【閲覧注意】貴方の隣で【SS】

1二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 00:53:15

「そういえばドリームジャーニー先輩ってあんまりトレーナーさんに引っ付いてませんね」
「何ですか藪から棒に」

多少の困惑を感じながらチームのかわいい後輩の言葉に返事をする。
陽が落ちるか落ちないかの微妙な時間にクールダウンしながらのストレッチ中だ。
言葉を向けてきた後輩は数度の未勝利戦に挑んでいる子だ。
実力的にはそろそろ未勝利戦を越えてもおかしくないが少々あがり症なのが珠に瑕だ。

「あくまで噂なんですけどこう……実力あるウマ娘って囲い込むじゃないですか」

たしかにメジロ、シンボリ、サトノ、ダイイチなど名家と言われるウマ娘は担当トレーナーに少々過剰ともいえる契約を結ぶことがままある。
その行動は「優秀な者を取り込むことは自然なことだ」という容認する意見と
「人材の独占はいささかやりすぎ」という批判と同程度に存在している意見だ。

「ドリジャパイセンも結構な影響力もってるのにそういう素振りないじゃないスか」
「せめて『先輩』とつけなさい」
「はーい、ドリジャ先輩」

ノリは軽いが礼儀はわきまえる子で、パイセンという軽口も年下が目上に甘えるようなものだろう。
気負いもなく自然体だ。
きっとこの愛嬌は生きる上での武器になるだろう。
が、その話が通じるのはせいぜい新社会人と言える時期までだろう。

2二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 00:53:38

「でもアタシが言うのもなんですけどどうしてそんなにマーキングしてないんです？」
「……それが相当下品なことだと知って言っているなら流石に折檻する必要がありますよ？」

トレーナーの指導を受け、私の後輩がTPOをわきまえないとなるとさすがに問題だ。
なにより当人が苦労をするだろうからここで少々手荒なことも辞さない覚悟で聞き返す。

「……少し考えなしの言葉だったっすね」

耳が垂れている。
こういう反省すべき所を察してすぐ外に出せるのも生来の気質でしょう。
ただ言いたいことはわからないでもありません。

「あの人――トレーナーは私が最優先しているという自負がありますし、無味なことに気を使う趣味はありませんから」
「うへぇ……ごちそうまでした」

そう言ってストレッチを終えて立ち上がった。
その目線はこちらを明らかに見下ろしているが、私を慕う視線でこれから少々の息抜きを誘ってくる。
なんでも行き付けの喫茶店がメニューの一新をもくろんでいるとかでテスターを募集しているらしい。

「ふふ、分かりました一緒に行きましょうね、では先に向かっていてくださいね」
「了解っす、先輩」

3二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 00:54:07

「それにしても独占欲――ですか」
シャワー室で軽く汗を流しながらつぶやく。

「ない訳がないでしょう」

どれほど聴覚に優れたウマ娘だろうと水音で言葉がかき消されるから思いつくままに言葉を続ける。

「ええ、だって聖剣が胸に刺さることなく、最強の相棒たる黄金の暴帝とも出会うことがなく、魔女や可憐な美女とも縁のない世界ですから」
ひどく醜い顔で安堵している。
そんな思いが浮かぶがどうしよもなく甘美なその響き――

「私だけのトレーナー」

その言葉ににあらがうことができない痺れるような疼きを感じる。

「おっと」

危険な考えが浮かぶ予感がしてシャワーの温度設定を冷水に切り換える。
その身を震わせる冷水はよくない考えを洗い流した。

4二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 00:56:03

以上です。

過去作というかうかどうしても我慢できなくて以前書いたものが以下のものです。

【閲覧注意】君の手で【トレウマ　SS】【ドリームジャーニー】｜あにまん掲示板「痛いよ、ドリームジャーニー」「ええ、痛くしていますから」ただ事実を伝えるように君に言葉を渡す。海を渡る風のような涼やかな声を受け取っている耳、そこからちぎり取られる寸前の鋭い痛みを感じる。それを与え…bbs.animanch.com