- 1二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:11:20
「何見てるんですか?トレーナーさん」
不意に声をかけられ、徐に振り返る。
携帯に映る一枚の風景をポケットに隠すようにして、「なんでもないよ」と答えた。
声をかけてきた教え子は不思議そうな顔をしながら、しかしキリリと顔を引き締めて直立した。
真面目な良い子だ。
自分は今、このウマ娘の担当をしている。
「時間通りだね。それじゃあ、始めようか」
「はい!よろしくお願いします!」
声を張り上げる目の前の子に、今日のトレーニングメニューと課題を出来うる限り丁寧に伝える。
熱心に聞き、貪欲に走りのテクニックを求める姿はとても好ましい。
それなのに。
今の自分の頭の中は、先程の風景を思い描いてしまっていた。
今なお旅を続けている、彼女の。
ドリームジャーニーの送ってきた、遥か遠い国のターフを。 - 2二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:12:22
彼女との別れの日は、今でもよく思い出す。
「トレーナーさん、今までありがとうございました」
ジャーニーの最後の宝塚記念。トゥインクル・シリーズのラストランとなった、あのレースの後の事を。
「貴方と共に在った道程は、この先別れ道です」
淡々とした声色で話す彼女の言葉は、どうしようもなくわかりきっていたリアルだった。
彼女はトゥインクル・シリーズを卒業し、自分は彼女の担当から外れる。
自分は学園のトレーナーとして新しい夢を育て、彼女は旅の果てを求め新しい世界へ旅立つ。
黄金の旅路を辿る旅は続く。
でも、二人揃って歩むのはここまでだ。 - 3二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:12:51
「ここまで来れたのは、貴方のおかげです」
「ジャーニー、君の力だよ。自分はおこぼれに預かっただけに過ぎない」
「その過剰に自分を卑下する癖を治してあげられなかった事が私の最大の過ちでしょうか。何度も申し上げましたが、貴方は素晴らしいトレーナーですよ」
自信を持ってください、と少し眉を下げながら言う彼女を見ていたたまれない気持ちになる。 - 4二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:13:20
今でも思う。自分は本当に彼女に相応しかったのだろうかと。
彼女にとっての最高の理解者であろうと奮闘してきた。それについては一片の曇りもない。
それでも、そうであったのかはまた別の事だ。
彼女と共に歩んできた旅の景色はとても美しかった。
自分にとって、これ以上を求められないほどの最高の景色。
それでも、彼女にとって最高であったのかはわからない。
メールで送られてきたあの景色を超えられていたのか、ずっと己に問い続けている。 - 5二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:14:09
一人、旅を続ける事を選んだ彼女から送られてくる景色はどれも息を呑むほど美しかった。
朝露でターフがキラキラと輝くパリロンシャン。
どこまでも新緑が眩しく生茂るアスコット。
夕焼けに染まり赤と緑が鮮やかに彩るメイダン。
100万ドルの夜景の中厳かに佇むシャティン。
名も知らぬ、ただ柵で囲われただけの綺麗で美しい芝の丘。
彼女はありとあらゆるレース場を旅していた。
どこへだって行って、その素晴らしさを自分に教えてくれる。 - 6二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:14:51
それを景色を見て思う。
彼女はどこへだって行けた。それだけの実力があった。
あのステイゴールドのように、海外でだって嵐を乗り越えられる筈だった。
それなのに、彼女の学園でのキャリアをたった一度の海外遠征で終わらせてしまった。
どんなレースにもツキと言うものはついて回る。絶対とまで言わしめたシンボリルドルフでさえ、海外で結果を残す事はできなかった。
それでも、どうしても頭をよぎってしまう言葉がある。
どうしても、何かが自分に囁く言葉がある。
自分が彼女の足枷になってしまっていたんじゃないかって。
それを肯定することも否定することも、自分にはできなかった。 - 7二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:15:15
ただ、それを認める訳にはいかなかった。
それを認めてしまえば、もう自分はジャーニーと伴に歩けないから。
それを認めてしまえば、自分は楽になってしまえるから。
嵐を楽しみ、立ち向かう彼女に相応しいトレーナーであり続ける。
道具でもいい、使い潰されるなら本望。
伊達や酔狂で立てた覚悟なんかじゃない。
そんな、鉄の楔で打ち立てた誓いを。
血反吐を吐く思いで彼女について行った過去を。
何より。
彼女から向けられる信頼を。
裏切る事なんて、死んでも嫌だったから。 - 8二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:15:44
けれど、胸に渦巻くこの考えは、どうしたって消えてはくれなくて。
ジャーニーに相応しいトレーナーだったのかという答えは今も持っていなくて。
だから、これから証明するしかなかった。
自分は優れたトレーナーであることを。
彼女との旅路が最善だったと認めさせるために。
これから二度と会えなくなったとしても、自分はジャーニーとは別の道を歩いて行く。
それこそが、夢の旅路の果てを見るための鍵だと信じて。 - 9二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:16:08
「それじゃあ、トレーニングを開始しよう。いつものようにアップから」
「はい!」
気持ちの良い返事をして、今の担当ウマ娘は弾かれるように外へ飛び出していった。
ジャーニーと違い、理論を身体で覚えるタイプの娘だ。自らの走り方を言語化し、知識を自分なりの感覚へ落とし込めればあの娘は飛躍的に伸びる。
生真面目な性格なのも自分と相性が良い。間違いなく重賞を獲れるウマ娘になるだろう。
自分の元へ来てくれるよう、入念に根回しして良かった。
そんな考えに、思わず笑みを浮かべる。
まるで彼女みたいだな、と。 - 10二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:16:35
ポケットから香水を取り出し、手首にひと吹きして馴染ませる。
その香水は、彼女から貰った絆。
夢の旅路の道標。
この匂いに導かれるように、今日も自分は進み続ける。 - 11二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:18:51
おしまい
こんな筆ノったのファイン以来でしたわ。
みんなもドリジャ引こうね - 12二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:19:08
乙
クソみたいなスレタイをウソみたいに忘れたいSSだった - 13二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:19:50
ひでえスレタイにも限度あり
しかしその良文誉れ高い - 14二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:21:34
応援スレに推薦しておいたゾ
- 15二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:33:28
うおっクソみたいなスレタイ これもう俺に読ませる為に付けただろ…
- 16二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:38:28
いいんですよ、ジャーニーが小さくかわいい限り…❤ほっほっほ❤使えねぇスレタイだな!
- 17二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:40:33
ウェディング記念だね❤️ジャーニーさん大切にするよ❤️ロクでもねぇスレタイだな◯ねよ
- 18二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:44:53
名作の形になってきたな 下品なスレタイスケベなスレ画一方で気品の有る言い回しと哀愁を感じさせるSS
花で例えると…うんまあちょっと思いつかないけど - 19二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:51:48
ダメだこりゃ(スレタイで釣って)読ませたがってるな 頼むから◯んでくれ
- 20二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 01:55:42
こんなスケベ専用語録で名作を作るなんて各方面に失礼だよね
- 21二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 07:54:37
ターフの上を滑るように吹く爽やかな風のような…読みやすい名作
にしてもスレタイなんなんだよ - 22二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 08:33:32
内容は文句なしの名作だけど何で皆当然のようにち◯ち◯亭語録使いこなせてるの?
- 23二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 20:21:05
(貴方の道を)サッサとイキなさい!(後ろ髪を引かれるから)よそ見をするな!(でも未練タラたらなのは)可愛すぎますね♡
こうですかわかりません