- 1正義の曇らせマン24/06/26(水) 04:16:19
一日目
A.H.A《アトラハシースの箱舟》占領戦と称される、キヴォトスの総力を集めた占領作戦。
その全てが失敗に終わり、色彩の手によって世界は破壊の一途をたどるのみであった。
「うへ。先生、一週間後この世界は終わっちゃうんだって」
ホシノは先生といつものハンモックで気丈そうに話すが、顔は見えず、どこか悲しそうな雰囲気を纏っていた。
”大人として恥ずかしいんだけどね、もうすぐその時なのに終わりが来るのを信じられないんだ”
自分の死の瞬間をイメージできないように、先生も世界の終わりが信じられないようだった。
「先生、最後にやりたいことをしに行こうよ。なんでもいいよ、危険な所でも、おじさんが守ってあげるからさ」
先生が少し悩んで、結論を出す。
”銀行強盗…はダメだけど、ゲームを作ったり、補修が必要な子の手伝いをしたり、いつもと同じことをしたい…かも。ごめんね、変わり映えしなくて”
ホシノがそれを聞いて笑う。
終わってしまう世界の中、いつもと同じことをして過ごしていたいというのは先生くらいだろう。
「どうせ終わっちゃうんだから銀行強盗もやっちゃおうよ~。ほら、ちょうどあそこに銀行あるよ?」
二人はいつもの目出し帽を被ってカイザー銀行に向かう。
カイザーにはいつもしてやられていたので、ちょうどいい報復の機会だ。
「ほら、先生。せーの!」
『銀行強盗だ!』 - 2正義の曇らせマン24/06/26(水) 04:16:36
アイコンタクトをした後事前に作っておいた決め言葉を言い、銃を突き出す。
銀行員は一人しか勤務していなかったが慌ててお金を用意して二人に渡した。
満足した二人はホクホク顔で銀行から出ていった。
「ほら、先生、楽しいでしょ?」
”うん、なんだか。悪くない!” - 3正義の曇らせマン24/06/26(水) 04:37:11
二日目
「先生…。また変なゲームに課金したんですか!? そういった出費は抑えてくださいと…!」
ユウカがぐちぐちと先生に文句を言う、それを先生はいつも以上に流して聞く。
”まあまあ、こんな時なんだから。臨時金も入ったしね”
「まあ、世界がこうなってるんです。ダメとは言わないですけど、けど! そんなにそういう事がしたいなら答えてくれる生徒もい、いるんじゃないですか!?」
ユウカは顔を赤らめてそう言う。
先生は横目にゲームをやっているが、たまにユウカのことをちらっと見て、またゲームに戻る。
もしかしたら孫を見ているような感覚なのかもしれない。
”そうだ! ユウカ、ゲームを作ろう!”
昨日もやりたいと言っていたが、先生は本気でゲーム作りをするようだ。
先生はゲーム開発部を呼んで、話を進める。
「先生、アリスは待っていました! 早速魔王《しきさい》!を倒しに行くとします!」
アリスはいつもと変わらない元気さで畳みかける。
「その前に、まずは教会でしょうか? だって、ゲーム開発部のみんなと対策委員会の人たちも死んでしまいました…」
アリスはゲームのように教会で祈れば人間が生き返ると思っているが、先生は今更それを正そうとしない。
きっと、終わりの日まで無知でいる方が幸せなのだと思ったかもしれない。
”…そうだね、でも、あとで私が生き返らせておくから、ゲームを作ろうよ。みんなを題材にしたゲームを”
「はい、分かりました!」 - 4正義の曇らせマン24/06/26(水) 04:37:24
アリスが先にゲーム開発部の部室に向かう。
ユウカはそれを見て悲しそうな顔をして口を開く。
「良かったんですか? あのままで」
”分からないけど、もう、何をしても変えられないなら幸せで居てほしくて”
先生はそれだけ残してアリスが居るゲーム開発部部室に向かう。 - 5正義の曇らせマン24/06/26(水) 04:41:45
三日目
「か、完成しました…! これがテイルズ・サガ。クロニクル3です!!!」
出来たゲームはストーリーも陳腐、イラストも稚拙、バグも無くただつまらないゲームだった。
アリスは完成したそれを見てとても楽しんでいる。
「先生、完成したんですよ? 早くモモイ達を起こしにいきましょう!」
”うん。そうだね…”
先生はそう言ってミレニアムを後にした。
その背中はとてもか弱くて見れたものではなかった。 - 6二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 04:55:24
そしてこれがたさきつくる
- 7正義の曇らせマン24/06/26(水) 04:57:11
四日目
「トリニティにようこそだね、先生!」
トリニティに到着した先生を迎えるのはミカ。
数日前までズタボロになっていたメンタルが、先生が来ると分かって回復したようだ。
「やっぱり、先生もこんな状況じゃ元気でないよね、そうだ、先生! 補修授業部のみんなが一個上の学年のテストを受けて、みんな赤点だったんだ!」
”あはは! でも、ハナコも赤点だったの?”
そう何気ない質問をするがミカは頑なに答えようとしない。
無理に聞こうとしても「先生が傷ついちゃうから」と言って話を戻す。
”そっか、ハナコも…”
「先生は気づいちゃうね、そう、ハナコは…」
二人は敢えて口には出さないが同じ結論に達していた。
ハナコは死んだんだ、恐らく自死。
”他の三人は何してるの?”
先生がハナコを除いた補習授業部三人の安否を尋ねる。
「コハルちゃんは寮に居るけど誰にも会いたくないみたい、アズサちゃんとヒフミちゃんは伝説のペロロジラを探しに行ったよ」
”そっか、じゃあ私は他の学園に挨拶に行ってくるね”
先生が別れを告げるとミカは酷く悲しそうな顔をするが、ミカは何も言わない。 - 8正義の曇らせマン24/06/26(水) 04:58:50
- 9正義の曇らせマン24/06/26(水) 05:13:25
五日目
「いらっしゃい、先生」
ヒナが挨拶すると、先生が軽く礼を言う。
二人は特に何も言わず、ソファに座る。
”こんな状況なのにゲヘナの風紀委員長として頑張ってくれてありがとう。私の仕事もだいぶ減ったし、ヒナがそうしてくれて嬉しいよ”
先生が話を切り出す、ヒナはそれを聞いて恥ずかしがるが、より距離を縮める。
「先生、こんな時だから言うけど、もっと、褒めてほしい…」
ヒナはそれを言ったあとすぐに横を向いてしまう。
だが先生は何も咎めず、ヒナの頭を撫でて語りだす。
「ヒナは偉いよ、よく頑張ってる。私が危ないときにいつもいち早く動いてくれるし、私もそんなヒナの先生で居れて良かった」
ヒナはそれを聞き、泣き出してしまった、アコの事、イオリの事、チナツの事、色々思い出してしまったのかもしれない。
”頭を思い切り吸う”
「ひゃああっ!? せ、先生?」
ヒナは先生の突然の寄行に驚き、声を上げる。
何も言わない先生を見て、ヒナも何も言わずなされるがままにしていた。 - 10正義の曇らせマン24/06/26(水) 05:39:45
六日目
「ようこそ、ヴァルキューレ警察学校へ。といっても今は機能していませんが」
”よろしく、カンナ”
先生とカンナは軽い挨拶を交わして学校に入る。
有名なギャングに襲撃され半壊、事実上の休止となっているこの学校に遊びに来るのは先生くらいなものだ。
”早速だけどカンナ、お願いがあるんだ”
「引き受けましょう、先生には借りがありますので」
先生は生唾を飲み込んで口を開く。
”み、耳をもふもふさせて欲しいんだ!”
「なっ!? 先生、正気ですか!」
先生は正気であるかは置いておいて、カンナは引き受けると言ってしまった以上断れない。
絶体絶命、どうするものか。
「ほら、早く触ってください。十秒までしか許しませんからね」
触られているカンナはだいぶ満更でもなさそうだったが、先生は鈍感なので気付かない。
触られている間、耳をぴょこぴょこさせている。
”ありがとう、私の夢だったんだ!”
「随分安い夢ですね、これくらい、いつでもさせてあげますのに」
カンナがそういうと先生は嬉しそうにガッツポーズをするが、そのあと落ち込んだ。
もう、世界は壊れてしまって触れないことに気が付いたのだ。 - 11正義の曇らせマン24/06/26(水) 05:39:59
「すみません、気を落とさないでください」
”大丈夫だよ、もう一回触ったら私はシャーレに戻るよ”
先生は許可を得ずに勝手に耳を触って学校を後にする。
もうヴァルキューレ警察学校での用事はすべて済ませたようだ。 - 12正義の曇らせマン24/06/26(水) 05:50:32
七日目
「うへ~、先生。ようやく戻ってきた」
”ただいま、ホシノ”
先生は帰りの挨拶を済ませて、ホシノと一緒に仮眠室へと入る。
「先生、こころの準備はいいよね?」
ホシノがそう言って先生の胸を叩く。
先生は「準備はできた」と言い、ホシノは袋から何かを取り出す。
「これがヘイローを破壊する爆弾。きっと、一瞬で意識が無くなるから安心して、先生」
ホシノはブラックマーケットに寄ってヘイローを破壊する爆弾を仕入れたのだ。
目的は明白だった。
「10分後に爆発するようにしてるから、話したいことがあったらなんでも言ってよ」
先生は思い出に耽りながらホシノと話す。
”ごめんね、ホシノ。こんなことに巻き込んじゃって”
「全然大丈夫だよ~、むしろ。世界に負けて死ぬんじゃなくてよかった。これでもアビドス最強の自負があるからさ」
”それに、私がもっと上手くやっていれば色彩に負けなかったかも”
「そんなことないよ~。みんなでやってダメだったんだから」
”あと、色々ありがとう、上手く言えないけど、私はホシノの事が―――”
その瞬間、シャーレの仮眠室で大きな爆発が起きた。 - 13正義の曇らせマン24/06/26(水) 05:58:42
八日目
『速報です!!! 奇跡的にキヴォトスは色彩からの侵略の抵抗に成功!!!』
…体の節々が痛い、でも、目立った外傷は無い。
「せ、先生は!?」
私は大慌てで先生を探すが、どこにも見当たらない。
「患者番号830、小鳥遊ホシノさんですね、聞きましたか? この世界は色彩から逃げ切ったって」
「え、は?」
理解ができない、理解をしたくない。
どうして、世界は終わっていないの?
「なんで、なんでなんでなんで!!!!!」
「なんで、って。私はただの看護師なので何も…。でも、どうやら色彩が拾った砂の粒を王女と予言者がまた砂漠に戻したと、ティーパーティーの方は言っていました」
嫌だ、先生が私のせいで死んで、私が殺して!!!!
「あああああああああああああああ!!!!!」
END - 14正義の曇らせマン24/06/26(水) 05:59:41
- 15二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 06:22:36
- 16二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 06:53:19
ミストでも観た?
- 17正義の曇らせマン24/06/26(水) 06:56:01
- 18正義の曇らせマン24/06/26(水) 06:56:26
この画像めっちゃ好きだから個人的に使わせてもらおう
- 19二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 06:57:41
- 20正義の曇らせマン24/06/26(水) 06:59:24
- 21二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 07:06:08
- 22正義の曇らせマン24/06/26(水) 07:06:41
は、はひゃ~><
- 23正義の曇らせマン24/06/26(水) 16:03:34
見てきたお、ニートフル活用したったわ。
いーや面白いかったわこの映画、もう見たくないけど。
絶対に。
インスピ沸いてきたから趣味で書いてるネット作品更新してくんべ - 24二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 19:36:37
おい、ハナコが…
- 25二次元好きの匿名さん24/06/26(水) 20:05:16
- 26二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 02:02:33
先生もそうだがハナコも亡くなってるんだよなぁ…
- 27二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 02:09:20
失ったものがデカすぎるっぴ……