- 1二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 23:55:38
自分探しのために色んなアルバイトをして各地を放浪する錠前サオリ。だがその中には恐ろしいものが隠されている危険なアルバイトもあった。これはそんな危険なアルバイトにうっかり勤めることとなったサオリのお話。
スレ画像はバ先で怪異に遭遇し「そんな!どうしてこんなことに!?」と思ってる錠前サオリ。
錠前サオリを主人公とした漫画『裏バイト:逃亡禁止』風SSを上げていきます。気楽に読んでいただけますと幸いです。よろしくお願いします。
前回のあらすじ
ゴミ収集のバイトを始めた錠前サオリ。今日も仕事を終え、母親が待つ我が家へと帰るのだった。
「ただいま、マミー」
前のバイト(実質2スレ目)
https://bbs.animanch.com/board/3531669/?res=179
最初のバイト(実質1スレ目)
何!?時給2万円のコンビニ深夜勤だと!?【SS、微ホラー】|あにまん掲示板bbs.animanch.com - 2二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 23:56:43
- 3二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:10:37
不慣れなため、お騒がせしてしまい申し訳ありません。続きはこちらでやっていきます。
- 4二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:11:22
おつです
- 5二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:13:26
このレスは削除されています
- 6二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:14:10
縺サ縺励e
- 7二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:17:14
このレスは削除されています
- 8二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:18:39
保守ありがとうございます。後学のたまに聞きたいのですが、10レス突破したら続きのSSを上げたらよろしいでしょうか?
- 9二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:26:43
- 10二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:27:38
了解、ありがとうございます。少しだけですがつづき載せときます。
- 11二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:28:12
(7日目、帰宅)
住宅地の外れにある小さな家、そこに私達は住んでいる。今日はスイーツショップに寄って薔薇の形をしたケーキを買った。先日、放課後スイーツ部のみんなに教えて貰ったものだ。彼女達の見立てなら外れることはないだろう。
「マミー、ただいま」
「おかえりなさい、サオリ」
マミーはリビングのソファに座り、洗濯物を畳んでいた。私は手早く荷物を片付け、紅茶を入れる。お湯を沸かしている間、私はマミーの姿を眺めていた。赤いエプロンに、優しく柔らかな顔立ち、そして綺麗で長い金髪。不意に開いた窓から風が吹き、ブロンドが日差しに溶けるように舞う。しかし完全に虚空に混ざることはなく、光を乱反射させてその存在を強く際立たせた。私はヤカンが悲鳴を上げるまで、それをぼーっと見ていた。
「サオリ、こっちは片付いたわ。おやつ持ってきて頂戴」
お許しが出たので、紅茶とケーキを持って行く。私はマミーの隣に座って、ローテーブルに薔薇を2輪咲かせると、マミーは花のような笑顔を咲かせた。 - 12二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:28:50
「まあ素敵。どこで見つけてきたの?」
「友達に教えて貰ったんだ。おすすめだと言っていた」
「ならきっと美味しいわね。ところでサオリ……さっきマミーのことずっと見てたわね、どうしたの?」
「え?ああ、マミーの髪は綺麗だなと思って。太陽みたいだ」
「ありがとう。サオリの髪も素敵よ、夜空みたいね」
「ああ、ありがとう……私とマミー、あまり似てないな」
「サオリ……」
私は顔を伏せ、自分の髪を束にして手の上で転がす。夜空のようだと褒めてくれたのは嬉しいが、こうも親子で外見が違うと、どこか1つでもいいから似ている特徴が欲しくなる。
そんなことを考えていると、マミーが私の肩を抱き寄せおでこと視線を合わせてきた。
「私はサオリとよく似てると思ってるわよ。例えばそうね……サオリ、マミーの笑顔は素敵だと思う?」
そう言ってまた笑って見せるマミー。意図を掴みきれず、思わず首を傾げる。
「あ、ああ。素敵だと思うぞ、マミー」
「ありがとう。じゃあ今度はサオリが笑ってみて」
「え?」
突然の要求に困惑する。マミーは真剣な目でこちらを見ている。どう言うことだろう、改めて笑えと言われると、私はどうやって笑っていただろうか?おっかなびっくり、笑顔を作ってみる。ぎこちないだろうな、マミーの笑顔と比べたら素敵ではないはずだ。しかしマミーは満面の笑みでそれに応えてくれた。
「とっても素敵よサオリ!きっとその笑顔は私に似たんでしょうね。だからこんなに素敵なのよ、サオリ」
マミーはそう言って、私を抱き寄せてきた。仕事が終わって帰ってきたばかりだ、汗臭いし汚いだろう、そう言って抵抗するが、いいからいいからと言われてしまう。仕方なしにマミーのエプロンに顔を埋める。柔らかで肌触りのいいフェルトの感触と温もりに包み込まれる。
「かわいいかわいい私のサオリ、私の愛娘」
「マミー……」
頭を撫でられ、私は夢のような温かさに身を任せた。
________その後、薔薇のケーキを一緒に食べ、お風呂に入り、夕飯を食べ、そしてマミーと同じベッドに入った。何気ないがかけがえのない1日が終わり、また明日始まる。明日も頑張ろうと意気込んで、マミーに抱きつきながら眠ったのだった。 - 13二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:28:53
むこうも無事埋まった
- 14二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:29:07
一旦ここまで
- 15二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:34:04
普通にいい親に見えるだけに謎が深まりんぐ
- 16二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:51:32
このレスは削除されています
- 17二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 01:01:40
タイトルに【SS、微ホラー】と書き忘れてる申し訳ない。
- 18二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 06:55:24
お、続きだ
- 19二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 07:55:31
おお、わかりやすいタイトルありがたい。
続き待ってます - 20二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 10:16:07
今回のはバイト自体はあんま関係なくて偶然そこに曰く付き人形が転がってたパターンかな
- 21二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 12:49:24
そういや『ベアおばの支配下になった後のアリウス生徒はどこから新入生を補充していたのか』って疑問あったな原作……
- 22二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 13:06:03
このレスは削除されています
- 23二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 16:49:26
(11日目、勤務中)
「……そうだ嬢ちゃん。俺も今度人形を買うことにしたんだよ」
「そうなのか?」
「娘が欲しがってなぁ。やっぱり小さい女の子はお人形で遊ぶのが大好きだからな。何て名前だっけ?確かマ……マ……なんとか人形、う〜ん……何だったかなぁ?」
「あ、見えてきたぞ(娘?)」
「おおっと、じゃあお喋りは終わりだ。ここは量が多いから、気合い入れてけ!」
「了解した(ロボットの……娘?)」
(車の停車音)
今日も元気にゴミ収集をする錠前サオリだ。今は13番目の担当ゴミ捨て小屋……トリニティ総合学園の校舎裏に来ている。
指名手配の身でそんな場所に行くのは気が引けるが、今のところバレてないしそもそも校舎裏には生徒もほとんど来ない。しばらくは心配ないだろう。早速業務開始だ。
「すみませ〜ん、このゴミ袋も回収して下さ〜い!」
「おう、任せとけ嬢ちゃん!雑草いっぱいだな、草むしりでもしてたのか?偉いぞ!」
「あはっ⭐︎褒められちゃった!ありがとうございまーす!」
「いやしかしゴミ袋の数が多いな……お〜い!こっち来てくれ!」
「了解した」
作業をしていたら、誰かがまたゴミ袋を持ってきたようだ。呼ばれたのですぐに駆け寄る。雑草や枝葉がいっぱいのゴミ袋が5〜6個あり、隣にはそれをむしったと思われる生徒が1人立っていた。
1人であの量は中々やるなと感心して、彼女の顔を見てみる。ピンク色の髪にお団子が2つ、銀河を思わせる立体的なヘイロー……ん?あれ!?
「ミカぁ!?」
「サオリ!?」
そこには泥だらけの体操服を着た聖園ミカが、目をまんまるくかっ開いて立っていた。 - 24二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 16:50:19
「________ぷはぁ!奢りのジュース美味しい!」
「よかったな」
そう言って私は校舎裏の自動販売機に背中を預け、ペットボトルの水を一口飲んだ。先ほど上司から「なんだ知り合いか?じゃあちょっと早い休憩だ。小遣いやるからジュースでも飲んで来い」と言われ、今私はミカと一緒に自動販売機の前でくつろいでいる。とは言っても日除けやベンチがないため、穏やかな昼の日差しが眩しく感じる。風が汗を拭うのも間に合わず、私とミカはその熱気を冷たい飲み物で誤魔化していた。
「奉仕活動か?」
「うん、今日は草むしり。あ、でもね聞いて。私力強いし結構動けるからって業者のおじちゃん達に頼まれて、街路樹の枝切りまでやらされてるの!見てよこの枝切りバサミ!」
頬を膨らませ、ミカはサブマシンガンと一緒に背負っていた枝切りバサミを掲げて見せた。よく手入れされた刃にトリニティのエンブレムが彫られている。それだけで普通の枝切りバサミが何か神聖な剣を掲げてるように見えて、少し笑ってしまった。
「いいじゃないか、街路樹をお前好みにかわいくしてやればいい」
「そう言うわけにはいかないの!ちゃんと綺麗に整えないとナギちゃんに怒られるんだよ」
「真面目にやってるんだな。……本当にいいと思うぞ、庭師の聖園ミカと言うのも」
「ちーがーうーのー!!」
「す、すまない……」
お気に召さなかったらしく、ポコポコと殴りかかって来るミカ。慌てて謝ったが、本気で殺し合ったあの時と比べたら遥かに弱い力だと気がついた。本気で怒っているわけではないのだな、よかった。私は大人しく殴られながらミカの頭を撫でてやった。しばらくそうしてると満足したようで、しかしむすっとしながら私から離れる。気持ちを切り替えるように、2人同時に水とジュースを飲み干し、ゴミ箱に捨てた。
「……あちこちでバイトしてるんだって?」
「ああ、自分探しをしてるんだ」
「前はコンビニで働いてるって先生から聞いてたけど?」
「バイト先、結構変えてるんだ。それで今はこれだ」 - 25二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 16:50:55
「そっか……何か見つかった?」
「分からない……。でも、何も得なかったわけじゃない」
「そっか。まあ……サオリが元気ならよかった」
「ありがとう。ミカも元気でよかった」
自然と顔を見合わせ、笑い合う。するとゴミ捨て小屋の方から上司の呼び声が聞こえてきた。そろそろ出発するらしい、私も行かなくては。
「お仕事頑張ってね、サオリ。あ、そうだ!しばらくトリニティ自治区にいるなら拠点の場所教えてよ!どこの廃墟にいるの?」
「廃墟?いや、マミーと普通の家に住んでるぞ」
「え?マ、マミー……!?」
「おーい!早くこーい!」
「すぐ行くー!すまない。またな、ミカ」
ポカンとしているミカに軽く手を振り、私は駆け足で上司のところに戻った。
「すまない、1人でやらせてしまって……」
「構わねぇよ。さあ行くぞ!」
すぐにゴミ収集車に乗り込み、次のゴミ捨て小屋に向かう。その道中、上司は私に問いかけてきた。
「あの草むしりの嬢ちゃんは友達なのか?」
友達、か……。あんな風に会話できるようにはなったが、果たして私達は友達だろうか?ミカは嫌じゃないだろうか?私が友達面をするのは……。
「………どうだろうな」
分からなかったから、私は言葉を濁した。
「________えぇ?確かスクワッドは……サオリは孤児だったよね?しかもマミー呼び?も、もしかして……アレかな?ママ活って奴なのかな?わーお………」 - 26二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 16:51:48
一旦ここまで(ミカ未所持だから変な喋り方させてたらごめんなさい)
- 27二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 17:33:00
怖い……悪意なさそうなのが逆に怖い
- 28二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:00:06
これもしかして先輩も人形拾ってあたまやられてないか?怖い〜
- 29二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:00:34
- 30二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:01:36
そもそも廃墟に棲んでたはずのサオリが何で一軒家に入れたんだ……?
これもしかしてサオリ自身がドールハウス的な所に囚われてない……? - 31二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:19:57
スレ主です、こう言うまとめ動画からブルアカ始めたので素直に嬉しいですね。教えていただきありがとうございます。それはそれとして、コメントでもあの計算ミスが指摘されてて恥ずかしくなりますね……ひとえにミスした私が悪いのですが。
- 32二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 21:53:20
前スレの内容に関わるんだけど、トリニティ内のゴミ捨て場って掃除しやすいように水道近いだろうし、
痕跡を洗い落としたりしやすいから、潜伏するのに向いてるんだろうね。
ただ業者が来て定期的に管理されてるから、早朝には出ていかないと見つかりかねないんだろうけど。 - 33二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 22:00:56
どのタイミングで術中にハマったかはさておき、物理的に訴えてくるわけでなく、悪辣でもなし、母性で包み込んでくる相手は厄介だ。アリスクの背景考えると逃れるのは至難か。
- 34二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 00:32:14
向こうは悪意が無い可能性まであるのが面倒なんだよね
- 35二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 01:30:04
チャッキー人形みたいにわらわらといるパターンの特級呪物かな
- 36二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 03:16:25
このレスは削除されています
- 37二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 04:25:54
帰り道忽然と消えてドールハウスとかの異空間に捕らわれるパターンもあるし、廃墟で人形を抱えながら虚ろな目で座ってるけど本人には暖かい家で家族団らんしてるように見えるのもあるし、ちゃんと一軒家に居る(ただし何年も前に持ち主が行方不明になってたり、何なら更地にされて家が無いはずの場所だったり)パターンもあるから好きなのを選んで自分だけのマミーと家族団らんしよう!
- 38二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 13:41:23
そういえばチャッキーも家庭持ちになったんだっけか
- 39二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 14:09:46
- 40二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 16:25:29
チラシ配りの赤い制服とか悪意自体は無さそうよね、対処ミスったときの被害はやばいけど
- 41二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 16:58:40
地獄の道は善意で舗装されているというからね
- 42二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:32:50
>本来ならこの仕事の注意事項、『捨てられたものを持ち帰らない』があるためゴミとして回収しなければならない。だが一目見た瞬間からどうしても欲しくなり、持って帰ってしまったのだ。
>上司は「この決まりを正直に守ってる奴なんてあんまりいねーよ。内緒にしてやるさ」と言って私の行動を咎めることはなかった。むしろ上司も金品があれば持って行ってるから、多分そう言うものなんだろう。
>「娘が欲しがってなぁ。やっぱり小さい女の子はお人形で遊ぶのが大好きだからな。何て名前だっけ?確かマ……マ……なんとか人形、う〜ん……何だったかなぁ?」
……決まりを破った(破らされた)人の持ち帰った物が、他の破った人の求める物になってる?
- 43二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 19:22:55
(11日目、退勤)
「なあ、マミー……」
「どうしたの、サオリ?にんじん嫌いだった?」
「いや、そう言うわけではないのだが……」
ちょうどスプーンに乗っていたニンジンを口に入れる。私達はソファに並んで座り、晩ご飯を食べていた。今日はレトルトのシチューだ。マミーも私も料理ができなくて、いつも惣菜や弁当、あるいはレトルトで済ませている。出来合いの品だが温かくてとても美味しい。
「……今日はどんなことがあったの?マミーにお話しして」
私の顔を覗き込み、問いかけてくる。マミーは聡い人だ。私が思い悩んでると気づいて、話しやすいようにそれとなく話題を振ってくれている。私はありがたくそれに乗ることにした。
「上司が娘にプレゼントを買うそうなんだ。あの、何と言うんだったか、マ、マ……」
「マミー人形?」
「ああ、そう。それだ。知ってるのか?」
「ええ、よく知ってるわ。……素敵な上司さんね」
「そうだな。それで、その……羨ましくなったんだ」
仕事中や休憩時間の間、家族の話ばっかりしていた上司を思い出す。家族写真も見せられて、幸せそうな娘の顔を嫌でも覚えた。これから幼稚園で、お友達を作るのが楽しみ。どこにも嫁に行かせるつもりはない……なんて、ささやかで幸せな話。私にはなかったものだ。
「トリニティ自治区に来て、マミーに会えて……家族になれたのは嬉しい。だけど私達は本当の親子じゃないだろう?本当の親子じゃないから、私は幼稚園に通うことはなかったし、人形をプレゼントされることもなかった。子供の頃、家に帰るとマミーはいなかった……」
思い出すのはアリウスにいた頃、まだ私が幼くて、ミサキ、ヒヨリ、姫と寄り添って生きていた頃。あの時マミーがそばにいてくれてたら、私は上司の娘のように幸せな顔ができたのだろうか、嫉妬なんて醜いことしないでいられただろうか。
マミーと家族になって、上司の幸せを見せつけられて、私は改めてあの時手に入らなかった、普通なら当たり前の幸福を羨望するようになっていた。いや、これじゃあマミーと上司が悪いみたいじゃないか。そんなつもりじゃないんだ、ただ、その……言葉が見つからない。 - 44二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 19:23:56
「……ごめんなさいサオリ。もっと早くに会えていたら………」
「いや、いいんだ。私こそ……困らせてしまった。すまない。………それより!今日トリニティの校舎に行ったら、昔の知り合いと会ったんだ。聖園ミカって言うんだけど……」
気まずさをかき消すためにミカをダシにし、シチューを食べ終わるまで無理矢理会話を繋げる。
そして食後、諸々の寝支度を整える間、珍しく私達の会話は無かった。晩ご飯が終わったらやることがない。いつもならマミーとお喋りの続きを楽しむが、今はできそうにない。私は逃げるように自室に篭り、さっさとベッドに入った。
(ノック音)
「サオリ、もう寝てる?」
「……いや、起きてる」
「入っていいかしら?」
「…………ああ」
タオルケットに包まり、壁に顔を向けながら返事をする。ドアの開く音が聞こえる。足音、マミーが私のベッドの横に座った。
「サオリ、その……まだ出会って少ししか経ってないから、マミーはサオリのその苦しみをちゃんと分かってあげることができないかも知れない」
「……すまない、そんなつもりじゃ」
不意に頭を撫でられる。その温もりに安心感を覚え、同時に目頭も熱くなる。
「本当の親子じゃないけれど、昔のサオリに寄り添えなかったけど、これからサオリのマミーになれるように努力するわ。サオリを理解してあげられるように……」
そう言ってマミーは私に抱きつき、首筋に顔を埋めてきた。私は少し体勢を変え、抱き返す。
「もうマミーは私のマミーだよ。でも、ありがとう」
正直に言うと、まだ心に刺さった針は抜けてない。まだ少しだけ痛い。そんなこと、マミーならお見通しなんだろう。それでも何も言わずに抱きしめ続けてくれた。変わらない愛情で私を受け入れてくれた。温もりを貪るようにマミーのエプロンにひたいを擦り付ける。嫉妬も劣等感も拭い去りたくて、拭いきれなくて、いつの間にかマミーの胸の中で眠っていた。 - 45二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 19:25:11
- 46二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 19:27:59
>あの時マミーがそばにいてくれてたら、私は上司の娘のように幸せな顔ができたのだろうか、嫉妬なんて醜いことしないでいられただろうか。
「当時のアリウスにそんな【優しい大人】が居たら真っ先にベアおばに始末されてる」という思考が抜けてるなサオリ……
- 47二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 20:25:10
- 48二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 20:32:08
- 49二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 20:53:21
おいおい実話かよ
- 50二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 20:54:26
- 51二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:26:27
(12日目、勤務中)
朝の10時頃。前半のゴミ回収を終えた私達は集積場に戻り、社員食堂に来ていた。昼休憩中にやることもない私は、いつもここで上司と早めのお昼ご飯を食べている。私は食堂でご飯を買うが、上司は奥さん渾身の手作り弁当だ。
「……あれ?今日は弁当じゃないのか?」
上司はトレーとお箸を持って、私と同じように食堂の列に並び出した。
「ああ、実は弁当忘れちまってなぁ。仕方ねぇから今日はこっちのを食べるんだよ」
「それは……災難だな」
……内心ホッとしていた。昨日マミーと話したこと、針の痛みをまだ感じている。今愛妻弁当を見せられたら、また羨望で痛くなっていたと思う。そんなつもりじゃないのに、上司のせいじゃないのに、飲み込めないこの感情を辛うじて押し留める。
気持ちを切り替えよう。ここのご飯は美味しいんだ。アリウスを出てから私は色んなものを食べるようになった気がする。今までなら潜伏中はカロリーバーと水さえあればよかったが、今の私はリスクを承知でちゃんとしたものを食べるようになった。何ならカロリーバーなんて最近買ってもないくらいだ。
「……今日は親子丼らしい、久々に食べるな」
「お、いいじゃねえか。楽しみだなぁ」
上司は顔面のディスプレイに笑顔を映す。私も笑い返して、自分の順番を待った。
「________パ〜パ〜!」 - 52二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:27:21
「っ!」
「ん?おおっ!おチビ!!!」
上司が列から飛び出し、食堂の入り口に駆けて行った。直後に上司と、女性と、小さな女の子の明るい声が聞こえてくる。ゆっくり振り返る。そこで会話してたのは上司とその妻ロボット、そして娘ロボットだった。間違いない、昼休憩のたびに写真を見せられ、話を聞かされているから。
「あなたったら、慌てん坊なんだから。弁当届けに来たわよ」
「いや〜悪りぃなぁ!おチビもついてきてくれたのか!」
「うん!パパにね、あいたかったの!」
「そうかそうか〜!!かわいいなぁおチビ!!」
鈍痛を感じ、胸を押さえつける。心臓の中で針が暴れている。上司の家族の笑顔を直視できない。私にはマミーがいるから大丈夫なはずなのに、これ以上を求めてしまう。娘が憎たらしく感じる。お前は祝福されて産まれ、優しいパパとママに囲まれてすくすく育ち、学校に行って、友達を作って、反抗期やすれ違いでたまに喧嘩もするけど最後はまた祝福されながら巣立つんだろう?私はそれがなかったのに!どうしてお前だけ!!
「どうした?バイトの嬢ちゃん、腹痛いのか?」
「えっ!?あっ、いや!すまない……」
いつの間にかこちらに駆け寄っていた上司に呼びかけられ、ハッと意識を戻す。心配そうな顔をディスプレイに映してる……ああ、何やっているんだ、この人達に何で酷いことを考えていたんだろう!!こんな私が求めていいわけがないのに……。 - 53二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:28:01
「まあいいや、ちょっと来てくれよ。カミさんと娘に嬢ちゃんのことを紹介してぇんだ」
「あ……いや、私なんかが……」
「何だ?やけにネガティブだな。自信持てよ、嬢ちゃん真面目でいい奴だって評判なんだぜ。いいからほら」
自己嫌悪と、それでも抑えられない羨望、胸の痛みに苛まれていると、上司はそう言って私の手を掴んだ。そして上司の家族の下へズンズンと引っ張っていく。一歩進むたびに心臓の針が深く突き刺さり、何かを縫い付けているかのような連続した痛みを発する。そして奥さんと娘さんの目の前に立った瞬間、縫い付けた糸を絞るように心臓がキュッと縮んだ。
「あら!貴女がバイトのお嬢さんね!うちの旦那からとってもいい子だって聞いてるわ!この人変なことしてないかしら?気に入らなければ蹴っ飛ばしていいからね!」
「おいおい!言いがかりはよしてくれよ!俺がそんなことすると思うか?な〜おチビな〜」
「パパいいこ!ね〜マミーね〜」
上司に抱き上げられた娘さんは、愛おしそうに人形を撫でていた。赤いエプロンに、優しく柔らかな顔立ち、そして綺麗で長い金髪。トリニティで昔から売られているマミー人形、そう言えば買ってやるんだと上司が言ってたな。
「まあまあ綺麗なお顔立ちしてて素敵ねぇ……あら?大丈夫?緊張しちゃってる?」
「……大丈夫だ。すまない」
そう返すので精一杯だった。これ以上口を開いたら理不尽な言葉を投げかけてしまいそうで、自分の奥底の激情を抑えるのに精一杯で、とても人に向けるような顔をしていないと思う。
「おねーちゃん、どうぞ」
「え……?」
不意に娘さんがこちらに歩み寄り、風呂敷に詰められた箱を差し出してきた。受け取って風呂敷を、蓋を開けると、色鮮やかなお弁当が中に入っていた。
「どうせ届けるならと思って、お嬢さんの分も作ったのよ!よかったら食べてちょうだい」
「いや、私は大丈夫だ……」
「遠慮すんなって、うちのカミさんの飯はうめぇんだぜ!」
「いらない!!」 - 54二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:28:40
(弁当箱が床に落ちる音)
上司に返そうとするが受け取って貰えず、押し付け合いになってしまう。つい声を張り上げた瞬間、弁当箱を落としてしまった。
食堂に響き渡るくらい大きな音が鳴り、驚いた娘さんが泣き出してしまう。それが私の耳を通り心臓まで到達し、針を奥深くまで突き刺した。
「ぉうぇっ……あ」
「お、おい嬢ちゃん?大丈夫か?さっきからおかしいぞ?」
何の涙か分からないが溢れてくる。声に嗚咽が混じる。どうすればいいのか分からなくなって顔を手で覆った。
「ごめんなさいね、押し付けちゃって。嫌だったかしら?」
「違っ、ごめんなさい……そんなつもりじゃ……うぅっ!!」
「おい、嬢ちゃん!!」
ついに爆発してしまい、私は食堂を、集積場を飛び出した。街中の人々が私を不思議そうに見つめるのも無視して、ボロボロに泣きじゃくりながら走った。走って走って、息せき切って、自宅に駆け込んだ。
「あら、サオリどうしたの?」
「マミー!!」
マミーの姿を見つけた瞬間、私は荷物もスマホも全部そこら辺に投げ捨て、その胸に飛び込んだ。フェルト生地にぐちゃぐちゃになった顔を擦り付け、大声で泣き叫んだ。マミーは何も言わずに抱き返し、撫で続けてくれた。
5分ほどそうして、その体温と優しさのおかげでいくらか落ち着きを取り戻す。喉が枯れて息が上がっている。私は深呼吸を一度した後、顔を上げてマミーの目を見た。瞳に反射して見えた私の顔は見るに耐えないものだった。 - 55二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:29:23
「マミー。私マミーの本当の娘になりたかった!やっぱり我慢できない。マミーに育ててもらって、学校行ったりお弁当作ってもらったりしたかった!いっぱい甘えたかった!マミーの子供として生きたかった!そうだったら私は虚しさも感じずにいられたのにって……!上司の奥さんと、娘さんに、あんな酷いことしてしまったり、悪いことを思ったりしなくて済んだのにって……!私……私………!」
胸の中に抱えてたものを全て吐き出す。心臓に刺さった針の穴から止めどなく出てくるそれを、我慢せず全部。涙も鼻水も垂れてきて、嗚咽もして、それでもマミーに抱き付き続けた。
それに対してマミーは私を見続け、全てを聞き入れてくれた。そして私を慈しむ瞳のまま、そっと額に口付けを落とした。
「________ようやっと言ってくれた」 - 56二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:30:14
「マミー?」
「大丈夫よサオリ、安心して。サオリがそう望んでくれるのなら、私がサオリを産み直してあげる」
「……え?そんなことできるの?」
「ええ、できるわ。サオリを産み直して、マミーの本当の娘にしてあげる。そしたらサオリもお弁当作ってあげられるし、学校にも通えるわ」
「で、でも、いいの?私……サオリ、いい子じゃない………」
「そんなことないわ!サオリはいい子。だからマミーも、サオリを本当の娘にしたいのよ」
「じゃ、じゃあお願い!サオリを本当の娘にして!」
「もちろん!それじゃあ行きましょうか、マミーとサオリが初めて会った場所へ」
「うん!」
いっぱいないちゃって、それでなみだとかはなみずとかでぐちょぐちょだったけど、マミーがふきふきしてくれた!うれしい。それでね、マミーといっしょにおててをつないでおうちをでたよ!マミーとサオリがはじめてあったばしょにいくの!サオリね、マミーのむすめになるの!とってもたのしみ!
「あれ、サオリ……!?」
「あ、ミカちゃん!」
「ミカちゃん!?」
マミーとサオリがはじめてあったばしょにいくとちゅうに、ミカちゃんがいたよ!なんでかわかんないけどすっごくおどろいてる!たいそうふくで、えだきりバサミもってる。おにわそうじをしてたのかな? - 57二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:30:50
やっぱクソだったわ〜この怪異
- 58二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:31:17
「サオリ、どうしたの?なんかおかしいよ!?」
「あのね、いまからマミーとサオリがはじめてあったばしょにいって、マミーのむすめになるの!」
「マミーって、それのこと?その、サオリがだっこしてるそのマミー人形……?」
「ん?マミーはマミーだよ?」
「ヒィッ!?」
「あ、だめマミー!おこっちゃだめ!ミカちゃんはおともだちなの!だめ!……ごめんねミカちゃん、いそいでるから、またね!」
「………」
マミーがミカちゃんのことおこっちゃったから、ミカちゃんがぺたんってすわっちゃった。ヒューッ、ヒューッていってこわがってる。けどごめんね!はやくいかなくちゃ。楽しみだな〜。
うれしくなって、もういっかいマミーのおててをぎゅってにぎって、マミーとサオリがはじめてあったばしょにいったよ。
(…………何?あのマミー人形?)
(人形だから、動かないはずなのに……睨まれた。すごい強く拒絶された。動けなくなった。怖すぎて……)
(バルバラとかそういう類かな。何というか、危ない……!サオリが危ない……!)
(追いかけなきゃ、でも腰が抜けちゃってる。しばらく動けないかも………)
(ああもう涙出てきた。サオリ……)
(…………スマホどこだっけ)
(電話の呼び出し音)
「もしもし、先生?いきなりごめんね。ちょっと緊急事態」
「………………」
「うん、うん。だから、ちょっとお時間貰っていい?」 - 59二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:32:04
一旦ここまで(明日も遅くなるかもしれませんごめんなさい)
- 60二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:34:08
このレスは削除されています
- 61二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:45:36
先生間に合ってくれよ!
- 62二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:56:13
スレチかもしれんがこのssの世にも奇妙な物語、岸辺露伴は動かない感めちゃくちゃ好き 体調に気をつけて投稿してください
- 63二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:01:38
- 64二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 02:52:39
うおお、マミー人形やべー
- 65二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 10:17:00
思ったより精神蝕んでくるタイプだった!
- 66二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 10:25:44
えー、でもどうやって対処するんだ?人形だから下手なことはできないし……サオリもおそらく術中だから人形手放そうとはしないだろうし…
- 67二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:58:02
幼少期の注がれるはずだった愛とかいうアリウス特攻の怪異..
良SSありがとうございます。続き楽しみ! - 68二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 16:04:20
アリウスというクソ環境だったせいもあるけど、サオリは幼少期からスクワッドの皆を引っ張るお姉ちゃんだったからなぁ…
この怪異はかなりサオリに効くぞ - 69二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 16:25:47
愛を餌に子供を引き摺り込む怪異じゃなくてサオリへの愛だけはせめて本物であってくれ...
- 70二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:33:48
(12日目、夜)
「遅くなってごめんね、ミカ」
「ううん、私もようやっと動けるようになったところ」
トリニティ自治区の駅前でミカは先生と合流した。シャーレの部室からトリニティ自治区までの距離を最も早く移動できるのはハイランダーの直通列車だ。だがそれでも先生が到着する頃には夜になっていた。
「事情は電話で教えてくれたね。サオリがお人形を持って街中を歩いてて、おかしくなっていた、と」
「うん。何だかまるで小さい子供に戻ったみたいな喋り方で、とても正常とは思えなかった。あとね、これは信じて貰えないかも知れないけど……」
言い淀むミカに、先生は真っ直ぐと向き合う。
「大丈夫、私は先生だから。ミカの言葉を信じるよ。どんな些細なことでもいいから、何かあれば教えて」
「……うん、ありがとう先生。あのね、あの時サオリはマミー人形を持ってたの。本当に大切そうに抱っこしてて」
「マミー人形?」
「あ、分からないよね。えっと……ああ、あれ!」
ミカが指差したのは駅前の広告パネル。そこには幼児向け人形、マミー人形の広告が掲載されていた。赤いエプロンに、優しく柔らかな顔立ち、そして綺麗で長い金髪の人形。『子供たちを見守る、もう1人のマミー』というキャッチコピーがやけに目につくものだった。
「モモフレンズより前からある、トリニティでおもちゃを買うならこの子ってくらい定番で伝統のあるお人形なんだよ。懐かしいな、私も買ってもらって、よくおままごとしてたな……」
「そっか、かわいい人形さんだね」
「うん。……ああ、じゃなくて!それでね、サオリったら、それを大切そうに持ってたんだけど、何だか本当にそれを母親だと思っているみたいだった。自分はマミー人形の小さな娘で、今はママと一緒にお出かけしてますって感じで、口調も変わってて、すごい不気味だった……」
「あのサオリが?」
「うん。そして何より……睨まれたの。マミー人形に」 - 71二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:35:08
……ミカは最も重要だと思うあの視線について話し始めた。信じ難いことだが、あの時マミー人形に睨まれ、拒絶されたと確信している。サオリの持つマミー人形には不思議な力が、意志があるのではないか?サオリがおかしくなったのも、あのマミー人形のせいではないか?そんな妄想めいた推測を、自分でも突拍子もないものと分かっていながらも先生に話した。
それに対して先生は頭ごなしに否定することはなく、真剣に聞き、真剣にその可能性を考察していた。エデン条約を巡るあの事件で、空が赤くなったあの戦いで、ミカも先生も常識では考えられない存在はあると分かっているのだ。そして今回はそれ絡みの事件なのかも知れないと危機感を募らせていた。
「……どちらにせよ、サオリを見つけないと始まらないね。人形もサオリと一緒のはずだし……アロナ!」
先生はおもむろにタブレット端末を取り出し、誰かの名前を呼んだ。すると端末が起動し、画面にトリニティ自治区の地図を表示させた。
「列車の中でサオリのスマホの位置情報を調べておいたんだ。……ここ、この赤い点にサオリのスマホがある。ミカ、ここに心当たりは?」
「見せて………ああ、ここね。住宅地の外れにある廃墟。アリウスと組んでた時に潜伏先の候補として教えたところだよ。でも今そこにサオリはいないと思う」
「どうして?」
「私がサオリと会ったのは……ここ、この大通りなの。サオリはこの廃墟の方向から歩いて来て、反対の方向に向かっていった。だからここは……」
「サオリのトリニティでの拠点ってことだね」
「うん、そうだと思う」
「………探すとしたらサオリが向かった方角。でもノーヒントで闇雲に探すのは難しそうだね」
「それなら一度拠点に行ってみない?何かヒントが残っているかも」
「そうだね、行ってみようか」
頷き合い、駅前を後にする。2人はすぐにサオリの拠点へと向かった。
そこは閑静な住宅街の外れにある一戸建ての廃墟で、庭や壁は酷く荒れておりとても普通の人が住んでいる場所には見えない。だがそういうところで苦もなく潜伏できるのがゲリラ戦のエキスパート、錠前サオリだ。
ミカと先生は早速探索を開始した。サオリの仕掛けたトラップや廃墟そのものの危険性に注意を払いながら慎重に。そして見つけたのは大きな違和感だった。 - 72二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:36:22
「……何のトラップもないね。まるで一切警戒してなかったみたいだ」
「うん。それにね先生、生活の後が多すぎるよ。潜伏してたんじゃなくて、ここに住んでいましたって言われた方が納得するくらいだよ。サオリならそういうの、絶対隠しているのに……」
互いの見解を共有した後、2人はキッチンのゴミ箱に視線を向けた。
「もっとおかしいのはゴミの量だね。同じ弁当、同じ惣菜、同じレトルトの食べ跡が2つ分捨てられている。毎食わざわざ同じものを2つ買って食べていたってことかな?……サオリ以外に誰かが住んでいた?」
「でもミカ、片方は完食してるのにもう片方は一切手をつけられていない。食べた方がサオリだとして、そのもう1人はどうして食べなかったんだろうね?」
「……ねぇ、先生。これもしかしてだけどさ、すっごい嫌な想像だけどさ、……マミー人形の分ってことじゃない?サオリとマミーの2人分を買って、2人で食べてたとか……?」
「………………」
その光景を想像してしまい、2人は押し黙る。一体ここで何が、サオリはどんな生活をしていたのだろうか?
「……ねえ先生、私昨日ね、サオリに会ったんだよ。その時に『マミーと普通のお家に暮らしてる』って言ってたの。最初はママ活してるのかなって思ってたんだけど……あの時気づいてあげられたら、何か変わったのかな………?」
「違うよ、ミカのせいじゃ……え?ママ活?」
「あの時私が、ママ活じゃなくて変なマミー人形と住んでいるんだって予測できたら……!」
「さすがにそれは難しいと思うよ……?」
(着信音)
「……私のじゃないね、ミカの?」
「ううん、違う。………リビングだね」
音の鳴る方へ向かう。ローテーブルとソファが置かれたリビングの床。そこにサオリのアサルトライフルとスマホが落ちていた。
先生はすぐにスマホを拾い上げ、スピーカーにして電話を取った。
「おう!やっと繋がったな!嬢ちゃん大丈夫か!?急に帰っちまってびっくりしたぞ!」
「あ、すみません!私はシャーレの先生です。いなくなったサオリを探して拠点……彼女のお家まで来てるんですが……」
「おっと、これは失礼!あのシャーレの……って!嬢ちゃんがいなくなった!?」 - 73二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:37:04
「はい、彼女のお家にスマホが残されてて、ちょうどそちらから電話が来たんで取ったんです。あなたは誰ですか?」
「俺は嬢ちゃんのバイト先……ゴミ収集業者の上司でさぁ。しかしいなくなっちまったなんて、様子がおかしいと思ったら……」
「何かあったんですか?」
「俺にもよく分からんのです。今朝から何か考え込んでる様子で、昼飯の時間に俺と俺の家族と話をしてたら突然泣いちまって、集積場を飛び出しちまった。……何かやっちまいましたかねぇ俺達?カミさんと娘も心配してますよ」
「そうですか……」
「先生、私も話すね。……やっほ〜、おじさん!昨日はジュース奢ってくれてありがとう⭐︎」
「おっ!その声は草むしりの嬢ちゃんか!」
「うん!あのねおじさん、サオリのマミー人形について何か知ってない?もしかしたらサオリを見つける手掛かりになるかも知れないの!」
「マミー人形!?ああ、アレかぁ。そのなぁ……」
「知ってるんですね!些細なことでもいいから教えて下さい!」
上司はしばらく渋ったが、先生の説得に折れて話してくれた。
「……あのマミー人形は、バイトの嬢ちゃんがゴミ捨て小屋で拾ったものなんです。ゴミ袋にも入れられてなくて、汚れたまま放置されたもの。それをバイトの嬢ちゃん、えらく気に入っちまって、それで持って帰ったんでさぁ」
「え?おじさん、そういうのって持って帰って大丈夫なの?」
「ああいや!それがなぁ……内緒にして欲しいんだけどよぉ、本当は『捨てられたものを持ち帰らない』って注意事項があるからダメなんだよ。でも守ってる奴なんてほとんどいねぇ。だから俺もバイトの嬢ちゃんが持ち帰ったこと、目を瞑ったんだ」
「……あまりよくないですね、上司さん?」
「いや〜面目ねぇ……」 - 74二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:37:41
申し訳なさそうに頭を掻く上司の姿を想像しつつ、ミカはサオリの言葉を思い出していた。
『あのね、いまからマミーとサオリがはじめてあったばしょにいって、マミーのむすめになるの!』
「………ねぇ、おじさん!サオリがマミー人形を拾ったのはどこのゴミ捨て小屋!?」
「え?おう、あそこはなぁ……」
先生は上司が教えた場所をタブレット端末に入力する。
「プラナ、反映して」
また誰かの名前を呼んだと思ったら、画面の地図にもう一つの赤い点が浮かび上がった。そこはミカがサオリと会った大通りの、廃墟とは反対方向にあるゴミ捨て小屋……サオリの5番目の担当ゴミ捨て小屋だった。
「先生!サオリはそこにいる!」
「分かった、行こう!上司さんありがとうございました!」
「お、おう!バイトの嬢ちゃんのこと頼んだぜ!」
電話を切り、サオリのアサルトライフルを拾い、ミカと先生は拠点を出た。そして件のゴミ捨て小屋へと向かったのだった。 - 75二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:38:41
一旦ここまで(次でゴミ収集編を終わらせる予定です)
- 76二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:44:34
乙。
先生とミカは間に合うのかしら - 77二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:50:42
このレスは削除されています
- 78二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:52:08
このレスは削除されています
- 79二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 17:53:57
マミーはぼくのすてきなママです
ぼくもマミーのことがだいすきです
マミーのこどもにうまれなおしてきます - 80二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 18:11:07
……美術館でのバイトで他人からの呼びかけを怖がるようになってたし、その心の隙に「マミー」がスゥーッと入り込んだのかな……
家族の話なのにスクワッドメンバーの存在が不自然な程に出てこないし、血の繋がりを求めて心で繋がってた家族を置いて行こうとしてる今のサオリは正気とは思えないし……
戻ったら戻ったで自責の念がやばいんじゃないかこれ
>「________ようやっと言ってくれた」
まあ本性が垣間見えた時は明らかに口調が違うから間違いなくこいつが何かしてるんだろうな
- 81二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 18:46:12
まさかだけどこのマミー人形。元々自分の娘に渡す予定だったけど何かしらの原因で娘に渡せなかった母親の幽霊とか……しないよね?
- 82二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 19:21:38
それはホントに「捨ててあった」のでしょうか?
なにか「待っていた」のではないのでしょうか? - 83二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 19:22:28
考察すごい嬉しいけど何も言えないからひたすら口角を吊り上げてる。天井に突き刺さってる。いつもありがとうございます。
- 84二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:12:55
- 85二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:19:10
- 86二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:21:20
あー、美術館の怪異に侵入された時に「皆からの愛や温もりを鷲掴みに」されたんだっけかサオリ。
名前を呼ばれても無視するようになったのって単にトラウマになったとかじゃなくて、実はすでに致命的なダメージ受けてた? - 87二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:24:40
- 88二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:28:58
これなんとなく考えた事なんだけどこの怪異をどうにかするのってハッキリと「親離れ」をしないといけないとかありそうだなぁ
- 89二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:29:20
- 90二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:30:47
- 91二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:31:28
悪縁を【切ら】ないとね
- 92二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:32:07
このレスは削除されています
- 93二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:32:38
貞子VS伽椰子……?
- 94二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:35:44
- 95二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:37:11
- 96二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:39:39
- 97二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:39:48
- 98二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:41:56
あーそうか、刷り込み洗脳させた後でマミーを人質にすればより逆らえなくなるわな
- 99二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:44:39
確かにベアおばならそれくらいやりそうだな……
- 100二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:48:59
- 101二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:50:34
その条件ありそうだしベアおばは庇護下とか絶対ゴメンだろうしなんなら邪魔になるなら真っ先に消すだろうなぁ
- 102二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 20:51:36
ホッカイロレンさんは帰ってもろて
- 103二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 21:58:53
>「モモフレンズより前からある、トリニティでおもちゃを買うならこの子ってくらい定番で伝統のあるお人形なんだよ。懐かしいな、私も買ってもらって、よくおままごとしてたな……」
今更だけどこれ、もしかして自室に置いててトリカス共に燃やされた私物だったりする……?
- 104二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 22:56:28
と、トイストーリーのアンディみたいに遊ばなくなったおもちゃと一緒に屋根裏部屋にしまってる可能性もあるから……
- 105二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:21:15
せめて幸せな結末を……。
- 106二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:46:20
スレ主です。明日も大体17時前後くらいの投稿を予定してます。遅れたらごめんなさい。
……これだけ言って寝るのもアレなのでこれまでのSSを振り返っての一言みたいなの置いていきます。
コンビニ編:全ての元凶。あの時は神が舞い降りたと思ってる。今振り返ると何もかも分からない。
夜の見回り編:書いた自分でも雇い主と住宅地の住民達の心意が分からない。でも赤ん坊の顔をした大人って大人になれない俺達のことじゃないかってたまに思う。
公園の清掃編:ラスト直前までサオリが助かる方法が思いつかなかった。どうやって捻り出したか分からない。
ピザ屋編:一番好き。あの本が何なのかは書いた自分でも分からない。
チラシ配り編:当初はスイーツ部を出す予定はなかった。何でこれを思いついたのかは自分でも分からない。なんか降ってきたから書いた。
美術館警備編:過労で半分寝ながら書いてたので、当時どんなこと考えてたとかどんな気持ちだったかとか正直全部分からない。最後は9割寝てたからこれ大丈夫かと思ったけど好評でホッとしている。
デバッガー編:「神の井戸の水に頭まで浸かったんだ、きっと綺麗になったさ」っていうサオリのセリフを入れ忘れたのが悔やまれる。
最初は神社を舞台にしたホラーゲームとしか考えてなかったけどいつの間にかプロットに井戸が生えていて、それを当たり前のように描写してた。今考えると何で疑問に思わなかったのか分からない。
総括:何も分からん。 - 107二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:48:21
- 108二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:50:13
- 109二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:51:29
- 110二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:51:52
つまり現実に同じような裏バイトがあってそれを受信してるみたいな?
- 111二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:52:10
いつもご苦労様です。面白いSSをありがとう。
そして、大丈夫?そこらの怪異から電波送られた? - 112二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:52:26
これ書き続けてたらスレ主自身が取り込まれるんじゃねえかって思わせるなんかこうなった/自分でもどうやって書いたかわからん率 キャラが動いてると言うか何かが動かしてるんじゃないかとさえ思わせる
- 113二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 23:54:43
お前が取り憑いてやってるんじゃねえよ、こっちがお前を取り憑かせてやってるんだよ。受信してやってるんだ。課金したいからショバ代払って欲しい。
- 114二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 00:01:34
スレ主しっかり休んでください
- 115二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 01:00:03
裏バイトの方がスレ主を通じてサオリを指名してる可能性
- 116二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 02:48:22
お礼を言うのは俺たちの方だ面白いSSをありがとうございます
- 117二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 05:42:46
保守
- 118二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 08:29:48
保守。
続き楽しみにしてます♪ - 119二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 08:41:35
- 120二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 13:23:40
粗方降ってきてるんじゃないか!こわいよ!
- 121二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 17:45:27
- 122二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 17:47:44
剛の者
- 123二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:39:33
(水の中の音、心臓の鼓動)
あったかいあったかいマミーのおなかのなか。マミーのドックン、ドックンっておとがきこえてくる。マミーのおなかのなかはみずでいっぱいで、サオリはさかさまになってプカプカういてるの。おへそにはへんなぬのがくっついてて、おなかにぬいつけられてるの。プカプカ、ドックンドックン、プカプカ。とってもきもちよくて、サオリはずっとねむっているの。
(水の中の音、心臓の鼓動)
(水の中の音、心臓の鼓動)
(水の中の音、心臓の鼓動)
もうすこし、もうすこしでサオリはマミーのむすめになれるの。そしたらなにをしようかしら?マミーといっしょにごはんをたべて、マミーといっしょにおさんぽをして、マミーといっしょにおひるねをして、マミーといっしょにおふろにはいって、マミーといっしょにおねんねして、マミーといっしょにがっこうにいって、マミーといっしょにえほんをよんでマミーといっしょにおままごとをして、マミーといっしょにゆうえんちにいって、マミーといっしょにおにんぎょうであそぶの。きっときっときっとたのしいわ。
(水の中の音、心臓の鼓動)
(水の中の音、心臓の鼓動)
(水の中の音、心臓の鼓動)
(何かを叩く鈍い音)
「うぅ……こわい……」
そとからおおきなおとがする。だれかがマミーのおなかをたたいてる。やめて、マミーがかわいそう。サオリはおおきいおとがこわいの。 - 124二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:40:58
(何かを叩く鈍い音)
(何かを叩く鈍い音)
(何かを叩く鈍い音)
こわい、ドンドンドンドンだれかがおそとでおおあばれ。あっちいって!サオリはもうすぐうまれるのに、じゃましないで!
(何かを叩く鈍い音)
(何かを叩く鈍い音)
(何かを叩く鈍い音)
「________サオリ!!」
……ミカちゃん?
「サオリ!この中にいるんでしょ!?開けて!」
おそとにいるのはミカちゃんだったんだね。でもダメだよミカちゃん、あけたらサオリ、マミーのおなかのなかからでちゃうから。マミーのむすめになりたいんだから。
「うっそ……!?私本気で叩いてるのに壊れない!何で!?」
「ミカ!壊すのはやめよう!どうなるか分からない!」
「でも……ううん、分かったよ先生」
せんせいもいるの?せんせいもミカちゃんも、サオリにあいにきてくれたんだね……。
「サオリのバイト先のおじさんも心配してたよ!奥さんも娘さんも!」
バイトさきの……?ああ、しんぱいしてくれてたんだね……ごめんなさいしないと……。ドアをあけなきゃ、ごめんなさいしにいかなくちゃ。
「ダメよ、サオリ。ママのお腹から出たら、マミーの娘じゃなくなっちゃうわ」
……そうだね、ごめんねマミー。マミーのおなかからでちゃダメだもんね。
「サオリ」
……せんせい?どうしたの?
「サオリがマミーの娘になる……それがどう言うことかはまだ分からないけど、とにかくここを開けて欲しい。きっとマミーの娘になったら、サオリはサオリじゃなくなると思うんだ」
サオリが……わたしがわたしじゃなくなる? - 125二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:42:34
「知らない人の言うことを聞いちゃダメよサオリ、誘拐しようとしてるのよアイツらは」
ああ、ごめんなさいマミー。でもミカちゃんとせんせいはしらないひとじゃないよ!どっちもたいせつなんだよ。せんせいはサオリのおんじんで、ミカちゃんは………。
「…………ミカちゃん」
「っ!サオリ!やっぱりこの中にいた!」
「サオリはミカちゃんにとってなんなの?」
「え?何って何?どう言うこと?」
「アリウスでのときはいそいでて、けっきょくなあなあになっちゃったけど、サオリとミカちゃんってなんだろうね?」
「…………」
「きのうひさしぶりにあって、じはんきのまえでジュースをのみながらおしゃべりしたけど、あんなのはアレがはじめてでしょ?それまではずっと、りようしたり、きずつけたり、そんなかんけいだった……」
「………………」
「いま、ミカちゃんのことをマミーにしょうかいしようとしたんだ。きのうじょうしにもきかれたよ、あのこはわたしのともだちなのかって。……わからなくって、どうしようかっておもってて……」
「………………」
「………………ごめんなさい、うぬぼれてるね。サオリなんかがともだちだなんて________」
「あはっ⭐︎サオリったら、お昼に私にあった時のこと忘れた?」
え?おひるにあったときのこと?ああ、そういえば、ここにくるときにあったね。ミカちゃんと。
「あの時サオリ、私のこと『おともだち』って言ってくれたじゃんね。私の聞き間違い?それとも、私が自惚れてただけかな?」
ああ、そういえばそうだ。あのとき、きゅうにマミーがミカちゃんのことを睨んじゃって、すごいおこってて、ひどいこともいってた。そのときに、つい……。
「……ずっとサオリは、ミカちゃんのことをともだちだっておもってたんだね。めいわくかな?サオリなんかがそんなこと……」
「別に。とっくの昔に許してるし、あの時からずっとサオリの幸せを祈ってる。サオリだってそうでしょう?」
「……そっか。サオリ達、ほんとうにおなじだね」 - 126二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:43:26
おそとにいるミカちゃんはきっとわらってるきがする。わたしもうれしくなってわらった。
「それでね、せんせいはね、せんせいもきてくれたんだね。せんせいはサオリのおんじんだよ!」
「ありがとう、サオリ。………いいかいサオリ、確かに君は、いや君達アリウス分校の子供達は苦しい思いをし続けていた。それを肯定するわけではないけど、それも含めて錠前サオリだと思うんだ。どんなに良くても悪くても、辿ってきたものが錠前サオリになるんだよ。だから思い出して欲しい、何も得なかったわけじゃないよね」
「……うん。いろいろしったり、もらったり、てにいれたよ」
「マミーの娘になったら、サオリは元のサオリとは違った人生を歩んで、今までの人生は捨て去って、違ったサオリになると思うんだ。……サオリが得たものを、本当に捨て去ってもいいのかい?」
「せんせい………」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!!」
ああ、マミーがおこってる。せんせいとミカちゃんのことをののしって、わたしにそとにでるなとさけんでいる。
「………すまない、マミー」
私達は前に進まなきゃいけない、そして戻ることは進むことではない。誰かに言われたその言葉を思い出して、私は水底に足をつけた。 - 127二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:45:18
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
私を呼び止めている。叫び声の意味は何となく分かるけど、何を叫んでいるのかは分からなくなっている。意識もハッキリしてきた。ここはゴミ捨て小屋の中だ。何故か部屋いっぱいに液体が満ちている。
「うぶっ!!」
液体を認識した瞬間、私は溺れだした。さっきまで呼吸できてたはずなのに、いやどうして水の中で呼吸し、喋れていたのだろう。考えてる暇はない酸素が欲しい。
ゴミ捨て小屋の入り口を見つけた。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
怒りの矛先が私に向いた。悪い子だとでも言ってるのだろうか。ああそうだとも、古聖堂にミサイルをぶち込むくらい悪い子供だよ。だから私はマミーの娘にはなれないし、マミーを母親にはしてやれない。
ゴミ捨て小屋の入り口に辿り着いた。
「︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
言葉の刃が鋭くなった。ああ、マミーは本当の母親になりたかったんだな。だから私を産んで本当の母親になろうとした。それがマミーのやりたいことなんだ。……どんな形でも、やりたいことがあるのは羨ましい。
ねえ、マミー。私は自分がやりたいことや、夢や目標というものがないんだ。だから色んなことをしたり、色んなところに行って、それを探している。ここにもそのために来たんだよ。
ドアノブを握った。息がもう限界だ。 - 128二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:46:12
︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
何もないんだから、マミーの本当の娘になって、人生をやり直すのも悪くはないかも知れない。でも得たものがないわけじゃないんだ。仲良くなった人達がいる。それが大切だから、私から頼んでおいて申し訳ないが、やっぱりマミーの娘にはならないでおく。きっとマミーの娘のサオリじゃなく、今の錠前サオリでも、私は幸せに生きられると思うから。
扉を開けた。
(激流音)
「うわっ!!」
「きゃあ!!」
扉を開けた瞬間、中にあった大量の水が外へと流れ出し、先生とミカに大波となって襲いかかった。避けることができずに波の圧力で転び、2人はビチョビチョに濡れてしまった。
そしてその大波によって私はゴミ捨て小屋の外に出され、地べたに寝転がって深呼吸。
「ぬぶっぼっ!!げほっ!!」
どうやら鼻の中や口の中にも水が溜まっていたらしい。全部を吐き出し、途中でむせてしまった。
「うわぁ、なにこれ!しょっぱい!生臭い!……あ、サオリ!」
口に入った水を吐き捨てていたミカは、私に気がついたようで駆け寄ってきた。先生もそれに続いて来る。
「はぁ……はぁ……さっきぶりだな、ミカ。先生は久しぶりだ」
「無事でよかったよ、サオリ」
「……あはは⭐︎もう、サオリったら。さっきじゃなくて、もう夜だよ?私と別れてからずっとゴミ捨て小屋の中にいたんじゃない?居心地良かった?」
「悪くはなかった。でも、出て来れたよ」
「……そっか。よかったぁ」
その外見のような天使の笑顔を見せたミカが私に抱き付いてくる。べたべたでヌルヌルで生臭い、とてもミカとは思えない感触だが、きっと今の私も同じだ。抱き返し、首筋に顔を埋めた。
「________あれ、サオリ。それは………へその緒?」 - 129二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:47:08
不意に投げかけられた先生の疑問。私とミカはそれに視線を移した。私の腹部の、へその部分にフェルトの布……いや、管が縫い付けられていて、ピクピクと一定のリズムで痙攣していた。そのリズムに覚えがあった。私はさっきまでずっと聞いていたのだ。
私は咄嗟にその管を引き千切ろうと手を伸ばす。しかし間に合わず、あのリズムがゴミ捨て小屋から響き出した。
(マミーの心臓の鼓動)
「うわっ!?」
「サオリ!」
その瞬間、フェルトの管がものすごい力で、ゴミ捨て小屋の中へと引っ張られた。座り込んでいた私はなす術なくゴミ捨て小屋の中に引き摺り込まれ……ることはなく、抱き付いていたミカによって抑えられる。嘘だろ、あのミカと拮抗している?どんな力だ!?
「ミカ!絶対に離さないで!」
「分かってる!でも誰なの!?誰が引っ張ってるの!?」
「……マミーだ。マミーが私を使って、本当の母親になろうとしている………!」
先生も加わり、私も体勢を立て直し、3人で綱引きのようにフェルトの管を引っ張る。だが相手の力が強すぎる、キヴォトス人でも最高位のミカの怪力と、私と、おまけの先生が力を合わせているのに少しずつひっ引っ張り込まれている。ゴミ捨て小屋の中に引き摺り込まれようとしている!
「まずい……!先生!ミカ!私を離せ!お前達まで引き摺り込まれてしまう!」
「バカにしてるのかな!?これくらいっ!本気を出せば……うぅっ!」
ミカの腕にとてもお姫様とは思えない青筋が立った。懐かしいな、昔殺し合った時にこれを見て内心ヒヤヒヤしていたのを思い出す。しかし、引き摺り込む力を上回ることはできないようで、私達は着実にゴミ捨て小屋へと近づいていた。 - 130二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:48:02
「くっ……マミー………!」
ゴミ捨て小屋の中の暗闇を見やる。何も見えないが、きっとマミーはそこにいるのだろう。これまで感じていたマミーの愛情と、ミカを睨み付けてた時の殺気に似た気配を同時に発している。慈悲深く恐ろしい存在が、あの暗闇の奥に潜んでいる。きっと、出て行った悪い子を戻そうとしているんだ。やっぱり、ミカと先生には離れてもらおうか、私だけでもあちらに行けば、マミーも満足するはず。
2人を説得する算段を立てていた瞬間、フェルトの管を掴む腕が増えた。
「間に合った!でも何でこんなことに……!?」
「うわあああああああん!あたり一帯生臭くて気持ち悪いです!!」
「ミサキ!?ヒヨリ!?」
「先生に呼ばれて来たの」
「姫!?」
「大変そうだね、サッちゃん。手伝ってあげる」
ああ、何で私はずっと忘れていたんだろう?確かに私には母親なんていなかった。本来与えられるべき母の愛なんてのもなかった。でも家族はいたんだ。ミサキと、ヒヨリと、姫。みんなで支え合って生きて来たんだ。危うくそれを捨て去ろうとしていた、マミーの本当の娘になっていたら、私はきっと3人を本当に忘れていただろう。そのことに恐怖し、フェルトの管を掴む力が強くなる。しかしそれでも、引っ張る者が3人増えてもなお引き摺り込まれていた。少しずつ、確実に、今1メートルを切った。
「あっ、そうだ!その、これ拾ったんですけど……何か役に立たないですかね?」
「あ、それ私の枝切りバサミじゃんね!さっき流されたんだと思う!」
「先生……!私達でサッちゃんのこと抑えるから、先生がこれ切って……!」
「え!?でも今離れたらサオリが……!」
「いいからやって!先生私達より弱っちいんだから、いてもいなくても変わらないから!」
「酷いよミサキ!でもまあ、その通りだね!」
先生は私から手を離すと、ヒヨリからミカの枝切りバサミを受け取った。これもずぶ濡れだが、刃は生きている。 - 131二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:49:02
「一思いにやってくれ!先生!」
「任せて、サオリ!」
そう言って先生はピンと張った管を刃で挟み、切り落とした。反動で私達は後ろに転がり、地べたに溜まった水に背中を打ちつける。ベチャっと大きな音と少しの水飛沫を上げて、私達は地べたに寝転がった。
「みんな!大丈夫!?」
「あ、ああ……大丈「うわあああああああん!私までベチャベチャになりました!先生温泉連れてって下さい!!」……だそうだ。フフッ」
もみくちゃのべちゃべちゃになった私達に駆け寄ってきた先生。私が生返事を返そうとすると、ヒヨリがそれに被せてきて号泣する。変わらないヒヨリに思わず吹き出し、そして無事だったことを噛み締めた。
________その後、私達はゴミ捨て小屋の中に入り、奥の方でぽつんと置かれていたマミー人形を回収した。
「サオリ、それで間違いない?」
「ああ、先生。これが私が拾ったマミー人形だ。私はずっとこれを人だと思い込み、マミーと呼んで慕っていた。不思議だけど、とても温かい時間だったよ。優しくて、楽しかったことを覚えてる」
「サオリ……」
「分かってる……分かっているさ。これは私の母親じゃない、ただの人形だよ」
マミー人形は姫が持ち帰り、どこかで焼却処分されたらしい。私も参加しようと思ったが、またあの日々を思い出しそうでやめた。これで私以外の被害者が出ることはないだろう。……姫は「ここまで来たら、可哀想だけど燃やすしかない」と言っていた。きっと姫がそう言うのならそうなのだ。仕方のないことだと飲み込んだ。
また、私の腹部に縫いついていたフェルトの管も取り外され、一緒に燃やされた。後日シャーレで秘密裏に私の健康診断が行われたが、腹部の縫い付けられた時の傷以外は外傷もなく、体内に何か残ってるわけでもない、至って健康体だった。あの管が何だったのかは謎のままだ。
私は迷惑をかけてしまった先生、ミカに謝罪し、助けに来てくれたミサキ、ヒヨリ、姫に感謝した。皆笑って「気にするな」と言ってくれたが、何かお返しをしないとな。
そしてバイトだが、業務中の無断早退が理由でクビになった。残念だが、これも仕方のないことだ。あの時はどうかしてたとは言え、やったことは事実だからな。 - 132二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:49:55
あの夜のゴミ捨て小屋の出来事は先生が手を回し、「付近で起きた銃撃戦の余波で発火して、備え付けの水道で消化したら水浸しになった」と言うことにしたらしい。私はバイト代をゴミ捨て小屋の修繕費として寄付し、ゴミ収集業者を後にした。これ以上トリニティにいる理由はない。また新しいバイトを探さなければ。
「________でも本当に良かったの?私まで呼ばれて」
上手に焼けた肉を頬張りながら、ミカは私に問いかける。
「ああ、大丈夫だと言われたからな」
そう言って私も上手に焼けた肉を口に入れた。
ここはゴミ収集バイトの上司の家の庭。上司がお別れ会と称し、私のためにバーベキュー会を開いてくれたのだ。もちろん最初は遠慮したし何なら奥さんの弁当を落としてしまったことを何度も謝った。それに対して上司は、
「気にすんなって!それよか嬢ちゃんが元気になったようで何よりだぜ」
……と、快活に笑いながら許してくれた。さらに私の友達も連れて来るようにと言い出したのだ。
「でもさ、そう言うのって本当に大切な人しか呼ばなくない?先生とスクワッドはともかく、私は違うでしょ?」
「何を言ってるんだ?ミカも大切な友達だぞ?」
「……わ〜お、そんなこと簡単に言っちゃうんだ」
よく分からないが、顔を真っ赤にしたミカに私は首を傾げた。
「アズサちゃんは呼ばなかったの?」
「アズサとはまだ、話をしてなくてな……」
「あ〜……。きっとまた仲良くなれると思うよ」
「……ありがとう」
そんな風にミカと話していると、奥さんと娘さんがこちらに近寄ってきた。 - 133二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:50:36
「おねーちゃん、どうぞ」
「うちの子が焼いたのよ、食べてみて!」
「………ああ、ありがとう」
焼きたての肉が乗せられた皿を差し出され、私は今度こそ落とすことなく受け取る。
「……うん、おいしい。食べさせてくれてありがとう」
「どういたしまして!」
娘さんはパッと笑ったと思いきやその場でピョンピョンと跳ね回り、全身で喜びを表現して見せた。彼女の……上司の家族の笑顔を見ても、もう前みたいに心が掻き乱されることはなくなった。憧れはするがあそこまで病的に執着することは無くなった。あれもマミー人形の力だったのか、分からないがきっともう大丈夫だ。
「サッちゃん、おじさんがギター弾いてくれるんだって」
「先生、それってリコーダー?何で懐からそんなもの出てくるの?」
「止めないでくれミサキ!負けられない戦いがそこにはあるんだ……!!」
「対抗しようとしてる?無理だと思うけど……」
「何それすごい面白そう!サオリ行くよ!」
紙皿を手に飛び出してったミカに溜め息を吐き、私も後を追う。楽しくて温かい時間は続く。その中で私は、たくさん笑うことができたと思う。
ここだけサオリが裏バイトで働いていて、ひどい目にあったりあわなかったりする世界 - 134二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:52:10
すげぇ…すげぇけど……なんでリコーダー???
- 135二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:54:06
ミカとサオリの問答に死ぬほど時間がかかってしまい遅くなりました。申し訳ありません。
こう言う時の人間ってどんな会話するのか全く分からない。人間の気持ちがわからない……。
学校の先生だからリコーダーかなと思いまして。鍵盤ハーモニカと迷いました。
- 136二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:54:12
ミカで叩き壊せないくらい強化するところといいあのまま進んでたら本当に“産まれ”てそうなところといいこの怪異マジで怖い
- 137二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:55:20
このレスは削除されています
- 138二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:55:44
- 139二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 21:59:30
しょうがないけどマミーかわいそうだし、家族にはなれなかったけど、いつかこのマミー人形も生まれ変わってサオリの友達になれるのだろうか?
- 140二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:03:33
- 141二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:05:53
感謝、母と娘の縁は枝切りバサミで切れましたが、またどこかで巡り合うかも知れませんね
- 142二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:14:10
- 143二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:20:08
怪異の催眠やばすきる。マミー人形……恐ろしや恐ろしや…
- 144二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:31:10
実はアリスクに途中で会ってたら簡単に呪いが解けたらしたのかな?
- 145二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:45:28
感謝、姫の「サッちゃん」の一言でもしかしてもしかするともしかしたら……?
- 146二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:01:42
マミー人形がもういらないと捨てられて、本物のお母さんになればもう捨てられないのでは?ってなったのか……
それとも、また別のナニカがマミー人形を依代にしてこうなったのか……
お疲れ様でした! - 147二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:05:52
感謝、マミー人形にも、そこに至る過去があるのでしょうね……
- 148二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:09:58
産まれてたらどうなってたのやら
ともあれ悪縁は無事【切られた】様ですね - 149二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:15:46
感謝、後日そこには誇らしげに枝切りバサミを掲げるミカちゃんの姿が……!
- 150二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:34:39
もしそのまま産み直したらどうなるんだろう
マミーが人間になるか
それともサオリがマミー人形になるかな
…つまりサオリがマミーになってくれるの!? - 151二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:40:27
- 152二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:41:24
生臭い塩水で濡れて温泉行ったんだろうし
仲居さんのバイトをサオリにおすすめするよ - 153二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 23:45:15
感謝、羊水の海の後は温泉にゆっくり浸かってねサオリね……
- 154二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 01:13:51
アルバイトかぁ...シラトリ区鐘崎港みたいな貿易港での巡回警備とかやらせてみたいなぁ。港って多くの船が出入りするから中には霊的あるいは物理的(密輸品とか)にも悪いものとかが入り込んだりしてそうじゃん?
- 155二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 06:47:51
マミーは一瞬本性を現した時に古めかしい口調だったし、年経た怪異なのかな?
子供を失ったり持てなかった母親の情念と、どれだけ子供を愛し愛されても人形故に本当の母親にはなれないマミー人形の無念が結びついてこんな強大な怪異になったとかだろうか - 156二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 10:13:00
- 157二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 10:37:45
お世話になっております、スレ主です。今日はお休みして、明日からまた書こうと思います。
適当に保守しておくのですが、何かありましたらよろしくお願いします。
いつも読んでいただきありがとうございます。今後も頑張りますのでよろしくお願いします。 - 158二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 16:12:44
話思いついたんだけど別スレにした方がいいですか?
- 159二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 17:06:14
スレ主です。そうですね、ここは私の方で書いたSSを投稿して、思いつかなくなったらその時点でスレを落とすつもりでいます。他の方が投稿を続けてスレを維持するのもいいかもしれませんが、少なくとも私は長く続けられないので、その後のことを考えるとスレ主として責任が持てません。
というわけで、せっかく話を思いついたのにお手を煩わせて申し訳ありませんが、別スレでの投稿をお願いします。
- 160二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 17:49:14
遅すぎるかもしれませんが今追いつきました。お疲れ様でした
- 161二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 17:50:02
感謝、長文読んでいただきありがとうございます。次も頑張ります。
- 162二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 18:46:40
お疲れですー
- 163二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 19:26:32
幕間
錠前サオリの裏バイト奇譚8
業務内容:ゴミ収集業者
注意事項: 『捨てられたものを持ち帰らない』
勤務期間:12日間
給与額:1時間1400円×92時間=128800円
コメント: 全額をゴミ捨て小屋の修理費用に寄付したため、実質的な収支は0円となった。ミカと連絡先を交換したことが1番のプラスか。 - 164二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 22:05:34
ほ
- 165二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:09:42
保守
- 166二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:15:10
このレスは削除されています
- 167二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:16:34
このレスは削除されています
- 168二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 02:27:56
んー…これ対立荒らし…か?素直に報告でええか
- 169二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 04:36:48
大学の時神社の裏山に桶で水運んでぶち撒けて帰るってバイトしてた
- 170二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 12:57:48
ナニカを連れて帰ってそう
- 171二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 13:50:52
旅館の仲居のバイトを始めた錠前サオリだ。⬛︎⬛︎自治区の自然豊かな山奥にある旅館での住み込みバイトで、その中でも最上位の客室『蟠桃(ばんとう)の間』の専属仲居を担当することになった。蟠桃の間は王手企業の社長などのVIP専用の客室で、私はそこの護衛も兼ねてるとのこと。護衛任務はあの時のオペラハウス以来か、腕が鳴るな。
荒事が想定されている都合上、バイト代も1日5万円と非常に高く、さらに3食おやつ付きだそうだ。気前がいいな、張り切って行こう。
なになに、注意事項として『蟠桃の間には絶対に鳥類を入れないこと』らしい。鳥を入れると何がまずいのだろう?まあわざわざ注意事項にしているのだ、何か大変なことになるのかも知れないな、気をつけよう。 - 172二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 13:51:57
(1日目、業務前)
蟠桃の間の宿泊客達は夜にやってくる。私は昼間の内に、女将から部屋の案内をされた。とは言っても実際に入ることはせず、入り口を開けてそこから中を眺めると言う形だ。今夜の客のために綺麗な状態を保っておきたいとのこと。
旅館3階の最奥の、山の景色を一望できる綺麗な部屋。季節によって紅葉や雪景色などを楽しめるらしい。今は窓を閉め切られているが、機会があれば見たいものだ。
調度品も高級感溢れるものばかりで、触るどころか眺めてるだけで傷つけてしまいそうで、私はかなり警戒しながら女将の案内を聞いていた。
「フフ、バイトちゃんはあんまこう言うところは慣れてへんの?」
「あ、ああ。すまない。怖いと言うか、逆に居心地が悪いな」
「もっと楽にしてええんよ、見物しとるだけなんやから。それに、せっかく居心地良くなるよう毎日掃除させてはるんよ?そんなん言わんといて」
そう言って女将はコロコロ笑った。獣人(アヒル)の翼のような手で口元を隠す仕草は、まるで扇を持った貴婦人のように気品に溢れている。私もここを任される以上、彼女のように少しでも自信や威厳のようなものを持たないといけないかも知れない。思わずピンと背筋を伸ばした。 - 173二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 13:53:32
「ところでバイトちゃん、何でここが『蟠桃の間』って呼ばれてるか知っとる?」
「いや、分からない。そもそも蟠桃とは何だ?」
聞き返すと、女将は部屋に飾られている屏風を指……いや羽根で指した。縦1メートル、横2メートルほどの大きなもので、桃のような果物を持った天女が描かれている。とても美しく、威圧感を感じる屏風だ。私は息を呑んだ。
「蟠桃ってのはあの天女様が持ってる果物で、『蟠桃の天女』、それがこの屏風のタイトル。お客さん達みんな、景色だ料理だ温泉だなんかじゃなくて、この屏風を目当てに来とるんよ」
「なるほど。確かに、芸術は分からないが素晴らしいものだと思う」
「フフ、ありがとうねバイトちゃん。私もそう思う。あれが世界一の芸術だ!崇高の品だ!……なんて興奮する常連さんもいるくらい。私らの誇り、みたいなもんね」
「誇り、か。なら大切に扱わないとな」
「そうね、バイトちゃん。だから部屋入るん時は気をつけてね?あと注意事項、ちゃんと守るんよ?」
「了解した。しかし、どうして鳥類だけ名指しなんだ?」
「ダメなもんはダメなんよ。だから私も、女将やけどこの部屋には入ったことない。他の仲居さんに任せとるんよ」
「そうなのか……」
確かに女将はアヒルの獣人、鳥だ。女将なのに入らないとは徹底している。何か私には想像がつかない理由があるのではないか。疑問に思うが、女将はこれ以上詮索するなと言いたげな目でこちらを見ている。仕方ない、今回は飲み込むとするか。
「ならせめて蟠桃を食べてみたいな。少し気になる」
「ああ、それならバイトちゃんのおやつに出よるから、楽しみにしとき。なんならちょうどお昼のじかんやんね。厨房行きましょうか」
「了解した」
私は蟠桃の天女をもう一度見る。何だか天女に見られた気がするが、気のせいだと思い部屋の襖を閉めた。
その後、厨房で昼ご飯とおやつの蟠桃をいただいた。桃と比べると水分が少なくジューシーさは感じないが、その分歯応えがあり品のある甘みを感じる、とても美味しい果物だった。さて、これから仮眠を取ったら業務開始だ。接客と警護、気を引き締めて頑張ろう。 - 174二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 13:58:21
一旦ここまで
- 175二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 14:32:47
リゾートの……バイト!旅館内のいわくつきの一室!これは素敵なホラーの予感だ…!
- 176二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 16:22:13
かの名作洒落怖リゾートバイトを思わせる絶好のシチュエーション……こりゃ期待が高まってくる
- 177二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 19:47:50
調べたら蟠桃(ばんとう)は中国原産の果物で関係はないかもだが不老不死の伝説があるそうだ
- 178二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 20:54:33
ブルアカの鳥類
・鳥系モブ
・ペロロ様
・シマエナガ
・戦車もぶち抜くカモメ
・小鳥遊ホシノ etc.
うーん、危険がいっぱい - 179二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 20:54:34
銃撃戦が日常の世界で、高級な部屋の保全しながら護衛とか、別の意味で怖いな
- 180二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 20:58:23
トリニティの羽つきもワンチャン駄目?
- 181二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 20:59:22
サオリを公園で助けてくれた鳩ニキがピンチになる可能性もあるかもしれない
- 182二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:02:07
(1日目、業務中)
「やあやあ女将!今回も利用させてもらうよ!」
「お待ちしておりましたわ、社長さん。すぐにお部屋へご案内させていただきますね」
21時、女将と共に今日の宿泊客のニャンニャンモータース社の社長を出迎える。驚いたな、カイザーグループにも負けないくらいの大企業の社長が、わざわざこんな山奥まで。
「ああ、お願いするよ!早く天女様の顔が見たいねぇ!」
なるほど、あの屏風が目当てで来たのか。驚いたな、確かに綺麗な屏風だったが、それでここまで来るなんて、やはり何かあるのだろうか。不思議だ。
「それじゃあバイトちゃん、ご挨拶。あと社長さんの荷物も持ってあげて」
「了解した。蟠桃の間専属仲居のサオリだ、よろしく頼む。荷物を預かろう」
「ありがとう!いや〜いいねぇ女将さん、クールでカッコいい仲居さんで。腕も立ちそうだし気に入ったよ!はいこれ」
女将に目配せしながらそう言った社長は、私に荷物ではなく紙幣の束を差し出してきた。
「……ん!?な、何を!?」
「チップよチップ、貰っときなさい」
「額がおかしいだろ!?じゅ、10万はあるんじゃないか!?」
「いや〜新人さんからかうのは面白いね〜!大丈夫、この旅館はピンハネとかないからさ。ね、女将?」
「もちろんですわぁ。ほら、早く。全部ポッケにナイナイしていいから、社長さんを待たせないの」
「あ、ああ……感謝する」
恐る恐る、おっかなびっくり、限界まで腰を低くしてチップを受け取る。10万はなかった、20万だった、戦慄した。これがVIPと言うものなのか……?
受け取った金をポッケにナイナイした後、改めて荷物を受け取って蟠桃の間へと向かった。女将と社長は親しげに話しており、内容から何十年も前からの知り合いであることが伺える。私はそれに疑問を持った。と言うのも、社長はかなり若く見えるのだ。
獣人の外見年齢は私もよく分からないのだが、その毛並みや足取り、背筋をピンと伸ばしているところから、20代前半の獣人に見える。だが会話の内容に平気で「30年前は〜……」や「弟の孫が〜……」などと言っていて、とても20代とは思えない。ちなみに女将は50代と言ったところだろうか。気品と元の美しさが逆に老いを味わいに変えている、とてもいい歳の取り方をしたご婦人と言った出立ちだ。 - 183二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:04:05
私が知らないだけで、獣人の老化は緩やかなものなのだろうか?訝しみながら2人の後を追っていた。
蟠桃の間に着くと、私と女将で襖を開け、社長を中へ通す。荷物は社長が自分で片付けるとのことで、入り口で受け渡した。
「さて、じゃあ天女様とご謁見だ。後は任せるから、よろしくね」
「了解した」
「ではごゆっくりなさって、社長さん」
女将と共に一礼し、襖を閉めた。瞬間、私は大きく息を吐いた。
「気に入ってもらえて良かったねぇ、でもまだまだこれからやから、気張ってねぇバイトちゃん」
「ああ……、すぐに業務を開始する」
「じゃあよろしくね〜」と言って去っていく女将を見送り、私は仲居用の青い着物を整えた。
さて、私の業務はここ蟠桃の間の仲居と宿泊客の護衛。実は割合で言うと仲居は1、護衛が9くらいの仕事なのだ。宿泊客……今回は社長だな、社長が部屋に通された瞬間から護衛開始。襖の前で警備をしつつ、支給されたタブレット端末で周囲に設置された防衛設備をチェックする。設備はソナーにカメラにサーモグラフィーまであり、私から見ても虫1匹通さないような完璧な布陣だ。それこそ、旅館がやるには過剰なほどに。
(防衛にやりすぎなどないかも知れないが、こんなに設備を用意して採算は取れるのか?)
そんなことを考えながらタブレット端末を注視していると、インカムから警報音が鳴り出した。すぐにタブレット端末にも情報が出る。
「旅館から半径100メートル圏内に鳥が侵入、か。全自動対鳥類用スピーカーは……作動しているな、よし」
ソナーと監視カメラの映像、そして装置からの信号から鳥の退散を確認する。……やっぱり過剰じゃないか?
どうしてそんなに鳥を遠ざけるのだろう。山奥とは言え、旅館は常に人がいる場所だ。鳥なんて近づくとは思えない。やれと言われたからやるが、あの注意事項が本当に意味が分からなかった。 - 184二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:04:49
「バイトちゃん、聞こえてはる?」
インカムに女将の声が入る。何があったか聞いてみると、社長からルームサービスの依頼があったらしい。
「蟠桃の盛り合わせが食べたいんやって。今から持っていくから、お部屋に入って社長さんに差し上げたって」
「了解した、部屋の前で待機している」
しばらく待つと、切り分けた蟠桃が山のように積まれた皿を持った女将がやって来た。
「はいこれ、社長さんのお膳に置いときゃいいから、バイトちゃんよろしく」
「了解した」
皿を受け取る。女将は襖にノックをし、そして開けてくれた。
部屋の中は異様な雰囲気に包まれていた。社長は調度品や、開け放たれた窓から見える夜の森には目もくれずに、あの屏風の前に跪いていた。何も喋らず、動かず、天女を凝視している。社長の前には確かにお膳が置かれていた。何も乗せられていない、そこに置けばいいんだな。一礼し、中に入る。
「失礼する、頼まれた蟠桃盛り合わせを……うっ!!」
思わず出て来た悲鳴をどうにか噛み潰し、落としそうになった皿を必死に掴む。
蟠桃の間に入った途端、空気、雰囲気、他にもあらゆるものが一変した。そこは安らぎを感じる穏やかで閑静な旅館の一室じゃない。宮殿、あるいは神殿だろうか?荘厳で厳格でそして何の無礼も許されない圧倒的なプレッシャー。所作全てが監視され品定めされてるような、敵わなくて跪かなければならない感覚がする。そしてその全ては、あの屏風が放つものだと瞬時に理解した。
蟠桃の天女……。屏風と言うより、モチーフになった天女そのものが恐ろしいのだ。今私は彼女の前にいる、謁見している。部屋の外から見た時はそんなこと感じなかったのに……いや、そうか。ここは神域、ここは彼女の、偉大なる天女の縄張りなんだ。足を踏み入れた私は彼女のプレッシャーに屈してしまった。 - 185二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:05:29
「…………バイトちゃん、早く」
「ああ、分かってる」
嫌に無感情な女将の声に背中を押され、私は社長へと近づく。天女からなるべく目を逸らし、社長の隣に跪いて、お膳に皿を置いた。仕事をこなせたことに安堵するが、あんなに親しみやすかった社長が何も言わずに天女を凝視する様を見て、すぐに緊張が迸った。血走った目を限界まで開き、口元は笑っている。この屏風に何を感じているんだ?どうしてこの人は天女と謁見を……?私はそんな疑問を確かめずにはいられず、つい屏風を見てしまった。
「っ!!!?」
ただの屏風が、ただの天女の絵が、動いた!?一瞬だけだが確かに動いた。目が動いて、私を見て来た。認識されたことが酷く恐ろしく感じ、私はすぐに目を逸らした。その瞬間、社長が怒鳴り声を上げた。
「とっとと出てけッ!!俺の天女だ!!!!」
「し、失礼した……!!」
こちらを一瞥もしなかった社長だが、その横顔は強い憤怒を描いていた。私は弾かれたように立ち上がり、いそいそと部屋を出る。女将が一礼して襖を閉めるが、それを手伝うこともせずに廊下に屈み込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「初めてにしては上出来だったわねぇ、バイトちゃん。あ、社長は気にしなくてええから。あの人も思わず怒鳴っちゃっただけで、悪気はないと思うんよ。多分明日になったらいっぱい謝られると思うから、許したってね」
「………………ああ。だが、女将。あの屏風は一体……?」
「まあ、それくらいうちらにとって大切なものってことやね。さ、仕事仕事。この後も社長さん守ったってね、バイトちゃん」
はぐらかすようにそう言って、女将は去って行った。それを見送りながら、私は未だ震えている二の腕を握る。
今、何かを考えていても混乱するだけだな。まだ1日目だ、働きながらゆっくり把握するべきだろう。私は頬を叩いて気持ちを切り替え、警備を再開した。その夜は何事もなく過ぎて行った。 - 186二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:06:01
その後、朝を迎えると社長は部屋から出て、食堂で朝食を食べた。私はそれに同行し、宿を出るまで警備を続けた。帰り際に社長は、私を怒鳴りつけたことを謝ってきた。
「いや〜昨日はごめんね〜。バイトちゃんが天女様からお目配せを貰ったのにどうしても嫉妬しちゃってねぇ。60過ぎて怒りっぽくなったのかなぁ?」
「問題な……え?60?」
「そうは見えないでしょ?天女様のおかげで毛並みもフワッフワ、ずっと元気モリモリなんだよ!」
誇らしそうに力瘤を作って見せた社長に、私はポカンと口を開くことしかできなかった。
チェックアウトを済ませ、リムジンに乗って帰った社長を女将と共に見送る。車体が見えなくなった頃に女将は私の背中をバシバシと叩いた。とても嬉しそうだ。
「社長さん満足そうでよかったわ、バイトちゃんが頑張ってくれたおかげやね!」
「いや、私はほぼ何もしてないさ」
「そう遠慮せんと。じゃあ今夜もお客さん来るから、ご飯食べて仮眠したらまた気張ってね!」
「………ああ」
今夜もか、あの部屋に入るのだろうか。不安になり、げんなりしながら私は旅館の中に戻った。 - 187二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:10:37
一旦ここまで、続きは次スレで更新します。まさか4スレ目までいくとは思いませんでした、お付き合いいただきありがとうございます。
錠前サオリの裏バイト奇譚2【SS、微ホラー】|あにまん掲示板自分探しのために色んなアルバイトをして各地を放浪する錠前サオリ。だがその中には恐ろしいものが隠されている危険なアルバイトもあった。これはそんな危険なアルバイトにうっかり勤めることとなったサオリのお話。…bbs.animanch.com - 188二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:12:35
埋まりそうなので先に作っときました
- 189二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:13:11
たておつです
- 190二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:06:33
たておつです!
- 191二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:20:02
- 192二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:42:30
忘れてた埋め埋め
- 193二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:42:43
😋
- 194二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:43:10
🤤
- 195二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:43:29
埋め
- 196二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:43:49
梅
- 197二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:44:05
うめ
- 198二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:44:19
うめうめ
- 199二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:46:06
🤤
- 200二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:46:33
旅館編に続く