【SS】小さくて、温かな

  • 1二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:12:06

    トレセン学園の卒業式が終わって暫くの、とある夜
    春のまだ冷えた夜に自分達は旅に出る
    「こんばんは、トレーナーさん」
    ジャーニーはもう着る事の無い制服とトレセンのジャケットを羽織っていた
    「こんばんは、ジャーニー。制服で来たんだ」
    「フォーマルな場にも行く予定ですからね」
    「……どうしたんですか、そう黙ったままで」
    「トレセンの制服を着るのも、トレーナーって読んで貰えるのももう無いんだなぁって」
    「ふふっ、貴方が望むのなら.....構いませんよ?」
    それでも、公では最後だ。
    そうですね。
    他愛のない会話をしながら、灯りのともり始めた駅へと歩を進める
    行き先はジャーニー次第。自分はそれに着いて行くのだ

  • 2二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:12:33

    丁度帰宅ラッシュの時間帯に、空いている上り電車に乗った
    移動も旅の楽しみの内
    空いている電車は非日常の味がした
    やがて大きな駅へ着いて特急に乗る
    中々珍しい構造で、本を読んでいたジャーニーの耳が楽しげに動いていた
    「ジャーニーも移動は楽しいんだね、慣れてそうなのに」
    「っ……顔に出ていましたか」
    「どんな道筋も旅の1ページですからね。それも、トレーナーさんと一緒ですし」
    ほんの少し頬を赤らめ、今度こそ悟られまいと本へ視線を戻す
    耳は相変わらずクルクルと動いていた

  • 3二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:13:40

    『次はー××、次は××でございます。えーお降りのお客様は───』
    無機質な声が人気のない車内に響き、自分達は電車を降りた
    小さな改札を出た先にあったのは暗い、暗い森道だった
    「ここから少し歩きます」
    4,5分歩くと硬く閉じた大きな門と塀が佇んでいた
    その中から漂うものはどこか畏怖を感じさせる雰囲気だった
    背丈の大きい黒服のウマ娘が提灯をもってこちらに向かって来て、礼をした
    ジャーニーがそのウマ娘と話をしたあと、そのウマ娘は提灯を渡し暗闇走り去っていった
    「ここは……?」
    「旅は始点から、と言うでしょう。」
    ふわりとした回答
    それが暗い未知への恐怖を加速させた

  • 4二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:14:33

    一歩、門の中に踏み出す
    威圧感を感じ、思わず息を呑んでしまった
    足が重い。嫌な汗が吹き出てくる
    「ジャーニー、ごめん、ごめん…怖い」
    「知らない世界に少しばかりの恐怖は付きものです」
    「貴方はそれに屈しない、でしょう?」
    優しい声色
    これは怯える自分を優しく導こうとしてくているのだ
    けれど、嘘だ
    現にまだ一歩しか踏み出せてはいない
    辺りは真っ暗。頼れる灯りも見当たらない
    もしここで戻ると言ったらどうなるのだろう
    きっと、失望されてしまう
    怖い、何もかも

  • 5二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:15:03

    冷たく冷えていった手に温い感覚が広がる
    そのぬくもりはゆっくりと指を絡めた
    整えられた鮮やかな赤いネイル
    大切に磨き上げられた数多の金属の指輪
    その全てが感じられる程に。
    自分の手を包み切れない小さな小さな温もり
    「行きますよ、トレーナーさん」
    思った以上に軽く足が出る
    ただ、心は軽く無い
    大人である自分が少女に頼るなど情けない
    そう思ってしまった
    ───ふわり
    優雅に回転してジャーニーがこちらを向いた
    シャンプーと幾度となく嗅いで来た香水が混じり合う
    「貴方は私に着いて来て下さった」
    「それは紛れもなく貴方が踏み出した一歩です」
    「ですから......」
    今度は両手に温もりが広がる
    「私を頼ってください」
    「私と歩む、夢の様な旅路の始点なのですから」

  • 6二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:20:19

    おしまい。
    噛んだりとかとは別方向でのジャーニーを書きました
    門の先は黄金一族の里、と言う裏設定があります
    実家連行ジャーニーはまた別のお話…
    実装前にも1つ書いたけど実装後にやっと1本書けた…ジャーニー、良い
    ここまでお読みくださりありがとうございました

  • 7二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:23:55

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  • 8二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 19:47:06

    まずいトレが一族()に紹介されちまう!!

  • 9124/06/30(日) 21:05:33

    >>8

    両親にサラッと挨拶させてトレが気づかない内に外堀を埋めて来るジャーニーです

    何気に一族にもアピールされてそうなのが、もう……手遅れ

  • 10二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 21:38:19

    とっても良かったです!!!

  • 11124/06/30(日) 21:41:43

    >>10

    ありがとうございます!!!

  • 12二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 03:55:48

    黄金の里…ややこしい名前過ぎて変なのが寄ってきそう
    肝心のアネゴは居ないわけだし

オススメ

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