待ち合わせ【ダンポケ・SS】

  • 1二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 23:19:05

     陽が高くなって、街には熱気が立ち込め始める。街中を往く人々の額には汗が浮かんでいたが、それは日陰に佇むジャングルポケットも同様だった。手にしたペットボトルを空にして、ふう、と一息。その表情は硬く、レース直前の如く緊張感を纏っているようにも見える。
     ペットボトルを握りつぶし、今度は小刻みに身体を揺らし始めた。

    「何のことはねぇよ、いつも通りだ。ちょっと普段より遠出するだけさ。なあ?」

     自らに言い聞かせるように、拳に力を込めながら呟く。そうしてひとしきり身体を揺らしてアップしたら、軽く空を仰いで深呼吸。瞳に映る青空が、今日も暑くなると告げていた。
     そんな彼女の脳裏に、不意に先日の記憶が蘇る。

    『ねえ、ポッケちゃん……今度のお休み、2人でお出かけしない? ちょっとだけ、遠出しちゃったりして……どう、かな?』
    『ポッケ君。私が思うに、それは所謂デートのお誘いというものじゃないかな?』

     刹那、今しがた振り払ったばかりの緊張感が再びポッケの表情に浮かび上がる。そんな自分に、彼女は再び檄を飛ばした。

    「しっかりしろよ、そんなんじゃフジさんにも申し訳ねぇだろ」

     今日に向けて背中を押してくれた人の顔を思い浮かべつつ、軽く自身の服装を再確認。全体的にリラックスし、動きやすいシルエットを見せるジャケットとパンツのコーディネートは、今日の為にフジキセキと相談して決めた一張羅だ。

    「……変じゃねえよな?」

     待ち合わせ場所に30分以上前に来ておいて尚この言葉が飛び出す程、今日の彼女の胸には期待と不安が渦巻いていた。偶には2人で遠出でも、と言うダンツフレームの誘いにポッケは二つ返事で了承したが、それがデートの誘いだとその場で気付かなかったのは、何度振り返ってもポッケの不覚である。
     しかし、仮にアグネスタキオンのからかい混じりの言葉でそれに気付かされたとしても、そうと分かればポッケの行動は早い。両掌で頬を打ち、こういう時にどうすべきか頼れる人に教えを乞う。

     そうして入念に準備して当日を迎えて尚、普段通りの自信が湧いてこない自分自身に、ポッケは少しばかり肩を落としていたのであった。

    「……ダセぇトコは絶対見せらんねぇ……んだけどなぁ」

     そう言って今日何度目かの溜め息を付いた、その時だった。

  • 2二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 23:22:35

    「ポッケちゃーんっ」

     目の覚めるような明るい声。導かれるように顔を向けると、手を振るダンツの姿があった。
     陽射しに映える明るい色のワンピースを揺らし、人混みを眩しそうに走ってくるダンツの表情は、夏の陽を浴びて一際眩しい輝きを纏っている。
     その瞬間、ポッケの胸をどんよりと覆っていた雲は晴れ、爽やかな風が駆け抜けた。思わずふっ、と口角を上げ、手を振るダンツに応える。

    「ごめんね、待った?」
    「いや、全然。俺も今来たとこだ」
    「そう? 良かったぁ」

     少し息を切らしながらはにかむダンツの表情を瞳に映して、ポッケは思わず笑みをこぼした。

     さっきまであーだこーだと考えて悶々としてた自分は一体何だったのだろうか。『らしくなくて見てられない』フジさんの言った通りだ。

    「ポッケちゃん? どうしたの?」
    「ん、何でもねえよ。行こうぜ」
    「……うんっ!」
     
     ホラ、あんなに"俺にはムズいっすよ"なんて言ってたくせに、気が付けば自然にダンツに手を差し出してる。少し驚いて、それから嬉しそうに手を取るダンツの歩幅に合わせるように、まずは一歩。それから自然にまた一歩。
     どうっスか、フジさん。俺も案外、様になってるでしょ?
     
     ポッケが心の中でそう呟くと、ポッケの脳裏にポンと浮かんだフジキセキが眩しい笑顔とサムズアップで応える。頑張れ、と言わんばかりにウインクしてまたポンと消えたフジキセキに、ポッケは今日の成功を誓った。
     そうと知らないダンツは、掌から伝わる熱を愛おしげに自身のそれで受け止める。
     
    「今日も暑くなりそうだね」
    「ああ、もうすっかり夏だな」

     ふと脚を止め、一緒に空を見上げてみる。雨の季節は過ぎ、どこまでも青い夏の空が一面に広がっていた。頬を撫でる爽やかな風を感じていると、思わず脚が疼く。けれど、今日は────。
     二人はちらと互いを見つめてから、再びそっと脚を動かす。それからは、今日の行き先の話、共通の友人二人についての愉快な話。そして、これからもずっとこうしていたいという話。カラフルな話題が二人を彩っていく。
     青空と共にどこまでも輝く夏の陽射しは、そうして街を往く二人の未来までもより一層眩しく照らしてゆくのだった。

  • 3二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 23:26:40

    以上です、ありがとうございました。
    ポッケシナリオで適宜供給されるダンポケが身体とDNAに素早く届きました。宝塚記念のイベントは神です。
    こうなると早くダンツも実装して欲しいなーと思う今日この頃です。

  • 4二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 23:36:01

    ほう 王道のポケダンですか
    たいしたものですね
    まっすぐな好意を向けるダンツフレームとそれに不器用ながらリードするポッケの組み合わせは糖度がきわめて高いらしくレース前に愛飲する勇者もいるくらいです
    しかも慣れないデート服に自信を持てないポッケ
    これも即効性のウマウマ食です
    ワンピース姿のダンツも添えて色味のバランスもいい
    それにしてもダンツ実装前だというのにこれだけ説得力ある描写ができるのは超人的なss力というほかはない

  • 5二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 23:39:52

    アチーーーーー↑↑↑この二人アツアツですわーーーーー!!!

    夏の始まりと同時に恋の始まりも感じる素晴らしいものを見させていただきましたわ

  • 6二次元好きの匿名さん24/06/27(木) 23:40:47

    このダンツは昨晩必死に今日来ていく服選んでるし
    天真爛漫を装いつつポッケに手を繋がれた時めっちゃドキドキしてるんですね分かります

  • 7124/06/28(金) 00:35:55

    >>4

    お褒めの言葉、ありがとうございます。ダンポケから摂取出来る栄養素の数々、映画でもアプリでも大勢の人に届いて欲しいですね。


    某勇者「例え何度昇天しようともこの尊さを拝めるならばあたしは一向に構わんッッッ!!!」


    >>5

    ありがとうございますわ!

    眩しい陽射し、どこまでも青い空、惹かれ合う二人、甘酸っぱい青春の醍醐味ですわ!

    この尊さはDNAに素早く届きますわ!


    >>6

    両手に服を持ってどっちにしようかずっと悩んでたり、部屋に帰って来てからずっと繋いでた方の手を眺めて嬉しそうにニコニコしてるダンツの姿を後ろでミラ子がニヤニヤしながら見つめてると思います。

  • 8二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 00:48:43

    なんかもう途中から頭の中でずっと爽やかな夏のミュージックが流れ続けてた
    就寝前の良質なダンポケのおかげで明日も元気に過ごせそうだぜ

  • 9124/06/28(金) 07:13:59

    >>8

    ありがとうございます、夏の爽やかさを出したいと思っていたので、そう言って頂けて何よりです。

    寝る前のダンポケはあと一歩頑張りたい金曜日の身体に効く。

  • 10二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 09:01:21

    >そうと知らないダンツは、掌から伝わる熱を愛おしげに自身のそれで受け止める

  • 11二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 11:54:44

    ダンツの「ポッケちゃーんっ」が夏暑い日の活力になる

  • 12二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 16:15:56

    やはりダンポケ…ダンポケは全てを解決する…

  • 13二次元好きの匿名さん24/06/28(金) 21:28:52

    乙すぎる
    もっとダンポケ見たいな❤️

  • 14二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 00:26:26

    このレスは削除されています

  • 15124/06/29(土) 08:52:50

    皆様、読んで頂きありがとうございます!


    >>10

    拳を付き合わせるのとは全く違う、暖かい掌の感覚に喜ぶダンツの尊さがDNAに素早く届く。


    >>11

    ダンツの「ポッケちゃーんっ」はいつか夏バテにも効くようになる。


    >>12

    何事もダンポケで解決するのが一番だ。とマスター・フジキセキ=サンも言っているので恐らく真理です。


    >>13

    最近インスピが枯渇気味なので、色んなモノをインプットして良いと言って頂けるようなお話をお出ししていけるよう精進したいと思います。

    取り敢えずタキオンの目の前でイチャイチャさせてみましょうか……。

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