ではあるが、核は撃つべきではなかったと、ジャックは今でも思っている。
    核が当然の報復であり、プラントを服従させる手段だと言う輩もいるだろう。しかしだ。
    核が撃たれてどうなった?そこから広がったのは、底深い憎しみに駆られて倫理を失った、軍と兵士による虐殺だ。
    地球をボロボロにされても、その憎しみを原動力に、この殲滅戦争はまだ加速を続けている。

  • 45スレ主24/06/24(月) 07:40:43

    ジャック「とにかく、今はキラちゃんをこちらに置くしかないだろう。
    秘密裏に、こちらにお越しいただいた姫にもな」

    ジャックは深みに入ろうとした思考を切り替えて、帽子を被りなおした。
    最悪の場合、連合を敵に回すことも覚悟しなければならない。
    儘ならない物だと、内心でため息をついた。

  • 46二次元好きの匿名さん24/06/24(月) 18:17:14

    これだからブルコスは…
    少なくとも味方が多い環境で良かった

  • 47スレ主24/06/24(月) 19:34:30

    キラ(ウィル~~~)


    グレートフォックスに移ったキラはdice1d3=1 (1) ウィルが休んでいる自室に向かった。


    1.普段よりクネクネした動きで

    2.顔を紅潮させ、息を荒くしながら

    3.股を濡らしながら


    流石にあんな扱いを受けるとは思っていなかったので、とにかくウィルに慰めてもらいたかった。


    キラ(でも、私どうなっちゃうのかな)


    まだ冷静な部分で、キラは考える。

    ここは軍であり、戦場。このままグレートフォックスに居続けるという訳にもいかないだろう。

    考えても、考えても、答えは出ない。

    サイからも聞いていたように、フレイの父親がブルーコスモス派だということは分かっていたが、

    実際にああいうことをされると、堪えるものはあった。

    すぐにクララが庇って助けてくれたものの、キラの中には少なからず、

    アルスターから発せられた言葉へのしこりがあった。

  • 48スレ主24/06/25(火) 06:37:39

    ハロ「マイド!マイド!」

    思いにふけってると、キラの横を愉快な電子音を響かせながら球体状の何かが横切っていった。
    それにキラは見覚えがある。
    続いて、その球体状の何かを追いかけるように、
    宇宙空間ではナンセンスなヒラヒラした服装をした少女がキラの横に現れた。

    ラクス「あら、キラ様もここにいらしてたんですのね」
    キラ「えっ」

    何事もないような風に、ラクスはキラに微笑んだ。あまりの唐突さに、キラは素っ頓狂な声を出してしまう。

    ラクス「お散歩をしてましたら、こちらからお声が聞こえたものですから」
    キラ「ええ…駄目ですよ…勝手に出歩いちゃぁ……スパイだと思われますよ?」

  • 49スレ主24/06/25(火) 17:17:44

    ラクス「このピンクちゃんは…お散歩が好きで…というか、鍵がかかってると、必ず開けて出てしまいますの」
    ハロ「ミトメタクナイ!」

    ハロの元気な声に、ラクスは微笑むが、その表情から明るさは見えなかった。

    ラクス「ーー戦いは終わりましたのね」

    その言葉に、キラはアスランに銃口を向けたことを思い出して、わずかに息を詰まらせた。

    キラ「ええ…まぁ…」
    ラクス「なのに、悲しそうなお顔をしてらっしゃいますわ」

    キラは驚いて目を見開き、ラクスを見た。まるで心のうちを見透かしているような…。
    ラクスもその言葉の後、悲しそうに目を細めている。

    キラ「私は…私は、わからないんです。確かに、ウィルのように、大切なものを守るためには戦うしかないって、
    わかってるんです。けれど、それ以前にアスランは…とても仲の良かった友達なんだ…」

    気がつくと、キラはそんなことを言い出していた。
    ラクスに言ってもしょうがないというのに、無意識にアスランへの懺悔が言葉に溢れた気がした。

    キラ「アスラン・ザラ。彼が…あのモビルスーツの…イージスのパイロットだなんて…」

    ラクスの問いにキラはそう返すと、彼女はそうでしたのーーと儚げに顔をうつむかせた。

    ラクス「彼も貴方もいい人ですもの。それは悲しいことですわね…」
    キラ「アスランを…知ってるんですか?」

    意外だった。軍人であるアスランと、プラントの歌姫であるラクスが知り合いだったとはーー
    そんなキラの思いにラクスはさらに情報を上乗せした。

  • 50スレ主24/06/25(火) 17:18:01

    ラクス「アスラン・ザラは、私がいずれ結婚する方ですわ」

    その言葉に、キラは思わず固まった。

    キラ「アスランの…恋人…?」

    少しの沈黙の後に、再起動したキラは確認するようにラクスに言葉をつなぐ。彼女は笑顔で頷いた。

    ラクス「優しいんですけども、とても無口な人」
    ハロ「ハロ!」
    ラクス「でも、このハロをくださいましたの!私がとても気に入りましたと申し上げましたら、その次もまたハロを」

    お庭にはこの子の兄弟が沢山いますの、とラクスは楽しそうにそう言って笑った。
    キラもそんなアスランを想像する。彼は褒められたら舞い上がってしまう性格だったからーー、
    きっとラクスにハロを喜んでもらえて嬉しかったのだろう。
    作業机に向かって夜も眠らずにハロ作りに没頭する親友の姿を想像して、キラは小さく笑った。

    キラ「そっかぁ、相変わらずなんだな、アスラン。私のトリィも彼が作ってくれたものなんです」
    ラクス「まぁ!そうですの?」

    では、この子はハロのお兄さんですね。と言って、ラクスはキラの肩にとまっているトリィの頭を優しく撫でた。

    キラ「ぁぁ……でも…」

    キラの表情に暗い影が差す。自分がここにいる限り、アスランとはまた戦う運命にあるだろう。
    恋人であるラクスの目の前で、彼と戦うーーーそれがどれほど残酷なことなのか。

    ラクス「お二人が、戦わないで済むようになれば、いいですわね」

    ラクスもそんなキラの考えと同じように、この悲しい戦争の行く先を憂いては、瞳を細めていた

  • 51二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 20:54:36

    もしかしてこの後4P?

  • 52二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 21:02:15

    なんというか、このシリーズまとめて本にしてもいいと思うなー

  • 53スレ主24/06/26(水) 08:25:39

    ウィル「……案外、世間は狭いんだな」

    ドアが開き、タンクトップ姿のウィルが顔を出す。

    キラ「ウィル!」
    ラクス「ウィル様!」

    疲れたような表情ではあるが、顔色が戻ったウィルに二人して抱き着く。

    ウィル「さっき気が付いて、クララから連絡が来たからさ。
    キラねぇが居るのはわかるけど、なんで姫さんまでいるわけ?」
    ラクス「心配でしたし、私がウィルと一緒に居たいのですわ。
    いつかはプラントに戻らなければならない身ですから」

    ラクスはウィルに抱きつき、くるくる、上機嫌そうにゆったりと回った。
    まるで踊っているようにも見える。

    ウィル「おい、仮にも婚約者がいる身だろ」
    ラクス「私も、一人の人ですから。心変わり、なんて言うでしょう?」

    ラクスはウィルに顔を近づける。本当に同じ人なのか疑わしいほどに、ラクスから漂う甘い香り。

    ウィル「……とんだ悪女に捕まったみたいだな」

  • 54スレ主24/06/26(水) 18:22:59

    クララ「虫の知らせを受けてきてみれば」


    不機嫌さを隠さない表情で、クララもウィルの部屋にやって来る。


    ウィル「お前もかい」

    クララ「うっさい、キラ相手に何時間もやってるの知ってるのよ

    出した回数だってとんでもないじゃない」

    ウィル「いや、そりゃそうだけどさ」


    腹をくくるしかないと、ウィルは部屋の鍵を閉める。

    後ろではキラとラクスが口元を抑えて赤面する。


    クララ「私だって貴方が好きだから相棒やってるのよ

    きっちり責任取ってもらうわよ」


    体力が持つか心配しつつ、四人は5+dice1d10=10 (10) まぐわうのだった。


    キラを相手にした回数dice5d100=34 29 75 5 73 (216)

    クララを相手にした回数dice5d100=78 77 41 89 12 (297)

    ラクスを相手にした回数dice5d100=18 6 98 91 34 (247)


    なお、ウィルは三人纏めて潰れたカエルにしてから眠るのだった。


    ウィル(スッキリ満足)

  • 55スレ主24/06/26(水) 18:26:19

    15時間ブッ通しはやりすぎだったか。

  • 56スレ主24/06/26(水) 18:38:06

    ナタル『ラクス・クラインをザフトに返す!?』
    ジャック「バジルール少尉!しーっ!しーっ!!」

    その頃、グレートフォックスの船長室では、アークエンジェルと、
    モントゴメリからローに移ったコープマン大佐を交えたプライベートチャンネルの通信が行われていた。
    ジャックが提案した今後の方針に、マリューの横にいたナタルが信じられないような顔つきで頭を抱えた。

    ナタル『し、しかし、彼女はクラインの娘で…』

    そんな彼女の言い分を、ジャックは帽子のツバをいじりながら一睨みして黙らせる。

    ジャック「我々が迎撃したナスカ級は、すでに死に体に等しい。モビルスーツもイージスと、
    ウィルが中破させたシグーの二機程度だろう。しかし、なぜ彼らは撤退せずにこちらについて来てると思う?」

    バーナードの爆発を至近距離から受けたナスカ級は、外から見てもわかるほどの損害を受けていたはずだ。
    加えて、先の戦闘で敵は僚艦二隻と大部分のモビルスーツを失っている。
    にも関わらず、敵は自分たちの後方をぴったりと付いてきてるーーということは。

    マリュー『ーー増援を待っているのですか』

    マリューの言葉に、ジャックは頷いた。
    死に体の船でも、敵さえ観測していれば味方を呼び、挟撃することも追撃することも叶うだろう。

    ジャック「ハルバートン提督の待つ第八艦隊にたどり着く前に、ザフトの増援が来たら厄介な事になる」

    最悪の場合は、ザフトの大軍と第八艦隊との艦隊戦闘に発展しかねない。

    ジャック「だったら、彼らのアイドルである彼女を保護要請のもと、ザフトに送り届ければいい。
    そうなれば、彼らも囚われの姫を助け、ザフトに帰還する大義名分と、
    帰らなければならない理由ができるだろう?帰った後のカバーストーリーは、ザフト側次第だがね」

  • 57スレ主24/06/26(水) 18:38:58

    プラントも一枚岩ではあるまいと、ジャックは考えていた。要人の娘である彼女を連れたまま、
    追撃という愚かな真似をすれば、有力派閥からの批判で、ザフト軍の評判も悪くはなるはずだ。
    それに、敵はまだ現れていない。引き渡しを申し出ても戦闘を強行してくるならば、
    死に体の船を沈めるしかあるまい。

    ナタル『し、しかし、彼女は軍事外交での大きなカードになります!ここでみすみす返還するわけにはーー』
    ジャック「じゃあどうするね?このまま拉致して拷問してザフトを脅すか?」

    ジャックの冷たい眼差しが、ナタルを貫いた。しばらくの沈黙の後、彼は深く息を吐いて改めてナタルを見つめる。

    ジャック「ーー恨み辛みで、この戦争は泥沼化している。そんなことをすれば、火に油を注ぐ事態になりかねん。
    ここは人道的に、彼女をザフトに返し、追ってくるナスカ級を追い払うのが賢明ではないか?」

    たしかに、ある程度の損害に目を瞑れば、死に体の船を沈めることはできるだろう。
    しかし、それでは悪循環を断つことはできない。
    この戦争では第三者の立場であるジャックにとって、その悪循環を断つことが何よりも優先だった。

    コープマン『私も、ジャック船長の意見に賛成だ』

    コープマンも、ジャックと同様に頷く。

    コープマン『我々の戦力は乏しい。できる限り戦闘は避けて、傷を付けずにアークエンジェルを
    第八艦隊へ合流させたい思いはある。それにこの船に、
    プラントの要人の娘が乗ってるとブルーコスモスの連中にバレたら、厄介な事になるのは確かだからな』

    彼もまた、反ブルーコスモス派の人間だ。自分が指揮する船の中で勝手な真似をされたのだから、
    少なからず怒りを覚え、納得もしてないのだろう。

  • 58スレ主24/06/26(水) 18:39:35

    マリュー『私も、ジャック船長とコープマン大佐の意見に賛成です』

    続いてそう言ったのは、マリューだった。そんなマリューをナタルは信じられないような目で見つめてる。

    ナタル『ラミアス艦長!』
    マリュー『今は一刻を争う事態なの。先の戦略を考えるのはわかるけれど、
    ここで私たちが落とされたら元も子もないわ』

    とにかく、今は戦力を温存したまま第八艦隊に合流することが優先だということは、三人の中でも共通の意識だった。

    ムウ『俺も艦長の意見に賛成だ。悪役になるよりは正義の側でありたいのが世の常だしな』

    マリューの隣にいたムウがそう言って締めくくり、三隻の艦長の意思疎通はこれにて終了となった。
    次は、どうやって彼女をザフトに保護させるかーー。

    ジャック「決まりだな。では、作戦を練るとしよう。送り届けるパイロットについてだがーーー」

  • 59スレ主24/06/26(水) 20:13:10

    オリキャラのイラストが欲しいところですね。
    欲を言えばアーウィンも、絵心ないんで

  • 60二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 20:46:44

    運命か自由時代に子供できてるなこりゃ

  • 61二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 22:25:17

    わぁ、見事なハーレムっぷりだぁ…

    手が遅いので直ぐには難しいのと絵柄が少し古め、加えてどちらかと言うと少女漫画寄りですけど
    それでも良ければ、とそっと挙手
    長らくペン握ってなくて映画観て再燃、今更折り掛けた筆拾ったところなので、ここで挙手もおこがましいですが……

  • 62スレ主24/06/27(木) 02:52:30

    >>61

    描いてくださるだけで十分です

  • 63二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 04:16:46

    では…
    オリジナルキャラ。500px×500pxサイズ程度の人物のバストアップで、お引き受けします
    ・服装など画像メーカーで作成されたイメージに寄せる
    ・ダイス振って出た身長などから推測される体格にする
    辺りが一先ずの留意箇所でしょうか

  • 64スレ主24/06/27(木) 08:10:24

    >>63

    はい、お願いします

  • 65スレ主24/06/27(木) 14:42:20

    キラ「私がですか!?」

    今頃キラはウィルの部屋に居ると予想したジャックは
    ウィルの部屋に通信を入れ、作戦会議で決まった内容を伝えた。
    三人の女性と関係を持った甥っ子に呆れながら。

    ジャック『そうだ。全会一致でキラちゃんに決まった。なぁに、安心しろ。ウィルとクララを護衛につける。
    一緒なら不測の事態が起きてもどうにでもなるだろう」

    すると、パイロットスーツに着替えたウィルとクララが頷く。

    ジャック『キラちゃん、君にはザフト艦へアプローチを取って、クライン嬢を丁重に返還する役目を担ってもらう。
    今作戦は、アークエンジェルとグレートフォックスで敢行する。モントゴメリとローのクルーに気取られるなよ?
    奴ら何しでかすか分かったもんじゃないからな』

    ジャックの言葉に、皆、うんうんと頷いた。
    すると、ジャックは帽子を脱ぐと、キラの隣にいたラクスへ、紳士的に頭を下げた。

    ジャック『クライン嬢、我々が責任を持って貴方をお送りいたします』
    ラクス「まぁ、ありがとうございます」

    ラクスもそれに答えるように、無重力の中でスカートの両端を掴んで会釈で返す。

  • 66スレ主24/06/27(木) 22:26:30

    ハロ「マイド、マイド!」
    キラ「しーっ、ハロ」

    手筈通り、開けっ放しにしていた側面のドッキングベイに接続した連絡船から降りたキラとラクスは、
    何も知らない下士官たちが眠っている中、ひっそりとストライクがある格納庫へ向かっていた。

    ラクス「なぜこんなに忍足ですの?」
    ハロ「テヤンデイ!」
    キラ「と、とにかく黙って、一緒に来て下さい。…静かに…」

    シッと口に指を立てるキラに倣って、ラクスも小さく手で口を塞ぎ、もう片方の手でハロを抱えた。
    本当なら、あのまま連絡船でザフトへラクスを渡しに行ければ良かったのだが、あくまで相手は敵。
    もし攻撃を受ければ、連絡船ではひとたまりもない。

    かと言って、アーウィンに乗せるとラクスが発情期かと言わんばかりにウィルに絡む。
    リンドブルムでも良かったが、それはクララが嫌がった。
    そこで消去法的に、敵が反撃してきても応戦できる戦力を持ちながら、
    ラクスを乗せても大丈夫な機体となると、アークエンジェルで鎮座するストライクしか思いつかなかった。

     しばらくラクスと通路を進んでいると、行く先にある食堂に明かりが灯っているのが見えた。
    消灯時間はとっくに過ぎてるはずなのにと思いながら近づいていくと、食堂から二人の話し声が聞こえてきた。

  • 67二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 02:37:53

    取り敢えず習作です。
    現在、他のものを抱え込んでいるの即席になりますが、一先ずはご覧になって頂いた方がいいかなと思い上げさせて貰います。
    それと文章内から受ける印象から、もう少し冷めた目つきの方がそれらしいと思ったので改めて描き直します。
    使って頂いても構いませんが、これはあくまでもこちらの絵柄の雰囲気を見てもらう為のものなので、その辺はご留意下さい。

  • 68二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 11:35:41

    保守をかねて
    少し前に描いていたらくがき置いていきますね

  • 69スレ主24/06/28(金) 12:23:51

    深い深いため息。サイはそのため息の主の話に耳を傾けていた。

    フレイ「ねぇ、サイ…私どうしたらいいんだろ」

    何度目か忘れた同じ言葉に、サイは机にだらしなく頬杖しながら唸る。

    サイ「どうしたらって…」

    そう答えると、その問いを投げかけたフレイが困惑するように顔をしかめた。

    フレイ「だって、パパが言ってることが…昔みたいに、スッて心に入ってこなくなっちゃったんだもん」

    キラとの一件があって、あれからフレイは自分の父と話した。ここまでたどり着く道中で何があったのかを。
    しかし、彼女はあえてラクスのことは口にしなかった。
    当然だろう。もし父にラクスのことを話せば、彼は真っ先に彼女を拘束するに決まっている。
    ただのコーディネーターではなく、プラントの要人の娘となれば、バカでも少し考えればどうなるか分かるものだ。
    その思いを胸に隠して、フレイは極力笑顔を絶やさないように父の言葉に耳を傾けていた。だがーーー。

    フレイ「パパが言ってることが間違ってるように思えて…コーディネーターだって、
    キラやラクスみたいな人もいるのに…そもそも、パパを助けてくれたのはキラたちなのに…」

    そうポツリポツリと呟くフレイの手は目に見えて震えていた。なにが『コーディネーターは危険』だ。
    危険だと非難しているくせに、助けられたお礼の言葉も言えないのかと。

    サイ「フ、フレイ?落ち着いて?」

    フレイの気性の荒さを知っているサイは、今まで見たことがない苛立ちを見せる彼女を宥めようと肩に手を置いたが、全くの無駄だった。フレイはダンっと机を叩いて苛立ちで燃え上がった感情を外に吐き出す。

  • 70スレ主24/06/28(金) 12:25:05

    フレイ「考えたらだんだんムカムカしてきたわ…もうっ、本当になんなのよっ、まったく…!」

    自分自身のためではなく、キラやラクスを思って怒りを露わにするフレイを、
    変わったなーと思う反面、やはり怖いものは怖いと思うサイだった。

    フレイ「あ…?キラ?」
    キラ「え?」

    対するキラは、「ここだ」と見計らって、閉まっていた食堂の扉を横切ろうとしたのだが、
    扉のセンサーが予想外のものをーーー突然迫った球体状の物体を感知して、扉が開いてしまった。

    ハロ「マイド!」
    キラ「げっ!!」

    羽のようなパーツをパタパタとはためかせながら、ハロは元気よく電子音を流しながら食堂の中へと入っていく。
    完全に姿が丸見えになったキラは、今まで出したことがないような声を上げて、その後ろでーーー

    ラクス「あらごきげんよう、フレイさん」

    ノーマルスーツに身を包んだラクスが、呆けたまま彼女を見つめるフレイに手を振っていた。
    あちゃーとキラは手で顔を覆って、二人の反応を窺うように顔を上げた。
    すると、キラの予想通り、サイもフレイも「何やってんだこいつ」と言いたげに顔をしかめている。

    サイ「な、何やってんだ?お前」

    いや、サイに至っては直接そう聞いてきた。フレイも、頭痛を労わるように額に指を添える。

    フレイ「ラクスを、どうするつもり?」

  • 71スレ主24/06/28(金) 12:25:34

    フレイには、なんとなく、キラが今からやろうとしていることの想像はついた。
    自分の父の浅ましい考えを、笑顔の仮面をかぶって聞いていたのだから、その迫り来る魔の手を、
    何もせずに黙って見ているわけはないだろう。特にアルコンガラがキラの味方をしているなら尚更だ。

    キラ「えっと、機密事項で…」

    案の定の答えに、フレイはやっぱりと呆れたようにつぶやく。
    そのやり取りを見ていたサイも、ようやく合点がいったのか、驚いた様子でキラを見た。

    サイ「まさか!」
    キラ「黙って行かせて。ーーフレイのお父さんに気づかれると不味いの。サイ達を巻き込みたくない。…ごめんね」

    サイの声を遮って、キラは真面目な口調で二人にそれだけを伝えた。
    フレイの父を知る二人にとって、キラのこれからの行動に対する感情はあまり良いものではないーーと思っていたが。

    サイ「まぁ…女の子を人質に取るなんて、本来、悪役のやるこったしな」

    サイは少し、間をおいてから「手伝うよ」と、キラに笑顔を向けた。
    フレイも、キラの予想とは裏腹に優しい手でキラの肩にそっと手を置いて、悲しそうに目を細めた。

  • 72スレ主24/06/28(金) 12:25:56

    フレイ「ごめんね、キラ。アンタを庇ってあげられなくて」

    フレイの言葉は、まっすぐだった。それを聞いたキラの胸の中に、熱がともってくる。
    コーディネーターであることに、自分とサイ達はどこかが確実に違うということに、
    どこか後ろ指を指されている感覚が、無くなったような気がした。
    フレイはそれからいつものような花を咲かせたような笑顔に変わって、キラの背中をバンッと叩いた。

    フレイ「さぁっ!さっさとラクスを送るわよ!
    サイとも話はしていたんだけどーーやっぱり、こんなの間違ってるもん」

    キラ「サイ…フレイ…ありがとう」

    そう言ってくれる二人に、キラはただ深く頭を下げて感謝した。
    頭を下げてからしばらくそのままだったのは、瞳から溢れたものを抑えるのに必死だったからだ。

    そんな様子を後ろから見ていたラクスは、ただ優しく、その理想のあり方に美しさと尊さを感じ、微笑むのだった。

  • 73スレ主24/06/28(金) 22:12:22

    格納庫に着いてからは、先に準備をしていたマードック指揮の下、
    オフラインでのストライクの発進準備が進められていく。
    キラもヘルメットを被って出撃準備を整えている中で、
    サイのエスコートを受けてラクスがストライクのコクピットへ乗り込んだ。

    ラクス「ありがとう」

    手を離して、ラクスはサイに感謝の言葉を送る。
    そのラクスの容姿に魅入られたのか、サイはしばらく惚けてからハッと我に帰った。

    サイ「あ…いえ、痛っ!!」

    突然跳ね上がったサイの腰あたりを、フレイがつねっている様子が見えて、ラクスは小さく笑った。

    ラクス「またお会いしましょうね。フレイさん、サイ様」
    サイ「はっはっは…それはどうかな?」

    腰あたりをさすりながら困ったように笑うサイに、ラクスも「まぁ」と言って笑顔を返した。
    すると、彼女は思い出したかのように肩にかけていたバッグの口を上げて、一枚の写真をフレイに差し出す。

    ラクス「フレイさんに、これを」
    フレイ「何よ、これ」
    ラクス「私と貴女の思い出ですよ」

  • 74スレ主24/06/28(金) 22:12:49

    フレイが受け取って見ると、それは最初にフレイとラクスがグレートフォックスに乗艦したときの写真で、
    自由に歌うラクスに振り回されるフレイといった様子だった。
    ラクスが言うには、アルマが隠れて写真を撮っていたらしい。ちなみに他の写真は、
    ジャック達によって押収、処分されることとなった。

    フレイ「ありがとう、大事にするわ」

    フレイは、その写真とラクスを交互に見てから彼女に微笑む。

    サイ「キラ、ちゃんと帰って来るよな?」
    キラ「うん、帰ってくるよ」

    そう言って、キラはサイは挨拶を交わす。その様子を、フレイはどこか羨ましそうに眺めていた。
    すると、フレイの体が突如としてひきよせられた。視線を動かす前に、フレイの頬に柔らかい何かが当たる。
    見てみれば、バイザーが上がったノーマルスーツに包まれたラクスが笑みを浮かべている。

    フレイ「ら、ラクス!?」

    すぐに離れようとしたが、頭をラクスのノーマルスーツにぶつけてしまって、コツンと音が響く。
    恥ずかしさからか、フレイの頬は真っ赤に染まっていた。

    ラクス「私たちも、また会いましょう。今度もまた、友達として」

    そんなフレイに、ラクスは改めて握手の手を差し出した。少しだけ惚けていたフレイは、
    気を取り直すと差し出された手をしっかりと握り返す。今度は純粋に、解り合うために。

  • 75スレ主24/06/28(金) 22:13:00

    フレイ「うんーー約束するわ、ラクス」
    ラクス「さようなら、ありがとう…」

    手が離れ、ストライクのハッチが閉まっていく。
    その間も、ラクスはフレイとサイが見えなくなるまで手を振り続けていた。

    マードック「おい!さっさとしろ!モントゴメリに気づかれるぞ!」

    マードックの怒声が響き渡り、ストライクはゆっくりとエアロックされたカタパルトゲージに入っていく。
    サイとフレイは、安全な通路まで下がってからも、ストライクの行く先を見つめていた。

    サイ「ちゃんと帰ってこいよな!!俺達んところに!」

    サイが叫んだ。聞こえているかもわからない。しかし、それでもサイは放った。心が思う、キラへの言葉を。

    マードック「ハッチ開放すっぞ!!」
    サイ「きっとだぞ!キラ!俺はお前を信じてる!」

    真空の海へと飛び出していくストライクを、サイとフレイはただ見送るのだった。

  • 76スレ主24/06/28(金) 22:40:24

    アルマとラドルを活用できてないな。
    今後を考えるか

  • 77二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 09:34:31

    きっと他人から押し付けられた正しさより、自分自身で見付けた正しさの方が価値がある
    今はまだ理不尽に振り回されるばかりだろうけれども…

  • 78スレ主24/06/29(土) 09:55:13

    モントゴメリの第2管制室では、艦長であるコープマンからブリッジを降ろされたブルーコスモス派の士官達が、
    アークエンジェルとグレートフォックスの動向に目を光らせていた。
    コープマンもそうなることを予想していたし、案の定、彼らはバーフォードたちが講じた策に反応を示した。

    「なんだ、どうした?」

    ブルーコスモス派の中でも1番の地位を持つ大尉が、反応を検知したオペレーターに問いかける。

    「ストライク!何をしている!?アークエンジェル!応答しろ!」
    「事前通告なしに、ストライクが発艦を…あっ、アーウィンとリンドブルムも発艦するようです!!」
    「なんだと…?」

    ちなみに、彼らの発する通信に軍事的な拘束力は一切ないと、この作戦を立案した時にコープマンが宣言している。
    ブルーコスモスとは言え、彼らは軍属。そういった権限を許可するのも、
    行使するのもコープマンの一存であった故だ。彼が関知しない命令など、今はなんの役にも立たない。
    彼らがアークエンジェルに通信を試みる中、コープマンは締め切った艦長室でジャックから教わった紅茶の作り方を
    練習するのだった。

  • 79スレ主24/06/29(土) 18:15:22

    発進したストライクが、慣性飛行に入ろうとしていたウィル達へ合流した。
    キラの映像通信が入ると、ウィルとクララは、キラと、彼の膝の上に乗るラクスへ敬礼をする。

    ウィル「キラねぇ、時間通りだな」
    キラ「ええ、友達が手伝ってくれたから」

    嬉しそうに言うキラに、ウィルも自然と笑顔になる。

    ウィル「そうか、良かったな」

    ストラーダ形態に変形したアーウィンにストライクが跨ると、
    ウィルはゆっくりとスラスター出力を上げていく。

    ウィル「しっかり掴まってろ、飛ばすぜ」
    ハロ「オマエモナー」

  • 80スレ主24/06/29(土) 21:50:35

    『足つき及びdice1d3=2 (2) からの、モビルスーツの発進を確認!』


    1.白狐

    2.白鷲

    3.白鯨

     

    『ちぃ!やはり潰しにきたか!対空迎撃用意!』

    『第一戦闘配備発令!モビルスーツ搭乗員は、直ちに発進準備!繰り返す!モビルスーツ搭乗員は…』


    徐々に見えてきたナスカ級から、速力を落として一定の距離を取ったキラ達は、作戦の準備を始めた。


    ウィル「よーし、キラねぇ!準備オーケーだ!」


    アルコンガラのMSに搭載されている通信機は特殊なもので、設定しなければ範囲内のすべての

    通信を傍受することができる。おかげでナスカ級の内部の声も聞こえてきた。

    送信もできるので今回の作戦にはもってこいだった。


    クララ「あとは頼むわよ、キラ!」


    クララの声にキラは頷いて、ストライクの全チャンネルをオープンにした。


    キラ「こちら地球連合軍、アークエンジェル所属のモビルスーツ、ストライク!」


    キラのその一声に、騒めき立っていたナスカ級の声が消えた。


    キラ「我々は今、プラント最高評議会議長、シーゲル・クラインの娘であるラクス・クラインを保護している!」

    『ーーなにぃ!?』


    誰が言ったのかわからなかったが、その言葉を皮切りに、ナスカ級の声が混乱した様相を見せ始めていた。

    しかし、キラには聞こえるわけもなく、そのまま言葉を続けていく。

  • 81スレ主24/06/29(土) 21:50:50

    キラ「我々は彼女の保護を貴艦へ要請する!応じる場合はナスカ級は艦を停止して下さい!
    それと…イージスのパイロットが受け取りに来ることが条件だ。この条件が破られた場合、
    我々は…彼女に相応の対応をするつもりだ」

    そんな気はないのにな、と俺は肩をすくめ、クララもわかってると言わんばかりに肩をすくめた。

    『どういうつもりだ、足つきめ!』
    アスラン『隊長…行かせて下さい…』

    喚く声を遮って、若い男の声がそう言う。そうか、この声がアスランか。
    しかし、他の声がアスランの申し出を許そうとはしなかった。

    アデス『敵の真意がまだ分からん!本当にラクス様が乗っているかどうかも…罠かもしれないんだぞ!?』
    アスラン『隊長!』

    隊長ーーその言葉を聞いて、俺は固唾を飲んだ。しばらくの沈黙の後に、予想していた声が聞こえる。

    クルーゼ『分かった。許可する』

    透き通るように聞こえた声に、俺は無意識に操縦桿を握る手に力を込めた。

  • 82スレ主24/06/29(土) 22:10:42

    アデス「よろしいのですか?」


    さっきまで喚いていたナスカ級、ヴェサリウスの艦長であるアデスは部下の進言を認めたクルーゼに問いかけた。

    クルーゼはいつものように冷静な表情と声で、アデスに答えた。


    クルーゼ「来たのがストライク1機なら疑ったがね。周りを見てみろ。

    凶鳥とdice1d3=3 (3) がストライクを護衛している。圧倒的有利な状況で

    嘘を言う理由が思いつかなくてね。どうやら本気のようだ」


    1.蒼鴉

    2.蒼雉

    3.蒼梟 


    見てみろ、と言われ、アデスはクルーゼが指差す望遠映像を見つめると、

    ストライクの後方に艦隊を壊滅させた二機が、護衛するように行く末を見守っている。

    逃げる際の足を兼ねているのだろう。

     

  • 83スレ主24/06/29(土) 22:11:43

    アデス「ここで勘ぐって、下手に抵抗すれば…」
    クルーゼ「向こうはこちらを沈めに来るだろうな」

    目の前にいる相当な手練れとして名高いクルーゼでも仕留めきれない凶鳥。
    そこにストライクとさらに強力なMS考えるとーーアデスの背中に嫌な寒気が走った。

    アデス「…一体何なんでしょうか2機は?酷く恐ろしい化け物に見えますよ」

    アデスの本心からの言葉に、クルーゼは満足したように微笑むと、
    出ていったアスランに続くようにブリッジの床を蹴った。

    クルーゼ「ふっ、違いないな。艦を停め、イージスの発艦準備を!私もシグーで出る」
    アデス「隊長も出るのですか?」

    ブリッジを後にしようとするクルーゼの背中にそう問いかけると、彼は振り向きざま、
    わずかに高揚したような表情を見せた。

    クルーゼ「向こうは受け渡し役にアスランを指名してきたんだ。
    なら、護衛役に私が付いていっても差し支えあるまい?」

    凶鳥のパイロットを拝んでみたいしな、クルーゼはそう言い残した。

  • 84スレ主24/06/30(日) 08:23:56

    アルスター「艦長!どういうことなんだ!」

    居留守を決め込むコープマン相手では意味がないと踏んだのか、
    ジョージ・アルスターはアークエンジェルに乗り込んでいた。
    ブリッジにブルーコスモス派の下士官をつれて来たジョージに、マリューもナタルも戸惑った表情を見せていたが、
    アルスターが問い詰めている当人であるジャックは、まるでどこ吹く風のようにうそぶいていた。

    ジャック『さて、なんのことですかな』
    アルスター「とぼけないでもらいたい!クラインの娘がこの艦に乗っていただと!?
    ならば、なぜ返す!彼女は貴重な…」

    そこで、ジャックの鋭い眼差しが気迫をまとってアルスターを射抜いた。
    それはまるで、そこから先のことを言ったらどうなるか、
    という威圧のように思えてしまって、アルスターはぐっと続けようとしていた言葉を飲み込むしかなかった。
    フレイには言った、コーディネーターはコーディネーターらしく、
    隔離して有効利用するといったナチュラル主義者らしい考え。
    普段なら、声を大にして賛同を求めていたのに、今目の前にする男には、
    肩書きも、道理も、なにも通用しないように思えた。

    フレイ「いい加減にして!!」

    ふと、ブリッジの中に人影が飛び込んできた。
    ひらひらした服を着地とともに整えながら、入ってきた彼女は息巻いてアルスターを睨みつける。

    アルスター「フ、フレイ…」

    アルスターは戸惑った。愛娘にここまで怒りを露わにされたことがなかったからだ。
    フレイの隣に立つボーイフレンドのサイも、フレイの怒気に恐れているようだったが、
    アルスターに対して物怖じしている様子はなかった。
    困惑するアルスターに、フレイは勢いと溢れた怒りのまま、生まれて初めて父へ詰め寄った。

  • 85スレ主24/06/30(日) 08:24:33

    フレイ「なんで分からないの!?あの子、私とそんなに変わらないのに、
    コーディネーターだからって誰にでも酷いことをしていいの!?こんなこと、
    間違ってるって思わないの!?そう思わないなら…
    コーディネーターならどうなっても良いっていうなら、私、パパのこと大嫌いになるんだから!!」

    一息で言い切ってから、フレイは肩を荒い息で揺らした。
    彼女にとっても、父への反抗は一大決心だったのだろう。労わるようにサイがフレイの肩に手を置く。
    アルスターは、愛娘の反抗にショックを受けた様子で、
    サイと同じようにフレイに触れようとしたが、彼女は父の手を柔らかく払いのけた。

    フレイ「それに、そんなことしたら今度はストライクがこっちを撃ってくるに決まってるじゃない」

    ラクスはコーディネーターだから、有効に利用したい。そんなことをここで、
    キラにでも言ったら、キラだけではなく、共に出撃しているアルコンガラも敵に回しかねない。
    地球軍が手こずるザフトを打ち倒し続けてきた部隊。その鬼神の如き強さを目の当たりにしてきたクルー全員が、
    彼らが敵に回った時を想像して顔を青ざめさせた。

    ジャック『私達は、ブルーコスモスを敵だと思っているからね』

    トドメと言わんばかりに、ジャックがアルスターに釘を刺したことで、彼の主張は完全に封殺されることになった。

    チャンドラ「ナスカ級、エンジン停止。制動をかけます。イージスとシグーが接近!」

    今自分たちにできることは、この受け渡し交渉が何事もなく終わることを祈ることだけだった。

  • 86スレ主24/06/30(日) 17:33:07

    ストライクの目の前に、ゆっくりと進んでくるイージスが見えた。
    キラはゴクリと息を呑んで、自分の目の前に停止したイージスを見つめる。
    イージスは、武装はしているものの、その銃口をストライクに向けることはなかった。
    おそらく、背後にいる2機のを意識してのことだろう。

    キラ「アスラン…ザラ…?」
    アスラン『…そうだ』

    全周波数に乗せたキラの声に、アスランは硬い声で応じた。 その声に応じて、キラの声も硬く曇る。

    キラ「コックピットを開けて!」

    キラの指示に従って、イージスはコクピットを開いた。シートから身を乗り出して、
    赤いヘルメットのパイロットが姿をキラの前に姿をあらわす。キラも、ストライクのコクピットを開いた。
    ヘリオポリスから、はじめてキラとアスランがお互いの姿をその目で認識し合う。

    キラ「話して」

    キラは、アスランと言葉を交わしたい気持ちを押し殺して、膝の上にいるラクスにそう言った。
    彼女はなぜかと首をかしげる。

    キラ「顔が見えないでしょ?ほんとに貴女だってこと、分からせないと」
    ラクス「あ~。そういうことですの。こんにちは、アスラン。お久しぶりですわ」

  • 87スレ主24/06/30(日) 17:33:20

    そう陽気な声で、ラクスはストライクのコクピットからアスランへ手を振って見せた。

    ハロ「テヤンデイ!」

    ついでに、ハロもストライクのコクピットの中で羽をはためかせる。

    アスラン『…確認した』
    キラ「ーー我々は、正式にこの女性の保護をそちらに願う。受け入れるならば、彼女を連れて行け!」

    そう言って、キラは優しくラクスの手を取った。
    彼女はハロと、肩に出会った人々からもらった品々が入ったバッグを持って、ストライクの外へと出る。

    キラ「さぁ…」

    キラの手をゆっくりと離して、ラクスは二人の間を漂っていく。
    しばらくの浮遊のあと、今度はアスランがしっかりとした手でラクスを抱きとめた。

    ラクス『いろいろとありがとう。キラ。アスラン、貴方も』

    音声通信で聞こえる声に、キラは様々な思いを乗せて手を振った。ウィルに、クララ、ジャック、
    最後に手を取り合ってくれたサイとフレイ。全員の別れの思いを、キラは代弁して別れの手を振る。

  • 88二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:57:26

    保守

  • 89スレ主24/07/01(月) 07:17:34

    そんな中でアスランは声を荒らげた。

    アスラン『キラ!お前も一緒に来い!』

    その言葉に、キラはわずかに手を震わせた。アスランのヘルメットに、
    ヴェサリウスの艦長であるアデスからの声が響いたが、アスランは気にせずに通信を切った。
    恥も外聞もない。ただ、アスランは妹同然だった親友と戦いたくない一心でそう叫んだのだ。

    アスラン『コーディネイターのお前が地球軍に居る理由がどこにある!?
    お前は騙されているんだ!地球軍のやつらに!だから!!』
    キラ『…………ごめんね』

    そのアスランの叫びに、キラは顔を俯かせてそう言った。

    アスラン『キラ…?〉

    明らかな拒絶の返答にアスランも唖然とキラを見つめる。

    キラ「……アスラン。無理矢理とか、利用されてる訳じゃない…少なくとも私は自分の意思でMSに乗ってるの」

  • 90スレ主24/07/01(月) 18:20:49

    アスラン『な…!?』

    キラの言葉に目を見開くアスラン。
    コーディネイターであるキラがナチュラルの艦で戦うなんて道理が通らない!
    キラは利用されているだけで、自分からMSに乗っている訳じゃない!
    だから自分達と戦う理由なんてない、自分の手を取ってくれると思っていたアスランの表情が曇る。

    キラ「私も…君とは戦いたくない。でも…あの船には守りたい人達が…友達が居るの!!」

    覚悟を持って顔を上げアスランから目を逸らさない。
    大切な人、守りたい人の為に……その覚悟が今のキラの戦う理由だった。

    キラ「アスラン。あのヘリオポリスには私の様なコーディネイターだって沢山居たんだよ……。
    ねぇ、どうして何の警告もなく攻撃してきたの?」
    アスラン『キラ……?』

    キラの瞳に若干の怒りがあるのをアスランは見逃さず心が騒つく。

    キラ「今は戦争をしていて、アスラン達ザフトがナチュラルと戦っているのも、
    ヘリオポリスでMSを作っていた地球軍が攻め込む理由を作ったのも分かるよ」

  • 91スレ主24/07/01(月) 20:29:40

    戦争なんて遠い世界の、画面の向こうの話だと思っていた……。
    でも、それは違う。世界はラクスの歌の様に優しくはないとキラは思い知った。

    キラ「でも!あのヘリオポリスに住んでいた大多数の人は、唯の民間人だったんだよ!?
    その人達の日常を!命を!ナチュラルもコーディネイターも問わずに奪ったのは、アスラン達ザフトだよ!」
    アスラン『キラ…!』
    キラ「民間人が居る場所を、何の警告も無しにMSで吹き飛ばすのが!民間人が避難したシェルターが
    沢山あるコロニーを、何の躊躇もなくビーム兵器や拠点爆撃兵器で攻撃するのが!ザフトでは正しい事なの!?」

    中立である“ヘリオポリス”で開発された地球軍の新型MS、それを奪う。
    そのことに、アスラン達は何の疑問を抱かなかったし、ナチュラルの民間人のことなど全く気にしていなかった。
    しかし、極秘に地球軍の新型MSを製造していたとはいえ、住民の殆どはそれとは何の関わりもない民間人だ。
    そして民間人の中にキラは居た。そしてヘリオポリスは中立で、ナチュラルもコーディネイターも暮らしている。
    警告もなくコロニーの中で暴れて、コーディネイターの死者が一人も居ないなんて事はない。
    アスラン達は殺したのだ。あの戦闘に巻き込まれた多くの民間人を。ナチュラル、コーディネイター問わずに…

    キラ「“ユニウスセブン”の悲劇があるのに……どうしてプラントのザフトがコロニーを崩壊させたの!?」
    アスラン『あ…!』

    ユニウスセブンの悲劇である血のバレンタインで、アスランの母は死んだ。
    それに怒りを抱いてザフトに入ったのに……!今度は自分達がコロニーを滅ぼしていた。
    他の誰でもない…親友が住んでいたコロニーを!

    キラ「……だから私は君とは行かない。ザフトのアスラン・ザラとは…」
    アスラン『き、キラ…』

    アスランは頭が真っ白になって何も言えずにいた…。
    隣に居るラクスも辛そうにアスランとキラを交互に見つめるしかできない。

  • 92スレ主24/07/01(月) 20:49:22

    キラとアスランの対峙の最中、俺の目の前にはクルーゼが駆るシグーがいた。
    恐らく護衛役で出て来ただろうに、アスランのイージスを放ったらかして、
    このシグーは真っ直ぐ俺の元へやってきたのだ。
    目の前で止まったシグーは、先の戦闘でボロボロのままだった。装甲には亀裂と弾痕が刻まれていて、
    マニピュレーターの指の何本かが欠損していて、特徴的なトサカのようなアンテナも途中で折れている。

    ふと、シグーのコクピットが開いた。
    そこには、シートからすでに出た白いパイロットスーツ姿の男が、開いたコクピットハッチの上に佇んでいる。
    顔の上半分を隠す仮面をつけた男、こいつがラウ・ル・クルーゼか。

    クルーゼ『君と直接話すのは、初めてだったな。凶鳥』

    俺も、コクピットハッチを開いた。本来なら出るべきではないだろうが、
    なんとなくそうしなければならない気がした。

    ウィル「いつからそんな仰々しい二つ名が付いたんだよ、ラウ・ル・クルーゼ」
    クルーゼ『ほう、凶鳥に名を覚えていてもらって光栄だ。こんな幼い子供だとは思わなかったが』
    ウィル「感謝するなら、ムウさんにしとくんだな。あの人から教わった」
    クルーゼ『ほう、ムウが、な』

  • 93スレ主24/07/01(月) 21:06:11

    マスクで隠れた顔は、歓喜に打ち震えていた。
    明らかに、他とは違う何かを感じる。それを上手くは言えなかったが、それだけはハッキリとわかった。
    何故俺を特別扱いしているのかはわからないが、わかる気も無かった。

    クルーゼ『フラれてしまったなアスラン』
    アスラン『……隊長』

    ラクスの受け渡しを確認したクルーゼが、愉快そうに言った。

    ウィル「どうする?目的を果たしたが、ここらでケリを付けるか?」
    クルーゼ『大変魅力的な誘いではあるが、まだその時ではない。
    今戦っても、お互いに不完全燃焼で終わるだけだろう』

    そりゃそうだな。シグーはボロボロだし、ここで戦闘をすれば、こっちが勝つか後でめんどくさくなるかの二択。
    向こうもそれが分かってるのだろう。
    マスクの下で、殺気をみなぎらせながらクルーゼは告げる。

    クルーゼ『次にあった時に、お互いに最高の生死を交わそう。その時を楽しみにしているぞ…凶鳥』

    そう言い残して、シグーのコクピットに戻ろうとしたクルーゼを、俺は呼び止めた。

    ウィル「ウィルだ」

    クルーゼが振り向く。そんな彼を見据えて自分の中の覚悟を決めた。

    ウィル「ウィル・ピラタ。覚えておけ」
    クルーゼ『ウィル…ありきたりな名前だが…確かに覚えたぞ』

    それだけ言って、クルーゼはシグーのハッチを閉じた。

  • 94スレ主24/07/01(月) 21:15:44

    キラ「私は君を撃ちたくない。けど、君が私の大切な人や、友達を傷つけると言うならーー私は、君と戦う。
    大切な人を守るために」

    それは、キラの覚悟だった。
    言い訳を並べて、戦いから逃げようとした自分への決別。
    引き金を引いて、崩れ落ちそうになっていた自分の手を取ってくれたウィル達に応える戦士としての覚悟。
    大切な人、守りたい人のために戦う信念。その全てが、今のキラを形作っている。
    ずっと悩んでいたことが、形を成した瞬間だった。

    アスラン『キラ…』

    アスランは、何も言えなかった。キラが言った戦う意味に対して、アスランは答えられるモノを持っていなかった。
    母がナチュラルに殺され、その憎しみでただがむしゃらにザフトへ入隊し、憎しみのままに戦っている自分にとって、キラの在り方はあまりにも眩しくて、相対した自分がいかに汚れているのかがハッキリとわかってしまった。
    だから、アスランには負け惜しみしか、口に出せなかった。
    憎しみを晴らすために。母の無念と、父の思いに応えるために。それでキラが邪魔をすると言うならーーー。

    アスラン『ならば仕方ない……次に戦うときは…俺がお前を討つ!』

    そんなアスランの言葉に、キラは真っ直ぐな眼差しで答えた。

    キラ「私もよ…アスラン」

    シグーと、イージスはヴェサリウスと共に、キラ達から離れていった。

  • 95スレ主24/07/01(月) 21:32:59

    クルーゼ『あの二人とずいぶん仲がよろしいようでしたなラクス嬢』

    ヴェサリウスへ向かう道中でクルーゼはイージスに通信を言える。会話の相手はラクスだ。

    ラクス『ええ、あの二人とはとても素晴らしい時間を過ごせましたわ。ありがとうございます、クルーゼ隊長』

    礼を言うのは此方だとクルーゼは笑みを強める。
    自信の直感と、ラクスの反応を見て確信を得られた。
    ウィル、キラ、ラクスは恋愛感情で男女の関係を持ったと。

    ラクス『しかし、やはり戦争とは悲しいですね』

    クルーゼが笑い転げそうになるを堪える一方で、恋の話ばかりにうつつを抜かしてばかりではいられないと、
    ラクスは真剣な表情に戻る。キラの叫びは正論だ。裏があるとはいえ、
    ユニウスセブンの悲劇を叫ぶザフトが何の忠告も無しに民間人が多くいるコロニーで戦闘をするなど、
    皮肉にも程がある。

  • 96スレ主24/07/01(月) 21:33:42

    ラクス『何と戦わねばならないのか?戦争とは難しいモノですね』
    アスラン『……………ええ』

    ラクスの声に力なく返すアスランは顔を俯かせる。
    コクピットのスペースと大きなラクスの宇宙服のせいで、ラクスはアスランの顔が見えない。

    クルーゼ(おいおいアスラン…婚約者が一緒なんだ。笑いかけるくらいはしてやりたまえ)

    だが無理もないかと、クルーゼは内心で思う。
    恋愛対象になっていたかもしれない少女にはコテンパンに振られ、
    おまけに婚約者共々別の男に取られてしまったのだから。

    とりあえず帰って一杯やりたい気分だ。報告を手早く済ませ、シャワーを浴び、酒を飲む。
    安物の缶ビールしかなかったと思うがきっと……最高の美酒になる筈だ。

  • 97スレ主24/07/01(月) 22:37:05

    現在のラクスのバストサイズdice1d3=3 (3)


    1.B

    2.C

    3.D



    それと使いそびれた画像



  • 98スレ主24/07/02(火) 07:42:02

    ナタル「180度回頭。減速、更に20%。相対速度合わせ!」

    アークエンジェルと隣接して宇宙空間を飛ぶのは、アガメムノン級宇宙母艦。
    地球連合軍の中で最大級のサイズを誇る宇宙母艦であり、艦船色はブルーに塗装されている。
    地球連合軍艦艇として初めてリニアカタパルトを搭載した艦であり、大量のモビルアーマーを搭載し、
    両舷には艦載機射出用カタパルトを備えているなど、母艦としての能力は高い。
    あくまでモビルアーマーに対してだが。

    艦首両舷にはアークエンジェルにも採用された「ゴットフリートMk.71」を有していて、
    地球軍の中でも母艦としての攻撃能力、防御能力は群を抜いて高い。

    ノイマン「しかし、いいんですかねぇ。メネラオスの横っ面になんか着けて…」

    アークエンジェルの操舵を担うノイマンがそんなことをぼやいた。す
    ると、いつもよりも緊張感の抜けたマリューがその疑問に答えた。

    マリュー「ハルバートン提督が、艦をよく御覧になりたいんでしょう。
    後ほど、自らも御出でになるということだし。閣下こそ、この艦と、Gの開発計画の一番の推進者でしたからね」

  • 99スレ主24/07/02(火) 07:42:13

    一方、アークエンジェルの食堂では交代で休憩に入っていたミリアリアやトールたちが
    テーブルの一角を占領している。

    トール「民間人はこの後、メネラオスに移って、そこでシャトルに乗り換えだってさ。
    あ!でも俺達どうなるんだろ…?」
    ミリアリア「降りられるに決まってるでしょう?こんなの着てたって、私達民間人だもの」

    トールの言葉に、ミリアリアはやれやれといった風に答えた。

    ラクス・クラインを返還してから第八艦隊に合流するまで、ザフトの目立った攻撃は行われなかった。
    はるか後方にローラシア級が、こちらの動きをトレースしていたようだが、
    別段攻撃を仕掛けてくる気配もなく、嫌な沈黙を守っている。

    しかし、第八艦隊は大きな艦隊だ。アガメムノン級のメネラオスを旗艦として、
    ネルソン級のモントゴメリ、カサンドロス、プトレマイオス。ドレイク級の
    ローと、加えて三隻から構成されている。

    加えて数多くの小隊がメネラオスに収容されているのだから、
    ザフト側も迂闊に手は出してこないだろうと、第八艦隊の誰もが楽観視していた。
    アークエンジェルとグレートフォックス、モントゴメリとローを除いて。

  • 100二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 14:34:10

    度々すみません、経過報告です。
    だいたいのラフ画出来たので1枚に纏めて来ました。実寸は各々もっと大きいです。
    小物や服など細部はこの後詰めるので本当にだいたいです、あくまでも参考程度で。
    取り敢えず、まだある程度は変更利くのでツッコミあったら今の内にお願いします。
    あと、アニメ塗り寄りの方がいいですかね?

  • 101スレ主24/07/02(火) 15:51:41

    >>100

    アルマは一体レンズ型のゴーグルとヘッドセットが一体になったHMD、

    ジャックは海軍帽と海軍制服(黒に近いグレー)を標準装備しています。

    アルコンガラの部隊紋章は[掴みかかろうとする隼]です


    塗装はアニメ寄りでお願いします

  • 102スレ主24/07/02(火) 16:10:39

    >>100

    後服装ですが、パイロットスーツは[マクロスF]の一般パイロット用がイメージです。

    ウィルが白メインでライトパープル、クララがダークブルーとスカイブルーのツートンカラー。

    アルマはオレンジとホワイトグレー、ラドルは初代ガンダムのトリコロールカラーです。


    私服は、ウィルはシンが着ていた物を暗色メインにしたもの(ズボンは絶対黒)

    ジャックはビジネススーツや燕尾服など、必ず礼服。

    クララはデート等特別な事情が無い限りズボンスタイル。

    アルマはアスランの私服を参考。

    ラドルは[焼き椎茸に醤油]などと変な文章が書かれたTシャツを愛用しています。

  • 103二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 16:32:58

    >>102

    有難うございます、色関係等の指定は助かります。

    (完全丸投げだったにも関わらず苦情来た事があるので)

    この後細部を詰めた後に線画の清書へと工程を進めて行きますが、塗りに入る前に経過報告は必要ですか?

  • 104スレ主24/07/02(火) 17:00:36

    >>103

    そこまでは必要ありません

  • 105スレ主24/07/02(火) 19:02:19

    マードック「艦隊と合流したってのに!」

    その頃のアークエンジェルのハンガーは、まさに戦場だった。
    マードック筆頭のアークエンジェルに所属する整備班に加えて、アルマ筆頭のアルコンガラメンバーが、
    忙しなくハンガーの中を行き来している。飛び交う声は、もはや怒声に近い。

    ウィル「キラねぇ!8番と6番の電子工具と融着セット!あと補強材とテープを!
    あぁ、あと結束バンドと軟化材も!!大至急!!」
    キラ「う、うん!」

    ウィルとキラもペアとなって、次々と搬入されてくるメビウスやストライクの整備に動き回っていた。
    モビルスーツとは言え、それは電子部品の塊だ。ユニット化されてるとは言え、
    それを伝える配線が一本でもダメになれば、ストライクは単なる鉄の塊ーースクラップと化す。

    モビルスーツに不慣れなマードックたちと共に、モルゲンレーテから持ち出され、
    アークエンジェルに残されたストライクの僅かな資料を元に、装甲をバラしては機材の確認、
    機材をバラしてはユニットの確認、ユニットをバラしたら配線の確認と、やることは山のようにある。

    最初にそれをやったときは、最終確認がまだだったのか、それとも初めて作るモビルスーツに不慣れだったのか、
    重要な配線類も仮止めで固定されていて、外したマードックとウィルは冷や汗を流したという。

  • 106スレ主24/07/02(火) 19:02:47

    「この排熱材の置き方したの誰だぁ!貴重な資源を乱雑に置くんじゃあない!!」
    「弾薬と推進剤は入れとけ!!何があるかわからんからな!!」
    「装甲は6番から付けてくぞ!!23番と30番は後だ!!」
    「とにかく人手だ!人手!あと飯!!飯をもってこい!!」

    ウィル達とは向かい側のハンガーでは、ガンバレルストライクとグレーフレームの修復。
    鹵獲ジン(ストライクダガーのカラーに塗装されてる)や搬入されたメビウスの整備作業が行われていた。
    なんだかんだ言って、デブリベルトで入手した資材には限りがある。
    ほぼほったらかしだったのを、アルマの指揮のもと突貫工事でOS書き換えや
    連合系武装を使用できるようにする改修が行われていた。

    ハンガーの端っこでは、作業員達の手伝いのために、
    サイやフレイが休憩している作業員に簡単な食事と飲み物を配り歩いている。

    キラ「なんでこんな急がなきゃならないの!?」

    目が回りそうな状況にキラが悲鳴のように、ストライクの装甲の下に潜り込むウィルに問いかけた。
    すると、メビウス用のコンテナ搬入作業に指示を飛ばしていたマードックが大声で答えた。

    マードック「艦隊からの補給物資もあるし、備品調整もある!
    とにかく、メビウスの備品類はこっち!それはそっち!あれは16番ブースに運べ!!」
    ウィル「不安なんだよ!壊れたままだと!!」
    ムウ「第8艦隊っつったって、パイロットはひよっこ揃いさ!なんかあった時には、俺達が出れねぇとな!」

    そんな訳でグレートフォックスの自動整備システムで対応できるアルコンガラのMSはともかく、
    それが使えない他の機体は必要な機材を持ち込んでアークエンジェルでの作業を余儀なくされていたのだ。

  • 107スレ主24/07/02(火) 19:03:13

    そんな嵐のような激務の中で、キラとウィルはある視線を感じた。感覚に従って視線を追うと、
    自分達に向かって手招きをする人影を見つけた。

    キラ「ラミアス艦長…!?」
    ムウ「あらら、こんなところへ」

    ガンバレルストライクのセッティングを終えたムウが、ウィル達に近づいていくマリューを見て呟いた。
    無重力の中を緩やかに進むマリューをキラは優しく受け止めた。

    マリュー「ごめんなさいね。ちょっと、貴方達と話したくて…」

  • 108スレ主24/07/02(火) 21:27:10

    アークエンジェル展望室。
    クララやフレイに自分の心の内を打ち明けた場所に、キラはウィル、マリューと三人で訪れていた。

    マリュー「ごめんなさい、キラさん、ウィル君。私自身、余裕が無くて、
    貴方達とゆっくり話す機会を作れなかったから。その…一度、ちゃんとお礼を言いたかったの」
    キラ「え?」

    戸惑うような声を上げるキラに、マリューは心からの感謝と謝罪を込めて頭を下げた。

    マリュー「貴方達には本当に大変な思いをさせて、ほんと、ここまでありがとう」

    いろいろ無理言って、頑張ってもらって、感謝してるわ、
    とマリューはいつもの緊迫した表情とは違った穏やかで優しい笑顔をキラ達に向けた。

    キラ「いや、そんな…艦長…」
    ウィル「俺は好きにやっただけだ」

    ウィルは澄まし顔で答える横で、キラも戸惑いつつマリューの優しさを素直に感じることができた。
    自分で戦うことに覚悟を決めたから余裕があるのか、
    マリューの感謝の言葉を何の疑いもなく受け取ることができたのだ。

  • 109スレ主24/07/02(火) 21:27:23

    ストライクの事を知ったとき、アークエンジェルで戦ってほしいといったとき、マリューはいつも苦しげで、
    悲しげな表情を浮かべていた事をキラは今になって思い出す。
    本当の彼女は、今目の前にいるような、優しい女性なのだろう。

    マリュー「みんな貴方達には感謝してるのよ?」

    ブリッジのクルーに、マードックさんや整備班のみんなに、フラガ大尉に、艦を動かす下士官もみんな。
    そして私もよ?とマリューは優しく笑って、展望室から第八艦隊の船の尾が引く光を眺めた。

    そして、少しの沈黙の後、彼女はまた苦しそうな声で、キラ達に問う。

    マリュー「二人は、本当に残るの?アークエンジェルにーー」

  • 110スレ主24/07/03(水) 08:51:12

    キラやリークたちによって何とか片付いたアークエンジェルの2番ドックには、
    メネラオスから発進した移送用のランチが着艦していた。

    デュエイン・ハルバートン提督。

    彼がアークエンジェルにやってきたのはつい先ほどのことだ。

    ハルバートン「ヘリオポリス崩壊の知らせを受けた時は、もう駄目かと思ったぞ。
    それがここで、君達と会えるとは…」
    マリュー「ありがとうございます!お久しぶりです、閣下!」

    クルー総出で出迎える中、ハルバートン提督は険しい航海をしてきたアークエンジェルのクルーや、
    アルコンガラの面々を労わるように見渡してから、自分の前に出て敬礼をするマリューの手を優しく握った。

    ハルバートン「先も戦闘中との報告を受けて、気を揉んだ。大丈夫か?」

    ハルバートン提督の言葉に、マリューは目尻に涙を溜めながら頷いて答える。
    すると、ほかの乗組員の中から、何名かが前に出て敬礼を打った。

    ナタル「ナタル・バジルール少尉であります!」
    ムウ「第7機動艦隊、メビウスライダー隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉であります」
    ウィル「アルコンガラ所属のウィル・ピラタです」
    クララ「同じくクララ・ソシオです」
    アルマ「同じくアルマ・アルティです」
    ラドル「同じくラドル・ダガです」
    ジャック「アルコンガラリーダー、グレートフォックス船長、ジェームズ・ピラタです」

    敬礼し名を述べた者から順に、ハルバートン提督は固く握手を交わしていく。

    ハルバートン「報告は聞いてるよアルコンガラ諸君。君たちが居てくれて幸いだったな」

  • 111スレ主24/07/03(水) 08:51:23

    その言葉に、ジャックは帽子を脱いで頭を下げた。
    するとハルバートン提督は乗組員たちの一角にいるサイやトールたちを見た。

    ハルバートン「そして彼らが…」
    マリュー「はい、艦を手伝ってくれました、ヘリオポリスの学生達です」

    おお、そうかとハルバートン提督は笑顔でサイたちとも握手を交わした。
    その笑顔には軍人らしい強張った気配も、作り物のような張り付いた雰囲気もなく、
    心から彼らに感謝をしているような、そんな笑顔だった。

    ハルバートン「君達の御家族の消息も確認してきたぞ。皆さん、御無事だ!
    とんでもない状況の中、よく頑張ってくれたなぁ。地球連合軍を代表して礼を言う」

    まくし立てるようにハルバートン提督が学生グループに声をかけていくが、
    提督の側近であるホフマンが耳打ちするように声をかけた。

    ホフマン「閣下、お時間があまり…」
    ハルバートン「うむ。後でまた君達ともゆっくりと話がしたいものだなぁ」

    そう言って笑顔で挨拶を交わして、ハルバートン提督はマリューやナタル、ジャックと共にハンガーを後にした。

  • 112スレ主24/07/03(水) 18:19:15

    アデス「ツィーグラーとガモフ、合流しました」

    第八艦隊から遥か後方。アークエンジェルをトレースしていたローラシア級ガモフに、同じくツィーグラー。
    そして、クルーゼが指揮を執るナスカ級のヴェサリウスが集結していた。

    クルーゼ「発見されてはいないな?」
    クルーゼの言葉に、ヴェサリウス艦長のアデス が頷く。こちらとしては、捕捉できるギリギリの位置で
    合流したので、第八艦隊やアークエンジェルに発見されることはまず無いと考えていいだろう。

    アデス「敵艦隊は、だいぶ降りていますね」

    そう言いながら、二人は軌道計算をした第八艦隊の予想航路図を見ながら唸る。

    クルーゼ「月本部へ向かうものと思っていたが…奴等足つきをそのまま地球に降ろすつもりか」
    アデス「降下目標はアラスカですか」

    地球連合軍統合最高司令部がアラスカ。地球軍虎の子の技術である
    アークエンジェルとG兵器の生き残りをそこに運び込むことは、一種の道理でもある。

    クルーゼ「なんとかこっちの庭に居るうちに沈めたいものだが…どうかな?」

    不敵な笑みを浮かべるクルーゼに、アデスは現在こちら側が保有する手札を確認するように答える。

    アデス「ツィーグラーにジンが6機、こちらに〝隊長のモビルスーツ〟と、
    イージスを含めて5機、ガモフも、デュエル、バスター、ブリッツは出られます」

    抜かりはありませんとは、アデスは続けなかった。ラクス・クラインをプラントに送る中で、
    ガモフの戦力でアークエンジェルに奇襲をかけることも考えたが、
    相手は小規模ながらも艦隊を編成できるほどだ。しかも守りに立つのはG兵器と、白鷲部隊。

  • 113スレ主24/07/03(水) 18:20:16

    迂闊に手を出せば、どう転ぶか判断が付かない以上、戦力を十分に補充し、

    機を捉えた奇襲で持てるカードを切り、総力戦を仕掛けなければ落とせないと、クルーゼもアデスも判断していた。


    アデス「総勢2+dice1d5=3 (3) 隻のマッカラン艦隊もまもなく合流します」 

    クルーゼ「盤石な布陣だな。イザークたちに耐え忍んで貰った甲斐もあったというものか…」

    アデス「存分に暴れさせるとしましょう。凶鳥との決着も」


    これまで飲まされた煮え湯を倍返しにすると言わんばかりに、アデスの目は鋭くなっていた。

    クルーゼも当然だなとだけ答えて、ブリッジを出た。

    プラントで知人に無理を言って用意させたモビルスーツ。

    現行の標準機では、あの純白の凶鳥に追いすがり、追い抜くことはできないとクルーゼは確信している。

    そのモビルスーツとのフィッティングを終わらせるために、クルーゼはハンガーに向かっていた。


    クルーゼ「ウィル、約束の時だ。決着をつけるとしよう」


    そう呟き、歓喜で待ちきれないと悦に浸った笑みを浮かべながらーー。

  • 114スレ主24/07/03(水) 20:09:53

    ヴェサリウスの私室の中で、アスランは寝転がりながらラクスを送り届けた日々を思い返していたーーー。

    ラクス「何か?アスラン?」

    連合軍から引き渡された時に持っていたカバンから取り出した端末映像を眺めているラクスが、
    同じく後ろから覗こうとしていたアスランへ振り返りながら微笑んだ。
    その微笑みにアスランは息を呑む。

    アスラン「あっ…いえぇ…あ…何を見てるのかと思いまして……
    その…人質にされたりと、いろいろありましたから…」
    ラクス「私は元気ですわ。あちらの船でも、皆さんや、貴方のお友達が良くしてくださいましたし」

    見てくださいなと、ラクスが差し出した端末をアスランは眺めた。

    地球軍の制服をきた何人かがラクスたちと話に花を咲かせる映像。
    白いメッシュが入った茶髪の少年がギターを手にラクスと即席のセッションで歌を披露している様子や、
    食堂で小さなライブが始まっている様子が映っていたり。
    帽子を被った壮齢の男性がラクスに食事を振舞ったり。
    ノーマルスーツを着たラクスが、甲板で船外作業を手伝ったりと、色々な映像が流れていた。

    その中にはキラもいて、何人かの乗組員とじゃれ合ったり、
    白い髪をした少年と仲睦まじい様子も映っている。

    ラクス「キラ様はとても優しい方ですのね。そして、とても強い方」

    その映像を見て、ラクスの言葉を聞いて、アスランは固く拳を握りしめた。
    白髪の少年を見て、ラクスが頬を朱に染めたことにも気付かずに。

  • 115スレ主24/07/03(水) 20:10:37

    アスラン「あいつはバカです!軍人じゃないって言ってたくせに…まだあんなものに…
    あいつは利用されてるだけなんだ!友達とかなんとか…あいつの両親は、ナチュラルだから…だから…」
    ラクス「貴方と戦いたくないと、おっしゃっていましたわ」

    気がつくと、ラクスは悲しそうな目をしてアスランを見ていた。
    その目を見ていると今まで押し殺していた感情が溢れ出し、アスランは堪らずに心の縁から溢れた思いを口にする。

    アスラン「僕だってそうです!誰があいつと…」

    戦いたいと思うものかーー。そこで、アスランはキラの言葉を頭の中で反復させた。
    自分の大切な人を傷つけると言うならーー。アスランは、すでに大事な母をナチュラルに殺されていた。
    その死の苦しみからも、苦難からも、立ち直れていない自分がいる。
    その弱さを、自分はザフトの赤服で覆い隠しているのではないかーー?

    アスラン「失礼しました。では私はこれで」

    ハッと意識を切り替えて、アスランはラクスに敬礼を向けた。

    ラクス「辛そうなお顔ばかりですのね。この頃の貴方は」

    扉から出る直前に言われた言葉を今でも覚えている。そして返した言葉も。

    アスラン「ニコニコ笑って戦争は出来ませんよ」

    笑って戦争をするなんて、そんなもの狂人の考えだと思ってアスランは部屋を後にした。
    ラクスは悲しげに目を伏せる。ニコニコ笑って戦争をしてほしいなんて、思っていない。
    できることなら、笑顔で、あの船の乗組員たちのようにーー
    ナチュラルもコーディネーターも分け隔てなくいられる世界を、ラクスはアスランに願って欲しかった。

  • 116スレ主24/07/04(木) 05:17:45

    アークエンジェルの艦長室に入った四人は、それぞれの立ち位置に立ち、
    今後の方針をどうするかを話し合うことになった。

    ホフマン「しかし、五期の内四機は強奪され、ヘリオポリスの被害…ひどい結果ですね」
    ハルバートン「説教は後にしろ、ホフマン。彼女らがストライクとこの艦だけでも守ったことは、
    いずれ必ず、我ら地球軍の利となる」

    ハルバートン提督の言葉に、反ブルーコスモス主義とは一線を画したホフマンは、眉を釣り上げる。

    ホフマン「しかし、アラスカはそうは思ってないようですが」

    ホフマンの指摘に、ハルバートンは簡素な造りの机を拳で叩いて怒りを露わにした。

    ハルバートン「奴等に宇宙での戦いの何が分かる!ラミアス大尉は私の意志を理解してくれていたのだ。
    問題にせねばならぬことは、何もない」

    第一、地球のアラスカ基地の地下で秘密裏に製造すれば良かったものを、
    モビルスーツ否定派の一声で宇宙の辺境、ヘリオポリスに追いやられた。
    今回の事件の大本の責任は地球に踏ん反り返る上層部にある。それにハルバートン提督にも含む思いはあった。
    G兵器の情報漏洩は、単にザフトに察知されたわけではなく、
    地球軍の上層部の誰かが流したのかもしれないという疑いがある。

  • 117スレ主24/07/04(木) 05:18:10

    ホフマン「ストライクのパイロットであるコーディネイターの子供の件は…これも不問ですかな?」

    報告書を眺めるホフマンの目には、僅かにだが疑いと非難の色があった。
    その言葉に真っ先に反応したのはマリューだった。

    「キラ・ヤマトは、友人達を守りたい。ただその一心でストライクに乗ってくれたのです。
    我々は彼女の力なくば、ここまで来ることは出来なかったでしょう。ですが…成り行きとはいえ、
    自分の同胞達と戦わねばならなくなったことに、非常に苦しんでいました」

    マリューの記憶にあるキラは、いつも悲しげな眼差しをしていた。ウィルや、
    アルコンガラの交流が無ければ、その瞳はもっと荒んだものになっていたのかもしれない。
    だから、マリューは今自分にできることを進言した。

    マリュー「誠実で優しい子です。彼には、信頼で応えるべき、と私は考えます」
    ホフマン「しかし…」
    ジャック「軍規については、我々が保証しましょう」

  • 118スレ主24/07/04(木) 05:18:39

    マリューの言葉に渋るホフマンへ、援護射撃を買って出たのはジャックだった。
    帽子を被り、鋭い眼差しでホフマンを見つめる。

    ジャック「彼女は、第八艦隊と合流するまでこちらの艦で生活しておりました。理由は言わずともわかりますな?」

    ジャックの言葉に、ホフマンは黙るしか無かった。彼がいう理由とは、
    モントゴメリに乗艦していたブルーコスモス派の士官たちのことだ。彼らが指示系統に従わず、
    勝手な行動をしたがために、キラをクラックスで保護することになったことは、
    彼が手に持つ報告書にもしっかりと記載されている。

    ジャック「彼は幾度となく我々を危機から救ってくれました。そして仲間としても重要な存在になっています」
    ハルバートン「彼女はーーキラ・ヤマトくんは船に残ると?」

    ハルバートン提督の言葉に、ジャックは静かに頷いた。

    ジャック「私にはそう告げました。ラミアス艦長にも。アルコンガラの一員として、ですがね」

    ジャックの言葉に、ハルバートン提督は深く息を落として、背もたれに体を預けて虚空を見上げた。

    ハルバートン「既にザフトに4機渡っているのだ。今更機密もあるまい。
    となるなら、君にもアークエンジェルと旅路を共にして貰わねばならないな」

    旅路を共にーー?その言葉に、マリューもジャックも疑問を覚えた。
    こちらの予想としては、月本部に合流して任務は終わりだと思っていたのだから。

    ジャック「どういうことでしょうか?ハルバートン提督」

    ハルバートン提督は体を起こすとしっかりとした眼差しで二人の艦長を見据えた。

    ハルバートン「この後、アークエンジェルは、現状の人員編成のまま、アラスカ本部に降りてもらうことになる」

  • 119二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 07:50:18

    保守

  • 120スレ主24/07/04(木) 09:33:50

    ハルバートン「残念ながら、今の我々にはもう、アークエンジェルに割ける人員はないのだ」

    ハルバートン提督は語った。

    今の地球軍で宇宙に属する者たちの窮地。膠着状態であった戦況は、徐々にだがザフト優勢で事が進んでいる。
    地球軍の宇宙艦隊とは言え、アラスカに本拠地を置くブルーコスモス派や、
    ナチュラル主義者に体良く宇宙に放り出された者も多いのが事実である。
    しかも、肝心の地球本部は、地上の戦闘に躍起になって宇宙への兵站は細るばかり。
    頼りのユーラシアが有するアルテミスの部隊も、自軍の要塞に引きこもって当てにならないときた。

    ハルバートン「ヘリオポリスがザフトに制圧された今、アークエンジェルとGは、
    その全てのデータを持って、なんとしてもアラスカへ降りねばならん」

    残されたモルゲンレーテの設備や機材も、突然の災難でデータ消去もできずにザフトに接収されたに違いない。
    プラントがヘリオポリスにあったモルゲンレーテのことに何一つ言及しないのがその証拠だ。
    自分たちの持ち場である宇宙を飛び越え、秘密計画を宇宙の隅に追いやった地球本部。
    またプラントは機体とデータを奪った後、事を荒立てぬよう黙っているこの状況。
    ハルバートンにはそれらが酷く苛立たしく思えた。

    ハルバートン「G計画の開発は、なんとしても軌道に乗せねばならん!
    ザフトは次々と新しい機体を投入してくるのだぞ?なのに、
    利権絡みで役にも立たんことばかりに予算を注ぎ込むバカな連中は、戦場でどれほどの兵が死んでいるかを、
    数字でしか知らん!」

    目先の金や利権と引き換えに、戦場では家族や友人、
    地球のために戦う若い兵が次々と死んでいることが、ハルバートン提督には我慢ならなかった。
    彼もまた、この泥沼化した戦争を一刻も早く終わらせることを願っている人物だ。
    そのために、宇宙という敵地の眼前に押し出されても、兵器の開発を完遂しようとしたのだ。

  • 121スレ主24/07/04(木) 09:34:12

    マリュー「ーー分かりました。閣下のお心、しかとアラスカへ届けます!」

    ハルバートン提督の心に真っ先に応えたのは、マリューだった。
    その顔には「自分になんて艦長など」といった弱々しさはない。
    キラも、決断したのだ。大切なものを守るためにと。
    なら、軍人である自分にできることは何か?そう考えて辿り着いた答えに、
    マリューは心を決めた。その姿を見て、ナタルもまた覚悟を決めた面持ちでハルバートン提督へ敬礼をする。

    それに頷いて答えて、提督は彼女らの隣に立つジャックへ視線を向けた。

    ハルバートン「君たちには、困難な道を言い渡すことを、承知で頼む…。
    私からの個人的な依頼だ。勝手な物言いだが、君も彼女たちを手助けしてやってくれ」

    ジャックはそれに言葉で答えることはなく、ただ帽子を脱ぎ、ハルバートン提督へ敬礼をするのだった。

  • 122スレ主24/07/04(木) 09:43:40

    フレイ「もう!離してってば!」
    アルスター「聞き分けなさいフレイ!さぁ、パパと一緒に地球に降りるんだ!」

    メネラオスを経由して地球に降りるシャトルの前で、フレイは頑なに父の引っ張る手を拒んでいた。
    アルスター事務次官が、そのシャトルに乗り地球に降りるから一緒に付いて来るように言っているのだ。
    シャトルはアラスカとは別の地球軍勢力地帯へ降り、そこで保護を受けることになる。
    その勢力が、アルスター事務次官が所属するブルーコスモスが権力を振るう地域だと聞いて、
    フレイはさらに父への反発を強めていた。

    フレイ「い・や!!パパがキラに謝るまでは絶対に一緒に行かないんだから!!本気よ!本気!!」

    父の手を振り払って、フレイが意固地に睨みつけると、娘からの反抗にどうすればいいのか分からず、
    アルスターは「好きにしなさい!」と捨て台詞を言って、カバンを抱えてシャトルへ歩いていくのだった。

  • 123スレ主24/07/04(木) 09:43:52

    ナタル「はぁ、とりあえずお前たちにはこれを渡さなければならないな」

    そんなやり取りを遠巻きで見ていたキラの友人たちへ、ナタルはため息をつきながらもある書類を渡して回った。

    トール「除隊許可証?」
    ミリアリア「私達…軍人だったの?」
    カズィ「第8艦隊、アークエンジェル所属…」

    トール、ミリアリア、カズイの順番で想い想いの言葉を綴る。サイも書類に目を通していたが、
    なんとも言えない表情をしていた。ナタルの隣にいたホフマンがわざとらしく咳払いを放つ。

    ナタル「例え非常事態でも、民間人が戦闘行為を行えば、それは犯罪となる。
    それを回避するための措置として、日付を遡り、君達はあの日以前に、
    志願兵として入隊したこととしたのだ。なくすなよ?尚、軍務中に知り得た情報は、例え除隊後といえ…」

    フレイ「あの……」

    トールたちに説明をしようとしていたナタルの言葉を遮って、
    父と別れたフレイがひとつ気になったことを問いかけた。

    ナタル「なんだ?どうしたアルスター」
    フレイ「キラは…?」

    溢れたように放たれた言葉に、ナタルは顔をわずかに伏せて、トールたちは互いに顔を見合わせるのだった。

  • 124スレ主24/07/04(木) 09:49:34

    フレイの今後dice1d5=4 (4)


    1.オペレーター

    2.メカニック

    3.パイロット(MS)

    4.パイロット(スカイグラスパーを遠隔操作)

    5.衛生兵

  • 125スレ主24/07/04(木) 10:43:53

    そんなトールたちから離れた場所で、キラはメネラオスに向けて発進準備をしているランチを眺めていた。
    特に、今になってあの船に乗りたいなどという後悔の念は無いが、
    ヘリオポリスの戦いでストライクに乗る決断をしなければ、自分もランチに乗ろうとするあの喧騒の中に居ただろう。

    今になって思うことはたくさんある。
    コクピットに乗って、戦って、引き金を引いて。
    辛いことは沢山あった。けど、得られたものも確かにあった。
    心のどこかでいつも感じていた自分自身に対する疎外感や、異物感を、
    アルコンガラのみんなといるときは感じない自分がいる。それが心地よいとも思うし、
    こんな頼りない自分を仲間だと言って信頼し、助けてくれる。そんな相手がいるだけで、
    キラはほんの少し、強くなれたような気がした。

    何より、ウィルと男女の関係になれたことが自分にとって大きかった。

    ハルバートン「キラ・ヤマト君だな?」

    ふと、横から声をかけられて、キラは泡を食ったように振り向く。
    そこには、優しげな笑顔をしたハルバートン提督がいた。

    ハルバートン「なに、驚かないでくれ。報告書で見ているんでね」

    ノーマルスーツ姿の提督は、「隣、いいかね?」とだけ言って、
    何も言わずにキラと同じようにランチに乗り込む人々の喧騒を眺めていた。

    ハルバートン「しかし、改めて驚かされるよ。君達の戦果とアルコンガラにはな」
    キラ「ウィル達が、ですか?」

    ハルバートン提督の言葉に首をかしげると、どうやら君たちは自覚してないらしいなと小さく笑った。

  • 126スレ主24/07/04(木) 10:44:32

    ハルバートン「彼ら…いや君たちは、モビルスーツ部隊を幾度となく撃退し、
    多数ザフト艦の撃沈までも行った存在だ。G兵器は、ザフトのモビルスーツに、
    せめて対抗せんと造ったものだというのに、まったく。
    君たちのお陰で形無しだよ」
    キラ「えっと…ご迷惑をおかけします」

    思わずそう答えたキラに、ハルバートン提督はしばし驚いた様子をした後に、豪快に声を上げて笑った。

    ハルバートン「はっはっはっ!すまない、冗談だよ」

    そんなハルバートン提督を見て、こういう裏表がない人が上司だから、
    マリューもまた裏表がない人間なのだろうと、キラはある種の納得をした。

    ハルバートン「君の御両親は、ナチュラルだそうだが?」
    キラ「え!…あ…はい」

    思わず、胸が鳴った。自分の両親のことを、この人は知っている。
    一気に心の中に暗いイメージが湧き上がった。まさか両親を人質にして自分をーーと、思ったが。

    ハルバートン「どんな夢を託して、君をコーディネイターとしたのだろうな」

    ハルバートン提督は遠くを見ながら、どこかへ語りかけるようにそう呟いた。

    ハルバートン「私は、コーディネーター憎しで戦ってるわけじゃない。
    地球とプラントの関係で戦争が起きているのだし、コーディネーターが絶対的な悪ということは無いのだよ。
    君のような、真面目な少女がなによりもその証拠だ」

  • 127スレ主24/07/04(木) 10:46:05

    そう快活に笑って、ハルバートン提督はキラの肩を叩いた。思わず、キラは自分の中に生まれたイメージを恥じた。
    彼は、自分のことを本気で心配して声をかけてくれているのだ。アルコンガラのみんなと同じように。

    ハルバートン「何にせよ、早く終わらせたいものだな、こんなくだらん戦争は!」

    そう言った矢先、奥の通路から提督と同じノーマルスーツをきた連合兵が敬礼をしながら近づいてくるのが見えた。

    「閣下!メネラオスから、至急お戻りいただきたいと」
    ハルバートン「やれやれ…君や君の友人達とゆっくり話す間もないわ!」

    ではな、と言ってハルバートン提督は柵を乗り越えて下で待機するランチへ向かおうとした。

    キラ「提督!!」

    キラは、思わず提督を呼び止めた。もっとハルバートン提督と言葉を交わしたい。自然とそう思ったのだ。
    しかし、提督は振り返るとさっきまで見せていた笑顔とはちがう、真面目で澄んだ眼差しをキラへ向けた。

    ハルバートン「アークエンジェルとストライクを守ってもらって感謝している。そしてこの艦に残るというのなら、
    私は止めはしない。だが、君が居れば勝てるということでもない。戦争はな。決してうぬぼれるな!」

  • 128スレ主24/07/04(木) 10:46:15

    提督の言葉に、キラは言葉を模索した。
    自分一人だけで、ストライクに乗って戦っていたなら、提督が言うように心のどこかで増長していたかもしれない。
    けど、キラの心にある覚悟はそうじゃないと叫んだ。

    キラ「大切な人を守るため。大切な仲間を守るため。生きて、生き抜いて、出来るだけの力があるなら、
    出来ることをして、使命を果たす。私はアルコンガラのみんなに、それを教えてもらいました」

    そのキラの答えに、提督は満足そうに笑みを浮かべた。

    ハルバートン「その意志があるなら、君は立派な戦士になれる。ただ忘れるな、良い時代が来るまで、死ぬなよ!」

    彼はそう言って敬礼をすると、自分の役目を果たすためにランチへと向かっていくのだったーー。

  • 129スレ主24/07/04(木) 21:06:32

    フレイ「キラが残る!?ふざけないで!」

    ハンガーの一角で、フレイの声が反響した。そんな彼女を見て、ナタルも複雑な表情を見せる。

    ナタル「彼女は、ふざけた気持ちで言ってるんじゃない」

    少なくとも、キラの目は戦うことを決意した人の目をしているとナタルは感じた。
    軍人としてではないが、戦う戦士としての素質が花開こうとしているように思える。
    しかし、フレイが感じていたものは、ナタルのような軍人らしい思考ではない。

    フレイ「私は、この船に乗るまで父と同じ考えでした!コーディネーターは悪だと、
    コーディネーターがいるから戦争が起こるんだと」

    ずっとそうだと思っていた。ずっとそうだと信じて疑わなかった世界と自分の価値観。
    それが、この船に乗ってから根底からひっくり返されたように思える。

    フレイ「けど、違いました。コーディネーターを滅したら平和になるの?
    …そんなこと全然ない!そんなの、虐殺と一緒よ!」

    ラクスのように、戦争を悲しむコーディネーターも、キラのように仲間のために命をかけて
    戦うコーディネーターもいる。そんな人たちも悪と一括りにして、滅ぼした世界に何が残る?

  • 130スレ主24/07/04(木) 21:07:20

    フレイ「世界は、コーディネーターが居ても居なくても、ナチュラル同士だったとしても!いがみ合って、
    依然として戦争のままでーー私…自分は中立の国に居て…全然気付いていなかっただけなんだって、思い知らされた」

    フレイはただ、父の思想が絶対だと思っていた自分を恥じた。そんなこと、
    正しくないという視点が持てた故に、自分の醜悪さや、人としての未熟さを思い知らされて、苦しんでーー。

    フレイ「でも、キラはそんな私たちを命がけで守ってくれてた。
    父のこともそうだし、そして今もーー。そんなあの娘を一人にして…私は…!」

    そんなキラを残して、この噛み合わない違和感を忘れては、また自分は
    ブルーコスモスの思想に染まってしまうのではないか。それがフレイにとっては何よりも苦しく、辛いことだった。

    サイ「フレイ…」

    サイも、フレイの変化に気がついていた。彼女の心の在り方が変わっていく様子を間近でみていたのはサイだ。
    悩み、苦しんでいる姿も知っている。
    フレイは伏せた眼差しをしっかりと上げて、ナタルに高らかに言い放つ。

    フレイ「私も、アークエンジェルに残ります!」

  • 131スレ主24/07/04(木) 21:16:14

    ハルバートン提督を見送っていたキラに気がついて、ランチに乗り込む喧騒の中から小さな影が、

    キラの足元へ歩み寄ってきた。


    キラ「エルちゃん?」


    足元にたどり着いた少女は、ヘリオポリスの避難民の一人で、ユニウスセブンではキラやアルコンガラ

    のみんなと共に折り紙を折った。その少女がポケットから、あの時に折った折り紙の花を取り出し、キラに差し出す。 


    エル「今まで、守ってくれてありがと。白いお兄ちゃんにも渡して」


     


    キラは、しばらく目を見開いてから、ゆっくりと屈んで少女から花を受け取った。

    そうすると少女は花のようにパッと笑顔を浮かべて、ランチの入り口で待つ母の元へと帰っていく。


    そうか。これがーー私が守った、大切な人なんだ。


    心の中で、キラは完全に区切りをつけた。ランチに入っていた少女に「ありがとう」と告げて、

    キラも出発しようとするランチから離れていく。


    私の向かう場所は別にあるのだからーー。

  • 132スレ主24/07/04(木) 21:25:16

    フレイの言葉を聞いて、サイはーーナタルから貰ったばかりの除隊許可証を折りたたんでポケットに突っ込んだ。

    カズィ「サイ!」
    サイ「フレイの言ったことは、俺も感じてたことだ。それに…キラとウィルだけおいていくなんて、出来ないしさ…」

    キラはコーディネーターだから。キラがモビルスーツに乗れるから。そう言って、
    友達であるキラが戦っているのをただ見ているだけで、彼女が悩んだり、
    苦しんでいることに何もしてやれなかった自分に、サイは腹が立っていた。
    一番年下の少年が支えている分、余計にそう思う。
    ただ、フレイが残ると言ったから、サイも残る決断をしたのではない。
    自分にできることを精一杯やって、命をかけて戦うキラに応えたいと、本気で思った。

    サイ「トール?」

    サイと同じように除隊許可証をポケットに突っ込んで、トールもサイと肩を並べた。

    トール「アークエンジェル…人手不足だしな。この後落とされちゃったら、なんか…やっぱやだしよ。
    ようやくグレーフレームの扱いにも慣れてきて愛着あるし」
    ミリアリア「トールが残るんなら…私も…」
    カズィ「みんな残るってのに…俺だけじゃな…」

    結局全員、同じ気持ちだった。友達が一人で大切なものを守るために立ち上がった姿を、戦いも、
    人の生き死にも目の当たりにした。それらを知らないふりをして、
    ヘリオポリスの頃のような生活に戻るイメージを誰も持てなかったし、それで納得できるほど子供でもない。
    キラが大切なものを守るために立つなら、自分たちもそれに付き合おう。
    それがトールたちの間で共有された思いだった。

  • 133スレ主24/07/04(木) 21:27:05

    フレイ「みんな…バカ…」
    サイ「フレイこそ」
    トール「みんながだよ」
    ミリアリア「あ、そっか…」

    そういうと、フレイもサイもトールもミリアリアもカズイも、なんだか自分たちが滑稽で、
    バカバカしくて、けれどどこか清々しくて、ちょっぴり切なくて、みんな揃って笑った。
    笑って、全員が残る決断をしたのだった。
    最初から自分達を守るために戦うことを選んだ、ウィルの様に。

    そして、かつての光景をまた見ることができるように。

  • 134スレ主24/07/04(木) 21:47:36

    >>133

    この画像にウィルとフレイを足せる絵心が私にあればよかったんですがね。

  • 135スレ主24/07/04(木) 22:29:02

    『モビルスーツ、発進は3分後、各機、システムチェック!全隔壁閉鎖。
    各艦員は、至急持ち場に就け!繰り返す!全隔壁閉鎖。各艦員は、至急持ち場に就け!』

    クルーゼはコクピットの中で、騒がしくなっていく通信の声をただ聞いていた。
    白く塗装されたモビルスーツは、新品のように輝いている。
    シグー・ハイマニューバ、クルーゼスペシャル。そう付けられた名に、クルーゼは少しだけ気恥ずかしさを覚えた。
    ウィルの駆るアーウィンとの戦闘で中破したシグーをプラント本国に持ち帰り、戦闘データを
    技術者や評議会のメンバーに見せて、自分が凶鳥を討つと公言した結果、この機体を手にすることができた。

    グリマルディ戦線でクルーゼが駆っていたジン・ハイマニューバのエンジンを補助機関として、
    武装はライフルと斬刀のみ。シグーの徹底的な高機動化と関節部の強化、そして限界を無視して
    カリカリにチューンしたエンジン出力のおかげで、
    クルーゼしかまともに扱えない超ピーキーな性能に仕上がっている。

    もしガンダムシリーズに詳しい人間が見れば、[フルバーニアン化したトールギス]と表現するだろう。

  • 136スレ主24/07/04(木) 22:30:20

    クルーゼとしては、この機体を大切に扱うつもりは毛頭なかった。全ては、ウィルのアーウィンを落とすため。
    彼と全身全霊をかけた殺し合いをするためだけに使う。この戦いで自分の命ももろとも失うことも厭わない。

    その覚悟を持って、クルーゼはコクピットに乗り込んでいた。

    クルーゼ「アデス、艦の指揮は任せたぞ」
    アデス『ーー隊長』
    クルーゼ「ん?」
    アデス『ご武運を』

    アデスの言葉に、クルーゼは小さく笑って珍しく敬礼で答えた。
    今ここにいるのは、戦術の鬼才でも、クルーゼ隊の隊長でもない。
    ただのパイロット、ラウ・ル・クルーゼだ。

    クルーゼ「ラウ・ル・クルーゼ、シグー・ハイマニューバ、出るぞ!」

    ナスカ級ヴェサリウスから飛び出した閃光は、一陣の光となって宇宙を切り裂く。
    その軌跡は皮肉にも、凶鳥のそれと酷似していたのだった。

  • 137二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:33:13

    なんか、生きる喜びを得た感じがするな

  • 138スレ主24/07/04(木) 23:45:14

    アルマ「ナスカ級3、ローラシア級5、グリーン18、距離500。予測、15分後!!」

    ザフトの動きを真っ先に探知したのは、ガンファルコンに乗るアルマだった。
    艦隊の後方に位置するアークエンジェルへの人員移動の最中でも、アルコンガラは周辺警戒を怠っていなかった。

    ラドル「クルーゼ、やはりここで仕掛けてきたか!」
    ジャック「システム起動!第一戦闘配備!各艦の担当官に通達!対空戦用意!」

    そして、その一報はアークエンジェルにも届いていた。

    マリュー「搬入中止、ベイ閉鎖!メネラオスのランチは?」

    マリューの問いかけに、ロメロは首を横に振って応えた。

    ロメロ「まだです!」

    その答えにマリューは落ち着いた様子で次の指示を出していく。

    マリュー「急がせて!総員!第一戦闘配備!対空戦用意!ゴットフリート1番2番、起動!
    ミサイル信管、6番から13番へヘルダート装填!バリアント展開させて!アンチビーム爆雷の準備を!」

    マリューの指示に、ナタルも特に何も言わずに従っていく。歴戦のアルコンガラを見て、
    マリューもアークエンジェルのクルーもまた、成長を遂げていた。

    チャンドラ「了解!各CIC接続完了、フィールドネットワークコンタクト可能です!」

    アークエンジェルが構築したのは、グレートフォックスと連携を密に取るための戦術データリンクだ。
    すぐにそのデータを旗艦であるメネラオスにも送信する。すると、ハルバートン提督から電子文書でこう届いた。

    《奴らに宇宙艦隊の戦い方を見せてやろう》

  • 139スレ主24/07/05(金) 00:12:58

    サイ「キラ!」

    ランチを後にしたキラは、ハンガーに集まっていた友人たちとばったり出くわしていた。

    キラ「みんな!なにをやってるの!早くしないとランチが…」
    サイ「俺達さ、残ることにしたからさ」

    ランチが出てしまうと言うつもりだったが、サイの放った言葉でキラの思考は停止した。

    キラ「え?」
    トール「だから残るんだよ。アークエンジェル、軍にさ」

    サイに続いたトールの言葉も、キラは理解できていないようで、
    その様子がおかしかったのか、みんな困ったように笑っていた。

    キラ「残るって…どういう…」
    ミリアリア「フレイが残るって。キラを置いていけないからって」
    キラ「ええ!?フ、フレイ…なんで…?」

    ミリアリアの言葉に、キラは反射的にフレイの方へ顔を向けると、
    彼女は照れるように顔をうつむかせながら、キラと向き合った。

    フレイ「キラは残って戦ってるのに…私だけまたコーディネーターを差別するような世界には、
    もう戻りたくないのよ」

    命をかけて戦っているキラ達の姿を知ってるのに、それを忘れてヘリオポリスと同じ感覚で、
    同じ生活になんて、戻れる気がしなかった。その言葉に、サイ達も頷く。

  • 140スレ主24/07/05(金) 00:13:12

    サイ「それで…俺達も…な」
    ロメロ『総員、第一戦闘配備!繰り返す!総員、第一戦闘配備!』

    そんな空気を引き裂くように、アークエンジェルの艦内に音声放送が流れ始めた。
    来たっーー。キラは直感的にそう感じた。敵がくる。この船や艦隊を落とすためにーー。

    トール「キラ!俺も戦う!グレーフレームで!」

    そんなキラの肩を掴んだトールに、彼は笑みを送った。真剣な眼差しに光を灯して。

    キラ「ストライクには私が乗る。みんなを守る。そのために戦うから」

    もう、逃げない。決めたんだ。大切なものを守るって。この戦争を終わらせなきゃって!だから。

    フレイ「なら…私たちの想いは…貴女を守るわ」

    その心の声を汲み取ってくれたように、フレイが優しい声でそう言ってくれた。
    みんなが、キラを信用して、信頼してくれてる。そんなみんなを守るためにーー私はーー。

    キラ「とにかく、みんなはブリッジに!私はーー行ってくるよ!!」

    キラは走り出した。振り返らない。ただ前を向いて走り出す。自分の背中を見てくれる友達を守るために。

  • 141スレ主24/07/05(金) 00:24:54

    アークエンジェルのハンガーは各機の出撃準備に向けて慌ただしく動き始めていた。

    マードック「フラガ大尉はガンバレルストライクで出るんだよ!大丈夫だ!準備は終わってる!」

    マードックが激励の言葉を飛ばしながら指示をする中で、
    整備員達は使い終わった資材をバンド固定機で壁に固定したりと片付けに奔走している。
    作業服からパイロットスーツに着替えたウィルは、アーウィンのコクピットハッチを開いて中に潜り込もうとした。

    キラ「ウィル!」

    そんな彼を、上から降りてくるキラとトールが呼び止めた。

    ウィル「トールも残るのか?」

    驚くウィルやムウに、キラとトールはヘルメットを脇に抱えたままで照れたように笑って言った。

    キラ「私達も、アークエンジェルの一員だから」
    トール「ほっとけないんだよ」
    ムウ「この…ばかやろう!」

    やってきたムウは二人の首へ手を回して脇に抱えると、乱雑にノーマルスーツのごつい手袋で
    二人の頭をわしゃわしゃと撫で回した。抵抗することなくそうされていると、ムウは二人を離した。

    ムウ「とにかく、無事に降りることだけを考えろよ!生きて帰るぞ!
    みんな作業しながら聞いてくれ!ブリーフィングをはじめる!!」

  • 142スレ主24/07/05(金) 01:06:53

    現在、第八艦隊は地球圏の低軌道上に位置している。本来ならば、このまま第八艦隊は
    アークエンジェルとグレートフォックス、そしてヘリオポリス避難民を乗せたシャトルが
    地球へ降りるのを確認してから離脱する予定だったが、ザフトに捕捉されてしまった。
    おそらく、地球圏の軌道上ギリギリでの戦闘になるだろう。史上類を見ない特殊な作戦だ。

    ウィル「ムウさん!俺達の機体は大気圏突入ができるが」
    ムウ「ああ、分かってる!バジルール少尉!ここから出て何分ある?!」
    ナタル『フェイズスリーまでに戻れ!ストライクはスペック上大気圏へ突入はできるが、
    やった人間は居ないんだ!中がどうなるかは知らないぞ!各員も高度とタイムは常に注意しろ!』
    ムウ「了解!!」
    ミリアリア『進路クリア!ガンバレルストライク、フラガ機、発艦どうぞ!』
    ムウ「こんな状況で出るなんて、俺だって初めてだぜ…!ムウ・ラ・フラガ、ガンバレルストライク、出るぞ!」

    解放されたハッチから、ムウの駆るガンバレルストライクが閃光のように飛び出した。
    間髪を入れずにミリアリアが次のシークエンスへ移っていく。

    ミリアリア『カタパルト、接続!エールストライカー、グレーフレーム、スタンバイ!システム、オールグリーン!』

    キラのストライクとトールのグレーフレームもカタパルトへと運ばれた。
    ハッチからは眼下に青い地球が広がっているのが見える。

    ミリアリア『進路クリア!ストライク、グレーフレーム、どうぞ!』
    キラ「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!!」
    トール「トール・ケーニッヒ、グレーフレーム、行きます!!」

  • 143スレ主24/07/05(金) 01:08:47

    残るはウィルのアーウィンだけだ。ウィルはコクピットでこれから向かう先を見据える。

    クルーゼもこの戦場にいるのか。だとするならーー今日が約束の日だ。

    ぐっとウィルはアーウィンの操縦桿を固く握りしめる。


    ミリアリア『進路クリア!アーウィン、どうぞ!』

    ウィル「ウィル・ピラタ、アーウィン、出るぞ!」



  • 144スレ主24/07/05(金) 12:11:21

    漆黒の宇宙の中で、アラームがメネラオス中に響き渡っていた。
    慌ただしくブリッジではクルーが行き来し、到着したハルバートン提督も艦長席へ腰を下ろす。

    ハルバートン「全艦、艦隊戦用意!!密集陣形にて、迎撃体勢!アークエンジェルは陣形の中心へ!!
    各艦!!ハリネズミになれ!!敵を一機たりともアークエンジェルに近づけさせるな!」
    ホフマン「ワルキューレ1、ワルキューレ2、発進!アンチビーム爆雷、用意!
    補給艦は直ちに離脱せよ!ランチ収容、ハッチ閉鎖!」

    側近のホフマンの指示のもと、メネラオスのハンガーから搭載されたメビウスの小隊が発艦していく。
    戦場は刻一刻と近づいてきていた。メネラオスの後方に位置するアークエンジェルも、
    来たる戦闘に向けて武装を整えていく。グレートフォックスやロー、モントゴメリは艦隊の左側を担当しており、
    迫るザフトのモビルスーツ軍とかち合う先鋒となる。

    ナタル「イーゲルシュテルン、起動!敵はすぐくるぞ!ゴットフリート、ローエングリン、発射準備!」

    アークエンジェルは戦闘する艦の援護と、地球に降りる準備を進めなければならない。
    人手はいくらあっても足りなかった。そんな中で、ブリッジの扉が開き、三人の人影がブリッジへ入ってくる。

    サイ「すいません!遅れました!」

    入ってきては、素早く持ち場に滑り込むように座ったサイたちに、
    アークエンジェルのクルーは驚いたようにどよめく。

    マリュー「ぁ……貴方達!?」

    一番衝撃を受けたのはマリューだったが、今は一時も無駄にする時間はない。

    ナタル「志願兵です。ホフマン大佐が受領し、私が承認致しました!」

    間髪を入れずに言ったナタルの言葉に、マリューはただ状況を飲み込むしかなかった。

  • 145スレ主24/07/05(金) 12:11:37

    その頃、モビルスーツ隊が出撃したハンガーでも、引き続き物資の片付けなどが、
    マードックの指揮のもと、急ピッチで進められている。

    マードック「大気圏に入るんだから宇宙とは勝手は違うぞ!!はやく固定急げ!」
    フレイ「マードックさん!」

    指示を飛ばしていたマードックに、地球軍の制服ーーではなく、
    ハンガー内作業用のノーマルスーツを着たフレイが近づいて声をかけた。

    マードック「嬢ちゃん!?ランチに乗らなかったのか!?それにその格好…」
    フレイ「志願しました!私にも何か手伝わせてください!」

    フレイの言葉に、マードックは一瞬戸惑った。事務次官の娘であるフレイが、なぜ軍に志願したのか。
    ブルーコスモスの一件で、父と揉めていたのは知っていたが、マードックにはフレイの真意を知る術がなかった。
    しかし、手伝うというなら話は別。やることは山のようにある。

    マードック「あぁもう!!ここに来て後悔しても知らないからな!」

    そういうマードックに、フレイは元気よく答えて指示を受ける。ミリアリアやサイたちのようにオペレーターや
    電子機器に慣れていないフレイにとって、マードックたちがやっている作業の方が親しみやすかったし、
    なによりある程度の基本的な知識があれば手伝いくらいなら出来ると踏んで、フレイは整備班の方へやってきたのだ。

    しかし、そんな甘い考えはマードックの激しい指示を受けてから跡形もなく吹き飛ぶことになった。

  • 146二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 20:48:57

    さて、シャトルは無事かな

  • 147スレ主24/07/06(土) 02:18:17

    クルーゼ「ちぃ、抵抗が激しい…やるな、ハルバートン 。目標はあくまでも足つきだ。他の雑魚は任せる」

    モビルスーツの編隊を率いて艦隊に近づこうとするクルーゼだったが、相手の抵抗が思った以上に大きく、
    そして異様に粘り強かった。モビルスーツの数で中央突破を行い、指揮系統の撹乱を狙ったが、
    一箇所に釘付けにされたら数の優位も何もあったものではない。

    クルーゼは各機へ分散の指示を出して、飽和状の攻撃を行うように作戦を練り直していく。

    イザーク「隊長!凶鳥は自分も…!」

    そんな中で、クルーゼの後ろにデュエルを駆るイザークが付いてきた。彼もまた凶鳥に煮え湯を飲まされた、
    因縁のあるパイロットだ。クルーゼはイザークの言葉を聞き、しばらく沈黙してから答えた。

    クルーゼ「いいだろう。だが、待つつもりは無いぞ?私も、そして凶鳥もな」
    イザーク「は?」

    待つつもり?というクルーゼの言葉が、理解できなかったイザークに、クルーゼは隊長の仮面をかぶる。

    クルーゼ「なに、気にするな。それにハルバートンは、どうあってもあれを地球に降ろす気だ。
    大事に奥に仕舞い込んで手出しさせないつもりらしい」

    クルーゼは、モニターを操作して先程からリアルタイムで収集したデータを眺める。

    クルーゼ「しかも直衛はモビルアーマー部隊と、ストライク…」

    合理的であり、守りに徹した陣形だ。仮に先鋒の艦隊を突破したとしても、
    今度はアガメムノン級の戦艦からの対空攻撃に晒されることになる。むやみに突っ込むのは悪手だ。

    クルーゼ「戦艦とモビルアーマーでは、もはや我らに勝てぬと知っている。良い将だな。
    あれを造らせたのも、彼だということだしな。ならばせめて、この戦闘でその説を、証明して差し上げるとしよう」

  • 148スレ主24/07/06(土) 10:46:13

    先鋒を任されたグレートフォックス、ロー、モントゴメリの戦闘は苛烈を極めていた。


    『敵機4!グリーン23、距離500!』

    『6番からスレッジハマー!斉射〝サルボー〟!!』

    『ランダム回避運動!アンチビーム爆雷展開!弾幕!敵を寄せ付けるな!』


    三隻の中で最も戦闘経験があるグレートフォックスは前衛に立ち、目まぐるしく移り変わる戦況を伝える情報が

    飛び交っている。それらの情報に鋭く応じ、ジャックは迎撃システムのAIや僚艦指示を投げていった。

    ここで一瞬でも気を抜けば、落とされるのはこちらだ。


    そんな中でも、長距離砲撃でdice1d8=1 (1) の敵艦を撃沈して見せた


    《ロー、大破!》


    そんな中、AIから報告が上がる。モニターに映るドレイク級宇宙護衛艦であるローが、

    モビルスーツに取り付かれていて、船体から煙を上げているのが見えた。次いで、

    船体の四方に伸びるミサイル発射装置が火を吹き上げて爆発していく。


    ジャック「なんてこった…!」


    いくら全自動システムだとしても、ジャック一人だけでは苦しいのが現状だ。 


    『ジェームズ船長、聞こえるか?』


    ノイズ混じりながらも、ローの艦長からの通信がグレートフォックスに届く。

    向こうはこちらの音がもう聞こえないのだろう。ローの艦長は驚くほど穏やかな声でジャックに言葉を繋いだ。


    『ローはもうダメだが、乗組員は退艦させた。それに腕のいい奴らはそちらに向かわせてる。

    頼りになる士官たちだ、きっと力にーーー…』

  • 149スレ主24/07/06(土) 10:49:53

    彼の言葉が終わる前に、通信音声は酷いノイズに晒され、第3モニターに映るローは、
    船体の真ん中から火が上がって、やがて動かなくなった。

    《ロー、沈黙…!!》
    ジャック「ーーコープマン艦長に繋いでくれ」

    モントゴメリは、ローとグレートフォックスの後方に位置しており、
    まだモビルスーツからの本格的な攻撃に晒されていない。

    コープマン『ジャック船長!』

    モニターに映るコープマン大佐に、ジャックは単刀直入に言った。

    ジャック「大佐。ローの退艦員の収容と、戦域の離脱を頼みます」
    コープマン『何を馬鹿な…!』
    ジャック「今下がらなければ、我々は退路を失うことになる。艦隊の全滅だけは阻止しなければなりません…」

  • 150スレ主24/07/06(土) 10:56:24

    コープマン『ーー私に、また逃げろというのか。グリマルディ戦線の時のように』

    コープマンは、苦しげな表情でモニターに映らぬ拳を握りしめる。また、逃げると言うのか。
    友軍を見捨てて、勝てない戦いから、勝てない戦場から逃げろとーー。

    ジャック「生き延びることは、恥ではありません」

    そんなコープマンに、ジャックは帽子を被りなおして呟く。その言葉には、なんの迷いも無かった。

    コープマン『何?』

    コープマンの声に、ジャックは鋭い眼差しと優しげな笑みを浮かべて頷く。

    ジャック「アークエンジェル。そして、船を守るモビルスーツ隊が健在な限り、貴方達に敗北はないのですから」

    彼らが健在な限り、この戦いに勝利したのは自分たちだ。だから、
    自分たちは為すべきことを為そう。果たすべき使命を果たそう。
    今までやってきたことと、同じように。

    コープマン『ーー了解した』

    コープマンはそう言って、モントゴメリを後方へと下げていく。
    ジャックは通信を切り、AIシステムに指示を飛ばす。

    ジャック「ローからこちらに向かっている船には、アークエンジェルに向かうように言え!
    その方が早い!グレートフォックスはここを絶対防衛線とする!!離脱する艦の退路を確保し、
    一機たりとも後ろへ通すな!!」

  • 151スレ主24/07/06(土) 18:33:06

    ナタル「ゴットフリート1番、2番、バリアント、レーザー誘導!捕捉次第撃て!!イーゲルシュテルン!

    弾幕絶やすな!ミサイル発射管、13番から18番、てぇ!続いて、7番から12番、スレッジハンマー装填!

    19番から24番、コリントス、てぇ!」


    艦隊の中を飛び回るモビルスーツ群に、ナタルが的確な指示を出して迎撃行動を繰り広げていく。

    アークエンジェルの周囲にいるメネラオスや、他艦船も迎撃をしてザフト艦をdice1d7=3 (3) 撃沈したが、

    モビルスーツの圧倒的な機動性について行けていなかった。

    艦隊戦とは言え、そこから出てくる搭載機との航空戦で圧倒的に劣ってしまえば、

    それは艦隊の防衛力を徐々に削がれることにつながなる。

    一機でも敵の足を止めさせて、引きつけなければ、第八艦隊は瞬く間に壊滅することになるだろう。


    サイ「ラミアス艦長!!グレートフォックスが!!」


    そんな中で、オペレーターの犀が前衛に出ているグレートフォックスの異常に気がついた。

    一番の脅威だと判断されてしまったらしく、纏わりつくMSや飛んでくる砲撃が多くなっていく。


    ナタル「チィ…こんな混戦状態では…!!」

    ロメロ「グレートフォックスより通信!!」


    オロメロの声と同時に、通信チャンネルを開いてきたグレートフォックスからの映像が届いた。


    マリュー「ジャック船長!!」


    マリューがそう叫んだが、ジャックにその声は届いていなかった。

    ザフトが発するNジャマーのせいで、向こう側からの通信しか受け取られないのだ。

  • 152スレ主24/07/06(土) 18:33:37

    ジャック『聞こえるかね、ラミアス艦長』

    ジャックはいつものように、帽子を深くかぶっていた。

    ジャック『今、コープマン大佐が君たちに援軍を送ってくれた。彼のお墨付きなら、きっと君たちの力になるだろう』
    マリュー「ジャック…船長…?」
    ジャック『すまない。アークエンジェルが沈んだら負けなんだ。私は、この場で戦い続けよう。
    だから君たちは、君たちの使命を果たせ。生きろ。生きて、使命を果たすんだ』

    そういうと、ジャックはマリューに向かって敬礼を向ける。
    とても真っ直ぐとした瞳で、マリューは、ジャックのその姿を目に焼き付けた。

    ジャック『ラミアス艦長、そちらにたどり着いたクルーや、ウィル達のことを頼む。いい艦長になれよ』
    マリュー「そんな、待ってください!!ジャック船長!!」

    マリューが思わず席を立った瞬間、映像は途切れ画面が暗闇に落ちた。

    サイ「グレートフォックスとの通信途絶…艦長…」

    望遠カメラに映るグレートフォックスは、多数のモビルスーツに取りつかれながらも、
    ジェネラルと共に懸命に防衛線を死守している。

    自分たちの使命ーーマリューはジャックの言葉を反復させて、真っ直ぐと前を向いた。ジャックと同じように。

    マリュー「回線をメネラオスに繋いで」

  • 153二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 06:34:43

    hosyu

  • 154スレ主24/07/07(日) 16:22:06

    モビルアーマー隊もまた、決死の防衛戦を展開していた。
    それをムウは単機ながらも、戦場を駆け抜けて味方機の援護と敵の迎撃を担っていた。

    ムウ「ワルキューレ隊!聞こえるか!」
    『こちら、オスカー3!フ、フラガ大尉!ワルキューレリーダーが…!!』

    撃破された艦船の近くにいたメビウスに近づき、ムウは叱咤を飛ばした。

    ムウ「2機は俺の指揮下に入れ!立ち止まるな!足が頼りのモビルアーマーで止まれば死ぬぞ!」
    『りょ、了解!!』
    ムウ「各機!編隊を維持!ここが正念場だ!切り抜けるぞ!!うおりゃああああああ!!」

    ムウは新たに加えた2機の友軍機を引き連れて、瓦礫と化した艦船から敵に向かって飛び出す。
    戦いはまだ、終わっていない。

  • 155スレ主24/07/07(日) 21:26:23

    「敵ナスカ級、及びローラシア級接近!セレウコス、カサンドロスに突撃照準!」

    ハルバートン「ええい、突破してきたか!迎撃!弾幕を絶やすな!!」


    メネラオスも防衛網を突き破ってきたザフト艦と、対艦戦に移っていた。

    ナスカ級の主砲斉射を掻い潜り、ハルバートン提督も負けじと応戦していく。

    ザフト艦をdice1d4=2 (2) 撃沈できた。だがーー。


    「ああ!」

    ホフマン「カサンドロスが…おのれ!」


    数では優ってはいたが、利は向こうにあった。やはりモビルスーツの性能というのは恐ろしいものだと

    ハルバートン提督は心の中で毒づく。この絶望的な状況をアラスカ基地で踏ん反り返っている

    上層部の馬鹿どもに体感させてやりたかった。


    「Xナンバー、接近!ストライク、グレーフレームが交戦開始します!」


    ザフトが鹵獲したG兵器は、さきほどからアークエンジェルのMS隊が取り付き、足止めをしてくれている。

    コーディネーターが乗るG兵器に奇襲でもされたら、たまったものではない。


    ホフマン「援護射撃だ!射線はリアルタイムで伝えろ!ゴットフリート照準!

    相手はフェイズシフト装甲だ!ビームを使え!なんとしても落とせ!」


    ホフマンの指示のもと、艦への攻撃を継続しながら、キラ達の援護も行なっていく。その時だった。

  • 156スレ主24/07/07(日) 21:26:48

    「アークエンジェルより、回線が入ってます」
    ハルバートン「ーーなんだ?」

    オペレーターの言葉に、ハルバートン提督は当惑した面持ちで通信用の映像モニターに視線を向けた。
    そこには、提督と同じように、まっすぐな目をしたマリューが映っている。

    マリュー『閣下。本艦は艦隊を離脱し、直ちに、降下シークエンスに入りたいと思います。許可を!』

    なに!?とハルバートン提督の隣に座っていたホフマンが声を上げた。

    ホフマン「自分達だけ逃げ出そうという気か!」
    マリュー『敵の狙いは本艦です!ここで敵の増援でも来たら、このまま艦隊は全滅です!
    敵部隊はグレートフォックスがーージャック船長が食い止めてくれています…!』

    最後の言葉を言う時、マリューはひどく悲しそうに目を細めた。
    だが、その弱さをすぐに振り払い、マリューは気丈に振る舞っていた。己の使命を果たすために。

    マリュー『アラスカは無理ですが、この位置なら、地球軍制空権内へ降りられます!
    突入限界点まで持ち堪えれば、ザフト艦は振り切れます。閣下!』

    そういうマリューに、ハルバートン提督は小さく息を吐いた。

    ハルバートン「マリュー・ラミアス。相変わらず無茶な奴だな。全く、誰に似たのやら」
    マリュー『部下は、上官に習うものですから』
    ハルバートン「はっはっは!これは一本取られたな!ーーいいだろう。
    アークエンジェルは直ちに降下準備に入れ。きっちり送ってやる。送り狼は、1機も通さんぞ!」

  • 157スレ主24/07/07(日) 23:21:13

    地球を眼下に見下ろす激戦の戦場。戦況はモビルスーツを多数有するザフトの優位に見えたーー。

    だが、彼らの目算は甘かった。

    地球というゆりかごが持つ重力に引かれ、自由に空を舞っていた機体は鎖に繋がれたように重くなっていく。

    そして、その鎖に囚われた彼らを、ゆりかごを背に現れた凶鳥が喰らっていく。


    『今、俺を撃った奴を確認してくれ!』

    『あれは、dice1d= のマーク!凶鳥だ!』


    1.白狐

    2.白隼

    3.白鴉

     

    火を上げたザフトのモビルスーツ、ジンの横を鮮やかに過ぎ去る。光が尾を引いて宙を切り裂き、

    動きが鈍るジンを食らう。足のつま先からゆっくりと、咀嚼していくように。


    『1機相手に何をてこずっているんだ?! 』

    『なんて動きをしやがる…あれは人間ができる動きか!?当たらない!』


    僚機がビームに貫かれるのを目の当たりにしながら、

    宇宙が自分たちの庭だと自負していた彼らは成す術もなく落ちていく。

    光は急制動をかけ、捻り、回り、人型の軌道に慣れ親しんだ彼らの視界から光の瞬きのように消えては、現れる。


    『くそ、こっちは5機以上のモビルスーツが出てるんだぞ!?戦局があの1機に塗り変えられるのか!? 』

    『たった一機にできるはずがない!できるはずーー』


    わめいていたパイロットの音声が、くぐもった声と共に途切れ、胴を貫かれたジンが宇宙を力なく漂っていく。

    ある機体は制御を失い地球の重力圏に引かれて、青い星へと落ちていく。

  • 158スレ主24/07/07(日) 23:21:44

    >>157

    dice1d3=1 (1)

  • 159スレ主24/07/07(日) 23:28:37

    『撃っても当たらない!やっぱり奴は…』

    凶鳥ーーザフトの名将の一人であるラウ・ル・クルーゼによって公開された。彼の壮絶な戦闘記録とともに、だ。
    その動きと軌跡は、ザフトの技術者でも理解できない軌道を描いており、彼らの計算上、
    中に人がいるなら、それはもう人ではないと断言するほどの異常性があった。

    さながら流星を見ている様なその映像を前に、誰かが呟いた。

    〝人に、流れ星を撃てるか?〟

    『黙れ!そんなはずは…そんなはずがあるか!そんなはずはーーー』

    その言葉を否定しながらも、目の前に描かれる軌跡に魅せられ、ザフトの名もなきパイロットは
    撃ち込まれたビームによって、その短い生涯に終止符を打つのだった。

  • 160スレ主24/07/08(月) 10:28:44

    キラ「このぉ!!!」

    メネラオスを目前にしたディアッカとニコル、アスランは、
    その前に立ち塞がったキラとトールによって、釘付けにされていた。

    《君達は、第八艦隊の護衛と、アークエンジェルと共に地球へ降下し、
    アラスカまでの道のりを護衛することだ。君達の使命を果たせ》

    ジャックから届いた電文命令を読み、二人は覚悟を決めていた。
    故に、今の二人は強い。G兵器の足止め?そんな優しい表現で済むものではない。

    二コル『ストライク…前より出来るようになってる!!』

    ニコルが悲鳴のような声を上げながら、回避運動を繰り返している。一切攻撃に転じるチャンスが無いのだ。
    アスランも何度かストライクに取り付こうと試みるが、信じられない反応速度で振り切られてしまう。
    そして、問題は二機の連携の良さだ。

    ストライクの隙を狙おうとしたらグレーフレームが。
    グレーフレームを落とそうとすればストライクが。

    そうやって絶妙な連携のバランスを保ちながら、二人は迫るG兵器と大立ち回りを演じている。

  • 161スレ主24/07/08(月) 10:29:18

    トール「こっちも忘れてもらっちゃ困るよ!」

    機動がわずかにでも緩めば、グレーフレームからの銃撃が飛んでくる。
    しかも、相手が装備しているのは、ザフトのジンが有するはずのライフルだ。
    放たれる弾丸は、アルマが設計したHEIAP弾を搭載。
    破壊はできなくても、大きな衝撃で仰け反らせ、バッテリーを減らすことができる。

    ディアッカ『この、今日こそ撃ち落としてやる!』

    しびれを切らしたディアッカが、急制動をかけてトールの機体の真上を捉えた。
    ストライクはニコルとアスランが釘付けにしている。しとめるなら今しかない。
    ディアッカは「落ちろぉ!」と叫んで、腰に構えた砲身の火をトールのグレーフレームへ放った。

    ディアッカ『よっしゃあ!直撃コースーー!?』

    トールのグレーフレームに直撃する瞬間、両肩に備えられた四角いモールドが施されたシールドのようなものから
    閃光が瞬き、ディアッカの放ったビームは、宇宙の霧へと消えた。

    ディアッカ『ビームが拡散した!?』

    炸裂装甲ーーまたの名を、リアクティブアーマー。
    旧世紀から実在し、戦車などの補助装甲として使用される装甲板。
    グレーフレームに取り付けられた2枚の鋼板は、その間に爆発性の物質を挟んだ構造になっている。
    具体的には、リアクティブアーマーに敵弾が命中すると、爆発反応により弾頭が浮き上がり、
    爆発が分散され、本体の装甲には傷が付く程度にダメージを下げる物である。

  • 162スレ主24/07/08(月) 10:29:41

    本来ならば、実弾運用を想定しており、ジンの携行火器であるライフルなどには全くの無力として
    誰も見向きしなかった代物だが、着弾時の爆発反応により、高威力レーザーの収束体であるビームを
    霧散させる特性があった。開発スタッフだったマリューからこのデータを貰ったトールが、
    アルマに頼んでグレーフォックスの設備で開発してもらったのだ。

    ただし、装甲にも限りがあり何度も受けることは出来ないため、リアクティブアーマー機能が限界に達した場合、
    自動的にパージされる。また、パイロットが任意でパージすることも可能だ。

    ディアッカ『ちぃ!!味な真似を!!』

    再び乱戦に戻っていく中で、ディアッカは悠然と飛び立つトールの機体を睨みつけながら呟く。

    トール「まだまだぁ!!」

    ここが正念場だ。味方を鼓舞しながら踏ん張るムウや、メネラオスのメビウスパイロットたちと同じく、
    キラもトールも戦闘に集中していく。

  • 163二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 20:44:17

    ほしほし

  • 164スレ主24/07/08(月) 21:02:42

    予定より早い大気圏への降下準備。その報は、ブリッジにいる者たち以外にとっては突然の出来事だった。

    チャンドラ『総員、大気圏突入準備作業を開始せよ』
    マードック「降りるぅ?この状況でか!?」

    重力に備えて、工具や作業道具の固定や配置の変更をしていたマードックは、艦内放送で流れた情報に悲鳴をあげた。
    降下するにしろ、大気圏内用の装備や機器の調整が全くできてないと言うのに。

    フレイ「とにかく準備するしかないでしょ!」

    なり振り構ってる暇も猶予もない。フレイ達も人海戦術で大急ぎで準備を整えていく。

    フレイ「重いぃいい!!」

    そういうフレイは、まだ無重力であるが、運搬を頼まれた部材をコンテナに運び込むのに四苦八苦している。
    ブリッジも、担当する下士官のほぼ全てが大気圏突入シークエンスは初めて扱うことになるため、
    はっきり言えばぶっつけ本番も良いところだ。

    カズィ「降下シークエンス、再確認。融除剤ジェル、噴出口、テスト」
    ロメロ「降下シークエンス、チェック終了。システム、オールグリーン。
    修正軌道、降下角、6,1、シータ、プラス3!」

    いつでも行けます!というノイマンたちの声に頷いて、マリューは再びメネラオスとの回線を繋いだ。

    マリュー「閣下!」
    ハルバートン『うむ。頃合いだな。アークエンジェル、降下開始!無事に降りろ!
    これは命令だ!また宇宙で会おう!』
    ロメロ「降下開始!機関40%。微速前進。4秒後に、姿勢制御」

    アークエンジェルはメネラオス旗下の艦隊から離れ、徐々に地球へとその艦体を下ろしていく。

  • 165スレ主24/07/08(月) 21:02:57

    ハルバートン『メネラオスより、各艦コントロール。ハルバートンだ!』

    残存する各艦へ向けて、ハルバートン提督は声を荒らげた。

    ハルバートン『本艦隊はこれより、降下限界点までの、アークエンジェル援護防衛戦に移行する。
    厳しい戦闘であるとは思うが、彼の艦は、明日の戦局の為に決して失ってならぬ艦である!』

    ザフトとのくだらない戦争を終わらせるため。軍の上層部の腐敗を食い止めるため。
    そして、明日に繋ぐ命を守るため。アークエンジェルが降りることは提督にとって何よりも重要な事だった。

    ハルバートン『戦える艦は陣形を立て直せ!第八艦隊の意地に懸けて、
    1機たりとも我らの後ろに敵を通すな!地球軍の底力を見せてやれ!』

  • 166スレ主24/07/08(月) 21:18:34

    「足つきが動く!?チィ!ハルバートンめ!艦隊を盾にしてでも、
    足つきを降ろすつもりか!追い込め!降下する前に、なんとしても仕留めるんだ!」

    メネラオスが自ら最終防衛線を張る中で、ネルソン級のプトレマイオス、ドレイク級の三隻が援護に回るも、
    ヴェサリウスを含めたザフト艦二隻は釘付けにされていて、取りつく島もない。

    「し、しかしーー」

    オペレーターが弱音を吐こうとした瞬間、ディアッカたちの母艦たるローラシア級ガモフのブリッジが、
    突然燃え上がるように爆発した。
    トドメと言わんばかりに機関部にもビームが打ち込まれ、ガモフは完全に沈黙することになる。
    クルーが最後に見たのは、船の横側から現れた閃光が、ビームサーベルを輝かせてブリッジ側面に
    突撃してきた光景だった。

    恐ろしい速さ。その光は尾を引いて、さらにヴェサリウスに接近してくる。瓦礫とNジャマーが作用し、
    レーダーを見ているオペレーターには、敵がワープしながらこちらに近づいてくるように見えた。

    アデス「きょ…凶鳥…!!」

    アデスが顔を真っ青にしながら呟く。あの尾を引いて近づいてくる光は
    ーー純白の装甲を魅せる機体はーー間違いなく、流星だ。

  • 167スレ主24/07/08(月) 21:18:46

    その瞬間、ウィルの駆るアーウィンの行く手を遮るように、頭上からいくつもの弾丸が降り注いだ。

    クルーゼ『ようやく見つけたぞ、ウィル・ピラタ』

    急制動で姿勢を立て直すウィルの前に現れたのは、同じく純白に
    塗装されたシグー・ハイマニューバを駆るクルーゼと、彼と共に流星を追っていたイザークのデュエルだ。

    ウィル「クルーゼ…!」
    クルーゼ『無駄弾は使って無いだろうな…』

    クルーゼはわざわざ周波数をこちらに合わせて語りかけている。
    ウィルはぐっと操縦桿を握る手に力を込めた。

    ウィル「ここでケリをつける…!!」

    彼らの背後では、煙を上げたガモフがゆっくりと地球圏へと落ちていき、
    そして火が機関部に達したのか、爆発し、光が瞬いた。

    クルーゼ『さぁ、行くぞぉ!!ウィルゥゥウウウーー!!!!』

    それを合図にするように、クルーゼが凶鳥へ飛びかかるように襲いかかった。

    ウィル「来い!!クルーゼェェエエーー!!!!」

  • 168スレ主24/07/08(月) 21:34:15

    マリュー「ジャック船長が言ってた増援は!?」
    サイ「いえ、まだーー来ました!イエロー52!脱出シャトルです!」

     

    目前に迫った地球への降下作戦。サイが軌道計算をし、ノイマンが重力に引かれる中、
    操舵を全力で行なった結果、土壇場になってドレイクが伝えたローからの
    クルーが乗ったシャトルと合流することができた。
    マリューは僅かに望遠カメラを見つめたが、グレートフォックスは、
    磁気とNジャマーで乱れたレーダーにも望遠カメラにも映ってはいない。

    マリュー「着艦を急がせて!時間がないわ!」

    〝君たちの使命を果たせ。生きろ。生きて、使命を果たすんだ〟

    ジャックが最後に送ってくれた言葉と、彼らからの激励でもある増援に、
    マリューは感謝しながら自分の成すべきことを果たそうと心を引き締めた。

  • 169スレ主24/07/08(月) 21:34:29

    「ベルグラーノ、撃沈!」

    まだ戦いは終わっていない。大気圏ギリギリまで護衛を強行するメネラオスと、第八艦隊は、
    どこまでも追いすがってくるザフトのモビルスーツ群と激戦を繰り広げ、その戦力は静かに削り取られていく。

    「限界点まで、あと5分!」

    オペレーターの言葉に、ハルバートン提督はある覚悟を決めた。アークエンジェルは、
    この戦争を終わらせるために必要な力を持っている。ならば、
    宇宙に追いやられた自分にできる最大限のことをする。その覚悟を決めたのだ。

    ハルバートン「すぐに避難民のシャトルを脱出させろ!それと、総員に退艦命令を出せ」

    ここで下ろせば、アークエンジェルと道は違えど、地球軍の勢力下の航空施設へ降りることは可能だ。
    彼らも、そして自分について来た部下にも、自分の覚悟に付き合わせる必要はない。
    そう思った故の発言だったが、誰も船から降りる様子は見せなかった。

    ホフマン「シャトルは発射させますが、我々は降りませんよ、提督。
    ここまで来たなら、最期まで貴方に付き合います」

    側近のホフマンの言葉と共に、ブリッジのクルー全員がハルバートン提督へ敬礼を打った。
    彼は僅かに目を伏せて呟く。

    ハルバートン「すまん。みんなの命を、私が預かる」

  • 170スレ主24/07/08(月) 21:44:36

    地球の重力が及ぶ中で、ウィルとクルーゼは死闘を繰り広げていた。シグーの時とは違い、
    ハイマニューバとなったクルーゼの機体は、飛び回るウィルの機体に完全に追従していた。
    だが、それはウィルと同じ土俵へ、クルーゼが上がっただけにすぎない。
    制動の中で掛かる負荷も重力制御のおかげでウィルの操縦に淀みはないが、クルーゼは違う。
    意識が遠のきそうになるようなハイG機動の中でも、クルーゼは操縦桿から手を離すまいと
    気力と気迫で意識を繋ぎ止める。
    交差する中ウィルのアーウィンが手にするドッツライフルから放たれるビームを、
    クルーゼは極限状態の中で見極めて回避していく。
    ハイマニューバとして取り付けられたエンジンが、高熱を発して宇宙に鮮やかな燐光を煌めかせた。

    ウィル「う…ぐがぁ…ッハァー…くそぉ!!やるな!クルーゼ!!」
    クルーゼ『ぐぅ…き、君のために用意した機体だ!ッハァー…楽しまなくては勿体ない!!』

    目まぐるしく地球と宇宙の光景が入れ替わる中で、ウィルは歯を食いしばって
    通信機越しにいるであろうクルーゼに向かって叫んだ。
    ムウに付き合ってトレーニングを重ね、覚悟を決めているとはいえ、やはり精神負担が大きい。

    ウィル「…ぐぅ!…俺は、楽しまない!俺はお前を殺しに来たんだ!!」
    クルーゼ『そうだ!!それでいい!!』

    そうでないと困るとクルーゼは笑う。恥も外聞も、今まで自分が積み上げて来た
    [ラウ・ル・クルーゼ]という虚像を壊してまで、自分はこんな機体を手に入れて、ここに来たのだ。
    ボロボロになっていた体も、きちんと調整して、今現在で臨める最高の状態で、クルーゼはウィルと相対している。

    クルーゼ『もっと私に殺意をぶつけろ!!君との戦いで終わるなら本望だ!!』

    本物と戦う。暗闇しかなかった瞳に映った光に手を伸ばして、クルーゼは今この瞬間、
    ひとりの純粋な人として、パイロットとして、闘争本能の赴くまま、戦いを楽しんでいた。

  • 171スレ主24/07/09(火) 06:51:11

    地球の重力というものは凄まじいものだ。青い地球が見える宇宙にいると思いきや、
    そこがすでに地球の中ということもある。旧世紀の大国では、高度が80kmに達した時に、
    そこは宇宙と定義されていた。そして地球と宇宙の狭間には大気圏と呼ばれる層が存在する。
    大気圏は対流圏、成層圏、中間圏、熱圏、外気圏に分けられ、外気圏は高度500kmを超える。
    つまり学術的には、高度400kmあたりはまだ大気圏内ということになるのだ。
    地球帰還時に高度を下げてきて高度120kmに達すると、大気による機体の加熱が始まる。そうやって、
    地表から遙か宇宙空間までが、無段階につながっているため、どこからが宇宙という境は実は存在しないのだ。
    そこで一般的には、大気がほとんど無くなる100kmから先を宇宙と定義されている。
    つまり、高度としては250kmに位置するアークエンジェルはーーすでに地球の戸口の前にいるのだ。

    トール「ぬがあああああ!!操縦桿が重いいいい!!!」

    トールの叫びがグレーフレームのコクピットと、それが繋がるストライクのコクピットに響き渡った。

    「トール!!これは…地球の重力に引かれてるのか!?」

    まだ宇宙だと思っていたそこは、もう地球の内側だと、キラは今更になって気がつくことができた。
    ナタルが言ってきたフェイズ3は、高度120km直前、つまり機体が大気との摩擦熱で加熱が
    始まる寸前を意味している。

    ディアッカ『くっそー!マジでそろそろやばいぜ!』

    そういうディアッカたちも、すでに地球の引力に引かれていた。フェイズ3までに船に戻れれば、
    ナスカ級に備わる強力なエンジンで引力圏を脱出できるがーー目の前に動きが鈍っていく敵を残して、
    彼らは撤退することはない。

    トール「あーくそ!!しつこいんだよ!お前らぁ!」

    トールの悪態に応じるように、バスター、ブリッツ、イージスは重力に機体を引かれながらも、
    ストライクとグレーフレームの戦闘を続けていく。

  • 172スレ主24/07/09(火) 06:55:08

    ギリギリまで降下したメネラオスは、いよいよ限界を迎えつつあった。
    装甲外温度は既定値をとっくに上回っており、この重力から抜け出せなくなる
    最終ラインへ刻一刻と近づいて行っている。
    それでも、とハルバートンは前を見つめた。この役割だけは完遂せねばならないとーー。その時だ。

    「アークエンジェルから通信!!」

    大気圏ギリギリの影響なのか、酷いノイズが走る中で、マリューの声がメネラオスのブリッジに響く。

    マリュー『もうここまでで充分です、閣下。ありがとうございました』
    ハルバートン「だが、まだ敵機はーー」

    驚愕するように言うハルバートン提督に、マリューは落ち着いた声で彼に伝える言葉を紡いだ。

  • 173スレ主24/07/09(火) 06:55:18

    マリュー『ジャック船長の受け売りですが、閣下にも果たさねばならない使命がおありだと思います。
    なら、生きてください。生きて、その使命をーー』

    生きて、使命を果たせ。ふと、そんな声が聞こえた気がした。
    第八艦隊の提督として、地球軍のいち将官として、そして、この戦争に嘆く1人の人間として、
    自分の果たすべき使命をーー。

    ハルバートン「ーーわかった。必ず、必ず降りろよ。落とされたら、軍法会議ものだ」

    そう言って、ハルバートン提督はマリューには見えない敬礼をする。
    側近のホフマンや、ほかのクルーもモニターに見えるアークエンジェルへ敬礼した。

    マリュー『了解しました。閣下も、どうかお元気でーー』

    きっと、彼女たちも同じことをし、同じ思いを持っているのだろう。
    ハルバートン提督はそれだけわかれば充分だと言い、部下に指示を出した。

    ハルバートン「メネラオス、機関最大!!現宙域から離脱する!!」

  • 174スレ主24/07/09(火) 17:12:01

    『帰還命令!?』

    メネラオスが離脱を開始したことにより、旗艦に所属するワルキューレ隊にも撤退命令が発令されていた。

    ムウが駆るガンバレルストライクは、降下していくアークエンジェルを追うために、
    最短距離で大気圏に向かって降りていくことになる。

    『フラガ大尉!!我々も!!』

    そう言ってムウに着いて行こうとするワルキューレ隊のパイロットへ、ムウは叱咤を飛ばした。

    ムウ「馬鹿言うな!!アークエンジェルにこれ以上入るわけ無いだろ!!
    それに、お前たちには帰るべき船があるはずだ!!」
    『しかし!!』
    ムウ「生きろ!!人の死に慣れるな!!生きてお前たちの使命を果たせ!!」

    俺たちはいつもそうやってきた。ムウはそう言って、メビウスの若いパイロットを諭す。
    ムウ自身も、誰かの死に慣れすぎていたことがあった。戦争だ。戦場だ。
    敵はモビルスーツで、こちらは不利だから仕方がないと割り切って、自分を偽って。

  • 175スレ主24/07/09(火) 17:12:18

    そんな中で、ウィルと出会った。彼は、13歳という子供なのに、自分の大切な物の為に命懸けで戦った。
    そんな彼の姿を見て、ムウは自分の死にも無頓着になってしまっていたことを思い知らされる。
    自分の命を部品にして、戦場に出たならば、それは死ににいくことと大差がない。あまりにも無責任だ。
    仲間にも、そして兵士としても。そう思えるようになったからこそ、ムウは若いパイロットに言う。生きろと。
    ワルキューレ隊のパイロットはしばらく沈黙してから、ムウに向かって敬礼をした。

    『ーーまた宇宙で会いましょう。エンデュミオンの鷹』

    それだけ言って、彼らは離脱していくメネラオスへ帰還していく。そうだ。それが正しいんだ。
    そうムウは繋がっていない通信機に向かって呟くと、自分も為すべきことを果たすために、
    フットペダルを踏みしめてアークエンジェルめがけて降下していく。

    フェイズ3に移行するまで、あと10分ーー。

  • 176スレ主24/07/09(火) 21:20:19

    イザーク『な、なんだ…この動き…』

    クルーゼに同行していたイザークは、自分の隊長が純白の機体ーー凶鳥と出会った瞬間に、
    何かが変わったことを見抜いていた。
    いつもの余裕を保った機動ではなく、なりふり構わずに凶鳥へ飛びかかるように飛翔して、対する凶鳥も
    見たこともない独特な機動と速度を維持して、クルーゼのシグーと接敵しては離れ、そして交差を繰り返している。
    イザークが感じた異常性は他にもあった。
    すでに地球の引力に引かれているというのに、彼らの動きにまったくブレが無いのだ。こちらは重くなっていく
    操縦桿を握り、姿勢を維持するので必死だというのに、あの二機の削り合いは、
    まったく淀むことなく高機動の中を争いあっている。

    イザーク『付いていけない…くそぉー!!こうも何も出来ないなんて!!』

    銃口を向ける隙すらない彼らの攻防に、イザークはただ自分の無力さを噛み締めながら、見守っているしかなかった。

    ウィル「でああああぁぁあああ!!」

    そんな中で、ウィルは操縦桿とフットペダルの感覚に全神経を注ぎ込んで、クルーゼの猛攻に応戦していた。
    両腕のスラッシュハーケンからビーム刃展開したアーウィンは、スラスターであるプラズマエンジンを
    最大出力で吹かし、驚異的な機動を見せる。

    クルーゼ『はぁあああああぁああ!!』

    そのウィルの機動に、クルーゼも命を削る覚悟で応えた。
    この戦いの中に、不純物はない。思想も、信念も、戦いに対する意味もない。
    ただ、互いが全力を出し、命をかけ、技量を出し切り、離れ、近づき、削りあって戦う。
    ただ純然たる戦いが、クルーゼとウィルの間に展開されていた。

  • 177スレ主24/07/09(火) 23:08:35

    チャンドラ「降下シークエンス、フェイズツーに移行!大気圏降下限界点まで、あと4分!」
    ミリアリア「シャトル、着艦確認!」

    なんとか間に合ったと安堵するのも束の間、マリューはシャトルの乗員はそのまま待機させておくようにと伝えて、
    すぐにハンガーにいるマードックたちへ連絡を取った。

    マードック「場所を開けさせろ!すぐにでも機体が飛び込んでくるぞ!」

    マードックがマリューの通信を受けた最中にも、ローからのクルーを乗せたままのシャトルの移動が始まっていた。
    フレイは着艦したシャトルが持ち込んだ宇宙デブリを掃除機で吸い取っていく。機体が着艦した時に余計な部品で
    傷がつけば、大惨事のタネになりかねない。迫る大気圏。地球ーー重力の底に降りるまでもう時間はなかった。

  • 178スレ主24/07/09(火) 23:08:57

    キラ「もういい加減に止めてぇぇ!!」

    迫るフェイズ3の領域。それでも、ディアッカたちG兵器は引こうとはしなかった。
    重くなるストライクの挙動を必死に動かしながら、キラはアークエンジェルに取り付こうとする
    バスターやブリッツを蹴散らしていく。

    トール「キラ!深追いはダメだ!大気圏に捕まるぞ!」
    キラ「あう!機体が重い!」

    グレーフレームも、そしてG兵器も、その挙動は限界を迎えようとしていた。

    サイ「艦長!フェイズスリー突入限界点まで、2分を切ります!」
    ナタル「融除剤ジェル、展開用意!メビウスライダー隊を呼び戻せ!」

    ナタルの声に応えて、各機に、撤退信号が送信される。

    ムウ「くっそー…限界かぁ!」

    アークエンジェルの底が大気の熱で赤くなっていくのを目で見て、
    ムウはなんとかギリギリのところでアークエンジェルのハンガーに飛び込むことに成功した。

    トール「撤退だ!キラ!もう限界だ!」

    トールの声に、キラは咄嗟に問いただした。

    キラ「ウィルは!?」

  • 179スレ主24/07/09(火) 23:24:24

    クルーゼ『ウィルゥゥゥ!!』

    二機の純白の装甲が徐々に赤くなる中で、クルーゼは大気圏のわずかな気流に乗り、
    滑るような機動でラリーの背後を取った。取った!!クルーゼがそう確信した瞬間、
    前方を向いていたはずのアーウィンが、瞬時に背後にいたクルーゼの方へ向く。

    ーーー!!

    ウィル「負けるかぁぁぁぁぁあああ!!!」

    スラッシュハーケンのビームはクルーゼが咄嗟に反応した為、シグーのコクピットを捉えはしなかったが、
    代わりに特徴的なモノアイの頭部を貫くことになる。

    そして、ほぼ同時に放たれたクルーゼからの弾丸は、アーウィンの左肩の翼に直撃する。
    地球の重力の影響で、直撃で生じた亀裂は瞬時に広がり、砕けた。

    ウィル「このぉおお!!」

    それでも、ウィルは諦めなかった。破損するリスクを承知でスラッシュハーケンにエネルギーを限界まで送り、
    プラズマエンジンも限界稼働させて機体を力任せに突撃させる。
    過剰供給で肥大化したビーム刃を煌めかせて、頭部が無くなったシグーへ迫る。

    クルーゼ『ぐぅ…がっ…!!』

    直後、衝撃と鉄が焼ける音がシグーのコクピットに響いた。展開したビームサーベルは、不
    運にもシグーのライフルを持った腕部の肩を捉え、そのまま肩先から脇にかけて切り裂いたのだ。
    背部に備えられた主翼ごと切り裂かれたシグーと、片翼を失ったアーウィンは、
    機体制御を失いながら青い地球へと落ちていくーー。

  • 180スレ主24/07/09(火) 23:27:38

    ウィルdice1d100=87 (87)

    イザークdice1d100=13 (13)


    ウィルが勝ったら、イザークを捕虜にできる

  • 181スレ主24/07/09(火) 23:32:11

    アークエンジェルで、ナタルが叫んだ。

    ナタル「フェイズ3!融除剤ジェル、展開!大気圏突入!」

    底面から、アークエンジェルが真っ赤に染まっていく。大気の断熱圧縮による加熱は、
    人の想像を軽々と超える代物であり、ついに戦いの場は宇宙から地球へシフトしようとしていた。

    二コル『ディアッカ!イザーク!隊長!!』

    情報索敵を担当していたニコルはいち早く大気圏外へ離脱していたものの、ストライクを追って
    重力圏に飛び込んだディアッカや、凶鳥の相手をしていたクルーゼとイザークも、応答はもうできない状態だった。
    ニコルの叫びも、足を引きずりこむように働く重力と、磁気嵐の中でかき消された。

    キラ「ウィル!!」

    大気圏突入。フェイズ3は、キラもトールも直ちにアークエンジェルに戻らなければならない段階だったが、
    あろうことかキラはシールドを前面に構えてアークエンジェルから離れる方へ舵を切ったのだ。

    ムウ「嬢ちゃん!?何やってんだ!戻れ!」
    トール「キラ?!」

    アークエンジェルに既に着艦したムウと、着艦態勢に入っていたトールはキラが起こした行動に驚愕の声を上げる。
    キラが向かった先は、僅かにだがウィルの駆るアーウィンの反応を示した場所だった。
    アークエンジェルも大気圏の摩擦熱を防ぐため、視界を確保していたブリッジの監視窓の
    耐熱シャッターを次々に降ろしていく。サイやミリアリアの必死の呼びかけにも、
    キラは答えずに飛び出してしまった。

    マリュー「キラさん…!」

    マリューは不安に満ちた声をくぐもらせて、ただ彼の無事を祈るように手を握りしめる。

  • 182スレ主24/07/09(火) 23:49:55

    辺りが真っ赤に染まっていた。宇宙の黒と地球の青を映していたモニターの全てが赤く染まり、
    その光が非常灯のようにコクピットに座るウィルとクルーゼを鮮明に浮かび上がらせていた。

    クルーゼ『相討ち…いや、私の負けか…』

    ポツリと、クルーゼが呟く。互いの機体が最早制御ができない状態に陥っており、
    クルーゼのシグー・ハイマニューバは頭部と右腕、そして背面のバックパックウイングの大破。
    対してウィルのアーウィンの右のスラッシュハーケン、左の片翼が大破したが、
    安定性が悪くなるだけでまだ飛行可能だ。

    ウィル「お生憎様、アンタの心中する気なんてないぜ。こっちはこのまま降りれるしな」

    ウィルはアーウィンをストラーダ形態に変形させる。変形すればオプション無しで大気圏突入が可能だ。

    クルーゼ『ふっ…最高の戦いだったよ、ウィル・ピラタ』

    その言葉に、ウィルは驚いた。今のクルーゼの声はとても静かで、満ち足りてるように思えたからだ。
    そんな予想外の言葉に、ウィルは肩をすくめ、小さく笑ってしまう。

    ウィル「そうか?最低な戦いだったんじゃないか。最後が大気熱なんてさ」

    こういう泥臭い戦いを繰り広げるのは、話の最後辺りじゃないのかと呆れる。
    無線機の向こうでクルーゼが笑声を上げた。

    クルーゼ『はっはっは…久しぶりに、心から笑えた気がするよ』

    このまま、燃え尽きるのも、まぁ悪くはないかーー。全てを出し切った。全ての闘争本能をくべて燃え上がらせた
    体は、深い満足に包まれている。これまで抱えていた闇も、妬みも、怒りも、憎しみも、
    悲しみも全てを包んで終われるならーーそれでいいとクルーゼは瞳を閉じて思った。

  • 183スレ主24/07/10(水) 00:18:58

    そんな中で2人のモニターに一つの光が現れた。重力圏に捕まった味方艦や敵のデブリ?とも思ったが、
    その機体は独特なシルエットを露わにし、ウィルのアーウィンへと近づいてくる。

    キラ「ああぁぁぁぁぁぁ!!」

    ヘルメットのレーザー通信から聞こえてきたのは、
    雄叫びを上げながら重力で重くなった操縦桿を操るキラの声だった。

    ウィル「キラねぇ!?」
    キラ「生きてる!?ウィル!!」

    やっとアーウィンに接近できる位置まで来たキラは、ウィルの機体の状態を見て戦慄した。
    左の主翼が根元から損失しており、他にも様々な傷が確認できた。それだけ激しい戦いだったのだ

    ウィル「バカ!なんできた!もう大気圏に入ってるんだぞ!?」

    クルーゼとの戦闘で、ウィルは覚悟は決めていた。彼との本気の戦いになれば、周りを気にしている余裕はなくなる。最悪自分が死ぬことも覚悟した。だから、ウィルは単独で行動する道を選んだ。
    仲間をこの男との戦いで道連れにするわけにはいかないからーー。

    キラ「貴方を置いて行けないわ!!」

    だが、キラはそんなウィルの覚悟に真っ向から抗った。

    キラ「貴方を守るのが、私の一番戦う理由なの!だから助けにきたのよ!!」

    そう言ったキラに、ウィルは目を見開いた。

  • 184スレ主24/07/10(水) 00:28:46

    そうか、キラ。お前はそこまでーー自分の行く道を信じられるようになったんだな。
    安定性が悪くなるだけで飛べるし、このまま大気圏突入ができることを説明し、
    ストライクを背部に乗せる。そしてキラを見て微笑んだ。
    何時もの冷め切った無表情ではなく、キラが見たことも無い優しげな笑みだった。

    ウィル「どうした?顔が赤いぞ、熱のせいか?」
    キラ「からかわないで!」
     
    ウィルが肩をすくめてアーウィンを反転させようととした時だった。

    クララ「キラ!ウィル!」

    ストライクの後を追ってきたクララのリンドブルムが、Gフォートレス形態で
    真っ赤に赤熱しながらもこちらに向かって降下してきているのが見えた。

    キラ「クララ!」
    クララ「全く、ウィルもキラも無茶するよ!!私とウィルの出力なら
    アークエンジェルには辿り付ける!早く離脱するよ!!」

    三人の背後では、クルーゼの機体を追ってきたデュエルが、大破したシグーを抱え込もうとしていた。

  • 185スレ主24/07/10(水) 00:40:12

    イザーク『クルーゼ隊長!!』
    クルーゼ『イザークか!』

    何もできなかった怒りに加えて、自分の隊長をここまで追い詰めた凶鳥に怒りをあらわにするイザークは、
    離脱を試みている三人へ銃を構えた。

    イザーク『ちぃ!ストライクと凶鳥だけでも…!』

    その時、イザークとクルーゼ、そしてウィル達の間を一機のシャトルが通り過ぎていく。
    ふと、キラはそのシャトルの窓からこちらを見る少女と目があった気がした。
    シャトルが通過したことで、アーウィンを捕捉できなかったデュエルは、何発かビームを放つが、
    そのどれもがウィルのアーウィン脇を通り過ぎるだけだった。

  • 186スレ主24/07/10(水) 00:45:37

    イザーク『くっそー…よくも邪魔を…!』

    それは若さゆえの怒りだったのか、傲慢だったのか、
    イザークは事もあろうに通り過ぎたシャトルへ狙いを定めたのだ。
    それを見たキラの顔が青ざめる。とっさにストライクで届かないシャトルへ手を伸ばした。

    キラ「止めて!!それにはぁぁ!!」

    キラの叫びが宇宙にこだましーーイザークが怒りの声を上げた。

    イザーク『逃げ出した腰抜け兵がぁぁ!!』

    放たれたデュエルのビームが煌めき、その光がシャトルを貫こうとした瞬間。
    一機の影が、シャトルと閃光の間に滑り込んだ。

    イザーク『なっ…!?』
    キラ「え…!?」

    シャトル前に躍り出たのは、クララのリンドブルムだった。

    クララ「民間人に手出してんじゃないわよ!」

    クララの怒声と共に放たれたビームは、デュエルの頭部を撃ち抜いた。
    デュエルはそのまま大気圏を落ちていく。
    しかし、クルーゼのシグーは後から追ってきたイージスに回収されていった。

  • 187スレ主24/07/10(水) 01:02:55

    とはいえウィル達も無事ではいられない。
    重力制御と姿勢制御を担っている主翼を片方失っているアーウィンでは、
    重力に引かれながらの飛行が困難になっていた。

    ウィル「くそ!これじゃアークエンジェルに追いつけない」

    その様子はアークエンジェルでも確認できた。

    サイ「本艦とストライクアーウィン!突入角に差異!このままでは降下地点が大きくずれます!」
    ミリアリア「キラ!ウィル!戻れないの!?艦に戻って!お願い!」

    アークエンジェルとの位置が大きく離れて、ここまででは離れ離れになってしまう!

    マリュー「艦を寄せて!アークエンジェルのスラスターなら、まだ!!」

    マリューは迷わなかった。このまま彼等を見捨てるつもりはない。

    ナタル「しかし!それでは艦の降下地点が!」
    マリュー「ストライクを失えば意味がないわ!早く!」

    反論を許さぬマリューの言葉にノイマンはアークエンジェルのスラスターを吹かせて
    ストライクとアーウィンの元に向かう。大気圏の中で行った軌道変更は、
    ストライクとアーウィンを受け止めることになんとか成功。
    リンドブルムも、デュエルを逆さ吊りにした状態でアークエンジェルに着地した。

    ウィル「キラねぇ、クララ」
    キラ「何?」
    ウィル「シャワー浴びた後にコーヒーが飲みたい」
    キラ「私は炭酸ジュースがいいな」
    クララ「私も」

  • 188スレ主24/07/10(水) 12:21:41

    アークエンジェル。

    大気圏を突破したこの艦は、ひとまずの休息をとっていた。
    目的地から逸れた場所に腰を下ろした船は、大気圏で失った多くのものを癒すため、僅かにだがその羽を休めていた。

    トーリァ「宇宙護衛艦ローのMA隊隊長、トーリャ・アリスタルフ准尉、以下、25名の乗組員。
    アークエンジェルに合流し、これより貴官の指揮下へ入ります」

    ローからアークエンジェルへ移乗してきた乗組員の代表として、
    トーリャは艦長室の中でマリューやムウと敬礼を交わしていた。

    マリュー「ごめんなさいね、こんな状況で」

    申し訳なさそうにいうマリューに、トーリャは首を横に振って答える。

    トーリァ「いえ、先の戦闘では仕方がなかったことです。
    我々も、第八艦隊も、使命を全うするために軍務に徹したまでですよ。ラミアス艦長」

    そういうトーリャも、ジャックからの言葉を聞いていたのだ。使命を全うし、生き残る。
    ローの艦長が見込んだ精鋭部隊、といったところだった。

    マリュー「ありがとう…」
    トーリャ「では、我々は各士官への挨拶がありますので、これにて」

    すでにアークエンジェルの管制室でシステム構築の準備に入っている仲間の元へ向かうため、
    トーリャは再び敬礼を打つと部屋を後にした。

    マリュー「フラガ大尉。ごめんなさい。貴方にも」
    ムウ「2人の時はムウでいいよ、マリュー。俺も今はアークエンジェル所属となった身だ」

  • 189スレ主24/07/10(水) 12:35:40

    そうね、と弱々しく言うマリューを見て、ムウはやるせなさそうに息をついた。ハルバートン提督の前や、
    降下指揮の間は気丈に振る舞っていたが、ジャック船長や多くの仲間を失ったことに、
    マリューが気を落としているのは明白だった。

    マリュー「ジャック船長は…」
    ムウ「あの艦なら大丈夫さ」

    そう言ってムウは笑ってマリューを励ますように肩に手を置いた。

    ムウ「なんたって、化物みたいな艦と船長だぜ?そう易々と落とされて堪るかってんだ」
    マリュー「そうね…」

    マリューはまだ若いし、そもそも技術士官だ。しかし敵に包囲されたこの状況下を艦長として、
    クルーの命やハルバートンの意思を背負わなければならない。

    ムウ「それよりもだ。ここがアラスカ、そしてここが現在地。
    嫌なところに降りちまったねぇ。見事にザフトの勢力圏だ」
    マリュー「仕方ありません…あのまま、ストライクと離れるわけにはいかなかったのですから…」

    切り替えるように言ったムウの言葉に、マリューはコーヒーが入ったマグカップを手にとって呟く。
    現在地の中東ジブラルタルは今はザフトに占領されて敵の一大拠点と化している。それに伴い、
    近海の制海権はほぼザフト軍に握られていた。のこのこ出て行けば、
    群がってくるザフト軍に袋叩きにされるのは明白だった。
    勿論、こんな敵地のど真ん中では援軍も期待できない。アークエンジェルは自力で脱出し、
    敵陣を横断しなければならないのだ。

  • 190スレ主24/07/10(水) 12:36:19

    しかしマリューは、あの大気圏突入時の決断が間違っていたとは思っていない。
    2人の命を見捨てる事ができなかったのだ。無論、それにはムウも同意だ。

    マリュー「ともかく…本艦の目的、目的地に変更はありません」

    アークエンジェルと、ストライクを無事にアラスカ本部へ送り届け、G兵器計画を完成させる。
    それが、ハルバートン提督の意思であり、ジャックや多くの犠牲を払って進んだ道の行く先だというのならーー。

    ムウ「大丈夫か?」

    そう言って考え込んでいたマリューを覗き込んだムウに、彼女は大丈夫と言って、疲れた笑みを浮かべてうなずいた。

    ムウ「副長さんとも?」

    不意の質問に、マリューは僅かに身じろぎした。
    正直、問題は外ばかりではない。マリューはナタルとの間に幾つかの食い違いがあると感じていた。
    ナタルの事は嫌いではないし判断や指示は的確だ。自分には過ぎた副官であるとも思っている。
    だが規律や規則よりも、クルーを重視しがちのマリューとは意見が衝突してしまう時があるのも確かだった。

    マリュー「大丈夫よ……」

    幾分、低い声で答えるマリュー。ムウもその事に気付きながらも「なら、OKだ」と答えるに留めた。

    ムウ「なら、オッケーだ。さてと、ちょっとウィル達の様子聞いて、俺は寝るよ。
    マリューも、もう寝な。艦長がそんなにクタクタのボロボロじゃあ、どうにもならないぜ?」

    艦長室を出て行くムウは気だるげにしていたが、その姿勢は立派に部隊の長を表している。
    部屋を出て行ったムウへ、マリューは小さくありがとうと言って、
    疲れを少しでも癒すためにシャワールームへ向かうのだった。

  • 191スレ主24/07/10(水) 12:40:31

    ウィルの今回の経験値89+dice1d100=83 (83)

    本気のクルーゼと激闘すればこれぐらいはあるだろう


    100以上なら覚醒アセム・アスノ状態なので、シュラより強い。

    ただし、精神干渉を防げるかどうかは不明なので必ず勝てるわけではない。


    ウィルの疲労dice1d100=35 (35)


    50以下は動けなくなる(汗が踝まで溜まっている)

    50を超えると吐瀉物でバイザーを汚す

    70以上で気絶

  • 192二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 12:46:02

    とうとうシュラ超えたよ

  • 193スレ主24/07/10(水) 22:41:27

    アルマ「マニュアルは一応見たけど、なかなか楽しそうな機体だな」

    地球に降り立ったアークエンジェルのハンガーの中で、作業服に着替えたアルマは、
    目の前に鎮座する四機の[大気圏用支援戦闘機スカイグラスパー]を眺めていた。
    元になったのは、[F-7D スピアヘッド]。
    コックピット前方にカナード翼を持つクロースカップルドデルタ方式を採用した双発のVTOL戦闘機だ。
    スカイグラスパーは、ストライクの大気圏内支援を目的とした戦闘機だが、アラスカ本部を中心とした
    軍上層部においてMSが主力兵器となることを疑問視する声も挙がっていた。そ
    のためにこの機体は、次期主力戦闘機としての運用も視野に入れて開発されているらしい。

    マードック「しかしまぁ、ストライカーパックも付けられますって…戦闘機は宅配便か?」

    マニュアルに書いてあった通り、この機体にはストライカーパックをノンオプションで装備可能となっている。
    直接スカイグラスパーの武装として使用することもできると記述されているが、
    パックシステム対応を含めた翼端マウントラックの採用や、各種火器類の搭載によって、
    航空力学的には理想的なフォルムとは言い難い。
    カタログスペックでは、素早いピッチ・ロール能力を有しており、運動性は高いとされているが、
    元の世界では学者レベルの航空機マニアだったアルマはイマイチ信用できなかった。

    ウィル「戦闘機で配達なんて、ストライクは金が掛かる兵器だとつくづく思い知らされるよ。全く。」

    おそらくこの機体は、ハルバートン提督が試験的にアークエンジェルへ運び込んだものだろう。
    しかし、ここは戦場だ。実戦経歴がない兵器より、確実性のあるスピアヘッドのほうが、
    迅速に対応することができるだろう。

  • 194スレ主24/07/11(木) 00:02:11

    トール「はっはっはっは、どんなとこにもお届けできますってね」
    キラ「充電できるのありがたいけど、誰が乗るの?」

    ストライクと、背部に同一規格のコネクタがあるグレーフレームに乗る二人は論外。
    ウィルもムウもアルマも自身の機体がある為、乗る気はなかった。

    ムウ「おい!ウィル!」

    そう叫んでハンガーに入ってきたのは、ムウだった。
    まだ重力に慣れていないのか、肩で息をしながらウィルの元へ駆け寄ってくる。

    ウィル「ムウさん!」
    ムウ「んなことはどうでもいい!お前、体はどうにもないのか?」

    そう言って、ムウはウィルの両肩を掴んで凄むようにウィルを見つめた。
    そんなムウに、ラリーは手をムウと自分の間を遮るように上げて、いつもの澄まし顔を浮かべる。

    ウィル「まぁ少ししんどい程度ですけど、動けないわけじゃないんで」
    ムウ「あのなぁ…お前はあのクルーゼと戦ったんだから、こういう時くらいしっかりと…」

    そこまで言って、ムウは自分が掴んでいるウィルの体の異変に気がついた。
    微かにだが震えている。よく顔を見ると、目の下にはクマができていて、顔色も悪そうだった。
    違和感に気がついたのも、ムウがウィルの肩を掴んだ時に、
    彼が一瞬よろめいたように見えたからだが、それも恐らく…。
    だが、ウィルの目はいつもよりも冴えて見えるような気がした。
    それはまるで、溢れ出そうになる殺気や怒気を必死に押さえ込もうと我慢する目だ。

  • 195スレ主24/07/11(木) 00:09:25

    ウィル「すいません、今はこうさせてて下さい。手を止めると、自分がどうにかなってしまいそうで」

    そう言って、ウィルはムウの手をゆっくりと払いのけた。
    明らかに体調が悪いのに、ウィルはその狂気じみた精神力で、迫りくる痛みや苦痛をねじ伏せている。
    ねじ伏せてしまえてるのだ。ムウはその異常な強さに愕然とした。
    果たして自分は、ウィルと同じ状況に立って、彼と同じように振る舞えるのか…
    それを察してしまったムウは軽く頭を掻いてため息をついた。

    ムウ「まぁ、気持ちは分かるけどな。落ち着いたら寝ろよ?」
    ウィル「はい…ありがとうございます」

    それだけ言ってムウは頷くと、ウィルの隣に並んで立った。

    ムウ「しかし、ハルバートン提督の計らいとはいえ、この状況で昇進してもなぁ。
    給料上がんのは嬉しいけどさぁ、いつ使えんの?」

    アークエンジェルのクルーは、ハルバートン提督の計らいで一階級昇進ということになっていた。
    今の状況ではそれを使うことすら怪しいので、手放しに喜べない。

    ウィル「アラスカに着いたら結構な金持ちになってそうですね」
    ムウ「勘弁してくれよ…」

    ウィルはその後、自機の点検があるからと言ってムウの隣を離れていった。
    そのおぼつかない足取りを見ながら、何も言ってやれないムウは自分に腹が立っていた。
    あの時、ウィルとキラを止めることも、助けることもできなかった。
    ただあの時、何かをしてやることは不可能だったという思いもあり、
    それを仕方ないと肯定している自分に、ムウは悔しさを噛み締めている。
    もっと、自分に何かを成す力があればーー。

  • 196スレ主24/07/11(木) 00:15:40

    マードック「ガキ共は野戦任官ですかい、ボウズ達は少尉ですって?ま、パイロットですからねぇ」

    そう考えにふけっているムウに、マードックが疲れた顔をしながらも笑顔でそう言ってくれた。
    言ってくれた内容は何一つとして笑えないものだが。

    ムウ「ああ。その他も、まとめて二等兵さ。やれやれ…」

    ウィル達はこれまで功績があったこともあるし、MSのパイロットでもあるので、
    楔の意味を込めて少尉に位置付けたのだろうと、ムウは邪推する。
    戦争ってのは、何から何まで、関わった全てを飲み込んでいくものだなとムウは心の中で毒づく。
    人としての感情も、道徳心も、戦争なら仕方ないで片付けられる世の中だ。なんとも気分が悪い。

    マードック「あの機体のパイロットも命に別状はないか……。全く、コーディネイターっては凄いもんですよ」

    そう言うマードックの視線には[デュエル]の姿があった。
    PS装甲のおかげで大気圏突入には成功したが、高温に熱せられたコクピットは、
    ナチュラルが長時間耐えられる温度を超えていたらしい。
    しかしパイロットであるイザークは気を失った状態で発見され、
    命に別状がない事の確認と、応急処置を施した後に牢屋に入られている。
    未だに意識は戻っておらず、意識が回復した後に事情聴取が行われる。

  • 197二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 07:28:50

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  • 198スレ主24/07/11(木) 08:08:23

オススメ

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