- 1二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:12:29
「痛いよ、ドリームジャーニー」
「ええ、痛くしていますから」
ただ事実を伝えるように君に言葉を渡す。
海を渡る風のような涼やかな声を受け取っている耳、そこからちぎり取られる寸前の鋭い痛みを感じる。
それを与えてくるのはスラリとした指――愛バドリームジャーニーの指だ。
リムレスの眼鏡越しにまっすぐ見える目はこちらの反応をうかがうように無感情だ。
文字通り大人と子供ほども背丈が違うこちらとドリームジャーニーの視線の高さが合っている理由は単純だ。
ソファに座るこちらの太ももの上にドリームジャーニーが向かい合う形で腰を下ろしているからだ。
羽根をこえて、それこそ雲のように軽やかに座っているドリームジャーニーは不思議そうに言葉を向けてくる。
「それに本当に痛いのでしたら嫌がるそぶりを見せるものではありませんか?」
言いつつ耳をつまんでくる指に万力のごとき力が加わる。
何かが潰されるような感触がする。
その感触に思わず顔が引きつるが、そこまでにとどめる。
ドリームジャーニーは不必要なことはしないウマ娘だ。
だから――
「ドリームジャーニー――君が必要だと思うことを僕が嫌がるはずがないだろう」
君を信じる以外の選択肢はない。
そんな思いを込めた言葉を返して体からできる限り力を抜く。
いつもならここで弱めてくれるはずだ。
そう思いドリームジャーニーの整った顔を見ると、かすかに歯が見えるような笑みを浮かべて。 - 2二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:12:51
「ふふ――」
逆の耳をつままれ同程度の力で引っ張られる。
火で当てられたかのような激しい痛みが顔を両側から感じる。
痛みの為か視界が変にまぶしく感じる。
聴覚もまた若干くぐもって聞こえる。
「この期に及んでも逃げるそぶりも、疑問すら口にしないのですね」
「する意味もない事をする趣味はないよ、トゥインクルシリーズを一緒に駆けた3年間でよく知ってるからね」
そう返した言葉にはたくさんの激闘と困難をついつい思い出し、乗せてしまう。
彼女はほんの少しだけ満足げな笑みを浮かべて、更に身を近づけてきた。
吐息すらかかる距離で彼女は語る。
「ええ、その通り、そして新人と言える経歴ながらも2大グランプリを制覇させた新進気鋭のホープとして今あなたは他の子へと声をかけている」
耳がねじられ、潰され、丁寧に丁寧に痛みを刻んでくる。
たった一つの部位でこれほど激しく多様な痛みが出せるのかと舌を巻く。
そんな熟練の拷問吏のような腕を振るう君はどこまでも満足げだ。
「チームを持ち、より高い成果を求める、トレセン学園のトレーナーとして理想的なキャリアの積み方ですね」
自分を見出したトレーナーが正しく評価されることがうれしいのだろう。
君は不快な相手に関わるほど暇な人ではない。
「だから心配なのです」
つまんでいた耳を離し、そっとこちらの顔に触れる。
その手つきは先ほどまでの嗜虐性を全く感じさせないほど柔らかい。 - 3二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:13:12
「ご存知ですか? あなたはとても人気があります、容姿が整っている者として」
「へー、知らなかったよ」
自分自身でも白々しいと思えるような言葉が思わず出た。
気にしたこともなかったし、これからも気にすることがない事を指摘されてようやく気付く。
「ああ、そういうこと」
「そういうことです」
うまくハマらなかったパズルのピースがはまった。
そんな納得がこもった言葉を受け取った君はやわらかな手つきのまま、こちらの目に指をのばし。
眼球に触れてきた。
角膜の部分に触れているからか痛みはそれほど激しくはない。
「トレーナーの能力を見てあなたを慕う子ならば私は喜んで歓迎するでしょう」
「そうだね、君はそういう子だ」
つまるところそうではない子が来てしまったら互いにとって不幸なことになる。
言葉に込めたそんな考えを悟ったのか、猛獣のような勢いでこちらの鼻に噛みついた。
一息に噛み切れるだろうに肉に食い込むその一歩手前で止まる。
強くかまれることによって血に似た匂いとむせかえるほどの熱を持った空気が鼻を満たす。
そして鼻から感じる噛み切られかけるその痛みこそが、君の不安なんだろうと受け入れながらその華奢な体に手を回す。
「いいよ」
手放しの信頼を込めた言葉と共に力を込めればそのまま手折れそうな体を持つ君に身を任せる。
と―― - 4二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:13:29
「では遠慮なく」
一瞬だけ口を離した君はひどく大人びた肉食獣のような笑みを浮かべる。
痛みを覚悟しつい目を強くつむる。
「ッ――ってあれ?」
痛みを感じたのは左耳だ。
それも根元からちぎるような痛みではなく、耳たぶから貫かれた痛みだ。
「ふふ、『伊達』にするなんてそんなことするわけないでしょう」
そう笑う君はいつの間にか持っていた器具――ピアッサーを見せてくる。
そして痛みの元である左耳を触れると冷たい金属に触れる。
「気になるようですね」
そう言って手鏡を見せてくるそこには銀のダイヤマーク――君の耳飾りと同じものがついている。
「お揃いであるなら妙な子も来ないでしょうからね」
軽やかに降りた君は体躯に見合わないほど悪戯っぽい顔で聞いてくる。
「それとも、もっと別のお揃いが良かったりしますか?」
そう言って君は自身の耳をつまみ引き抜くような仕草をする。
「まさか」
そう君に返した言葉にどんな感情を込めたのかは自分自身ですら判別できなかった。 - 5二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:14:52
以上です。
どこかのスレで「ドリジャは『伊達』にしてきそう」って書き込んで矢も楯もたまらず書いたのがこちらです。 - 6二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:17:14
色っぽい…
好き…(語彙力消失) - 7二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:18:57
今週はドリジャSSが豊作だぁ
応援スレに推薦しておいたゾ - 8二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 00:19:52
良い…
嫉妬と独占欲とサドのいい味が出ている…
ありがとう - 9二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 03:39:07
すごく良かったです!!!
- 10二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 06:58:28