【閲覧注意】遠征支援委員会の受難【独自設定混入】【SS】

  • 1二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:21:01

    「相変わらず良いお茶だね」
    「それは良かった、選んだ家族も喜ぶと思います」

    お昼過ぎのやわらかな日差しがさす遠征支援委員会室。
    その応接用のスペースで珍しい人とティータイムを過ごしている。
    カップからは湯気とかぐわしい香気が立ち上っているがあたりに流れる空気は凍てつくほどに張りつめている。
    それもそのはずだ、お相手は――

    「それではそろそろ本題に入られてはどうですか? シンボリルドルフ生徒会長殿」
    「それはすまなかったね、東向西走の中わざわざ時間を作ってくれたのだからもっと手早く切り出すべきだっただろうね」

    皇帝の名を持つ傑物が少しだけ困ったような顔で話を切り出す。
    手にもったカップを上品にソーサ―の上に戻した。

    「――」

    我が妹を思わせるような威圧感とでもいうような迫力が急激に浴びせられる。
    並のウマ娘ならそれだけで身がすくむ程だ。
    しかしそれを受け流しこちらも一口紅茶を飲みソーサーに戻す。
    カチャリ、と震えることなくごく自然に置いたことに気付いたのか発していた圧を納める。

    「戯れが過ぎますよ」
    「さて……一体なんのことかな?」

  • 2二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:22:04

    少々独善の気質があるとはいえむやみにこんなことする人ではないことは知っている。
    だから何ごとかあるのだろう。
    忙しい中わざわざここまで足を運ぶほどの事だ。
    さっきの事程度でうろたえられたら困る程度の厄介ごとの予感がする。

    「ここ最近学内でも遠征、特に海外遠征やトレーニングに向かう生徒が多くいると思う」
    「ええ、おかげさまで」

    軽いさや当てだ。
    増えたことで何かトラブルにつながっているそんな話は出ていない。
    ならば――

    「私自身がグランプリ制覇を行うなどトゥインクルシリーズで活躍することで遠征支援委員会の知名度も上がったのもあるのかもしれませんね」

    トレセン学園はある種単純な決まりがある。
    速い人間が発言力を持つ。
    色々他にも影響を与える要素はあるが、G1勝利はかなり大きな意味を持つのを否定できない。
    グランプリ制覇が持つ意味は大きい。
    もちろん目の前に座る皇帝の残した功績と比べたら見劣りする。
    が、牽制にはなる。

  • 3二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:22:24

    「有馬記念は現地で見させてもらったよ、あの走りはまさに蓋世之才、体躯が小さい者の希望になった事だろうね、君のトレーナーも相当に頑張ったと聞くよ」
    「それは、どうもありがとうございます」

    トレーナーさんも褒められたことは素直に喜んでおく。
    まさかこんな世間話で終わるはずもない。
    このようなときは相手の出方を待つのが基本になる。

    「話を戻させてもらうけど、現状の遠征支援委員会の規模だと少々キャパシティがオーバーし始めているという話が上がっていてね」

    これは嘘ではない。
    対応する人間の数は限られるし、トゥインクルシリーズで走るとなるとどうしても学業とトレーニング、レッスンの兼ね合いが出てくる。
    物理的に人が足りず遠征に関わる相談の予約が必要になってきている。
    これは確かに委員会の能力を超え始めていると言えないこともない。
    しかし、相談を求める子たちは全て捌くことができているし、マニュアルを作成するなど対処法はいくらでもある。

    「そこで近いうちに生徒会直下に遠征相談窓口を開設しようかという話になっていてね」

  • 4二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:22:46

    これか。
    と直感する。
    がその想いは表情に出なかった、と思う。
    それでなくとも私が会った中で大人を含めてすら指折りの傑物だ。
    気付いたと考えていいだろう。

    「窓口となっているがその実は予算規模と人員の配置を想定している、活動拠点もこの部屋になるだろうね」
    「……急な話ですからもう少し考えさせてもらって構いませんね?」
    「ああ、色よい返事を待っているよ」

  • 5二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:23:31

    「こんなの横暴だよ、シンボリルドルフ会長がそんな人だなんて思わなかった!!」

    トレーニング後二人並んでコーヒーブレイクしているときに話したら憤ってくれた。
    理不尽に大して正しく憤れるそのまっすぐさを好ましく思いながら、そっと引き留める。

    「とりあえず落ち着いてください、トレーナーさん」
    「でも――」

    こっちを見たトレーナーさんは自身の服の裾を持つ私に気付いたのかすぐにそっと座る。
    言い出そうとした言葉を飲むように手にもったカップからコーヒーを一口すする。
    そうするとある程度落ち着いたのか幾分静かな口調で話し始める。

    「せっかく軌道に乗ってきたのに横取りするようなことをしてくるのは流石に理不尽じゃない?」
    「ええ、普通ならしかるべき対策を打つこともやぶさかではありませんけど――」

    相手は理想主義者の生徒会長だ。
    自主性を重んじるという言葉は生徒代表の生徒会の権限を拡大する言葉ではなく、生徒個人の良識に任せるというのが近い。
    しかし今回は自身の元に委員会を置きたがるような行動だ。

  • 6二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:24:09

    「そう、おかしいのです……そういうことをする人ではないはずなのに……」

    ただの理想主義者だったならまだ読みやすい。
    しかし自身の主義主張に反する事すら行う覚悟を持った人だから気を配る必要がある人だ。
    元々大小や手段すら様々な外部とのパイプを集めている委員会だから学校や生徒会から目をつけられいつか首に鈴をつけに来るだろうということくらいは想定していた。
    がこれはいささか強引すぎる手段だ。

    「皇帝シンボリルドルフが打ってくる手としては拙いと言ってもいいのです」
    「なにか理由があるってこと?」

    その言葉にゆっくりとうなずく。

    「すこし、調べる必要があるかもしれませんね」

    そう呟いて手にもったカップに視線を落とす。
    いつの間にか飲み干したらしく底にコーヒー豆のカスがほんの少しだけ残っている。
    その残されたカスは不気味な笑みのように歪んでいるように見えた。

  • 7二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:25:44

    今日は以上です。

    残りは近日中に投稿することを考えています。

  • 8二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:31:04
  • 9二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 01:35:40

    ドリームジャーニーってキャラを見たとき、会長と渡り合える可能性が示唆されたというのが特記事項の一つだと思うので、こういうレース外での頭脳戦を書ききれるように頑張ります。

  • 10二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 07:42:17

    前に書いたSSが反応集動画に組み込まれててちょっとしんなりする気持ちと、人目を引ける程度ではあったということが分かってうれしいという気持ちが混ざり合った不思議な気分になってます……

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