- 1二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 10:40:54
- 2二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 10:51:33
1です。
フィギュアたちですが、
本文中では「ポケモン・スモールパラダイス」(略してポケパラ)と呼ばれています。
またストーリーの都合上、
実在のスケールワールドでは発売未定のトレーナーやポケモンたちも出てきますのでご了承ください。 - 3二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 11:13:29
※主なオリキャラ
持ち主→
本文のメインをつとめる(であろう)カントージムリーダー達の所有者。
バイト代の余りをコツコツ貯めながら、『ポケパラ』を集めて楽しんでいる。
いちおう大学2年の女子(という設定)ですが、
あんまり濃い子だとssの本筋がぼやけそうだと判断したため、なるべくキャラ性は持たせない予定です。
後輩→
持ち主を「先輩」と慕う、腐った性癖もちのオタッキー♀︎
「リアタイで刺さりまくった」と言うシキミを所持。後輩の二次創作を助ける相棒でもある。 - 4二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 11:24:54
- 5二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 11:26:30
ほしゅ。えっまさか性格反転したパルデアの人??ちがってたらごめん。
- 6二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 11:34:18
age
- 7二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 11:58:19
待機
- 8二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 12:17:36
保守やコメントありがとうごさいます!
次レスから本編を直投下させてもらいます。 - 9主どす24/07/05(金) 12:26:32
「ははははーッ!今さら気づくとは!カントー地方の猛者たちが聞いて呆れる!」
明かりが煌々とついた六畳一間の中心。ダンボール製の書き割りに囲まれたコタツ台の上では、トキワシティのジムリーダー・サカキが、今まさに本性を現していた。
「まさか……まさか、あなたが……!」
「いかにも。世界中のポケモンを悪だくみに使いまくって金儲けするロケット団!ここは我々の隠れ家なのだ!」
「カスミさん、ダメ!!」
ワナワナと歯を食いしばったカスミが、エリカの制止を振り切り、切り札・スターミーとともに怒りの形相でサカキへと飛び込んだ。
「スターミー、ハイドロポン……」
「遅い。どくづきだ」
「グッ……!」
瞬速で踏み込んだニドキングの一撃。するどい手刀は、あろう事かカスミの喉を一突きした。
「ミィ!?」
「だ……だいじょう……コホッコホッ!」
うずくまり、咳き込む主へと縋りつくスターミー。
「おっと。動くな」
「くっ……うう」
カスミのサイドテールを乱暴に手繰りよせたサカキは、ヘッドロックの体勢に入った。
無理やり引き起こされたカスミ。そのこめかみには、黒光りするリボルバーが突きつけられている。
「くっ、年端もいかない少女になんて事を!」
「なんてこったい!サカキ、ベリーカワードネ!」
「トレーナーの風上にも置けぬ所業!断じて許さぬ!」
「なんとでも言え!一歩でもポケモンを動かしてみろ。この小娘の命はどうなるだろうな……
って痛い痛い痛いとがった部分で叩くのは止めてくれ」
「ミィィ!!」
歯噛みするタケシやマチス。
そして、睨みをきかせたキョウやエリカへと、これ見よがしに笑ってみせるサカキ。
……からの忠告など無視し、怒ったスターミーは、彼の太ももをペチペチと叩きまくっている。 - 10主どす24/07/05(金) 12:41:47
「お前こそ。これ以上カスミに手を上げてみろ!俺たちの相棒が黙っちゃいないぜ!」
雄々しく叫ぶタケシの横でイワークが吠える。それに応えるかのごとく、エレブーにモンジャラ。そして磁力で浮かんでいるゴルバットも、それぞれの主の隣からサカキを威嚇した。
「フッ。いいだろう」
獰猛な笑みを浮かべ、カスミを離したサカキの手。
「まとめてかかって来い」
気を失い、モノのように倒れ伏した彼女に一瞥もせず、ニドキングの背後から指示が飛んだ。
「ニドキング。じしんだ」
サカキの声を受け、いっせいに腰を落とすジムリーダーたち。と、その瞬間。
「あー!やってるやってる!」
吹き抜けとなっている囲いの上から、巨大な人間の顔がいきなり覗き込んできた。
「うわっ、ビックリした!!」
「あっ、持ち主さん、おかえり〜!」
天を仰ぐや、大きく肩を跳ねたタケシ。サカキの足下で伏せていたカスミも、持ち主に両手を振りながらムクリと上体を上げた。
「ただいま、カスミちゃん。それで?今日はどんな設定?」
「拙者らにサカキの正体が露見し、皆の衆でジムに討ち入っておったのよ!」
「なるほどお、後輩ちゃんが喜びそうなシチュだねー」
彼ら――1/20サイズの自我を持つ自立フィギュア、『ポケモン・スモールパラダイス』の持ち主が帰ってきたらしい。
「ごめんね。いつかジオラマも買ってあげたいんだけど、中古でもメッチャ高くてさー」
「気になさらないで。わたくし達を集めてくださるだけで十分ありがたいですから」
ダンボールの箱庭から華やぐエリカ。笑顔のトレーナー達に見あげられ、持ち主の顔も思わずほころぶ。
「だからさ。お詫び……って言ったらアレだけど、色々買ってきたよ!じゃーん!」
持ち主のキャリーバッグから取り出されたのは、雑貨屋のビニール袋。 - 11主どす24/07/05(金) 12:50:31
「マチスさんにはコレ!」
「マスター、これはまさか!」
ダンボールの中にヒラヒラとかざされた品物。プラスチックで覆われた厚紙を見るなり、マチスが一も二もなく飛びついた。
「双眼鏡、コンバットナイフ、海軍式のM4カービン!それに手榴弾 (パイナップル)がゴロゴロ!
ミーが欲しかったアクセサリーばかりだヨ!」
「あはは。海外の小物ってすごいよね!ポケパラの大きさにも対応してるみたい。双眼鏡は本物そっくりにズームできるし、手榴弾は本当に破裂するらしいから、気をつけて使ってね!」
「オーライ!サンキュー!この部屋にドロボーが出たら、一発でノックアウトするからネ!」
ノースリーブの握りこぶしを高々と掲げたマチスは、書き割りの隙間を抜け出すと、しがみついたコタツの脚を器用に滑りおり、フローリングに4つ折りのハンドタオルを敷いた。
「はい、エリカさん!」
「これは?」
「霧吹きで育てる珍しい植物!どんな種類かは咲いてみてのお楽しみだって!」
「へぇ、素敵……何だかロマンチックですわ!」
持ち主からエリカへの贈りものは、黒字に白い「?」が書かれた、高さ3センチほどの小さな鉢植え。
「ありがとうございます。大切に育てますわね!」
ゼラチン質と土に満たされた目の前の鉢植えに頬ずりしたエリカは、プレゼントを抱きかかえたまま、クッション代わりのハンドタオルを目がけて、モンジャラとともに飛び降りた。
「ミッ!ミッ!」
「あー!ほらほらスターミー!ごっこ遊びは終わり!サカキさん突っつくの止めなさい!」
「加減しているとはいえ、主人に乱暴して悪かったよ。どれ、肩車してやろう」
サカキが肩を揺さぶるたび、ウキウキと小刻みな万歳を繰りかえすスターミー。それを微笑ましく見つめるカスミやニドキングとフローリングへ飛び降りると、サカキたちにもプレゼントが用意されていた。
「サカキさん、カスミちゃん!はい、どーぞ!」
「ハットにレインコートか。ほう……紫とは分かっているな」
「やったぁ!浮き輪だ!しかも、わたしが大好きな水玉模様!」 - 12主どす24/07/05(金) 12:56:05
サカキとカスミには、これまた海外製の1/20スケールで作られた衣服とレジャー用品。
「持ち主よ。お前をロケット団専属のコーディネーターに任命してやろう」
「身体の中身が重たくて、ゲームの中みたいに泳げない……わたしの悩み、覚えててくれたんだ!」
「もっちろん!去年は海の底に沈んじゃってダイバーさんに見つけてもらったけど、今年こそ一緒にプカプカ遊ぼうね!」
「持ち主さぁん……大好き……一生そばに居させて……!」
浮き輪をハグしながら、まるで人間のように鼻を鳴らすカスミに、レインコートを羽織ったサカキもニヒルに笑いかけた。
「あるじ殿が遊んでいた、最新作のジムリーダーより取り入れし体術。しかと見よ!」
とうっ、とコタツから飛び降りたキョウは、きりもみから2度の前転を披露し、フローリングに美しい着地を決めた。と同時に。全身が磁石で出来たゴルバットが、同極の磁石が埋め込まれたキョウの背中にフワリと舞い降りてくる。
「キョウさんには1/20スケールの忍者刀!後輩ちゃんいわく、アメコミのヴィランが持ってるやつみたい!」
1体と1匹が降りるのを待っていたかのように床へ置かれたのは、黒ずくめの鞘に収められたヒモ付きの刀だった。
「な、なんと!あるじ殿、かたじけない!この反りが無い刀身こそ真の忍者刀!森羅万象!拙者らフィギュアの為の、あらゆる小物が揃えてある!ヴィレ○ンとは恐るべき場所!さながら万事屋のごとし!」
「えっと……店員さんが言うには、果物とか野菜なら簡単にスライスできるぐらいリアルに作ってあるらしいから、扱いには注意して」
「心得た!あるじ殿の作業を手伝うおりにでも、さっそく試し斬りと行こうか!」
マフラーと忍び装束の首筋をぬって、グイグイとぬじ込まれる忍者刀。背中からシャキンと抜いては収め、鞘の音に目を細めてニヤニヤとほくそ笑むキョウも、あるじ殿からのプレゼントにすっかりご満悦の様子だ。 - 13二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 15:45:27
このレスは削除されています
- 14主どす24/07/05(金) 15:46:20
ポケモン・スモールパラダイス。略してポケパラ。新旧のトレーナーたちや、彼らの手持ちを1/20スケールで再現した精巧なフィギュアである。
内蔵されたギミックにより、ポケモンの技や生態を物理的に再現。
スターミーであれば、体内に小さな高圧洗浄機を埋め込んであり、
エレブーであれば、小型のダイナモが頬と心臓に。
モンジャラであれば、全身に張りめぐらされた特殊な素材によりツタを自在に伸縮可能。などなど。
そのうえ完璧な防水機能も備え、零下30℃から摂氏100℃の環境まで耐える事ができる。
しかし。このシリーズ最大のウリは、
著名な心理学者やai技術者の監修のもと、最新鋭の半導体まで導入されており、
全てのフィギュアたちが、ゲームやアニメそのままに、まるで生きているかのごとく自立して動く点である。
そのせいもあってか、一体一体の価格が1万円越え――手持ちとトレーナーのセットであれば数万はくだらないものの、
ポケモンファンやコレクターからはもちろん、
子どもに留守番させがちな共働きの家庭や、独居する若者から老人世帯まで。
世代の幅を問わず爆発的な人気を誇っている。
だが。持ち主がそうであるように、
それまでは主に愛玩用として広まっていたポケパラも、とある出来事によって今では大きく毛色を変えていた。 - 15主どす24/07/05(金) 15:55:53
「カツラさーん、ナツメさーん、どこー?」
ベッドの下。押し入れの中。お手洗いに、猫の額ほどのベランダ。残る2人にプレゼントを渡そうと、アパートの狭い自室をさまよう持ち主。
「ご主人。おふたりなら隣へ出かけましたわ」
「後輩ちゃんの所?」
「イエス!新しいクイズを試しに行くって、ベリーハイになってたヨ!」
「ナツメさんは、後輩とシキミさんの執筆作業をサポートしにな。俺たちをモデルにしたss?だとか言ってたな」
コタツ台そばのフローリングで、腹筋と腕立て伏せを繰り返しているマチスとタケシ。
ベッドの縁に腰掛け、カスミやキョウと横並びながら動画を見つめるエリカ。持ち主の問いに、ジムリーダー達がめいめいに答えた。
「居なくなったわけじゃないんだ、よかった」
ホッと息をつき、リビングへ戻った持ち主。書き割りは片付き、ベッドに寄せられたコタツ台の上には、持ち主のノートパソコンから映像が流れている。
「……ぷっ。FUJIW○RAじゃん!この2人最高だよね!」
エリカたちの隣からノーパソを覗き込んだ持ち主は、自身との嗜好の一致に思わず吹き出した。
「ぷっ、あはははは!そりゃそうなるって!体張りすぎでしょ!」
「ま、まぶたの下に練りからしを塗るなんて……
って、あら?映像が止まってしまいました」
「ぬっ、また宣伝か」
キョトンと首をかしげたエリカ。つづいて腕を組んだキョウの呻きに、カスミの大笑いも静まる。
『ポケパラ勝負に自信がない……最近、負けが込んで悩んでいる……そんなアナタ!』
フルディスプレイの画面ごしに自分たちを指さす、髪の両サイドを反り立たせ、赤いサングラスを掛けた男。その鋭いルックスに違わない端正なナレーションに、スキップボタンを探そうと、コタツに身を乗り出したキョウまでもが、四つん這いでcmに見入った。 - 16主どす24/07/05(金) 16:01:14
『ポケパラ専門店・パシオに是非お越しください!他の追随をゆるさない、充実した品揃え!圧倒的なコストパフォーマンス!
わざや本体のチューンアップもお手の物!
※法律に抵触しない範囲で改造しております(テロップ)
店員には全て、ポケパラ勝負を極めたプロを採用!お客様からのお喜びの声も多数いただいています!
さあ、明日のポケパラマスターはキミだ!お電話でのお問い合わせは――』
「…………」
大きなラックに展示された無数のフィギュア。手際よく分解され、基盤のあちこちにネジを入れられるポケモンの身体。SNSのコメントを模した大量のふきだし。
30秒ほどのcmが明けると、モニターには芸人の姿が戻った。
「…………」
気まずい沈黙に包まれたリビング。
「……やっぱりさ……皆も戦いた」
「見て見て。動画に戻ったよ!あっはは!次は足ツボ我慢だって!」
持ち主の言葉を遮りながら、再びモニターに腹を抱えはじめたカスミ。
「うふふ。原○さんの悶え方が素晴らしいですわね」
「ファファファ!両名の強靭さ、齢50とは思えんな!」
エリカとキョウも、何事もなかったかのように視聴を再開した。
「……」
だが。眉をひそめた持ち主は、押し黙ったまま立ち上がると、肩掛けしていたキャリーバッグを3体の背後にソッと置いた。 - 17二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 16:08:26
このレスは削除されています
- 18主どす24/07/05(金) 16:12:51
――先述のとおり、ポケパラの用途は主に愛玩であった。純粋にフィギュアや玩具として遊ぶのはもちろん、寂しい時の話し相手や、入院や介護のお守り。家事育児のささやかな手伝い……など。
しかし、ちょうど1年ほど前。とあるインフルエンサーによる投稿動画が、世界中で爆発的な話題となった。
『インテレオン、ねらいうって!!』
『やりますねジムチャレンジャー!カイリキー、クロスチョップ!』
自力で動くというポケパラの特性を活かし、ゲーム本編での勝負を再現させた映像作品。
その高いクオリティや発想の妙は、1億回以上の再生数とともに、ポケパラの売り上げにも絶大な貢献をもたらした。
持ち主も、その動画シリーズの虜となりポケパラを集めだした1人である。むろん、隣どうしに住んでいる同じサークルの後輩ちゃんも同じく。
「悩み事か?」
小さな姿からでもハッキリと聞きとれるバリトンボイス。足下から持ち主を見上げるサカキが、彼女の意識を我に返した。
「う、ううん。大した事じゃ」
「私に隠し事など通用せんぞ。素直に吐き出さなければ心身に毒だ」
ドッシリと後ろ手を組んだマフィア調の物腰と、自分を案ずる気持ちとが混ざった口調とのギャップに、思わずクスリと微笑んだ持ち主。
「……ねえ、サカキさんは……みんなは幸せ?」
いつにもなく沈痛な持ち主のトーン。紫のレインコートを翻したサカキは、相変わらずカッチャカッチャと腹筋を続ける背後の2体を「シッ」と制した。
「……あたしが集めだしたのは、単純にカッコいいなって思ったからで……。後輩ちゃんっぽく言うなら、癖に刺さったからかな」
持ち主がポケパラを愛 ではじめたのは、決して『勝負』をさせる――傷つけ合わせるためではない。これまた後輩ちゃんと同じだ。
しかし、世間までもが同じとは限らない。 - 19主どす24/07/05(金) 16:23:34
あの動画シリーズ――『ポケパラを戦わせてみた!』は、いわば劇薬。行きすぎた加熱は、並々ならぬ薬効と引きかえに深刻な副作用を招くものだ。
まず1つ目の作用。
あの動画シリーズがバズりにバズった結果、更なるブームを起こし、ポケパラが売れに売れまくっている事。これは上でも挙げたとおり。
そして、2つ目の作用。
動画のヒットと経済効果に目をつけたポケモンの公式が、フィギュアどうしのバトルを『ポケパラ勝負』と銘打ち、新たなコンテンツとして認め、正式なルールを定めた事。たった1本の動画シリーズが、版権に厳しいと噂されるポケモン公式さえも動かしたのだ。
と、ここまでは「薬効」と呼んでも差しつかえないだろう。問題――すなわち「深刻な副作用」は3つ目である。
3つ目の作用とは。
世間が求めるポケパラへの用途が、愛玩から『勝負』へと一気に偏ってしまった事だ。
ポケモンを分解・改造する個人や企業が後をたたず、相手の所持するトレーナーや手持ち、果ては相手自身を再起不能にするため、
わざの殺傷力を、法に触れるほど上げたポケモンまで横行している。
しかも、派手なギミックを持つポケモンや、人気のキャラクターたちが窃盗される事件まで相つぐ始末。
新進気鋭の実業家・ライヤーにより、大きなポケパラ専門店『パシオ』がオープンしたのも、動画がバズり『ポケパラ勝負』が誕生したのと同時期であった。 - 20主どす24/07/05(金) 18:59:45
「みんなも、誰かと戦いたい?」
「……何故そんな事を聞く?」
眉間をよせ、持ち主からの質問へ憮然と問い返すサカキ。
「あたしも、ポケパラ勝負に強くなったら……あそこの皆だって言うこと聞くかも……」
「結論を急がない方がいい。それでは、あの少年と…… ほら、最新作のDLCに居たろう。玉ねぎのような頭髪をした……」
「スグリ!」
「あの髪の毛のモチーフは桃だったような?」
「そうそう。スグリ。彼と同じ発想に陥るぞ」
ベッドからサカキに飛ばされた、カスミとエリカの助け舟。
「強さを極めたはずの彼が、お前には楽しそうに見えたか?」
持ち主に向き直り、表情を引きしめ直したサカキ。
「こうやって、みんなとダべってる方が楽しい」
弱々しく。しかしハッキリとかむりを振って答えた持ち主。
「そうだろう。ならば問題ない。ゲームも『勝負』も、所詮は娯楽。己が楽しいか否かだ。周りの目など気にするな。人の趣味にとやかく言う愚か者など、いっそ自分の方から追い出してやれば良かったものを」
「サ、サカキさんの言い方は、少し乱暴だとは思うが……。確かに持ち主は優しすぎる。サカキさんぐらい……とは行けないだろうが、もう少しだけ堂々としていた方がいいかも知れないな!
キミにはもう1人、掛け替えのない理解者が側にいるじゃないか!」
「……後輩ちゃん」 - 21主どす24/07/05(金) 19:06:50
「そうだとも!」
「ザッツライト、タケシもナイスな事セイ!!」
尻もちで上体を立てたタケシとマチスが、持ち主の呟きに力強くサムズアップした。
「ネガティブシンキングはナンセンス!
たとえサウザント。いや、ミリオンのエネミーに囲まれたとしても!オンリーワンのソウルメイトさえ一緒にいれば、どんなサファリングだってノープロブレム!
ミーにとっての、でんきポケモンみたいにネ!」
「うん……そうだね……!」
含蓄あるマチスからの激励に、持ち主の面持ちが徐々に明るさを取り戻していく。
ポケパラ勝負の波。それは、持ち主の周りでも例外ではなかった。 - 22主どす24/07/05(金) 19:29:05
持ち主が所属する『ゲーム同好会』。彼女が大学に入った当初こそ、20名近くの部員がいた。
各々がお菓子や酒を持ちより、
新旧の名作駄 作をプレイしては、バカ笑いしながら盛り上がった毎日。推しキャラへの愛や、執筆中の二次創作について気ままに語り合う、アットホームな場所だった。
しかし、『勝負』が流行しはじめるや、あれほど和やかに過ごしていたはずの部員たちは、強さを磨くのに必死となった。
笑顔が絶えなかった『ゲーム同好会』の部室は、
ハンダの焦げる臭いと、部品が擦れる乾いた音。そして、フィギュアへの指示ばかりが飛びかう、無味乾燥な世界と化してしまった。
さらに。そんなシビアな雰囲気に嫌気を募らせたメンバーも、持ち主を残してつぎつぎと退部してしまったのである。
今のサークルに残っている部員は、『勝負』の奴隷となった者だらけ。
ユルさや温かさを提供してくれていた上級生は、誰1人残っていない。こんな形で最年長になろうとは、考えてもいなかった。
勝ち負けじゃない。純粋にポケモンシリーズを、ポケパラを好きでいたい。もはや、そんな自分に味方する者などサークルには居なかった。
……ただ1人を除いては。 - 23主どす24/07/05(金) 19:49:15
『先輩が合ってますよ!おかしいのはコイツらっす!推しを平気で傷つけたり、アゴでこき使うなんて何様っすか!!人の血あるんすか?ねえ!ねえ!!』
死んだ魚のような目をした同輩や、彼らの威圧的な態度に縮こまる新入生の中で、自分の『好き』を熱く語り、ただ1人サークルの雰囲気に異を唱えた子。
『自分、降りてきたかもっす!』
持ち主の提案で(他の部員は渋々と)開いた、部室での新歓パーティの日。
相手が逆らえないのをいい事に、所持するポケパラや新入生たちを召使いのように扱う部員たちに激怒した後輩。
そんな彼女に手を引かれて、部室を2人で飛び出した日。
『性の癖について一晩じゅう語り合えるような、楽園みてぇなサークルを作りましょう!先輩と2人だけで!
たまたま同じアパートの隣どうしとか、マジで神のお告げっすよ!
あんなとこに居たら、自分らまでダメになっちゃいますから!』
そっくり返って気を吐く後輩と、彼女からの提案に涙ぐんだ持ち主は、
彼女の最推しであり創作活動の相棒――シキミと、
なけなしのバイト代で買った初めてのポケパラ――サカキを互いの肩に乗せたまま、キャンパスの片隅で『新生ゲーム同好会』結成記念のハグをした。 - 24主どす24/07/05(金) 19:51:21
「……気晴らしに、後輩ちゃんの様子みてくる!」
一瞬の迷いは晴れた。
あんなに優しい後輩ちゃんを悲しませたくない。
それに、カツラやナツメへのプレゼントもまだだ。
行ってきます代わりに微笑んだ持ち主は、
バイト帰りの着の身着のまま、雑貨屋の袋のみをぶら下げて、玄関の外まで勢いよく駆けぬけた。
ガチャリと施錠する音に向かって、いっせいに片手を振る6体のジムリーダー。
後輩ちゃんのためにも『勝負』になんか、手を染めない!
高まる気持ちのせいだろうか。
それとも。
もうすぐ当たる事になる、嫌な予感を無意識に感じてか。
無性に居ても立ってもいられなくなった持ち主は、後輩の小柄な笑顔を想像しながら、
隣室の玄関をけたたましく叩き鳴らした。 - 25主どす24/07/05(金) 20:55:48
- 26二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:07:05
まじで!!?丁寧な文体が似てるなって思ったらまじだった!!!
- 27二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 12:16:46
ほ 期待
- 28二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 20:00:22
保守
- 29二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:18:30
ほ