- 1二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 18:59:03
早速働き始めた錠前サオリだ。業務は普通のチラシ配りと変わらんな。だが指定された配布時間が人の少ない深夜なのは何故だ?歩合制だからなるべくたくさん配りたいのだが。まあ、それ故の高額な報酬のだろう。
「……ところで、チラシの内容だが」
私はチラシを1枚手に取り、雇い主のロボットに視線を向ける。チラシの内容は尋ね人、飲食店や不動産の広告、怪しい商法の勧誘、その他色々、バラバラだった。
「問題ありません、内容よりも配ることに意味があるのです」
「………そうか」
まあいい。深くは聞かない、真面目に、任された仕事をこなす。そこそこ色々なバイトをして身に付けた鉄則だ。それに人の少ない深夜……とは言っても、配る場所は繁華街の外れにある横断歩道の前で、夜の街から帰る市民がやってくるはずだ。1枚500円だから、たった10枚で1万円。気前がいいな、張り切っていこう。
チラシの束を受け取った後、雇い主は私にいくつかの注意事項を話してきた。時間は深夜の2時間だけ、押し付けるようなことはしない、付近の店や通行人に迷惑をかけない、業務終了後に余ったチラシは回収して給与を渡す。そして1番の注意事項は『赤い制服を着た生徒には絶対チラシを渡すこと』。
「彼女に渡すことに意味があります。きっと受け取るでしょうが、最悪押し付けても構いません。これだけは、絶対に、よろしくお願いします」
雇い主はそれ以上何も語らず、その場を去っていった。
………色々思うところはあるが、とりあえずやってみよう。 - 2二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:00:00
(1日目)
「どうぞ」
「うぃ〜、え?ああ、ありがとね!」
お酒を飲んだ帰りなのだろう、上機嫌な獣人(白猫)は笑顔でチラシを受け取ってくれた。
チラシ配りは順調に進んでいる。予想通り、この横断歩道前には繁華街で楽しんだ帰りの住民がよく通った。そして大抵の者が先ほどの獣人のように気持ちがふわふわしているため、チラシを快く受け取ってくれる。
1時間が経過して、配れた枚数は20枚。これで2万円だ。楽しくなってきたな。私は鼻歌混じりに次の通行人を待った。
少しすると、賑やかな話し声が近づいてくる。数は4人、生徒だ。身に付けている制服は……トリニティ?珍しいな、真夜中に出歩くのは校則違反だろうに。 - 3二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:00:43
(信号機の誘導音、カッコウの鳴き声)
「かなり遅くなったね、バレたらどうなるんだか……」
「ロマンの前には瑣末な問題だよカズサ。真夜中にしか空いてないスイーツショップ、そのために秘密の真夜中の冒険……スリルとロマンがあっていいじゃないか」
「このロマンはまずいって、ナツ」
私が立っている歩道とは反対側から、横断歩道を渡りながら楽しそうに言い合っている。
「バレたらどうしようかな、正義実現委員会の人達ってチョコミント好きかな?どう思うヨシミちゃん?」
「え?アイリ?その持ち帰りのスイーツで賄賂しようとしてる?色んな意味で通じないと思うけど」
「そうだよねっ、賄賂はダメだよね……!」
……なるほど、美味しいスイーツのために抜け出してきたと。事情はどうあれ、好きなことのために突き進んでいる姿は……眩しいな。
いや、感傷に浸っている場合ではない。仕事だ仕事。よく見ると四人組の中に赤い上着を着ている者がいる。あれも制服と判定していいかは分からないが、疑わしきはチラシを配れ、だ。押し付けてもいいらしいが、なるべく彼女らが受け取りそうなチラシの方がやりやすいだろう。私はチラシ束をパラパラと捲る。お、いいのがあるじゃないか。
「どうぞ」
横断歩道を渡り切り、こちらにやってきた生徒達に……いや赤上着の子にチラシを差し出す。
「え、ああチラシ?別にいらな……待って!!」
彼女は突然叫び、私からチラシを引ったくった。 - 4二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:01:27
「どうしたのヨシミちゃん?これ……さっき行ったお店のチラシ?」
「今更チラシもらっても意味な……いやこれは!」
「クーポン、ついてるね。半額のやつ……!」
たまたまスイーツショップのチラシを見つけたから渡してみたが、どうやら大当たりだったらしい。4人は大喜びで、またあのスイーツショップに行こうと計画を立てている。夜更かしや抜け出しを気にしていた先ほどまでの姿はどこかに飛んで行ってしまったようだ。いいことではないかも知れないが、これが青春という奴なんだろうな。
「「「「ありがとうございます!!」」」」
「ああ、役立ったのなら何よりだ」
帰路を軽やかに駆けて行った4人。自然と顔が綻び、その背中が見えなくなるまで見送ってやった。
……さて、仕事の続きだ。気持ちを切り替えよう。そう思った瞬間、
(信号機の誘導音、通りゃんせ)
「チラシ、貰っていいですか?」 - 5二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:01:38
一枚500円で20枚配って二万…?
- 6二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:02:17
「うわっ!?」
思わず変な声を出しながら飛び退く。油断していたことは認めよう、だが近づく気配を一切感じなかった。何者だ……!?
声の主を見やると、私くらいの年頃の女だった。赤い制服を着ていて、目は黒い髪で隠れて見えない。そしてキヴォトスの生徒ならあるはずのヘイローが見当たらない。ヘイローは意識を失うか、死なない限り消えないものだ。それがないと言うことは、外の世界の人間か?でも何故ここに?
警戒の視線を送りながら彼女をよく観察する。何か……まずい気がする。形容できない気配……恐怖を感じる。こんなのに気付かれずに近付かれたと理解し恐怖が倍増する。よく分からないが、こいつは絶対にまずい……!
そんなことを考えていると、彼女は口を開いた。
「チラシ、欲しいんですけど」
「あ……ああ、分かった」
自分からチラシを要求してくる奴は初めてだ。それに赤い制服……。こいつが注意事項の生徒なのか。それなら尚更渡さないといけない。私は適当なチラシをつまみ、彼女に手渡した。
「……どうぞ」
「ありがとうございます」
ボソボソと、しかし脳に直接入り込んでくるような声だ。彼女はチラシを受け取るとすぐに立ち去り、夜の闇に消えてしまった。
何だったのかは分からない。だが私は、彼女にチラシを渡せたことを心から安堵していた。信号が赤に変わり、また誘導音が流れる。カッコウの鳴き声……あれ?さっきは通りゃんせが流れていたような……? - 7二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:02:56
1枚1000円じゃないと計算合わないね
それはそれとして続き待ってたぞスレ主 - 8二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:03:19
(4日目)
「どうぞ」
「ああどうも〜、何これ?アハハ〜」
今日も元気にチラシを配る錠前サオリだ。繁華街帰りの千鳥足達が嬉しそうにチラシを持って行くおかげで、結構稼げてるのではないだろうか?今日も給与が楽しみだ。
そんなことを考えてると、「お〜い!」と私を呼ぶ声。初日に会ったトリニティの生徒達が、横断歩道の向こうからこちらに手を振っていた。
(信号機の誘導音、カッコウの鳴き声)
私も手を振り、渡ってくる彼女達を出迎えた。
「お久しぶりです、チラシのお姉さん」
「ああ、久しぶりだな。あのスイーツショップに行ったのか?」
「お姉さんから貰ったクーポン……じゃなくてチラシを使ってね。本当にありがとうございます」
緑のリボンを付けた生徒と猫耳の生徒が丁寧にお辞儀してくる。その横で赤上着の生徒が今日の戦利品を誇らしそうに掲げて見せた。
「おかげでいっぱい買えちゃった!だからお姉さんにも少しあげるわ!」
「何?……気持ちはありがたいが、ただチラシを渡しただけだ。そこまでされるようなことじゃない」
「まあまあお姉さん。こう言う小さな出会いもロマン、私達はそれを分かち合いたいのだよ」
そう言ってピンク髪の生徒はケーキの入った紙箱を私に押し付けてくる。少し開けてみると、中にはイチゴのショートケーキが入っていた。甘い香りが私の頬を緩ませる。 - 9二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:04:52
- 10二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:05:49
「……せっかくだから受け取ろう。感謝する」
「どういたしまして。これもまた、イチゴだけに一期一会ってね」
「ブッッ!!」
「ナツ、何その親父ギャグ?全然面白くな……え?」
「お姉さん?大丈夫ですか!?」
「ゲホッゲホッ……フフフ……ああ、いや。大丈夫だ」
「へー、お姉さんそう言うの好きなんだ。まぁいいんじゃない?」
赤上着はそう言って私の背中をさすってくれた。恥ずかしくて顔が熱い、多分今真っ赤になっている。私はそれをこの子らに見られたくなくて顔を逸らしたのだった。
(信号機の誘導音、通りゃんせ)
「チラシ、貰っていいですか?」
「っ……」
突然の来訪、4日目だが慣れんな。びっくりしたことを悟られないよう冷静を装って、声の方に向き直る。そこにいたのはあの赤い制服の生徒。
「うっ……!」
「ひっ……!」
猫耳とピンク髪は彼女に、私と同じように嫌な気配を感じたのだろうか?彼女に気づいた2人はその顔を青ざめさせ、肩が跳ね上げていた。 - 11二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:06:33
「何よ?今私達がお姉さんと話してるんだけど?」
「ヨシミ、やめて」
「何よカズサ!……って、どうしたの?何でそんな震えてるの?」
「ナツちゃん……?い、痛いよ……」
「ごめんアイリ……ごめん」
猫耳は赤上着の、ピンク髪は緑リボンの腕をそれぞれ掴んでいる。必死過ぎて力加減ができずにいるようだ。その様子を一瞥し、私は後ろにいる4人を守るように立ち塞がる。赤い制服の生徒は表情も纏う雰囲気も一切変えず、手を差し出してきた。
「……どうぞ」
「ありがとうございます」
私からチラシを受け取った彼女は何事もなかったかのように立ち去った。彼女が見えなくなるその瞬間まで、私達はその背中を凝視していた。
「カズサ、ナツ、大丈夫?」
「うん……大丈夫」
「…………何?アイツ」
「どこの制服かな?見たことがないね……」
口々に不安と恐怖を語る4人。やってしまったな、私はともかく、一般人のこの子らをアレと関わらせちゃいけないはず。4日続けていて、確信に近いものがあった。こう、感覚的で、言語化が難しいのだが、あの時のユスティナ達と同じ気配?雰囲気?とにかくそんなものを彼女には感じるのだ。 - 12二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:07:13
『問題ありません、内容よりも配ることに意味があるのです』
『彼女に渡すことに意味があります。きっと受け取るでしょうが、最悪押し付けても構いません。これだけは、絶対に、よろしくお願いします』
雇い主の言葉を思い出す。念を押された理由、このバイトの給与が高額な理由、注意事項。全てあの赤い制服の生徒が原因なんだ。ならやることは決まってる。注意事項に従って真面目に働く、そして………。
「………お前達、早く帰れ。もう二度とこの横断歩道には近づくな」
「あっちょっ、押さないでよ!」
赤上着の背中を押し出し、残りの生徒も同じようにする。猫耳とピンク髪は気持ち優しく押してやった。
とにかくこの4人はトリニティに帰らせよう。そして二度と来ないように釘を刺す。こう言うのは首を突っ込まなきゃいいんだ。距離を取れば、安全だ。
「……お、お姉さんは大丈夫なんですか?」
「何?私か?」
不意に緑リボンが私に問いかけてくる。表情を見ると、不安と困惑、そして私への心配が浮かんでいた。他の3人も同じように私を心配するそぶりを見せていた。
……たまたまクーポンのついたチラシをくれてやっただけなのに、ケーキを買ってくれた上に心配もしてくれる。彼女達は、律儀というかお人好しというか。
「ケーキをありがとう、美味しく食べさせてもらう。……私は大丈夫だから、気をつけて帰れよ」
そう言って、私は笑顔を作り、手を振った。4人は納得はしてないが、飲み込んでくれたようで、わたしに手を振り返して去って行った。これで大丈夫だろう。……さて、仕事の続きだ。
その後、数人にチラシを配ったところで今日の業務は終わった。
あの4人にああ言った手前、引き際は考えないとな。もう少しだけやったらバイトを辞めよう。そんなことを考えながら拠点の廃墟に帰った。 - 13二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:08:56
(5日目)
バイトを始めて5日が経過、段々こなれてきたな。ここを通る市民にチラシを渡すだけのバイト。普通のチラシ配りと違う所は、不気味な奴が1人、毎日来ること。
あの赤い制服の生徒は、今のところ変な動きはしていない。毎日決まった時間に来て、チラシを貰ってどこかに行く。それの繰り返しだ。
私がこの仕事を続けているのもそれが理由だ。チラシを渡せば大人しく帰るから。渡さなかったらどうなるか……試すつもりはない。
昨日来たあの4人……トリニティの生徒達は大丈夫だろうか?ちゃんと帰れてるといいのだが。あと私もいつ頃バイトを辞めようか。あと2日は続けてもいいか?……まあ、チラシを配りながら考えようか。
「どうぞ」
「あらどうも〜……って、あれ!」
チラシを受け取った獣人(ポメラニアン)の婦人が急に叫んだ。
(車のエンジン音)
フラフラと、だがすごいスピードで走る車がこっちに近づいて来る……いや、突っ込んでくる!暴走車両だと!?
「危ない!」
(衝突音と破砕音)
咄嗟に婦人を抱き寄せ、飛び退く。彼女を抱えながら歩道をコロコロと転がり、距離を取った。投げ捨てたチラシがパラパラと舞い落ちる。 - 14二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:09:36
「おい、大丈夫か?……おい!しっかりしろ!」
まずいな、頭を打ったらしい。気を失っている。まあ安静にしていれば良いだろう。それよりも……。
「信号機が折れてる……あの場にいたら下敷きになってたな」
私は婦人を歩道の隅に寝かせながら、先ほどまで自分達がいた場所を見た。信号機に車が突っ込み、その衝撃で折れてしまっていた。車も酷いものだ、盛大に凹んでいる。早く中の人間を助けなくては。
「お姉さん!大丈夫ですか!」
「っ!?」
覚えのある声の方へすぐに顔を向けた。あの4人だ、車が通らないのをいいことに信号無視してこちらに駆け寄ってきた。いやそれよりも!
「来るなと言っただろ!どうして!」
「危険だって昨日言ってたけど、だったらアンタもヤバいんじゃないの!?」
「だから様子を見に来たんです。ごめんなさい……!」
「私とナツは反対したんだけど……ヨシミとアイリはお姉さんを心配していたよ」
「………全く」
見ず知らずの私のことなど、気にかけてもしょうがないだろうに。今みたいに目の前で事故が起きたからほっとけない、というのなら分からんでもないが。……いや、彼女らにとっては同じことなのだろう。本当に眩しいな。先生や、あの時空を晴らしたアズサの友人ファウストのような、心の眩しさを私は感じた。 - 15二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:12:19
「急がないとまずいんじゃない?中にまだ誰かいるんでしょ?」
いつの間にか隣に立ち、私のコートの裾を引っ張って来るピンク髪の生徒。見上げて来る彼女に私は頷いた。
「助けるぞ!手伝ってくれ!」
「はい!頑張ります!」
「了解」
「まっかせなさい!」
「おー」
思い思いの声を上げる4人を引き連れ、私は車に駆け寄った。手始めにピンク髪にヴァルキューレへの通報を頼み、緑リボンと赤上着が手当の準備とついでに婦人の介抱、猫耳は私と共にドアの破壊をするよう指示を飛ばす。猫耳は歩き方や警戒の仕方が他3人と比べて手慣れていた。訓練を受けていたわけではないが、荒事慣れしているのだろう。それを見込んでの人選だった。
実際その勘は当たっていたようで、猫耳は割れた窓ガラスや鋭利な破損跡に怖じ気づくことなく車に手を伸ばし、ドアの破壊を手伝ってくれた。それどころか、
「うわ……ちょっと入らないと運転手さん引っ張り出せなさそうだね」
「そうか、なら私が」
「待って、お姉さん色々大きいからダメだと思う。私に任せて」
そう言うや否や、猫耳はまるで本当の猫のようにするりとひしゃげた車の中に入って行った。
「ハハッ……頼もしいな」
「意識はないけど無事みたい。お姉さん、掴んだよ!」
「よし、お前ごと引っ張るぞ!」
私はニヤリと笑って、猫耳の足首を掴んだ。
(信号機の誘導音、通りゃんせ)
「チラシ、貰っていいですか?」 - 16二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:17:43
「っ!!」
このタイミングでか!!視線だけ真横に向けると、あの赤い制服の生徒が私を凝視していた。……いや、目が前髪に隠れて実際のところは分からないのだが、刺すような視線をひしひしと感じるから見ているのだろう。
「お、お姉さん!?アイツいるの!?ねえ!!」
車の中の猫耳も気配を感じたのだろう、震えた声を上げている。
「ナツ、下がっていいわよ!」
「ナツちゃん、こっちおいで……!」
「分かった、ごめん……」
向こうの3人を見る。顔色を悪くしたピンク髪を緑リボンが抱き寄せ、赤上着が一歩前に出て守るように両手を広げていた。
「チラシ、欲しいんですけど」
もう一度赤い制服の生徒を見る。表情から感情は窺えない……いや、ないのか?コイツに感情は。どちらにせよ視線は私に向けたまま、その手をこちらに伸ばしている。
「……見て分かるだろ、今はそれどころじゃない。そこに散らばってる奴を持って行ってくれ」
「貴女からチラシを貰いたいんですけど?」
「は!?」
「早くチラシ下さい」
意味が分からない。常識的な発言と行動をして欲しい。ちょっと常識に疎かった元アリウスの私にそう思われるの相当だぞお前。
『赤い制服を着た生徒には絶対チラシを渡すこと』
不意に注意事項が頭をよぎったが、緊急事態なんだ。もういい、無視だ無視。私は赤い制服の生徒から顔を逸らし、猫耳の足首を引っ張った。
「ぷはっ!」
猫耳がしっかり掴んでくれていたおかげで、運転手がヌルッと出てきた。ボロボロで意識はないが、命に別状はなさそうだ。私は運転手の肩を持ち上げた。 - 17二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:18:26
「チラシ下さい」
「よし、お前はそっちを持て。みんなと合流するぞ」
「チラシ下さい」
「でも、アイツ大丈夫なの?」
「チラシ下さい」
「全部終わって、それでも待ってたらくれてやるさ。今はこっちが最優先だ」
「チラシ下さい」
「……それにお前も、コイツの近くにはいたくないだろう?」
「チラシ下さい」
「……うん。分かりました」
「チラシ下さい」
私達は運転手を抱えながら、3人と合流した。運転手を婦人の隣に寝かせ、改めて外傷がないか確認する。細かい擦り傷と、鞭打ちと、大きなたんこぶくらいか。キヴォトス人の頑丈さが功を奏したな。……いや待て、酒臭いな。飲酒運転か?私は顔を顰めた。
「チラシ下さい」
「お姉さん、大丈夫ですか?あの人、ずっとチラシ下さいって……」
「チラシ下さい」
「……その2人についてやれ」
「チラシ下さい」 - 18二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:19:34
赤い制服の生徒はこちらを凝視している。私はその視線から隠すように、4人を抱き寄せた。チラシを渡しに行こうかと思ったが、震えているピンク髪と猫耳、それを見て不安になっている赤上着と緑リボンを放っておけず、寄り添ってやることにした。
「チラシ下さい」
もうすぐヴァルキューレが来るはず。
「チラシ下さい」
その時に怪我人とこの4人を救急車かパトカーに乗せてやって、
「チラシ下さい」
その後にでも渡せばいいだろう。
「チラシ下さい」
きっとそれでも遅くはないはず。
「チラシ下さい」
だから早く来てくれヴァルキューレ。
「チラシ下さい」
早く来い……!
「チラシ下さい」
「もういいです」
その瞬間、私は全ての選択を後悔した。 - 19二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:20:35
さっさとチラシを渡せばよかった。人命救助や怯える4人の保護などかなぐり捨てて、最優先であいつにチラシを渡すべきだった。仮に運転手が大怪我で死にかけてたとしても、いや今すぐ助けないと死ぬとしても、無視してチラシを渡すべきだったんだ。
注意事項のその意味を、あの赤い制服の生徒が突如発した悍ましいプレッシャーを理解した。余りにも遅かった。
「おい!待て!今チラシを________」
(足音)
「うっ、ああああああ!!」
奴に駆け寄ろうとした瞬間、強烈な頭痛が私に襲いかかった。耐えられず、その場に倒れた。
「きゃあああああ!!」
「いっ、痛い痛い痛い!!」
「み……みんな……!」
「うぅ……ひっぐ……つぅ……!」
振り返ると、4人も頭を押さえて呻いている。それだけじゃない、まだ意識のない婦人と運転手も苦しそうに顔を歪めていた。
(足音)
その足音が聞こえた瞬間、痛みがもう一段上がった。痛みで涙が出て来る。いや、違う!普通の涙じゃない!
尋常じゃない量の水が目から溢れ出ている。それと同時に体が乾いていくような感覚がする。搾り取られる……頭痛に水を搾り取られる! - 20二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:21:26
(足音)
苦しんでいる場合じゃない、チラシを渡さなければ。私はちょうど近くに落ちていたチラシを手に取り、なんとか立ち上がった。
確信めいたものがあった。これは全てあの赤い制服の生徒のせいだ。奴にチラシを渡さなかったせいだ。だからチラシを渡せばなんとかなるはず……!
ぼやけた視界を拭って奴を見る。奴は横断歩道に向かって歩いていた。私は無理矢理体を動かした。
(足音)
こんな状態の私となんともなさそうな奴とを比べたら、当然だが奴の方が早く目的地に着く。奴は横断歩道に向かっていたようだ。幸い歩行者用信号のランプは赤、律儀に立ち止まって青になるのを待っている。これ幸いと私は重い体を引きずって赤い制服の生徒に歩み寄った。愛用のアサルトライフルを杖にしつつ、あと少し、あと少し。数メートルの距離が、さっきは運転手を抱えて難なく歩いた距離が絶望的に遠く感じる。それでもチラシを渡さなければ。
脂汗と涙で体の水が足りなくなって、涙ではなく脱水で視界がぼやけてきた。ついに足がふらつき、自分の涙でできた水溜りで足を滑らせ、こけてしまった。そして同時にそのメロディを聴き、絶望した。
(信号機の誘導音、通りゃんせ) - 21二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:22:37
ああ、本当にまずい!歩行者用信号が青になった!誘導音が流れた!横断歩道を渡ってしまう!!
どうして赤い制服の生徒は横断歩道を渡ろうとしているのかは分からない。いつもはチラシを貰うと、普通に歩道に沿ってどこかへと消えていく。だが今回はチラシを渡されなかったから来た道を戻っている、あの横断歩道を渡ろうとしている。ああそうか、奴は横断歩道から、向こう側から来たんだ。そしてこのバイトは、チラシ配りは奴が向こう側に戻らないようにするためのものなんだ。渡ってしまったら、きっと大変なことになるから!!
「止まれ……!チラシを……受け取れ………!!」
叫びを絞り出すが、それで奴が止まることはない。私は這いずって少しでも近づこうとする。ああ、ダメだ。もうすぐ奴の足が車道に踏み入れられる。そう思った瞬間、私の体は反射的に動いた。
「うおおおおおおおっ!!!」
(乱射音)
アサルトライフルを前に向け、闇雲に発砲。視界が悪過ぎて狙いなんて定まらなくて、何かに当たれ、何とかなれと祈りながら引き金を引いた。
その祈りは…………届いた! - 22二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:23:13
(破壊音)
弾丸は反対側の信号機にある歩行者用信号と誘導音を鳴らすスピーカーに命中、機械が破損したのだ。信号の青は消え、誘導音もなくなる。
すると赤い制服の生徒は足を引っ込めた。信号待ちをしていた時のように突っ立った。いや、実際に信号待ちをしているのだろう。次の青を待っている。
不意に先程信号無視をして駆けつけてくれた4人を思い出して苦笑する。ああ、お前は信号を守るんだな。
私はゆっくりと立ち上がり、赤い制服の生徒に近寄る。右手で奴肩を掴み、こちらに半身を向けさせる。そして左手に持ったチラシを、奴の胸元に叩きつけた。
「ほら、チラシはくれてやる……!」
「………………」
赤い制服の生徒はふらつくことなくチラシを受け取り、対する私は勢いのまま倒れ伏す。
赤い制服の生徒はチラシを眺め、そして私に視線を向けた。
「…………ありがとうございます」
その言葉を聞いた瞬間、頭痛と涙がすぐに止まった。思わず呼吸が荒れて、何とか息を吸いながら目元に触れて確認する。水が湧き出てくるような感触はもうない。頭も大丈夫そうだ、むしろ寝起きのように思考がスッキリしていた。私は寝転がりながら、安堵の溜め息を吐いた。
『彼女に渡すことに意味があります。きっと受け取るでしょうが、最悪押し付けても構いません。これだけは、絶対に、よろしくお願いします』
「まさか本当に押し付ける羽目になるとはな……」 - 23二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:24:23
(足音)
頭を上げる。赤い制服の生徒がいつも通り、歩道を歩いて闇夜に消えていくのを見送った。横断歩道には戻らない、いつものルート。よかった、これで大丈夫だ。
「お前達、大丈夫か……?」
私はまた立ち上がった。倦怠感と脱水でフラフラする中、4人に駆け寄ったのだった。
________その後、婦人と運転手、そして私とあの4人は仲良く病院送りになった。皆軽傷のため1日入院で済んだが、運転手は飲酒運転の罪でヴァルキューレに連れて行かれた。当然だな。
4人は深夜徘徊の件でわざわざトリニティの人間が病室まで来て怒られていた。散々な夜だな、彼女達に迷惑をかけてしまった。謝らないとな。
婦人は旦那さんが迎えに来て普通に帰った。仲睦まじい夫婦だったが……、
「今回はあそこのホストクラブに行ったのよ」
「そうかい?心配だったが、楽しめたのならよかったよ」
……という会話をしていた。狂っていると思う。
そして私は……私は指名手配をされているから長居していたら捕まってしまう。適当なところで病院を抜け出した。そしてその夜、あの横断歩道に行った。
もう修理の工事は始まっていた。深夜だから誰もいないが、簡単に整備されて車も通れるようになっている。
そこで待っていると、雇い主がやってきた。いつもならここでチラシを受け取り、業務開始だ。しかし今日の雇い主はチラシを持っていなかった。
「こんばんは、アルバイトさん。どうやらしくじったようですね」
「……ああ、すまない」
「事情は把握しております。ちゃんとチラシを渡すこともできたようで何よりです。しかし、一度しくじった方に続けてもらうわけには行きません。残念ですが解雇とさせていただきます」
「了解した」
辞めると言うつもりだったからちょうどいい。私はその処分を甘んじて受け入れた。
雇い主は私に残りの給料を払い、踵を返して歩き出す。
「……雇い主」
「はい、何でしょう?」
「あれは一体何なんだ?そして私が辞めた後……また新しいバイトを探すのか?」
ふと気になった疑問をぶつけてみる。それに対して雇い主は立ち止まり、微笑んだ。
「もう部外者の貴女に、話すことなどありませんよ」
そう言って雇い主は去って行った。私は黙ってそれを見送った。 - 24二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:25:18
________そんな夜から数日後。私は用事があってトリニティ自治区に潜伏していたのだが、そこであの4人とばったり出くわした。4人は私を見つけるとすぐに取り囲み、私を捕まえ、近くのスイーツショップに引き摺り込んだ。
「ちょっと待て!どう言うことだ!?どうしてこんなところに連れて来た!?」
「お姉さんどうして病院から脱走したんですか!?看護師さん達怒ってましたよ!」
「それは……すまない。私にも事情があるんだ」
頬を膨らませる緑リボンの生徒。迷惑をかけたことに少し罪悪感を覚え、私は目を逸らす。しかし逸らした先には怒って湯気を上げてる赤上着の生徒がいた。
「それに!私達も心配したのよ!あんたが大丈夫なのかって!それと……まだあのバイト続けてるのかって……」
赤上着がそう言った瞬間、4人は顔を曇らせた。本当に優しい子達だ。あの事故の時と言い、ショートケーキといい、私は貰ってばかり、迷惑をかけてばかりだ。
「あのバイトは辞めたよ。あんな目に遭っても続けるほど図太くはないさ。……お前達には本当に迷惑をかけた。謝罪する」
私が頭を下げると、4人は慌ててそれを止めるように言ってきた。
「むしろお姉さん、あの時私達のこと守ろうとしてくれてたでしょ?お姉さんがいなかったら、私達あの場で死んでいたかも知れない。本当にありがとうございました」
猫耳の生徒は私に頭を下げて、他の面々もそれに続いた。
「……いいんだ。お前達が無事でよかった」
私は微笑み、そう言い返した。するとピンク髪の生徒が私にメニュー表を押し付けてきた。
「というわけだから、今日は同じロマンを分かち合ったもの同士でスイーツを食べようじゃないか。……またお姉さんと会ったら、こうやってスイーツを食べながらゆっくり話がしたいとみんなで考えていたんだ」
「ああ、そう言うことなら付き合おう」
そう言って私はみんなが見れるようにメニュー表を開く。それぞれ好きな物を注文し、甘いスイーツに舌鼓を打ったのだった。 - 25二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:26:31
「________そういえばお姉さん、お名前は何ですか?」
「私か?」
「あ、私達はトリニティ総合学園の放課後スイーツ部で、私の名前は栗原アイリです!」
「杏山カズサです」
「伊原木ヨシミよ!」
「柚鳥ナツ、よろしく〜」
「アイリ、カズサ、ヨシミ、ナツか。私は、私は………」
「________ただのアルバイトの錠前サオリだ、よろしく頼む」
ここだけサオリが裏バイトで働いていて、ひどい目にあったりあわなかったりする世界 - 26二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:28:33
錠前サオリを主人公とした漫画『裏バイト:逃亡禁止』風SSを上げていきます。
前回のスレの後、また思いついたので性懲りも無く戻ってきました。ですがすでにネタがないので、どんなバイトに行って欲しいかリクエストありましたらどうぞ。書いたり書かなかったりします。気楽に読んでいただけますと幸いです。よろしくお願いします。
前のバイト
何!?時給2万円のコンビニ深夜勤だと!?【SS、微ホラー】|あにまん掲示板bbs.animanch.com - 27二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:31:18
- 28二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 19:35:33
- 29二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 20:17:02
- 30二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 20:47:31
やはりあなたでしたか、大作をありがとうございます
監視カメラのバイトなら廊下の監視カメラのバイトなんていかがです? - 31二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 21:18:00
- 32二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 21:21:47
- 33二次元好きの匿名さん24/06/25(火) 21:26:28
- 34二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 02:32:57
- 35二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 02:53:25
このレスは削除されています
- 36二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 04:10:16
ヤッター新作だー!!
- 37二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 06:45:57
- 38二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 07:14:50
幕間
錠前サオリの裏バイト奇譚5
業務内容:チラシ配り
注意事項: 『赤い制服を着た生徒には絶対チラシを渡すこと』
勤務期間:5日間
給与額:チラシ1枚500円×勤務期間中に配ったチラシ152枚=76000円
コメント:放課後スイーツ部とのスイーツパーティーの支払いは、お詫びも兼ねて私が全額払った。そのため実質の利益は69300円となる。またいつか彼女達と一緒にスイーツを食べたいものだな。 - 39二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 07:15:53
毎度すごいセンスだわ尊敬する
- 40二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 07:18:43
ちょっと考えましたが、以下のようなアルバイトが思い浮かびました
※リクエストではなく、スレ主さんが作品を書くうえでの糸口になれば幸いです
・エレベータを含む、ビル警備
(不審な挙動をするEVを監視したり、乗って動作を確認することもあるバイト?)
・DVDの検品
(内職のように黙々とDVDを再生し、映像に不備や異常がないかチェックするバイト?)
・流動調査
(特定の通路などで、往来する存在の数をカウントするバイト?)
・コールセンター
(詳細不明な電話の問い合わせに対応するバイト?)
・ルームロンダリング
(が正式名称か知らないですが、事故物件に住んで心的瑕疵の告知義務をなくすバイト?)
・ゴンドラでの高層ビルの窓清掃
(室内を覗かないようにしつつ、窓外側についた汚れを綺麗にするバイト?)
ネームドと絡みやすいバイトとなると、アミューズメントスタッフやカラオケ店員、プール監視員や講師(サオリなら火器扱いや戦闘面の)とか
人手確保で便利屋(68)からバイトを受けることもあるかも
- 41二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 07:24:55
- 42二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 07:49:29
もうあるのかもしれないけど、散逸してるのは勿体ないからいつかまとまるといいな
- 43二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 08:18:04
まとめもいつか作りたいですね、ただどうしたらいいかがわからないので色々調べておきます。どこか別の投稿サイトを使うのか、テレグラフ?を使うのか……どうしよう
- 44二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 08:41:29
デバッグ神社作らなきゃ…
- 45二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 09:05:31
橙枠っていうかセリカゲスト回お願いします
- 46二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 15:32:40
前スレ見てたぜ
保守 - 47二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 15:34:55
- 48二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 17:38:54
- 49二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 17:40:24
美術館の警備のバイトを始めた錠前サオリだ。そこはD.U.地区の片隅にある小さな美術館で、絵画を専門に展示してあるらしい。
今回の私の業務は、営業中の館内各所に設置されたカメラの映像を監視すること。20個のカメラを1人で監視しなくてはならないが、その分給与は1時間1万円だ。気前がいいな、張り切って行こう。
なになに、注意事項として『館内の監視カメラは全て映像のみを収集している。管理室で音が聞こえた場合は無視すること』……らしい。音を拾わないカメラから音が出てくるわけがないだろう。だがこうして注意事項として取り上げられていると言うことは、何かが聞こえることがあるのだな。警戒しよう。
「ではバイトさん、今日からよろしくね。終業時間になったら私がこの管理室まで迎えに来るから、それまで外には出ないように」
そう言って、この美術館の館長であるロボットは管理室から出て行った。
(鈴の音)
管理室唯一のドアに取り付けられた鈴が音を出す。ざっと室内を見回してみたが、音の出るものはこの鈴しかないようだ。パソコンの設定も音量がオフにされており、そもそもスピーカーとなる機材がない。キーボードとマウスも音が出ないよう細工がされている。異常なほどに、防音の工夫が凝らされていた。
愛用のマスクを装着する。ここでは喋ることも禁止だと言われたから、念のためつけておこう。つけると喋れなくなるわけではないが、気休めくらいにはなるはず。
早速私は椅子に座り、各所の映像が映し出されたモニターに焦点を当てる。画面端のデジタル時計が10時を指した。さあ、業務開始だ。 - 50二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 17:41:09
(11:00)
館内異常なし、休日の美術館は穏やかな時間が流れている。絵画を見る客を見るのは何だか変な気分だな。
せっかくだから私もカメラ越しに絵画鑑賞でもしようかと思ったが、そこまでできるほど解像度が高くない。仕方ないな、明日の勤務前に来て楽しむとしよう。そんなことを考えていると、一枚の絵が映ったカメラに目が止まった。
(暗い背景に、うずくまる子供。かつてのアリウスみたいだ……)
端の方にぽつんと展示されていたその絵は、一切客が寄って来ておらず、何なら誰もこの絵に近づこうとはしていない。他の絵画が穏やかな風景画や明るいテーマの絵画だから、ネガティブなイメージがあるこの絵にはみんな近づかないのだろうか。
私はその絵から目が離せなくなっていた。絵がもたらすイメージのせいか、この絵を照らすライトも暗い色をしているように感じる。見てるだけで気分が落ち込む。それと同時に体の奥底から強烈な飢餓を、渇望を感じた。空腹ではない、もっと精神的な……そう、温もり………愛だ。愛が欲しい。きっとこの絵の子供はそう感じているのだろう。そしてカメラを通して見ている私にさえもその心情が伝わって来ている。すごいな、優れた芸術とはこんな力があるのか。感心せずにはいられない。
(おっといけない、他のカメラも確認しなくては。あの絵は明日見に行こう)
私は頭を振り、意識を切り替える。あの絵が映るディスプレイから、別の映像に目を映した。その瞬間、
「サオリ」
名前を呼ばれた!?確かに聞こえた!管理室には誰もいないはずなのに、ハッキリと、その声は聞こえた。危うく反応するところだった。気づいてないふりをして画面を凝視する。しかし思考は動かす、気配を探る。
……やはり誰もいない。だがあの声は先ほどまで見ていた、あの絵が映った画面から聞こえた気がする。まるで画面の向こうから話しかけられ、その声が映像を伝ってこの部屋にやって来たような感じがする。だとしたら、あの絵の子供が呼んだのか?
(いや、そんなことあるわけがないか。仕事を続けよう)
私は自らの仕事に意識を集中させた。さっきの声を考えないように、無意識になれ。でないと反応しそうで怖くなった。 - 51二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 17:42:14
(13:30)
業務開始から3時間半経過。閉館は17時、ちょうど折り返しか。この仕事は報酬はいいが、業務中は飲食・トイレができないのは難点だな。私はアリウスでの訓練のおかげで耐えられるが、一般人には難しいだろう。それにあの声もあるからな……。
「サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ、サオリ」
……12時くらいから、あの絵が映るカメラ映像からずっと声がする。最初に言ったが、管理室にスピーカーはない。この声は信じられないが、恐らく映像から出ている。映像が空気を震わせて声に変え、ずっと私を呼んでいる。
しかもその声が本当に不気味だ。悍ましい亡霊の声じゃない、あの声は姫で、ミサキで、ヒヨリで、アズサで、ミカで、先生で、便利屋達で、知り合いのシャーレ部員達だった。たくさんの声を同時に出力してハモらせているわけではない。たった一つの声、それが全員の声に聞こえるのだ。
私の知り合いの声を使って、反応を誘っているのか?本当に不気味で、不愉快で、不思議だ。この声の主はどうして私の知り合い達を知っているのだろう?私を見透かしてるとでも言うのか?
そんなことを考えながら監視を続けていた。こちらの心労など知ることもなく、入館者達は思い思いに絵を見ている。豊かな休日を満喫している。ん?何だあれは………?
(っ!?)
なるべく自然に目を逸らす。びっくりした、本当に叫び出すところだった。あの絵が、あのうずくまる子供の絵、その子供が入館者に紛れていた。見間違いじゃない。絵からそのまま飛び出して来たような非現実的な風貌の子供が、入館者に紛れて歩き回っている。どうなっている!?
私はうずくまる子供の絵が映るカメラ画面に目を向けた。映像には何の変化のない絵が映っている。当然だが絵の中の子供もそのままだ。ますます困惑した、じゃああそこで親子連れをじっと見ているアイツは何だ?
どうなっているか分からないが、このままでは客に危険が及ぶ可能性がある。デスクにある押せばヴァルキューレに通報できるボタンを押すか?いや、私が見ている幻の可能性もある。 - 52二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 17:44:07
(どうすれば………そうだ)
私は音が出ないよう細心の注意を払い、キーボードを叩く。デスクのパソコンにはチャット機能があり、何か私で判断できない問題があったらこれで連絡するようにと館長に言われていたのだ。
『こちら管理室、館内に不審者を発見。見回りを頼みたい』
館長からの返信はすぐに来た。
『不審者の特徴は?』
『信じてもらえないかも知れないが、4番カメラに映っている絵、うずくまる子供の絵に描かれていた子供だ。それが館内を歩き回っている。今は古代画コーナーにいる。ついでに12時頃から管理室内で私の名前を呼ぶ声が聞こえ続けている。これは何か分かるか?
『ああ、なるほど。全部あの子だね』
……ん?あの子?
『知っているのか?』
『気にしなくていい、客にも無害だから。ただ管理室まで来たらまた報告してくれ』
『待て、ここまで来るのか?』
『無視していれば安全だから、注意事項を守るように』
『どう言うことだ、説明しろ』
『おい』
それ以降返信はなかった。どう言うことだ?館長は何を知っている?あれは一体何だ?
浮かぶ疑問に答える者はなく、汗が額を伝い落ちる。一応……一応よかったことを上げるとしたら客は無事ということだろうか。館長もそう言っていたからな。私の方には……来るかも知れない、らしいな。
『館内の監視カメラは全て映像のみを収集している。管理室で音が聞こえた場合は無視すること』
注意事項を思い出す。今もなお私を呼ぶ声、あの映像から聞こえる声。反応したら来る……ということか。来たらどうなるかは分からないが、いいことではないはずだ。言われた通り注意事項に従おう。今の私にできるのはそれだけだ。全く、館長には終わったら洗いざらい吐いてもらおうか。
静かに深呼吸し、改めて画面に向き直った。
その瞬間、 - 53二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 17:44:21
「サオリ」
今までで一番大きく、ハッキリとした声が聞こえる。私はそれを聞いた瞬間肩を跳ね上げ、全身を震わせてしまった。呼吸を一瞬止めてしまった。反応してしまった。
(マダムの声は反則だろう………!!)
心の中でそう吐き捨てていると、全ての画面にあの子供の顔が映り出した。精巧に描かれているが絵の具の質感が残る黒い目が、20の画面越しにこちらを見ている。全てと目が合ってしまう。
「サオリ」
姫で、ミサキで、ヒヨリで、アズサで、ミカで、先生で、便利屋達で、知り合いのシャーレ部員達で、そしてマダムが混じった悍ましい声が私の名を呼ぶ。そしてニヤリと笑ったかと思うと画面から消え去った。
まずい……あれが来る!! - 54二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 17:44:48
一旦ここまで
- 55二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 17:48:44
いや怖ぁ…ある意味怪異側のマダムの声もいけるのか……
- 56二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 21:12:17
ほしゅ
- 57二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 21:23:32
このレスは削除されています
- 58二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 21:38:43
もしかしてこれサオリの記憶の中にある人物の声しか模倣してない?
- 59二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 21:48:45
うおお、これはなかなかだ監視カメラって程よく不気味だよね
その不気味さをうまく取り入れてる - 60二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 02:05:12
(13:45)
『こちら管理室。すまない反応してしまった。救援を求む』
チャットにそれだけ打ち込み、私は17番から20番のカメラ……館内の廊下を映すカメラの映像を確認する。
いた、あの子供だ。迷うことなく歩いている、こっちに向かっている!
私は業務を続けることにした。扉にアサルトライフルを向けて待ち受けようかとも思ったが、やはり無視することが大切な気がする。今もカメラ目線で近づいてるそれはいないものとして扱い、業務に集中するべきだという結論に達したのだ。でも少し不安だから、アサルトライフルを抱き締めておくことにした。これが効く相手かは……祈るしかない。
外から足音が聞こえる。近づいてる。気配も感じ始めた。何だこの気配……吐きそうだ。
(ドアをノックする音)
「サッちゃん、開けて」
「先生から呼び出し。仕事手伝って欲しいんだって」
「シャーレから緊急の呼び出しなんて、辛いんでしょうね……苦しいんでしょうね……。でもやるしかありませんよね」
姫とミサキとヒヨリの声。記憶にある声と全くの同一なのに、悍ましい気配はそのまま。これはこれで偽者だと分かりやすいが、まるであの3人が悍ましい存在に思えてしまって嫌になる。
そう言えば、ドアには鈴が取り付けられている。ドアをノックしたら鈴の音もするはずだ。それがないということは、先程のノック音もあれが出したものなのだろう。器用な奴だな。
(ノック音)
「サオリ!元気でやってるかい?心配で来てみたんだ。会いたいから開けて欲しいな」
お次は先生の声か。このバイトを先生に教えた覚えはないが、あの人ならどこかで知って駆けつけそうではあるな。神出鬼没だし、分かってなかったら開けてたと思う。
奴は……私の頭か心を覗いたのだろうか。何かを覗いたら、自分もその何かに覗かれてる……なんて言葉をどこかで聞いた気がする。奴……あのうずくまる子供の絵は、私がカメラを通して見た時に、私のことを覗き返したのかも知れない。見ただけで強烈な渇望を感じ、感情を強く想起させる表現力のある絵だ。何か不思議な力があってもおかしくない。
だがなぜ己を気づかせようとする?何の目的で?そういうものだからと言ったらそれまでだが………ただの勘だが、何か理由があるような気がした。 - 61二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 06:43:57
そういや監視カメラってなんで画質悪いんだろう、今の技術なら
もうちょっと画質良くできると思うけど - 62二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 08:02:46
このサオリがやってるバイトみたいに顔がはっきり映るとヤバそうなものの対策も兼ねてそう
- 63二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 11:14:01
(ノック音)
「サオリ、開けて欲しい」
アズサ。
(ノック音)
「やっほ〜サオリ、開けて貰っていいかな?」
ミカ。
(ノック音)
「久しぶりね錠前サオリ、ここを開けなさい!」
アル。
(ノック音)
「開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて、開けて」
アリウスから出た後に知り合った、私を気にかけてくれた人達。
……なあ、もし私を覗いたのなら分かるだろう?頼むから私の大切な人達の声を使わないで欲しい。
(乱暴に扉を叩く音)
「早くここを開けるのです!私の言うことが聞けないのですか!?」
さすがにもう驚かないぞ。先ほどマダムの声も使ってくると分かったからな、予測できてたら反応しないよう自分を律することもできるさ。ああそれとマダムは大切な人じゃないけど使わないで欲しい。もう会いたくないんだ、声も聞きたくない。 - 64二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 11:14:45
(乱暴に扉を叩く音)
ついに痺れを切らしたようだ。誰かも判別できない声で「開けて」と連呼しながら扉を激しく叩いている。それでも鈴が音を鳴らさないから、実際には扉は揺れてないはず。ずっとずっと、そう言う音を出してるだけ。私に気づいて欲しくて。だが私は無視し続けた。
そして最後に大きな音を一つ鳴らすと、扉の向こうから気配が消えた。足音は聞こえないが去って行ったのだろう。私は胸を撫で下ろした。
「________ふぅ、危なかった。一時はどうなることかと」
(しまった!!!!!!!!!!)
何で最後の最後に気を抜いたんだ私は!?もう遅いと分かっていながらも、咄嗟に口元を抑える。
そしてはたと気づいた。一気に血の気が引いた。先ほどの私は、マスクで覆われたこの口元を動かした覚えはない。喉を震わせた覚えもない。
ただ自分の声が聞こえたから、自分が間違えて声を出したんじゃないかと思って口元を抑えたのだ。
「サオリ」
姫でも、ミサキでも、ヒヨリでも、アズサでも、ミカでも、先生でも、便利屋達でも、知り合いのシャーレ部員達でも、そしてマダムでもない声、私の声で呼びかけられる。声のする方へ顔を向ける。4番カメラ、ずっと私を呼びかけていた映像。画面の向こうのうずくまる子供の絵が顔を上げ、こちらに光の無い黒い目を向けている。
「サオリ」
絵は滑らかに口を動かしてそう言った。そしてケラケラと楽しそうに笑い出した。
私は反応してしまった。 - 65二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 11:17:49
この怪異賢いな…俺だったらもう死んでる
- 66二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 11:23:22
殺意高すぎワロタ
いや反応したら死ぬのかは知らないけど - 67二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 11:31:50
後悔した瞬間、4番カメラの画面が光を放った。限りなく黒に近い寒色のそれは見てるだけで気分が落ち込む。それと同時に奥底から強烈な飢餓を、渇望を感じた。空腹ではない、もっと精神的な……そう、温もり………愛だ。愛が欲しい。きっとこの光はそう感じているのだろう。
ぼーっと突っ立って、それでも画面を凝視していた私を光が包み込む。目に何かが入ってきた。ああ、子供だ。私の中に入ってきた。目を通り抜けて脳の中に入り、私のアーカイブを、みんなから貰った愛や温もりを乱暴に掴む。貪るつもりなんだ、私を全部食べ尽くしてしまうつもりだ。動けない、ダメだ。
「助けてくれ……!」
(鈴の音)
「バイトさん!大丈夫かい!?」
勢いよくドアを開ける音とそれによって揺れる鈴の音が私を現実に引き戻してくれた。館長だ、館長が来てくれたのだ。
「いやああああああああああああああああ!!!!!」
すると私の中にいた子供は私の口を借りて絶叫した。泣き叫びながら私の目から這い出て、光を伝って画面の中に帰り、消えた。4番カメラの映像も謎の光を発さなくなった。管理室から悍ましい存在が消え去った。それに安堵して私は崩れ落ち、かがみ込んだ。
「ハァ……ハァ……私は………」
「あの子が来たんだね。怖かっただろう、大丈夫かい?」
「私は……私は錠前サオリだよな?食い尽くされるところだった、何もかも……私が私じゃなくなって………!」
「その前に来れてよかった。少し落ち着きなさい」
館長に手を引かれ、椅子に座る。背もたれに首を預けて、あの子供が触れた私の記憶を一つ一つ思い出す。大丈夫、全部思い出せる、何も食べられていなかった。 - 68二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 12:39:03
>「助けてくれ……!」
どっちの台詞なのか……あるいは“どっちも”なのか……
- 69二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 17:16:37
この怪異自分と似た境遇の者を連れていこうとしてるのかそれとも
- 70二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 17:26:09
というか「知り合い」の声だけじゃなく「自分」の声も使うとか……しかも少しでも聞こえてる反応したらアウトとか凶悪すぎるわ
- 71二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 19:40:57
もしかしてこれ鈴の音が無かったら割り込んでもアウトだったりする?
- 72二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 20:18:15
- 73二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 20:31:58
サオリが語り手として優秀過ぎる…
何より凄いのはこの話を書き上げてる主やけど - 74二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 20:39:01
- 75二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 22:22:53
- 76二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 22:33:48
(14:02)
「……館長、あの絵は何なんだ?あんな恐ろしいもの、どうして展示する?」
落ち着きを取り戻した後、私は館長にそう問いかけた。あの絵……カメラ越しに襲ってきたあの子供。野放しのまま展示されているのは狂ってるとしか思えない。
目元に今も残る異物感と、頭の中をぐちゃぐちゃにされた感覚。それがあの子供の危険性をひしひしと伝えてくる。あんなもの、仕舞うか燃やすべきだ。
そう思いながら答えを待っていると、館長は逆に問いかけてきた。
「バイトさん、君はあの絵をどう思う?」
「どう……?そうだな、上手い下手や良し悪しは分からないが、見てるだけで気が滅入った。そしてこの子供は……愛に飢えてるのだと思ったな」
最初に見た時の感想をそのまま言う。この絵は愛に飢えている。だから私に呼びかけ、入り込み、貪ろうとしたのだと思う。
するとそれを聞いた館長は何故か喜び出した。
「そうだろう……!あれは見るものに解釈の違いなど許さない、唯一無二のテーマを、愛への渇望を伝えてくる絵だ。あれこそ本物の芸術、あれ以上に人に伝えることができる芸術を私は知らない……!」
饒舌に語る館長に、私は怪訝な表情を浮かべた。 - 77二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 22:35:01
「……危険な物なんだろう?私は襲われたぞ。お前がここにくるのが遅かったら、きっと死んでいた」
「そのことについては謝罪しよう。だが撤去するつもりはない。私はあの絵を……崇高、真の芸術たるあの絵を愛している。あれを展示し続けることが私の……あの絵に捧げる愛なんだ」
館長は真っ直ぐで済んだ瞳をキリッと引き締めながらそう言った。
そんなこと、納得できないし迷惑でしかない。この先も私のような被害が出るかも知れないだろうに、何を考えているんだ……?
私は椅子から立ち上がり、反論をしようとした。その瞬間、また4番カメラの映像から声が聞こえて来た。
「あなたのはいらない」
その声は私の知り合いの声ではなかった。何故か絵の子供だと確信でき、尚且つ強い拒絶を感じる声だった。
私はまた頭に入り込むのは嫌だったので、すまし顔で聞こえないふりをする。目の前にいた館長もそれを無視した。しかしその顔面のディスプレイに有らん限りの怒りを滲ませていた。
「……お前があの絵を愛する気持ちは分かった。だがあの絵はどう思っているんだろうな」
「……何のことだ?私には聞こえない」
館長は強く言い切った。4番カメラからはまた私を呼ぶ声が聞こえ始めた。愛を求める絵が拒絶するなんて、館長とあの絵に何があったんだ?分からないがもう……どちらにも付き合ってられないな。私はその場で退職すると館長に言った。 - 78二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 22:35:41
その後、働いた分の給与だけを頂いて美術館を後にした。あの絵と館長がどうなったかは分からないが、何の噂も聞かないからまだ無事なのだと思う。
誰かが酷い目に遭うかも知れないからと、あの絵を破壊することを考えたこともあった。だがあの子供が目から入って来た時のことを思い出してやめた。きっとまたあの絵を見たら、同じ目に遭いそうな気がして脚が震えるのだ。
結局何もできないまま、何も分からないまま、私はD.U.を離れて次の潜伏先に移動した。
ここだけサオリが裏バイトで働いていて、ひどい目にあったりあわなかったりする世界 - 79二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 22:48:16
(チラ裏です。も、もうちょっとオチ上手いことできたかも知れない……。ちょいと忙しかったのと、リクエスト頂いた時に思い浮かべた『自分の声を模倣されて引っかかる』『怪異が監視カメラのディスプレイから飛び出してサオリの目玉から脳内に侵入してサオリのブルーアーカイブを捕食される』のシチュエーションを頼りに即興で書いてたもので、伏線とか辻褄合わせがガバガバになったと思います。ごめんなさい)
- 80二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 22:50:52
こ、怖ぇ~~
怪異?だけじゃなくて人間も! - 81二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 22:56:08
怪異も怖いし、人間も怖い…
おもしろかった! - 82二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 22:58:06
それこそおかしくなって今の館長みたくなったとかかな
- 83二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 23:27:38
- 84二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 00:23:12
深夜のピザ屋で着ぐるみをモニター越しに監視するバイトとかもやりそうなサオリ
- 85二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 00:53:50
- 86二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 01:56:18
感謝、館長は何をしたんでしょうね……厄介オタクほど百害あって一利ないものはありませんから…。
- 87二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 08:27:17
幕間
錠前サオリの裏バイト奇譚6
業務内容:美術館の監視カメラでの警備
注意事項: 『館内の監視カメラは全て映像のみを収集している。管理室で音が聞こえた場合は無視すること』
勤務期間:4時間
給与額:1時間1万円×4時間=4万円
コメント:しばらくの間、名前を呼ばれると一瞬無視してしまうようになった。少しトラウマになっているな。姫を無視してしまい怒らせてしまった。花を買ったら許してくれるだろうか。 - 88二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 09:21:16
イベントも始まったことだし「プールの監視」で何かしら書けそうな気もしたけど自分ではうまくいかなかった
- 89二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 12:35:16
怖え……怪異も人間も……
というか「あの絵はどう思ってるか」という問いに対して「なんのことだ」まではわかるんだよ
「私には聞こえない」って返答はもう『自分も絵の声は聞こえてるが無視してます』と自白してるんよ
崇高……芸術……もしかしてこの絵ってゲマトリアの……? - 90二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 12:50:42
このレスは削除されています
- 91二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 13:46:52
- 92二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 14:30:48
水場は確かになんかヤバそうだなぁ…
- 93二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:16:04
ゲームのデバッグのバイトを始めた錠前サオリだ。ゲームは先生とミレニアムの生徒がたまにシャーレでやっているのを見るくらいで、正直よく分かっていない。だが知識がなくてもできる作業らしく、自分探しになるかと思って応募してみたのだ。
今回の勤務時間は12時から16時までの4時間、時給は1500円だ。今までやけに高い給与のバイトをし続けていたため感覚がおかしくなっているが、これでもいい額だと思う。張り切っていこう。
なになに、注意事項として『発売前のゲームのため、情報を外部に漏らさないこと』らしい。要するに守秘義務か。当然の内容だな、気をつけよう。 - 94二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:17:16
(1日目)
「それじゃあバイトさん、こっちのデスクで作業をしてもらいますんで!」
「了解した、失礼する」
指定されたデスクに着席する。椅子がふかふかで座り心地がいい。パソコンは7色に輝いていて、よく分からないがとても高性能な気がした。
ここは雇い主のゲーム制作会社のオフィス。広い部屋に10個のデスク、給湯室、トイレが設置されている。私以外の従業員は6人で、これが全社員らしい。
「じゃあゲームを起動しましょうか、この『幻想神社の怪』というアプリをクリックして下さい」
リーダーを名乗る社員の獣人(ボーダーコリー)の指示に従い、ゲームを起動する。すると画面いっぱいに綺麗な桜並木と中心に大きな神社、そこに立つ可愛らしい少女のイラストが出て来た。
「おお、綺麗だな」
「ありがとうございます!グラフィック担当も喜びます!じゃ、やって欲しい作業の説明をしますね」
そう言ってリーダーは私に代わってゲームを操作し、キャラクターを神社の前まで動かした。
「ここはストーリーの中で重要になるフィールド、幻想神社っす。バイトさんにはここのデバッグをやって貰います」
そうして具体的に仕事の説明をされたのだが……驚いたな。ゲームにバグがないか確認するために特定の行動を何千回もやるそうで、その行動も「壁にぶつかる」、「階段を上り下りする』、『NPCに話しかけ続ける』など、この幻想神社の中でもかなりの量があった。これは根気のいる作業になりそうだ。 - 95二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:18:16
「ゲームの方はほぼ完成してて、あとはこのデバッグだけなんすよね〜。社員みんなでやるにしても莫大な量だからモチベ下がっちゃって」
「だから私を雇ったわけだな」
「そうっす。まあ何かあったら言って下さい、俺達もそっちでデバッグやってるんで」
「了解した」
そう言ってリーダーは自分のデスクに戻っていく。よく見るとシャツはよれよれで、顔には疲れが見えていた。そして他の社員も疲れている様子だ。ゲーム制作とは大変なんだな。彼らを少しでも楽にするために頑張ろう。気を引き締めてキャラクターを操作した。
まずはお参りの作業だ。幻想神社の本殿にキャラを動かすとお参りをすることができる。これを1000回。
ボタンを押すとキャラクターが小銭を投げ入れ、祈りを捧げた。つられて私も、このゲームが無事に完成するようにと祈った。
"今日もいいことありますように"
祈り終わるとそんなセリフが表示され、これでお参りは終了だ。見たところバグらしいものはないが、あと999回やれば何かが起きるかも知れない。集中して、一挙手一投足に目を光らせる。
そうして4時間の業務を頑張り、お参りと他のいくつかの作業を終わらせることができた。
「すごいっすよバイトさん!中々早いじゃないっすか!」
「そうか?役立ってるのなら何よりだ」
リーダーからも褒められ、初日は好調のまま業務を終了した。 - 96二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:18:56
(2日目、出勤前)
拠点の廃墟で朝を迎える。私の出勤はお昼の12時からで、まだ時間がある。私は付近の散策をして時間を潰すことにした。
街並みはD.U.あるいは先生が暮らしていた日本という場所のそれに近い。何か面白いものはないかと探していると、拠点の近くの住宅街に神社を見つけた。住宅街を見下ろす小高い丘に建てられており、境内には青々とした木々が植えられている。
「よく見ると、幻想神社に似ているな。あれも小高い丘の上に建てられていたはずだ」
昨日のデバッグ作業を思い出し、頭の中でこの神社と幻想神社を見比べてみる。どちらも綺麗な神社だ。こちらの神社の豊かな木々も、幻想神社の桜並木も、どちらも味があると思う。
「ん?あの井戸……」
手水舎のすぐ側に井戸があった。そういえば幻想神社にもあった気がする。もしかしたら幻想神社はここをモチーフにしてるのかも知れない、そんなことを考えながら井戸に近づいた。真新しい蓋がされていて中は覗けないが、よく手入れされている。隣には説明のパネルが置いてあった。なになに、この神社には井戸の神が祀られていて、その神がこの地で最初に掘った井戸がこれらしい。
「ここから湧き出る水が住民の生活を支えた……か。この地の大切な神様なんだな」
この手水舎の水も井戸から引いた水だろうか、私は綺麗な水で手を洗い、本殿に近づいた。そして財布から小銭を取り出して投げ入れる。
(祈りたいことならたくさんあるな、バイトもそうだが、姫達のことも。だがここに来るのは今日が初めてだし、まずは挨拶からだろうか?)
「バイトでこの自治区に来た錠前サオリだ、よろしく頼む。ここで頑張って働くので、見守って欲しい……今日もいいことありますように」
2礼2拍手1礼……よし。お参りを済ませ、私は拠点に戻ったのだった。 - 97二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:19:52
(2日目、出勤)
昨日で本殿での作業が終わったので、今日は井戸のデバッグを行う。どうやらストーリー中でも井戸が重要になるらしい。やはり幻想神社のモチーフはあの神社なのかも知れないな。
「最初は……井戸の中にアイテムを入れるイベントが正常に行われるかの確認だな。やってみよう」
一連のイベントを何度も繰り返し、予定外の動作をしないか確認する。夜の神社、井戸に近づき、蓋を開けて、中にアイテム……藁人形を入れる。
(水音)
藁人形が水の中に落ちる音が響く。その音がやけにリアルで背筋がゾワっとした。
これを繰り返して約200回、藁人形を入れた後に予定外のセリフが出て来た。
"ゆるさない"
「ん?バグか?リーダー、来てくれ」
バグの発生を報告すると、リーダーは私の代わりにパソコンを操作し、プログラミング言語の羅列を確認し始めた。
「……おかしいな、見たところ正常なはずなのに。何でここでセリフが出るんだ?」
ゲームの画面に戻し、もう一度井戸に藁人形を投げ込む。するとまたセリフが出て来た。さらに……、
「お前達は許さない」
「え!?何だ今の音声!?」
「リーダー、これもバグか?どこかで使う音声が間違って流れて来たのか?」
「いや、このゲームにボイスなんて入れた覚えは……おかしいっすねぇ」
「……私にできることはあるか?」
「ああ、ごめんっすバイトさん。後はこっちでやっとくんで、他のデバッグ作業をお願いするっす」
リーダーは私のパソコンを元の画面に戻して、自分の席に戻った。恐らく先ほどのバグと格闘してるのだろう、ああでもないこうでもないと唸っている。
「予想以上にバグが多い……どうなってるんだ?」
見渡してみると、他の社員もバグで苦しんでいるようだ。心配だが、知識のない私にできるのは与えられた仕事をこなすことだけだ。私は他のデバッグ作業を開始した。 - 98二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:21:02
(3日目、出勤前)
昨日に引き続き、出勤前に神社にやって来た錠前サオリだ。先生の住んでた日本には御百度参りという文化もあるらしい。私の祈りがどこまで届くか分からないが、毎日通っていたらいいことの一つはあるだろう。
境内に入ると、獣人(柴犬)のご婦人が落ち葉の掃き掃除をしていた。昨日はいなかったが、この神社の管理人だろうか?
「あら、どうも。見ない顔だけどお外から来た方かしら?」
「ああ、仕事でここに滞在している者だ。出勤前にお参りにと思ってな。ここの神職の人か?」
「いいえ、私はただの近所のおばちゃんよ。でも、この神社は神主さんとかいないから、近所の人達で管理してるの。私もその1人よ」
確かに敷地も狭く、建物も本殿と小さな物置小屋しかないから、ずっと誰かがいる場所ではないのだろうな。
「そうだお嬢さん、せっかくなら井戸に声をかけてみない?」
「井戸に?」
私が首を傾げると、ご婦人は井戸の蓋の鍵を開け、パカリと持ち上げた。
「そこのパネルにも書いてるんだけど、この井戸は神様が掘ったもの。だから神様のところに繋がっているのよ。この井戸の中にお願いごとを言うと、神様が直接聞いてくれるのよ」
「なるほど、そんな逸話が……」
試しに井戸を覗いてみる。深さは10メートルくらいで、底には水が溜まっているのが見える。
「井戸の底から声が反響してきたら、神様が願いを聞き入れたって合図なの。ほら、よかったらやってみて」
「願いか……分かった、やってみよう」
帽子が落ちないように手で押さえ、私は井戸の底に向かって叫んだ。 - 99二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:21:48
「井戸の神よ!私は錠前サオリだ!ここの近くのゲーム開発会社でバイトをさせて貰っている!後もう少しで完成だが、デバッグ作業というのが大変らしい!私も力になれるよう努力するから、見守っていてくれ!」
叫んだ後、井戸の中に顔を突っ込んで耳を澄ませる。……反響しないな。残念だが、願いは届かなかったらしい。まぁそう上手い話もないかと思い直し、私は井戸から顔を出した。
「願掛けくらいならできただろう。ありがとうご婦人……ご婦人?」
ご婦人の方を見ると、半歩下がって私を警戒するような目で見ていた。
「あ、あなたあのゲーム開発会社の人なの?」
「あ、ああ。バイトで雇われてる。……何かあったのか?」
「あなたは知らないのね、実は……」
ご婦人は嫌なものを思い出してるかのように、この神社で起こったことを話してくれた。
3ヶ月前に取材をしに、ゲーム開発会社の者達がこの神社にやって来たそうだ。その際に「いいゲームを作るため」と勝手に本殿に入って御神体を撮影したり、「リアリティのある音声を撮るため」と井戸に藁人形を投げ込んだそうだ。
「そんなことが……。彼らは謝罪したのか?」
「一応謝罪して、お供物とかも持って来たけど、ヘラヘラしてたと言うか、騒ぎにならないようにとりあえずやっておくかって感じで、あんまり謝られた気持ちにはならなかったわね……」
「そうか……、すまなかった」
私はその場で頭を下げた。私がバイトをしに来る前の出来事とはいえ、今はあの会社の一員だ。だから謝らなきゃならないと思ったのだ。
ご婦人は慌てた様子で私に頭を上げるように言ってくる。「あなたはまだ来てなかったのなら、あなたのせいではないわよ」と、こちらを気遣う言葉もかけてくれた。今すぐ出て行けと言ってもおかしくないのに、とても優しい人だな。
「私の方で、もう一度謝りに行くよう説得しよう。バイトの身でどこまで聞き入れてくれるか分からないが」
「そこまでしていただけるなんて、ありがとうねお嬢さん。お仕事、上手くいくことを願ってるわ」
「ああ、では失礼する」
ご婦人と井戸に一礼して、私は神社を後にした。リーダー達に色々言ってやらんとな、フンと一つ大きく鼻息を上げ、オフィスへと向かったのだった。 - 100二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:22:25
________神社を去るサオリの背中を見送り、ご婦人は井戸に声をかけた。
「問題を解決してくれ……じゃなくて、問題を解決できるよう努力するから見守ってくれ……ですって。今時そんな願い方をする若い娘がいるのね。とても謙虚で、とても純粋な子。素敵ね、神様」
ご婦人は笑いながら、井戸の蓋を閉めた。 - 101二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:22:43
一旦ここまで
- 102二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:23:56
- 103二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:24:51
不気味というか不思議というか、全部明らかにならない感じ好き
- 104二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:28:43
- 105二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 17:00:25
ご婦人が神様なんじゃなかろうかもしくは狛犬か
- 106二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 17:21:23
柴犬だからどっちかと言えば狛犬、もしくは巫女的な役割の可能性もあるかも
- 107二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 18:40:50
コンビニ編のあの得体知れない雰囲気が好きだから
芸術館編で怪異が明確に登場したシーンではちょっとがっかりしたが
館長のあの落ちを読んでやっぱり大好きだったわ - 108二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 18:54:39
感謝、オチ弱いかな大丈夫かなと不安だったのですが、貴方や他の皆様からもお褒めいただけて安心しております。
今後も色々な展開や描写に挑戦しようと思っておりますが、ご期待に添えないものもあるかも知れません。その際には「あ〜なんかやってんな〜」と見守って頂けますと幸いです。
今後とも応援よろしくお願いします、コンビニ編気に入ってもらえて嬉しいです。
- 109二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 19:01:07
(チラ裏です。デバッガー編明日の17時前後になると思います。私の方でもスレが落ちないように確認しておくのですが、なんかあったらよろしくお願いします。あとサオリのEXをMAXまでできました。私の勝ちです。)
- 110二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 19:30:44
了解です、おめでとうございます
- 111二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 19:36:16
……御神体を暴いて、映したそれをゲームに取り込んで、同じような神社を立てて井戸を掘って。あまつさえ井戸に藁人形を落としたと。
言い方を変えればそれって「勝手に分社を作った」わけだ。それもデバッグ作業で1000回。あるいはそれ以上。
神の掘った井戸を愚弄する行為を誰でも出来るように広めようとしてるわけだ。 - 112二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 19:44:47
うーわ、こらとんでもねぇ事になんぞ!?
- 113二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 19:53:02
神様って分け身を作っても元々の力弱くなったりしないとも言うしね
デバッグ作業だけじゃなくてその前の動作確認やプログラムを組んでる段階の時点で無礼どころじゃ済まない行動が繰り返される訳だ - 114二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 19:54:49
藁人形だろ?神を呪うとか罰当たりもいいとこじゃ
- 115二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 21:14:17
というか井戸の蓋が新しいって事は、もしかするとあいつ等が藁人形を放り込んだから設置されたか、前にあった蓋が壊されでもしたんじゃねえか?
そんで枯井戸になってるならともかく、まだ生活用水として使われてる水の溜まった井戸なんだろ?
だから放り込まれた藁人形が水を吸って沈んだまま回収できなくなってる可能性が…… - 116二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 21:19:03
……じゃあ何か?サオリの発言って見方を変えれば
「神域を愚弄するための複製分社が間もなく完成するので指を咥えて見ててくださいよろしくニキ〜www」
みたいな煽りを通り越した宣戦布告として受け止められるかもしれないってこと - 117二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 21:40:51
あーしかもこれ、ゲームタイトルが「幻想神社の怪」じゃん。
わざわざ本殿を暴いて御神体を撮影したってことは、これ主人公にも同じようなムーブさせる気だな? - 118二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 22:50:46
撮影しただけで済めば良いが
- 119二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 23:18:18
ゲームクリアのために、シナリオで同じ手順を踏んでいくから、
「お手軽呪われ追体験キット」になりそうなのかぁ