- 1二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 03:18:09
「映画への出演……ですか?」
ジャーニーと互いにいきなりの話に驚きながら聞き返す。
受け取った名刺には有名な映画製作会社の名前が記されている。
「はい、その通りです」
きっちりとスーツを着た男性がにこやかに話しかけてくる。
場所は学園内の一室のビジネスに関わることを話す部屋だ。
詐欺の類を警戒しないこともないが、たずなさんに呼ばれてこの部屋に来ているので学園に話は通してあるちゃんとした仕事なのだろう。
そう思っていると男性は一目で高級品とわかるブリーフケースから一枚の書類を渡してくる。
「まずこちらの守秘義務に関する契約をお願いいたします」
目を通してみるがパッと見はおかしな内容ではない。
ジャーニーを見るとかすかにうなずいたのでやはり大丈夫のようだ。
なので署名と捺印を行い無事契約がかわされた。
「はい、たしかに頂きました」
そう言いながら一封の封筒を取り出す。
表には『関係者外秘』と大きく書かれており、封筒の口はセキュリティシールが貼られている。
「中には現在企画中の映画のあらすじとお願いしたい役の設定が書かれております、今すぐ決めてほしいというわけではありませんのでまた後日に伺います」
「あ、はい」
「ええ、ご足労ありがとうございます」
そこで外からノックされてたずなさんより声が掛けられる。
どうやら僕たち以外のウマ娘にも同じような依頼を出すようだ。
なので慌てて封筒をもってきた鞄に入れて退室した。 - 2二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 03:18:41
「それにしても映画かぁ」
話すにしてもセキュリティがある程度しっかりしたところが良いと思い遠征支援委員会のパーティションに囲われた机で話す。
資料の表紙には書かれているのは――
「『宇宙走娘<コスモピュエラ>2 失われたゴールデンディスクを求めて』か」
「以前に一緒に見た映画の続編ですか、不思議な気分ですね」
宇宙走娘、数年前に公開されたトレセン学園が協力し作られた映画で、輝かしい成績を残したウマ娘たちが登場し世間を騒がせた。
宣伝時の素っ頓狂な内容でB級映画と思われたが科学監修と熱演によって結構なヒットになった。
「前作の裏で行われていた騒動みたいだね」
「ネイキッドシンギュラリティによる銀河縮退の阻止がメインでしたのでそれよりも規模感は落ちそうですね」
言いつつ資料を読み進める。
すると――
「あー、なるほど……」
「現実のボイジャー計画をそう絡めるわけですか……」
「たしかに不自然に『地球』って単語が出てこなかったからね」
あくまであらすじでしかないが今回もまた相当な規模感の話になりそうだ。
「基本的には人類圏が銀河規模に広がった時代の様々な職業にフォーカスを当てて、主人公はワイルドなアウトローと几帳面な政府職員の即席のバディ」
「……明らかに想定している人がいますね」
互いに苦笑しながらあらすじが書かれた資料を閉じる。
続いてジャーニーに依頼されたキャラの設定を見るが――
- 3二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 03:19:16
「これ、相当尖ってるね……」
「違法である低年齢への加齢対抗処置を施すことで、知能の発達が行われる幼少期を長くして作られた人造の天才」
「見た目と人生経験に差があるキャラなんだね」
ちらりとジャーニーに目をやると、体のサイズ感に反し成熟した雰囲気をまとっている。
こっちの視線に気づいたのか目尻を緩ませるように笑いかけられる。
その仕草は実年齢すら似つかわしくない色気を感じドキリとする。
「これはジャーニーがはまり役かもね」
「ふふ、そういわれるとうれしいですね」
が、更に一枚めくったところで手が止まる。
そこに書いてるのが――
「……これはちょっとまずいかもね、旅行会社を隠れ蓑にした密輸、人身売買、密入国の仲介を行っている広域犯罪組織のボス」
「資料の様子だとあくまで私の名前と雰囲気からそう設定したようですが、遠征支援委員会の代表者が旅行を隠れ蓑にした様々な違法行為に手をつけているのは問題になりそうですね」
そこで手を止め考えこむ。
結局のところフィクションなので気にする必要もないのかもしれないが、どうしても二の足を踏んでしまう。
かといってブラックマーケットや法の及ばない地域での活動が避けられないテーマゆえにどこかのキャラが担当しないと話が進まない。
なので誰か一人に担わせるというのは納得はできる。
そんなことを考えている間も落ち着いた様子で資料を読み進めていたジャーニーが手を止める。
「これはあくまで第一案ですし、私は受けてもいいですよ」
「いいの?」
「ええ、少し気に入った箇所もありますし」
どこ?
と思いながら読み進めると、組織の構成員の項目も箇条書きされておりその中には右腕にあたる人物も設定されている。 - 4二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 03:19:37
「これって……」
「ええ、トレーナーさんモチーフでしょうね」
極悪非道の組織内でも良識を持った存在であり、ある種のストッパーらしい。
そこでジャーニーは資料を閉じて、目を細める。
その瞳はどこか冷たい光を持っており、向けられたわけでもないのに思わず身が震えあがる。
「それに、メインキャストがあの二人でこんな設定を持ったキャラが出て来たなら私が演じなくても変な勘繰りがされるでしょうね」
軽やかともいえるほど軽い所作で立ち上がり、資料を部屋の貴重品を納める金庫にしまう。
「ええ、本当に楽しみですよ ふふ」
その背筋が震えあがる笑みを見ながら、やりすぎないように見張っていようと決めた。 - 5二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 03:23:36
以上です。
頼んでいたCDを受け取って聞いているうちにコスモピュエラの思い出が脳裏に浮かんできて、ドリームジャーニーは結構特殊な造形なように思えて思いつくままに書き上げました。
前作はこちらです。
【閲覧注意】貴方を腕を【トレウマ SS】【ドリームジャーニー】|あにまん掲示板「あの、トレーナーさん、大丈夫ですから」「ダメだよジャーニー、もしものことがあったら大変だから」羽のように軽やかな体――ドリームジャーニーを抱き上げながら振動を与えないようにできる限り急いで校内を移動…bbs.animanch.com……みなさんも見たことがありますよね?
スペースオペラの大作映画コスモピュエラ。(胡乱な目
- 6二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 03:33:42
下手すりゃトレセン外含めて関係を詳しく知らない周囲からは
インテリヤクザのストッパー担当と認識されてるのかドリトレ……