- 1124/07/05(金) 23:15:15
ある程度平和なゆるふわC.E.で婚約者同士になったアスラン(14)とカガリ(14)が
パトリックとレノア、ウズミに見守られながら親交を深めるスレその2です。
前スレ
ここだけパトリックとカガリが|あにまん掲示板本編に比べて大分平和なC.E.で義父娘として仲良くしてる世界線・平和なC.E.なのでレノアさんもウズミ様も生きてる・パトリックはカガリの影響で大分ナチュラルへの嫌悪感は消えてる・なんだかんだでウズミ様…bbs.animanch.com - 2124/07/05(金) 23:16:47
埋め立て荒らし?なのかはわかりませんがスレラストを一気に埋められてしまったので
取り急ぎ立てました。
テンプレートはもうちょっと待ってください - 3二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 23:22:59
たて乙です
続きをとても楽しみにしていた故に埋め立て荒らし?なるものに腹が立ちましたが、今晩続きを見られることの方に圧倒的感謝を… - 4二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 23:37:56
ありがとうございます
10レスまでは進めたほうがいいんでしたっけ - 5124/07/05(金) 23:39:38
テンプレート落ちるまでに用意するので無理に埋めなくて大丈夫です!ちょっと待ってて下さい!
- 6二次元好きの匿名さん24/07/05(金) 23:43:44
たておつです
待機! - 7124/07/06(土) 00:00:48
【前スレの簡単なあらすじ】
なんだかアスランの様子が変
【登場人物①】
カガリちゃん(14)
[カガリ・ユラ・アスハ]
ある程度平和なゆるふわC.E.でもまさかのゲリラに参加して戦場の天使をやっていたオーブ獅子の娘。
アスランを身体を張って助けた事で、アスランだけでなくザラ一家全員に可愛がられる事となる。
この世界ではトーヤが代表後継者に選ばれたため、単純にアスハ家の次期当主としての立場となっている。
アスラン君(14)
[アスラン・ザラ]
ゆるふわC.E.なので軍や争いとは全く無縁の、マイクロユニットをいじる事が好きなプラント議員の息子。
戦場で命を助けられたカガリに助けられたことで、自分でも知らなかった驚くべき行動力を見せる事になる。
軍や争いとは全く無縁な為白くてひょろいが、鍛える事で最終的に
50+dice1d50=38…88まで強くなることがダイス神によって確約されている。(100で原作アスランレベル)
- 8二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 00:01:20
たておつです!
変な人が来たみたいだけど続きを書いて下さることに感謝
14歳の推定初恋に全力なアスランの行動が楽しみ - 9二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 00:03:21
- 10124/07/06(土) 00:14:21
【登場人物②】
パトリックパパ
[パトリック・ザラ]
ふとした時に見せる表情がアスランにそっくりなザラ家の大黒柱。
ゆるふわC.E.なので元々原作程ナチュラルに対しての憎悪はなく、レノアも生存してるため大分丸いが、ナチュラルのカガリに愛息子の命を救われた事でほぼ完全にナチュラルに対する偏見はなくなっている。
コワモテ顔だが、妙にカガリに懐かれている。
レノアママ
[レノア・ザラ]
ゆるふわC.E.なので血のバレンタインもなく生存して相変わらずユニウスセブンで農業研究を行っている。
カガリに対しては高慢気味な口調と戦場近くに自ら望んで立っていたことでドン引きしていたが、愛息子の命を救われたことでお揃いのエプロンで料理する等すっかり未来の義娘として可愛がっている。
得意料理はロールキャベツ。
ウズミパパ
[ウズミ・ナラ・アスハ]
オーブ連合首長国代表であり、カガリが大大大好きなお父様。
カガリにはいろいろ我慢させて申し訳ないと思いつつ、カガリ自身はゲリラ参加を許してくれたり甘やかされてるなぁと思っている。
原作と違い戦争も起こらず、カガリの側には幼い頃から同じ年のトーヤがいて、カガリが暴走しがちな時は諫め、互いに良い意味で影響を与えているため心境的には大分楽と思われる。 - 11二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 00:14:58
最後の方何が起きたのかと思いました
次スレ見つけてホッとしました - 12二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 00:18:19
このレスは削除されています
- 13124/07/06(土) 00:20:50
とりあえずテンプレ終わり。
ホントは明日自分でスレ画も人物画も用意する予定だったのに…!
やっぱ終わり際に無理するもんじゃないですね。
用意予定だった画像は完成したらこのスレに投げて、次スレに続くようなら次スレから使用します。
今日投下予定分、まとめて投げたいので重複しますがこっちにも改めて投げます。
前スレでも言いましたがはっきり言ってこのスレのアスランが受け入れられるのか全く自信が無いんですが自分の萌えに素直になって開き直ります。……このスレのアスランは14歳(合言葉) - 14124/07/06(土) 00:21:13
それから暫くの事は、カガリにはほとんど記憶が残ってない。
ウズミに言われるままに席に座り、運ばれてきた味のわからない食事を食べ、久しぶりだなと珍しく少し頬が緩んでいるパトリックに声を掛けられちょっとした雑談をした記憶は薄っすらとは残っているが、アスランの衝撃でほぼ全てが吹き飛んでいた。
カガリの意識がはっきりと戻ったのは、食後のドリンクが飲み終わりウズミとパトリックから
「当人同士で積もる話もあるだろう。……久しぶりの再会だし、な」
と声を掛けられ、アスランと二人で連れ立ってカサブランカの花が咲き誇る中庭に到着したタイミングだった。
「…………ガリ、カガリ…大丈夫か?」
「!!アスラン!?」
「さっきから心あらずの様だけど……」
心配げに声を掛けてくるアスランに、カガリは思わず言い募る。
「いやだって!お見合いとは聞いてたけど、まさか相手がお前だとは思わなかったんだ!ビックリもするだろ!」
「俺は釣書と写真を送っていたと思っていたんだが」
「うっ!……その、元々最初からこの話は断るつもりで……写真も釣書も見てなくて……」
確かにアスランのラストネームは「ザラ」なのは知ってたのに、全然結びつきもしなかったし…
ごにょごにょと言い訳を重ねるカガリの言葉に、アスランはなるほどなと息を付く。
「だから午前中に街中で再会した時、カガリから今日の話が全く出なかったのか」
「その、ごめん……」
しょんぼりとするカガリを見てアスランも苦笑する。
「カガリがこの話を断ろうとしたのは俺が嫌だから訳じゃないって事でいいんだよな?」
「うん!」
アスランの問いを食い気味に肯定するカガリを見て、ずっと不安げだったアスランの表情も少し明るくなる。
その様子を見て、カガリは気になってた事を確認しようと口を開いた。
「今日さ、お前とパトリックさんがここに到着するまでずーーーーっとお前の事考えたんだ。
会ってる時は気づかなかったけど、なんか今日のお前、様子変だったなーって。」
何か言いたげにしてたのはこのお見合いの事だったんだなーってすっきりした顔でカガリは笑った。 - 15124/07/06(土) 00:34:05
そんなホッとした様なカガリの様子を見たアスランは口元を引き締め、意を決した様に声を出す。
「カガリはさ、俺たちの再会はハウメア神のお導きだって言っただろ?」
「あぁ!凄いよなぁ。単に再会どころかこうしてお見合いまでセッティングされてるんだもんな」
「違う」
「え……?」
「このお見合いは、偶然でセッティングされたものなんかじゃない」
アスランはカガリの見通す様な金色の瞳をまっすぐに見つめながら、経緯を全部説明するしようと口を開く。
避難施設から別れた後、ずっとカガリの事が忘れられなかったこと。
カガリの事をずっと探してた事。
カガリを見つけて、居てもたっても居られずに利用できるものは利用して、
シーゲルに頼んでこのお見合いをセッティングして貰えるように頼んだこと。
「全部俺が望んで、無理矢理取り付けた。偶然なんかじゃない。」
最初は予想以上にとんとん拍子で進んでいく話に、これでまたカガリに会えると興奮していた。
けれど、向こうから了承の返答が返ってきた瞬間、アスランは浮かされていた熱情に冷たい水を掛けられたかの様に一気に冷静になってしまった。
自分の気持ちばかりで、彼女の気持ちなど全く考えてなかったのだと。
プラントとオーブ、二国を巻き込んだ今回の話は、確かに両国にとってもメリットがある話だ。
だからこそ、カガリには無理にでも出席する義務が生じてしまう。
それは彼女にとって、そして自分にとって『良い未来』へ繋がる行動なのだろうか?
その日から今日まで、少しずつ少しずつ罪悪感によってすっかり真っ黒になってしまった思いを、罪を告解するかのようにアスランはカガリに吐き出した。
アスランの告白を全て聞いたカガリは、顔を真っ赤に染め、目を丸くして言葉を返す。
「お前、なんて言うか私の事、好きすぎないか……?」
いや思い上がりかも知れないけど……自分たちが別れたのって3か月前だよな?そんな短期間でここまで色々整えるとか凄いな?
驚きはしても嫌悪感は全く見せないカガリに、アスランは言葉を重ねる。
「カガリは気持ち悪くないのか?勝手に素性を探られて、無理矢理この場に連れ出すような事をするような人間」
アスランの問いに答えようとカガリが口を切ろうとした瞬間。
「見つけたよ、カガリ」
カガリは突然の闖入者に声を掛けられるのだった。 - 16124/07/06(土) 00:35:57
と言う訳でこの話もやっと終盤です。
エピローグ含めたらもうちょっと続くんですが。
とりあえずずその辺りまで含めて土日で決着させるのが目標です。
と言う訳で予定外の諸々でこんな時間になってしまいました。
おやすみなさいませ。 - 17二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 00:38:47
カガリはどう思う、彼女の気持ちは?と冷静になれたアスラン…えらい…。カガリちゃんの「好きすぎないか?」にニヤニヤしてしまう
- 18二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 00:42:08
スレ主さんおやすみなさい
恋に浮かれてもそれを省みてカガリの事を気に掛けられるアスランはいいやつだ
平和な世界でもアスランは考え込んでしまいがちっぽいけどカガリがそれを吹き飛ばしてくれるのかな - 19二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 08:42:53
闖入者が誰なのかドキドキしますね…
- 20二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 18:33:49
闖入者・・・
なんか不穏だな - 21124/07/06(土) 18:38:07
正直展開に無茶がありますがご都合展開と言う事で。
続きです。
「ユウナ!?なんでここにいるんだよ!」
「そりゃあ君がプラントののコーディネイターなんかと縁談を行うって聞いたからね」
突然の闖入者――ユウナ・ロマ・セイランは薄笑いを浮かべ、カガリにゆっくりと近づいてくる。
「お父様から今日はこのレストランは貸し切りだって聴いてたのに……無理矢理押し入ってくるなんて、そんな手段取る様な男だったか?」
「……カガリ、彼は?」
ユウナを睨み付けて呟くカガリの様子から、目の前の男が彼女にとって警戒が必要な種別の男だと判断しそっとアスランはそっと自分の身体を少女の前に差し込む。
「ユウナ、ユウナ・ロマ・セイラン。オーブの下級氏族の一員だ」
アスランがカガリについて調べた際に、オーブの氏族制度についても調査している。
セイラン家についても記載を見た記憶はあるが、重要ではないと判断し殆ど記憶には残さなかった。
「うん、君はやっぱり普段から女性らしい服装を身に付けるべきだ」
あとは髪を伸ばしたら完璧だね。そう言いながらニヤニヤと口元を軽薄に歪ませる男は一歩、また一歩と二人への距離を減らしていく。
ユウナの言葉を聞いたカガリの眼力は一層強くなり、アスランはその物言いに対して怒りを抑えこもうと拳を強く握る。
「全く、ウズミ・ナラ・アスハも何を考えているんだか…汚れた存在とカガリの婚姻を考えるなんてね」
「いい加減にしろ!」
自分の事を言われても我慢を続けて来たカガリも、アスランを、その両親を馬鹿にする様な言葉を聞いた瞬間に抑え続けてきたリミッターが外れてしまう。
そんなカガリの様子を見て、ユウナは更に嘲笑を深めた。
「そんなに激高してどうしたんだい?カガリ。――もしかして、その少年に何か吹き込まれたのかな?」
ユウナがカガリとの距離を詰め、間に居るアスランの存在を無視してカガリの金糸に触れようとする。
「全く、手間かけさせて悪い娘だ」
「やめろ!」
アスランがユウナの手を止めようとするも、体格差もあり簡単にあしらわれてしまう。
「こんなコーディネイターなんかとではなく、僕と婚約を結ぶんだカガリ……!」
「嫌だ!お前となんて婚約は絶対しない!私の……」
ユウナのカガリの感情を無視して押し付けてくる言葉を断ち切るかのように、カガリは叫ぶ。
「私の婚約者はこのアスラン・ザラだ!」 - 22二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 18:45:55
アスラン3ヶ月くらい前までは平和な世界で過ごしてた完全インドア派ひょろひょろ少年だから仮にも成人男性なユウナには勝てないわな
今回の経験の悔しさもあって原作の9割くらいの強さまで自分を鍛えたのかな - 23二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 19:01:57
カガリを守ろうとするアスラン〜!アスランのために怒るカガリ〜!ゲリラでの出会いから鍛えようとするだろうけど、こんな事があったらガンガンに鍛えるよね、アスラン
- 24二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 19:15:08
ウズミ了承のお見合いと聞いてユウナ焦ったんだろうがやってることが悪手すぎたね
頭悪すぎてもう…
けれど体格で太刀打ちできなかったアスランは悔しかっただろうなあ - 25124/07/06(土) 19:21:51
「……ッ、冗談はいい加減にした方が良いよ、カガリ……?」
「冗談なんかじゃない、今日アスランと会ってこの縁談を受ける事を決めた!」
思い通りにならない目の前の少女へのいら立ちを隠そうともしなくなった男は吐き捨てる様に言う。
「コーディネイターとナチュラルの軋轢はまだまだ大きいんだ、わざわざその苦労をカガリが背負い込む必要があるのかい!?」
「そんなのわからない、わかんないけど!アスランとなら乗り越えられるって思ってる!」
毅然と返すカガリの言葉を、アスランは引き継いで静かにユウナへと語る。
「これから二人が立ち向かわないといけない難題は山の様にあると思います。その苦しさを一緒に分かち合いたい」
二人のまっすぐな言葉にユウナの我慢も限界に来たのか、いよいよ手を上へ振り上げた瞬間、アスランとカガリの前に大きな影が表れその手を掴む。
「そこまでだ、ユウナ・ロマ・セイラン……」
「お前はオーブ国防軍のレドニル・キサカ……!何故ここに!?こんな事をしてただで済むと思ってるのか!?」
「それはこちらのセリフだ。国交を兼ねて貸切状態だったこの場所に勝手に侵入する事が許されるとでも?」
言い返せなくなったユウナはどうにか掴まれた手を必死に振りほどき、カガリに向って叫ぶ。
「―――っ、これから精々苦労するが良いさ、カガリ!」
捨て台詞を吐いてそのまま逃走するユウナの後姿を、カガリとアスラン、キサカは眺めるのだった。
「大丈夫だったか、二人とも」
「ありがとキサカ!助かった~」
ユウナに対し、必死に断乎とした態度で振舞ってはいたがやはり内心はとても怖かったのだろう。
カガリは深く息を吐き出すと、へにゃりと情けない顔を見せる。
アスランも息をつくと同時に眉を落とした。
そんなアスランに向って、カガリは微笑んで声を掛ける。
「アスランも助けてくれてありがとな!巻き込んじゃってごめんな」
「いや、俺は何も……俺こそ、ごめん」
「ん?ごめんって何が?」
急に誤って来たアスランに対して、理由がわからずカガリは首を傾げた。
そんなカガリに対して、アスランは言う。
「カガリに、俺と婚約するって嘘をつかせてしまったこと」 - 26二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 19:54:34
俺たちのキサカ一佐だ!『貸切レストラン、不法侵入、立件』で検索したのがバレたのかと思いました
- 27二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 19:55:43
かわいい少年少女すぎて本当応援したい…
- 28124/07/06(土) 22:16:56
本日ラストです。
「嘘……?」
「カガリに対してなりふり構わず婚約を迫るあの男には、俺を婚約者に決めた事にしておけば可能性が無いのだから諦めろと明確に言い放つことが出来る。俺たちがあの時に取れた最善手だと思う」
「……は?」
「もちろん調べたらすぐにばれてしまうだろうけど、あの場で時間を稼ぐには丁度良い―――想定外なのはあの男がこっちが思っている以上に沸点が低かったという所だが……」
「……うん?」
淡々と言葉をこぼすアスランは、カガリが口を挟もうとしても自分の考えに没頭して気づく様子もない
「俺も父上には今回の件を伝えて謝っておくから、申し訳ないがカガリもウズミさんに伝えて貰えないか?」
「伝える?伝えるって、何を……?」
「それはもちろん、今回の縁談を断るって話だけど……」
既にアスランの中では、カガリが今回の話を断る事が確定事項となっているのか。
――――――こちらの話を聞こうと、気持ちを全く知ろうともしない癖に。
「ふざけるな!」
「いッ……!な、何をするんだ突然」
ていっ!と言う掛け声とともに、カガリはアスランの皺の寄った眉間にチョップを食らわせる。
「アスランは、私がこの話を断ると思ってるのか?」
「断らない理由がないだろ?俺とあの男、似た様なものだし……」
「そうだな。私の話も聞かずに私の気持ちを決めつけてる所は一緒かも知れないなぁ?」
「………ッ」
カガリの言葉にショックを受けた顔をする位なら、ちゃんとこちらの話を聞けばいいのに。
一つため息をついて、カガリはアスランに問いかけた。 - 29124/07/06(土) 22:17:18
「アスランは、今のドレス姿はどう思う?」
「……え?そうだな、俺は衣服に関しては良くわからないけどその色はカガリに良く似合ってると思う」
「初めて会った時の服装はどう思った?」
「あの赤いTシャツ姿?施設内で作業するの時に動きやすそうで活発なカガリにはピッタリだと」
「――じゃあ、アスランは私は普段どっちを着るべきだと思う?」
「突然そんな事言われても……フォーマルな場所ならドレスを着るべきだと思うし、動き回る必要があるならカジュアルな恰好の方が良いと思うけど……選ばないといけないのかそれ?」
「……髪は、長く伸ばした方が良いと思うか?」
「今の長さも、伸ばしても、カガリには似合うと思う」
突然の少女から行われた質問の雨に答えながら訳も分からず首を傾げるアスランを横目にカガリは笑って告げる。
「アスランとユウナは、全然違うよ」 - 30二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:24:09
このレスは削除されています
- 31124/07/06(土) 22:35:15
この回のやり取りがどうしても書きたくてユウナを出しました。ユウナの出番は今日で最後です。エピローグでどうなったかだけは簡単に触れますが。
と言う訳でアスカガ+ザラ夫妻+ウズミパパほのぼのスレの筈がちょっと自分の想定以上に嫌な感じの話になってしまいすみませんでした。
今後書く話は全部明るい話ばかりになる…筈です。これは有言実行します、多分。
明日には終わるかな。おまけまで行けるかはわかりませんが。
と言う訳でおやすみなさいませ。 - 32二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 22:44:41
今日もありがとうございます
カガリの「ていっ!」とチョップかますのが可愛かった
アスランがハツカネズミになるとカガリが上手に引っ張り上げてくれる
アスランの脳をさらに焼くカガリ良いカップルです - 33二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:33:50
カガリの質問の雨に対する答え全てに、ありのままのカガリが好きだって気持ちが溢れてるアスラン…!
ユウナや他のカガリ争奪戦の下級氏族たちは、カガリの婚約者になった際には避けて通れない話ですもんねえ - 34124/07/07(日) 09:32:19
今日も夜予定です。
少しでも早く来られるよう頑張ります…… - 35二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 09:46:40
続きが楽しみです!
外堀を埋めてカガリを囲い込んだ事に気づいてからずっとアスランはハツカネズミしてたんだろうな
基本的に謀略とか嫌いそうな性格のカガリがその辺り気にせずに婚約を快諾してる事ににやけてしまう - 36124/07/07(日) 19:22:34
続きです。
「俺とユウナが違う?」
その言葉を一瞬理解出来ず聞き返してしまうアスランにちゃんと届くよう、カガリは言葉を続ける。
「ずーーーっと頭ハツカネズミになって、いっぱいいっぱいだったんだろ?私が嫌だったんじゃないか、迷惑だったんじゃないかってずっと考えてたから」
「それは……うん。否定できない」
何となく想像つくよと言うカガリの言葉に、アスランは思わず気まずげな表情になってしまう。
「アイツは……ユウナはさ、私の気持ちなんてお構いなしで。自分の好みだけを押し付けて来るんだ」
とにかく女らしい服を着ろ、髪を伸ばせ。
自分の好みのままに、思い通りの女になれと。
―――カガリはカガリだ。
勿論オーブ代表の娘として、場所に合わせた装いを選ばなきゃいけない時もある。
それでも、そうじゃないなら好きな服を、好きな髪型を選ぶ権利はカガリにだってあるはずだ。
今までの出来事を思い出してうつむき影を見せるカガリを慰めたくて、アスランは手を伸ばしかけて、やっぱりやめる。
「だから、小さい頃は大好きだったエメラルドグリーンのドレスが、気が付いたらちょっと嫌いになってた」
「カガリ……」
「でも、さっきアスランが言ってくれた言葉のお陰で、そんな気持ちも吹き飛んだ」
大好きなエメラルドグリーンのドレスを、また好きになれた気がする。
顔をあげて、咲き誇るカサブランカを見つめながら言葉を吐いたカガリの横顔には、もう影はない。
「確かに、最初に言った通り私はこのお見合いを断るつもりだった」
「うん」
「ユウナのこともあって、婚約ってものに良い感情なかったし」
「…………うん」
「それに、私はお前と同じ気持ちを返せるかどうかもわからない」
「突然の話だったし、会った時間も短いんだから当然だと思う」
ぽつりぽつりと溢すカガリの本音を、隣でアスランは一言一句聞き逃さない様にじっと耳を傾ける。
もう二度と、自分の思い込みでカガリの気持ちを決めつけたりしない様に。 - 37二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 19:26:39
このレスは削除されています
- 38124/07/07(日) 19:32:39
「アスランがさ、さっきユウナに言った言葉は嘘じゃない…よな?」
「もちろんだ」
はっきりと頷くアスランを見て、カガリも覚悟を決める。
「私も、あの時の言葉は多分、無意識に出た本音なんだと思う」
カガリはアスランに真っ直ぐ向き合うと、まっすぐにアスランの翡翠色の瞳を見つめて言う。
「アスランと再会して、色々考えて、何が一番嫌なのかずっと考えて……この話を断る事でアスランと縁が切れるのが一番嫌だ。はっきりとそう思ったんだ」
「カガリ、それって……」
惚けた顔で、アスランはカガリに真意を問いかける。
「だからだ、その、……これから婚約者としてよろしくな!アスラン!」
その時のカガリの穏やかな笑顔は、今まで見たどんな表情よりも綺麗だとアスランは思った。
「……ぁ」
カガリがアスランへ言葉を告げた瞬間、カガリの体はアスランの腕の中に閉じ込められてしまう。
「カガリ、カガリ……!ありがとう!!!」
「お、お前……っと、突然だなぁっ!」
自分を好きだと言う相手からの抱擁が気恥ずかしくて。
がガリは顔を真っ赤に染めながらアスランに声を掛ける。
それでもカガリは腕の中で抵抗しようとはしなかった。
それに気を良くしたアスランは、カガリを抱きしめる力を更に強くする。
「…ごめん」
「ご、ごめんって、お前ぇ……」
「いや、だから、……ごめん」
- 39124/07/07(日) 19:44:08
キサカ『自分は二人の邪魔をしない様に一歩下がって見守っていた……』
と、言う訳で長編本編最後です。
長々とお付き合いありがとうございました。
残りは補足のエピローグとおまけです。
「お前たち、何やってるんだ」
「アスラン、お前は……」
アスランとカガリがそんな甘酸っぱいやり取りをしてる間に。2人の様子を見に来たパトリックが想定外の闖入者の対応で関係各所へ諸々の連絡を行っていたウズミを共に連れ立って中庭へ到着する。
「父上、カガリに婚約の了承を貰いました」
「そうか……」
カガリを腕の中に収めたまま、念願を成就させてしまった報告をする息子に痛む頭を感じるパトリック達親子とは対照的に。
「カガリも、それで良いんだな?」
一度正式に書面で了承してしまえ、破棄するのは簡単ではないぞ?
そう問いかけるウズミに、頬を薔薇色に染めながらカガリは答える。
「うん。私が自分で考えて決めたんだ。アスランと未来が見たいって」
鮮やかに笑う娘を、ウズミは穏やかな笑みを浮かべ見つめる。
新たに縁を結んだ一組の若い婚約者達を、庭に咲き誇るカサブランカが風に揺れながら優しく見守っていた。 - 40二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 20:19:51
良かったねえ、本当良かったねえ
- 41二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 20:20:58
ごめんハグのまま、お父さんたちに報告しちゃうアスラン、絶対離さないという強い意思を感じてにっこりしたしまう。キサカさん、ありがとう
- 42124/07/07(日) 20:38:04
【整合性の関係で没にしたけど気に入ってるネタ】
※本来のおまけとは別です。本編とは繋がりはありませんが、会話の内容はこんな感じだったと思います。
ネタ自体は今後再利用できそうな場合は再利用する可能性があります。
アスランとカガリが中庭に出て行った後の話。
「……最初はどうな事かと思ったが、二人とも随分と気を許し合っている様だ」
「娘が、そちらのアスラン君を助けたと聞き及んでおります」
「その節は本当に世話になったと心から感謝をしている…そのお陰で、この様な席を用意して頂く事になったのだが…」
息子の行動力、決断力、実行力と、その結実の結果がこの席だと思うと未だにパトリックは頭を抱えてしまう。国まで巻き込んで何をやっているのだと。
そしてその結果が政としては悪いものではないから余計に性質が悪い。
ウズミは、そんな頭を抱えるパトリックを見て言葉を返す。
「……この話は、正直な所こちらとしても渡りに船でしたからな。あの二人の様子を見れば、猶更」
ウズミの視線を追いかける様に窓の外を見ると先ほど出て言った二人が仲睦まじく会話し、笑いあってる姿が見えた。
「さて、小難しい話はここまでに」
そう言って、ウズミはレストランスタッフに頼んでいた物を持って来てもらう。
「これは……」
二人のテーブルに届けられた物…酒瓶を、パトリックはしげしげと眺めている。
「純米大吟醸酒『篝火』。私のお気に入りの一本でしてね」
娘が生まれた年にウズミと付き合いの長い酒造が生み出した娘の名前を冠するこの酒は、祝い事の度にウズミが飲むお気に入り。
ウズミはパトリックの猪口に注ぐと、自分の分も同様に注ぐ。
「日本酒は初めて飲んだが、……うむ、これはなかなか」
「辛口ながら飲みやすいでしょう?娘が成人した時に、これを共に飲もうと約束を交わしていて」
そう言ってぐっとウズミは飲み干す。
「―――まさかこんなに早く、娘を嫁に出すことになるとは思いもしませんでしたが」
「いや、流石にそれは気が早いのでは?」
まだ二人とも14歳だろうが。パトリックは心の中で思わず突っ込んでしまう。
「ははは、わかってはいるのですがね」
そう言ってウズミは笑うと、もう一杯飲もうと互いの酒器を満たした。
こうして酒により意気投合した二人は、カガリとアスランが戻って来た時にはすっかり出来上がってしまい、子供たちに呆れられるのだった。 - 43二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 20:44:35
甘酸っぱくて良いお話でしたあ
主さまありがとうございます! - 44124/07/07(日) 20:48:02
没理由:この席で酒飲むのは許されるのか…?あとユウナが突撃してくるのに酒なんて飲んでる場合か?
本編終わり次第色々語ろうと思ったんですが、書き終わって燃え尽きて全部消えました。コメントも返信で来てませんが、毎回励みにさせていただいております。
レスで返した「アスランとトーヤ」に関してはエピローグにて触れる予定です。
エピローグ、やっぱり今日は間に合わない気がするので明日投稿できるようがんばります。ただ仕事が明日ヤバそうなんで…無理だったらそれはそれで顔出しに来ます。
おやすみなさいませ。 - 45二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 00:35:28
お父さん二人!厳格な父親同士が酒を酌み交わすのいいですね…。お酒の名前良き…。
のんびり保守しながらお待ちしてるので、スレ主はご無理なさらず!お仕事ファイト! - 46二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 07:40:15
保守
- 47二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 11:48:55
そういえば、ラクス嬢との婚約ってアスランが13歳の頃らしいけど、ここのアスランはカガリと出会ってから婚約破棄&新たな婚約提案をしてそうだ
- 48124/07/08(月) 12:21:07
- 49124/07/08(月) 12:23:47
と言う訳でエピローグ開始です。
【Epilogue】
アスランとカガリが婚約を結んでから数日後。
アスランとパトリックはオーブ首都、オロファトにある行政府内代表執務室へ呼ばれていた。
「アスラン!パトリックさん!」
「カガリ……!」
建物入口にアスランとパトリック親子が到着すると、二人の到着を待っていたカガリに声を掛けられる。
「えっと、昨日ぶりだな……」
「うん、そうだな……」
二人は頬を染めて見つめ合ったまま動かなくなってしまう。
「ほら、約束の時間も迫っているし行くぞ」
そう言ってパトリックは少し呆れながらも二人の背中を軽く叩いて、3人揃って建物の中に入って行った。
「お父様、アスランとパトリックさんが到着しました」
「あぁ、入って貰ってくれ」
許可が出たので代表用執務室の扉を開けると、ウズミとその秘書であるトーヤが待ち構えていた。
「トーヤ!」
ウズミがパトリックと挨拶を行っている横で、カガリはいつもの癖でトーヤに抱き着つく。
トーヤは苦笑しながらそっと少女の肩を掴んで自分の身体から剥がす。
「姉さま、婚約者が出来たんだからその癖は直した方が良いね」
「あ……、そ、そっか…そうだよな」
そんな二人の様子を、眉間に皺を寄せてむっつりと見つめるアスランを横目で見ながら、トーヤは言葉を続ける。
「婚約者がすぐそこに居るしね。アスランさんの気持ちも考えないと」
「うっ、ごめんなアスラン……」
「……気にしてないから大丈夫だ」
トーヤに指摘されしょんぼりとしながら謝るカガリに、ため息を一つついてアスランは返す。
少し悪くなった空気を切り替えるようにウズミが口を開いた。
「さて、そろそろ本題に入ろう」 - 50二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 20:21:41
おお、ありがとうございます!楽しみです!
- 51二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 20:24:18
トーヤくんがあまりにも出来たお人で、この世界線においてカガリの幼馴染で良かったな〜と思ってしまった。ユウナや他の婚約者狙いの人間からすごく庇ってくれたんだろうなぁ…
- 52124/07/08(月) 21:55:05
- 53二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 21:59:37
上手です~! そして可愛い!
文章だけでなく絵まで描けるなんて素晴らしすぎます! - 54124/07/08(月) 22:51:34
- 55二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 23:32:15
かわいい!みんな表情が本人たちらしくて、カガリを見つめてるアスランににっこりしてしまいますね。ありがとうございます!
- 56二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 02:33:16
わ…!スレ主さんもしや別スレでアスカガキララク4人のかわよい絵をスレ画になさってた方…?もし違ってたらごめんなさい!とにかくイラストのちみきゃらがかわ良すぎる〜!!!
- 57二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 08:43:32
素敵なSSとイラストが楽しめるお得なスレ
続きを楽しみにしてます - 58124/07/09(火) 12:13:07
いつもコメントといいねと保守ありがとうございます。レスは夜に……
続きです。
説明回なのでダラダラ長くてすみません。
「先日はこちらの不手際で大変迷惑をかけ、大変申し訳なかった」
真っ先に先日のレストランの一件でウズミが深く頭を下げる。
「こちらは被害はなかったので問題はない。しかし厳重な警備体制を敷かれていただろう中でいったい何が?」
パトリックが頭を上げるように言うと、ウズミは礼を言うと頭を上げ、詳細を説明するため、口を開いた。
「あれはオーブの下級氏族の一員でな……前々からカガリとの縁組を狙い度々申し出が入っていた」
父親の言葉に、カガリは過去を思い出しむぅっと顔を顰めた。
アスランは気遣う様にそんな彼女に視線を向け、見つめる。
「今まではこちらが文句が言えない程度には上手くカガリに接触していたのだが、今回の縁談の話が出ていよいよ焦ったのだろうな。金と、自分が当アスハ家と縁づいた際には取り立てると出世をチラつかせて警備の人間を一部買収していた様だ。―――頭が痛い事にユウナの行動は独断ではなく、現当主ウナトも助力していたのもわかっている」
お陰で警備体制と人員を一から見直ししなければならなくなった訳だが。
ウズミは言葉と共に重く息を吐き出す。
「大事になる前に発覚して良かったと言っていいものかはわからんが…どの組織も中々一枚岩とはいかないものだ」
パトリックもプラント議会を思い出し、眉間に皺を寄せてウズミの言葉に頷く。
「もちろん、全員が全く同じ思想であれば良いと言う訳ではない。各々の信念をぶつけ合うからこそ生まれるものがあり、独裁の抑止力となるのは確かだ。……だが、私欲の為だけに力を行使しようとするらば話は別だ」
ウズミの言葉を補足する様に、傍にいるトーヤが口を開く
「とは言え、今回の一件でセイラン家は他家から白い目で見られ、何か下手に動けば他氏族から今回の件も含めて糾弾されることになる。暫くは大々的に動く事は出来なくなりました。カガリ姉さまの婚約者が正式に決定したことで、近づく事すらも許されない」
セイラン家は、今後は別の手段を選ばざるを得ない状況ですね。
そう言葉を発する、ユウナに心を少しずつ削られ続けてきたカガリをずっと見て来たトーヤは安堵からか笑みを浮かべている。 - 59124/07/09(火) 12:13:36
「オーブとしてはプラントとの国交を結ぶことができ、またウズミの政策としてシーゲルと協力関係を結び推進を行っているナチュラルとコーディネイターの融和政策の後押しになる。またアスハ家としては頭の痛かったカガリを利用し縁を結ぼうとする一部下級氏族に対するけん制にもなる。この婚約がもたらす利は大きい」
「それはプラント側も同じだ」
パトリックがウズミの言葉に頷き同意を示すと、アスランはすっかり黙り込んだカガリに声を掛ける。
「……カガリ?」
「……こうして改めてお父様の話を聞くとさ、アスランとの婚約を都合が良いからって利用したみたいだなって。アスランは本当に良いのか?」
「俺の気持ちはあの時の言葉が全てだよ。―――カガリは嫌になった?」
「なってない、なる訳なんかない!」
「よかった。……それに、どんな理由で結ばれた婚約だとしても一番大事なのは『お互いの気持ち』がどうか、じゃないか?」
「お互いの、気持ち……そっか」
アスランの言葉に、カガリの中に一瞬だけ生まれた迷いは消える。
頬を染めて微笑むカガリを部屋の中の皆が暖かく見守るのだった。 - 60124/07/09(火) 12:16:57
ユウナとセイラン家に関してはもっときっちり刑罰を求める人もいるのかなって思いましたが
原作と違ってオーブに対してまだ何か出来た訳ではないのでこの程度の処罰と言う事で。
これから国の中枢に入り込むどころか恐らくじわじわと力を削られていくのだと思います。
ユウナはまだ若いので反省、改心出来ればワンチャンあるかも…?このシリーズでは今後出る事も書く事もないでしょうが。 - 61124/07/09(火) 12:49:55
アスランとカガリのセリフ、何度も読み返したんですがちょっとしっくりこない、どうしても違和感があるので夜訂正すると思います…
今後はこう言った事ない様に気をつけます - 62124/07/09(火) 20:50:04
後半部分を下記文章脳内で差し替えお願いします…。すみません!
「……こうして改めてお父様の話を聞くとさ、アスランとの婚約を都合が良いからって利用したみたいだなって」
カガリが心の内を吐き出すと、アスランはカガリの琥珀色の瞳をまっすぐ見つめ真剣な顔で言葉を発する。
「―――俺は、例えこの婚約にどんな思惑あってもカガリと婚約出来るのは嬉しい」
「そう言えばお前、私と婚約する為に使えるものは全部使ったって言ってたなぁ……?」
アスランの言葉に、カガリは婚約を決めたあの日のアスランの言葉を思い出し、少し呆れた顔になってしまう。
「それに、どんな理由で結ばれた婚約だとしても一番大事なのは『お互いの気持ち』だと、俺は思いたい」
「お互いの、気持ち……そっか」
あらゆる手を使って縁談の席を用意した癖に、カガリの気持ちずっと考えてくれていて。
気持ちを押し付けてしまったんじゃないかとハツカネズミの様に思考が同じ場所をから回って苦しんでいたアスラン。
これから、お互いの気持ちをぶつけ合って喧嘩する事もきっといっぱいある。
それでも、そんなアスランとなら大丈夫だと、カガリは改めて思う。
「俺の気持ちはあの時の言葉が全てだよ。―――カガリは嫌になった?」
「なってない、なる訳なんかない!」
―――よかった。
そう言って微笑むアスランを見て、カガリの中に一瞬だけ生まれた迷いはすっかり消えていた。
穏やかに笑いあう二人の若い婚約者を部屋の中の皆が暖かく見守るのだった。
- 63二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 20:57:39
差し替え版大ボリュームでうれしい
トラブルもあったけど幸せそうでなによりだ
婚約おめでとう! - 64124/07/09(火) 21:41:53
その後アスランとカガリ二人の婚約に関して簡単な確認を行い、正式な約定はパトリックとアスランがプラントへ帰国した後に行う事でパトリックとウズミがお互いに合意を取ると、ウズミとパトリックは二人で話すことがあるからと奥の部屋へ入って行った。
二人の話が終わるまで待つことになったアスランとカガリ、そしてトーヤ。
無事に話し合いも終わったとうっかり気が緩むのも仕方がない事と言える。
「はー、 なんとか終わったぁ」
ぐったりとカガリお気に入りの座り心地の良い執務室のアンティークソファにもたれ掛かる少女の姿に、トーヤは苦笑いをし、アスランは珍しいものを見たという顔をする。
「カガリ姉さま、行儀悪いよ」
「どーせ見てるのはアスランとトーヤだけだし」
「まったくもう……」
そんな軽口を叩き合う親密なトーヤとカガリの様子を見ていると、先ほどの話し合いの時に一度消えた筈のやもやとした気持ちが少しずつ蘇ってくる。
―――これは、嫉妬だ。
カガリと出会ってから知った、ドロドロとしたタールの様なドロリとした黒い感情を吐き出すことも出来ず、どうにか飲みこもうと二人にバレないように息を吐いた瞬間。
入口の扉を叩く音が広い部屋の中に響いた。
「ん?あれ、キサカ?」
カガリが内側から扉を開けると、そこにはオーブ国防軍所属でありカガリの護衛役のキサカが立っていた。
「すまない。話し合いは?」
「もう終わった!」
それなら丁度良いと、キサカは要件を切り出す。
「すまないが、今後の護衛の件で15分程時間を貰えないか?」
「私で良いのか?わかった―――ちょっと抜けて来るな?」
「行ってらっしゃい、姉さま」
「……あぁ」
カガリがトーヤとアスランの方を振り向いて言うと、トーヤはひらひらと手を振り見送る体制になる。
その様子を見て、アスランはどう声を掛けたものかと迷い、片手をあげ了承の意を示す事しか出来なかった。 - 65124/07/09(火) 22:05:05
- 66二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 22:10:19
特定できても黙っておくのが民の嗜み
続き全裸待機 - 67124/07/09(火) 22:23:20
とは言え気づいてもらえたのは正直凄く嬉しかったですとは言わせてください。フォローありがとうございます。
- 68二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 06:53:34
最初2人のお見合いに向かう気持ちに温度差がありましたが
最終的にお互い想い合っているで無事に終わって良かったです
アスランには優良物件トーヤとの会話がまだ残ってますが続きが楽しみです
アノスレ ワタシモミテマシタ(絵がとても可愛いかったものだからお気に入りになってます)コソコソ - 69124/07/10(水) 12:05:46
もしかして:トーヤに夢を見過ぎてている
と言う訳で大変お待たせしました、トーヤとアスラン編です。
エピローグで一番書きたかったエピソードでした。
アスランvsトーヤな展開を期待されている方がいらっしゃいましたらすみません。
この話を考えてる始めた時から、二人の関係性はここに着地させることは予定してました。
続きです。
「…………」
カガリが消えた部屋に残されたアスランとトーヤの間に気まずい重い空気が流れる。
嫉妬を抱いた相手と二人きりなんて、どうして良いのか。
人生経験の浅いアスランにとって今までで一番の難題の様に感じてしまう。
「もの凄く怖い顔になってますよ、アスランさん」
「…………」
そんな様子のアスランにトーヤは苦笑し、それを見てアスランの眉間の皺はますます深くなっていく。
「僕とカガリ姉さまの事、面白くないんでしょう?」
聡い少年はあっさりとアスランの心の中に隠したい本音を見透かしてしまうが、それを素直に認めるのも癪で。
アスランはむっつりとした表情でトーヤから視線を逸らす事しか出来なかった。
そんなアスランに対して、トーヤは語りかける。
「アスランさんは僕の事が好きじゃないかも知れないですが、僕はアスランさんの事結構好きなんですよ?」
「……は?」
思いもしないトーヤの言葉に、思わず外していた視線をトーヤに戻してしまう。
アスランの動揺を気にもせず、トーヤは言葉を続ける。
「ユウナの事は、姉さんから話は聞いてますよね?」
「あぁ……簡単にではあるが」
「僕とカガリ姉さまは五大氏族、その中でも親交の深いマシマ家とアスハ家の跡取り同士ってことで幼い頃からきょうだいの様に育ってきました」
「……」
二人の親密さを見ていれば、それは何となく想像がつく。アスランはもやもやしたものを感じながらもトーヤの言葉の続きを待った。
「僕とカガリ姉さまの婚約話も立ち上がった事もありました。……五大氏族同士の権力の結びつきが強くなりすぎると言う理由で、即座に却下されましたが」
「君は、カガリとの婚姻が許されないと聞いた時、ショックではなかったのか?」
「あくまで僕とカガリ姉さまの間にあったのはきょうだいに近い家族愛でしたから」 - 70124/07/10(水) 12:08:08
「……恋、ではないと?」
「結婚が決まれば、多分穏やかに家族にはなれたと思いますけどね。あくまで可能性ですが」
きっと、カガリとトーヤが結婚すれば昔馴染みの気のしれたきょうだいの様な関係のまま家庭を作って行ったのだろう。それはアスランにも想像が簡単につく。
「小さい頃からお互いを知っているからこそ、恋の相手として見られないって事もあるんですよ」
そう笑って言うトーヤの中にあるのは、確かにカガリに対する家族としての情だけなのだろう。
先ほどあったばかりのアスランにもなんとなくわかった気がした。
「僕は、カガリ姉さまには幸せになって貰いたいんです」
ユウナの様にカガリを見る事のない相手ではなく、ちゃんと『カガリ』と言う存在を見てくれる相手と。
そう言うトーヤの口元には微笑が滲む。
「だから、今日の朝執務室に飛び込んできたカガリ姉さまが真っ先に先日のお見合いでアスランさんに会ったことを嬉しそうに笑って報告してくれた時、僕は嬉しかったんです」
こうしてカガリを笑わせる事が出来る相手はどんな存在なのか、早く会ってみたいと。
朝からそう思ってたとトーヤはアスランに告げる。
「―――俺は、カガリの相手として及第点だったという事か?」
「それは僕が決める事ではありません。ただ、カガリ姉さまがそこまで慕うならきっと僕も貴方の事を好きになれると思った、それだけです」
「それが、さっきの『好き』……か」
「はい。直接会って、不器用ながらもまっすぐなアスランさんを見てその直感は間違いなかったって確信できました」
トーヤのまっすぐな言葉は、アスランの中にあった嫉妬心をいつの間にか消し去っていたらしい。
眉間の皺も消え、アスランの表情にはあどけなく、トーヤのまっすぐな好意に少し困惑した眉だけが残る。
「つまり……?」
「良かったら、僕と友達になって欲しいんです」
そう言って差し出された手を見て、アスランは一瞬逡巡する。
(きっと、今後も親しげな二人を見たら嫉妬してしまうんだろうけど……)
それでも、この少年と友達になりたいと言う気持ちがアスランの中に芽生えたのは確かで。
「俺の事は、アスランで良い」
「僕の事もトーヤで良いよ、アスラン」
そう言ってアスランが差し出された手を取ると、トーヤは嬉しそうに笑う。
どこか擽ったい気持ちを感じつつも、アスランはそんな感覚では嫌ではないと思うのだった。 - 71124/07/10(水) 12:40:29
と言う訳でようやくエピローグも終わりが見えてきました。
長々と引っ張って申し訳ありませんでした。
夜には完結できる…と良いなぁと思いながら仕事向かいます。
いつもハートとコメント、保守本当にありがとうございます。励みになります。 - 72二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 21:21:36
もう君付けで呼ばない…トーヤさん…
- 73124/07/10(水) 22:42:57
↓本当はこの話に入れたかったんだけど上手く使えなくて没にしたトーヤ君の独白
トーヤ(カガリ姉さまが抱き着き癖を発揮するのは『家族』だと認識している人だけで、異性だと思っている君だからこそ自分からは抱き着いたりしないんだけど……それはカガリ姉さまと付き合う中で自分で気づくべきだ)
心からの本音、そこに少しだけ混ざった大好きな姉を奪って行った相手への、ほんの少しだけの意趣返し。
ーーーーー
「え、何、お前ら私がいない間に随分仲良くなってないか?!」
キサカの用事が完了し、戻ったカガリが目にしたのは穏やかに談笑するアスランとトーヤの姿。
自身が発端だったとは言え、さっきまでちょっと変な空気を作ってた二人の雰囲気の変わり様にカガリは眼を丸くして驚いてしまう。
「いったい何があったんだよ?」
余りの変化にカガリが問いかけると、アスランとトーヤは顔を見合わせて笑って返す。
「うーん、男同士の」
「秘密、かな?」
「はぁ!?なんだよそれ!!」
自分だけが蚊帳の外に置かれて臍を曲げて拗ねてしまったカガリの様子を見て、アスランとトーヤは声を上げて笑うのだった。
―――翌日。
アスランとパトリック親子がプラントへ帰国する日がやって来た。
オーブの航宙施設には、ザラ親子の見送りにカガリとウズミ、そしてトーヤが姿を見せていた。
「アスラン、今度オーブに来る時は一緒にお茶でも飲もうね」
「ぁぁ、トーヤもプラントに来る時は是非声を掛けてくれ。案内する」
すっかり意気投合したアスランとトーヤが、握手をしながら別れを惜しむ。
その横では、ウズミとパトリックが穏やかに別れの挨拶を交わしていた。
そんな中、わざと離れた場所で皆の様子を見ていたカガリは、アスランとの別れの寂しさからしょんぼりと眉を垂れさせている。
そんな様子に気づいたアスランがそっと傍に近寄ってカガリを気遣う。
「カガリ、そんな顔をしないでくれ」
「でも、でも……もうお別れなんて……」
カガリは離れがたさからか、アスランの服の袖をそっと掴むと涙で潤んだ琥珀色の瞳でアスランを顔を見つめる。 - 74124/07/10(水) 22:50:18
「俺とカガリは、会おうと思えばいつだって会えるだろう?」
「うん……」
「連絡もいっぱいするから」
「絶対だぞ?」
「時間が出来たらオーブまでカガリに逢いに来るから」
「私も、プラントに、アスランに逢いに行く!」
「きっと、ハウメアの神が導いてくれるよ」
そう言ってアスランはカガリの渡した守り石を胸元から取り出して、カガリに見える様に掲げる。
「……っはは!自分で無理矢理手繰り寄せたくせに!」
アスランの言葉に、思わず声を出して笑うカガリの姿にたまらなくなって、思わず少女を腕の中に閉じ込めてしまう。
「……っ、お前!また突然……ッ!!」
「トーヤには会う度に自分から抱き着いてるのに?」
「と、トーヤは家族っていうか、きょうだいって言うか……おい、放せよぉ!」
(まぁ、腕の中で真っ赤になって照れたカガリを見られたから、今日は良いとするか)
「ごめん、もうちょっとだけ」
「お前なぁ!!!」
じたばたと照れて暴れてるカガリを逃がさないとばかりに強い力でぎゅうぎゅうと抱きしめ続けるアスランの後ろから、現れたパトリックが無情にもタイムリミットを告げる。
「アスラン、そろそろ出発の時間だ。彼女を放してあげるんだ」
「……はい」
返事をしながらも、ギリギリまで抱きしめたまま放す気配の無い息子の姿にパトリックは思わずため息が出そうになる。
パトリックは、抱きしめられたままじたばたと暴れる彼女に、最後の確認を問いかける。
「……カガリ嬢、改めて確認するが本当に『コレ』でいいのか?」
「うん」
私が、自分の意志でアスランを選んだから。そう迷わず答えた少女の姿に、パトリックは知らずに口元に笑みを浮かべていた。
「―――息子はこんな性格だから色々大変だと思うが……よろしく頼む」
もし何かあれば、すぐに相談して欲しい。
その言葉に、カガリは一瞬動きを止め、アスランの腕の中から目を丸くしてパトリックを見つめる。
そして、ぱっと花の咲くような笑顔を浮かべるとパトリックへ返答する。
「こちらこそよろしく、パトリックおじさま!」 - 75二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 22:54:38
これにはパパもメロメロ
- 76124/07/10(水) 23:01:16
これにてエピローグも終了です。
重ね重ね、長々とお付き合いありがとうございました。
残すはちょっとしたおまけだけですが、そっちは明日。
約束したアスカガのオーブデートの風景をちょっとだけ書けたら良いなって感じです。
一応今後の予定?ですが、ちょっと長編で大分疲れたので暫くはこまごまとした短編投稿を暫く続けながら並行で次の長編の準備を行うつもりです。
このスレの最後…か次スレ辺りで長編投稿開始出来たら良いなと思いつつ、予定は未定なのであまり期待せずお待ちいただけたら幸いです。
必ず応えられる訳ではないですが、このキャラやシチュが見たい…みたいな物があればレス頂ければ短編の参考にさせていただく可能性があります。
(キラとラクスは次長編の準主役予定なので難しいですが……)
と言う訳でおやすみなさいませ - 77二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 06:54:15
ありがとうございます!
おまけも楽しみにしています - 78124/07/11(木) 12:18:08
【おまけのアスカガオーブデート小話】
「アスラーン!」
「カガリ!」
アスランとカガリが婚約を決めた日の翌日の朝。
二人は約束通り偶然再会したオーブの首都、オロファトの市内にて待ち合わせを行っていた。
本来ならば昨日の縁談の為の会場で起きた一件や、正式に婚約を整えるための話し合いの場が設けられる筈だったが、ウズミの突発で対応が必要になった閣議と乱入事件の後処理関係で暫く都合をつける事が難しくなり、アスランとパトリックは時間が数日間時間が出来てしまったのだ。
とは言え、パトリックはプラント議会を構成する一員であり、持ち込んだ政務がいくらでもあるのだが、アスランはただの上級学校の学生でしかない。
それを知ったカガリの「改めてアスランにオーブを案内したい!」と言う申し出を断る理由はアスランには全くない。
寧ろ喜んで新米婚約者同士でデートを行う事になったという訳である。
「今日は夕方まで一緒に居られるから、色々と案内しようと思って考えて来たんだ!」
「それは楽しみだな」
アスランへのもてなしの為に気合を入れてガッツポーズを取るカガリの姿が可愛くて、アスランの口元もすっかり緩んでしまう。
オーブへ来たときはあんなに気持ちが憂鬱だったのに、今はすっかり有頂天になって浮かれてしまっている自覚はアスランにもある。
(でも、一目惚れした少女が婚約者として隣に立っているのだ。浮かれても仕方がないだろう?)
アスランは開き直って今の状況を楽しむことに決めた。
先日と同じ様に、まずは腹ごしらえだとばかりにカガリお気に入りのケバブ屋に向かうと、チリソースのケバブをアスランの分と合わせて2個購入する。
先日は余裕が無くてカガリのなすがままだったが、今日は色々と興味深くアスランの目に入ってくる。
この店にはメニュー表がありソースが選択制である事を知った。
「へぇ、チリソースだけじゃなくてヨーグルトソースもあるのか……」
「むっ、ヨーグルトソースなんて邪道だ!ケバブにはチリソースが一番なんだ!」
「なるほど……」
ドヤ顔で語るカガリに、アスランはなるほどと納得をする。
「そうだ!アスランも昨日食べて美味かっただろ?」
「う、うん……」
精神的に色々といっぱいいっぱいで味なんてすっかり覚えてないアスランは濁した返事しか出来ない。
今日はしっかり味わって食べようとこっそりと決心を固めるのだった。 - 79124/07/11(木) 12:19:20
「あ、あと飲み物も必要だよな~……あぁあった、あそこだ」
「……え、あれ、か?」
カガリが次に向かったのは、ケバブ屋台のすぐ近くにあるファンシーな色合いの屋根が特徴的な出店。
「戦乙女の純愛フロート……?」
「うん、かわいくてかっこよくて、そして美味しいんだ!」
そう言うと、カガリはケバブをアスランへ押し付けると走って行ってしまう。
逸れてはまずいと、アスランは慌ててカガリの背中を追いかけるのだった。
注文を受け取り、アスランの元に戻ったカガリの手には、ピンクと黄色がグラデーションになったドリンクの上にアイスクリームが乗せられ、そこに剣型のピックと食用花が飾られたファンシーな飲み物が二つ握られている。
予想以上にファンシーな風貌に、思わずアスランも絶句してしまう。
(こ、これを俺も飲むのか……?)
そんなアスランの内心を感じ取ったカガリは少し不安そうな顔をしてアスランに問いかけて来る。
「もしかして、アスランって甘いものが駄目だったか…?」
「えっ、い、いや、嫌いじゃないが……」
「良かった!アイスが解けない内に食べよう!」
アスランの返答に安堵して笑うカガリに、アスランはこっそりとため息をつく。
(……カガリの笑顔の為なら、ファンシーな飲み物と格闘するのも悪くはない……か)
アスランはあっさりと男としてのプライドを投げ捨てるのあった。
昨日と同じように、屋台近くの公園のベンチに並んでケバブを食べ、ドリンクを飲む二人。
昨日と違うのは、この後も予定が山盛りのため簡単な感想以外は口数が少ないこと。
何とか溶ける前にドリンク乗ったアイスを食べ、ケバブを頬張り。
残ったジュースを飲み切ってごみをまとめてカガリはさっと立つ。
「―――今日は、まだまだ時間あるんだもんな!」
「カガリが案内してくれるんだろう?」
「もちろん!オーブの事を大好きにしてやるから!」
食べ終わったアスランもベンチから立ち上がると。二人は並んで公園出口まで向かうのだった。 - 80124/07/11(木) 12:22:30
腹ごしらえをしている間に昼も近くなったからか、大通りに出ると人通りがかなり激しくなっていた。
何とか逸れない様に並んで歩こうとするが、気を抜くとあっという間に見失いそうになってしまう。
「わっ!」
「カガリ!?」
何とか目的地に移動しようと格闘している時に、恐らく仕事の為に移動しようとしているスーツ姿の男性とカガリがぶつかり、転びそうになってしまう。
「次の予定が迫っていて急いでいてちゃんと前を見てなくてね…すまない。大丈夫かい?」
「いや、こっちこそ避けられなくてごめん……支えて貰ったから大丈夫だ」
「急ぐ気持ちはわかりますが、気を付けて下さい」
「本当にすまなかったね」
謝った後に反省したのかしてないのかわからない慌てた様子で去って行った男の背中をカガリとアスランは見送る。
今回は倒れそうになった瞬間にアスランが反応して肩を支えたためカガリは転ばずに済んだが、このままでははぐれてしまうのも時間の問題だろう。
「……」
少しだけアスランは逡巡し、そっとカガリの手を取った。
「あ、アスラン……?」
「このままだと、はぐれちゃうから……それに婚約者同士だから構わないだろう?」
「う、うん……」
お互いに真っ赤になりながらも、繋がれた手はほどかれる事はなく。
傍を通り過ぎる人々が微笑ましい顔で見つめている事に別れるまで二人は気づく事はなかった。 - 81124/07/11(木) 12:24:02
手を繋いだままカガリの案内でオーブの市内をあちこち回っていると、気が付けばすっかりそれが当たり前になっている。
次の目的地に向かうために歩いていると、丁度通りかかったチャペルの鐘の音が聞こえて来た。
「あれは……結婚式?」
「見ろ、アスラン!丁度花嫁と花婿が出て来たぞ!」
「ホントだ……」
二人が教会を見ると、幸せそうに笑いながら階段を降りて来る新郎新婦の姿が見えた。
そんな二人の姿を、ぼんやりと頬を染めてカガリは見つめている。
「……カガリも結婚式にあこがれる?」
「うーん……、今まではあんまり考えたことなかったからなぁ」
求婚してきたのが『あの男』だったのもあって、無意識的に考えない様にしていたのだろう。
他の男の影がちらつく事すら面白くなくて、アスランはカガリの手を握る力を少し強くする。
それに気づいたカガリが「痛いって」と苦笑しながら、言葉を続ける。
「オーブ氏族の結婚式は、祭壇でハウメアの神に永遠の愛を誓うんだ」
「祭壇?」
凄く幻想的なんだぞ!今度その様子の写真見せてやるよ!カガリはと笑う。
「……私も、いつかお前とそこで式をあげるのかな?」
「もしかしたらプラントでやる事になるかも知れないぞ?」
「それも悪くないなぁ。いっそ両方でやるのも良いな!」
「今度、お父様に許可を貰うから、一緒にハウメアの祭壇を見に行こう」
「……良いのか?」
「将来の下見ってやつだ!」
くすくすと笑いながら、幸せな未来予想図を描く二人の顔には陰が全く見えない。
―――二人の未来予想図の完成系がどんな色を描くのかは、今は未来の二人とハウメア神のみが知っているのだった。 - 82124/07/11(木) 12:26:44
と言う訳でおまけおしまい。
これで【カガリ様婚約騒動編】は完全に終了です。
気付けば2万字近い?ボリュームだったみたいで笑ってしまいました。
書いてる時に考えてた事とかちょっとした補足?は夜書き込みに来るかも知れません。
お付き合いありがとうございました。 - 83二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 20:11:48
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- 84二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 20:17:13
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- 85二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 20:43:05
スレ主さんおやすみなさい
2万字近くの大長編をありがとうございます!
甘酸っぱいアスカガとそれを優しく見守る人たちの空気が最高過ぎてすでに明日が楽しみです - 86二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:11:53
デートかわいい〜!到着日に二人で出かけていたけど、今回は婚約者になってからの初デートですもんね〜!微笑ましく見ちゃう気持ちわかる。
- 87二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:13:48
こちらの14歳アスカガ本当に可愛くて、出会いから婚約まで見せていただけて本当に嬉しいです。
こそこそ話での『周囲から愛されるアスランとカガリ』と二人が愛されているのに、満面の笑みを浮かべてしまった - 88二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:14:32
書く予定のどちらのお話も楽しみです!
- 89二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 22:06:56
今日もありがとうございます!
アスランが必死でお見合いまでこぎつけた時は子供っぽさを感じないのに
アスラン&カガリで行動すると可愛いカップルになるのがたまらないです - 90二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 06:39:25
保守
- 91二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 17:04:00
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- 92124/07/12(金) 17:09:38
今日色々予定詰まった上にこの後も用事あるのでやっぱり難しそうです!
執筆時間が取れない…!
もしかしたら頑張ったら深夜付近に来るかも知れませんが駄目だったらすみません。
これだけだと何なので先日のこそこそ話に居れようと思って忘れてた奴。
トーヤに関しては原作運命カガリの「カガリと同年代で、あの時のアスランとは違ってあるカガリと同等までは行かずともオーブ国内である程度力を持っててカガリをフォローしてくれる相手」が居てくれたらIF、みたいな気持ちもありました。あの時のカガリは突然の事があって味方がいなかったもんなぁと。
後は前スレのダイス神の思し召しで全く縁が無くなってしまったキラのポジションの代わり…的なのも少し。
キラがカガリと顔見知りならまたちょっとカガリとの関係性も違ったと思います。(キラカガ好きな人にはすみません)
では! - 93二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 22:18:33
スレ主さま、ご自分のペースで無理なさらないでくださいね
- 94二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 22:39:25
来ないと言いつつ書き始めたら筆が乗ってしまったので投稿します。
イザークとディアッカの年齢差を弄ってます。
【続・プラントに帰国したアスランの話】
「貴様ぁ!!最近なんだその腑抜けた姿は!!」
「腑抜けたって……俺は変わりないと思うが」
「本気で言ってるなら今すぐ鏡を見ろ!!」
「……?」
クラスではすっかり日常風景となったアフタースクールでアスランに絡むイザークの姿だが、今回は少しだけ様子が違った。
プラント最高評議会議員の父親と共に地球へ向かったアスランがプラントへ戻り早1週間。
そこで腕を撃たれたと言う話は、また人の口……特にまだ未成熟な上級学校生には戸を立てる事も出来ず、あっという間に広まってしまった。
その噂が拡散されたのはもちろん議員の息子として有名なのもあるが、それ以上にアスラン自身の様子が地上から戻ってから少し変わったからだ。
激昂しながらも、次の言葉を言いあぐねているイザークをフォローする様に、後ろに立っていたディアッカが言葉を足す。
「イザークの奴、これでも心配してるんだよ」
「心配?」
「いい加減な事を言うな!誰が心配などするか!!!」
その言葉に噛みつくイザークに、ややこしくなるからちょっと黙っててくれと言うとディアッカはアスランに言葉を続ける。
「俺たちって争いとは無縁な場所で生きて来た訳だろ?それが家族旅行に出かけたら突然戦火に巻き込まれたなんて、誰だってショックを受けるに決まってる」
「……」
「しかも戻ってきたらどこかぼんやりしてるし、普段は誘われれば仏頂面のままとはいえ付き合いも悪くなかったのに、最近は断ってさっさと帰る始末だし」
「それは……その、すまない」
いや良いんだけどさ。そう言って苦笑するディアッカに対してアスランも少しだけ心配をかけてしまい申し訳ないとは思う。
「俺のライバルたる貴様がそんな状態で勝ったとしても意味がないからな!」
口では何だかんだ言っても、結局ディアッカの言う通り本当は心配していたのだろうイザークが少し照れた様にアスランに声を掛ける。
しかしそんなイザークの思いなどアスランには全く通じず。
「……今日の小テストでもスポーツでも負けた記憶がないが?」
「貴様ぁああああああああああああ!!!!!」
アスランは結局イザークを怒らせてしまい、ディアッカがため息つきながらフォローに入る羽目になるのだった。 - 95124/07/12(金) 22:49:08
「で、なんでそんなに急いで帰ってるわけ?」
「それは、その……人探しを」
別に撃たれたショックとは関係ないんでしょあれ?
そう問いかけるディアッカにアスランはどう答えたものかと迷って言葉を濁す。
しかしながら軽い性格に見えて人の真意を見抜くのが得意なディアッカは追及の手を緩めない。
「人探し?そりゃまたなんでそんな事を」
「…………命を助けてくれた人に……もう一度会いたくて」
アスランらしくないその姿に、ふと思い立ってディアッカは鎌を掛けた。
「はは、もしかしてそれって女で一目惚れしちゃったとか?」
「!!」
「え、……マジ?」
その鎌が、まさかの大正解。
わかりやすく頬を染めて反応するアスランにディアッカの方が驚いて目を丸くしてしまう。
これ以上はもう言わないとばかりに完全にそっぽを向いてしまったアスランに、ディアッカは珍しいものを見たと感慨深くなってしまう。
しかし、それを許さない一人の男、その名はイザーク・ジュール。
「お、女にかまけてそのザマだと……!!!???やっぱり腑抜けているではないかぁあああああああ!!!!!」
イザーク渾身の絶叫が、学校中に響き渡るのだった。
ディアッカがイザークに暫くすれば元のアスランに戻るだろうからと必死に宥めて落ち着かせたことでこの一件は終わった――――かと思われたその数か月後。
今度は婚約を決めて地球から戻ったアスランの今回以上の腑抜け具合に、イザークの絶叫が更新されることはまだ誰も知らない未来の話である。
【終われ】 - 96二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 23:04:47
お忙しい中更新ありがとうございます!!
サプライズが嬉しすぎる
婚約後の腑抜け具合か…
カガリがいる時はいつもの仏頂面が嘘みたいな表情なんだろうな
イザークたちが見たら二度見しそう - 97124/07/12(金) 23:43:12
自分のペースで良いですよって気を使って頂いた直後に投稿するのちょっと申し訳ないと思いつつ、お気持ちは本当に嬉しいです。ありがとうございます。
【ゆるふわC.E.コソコソ話、続・プラントに帰国したアスランの話編】
■イザークとディアッカについて
アスランの級友……って言われると真っ先に浮かぶのがこの二人(とニコル)でした。ただ同じ事実上の士官学校であるアカデミーの同期や部隊の一員としてではなく、あくまでクラスメイトとして出すには年齢同じじゃないと変だよなぁって事でアスランと同じ年齢に弄ってしまいました、すみません。プラント最高評議会議員の息子同士で昔からの顔なじみ、腐れ縁ってイメージです。ちなみに出せてないですがニコルもいます。彼については追々。ラスティに関してはキャラが全く分からないのと出しても扱える気がしないので…お好きな方は脳内で補完して頂けると幸い。
■上級学校について
色々調べてる最中に考察で見かけた設定をお借りしています。
ゆるふわC.E.なので、そもそもとしてザフトの成り立ちも大きく異なる可能性がある事、軍事的緊張が発生する事件も発生しておらず、戦争状態ではないこの世界線で最高評議会議員の親が子供をアカデミーへわざわざ進んで入れる可能性は少ないのでは…?みたいな事は色々考えました。軍事ネタは難しい……あくまでゆるふわC.E.と言うでお願いします。
とは言え軍事組織はあってそこの統括が国防委員長のパトリックなのは恐らく変わらないと思います。上級学校を卒業後に改めてアカデミーに入る未来ももしかしたらあるかも知れない。
そもそもこの世界線だとMS等があるのかも怪しいですが……
と言う訳で。
おやすみなさいませ。 - 98二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 23:58:32
やったー!級友たち!アスランの返答がアスランらしくて笑ってしまいました。イザークの叫びによって、アスランが恋!?って学校中に広まってそうだし、その数ヶ月後に答え合わせの婚約がやってくる…!
- 99二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 09:17:01
イザークやディアッカたちの視点面白い!
あのアスランが……!?を何度もしてそう。 - 100二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 14:13:19
命を助けてくれた子なら現地の女の子なのかな?って思ったら、婚約でまさかのお姫様だったって分かったときにディアッカとイザークはまた叫びそうですねw
みんなかわいい - 101二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 16:52:59
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- 102124/07/13(土) 16:54:06
- 103二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 16:56:27
幸せの具現化…
素敵なイラストをありがとうございます! - 104二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 17:06:53
かわよ
これはもやしっ子だ - 105二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 17:09:19
KAWAII♥
ここの世界線平和で幸せそうでいいですね - 106二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 19:16:01
わーーーかわいい!!!かわいい!幸せ…泣けてしまう…
- 107二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 19:16:33
アスランのこの服も、カガリのこのドレスも大好きなので、並んでる二人が見れてこちらも幸せです
- 108二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 19:57:16
よく見たら手を繋いでいる…!かわよ…!
- 109124/07/13(土) 22:16:02
イラストへの温かい言葉、本当にありがとうございます。
ハート押してくださった方もありがとうございます。
ちょっと詰まってしまって相談がありまして。
婚約締結後のそれぞれの呼び方なんですが
・レノア→カガリ:カガリちゃん
・カガリ→レノア:レノアおば様
・ウズミ→アスラン:アスラン君
・アスラン→ウズミ:ウズミ様
・カガリ→パトリック:パトリックおじ様
までは決めたんですが、
パトリック→カガリはなんて読んだら萌えますかね…?
カガリくん、カガリ嬢、カガリさん、カガリ、カガリちゃん
どれもしっくり来るようで来ない様な感じなので良かったらそれ以外の呼び方含めて
こう呼んで欲しいみたいな意見あったら聞かせて貰えると助かります。
と言う訳でそこで詰まってしまったので明日投げます、すみません。
おやすみなさいませ。 - 110二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:33:08
カガリ、カガリさん、アスハ嬢
お堅いぶきっちょ野郎イメージがあるから
息子の嫁という距離感むずいな
くん付けもありか - 111二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:51:46
個人の勝手なイメージだけど、パトリックって堅苦しそうだから婚約者になりたてのころはアスハ嬢って呼んでそう
気を許してきたらカガリ君呼びになりそう - 112二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 00:35:45
アスハ嬢いいですね〜。名字呼びは固くてパトリックさんらしいかも
- 113二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 00:40:14
婚約時代はアスハ嬢
結婚したらカガリさんなイメージ
パトパパは堅物なのでお堅く行ってほしい気持ちがあります - 114二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 08:56:36
あにまんで投稿してるのが不思議なくらいに上手いな…()
- 115二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 18:46:28
気が早いですが、カガリちゃんはご結婚後はレノアおば様パトリックおじ様→お義母様、お義父様になるんだなって思うと、いいですね…
- 116二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 18:49:01
アスランくんもウズミ様を義父上と呼ぶのだろうか…
- 117二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 19:57:33
皆様協力ありがとうございました!
とりあえずこのスレでは『アスハ嬢』で進めたいと思います。
それと同時に何となく求められてる距離感?的な物も見えた気がします。
……反映できるかはわかりませんが。
と言う訳で投下します。パトリックパパとカガリちゃんのお話です。
【カガリちゃんとパトリックパパの30分だけのお留守番の話】
カガリとアスランが正式に婚約を結んでから、親交を深めるために互いの住む国へ赴くことが定期的に行われる様になった。
今回は、アスランの通う学校の休暇に併せて、カガリがプラント・ディセンベル市まで来ていた。
思う存分アスランとプラント内でデートを行い、パトリックやレノアとも親交を深めていたカガリであったが、その日はどうしてもアスランが午前中学校に向かわないといけない用事が出来てしまった。
レノアもパトリックもその日は仕事があるとの事で、カガリもザラ邸に一人居座る訳にも行かない為一緒に来ていた護衛であるキサカを連れてディセンベル市内にある商業施設にて家族へお土産を購入することに決めた。
アスランが居なくて寂しいとは最初は思ったものの、大切な父親ウズミや弟分のトーヤ、カガリの住む屋敷で働いてくれている使用人たちへ何を渡そうかと色々と考え込んで回っている内にあっという間に時間は経過し、買い物が全て終わったころには時刻はお昼付近なっていた。
アスランが帰宅したらカガリの持つ端末まで連絡をくれることになっているが、取り出して画面を見てもちっとも連絡が来る気配はない。
もう少し時間潰しが必要だと判断し、次の移動先をキサカに告げようとした瞬間。
「アスハ嬢?」
「パトリックおじ様?」
婚約者の父親であるパトリック・ザラに声を掛けられたのだった。
アスランが帰宅するまですぐならば、一緒にザラ家邸宅にて待っていれば良いとパトリックから言葉を貰ったカガリは、その申し出をありがたく受ける事にした。
プラント最高評議会議員住宅のセキュリティレベルならば護衛が無くとも問題ないとの判断でキサカには帰宅時に迎えに来てもらう様に頼み、別れる。
パトリックと二人で邸宅のリビングに入るのだった。 - 118124/07/14(日) 20:02:15
「――そっか、おじ様は急に予定されてた議会が無くなっちゃったから帰って来たのか」
「うむ……とりあえずコーヒーでも淹れよう」
「ありがとう!」
座って待っていろとパトリックは声を掛けてキッチンへ入って行く。
言われた通りに、カガリお気に入りのクッションの置かれた座り心地の良いソファに腰掛けて待っていようかと思ったが、持ち前の好奇心がむくりと顔を出す。
パトリックの背中と、ソファを両方見やった後、パトリックの後を付いていく事に決めた。
「おじ様っ、私もコーヒー淹れてる所見てても良い?」
「……普通に淹れるだけで、特別面白いものなど何もないと思うが」
「家だと殆ど紅茶ばかりで、あまりコーヒーを飲まないから新鮮なんだ!」
ゲリラ組織に参加していた時は飲むこともあったが、ほどんどがインスタントだったため、豆から挽いて淹れるのを見る機会はあまり無かった。
いつも通りむっつりとした表情でミルのハンドルを回すパトリックの手元を、カガリは目を輝かせながら見ている。
「……回してみるか?」
「良いのか?やる!!」
そんな様子のカガリにパトリックが思わずやってみるかと問いかけミルを差し出すと、少女は嬉しそうに受け取ってウキウキと回し始めた。
「そろそろ良いだろう」
そう言ってカガリのハンドルを回す手を止めると、パトリックはあらかじめ沸かしておいたお湯の入ったケトルを手に取ると、フィルターをセットしたドリッパーとサーバーにお湯を注ぎ温める。
「それは何をしているんだ?」
「コーヒーに適した温度を保つために、予め器具を温めている。そうしないとお湯を注いだ時に温度が下がってしまうからな」
「なるほどな!」
器具の中の湯を捨て、カガリが渾身の力で挽いたコーヒーをフィルターの中に入れて粉全体が湿る程度の湯を注ぐと、一度手を止めてしまう。
そのパトリックの様子に、カガリは首を傾げる。
「おじ様?」
「……30秒ほど蒸らしている」
「蒸らし?」
「コーヒーとお湯をしっかりなじませることで、豆の中の炭酸ガスを放出させることが出来る」
「へぇ~~~!」
ちょっとした質問にも嫌がらず丁寧に答えてくれるパトリックに、カガリは嬉しくなってしまう。
パトリックのやる事すべてをを楽しそうに見つめ続けるカガリの姿を見て、パトリックの口元が知らず知らずに緩んでいた事はカガリもパトリック本人も気づかないままだった。 - 119124/07/14(日) 20:04:15
今更なんですが、コーヒーの淹れ方に滅茶苦茶詳しいわけではないので変な所あったらすみません。
---
30秒ほど経って、3~4回に分けてお湯を注ぐと、あとは抽出されるのを待つだけ。
キッチンにはコーヒーの良い香りがすっかり充満し、カガリの心の期待感を増幅していく。
わくわくと待つカガリは、待つ間にパトリックへと話しかける。
「パトリックおじ様は、コーヒーを入れるのが好きなんだな」
「好き、かはわからんが。嫌いではない」
そうやって少女に応えながら、パトリックは思い返す。
元々は昔、知人のコーヒー好きから豆を押し付けられて、仕方がなく淹れたのがきっかけで始めたコーヒーを一から淹れるという行為。
切羽詰まった時や疲れた時に自らの手で一から豆を挽きコーヒーを入れて一息つくことで、意外と見えなかった糸口が見えて解決する事も多々あった。
どうしても時間が無い時は自動のコーヒーメーカーを利用する事もあるが、パトリックは手間をかけてコーヒーを用意する事が習慣となっていた。
「……『大概の問題は、コーヒー一杯飲んでいる間に心の中で解決するものだ』とは誰の言葉だったか」
「?」
「行き詰った時は、一度立ち止まって一息入れる事も大事と言う事だ。……出来たぞ」
「やったぁ!楽しみだ!」
「コーヒーとカフェオレ、どちらが良い?」
「うーん、じゃあカフェオレで!」
まだ少しコーヒーが苦手だと言うカガリの為に、たっぷりミルクの入ったマグカップを用意しコーヒーを注ぎ、カフェオレにする。
マグカップを渡すとカガリはニコニコと嬉しそうに抱えて、リビングへ向かう。
そんな少女を追いかける様に、パトリックも自分のカップを持ちリビングへ歩いていくのだった。 - 120124/07/14(日) 20:07:23
「美味しい!」
「…そうか」
幸せそうにカップに口をつけるカガリを見て、パトリックもほっと息を付く。
何だかんだで、少女の口に合うのか少し不安だった様だ。
それから暫くは、言葉もないまま二人でコーヒーとカフェオレを味わう。
静かな空間だが、案外居心地が良いのが不思議だ。
そんな沈黙を破るように、カガリが口を開く。
「さっきのおじ様の言葉だけど」
「あぁ」
「確かにこうしてカフェオレを飲みながら色々考えてたら少しだけわかった気がしたんだ」
「……悩みがあるのか?」
「うーん、悩みって程じゃないんだけど」
そう言って最近ちょっと色々考えこんじゃってたからと眉を下げるカガリ。
「でも、おじ様特製のカフェオレ飲んだらなんだか気持ちが楽になった」
ありがとう、パトリックおじ様。そう礼と共にカガリは満面の笑みを浮かべる。
その笑顔には確かに陰りは見えなかった。
「ふふっ、今度はお礼に私がおすすめの紅茶淹れるからな!」
「そうか、楽しみにしている」
マーナのスパルタ教育のお陰で自信があるんだと胸を張って言うカガリへパトリックが言葉を返すと、カガリは頬を赤く染め眼を丸くして驚いた顔になる。
「!」
「どうかしたか?」
「う、ううん!何でもない!」
どうしたのかとパトリックが問いかけても、カガリは何でもないと首を横に振るばかり。
(何か変な顔していただろうか……?)
(パトリックおじ様の笑顔!はじめて見た!嬉しい!)
―――カガリの携帯端末に、アスランから「あと5分で帰宅する」と言うメッセージが届くまで、あと5秒。
カガリとパトリック二人の、30分だけのお留守番が終わるまで、あと5分。 - 121124/07/14(日) 20:16:58
【ゆるふわC.E.コソコソ話、カガリちゃんとパトリックパパの30分だけのお留守番の話編】
■コーヒー派のパトリックと紅茶派のカガリ
完全にこれは自分の中のイメージで推し進めました。とは言え原作の代表カガリは切羽詰まった時は濃いコーヒー淹れて無理矢理眠気飛ばしてそうな気もします。
■パトリックにコーヒーを進めた知人
皆さんご存じ、そして大好きな『あの人』のつもりです。恋人?愛人ときっと平和にイチャイチャしながら特性ブレンドコーヒーを楽しんでるのでると思います。たまにパトリックの元に送られて来て苦い顔しながら飲むパトリックもいる…かも知れない。
■『大概の問題は、コーヒー一杯飲んでいる間に心の中で解決するものだ』
自分がガンダム至上でトップレベルに大好きな名言です。テクス先生の様な人間になりたかった……ガンダムX、このセリフが出て来る所までで良いので見てください(ベタベタなネタ)
多分呼ぶと思います!と言うかその案を採用で!
今のところはちょっとそこまで書く予定が無いのですが、万が一ネタにするときは使用させてもらうかも知れません。
- 122二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 20:21:04
- 123124/07/14(日) 20:22:05
明日は多分レノアママとアスランのちょっとした小話…が書けたら良いなと思います。
それではおやすみなさいませ。 - 124二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:29:02
アスランくんはいつか呼ぶ…!こちらこそありがとうございます!
- 125二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:29:37
虎印の…!そうか、この世界線ならば二人とも一緒に居る!!嬉しい
- 126二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:35:10
あの2人も死別しない幸せ時空でうれしい
パトリックは元々教育畑の人だから教えるの上手いんだろうな - 127二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:35:22
コーヒー飲めないオーブ民もコーヒー挽くか…明日はカフェオレ飲もうかなの気持ちになりました。この世界線ならプラント民もいいな…
- 128二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 08:23:31
- 129124/07/15(月) 17:15:18
今日はアスランとレノアママの話を投げるって言ってたんですが、ちょっと思い立ちまして別の話になりました。
有言実行とは…って感じですが、せっかくの海の日なので海ネタはやりたいなって事で。
あとちょっと実験的な試み?も併せて。不評な様ならいつものフォーマットに戻します。
アスランとカガリの海デートの話です。
【少年と少女と海】
―――カガリ・ユラ・アスハは海が好きだ。
父親が治める、オーブと言う国の海は特に好きだ。
心を落ち着かせるような凪いだ海も、すべてを飲みこむような荒波の海も。
暁に少しずつ黄金色に輝きはじめる海も、白昼のエメラルドグリーンが透き通る海も、黄昏の茜色に一面染まった海も、全てがカガリが生まれてからずっと傍にあった。
海はカガリにとって喜びも、悲しみも、怒りも、全てを包み込み、涙は波で流し去ってくれる、母の様な存在だった。
その日、カガリに逢いにプラントから来訪していたアスランと共に、二人はとある海岸に来ていた。
「ここ、穴場でさ。考え事とかする時に良く来るんだ」
ぼんやり海を見ながらつぶやくカガリの言葉を裏付ける様に、確かに周囲を見ても人の姿はは殆ど見えない。
カガリの視線を追いかける様に海に視線を向けると、エメラルドグリーンの水面がキラキラと陽の光を反射し、輝いている。
「綺麗だろ?」
「……うん」
「こうして穏やかな顔を見せる海、荒々しくしけった海……海は色々な姿を見せるんだ」
どんな姿でも、私はそのすべてが好きだと。カガリは穏やかに笑う
「……カガリは、海が好きなんだな」
「うん」
自分ではなく海を見たまま、自分の言葉に迷いなく頷いた少女の姿。
アスランは心の中に少しだけ嫉妬心が生まれるのを感じる。
―――いつか、この海が自分から大切な、目の前の少女を連れ去ってしまう様な気がして。 - 130124/07/15(月) 17:17:04
「私にとって、海は母親代わりみたいなものだったんだ」
「家族の様な存在、か」
「そう。当たり前の様に傍にいて、抱きしめてくれる存在だったんだ……だから」
そこまで言うと、カガリはアスランの方を向いて微笑む。
「アスランに、この海を好きになって欲しかったんだ」
穏やかな風が、太陽の光を反射してキラキラと輝く金糸を照らし。
普段のカジュアルな装いとは違うアスランとのデートの為に用意した特別な服を、目の前に広がる海の色の様なエメラルドグリーンのワンピースの裾を優しくはためかせる。
風で飛ばない様に帽子のつばを抑えて頬を染めて笑う少女の姿は、アスランの瞳に何よりも美しく映る。
「―――うん、綺麗だ」
「だろ!……少しは海が好きになったか?」
今日こうして二人一緒に海を眺めた記憶は、アスランにとって間違いなく一生残る大切な思い出になる。
そんな予感がした。
だから、少女の問いに迷いなく返す。
「凄く、好きになったよ」
「良かったぁ!」
その返答にほっとした様に目を細めた少女の細く、柔らかく、白い手をアスランはそっと取る。
海が、自分から少女を奪って行かない様にと祈りながら。
そんなアスランの内心など知らない少女は、更に頬を赤く染めながらも嫌がる素振りは見せず。
まるで同じ気持ちだと伝えるかの様に、何も言わずアスランのその手をぎゅっと握り返す。
「いつかさ、暁の海をお前に見せたいんだ」
「暁の海?」
「朝、太陽が昇る直前の海だ。少しずつ金色に染まっていく姿が綺麗なんだ」
「―――いつか、絶対一緒に見よう」
「うん、約束だ」
いつか叶うだろう約束を結ぶ幼い婚約者を、優しい風と穏やかな水面だけがずっと見守っているのだった。 - 131124/07/15(月) 17:24:16
- 132二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 17:26:47
スレ主さんおやすみなさい
試みが最高過ぎます
素敵なSSだけでなく可愛い挿絵まで堪能してしまっていいんですか?!
好きなものをアスランと共有したいカガリと海に嫉妬するアスランが可愛い
これから2人で何度も何度も海を見るんだろうなとほっこりした - 133二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 17:34:53
- 134二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 20:40:54
☆
- 135二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 21:41:23
ああーーありがとうございます…!
アスランにとって海はカガリと共にあるんだろなぁ、海を歩く少年少女かわいい…と思い馳せてたら、最高にかわいい二人の挿絵が…!
海も、相手を見る瞳もキラキラしてて綺麗だ… - 136二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 21:52:36
- 137二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 21:53:23
レノアさんとアスランのお話も楽しみです!
- 138二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 01:09:40
この服いいよね。二人ともデートにぴったり、かわいい
- 139二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 11:01:30
どの話も萌えるから1の方のスレから見返してたんだけど、もしカガリがまだ見つかってなかったら、いつか地球に行ってそうだし、捜索用のハロとか作ってそうで、それがまたえげつない進化を遂げてそうだ
見つかって良かった…無事婚約結べて良かった… - 140124/07/16(火) 12:29:12
私事ですがメタロボ隠者弐式の予約に満足してすっかりフィギュアーツアスランの予約忘れておりました
。予約〆切られてなくて良かった……
と言う訳で?思ったより早く書けたので投下します。
本日は公言通りアスランとレノアさんの話です。
【レノアさんから見た息子の話】
―――アスラン・ザラ。
プラント最高評議会議員、パトリック・ザラと農学博士、レノア・ザラの間に生まれた一人息子。
容姿はレノアの要素を色濃く持つが、持っている性質は父親のそれを強く引き継いだ所のあるアスランは、異性に対する興味が人一番薄い所があった。
例えば。
それはレノアとパトリックが珍しく揃って休みだったため、リビングにて二人でニュースを見ていた日の事。
『本日はシーゲル・クラインの娘、ラクス・クラインによる医療施設への慰問と歌唱披露が行われました』
出すと視聴率が取れるからか、それとも他の意図があるのか。
最近はすっかりニュースの常連となりつつあるラクス・クライン嬢が、テレビの中で歌っているのを夫婦二人で眺めていた。
「相変わらず澄んだ歌声ねぇ」
「うむ、シーゲルも自慢の娘だと顔を合わせる度に自慢をしてくる」
その時の様子を思い出したのか、むっつりと眉を顰める夫の姿に、思わずくすくすとレノアは笑ってしまう。 - 141124/07/16(火) 12:31:10
「父上、母上、只今帰りました」
「うむ、お帰り」
「おかえりなさい、アスラン」
丁度そのタイミングで扉が開き、学校から帰宅した息子アスランが顔を見せた。
息子はしかめっ面したの父親と、朗笑する母親の姿に一瞬だけ何があったのかと首を傾げ、ちらりとテレビを見やる。
テレビに映る歌っているラクス・クラインの姿を認めはしたものの、興味なさげにさっさと部屋に戻ろうとするその姿に、思わずレノアは問いかけた。
「アスランは、ラクスちゃんには興味ないの?」
―――同年代の子から絶大な人気があるんでしょう?
そのレノアの問いへのアスランの返答に興味があるのか、むっつりとした顔でパトリックもアスランをじっと見ている。
「歌声はきれいだとは思いますが、正直どうでも良いです」
「まぁ……」
取り付く島すらないままばっさり切り捨てる様に言い放ったアスランの返答に、レノアもパトリックも言葉が無い。
そのまま話は終わったとばかりにさっさと自室へと戻るアスランを見送ると、レノアは思わずため息をついてしまう。
「あの子、女の子に興味無いのかしら?」
「……少し前に出た、彼女との婚約話も立ち消えになって正解だったのかも知れんな」
「あの様子ではあまり上手くはいかなかったかも知れないわねぇ」
「うむ」
アスランがパトリックの息子でなければ、結婚しないという選択肢ももしかしたら許されたかも知れないが、パトリックの地位があるが故にそれは許されない。
コーディネイターは出生率の問題を抱えているからこそ、なおさら。
どうしたものかとパトリックとレノアは顔を見合わせて同時にため息をつくのだった。 - 142124/07/16(火) 12:34:25
―――そんな事もあったわねぇ。
そんなに昔ではないが、すっかり懐かしく感じてしまう記憶を思い出しながらレノアが寝室に向っていると、途中にある息子の部屋から明かりが漏れている。
普段は規則正しく、この時間には布団に入って寝ているはずの息子、アスラン。
(うっかりマイクロユニットの制作に気を取られちゃったのかしら?)
どうしたのかと気になりつつも一言、もう遅い時間だと声を掛けようと部屋の扉を叩く。
「アスラン?何をしているの?」
「母上……」
返事が返って来たので扉を開けると、予想とは違う光景が広がっている。
「あら、どうしたの?洋服屋なんて開いて」
「その、明日カガリがこっちに来るので何を着ようか迷っている内に……」
ベッドの上に手持ちの服という服を広げ、頭を抱えるという珍しい姿を見せる息子の様子に、思わずくすりと笑みが出てしまう。
「母上……もし良ければ、一緒に選んで貰えませんか?」
すっかり行き詰ってしまったのだろうアスランの眉を下げての切実な頼みに、ここは母親としての力の見せ所だと気合を入れる。
「任せなさい!一緒に明日カガリちゃんがアスランに見惚れちゃう様な服、考えましょう」
「ありがとうございます、母上」
レノアの言葉に、目を細め、頬を染めて嬉しそうに笑う年相応の姿を見て思わず微笑む。
(普段は大人びた発言ばかりしてるから、こんな姿見れるのはちょっとホッとするわねぇ)
好きになった相手にちょっとでも良く見られたい、広げた服を見ながら真剣に吟味する年相応な息子を見ながら、そんな姿を見させてくれる良い相手に出会えて良かったと改めて心からレノアは思うのだった。 - 143124/07/16(火) 12:36:00
一緒に顔を突き合わせあーでもないこーでもないと時間をかけてお互い納得する服を選び終わった時にはすっかり夜も耽っていた。
「さ、明日は朝からカガリちゃんを迎えに行くんでしょう?片付けてもう寝なさい」
「はい!」
選んだ服に心から満足できたのか、明日『彼女』に逢えるのがそんなに楽しみなのか、両方なのか。
頬をそめて良い返事をするアスランの頭を撫でると、レノア今日はもう寝ようとアスランの部屋を出ようとする。
そんなレノアの背中に、声が掛けられる。
「母上、本当にありがとうございました」
レノアに礼を言うアスランの瞳に感じる既視感。
―――あら、これは。
昔、一目惚れしたと不器用で口数は少ないながらも、熱いアプローチをしてきたパトリックが自分に向けて来たあの瞳。
きっと、礼を言いながらも思い出してるのは『彼女』の姿なのだろう。
(……本当に、気質はあの人そっくりねぇ)
そんな所で血のつながりを感じ、レノアは笑みを深くする。
「明日、逢えるのが楽しみねぇ」
「……はい」
すっかりレノアも大好きになってしまった、将来の義娘に逢えるのが今から楽しみだと思いながらアスランの部屋を後にし、寝室へ向かう。
その足取りは気づけばすっかりと軽く。
まるで今のレノアの心を表すかの様だった。
―――これからアスランからレノアへの恋愛相談が定期的に行われる様になるのは、また別の話。 - 144二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 15:33:27
親御さん生存時空は子供らしくあれていいな…(行動力には目を瞑りながら)
- 145124/07/16(火) 20:03:23
今更だけどタイトル【レノアママから見た息子の話】にすれば良かったなぁと反省。どこかでまとめる事があったらこっそり修正すると思います
【ゆるふわC.E.コソコソ話、レノアさんから見た息子の話編】
■ラクスについて
以前レスでちょっと話したアスランとの婚約話に関してほんの少しだけ先出し。一瞬だけ話は出たけどすぐに理由あって立ち消えになりました。
考えてた経緯の詳細を全て出してしまっても良かったんですが、多分ここで書いちゃうと出そうと思ってた話で未来の自分が頭を抱えそうだなぁと思ったのでこれ位で。詳細はお待ちください。
■アスランからレノアへの恋愛相談
考えてるネタがもう一本ありまして、最初はこの話にそっちも入れようと思ったのですがちょっと冗長になりそうなので分けました。みんな大好きな指輪ネタ。これも追々書けたら良いなと。
と言う訳で本日はこれ位で。
明日も何かしらを投げに来たいんですがちょっと何を書くかは全く未定です。今から考えます……
おやすみなさいませ。 - 146二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 20:26:37
アスラン〜!かわいい…レノアさんとのやり取りもかわいい…息子の反応が気になるパトリックさんもかわいい…
- 147二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 20:34:28
ラクス嬢との婚約は立ち消えてたんですね。こんな風に興味ないかぁとご夫婦で話し合ってたら、まさか自分から特定&プレゼンしてくるとは…。びっくりとパトリックさんの気質から納得がどちらも来たでしょうね…
- 148二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 01:34:56
アスランは恋愛相談するならお父さんよりお母さんに行きそう。相談しやすさもあるけど、パトリックさんとは気質が似てる分、ちょっと気恥ずかしそうですね
- 149二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 08:47:52
ザラ家の男は一途で情熱的なんだな
若い頃を思い出してレノアさんは度々にこにこしてそう
デートの為の服に悩むアスランなんてこの出会いがないと存在しなかったんだろうな - 150124/07/17(水) 11:37:59
【ご報告】
本日はお休みします、すみません。
ネタが無い訳ではないんですが、ここしばらくほぼ毎日投げてたので頭一度休ませたいので脳内整理の日にさせて下さい。
夜元気があったら落書きは投げに来るかもしれません。 - 151二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 14:27:24
スレ主のやりやすいペースが一番です!
前スレ今スレ読み返したりしてのんびりお待ちしてるので、保守はおまかせください〜 - 152二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:21:40
アスラン少年のベレー帽ルックが確かレノアママのセンスなんだよね。さすがマッマ、似合う。ガンカフェのバレンタイン衣装もベレー帽モッズコートのかわいい系だけど、似合ってたなぁ
- 153124/07/17(水) 22:26:37
- 154二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 00:31:26
そっくりー!険しい表情のふたりの後ろで、お嫁様たちがにっこりしてるのかわいい〜!
ハウメアの護り石の紐がチラ見えしてるのにニッコリしてしまう。おやすみなさいませー! - 155二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 00:41:07
休養日なのにありがとうございます!
親子のシンクロっぷりがかわいい - 156二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 07:33:38
⭐︎
- 157二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 08:57:39
スレ主の絵めっちゃかわええ
- 158二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 10:45:16
- 159二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 20:56:27
- 160124/07/18(木) 21:39:07
昨日はお休みありがとうございました。
暖かい言葉もありがとうございます。
と言う訳で?今日はザラ一家+カガリの話です。
昨日の落書き描いてる時に思いついた話です
【寝顔もそっくりなとある父子の話】
婚約者同士のカガリとアスランが親交を深めるため、オーブとプラント間を往来するのもすっかり恒例行事となった今日この頃。
今回はカガリがプラント・ディセンベル市にあるザラ家に訪問していた。
カガリを含めたザラ家4人がリビングで談笑していると、時計を見たレノアが「あら」と声を出して立ち上がる。
「レノアおば様?」
「ちょうどおやつの時間だと思って。知人から頂いたケーキがあるから準備するわ」
「あ、じゃあ私が飲み物準備するよ!」
マーナの鬼特訓のお陰で紅茶の腕にはちょっと自信あるんだ!と胸を張って言うカガリの姿が微笑ましく、レノアの口元も緩む。
「良いの?助かるわぁ」
将来の義理の母娘が仲良く会話しながらキッチンに向かって行く。
その様子を、ソファーに腰掛け雑誌を読んでいたアスランが顔を上げ、欠伸をかみ殺しながらちらりと視線を二人の背中に向けた。
そんな珍しい息子の姿を見て、パトリックは眉を顰めながら声を掛ける。
「寝不足か?」
「以前オーブに行った時に頼まれたハロの制作に夢中になってる内に遅い時間になってしまっていて」
「早く寝ないと体に悪いぞ」
タブレット端末を見ていた顔をアスランの方へ向け、気をつけなさいと声を掛けてくる父親の顔を見て、アスランはふと気づく。
「そういう父上こそ目の下にクマが出来てますよ?あまり寝られてないのでは?」
「……直近まで少し難しい議題が上がっていてな。とは言え山場は超えたからこれからは少しはゆっくりできると思うが」
「父上もお体を大事にしてください」
もう若くはないのですからと可愛げのない一言をおまけで付ける息子の心配からの言葉に、心遣いは嬉しくあるもののすっかり癖になっている眉間の皺がますます深くなる。
そんなパトリックもアスランの眠気が移ったのか、それとも息子との会話で少し気が緩んだのか、欠伸をかみ殺す珍しい姿を見せた。
元々口数も多くない二人が、眠気も相まってそれ以降は黙ってしまうのも仕方がなく。
二人とも会話もなく手元の雑誌とタブレットに視線を戻すのだった。 - 161124/07/18(木) 21:42:42
「二人とも、ケーキの準備出来たわよ」
「紅茶も入ったぞ~!私のお勧めの銘柄だ!」
カガリとレノアがキッチンからケーキと紅茶のセットを持ってリビングに戻って待っているはずのアスランとパトリックに声を掛けるものの、返答が全くない。
「どうしたのかしら?」
「さっきまで二人でソファに座ってたと思うけど……」
そう言ってカガリとレノアが件のソファをのぞき込む。
「あら」
「!」
そこに広がる光景を見たカガリとレノアは思わず顔を見合わせてクスリと笑ってしまう。
―――二人が見たもの。それはアスランとパトリックが、珍しく肩を寄せ合ってすぅすぅと寝息を立てて寝ている姿だった。
「ふふっ、二人の寝顔そっくりねぇ」
「ははっ、寝てる時までしかめっ面ってどんな夢見てるんだよ!」
「ホントねぇ。ちょっと私は掛けるもの取ってくるわね」
レノアは笑いながら立ち上がると、軽くパトリックの頬を撫で、寝ている二人に掛けるための毛布を取りに向かい部屋から出ていった。
一人残されたカガリは、普段はなかなか見る事の出来ない婚約者の顔をじっと見つめる事にした。
(やっぱコイツ、整った顔してるよなぁ……髪もサラサラだし、まつ毛も長いし)
そうしていると、普段はなかなか気恥ずかしくて自分から触れる事が出来ないけど。
相手が寝てる今なら、こっそり触ってもバレないのではないかと好奇心がちょっとだけ湧き出て来た。
おずおずと手を寝ているアスランの方へと差し出すと、そっと柔らかくて触り心地の良い紺糸を撫でてやる。
(思った通り、コイツの髪は凄い触り心地良いな……)
そうして何度かその手触りを堪能してる内に、アスランの表情が穏やかになって居ることに気づく。
- 162124/07/18(木) 21:43:03
そして隣でパトリックの寝顔も、レノアの手がそっと触れたからか柔らかいものに変わっていて。
(あ……幸せそうに寝てる時の顔もそっくりなんだ)
そんな二人の姿を見てると、カガリは『幸せ』って言うのはこういう事を言うのだと感じて、くすぐったくて、なんだかちょっとだけ泣きたくなってしまう。
「ふふ、穏やかな寝顔もそっくりね」
ぼんやりと二人を見つめていたカガリの後ろから持ってきた毛布を掛けながらレノアが笑って声を掛けて来る。
「うん」
「……『幸せ』って、こういう事をきっと言うのね」
「うん、私もそう思った。―――こんな時間が、ずっと続けば良いのに」
切実に、祈るようにそっと声を出すカガリの頭を撫でながら、レノアは迷いなく答える。
「きっと続くわ。ずっと、ね?」
「……うん、うん、そうだな!きっとそうだ!」
その言葉に花が咲き誇るように笑うカガリを見て、レノアの笑みも更に深くなるのだった。
「さ、とりあえず二人だけどケーキ食べましょうか!二人きりの女子会ね!」
「うん!紅茶二人がは起きたらまた淹れれば良いもんな」
「ケーキは食後に出しましょう――――好きなのを選んじゃいましょ」
「うん!」
アスランとパトリック二人の穏やかな寝息をBGMに、秘密の女子会が幕を開ける。
―――今、確かにこのリビングは確かに幸せを象徴する空間だった。 - 163124/07/18(木) 21:53:40
- 164二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 01:44:53
父と息子…!レノアさんとカガリちゃんも完全に母と娘で、なんて素敵なご家族…。穏やかで幸せでちょっと泣けて来ます…。
そして挿絵が…!さっきはいたはずなのに…!うっかり更新したら消えてる…!? - 165二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 01:48:32
カガリは他者の美醜を気にしなさそうだから、綺麗な顔してるなぁとアスランに思った時点で心惹かれてるんだろうなとしみじみしてしまった。パトリックとレノアのやり取りもグッと来た…夫婦好きだ…。
挿絵は時間が経ったら出てくるかな?出てこなかったときは、もしよかったらスレ主、もう一度上げてくださると嬉しいです
おやすみなさいませ! - 166124/07/19(金) 04:53:27
- 167二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 07:50:22
画像直リン不可のバグはたまに見るけどどうだろう
バグだったらしばらくしたら画像復活すると思う - 168124/07/19(金) 07:54:55
- 169二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 09:36:00
女子会いい…!
目覚めたパトリックとアスランは最愛の2人の存在とその2人が用意してくれたケーキと紅茶で存分に癒されて欲しい - 170二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 09:45:07
- 171二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 13:13:29
⭐︎
- 172二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 17:53:13
前スレのハロ72個ちゃんと作ったのかwwということはもうアスハ邸にはハロが…!
アスハ邸のハロはウズミ様カガリ様口調組とメイドさん執事さん口調組で分かれて、これまた個性が出そうだ - 173二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 19:15:47
72個のハロに囲まれるカガリちゃんかわいいけど、同じく72個のハロに囲まれるウズミさまはちょっと面白いな…
- 174二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 21:37:00
私ごとで恐縮ですが、プリマニアクスさんのアスランとカガリの香水がようやく届きました。
アスランの香りが滅茶苦茶好みなので、休みの日にこっそり愛用したいと思います。
と言う訳で投下。
今日は風邪ひきカガリの話。暫くザラ家多めだったのでアスカガとあとアスハ家です。
【風邪をひいたカガリちゃんと遠くから心配するアスラン君の話】
その日、アスランが学校から帰宅すると父親であるパトリック・ザラから声を掛けられた。
「アスラン、帰ったか」
「はい、ただいま帰りました父上……今日は家にいらっしゃたんですね。どうしたんですか?」
「あぁ、今日は議会がない日でな。仕事自体も少なかったから早めに帰宅する事にしたのだ。……先ほどオーブから連絡があった」
「オーブから?明日カガリが来る予定でしたがもしかしてその関係ですか?」
「そうだ。実は……」
普段より少し眉間の皺を深くしたパトリックから出た言葉に、アスランは思わず瞳を丸くさせたのだった。
―――時は少し遡り、オーブ連合首長国内アスハ邸。
その中にあるカガリの私室には先ほどからずっとけほけほと咳が響き、顔を真っ赤にしてベッドに寝ている部屋の主の姿があった。
「……姫様、大丈夫ですか?」
「けほっ……だいじょうぶ、薬飲んで寝てたら良くなるってお医者様も言ってただろ?」
心配しながら看病をするマーナに苦笑いしながらただの風邪なんだから心配するなと答えるカガリは、言葉とは裏腹に随分と苦しそうにしている。
「マーナが変わって差し上げられれば良いのに……」
「えっ、私の代わりにマーナが苦しむのは嫌だ!……けほっ、けほっ」
「姫様!無理しないでくださいませ!」
咳き込み始めたカガリの額に浮かんだ汗をマーナが濡れたタオルで拭ってあげると、タオルの冷たさが気持ちいいのかカガリは少しだけ穏やかな顔になってぽつりぽつりと話し出す。
「……あした、アスランに逢えるはずだったのになぁ……」
「お熱が出てしまったものは仕方がございませんよ」
「アスラン、寂しがってるよなぁ……」
久々に逢えるはずの婚約者の寂しそうな顔を想像して、カガリの眉が垂れ下がる。
そんなカガリを元気づける様に、マーナは優しく笑って言う。
「アスラン様の為にも早く元気にならないといけませんね」
「うん。早く逢いたいなぁ……」 - 175124/07/19(金) 21:41:33
カガリの思わずこぼれた本音に、マーナはただただ笑みを深くする。
「……その為には良く寝て、苦いお薬もちゃーんと飲まないといけませんよ」
「うっ……わかってるよぉ……」
先ほど飲んだ、医者から処方された薬の苦さを思い出して思わずカガリの表情も苦くなり、そんな様子を見てマーナはくすくすと笑う。
これ以上の会話は療養に差し障りが出るとマーナは看病の為にベッドの横に置いた椅子から立ち上がり、カガリに声を掛ける。
「姫様、ウズミ様ももうそろそろ戻られるようですよ」
顔を見せに来るまで寝ましょうね。そう言うとカガリの少し癖のある金糸を撫でて部屋から出ていった。
部屋の中に一人ぼっちになったカガリは、病気のせいか妙に心寂しく感じてしまう。
(……さっさと寝ちゃおう)
そんな寂しさから逃げる様に、布団をかぶって夢の中へと駆け込むのだった。
それからどれ位時間が経ったのか、部屋の扉が静かにノックされる音でカガリの意識が少し浮上する。
「……カガリ。寝ているか」
音の主は、カガリの様子を見るために帰宅してすぐに少女の部屋に訪れた父・ウズミ。
(お父様……)
夢うつつ状態のカガリはぼんやりと父の心配する声は聞こえるが、うまく答える事が出来ない。
ウズミが様子を伺うためにカガリが寝ているベッドに近づくと、そっと少女の額に手を当てる。
(……お父様の手、冷たくて気持ちいい)
ウズミの掌が心地よく、熱の苦しさが少しだけ楽になった気がしてカガリの口元が少し緩む。
「カガリ、早く元気になりなさい」
そんなカガリの様子にウズミもほっと息をつくと、そっとカガリの額から手を放し、髪を軽く撫で部屋から出るために扉に向かおうとする。
ウズミの背中に、カガリの小さな寝言が届いた。
「―――おとうさま、いかないで……」
その言葉に振り向いて少女の姿を見ると、目じりに小さな雫が浮かんでいる。
(……こんな時くらいは仕方がないか)
ウズミは柔らかく笑うと、ベッドの横へ椅子を置いて腰掛け、掛け毛布から出ていた小さな手を取る。
「おとうさま……」
そうすると、寝言と同時に少女の口元が先ほど以上に綻ぶのがウズミの目に入った。
(……たまには、こんな時間も悪くはないか)
カガリが深く寝入るまで、ウズミは早く良くなるようにと祈りながらずっと少女の小さな手を握り、寝顔を眺めていた。 - 176124/07/19(金) 21:43:56
「……カガリ、大丈夫かな」
帰宅後にパトリックから聞かされた、カガリが風邪を引いたために急遽プラントへ来訪が出来なくなったという知らせ。
取る物も取り敢えず、オーブへ向かってカガリの様子を見に行きたいとその瞬間は思ったが、それを察した父親が先んじて打った「お前が今逢いに行った所で彼女の負担にしかならない」と言う釘に冷静になった。
とは言え、やはり彼女の容態が心配で仕方がなく、快癒を祈る事しか出来ない自分が非常にもどかしい。
マイクロユニットを組み立てようかとも思ったが、机に向かったもののちっとも集中出来る気もしない。
アスランは結局椅子に座ってぼんやりと彼女の事ばかり考えていた。
―――ヴー、ヴー、ヴー
「!」
そんなアスランの心境を察したかの如く、彼のタブレット端末がビデオ通話の着信を示す。
(誰だ?……ってカガリ!?)
今まさに心配してた相手カガリからのまさかの着信に、アスランは慌てて通話の応答ボタンを押した。
『……アスラン』
「カガリ!?電話しても大丈夫なのか!?」
画面越しでも彼女の顔が赤く染まっている事がわかる程に体調が悪そうな少女の姿に、思わずアスランの眉が下がってしまう。
そんな様子を見たカガリは苦笑して答える。
『昨日から熱がちょっと下がったからマーナが少しだけなら電話して良いって許可貰ったんだ』
「でも、カガリは凄く苦しそうだが……」
『これでも薬飲んでぐっすり寝たから昨日より大分楽になったんだよ……けほっ』
「カガリ!…やっぱり無理は良くない。もう切るぞ?」
ちょっとだけでも顔が見られて良かったと通話終了ボタンに手を掛けると、カガリの慌てた声がスピーカーから届く。
『待ってくれ!どうしてもアスランに謝りたかったんだ』
「謝る?」
『急にそっちに行けなくなった事をさ……けほっけほっ』
「そんなのカガリの体調を考えたら仕方がないだろう?気にする事じゃない」
カガリの謝罪に、アスランの眉間の皺が深くなる。そしてそんなアスランの顔をを見てカガリはくすくす笑う。
『ふふっ、お前がそんな顔するとやっぱりおじ様そっくりだなぁ……そのさ。寂しがってるかと思ったんだ』
「寂しがるって……」
寂しいと思うよりも心配する気持ちが先に来たから、アスランはカガリの言葉に思わず不意を突かれた気持ちになり、ポカンと口を開けてしまう。 - 177124/07/19(金) 21:45:00
『私がお前に逢えなくて寂しいって思ったから、お前にも同じように思って欲しかったのかも』
熱があるせいか、普段は恥ずかしがって言わない様な本音をこぼすカガリの姿。
アスランはたまらくなって、思わず端末に手を伸ばす。
(傍にいれば、直接触れて慰める事が出来るのに)
感じるのは端末の画面の冷たさだけ。
遠く離れたプラントで、祈る事しか出来ない自分の無力さを痛感する。
そんなアスランの手に触れる様に、カガリもそっと手を伸ばす。
『……早く、お前に逢いたいなぁ』
カガリの言葉に、急激にアスランの胸に沸き上がりあふれる、「寂しい」と言う感情。
「―――うん。俺も早くカガリに逢いたい。……寂しいよ」
『へへ、一緒だ』
「うん、一緒だ。早く元気になって」
『ありがと、あすら……ん……』
「カガリ?寝ちゃったか」
すーすーと穏やかな寝息を立てて寝ている画面の向こうのカガリ寝顔は、とても穏やかで。
アスランはほんの少しだけほっとした。
「……早く、カガリと結婚したいな……」
結婚すれば、こんな時に近くで彼女を見守る事が出来るのに。
―――今は、遠くから祈ることしか出来ないけれど。
彼女の柔らかな寝顔を見ながら、せめてこの祈りだけはちゃんと届きますようにと。
アスランは名残惜しさを感じつつ、そっと切断ボタンを押すのだった。 - 178124/07/19(金) 21:58:07
2日連続で挿絵付けたんですが流石に明日以降はちょっと厳しいと思います…
一番言わせたかったのはアスランの「早く結婚したいな」でした
あと思ったより72個のハロの反響が面白くてそれも何かネタに出来たらいいなって思います
大量のハロに埋もれるウズミ様の落書きとかもいつか投げるかも…?
そろそろ次スレの時期ですかね?
とりあえず現状は185超えたくらいで用意しようと思います
前スレラストの様になりませんように…
ビミョーにスレ内容とずれてる気がしてスレタイ変えた方が良いのかなってちょっと思ってるんですが、このスレタイで覚えて検索してくださってる方とかもいるのかな…?
あと次からは流石に【年齢操作】の表記は確定で追加すると思います
と言う訳で本日はこの辺りで
おやすみなさいませ - 179二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 22:58:06
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- 180二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 23:32:33
スレ主さんおやすみなさい
挿絵可愛くて最高なので無理のない範囲で見せてもらいたいです
仲良しなアスハ家も画面越しに手を伸ばす婚約者たちも素敵だ - 181二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 01:04:55
かわいい…寝る前に大変なときめきを貰ってしまった。良い夢見れそうです、ありがとうございます。おやすみなさいませ、スレ主!
こちらのスレのお話自体がもうとてもとても可愛くて、その上での挿絵はボーナスなので、スレ主の負担にならない範囲で大丈夫です!改めて、いつもありがとうございます! - 182二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 01:06:33
カガリが逢いたくて寂しかったのもグッと来るし、アスランの寂しさを先にカガリが見つけてくれたのもグッと来ます。素敵だ…
- 183二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 08:37:19
アスランは第二世代のコーディネーターだから、風邪とは無縁だったのかも。成人後ならオーブに飛び出してそうなアスランだ
- 184124/07/20(土) 11:25:35
【業務報告】
突発で色々ありまして今日の投下は難しいかもしれません
明日はどうにかできる様頑張ります - 185二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 14:44:51
のんびり保守したり感想投下したりしつつ、お待ちしております〜!いつもかわいいザラ家とカガリをありがとうございます!
- 186二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 17:15:20
スレタイ特に問題無いと思います〜
保守りつつちょっと早いけど次スレも楽しみにしてます! - 1871(ちょっとだけ)24/07/20(土) 17:39:18
- 188二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 17:51:18
暁にちなんで「あけぼの」
- 189二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 17:52:55
アランチャ(イタリア語でオレンジの意味)
- 190二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 17:56:51
スペイン語だとオレンジのことナランハって言うね
オレンジの片割れって比喩もスペインあるしロマンチック - 191二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 17:58:50
単純に「あかつき」でも可愛い
アスランが好きな桃にも色は白系だけどあかつきって品種があるんで好物かつ丸つながりで - 192二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 22:14:57
名前案ありがとうございます!
カガリのハロの名前は?
dice1d4=3 (3)
1.あけぼの
2.アランチャ(イタリア語でオレンジの意味)
3.ナランハ
4.あかつき
- 193二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 22:24:44
おお、かわいい募集が始まっている!挙げられた案、全て素敵だ…すごい…。
あのハロちゃんの色合いと大切な人と食べるケーキ、ウィークエンドシトロンから『シトロン』はいかがでしょうか? - 194124/07/20(土) 22:32:30
- 195124/07/20(土) 22:34:27
- 196二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 22:34:48
スレ立て乙です〜!ナランハちゃん、かわいい
- 197二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 22:36:26
いえいえお気になさらず〜!全部素敵な名前ですが、決まった名前もかわいいですね!
- 198124/07/20(土) 22:49:22
埋めついでにこっそり予告ですが、次の話は
・久々にオレンジハロ『ナランハ』ちゃんとアスカガのお話
・落ち込みアスランを慰めるカガリの話
のどっちかの予定です。書かなかった方はその翌日に書きます。
いつも通りのほのぼのだと思います。
と言う訳でおやすみなさいませ。 - 199二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 23:12:52
スレたて乙です!無事ハロの名前も決まって良かったよかった。次のスレでも宜しくお願いしますー。おやすみなさいませー!
- 200二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 23:32:52
200ならこれからも皆ほのぼの平和幸せスレ