【閲覧注意】「妖怪腐り手毬外道」作:花見典侍咲季

  • 1二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 16:39:24

     今は昔
     山城国にて月村手毬はそのプロデューサーにして夫と3つ子と平和に暮らしていた。
     しかし、あるときに大飢餓が発生してしまった。
     それはあまりに根深かった。
     農作物は壊滅し、蓄えも尽き、木は枯れた。
     此処は何処かと問われれば、六道における餓鬼界と答えたところで疑い様はなかった。
     食物を口にしなくなって、果たしてどれほどの時を過ごしたのか。腹は餓鬼の如く膨らんでしまった。喉は辛うじて息をする程度の役割しか果たせなくなっていた。
     何かを食べたかった。食べられそうなものが目の前にあるのに──。混濁した意識の中、葛藤は決して終わることはなかった。
     しかし、最初の一口から後は、それまでの煩悶が嘘のように心から消えた。喉が潤う。顎が動く。歯で噛む。空気以外の物が喉を通る悦び。ひたすらに貪り食った。これ以上の御馳走は記憶に無い。食えそうな部分をひとしきり食い終わると、正気に戻った。
     冷静に、自分が何を食ったのか、正しく理解した。
     だが、罪の意識などなかった。
    「て、手毬、何……何を食っとんだ?」
     四肢を私に食べられ息も絶え絶えなプロデューサーが諌めてくる
    「子供……食ってんのか? それだけはやっちゃなんねえだろうが! この……腐れ外道が!」
     声は出せなかった。呑み尽くした腕が喉に絡み付いてしまったために。だから、表情で応えた。
     歪んだ笑顔で。
     いただきまぁす──と。

  • 2二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 16:43:53

     よく噛んで、よく噛んで、よく噛んで――
    「ごぢぞうざまでじだ~」
     硬くて不味い骨は吐き捨てる。噛み砕いた物も含まれているが、その吐き捨てられた骨の中の、おそらくは頭蓋骨であろう物が虚ろな表情で見つめている。だが、それも長くはもたない。吐き捨てられた骨は、湯気にも似た白い煙を発しながら、溶解していき、土の上の染みとなった。
     今日は豊作だった。六人ほど喰った。満足して、歪んだ笑顔で腹を撫でる。
    「……腹減っだ」
     なのに、腹は減る。すぐに。
     思えば、最近は子供を喰ってない。やはり、子供を喰いたい。子供は美味い。残すところがない。肉も、内臓も、骨も、残すところがない。全部美味しく喰える。最近は眼球が溶けて無くなるまで舌の上で転がすのが大好きだ。しかし、太腿の内側に勝る美味はなかなかない……。
     妄想の中で、子供を喰う。ひたすら喰う。ひとりやふたりではなく、何十、何百と。
    「……ん?」
     涎を垂らしながら恍惚としていたが、ふと、美味そうな匂いを感じて、顔を向ける。
    「怖いところに来ちゃったよぉ」
     その金髪の少女は不安げな面持ちで、しきりに辺りを見渡す。そわそわと落ち着きのない様子であった。
    「ちびども、どこいっちゃったのかなぁ」
     やがて、少女は走り出した。かなり足は速いらしく、すぐに見えなくなった。
    「……あのおなご、ずげぇうまぞう」
     ご馳走だと思った。今までで、一番、美味そうだと思った。
     鼻で息を吸う。何度も何度も。走り去った、ご馳走の匂いを記憶に焼き付ける。追いつけるはずがないことはわかる。だから、この匂いが続く限り、どこまでも追い詰める。
    「あのおなご、食いでぇ。食いでぇ。食いでぇ」
     どうやって食べたら一番美味いのか、考える。
     まず、全身を舐め尽くす。それから、踊り食い……は勿体無い。
     腕からちぎって、次は足をちぎって――いや、右の太腿が最初で、最後は左の太腿で――……

  • 3二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 16:50:31

     その少女ー藤田ことねを追いかけるうちに何人もの人が立ち塞がった。貴族と思わしき少女とその1党が刀や槍を構えたが全て平らげた。
     男は不味い。そう結論づけた頃には身体に傷がない部分は存在しなかった。
     飢え、飢え、飢え。
     それだけが原動力であり、行動指針であった

  • 4二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 17:13:13

    「ちびども……どこ……?」
     漸くことねを見つけたときには明らかに憔悴していた。
    「やっどみづげだぁ。うまぞう、うまぞう。このおなご、ずげぇ、うまぞう……」
     自分の呟きにことねは尻餅をつき怯えた表情を浮かべていたが逃げる気力を無くしていた。
     ようやく食べれると思ったときに1人の女性が立ち塞がった。
    「やめて!もうやめてください!まりちゃん、もう無益に人を殺めるのは……やめてください!」
    「……あ……ああ……」
    「藤田さん怖かったでしょう。……さあ、お行きなさい」
     立ち塞がった女性はことねを立ち上がらせると、ことねは泣きながら逃げていく。
    「まりちゃん美鈴のことは、おわかりですか……?
    「……ああ……み……すず……みすず…」
     自分が人間だったころの数少ない友人の秦谷美鈴だ。
    「たとえ、妖怪と忌み嫌われようとも、私にとってまりちゃんはずっと昔から、やさしいまりちゃん……村に帰りましょう。もう村には誰もいません そこでまりちゃんの大好きだったラーメンやトンカツ、カレーをいっぱい作って……」
    「がんばって働けば、まりちゃんと私と……それと──」
    美鈴は優しくお腹を撫でながら自分に語りかけてくる。
    「プロデューサーとの間のこの子で食べていけると思います。ですから、もう……人を食すような凶行は、おやめください……」
    「……みすず…美鈴…」
    「まりちゃん……。私、昔のように、やさしいまりちゃんと暮らしたい」
     どちらかとともなく抱き合い無言の間が続いた。


       

  • 5二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 17:13:44

    空模様は悪かった。










    「 い だ だ ぎ ま ぁ ず 」





    ,

  • 6二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 17:20:41

     以上が生存者である藤田ことねから調書を取り纏め上げたまのである。
     十王家家中全滅の謎と合わせて陛下にご覧いただく予定です。
     どしどしと廊下を歩く音が聞こえる。
     どうやら、妹の佑芽が迎えに来たようだ。
     扉を開けるとそこにはーーー

     (終)

  • 7二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 17:22:42

    夏らしくホラーでおおくりしました。
    ここまで読んでくださった皆様ありがとうございます。
    元ネタはサムライスピリッツの某キャラです。

  • 8二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 17:46:32

    焚書

  • 9二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 18:31:49

    有害指定図書

  • 10二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 18:44:25

    それって私がグールすぎるってこと?

  • 11二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 19:08:14

    カニバリズムですわ〜〜〜〜!!

  • 12二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:01:26

    そういえば閲覧注意って別にエロだけのものじゃないんだったわ

  • 13二次元好きの匿名さん24/07/04(木) 22:13:32

    ジュビロの絵で再生された

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